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血清アルドラーゼに関する研究

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〔特 別 掲 載〕

(東京女医大誌第30巻第12号頁2778−2784昭和35年12月)

血清アルドラーゼに関する研究

第望診 実験的肝障害における血清アルドラF一ゼ活性度

東京女子医科大学生化学教室(主任 松村義寛教授)

竹  村

タク    ムラ

幸  子

ユキ    コ

(受付昭和35年10月25日)

       第1章 緒   言

 1943年Warburg−Christian1)が悪性腫瘍をもつたラ ットの血清アルドラーゼ値が正常より高いことを発見し て以来Dounce・Beyer2), Sibley−Lehninger3)4)らもこ れに注目,彼らの測定法2)3)により追試し同様の結果を 認めたが,当初これは悪性腫瘍特異の現象にと考えら れ,殊にSibley−Lehninger(1949)4)が人血清アルド

ラーゼの測定で悪性腫瘍患者に特異的にその増量を認め たことから,本酵素の悪性腫瘍に対する診断学的意義が 注目されはじめた。しかし,1953年にSchapira−Dre−

yfusら5)が筋萎縮患老の92%に血清アルドラーゼ値の 上昇を認め,1954年にはBruns−Puls6)が急性肝疾患の 初期にこれが急激に上昇することを認め,1956年には Volk, Losner, Aronsonら7)が心筋硬塞届、者に同様の 現象を認め,血清アルドラーゼ値の増:量が悪性腫瘍に特 異的なものでないことが確認されると共に,本酵素の臨 床上の意義が再確認され,種々の疾患(殊に肝疾患,筋 肉疾患,心疾患)の鑑別診断,臨床経過の追求等々,近 年その研究が漸次盛んとなってきている。

 著老は,これが肝疾患中急性の初期に特異的々上昇す る点に注目し,動物実験により実験的肝障害時の血清ア ルドラーゼ活陸度を測定し二,三の結論をえたのでここ に報告する。なお実験的肝障害として四塩化炭素,クロ ロホルムなどの腹腔注射並びにトウモロコシ食飼育の三 種類を選び,実験動物にはラットを用いた。測定にはア ルドラーゼ測定法中血清または組織アルドラーゼの測定 法として比較的欠点の少いSibley−Lehninger氏法3)を 選んだ。

       第2章 実   験

  1,正常ラットの血清アルドラーゼ活性度

 1.実験動物

 一定期間固型飼料MFで飼育した体重1509前後の 近交系ラットを用い,健康なもの雌雄5匹宛を実験に供

した。

 2.採血方法

 ラットを特写に固定しエーテルの全身麻酔下に股部皮 膚切開を行い,丁丁剥離により股動静脈を露出したのち どちらか一方の血管に小切開を入れ,湧出する血液を組 織液の混入,溶血を避けつつ細いピペットで約3m1宛

スピッツ・プラスに採り,暫時静置したのち血清を遠心 分離,採血後2時間以内に実験に供した。採血管を絹糸 の単純結紮で止血皮膚縫合を行ない,感染防止,保温等 に留意した。

 3.実施方法

 採血は15〜20時間毎に1回宛行ない,両側股動静脈を 用いて1匹につき計4回採血し,血清アルドラーゼ活性 度を測定する。

 4.測定法並びにアルドラーゼ活性度の表わし:方  本研究ではすべての実験を第1報のSibley−Lehnin−

ger氏法8)に従った。

 5.実験成績

 正常ラットの血清アルドラーゼ活陸度は第1表の如く 16〜41,平均27であった。♂16〜39,平均28,♀16〜41 平均27で性別の差はみられず,また同一ラヅトではかな

り安定した値がえられた。採血回数による差も認めら れ,採血のための手術手技等の影響も認められなかっ

た。 (第1表)。

  II.四塩化炭素による実験的肝障害時のラッ

Yukiko TAKEMURA (Department of Biochemistry, Tokyo Women s Medical College): Studies on serum aldolase. Report II. Serum aldolase activity under experimental liver dysfunction.

(2)

第1表 正常ラットの血清アルドラーゼ活性度 動

物 番 号 I g

v

s 採血回数

・図・1・

16 27 38 23 34

20 25 34 22 30

18 27 35 26 33

21 30 39 20 37

平 均 19 27 27 23 32

番 号

X

9

第2表 実験的肝障害時のラヅトの血清アルドラーゼ

   活性度

採血回数

・図34

31 26 17 19 39

29 28 20 23 38

29 26 16 23 41

30 30 16 20 36

平 均

測定

時 間

・陣

30 28 17 21 28

111ii 26 l

 2612si30i2slX127i2s12712612s

  Fの血清アルドラーゼ活性度  1.実験動物ならびに採血方法

 正常ラットの引合に同じ。但し対照群5,肝障害群 28,計33匹のラットを使用した。

 2,実施方法

 i)肝障害群:10%の割合に四塩化炭素を溶解させた 大豆油を体重209当りO・ Iml(CC14日目て0,01mI)

をラヅトの腹腔内に注射し,注射直後より注射後90時聞 までの血清アルドラーゼ活性度の時間的推移を測定す る。同一ラヅトでは12〜24時間間隔を原則に4回採血,

各測定物毎大体5例宛測定した。

ii)対照群:体重209当り0.1m1の大豆油のみを腹 腔内に注射し,注射直後より90時間までの血清アルドラ ーゼ活性度を肝障群と同様に測定した。

 3.実験成績

 i)肝障害群:四塩化炭素の腹腔内注射後10時間頃よ り上昇を認め,急激に上昇して注射後20時間前後で最:高 活性を示した。その後は比較的速やかに下降し,注射後 60時聞で正常に復した。最高活性を示した注射後20時間 の平均野臥度は414で正常値のほぼ15倍強である(第2 表,第1,4図)。

注 射

注 射 後1

!1

2

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e 5 10 12 15 16 18 20 22 24 25 30 35 36 40 45 48 50 60 70

四塩化炭素 腹腔内注射

購害酬対購

29

101

146 222 383 414 383

341 289 193

135 113

41 25 26

18 30 26

26 31 26 19 32

24 40 17

34 26

19 24 24

クロロホルム

腹腔内注射

肝瀦副対鰭

/1

3

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4

72 i

80 84 90 96 108

28

21

28

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91 257 315 291

207

36

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172

95

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16 20 32 18

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第1図 四塩化炭素による実験的肝障害時におけるラツ}の血清Aldolase活性度 一2779一

(3)

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第2図クロロホルムによる実験的肝障害時におけるラットの血清Ald61ase活性度

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第3図 大豆油腹腔内津射ラット(対照群)の血清AldolaSe活性度

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第4図四塩化炭素およびクロロホルムによる実験的肝障害時のラツ}血清のAldolaSe l活性度     (平均値)の比較

       一2780一

(4)

 il)対照群:三尉後90時間までの各測定時の活性度は 19〜40,平均27でいずれも正常範囲内にあり,大豆油腹 腔内注射による影響は全く認められなかった(ag 2表,

第3図)。

  IIL クロロホルムによる実験的肝障害時のラ   ットの血清アルドラーゼ活性度

 1.実験動物並びに採血方法

 正常ラヅトの場合に同じ。但し対照群5,肝障害群 23,計28匹のラットを使用した。

 2.実施:方法

 i)肝障害群:10%の割合にクロロホルムを溶解され た大豆油を体重209当りO, lml(CHCI3として0・011nl)

の割合でラヅトの腹腔内に注射し,注射直後より注射後

、6日(144時間)までの血清アルラド一鞭活性度の時間 的推移を測定する。採血回数,間隔等は皿に同じ。

 i圭)対照群=四塩化炭素による実験の揚合と同様に大 豆油のみを注射したものを用いた。

 3.実験成績

 i)肝障害群:クロロホルムの腹腔内注射後24時間頃 より上昇を認め,注射後45時間前後で頂点に達し最高活 性を示した。その後はややゆるやかに下降し,注射後5 日目(120時間)で正常に復した。最:高活性を示した注 射後45時間の平均活性度は315で正常値のほぼ12倍弱,

四塩化炭素の場合よりは上昇程度がやや低い。また四塩 化炭素の場合に比し,上昇開始も,最高活性に達するの

もやや遅れており,下降速度も前者に比しゆるやかであ る(第2表第2,4図)。

 ii)対照群:16〜41,平均25でflと同様いずれも正常 範囲内にある(第2表第3図)。

  IV. トウモロコシ食飼育ラットの血清アルド   ラ一節活性度

 1.実験動物

 一定期間固型飼料MFで飼育した体重90〜1309の ラット30匹を選んでさらに15日間同一飼料で飼育する。

その間体重を測定(3日目毎)し,体重減少または体重 増加不良および妊娠例等を除き.体重増加および健康状 態良好の正常ラヅト 20匹を選び実験に供した。

 2.採血方法

 1に同じ。

 3.実施方法

 i) トウモロコシ食飼育群:上記ラヅトのうち10匹を 選び本群とし,一匹宛籠に入れ,トウモロコシ食のみで 飼育,水は自由に摂らせる。飼料のトウモロコシは割挽

しない粒のままのものを与えた。本飼料での飼育料での 飼育開始当日よ il , 体重測定(毎日),血清アルドラーゼ 活性度測定(隔日)と実施し,その時間的推移を調べ

る。

 ii)正常飼育対照群:残り10匹を本丁とし1匹宛籠に

入れ,従来どおり三型飼料と水を自由に摂らせ,体重測 定,血清アルドラーゼ活性度測定をトウモロコシ食飼育 群同様に行なう。

 4.実験成績

 i) トウモロコシ食飼育群

 イ.体重:準備期間中の体重増加に比し}ウモロコシ 食飼育後の体重増加は明らかに低下し,正常飼育の対照 群との間に著明な差が認められた。本門の体重増加率

(平均値)は,準備期間中6日目8.4%,15日目18.9%

に対し,トウモロコシ食飼育後は6日目2.2%,15日目 3. 0%と明らかに低下しており,20日目2.6%,30日目 7.2%,40日目9.9%で,これは対照群にくらべあきらか

に不:良である。しかし飼育100日目までの観察で負の体 重増加率は一度もなかった(第3表,第5,7図)

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O lo 第5図

20   30   40   曾O   臼O   lOO

       (Da,yS>

}ウモロコシ食飼育群の体重の推移

 ロ.血清アルドラーゼ活性度:本飼育開始当日よ り40 日目までと,同80日目より100日目まで隔日に.血清アル

ドラーゼ活性度を測定したが,常に薄照群と近似した値 を示し,15〜39,平均27でいずれも正常範囲内にあり,

トウモロコシ食飼育による影響は全く認められない(第 3表,:第8図)。

ii)正常飼育対照群

 イ,体重=準備期聞中よりも体重増加はやや良好でト ウモロコシ食飼育群との聞に明らかな開きをみせた。本 門の体重増加率(平均値)は実験開始後10日目14.1%,

20日目23.5%,30日目28.8%,40日目39.9%と良好で,

実験終了の100日目は平均体重2169,平均体重増加率 一2781一

(5)

第3表 トウモロコシ食飼育ラヅト並びに対照群の    体重増加率と血清アルドラーゼ活性度

(7)

2写。

測 定

準 備 旧 聞

0 3 6 9 12 15 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30 32 34 36 38 40 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 100

トモロコシ食飼育群 体重増加率

 (平均)

  %

 0

5.0

8. 4

11. 4 14. 9 18. 9

 o

O. 3

1. 4

2. 2

1. 4

2. 3

2. 4

3. 2

0. 4

1. 5

2. 6

2. 0

4.3

4. 6

8.1

7. 2

7.0

7. 6

8.4

9. 1

9.9

16. 7 16. 6 15. 7 15. 0 14. 9 19. 0 18. 0 19. 0 19. 5 19. 4 20. 5

アルドラー ゼ活性度

Ext/m1

28 27 30 18 24 32 28 28 39 20 16 26 24 24 33 30 27 27 18 34 33 36 19 27 29 20 33 36 15 24 27 28

正常飼育対照群 体重増加率  (平均)

  e/o

 0

3. 7

5. 9

11. 4 10. 2 11. 1

 0

2. 4

4.8 6.7 11. 9 14. 1 16. 8 18. 1 17. 9 20. 6 23. 5 23. 5 26. 9 26. 2 28. 2 28. 8 29. 2 30. 5 30. 9 32. 1 32. 9

47. 5 50. 9 51. 5 54. 5 53. 5 54. 0 55. 1 56. 9 59. 0 60. 8 62. 5

アルドラー ゼ活性度

Ext/m1

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39 18 20 33 41 15 26 28 34 25 19 18 38 24 20 22 16 24 33 27 35

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 第6図 正常飼育対照群の体重の推移

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61.7%に対し,トウモmコシ食飼育群は平均体重165・69 平均体重増加率20.so/,で著明な差が認められた(第3表 第6,7図)。

 1].血清アルドラーゼ活性度:15〜41,平均27でいず れも正常範囲内にあり,正常ラットの血清アルドラーゼ

第7図

IO 20 30 40 90 90 .一 loo       (Day s)

トウモロコシ食飼育ラットと対照群との体重 増加率の比較

活性度に一i致している(第3表,第8図).

       第3章 考   察

 アルドラーゼが生体のほとんどすべての臓器,組織に 含れていることは回報8)で述べたところであり,」血清ア ルドラーゼはこれら臓器,組織における細胞の生理的破 壊および細胞膜透過による細胞内アルドラーゼの血中放 出に由来するものと老えられるが,血清アルドラーゼ値 の上昇を来たす疾患すなわち悪性腫瘍,筋萎縮症,急性

(6)

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第8図

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       CDays)

トウモロコシ食飼育ラットの血清Aldolase活性度

○トウモロコシ食飼育群 ●対照群 肝炎,心筋硬塞等々共通なことは,急激なしかも広範囲

な臓器,組織の破壊または壊死を惹起する点であり,そ の他上昇と認める疾患として挙げられている潰瘍性大腸 炎,急性肺炎,壊死,白血病,溶1血性黄疸等々もすべて 同様の共通点を持っており,血清アルドラーゼ値の病的 上昇の原因が,これらの疾患による臓器,組織の破壊に より,細胞内アルドラーゼが病的に血中流出するためで あることが推察できる。

 Bruns−Puls6)により報告された肝疾患時の血清アル ドラーゼ値の上昇が,急性肝炎に高度であり,閉塞性黄 疸,肝硬変症等では正常かわずかに上昇するにすぎず,

肝実質障害による肝細胞の破壊,壊死等を伴う丁合にか ぎられていることは,上述の点からも首肯できる。とこ ろが肝炎での上昇が急性の極めて初期にのみ高度で,そ の後は病気の経過と無関係に下降し,比較的短時日に正 常値に復しておil ,他の肝機能検査の成績とは平行して いない。このことはSibley−Lehningerg)も指摘してい

るが,血清アルドラーゼ値の上昇の程度が肝機能障害の 指標となりえないことを意味している。

 この点を再検討するため,ラットに実験的肝障害を起 こさせて血清アルドラーゼ値を測定したが,四塩化炭素 またはクロロホルムの腹腔内注射(O. Olml CCI4/259ラ

ット体重または0,01ml CHC13/209ラット体重)によ る実験的肝障害では両者共,極めて初期に急激に上昇し て最高活陸に達し,これが比較的短時日で下降,正常に 復することを認めた。これは臨床上の観察と同様の傾向 である。一方トウモロコシ食飼育によるものでは,飼育

日数100日目までの観察で,すでに飼育当初より体重増 加率が対照群に比し明らかに低く,トウモロコシ食飼育 の影響が認められたにかかわらず,血清アルドラーゼ値 の上昇は全く認められなかった。トウモロコシ食飼育ラ ヅトに肝機能障害の起ることは他の研究で明らかにされ ており,この実験成績は,前述の血清アルドラーゼ値が

肝機能障害の指標とはなりえないという臨床上の観察を 裏ずけたものといえる。またこの結果からトウモロコシ 食飼育ではラットに急激な細胞の破壊,壊死を伴うよう な肝実質障害を起させることはできないということがい える。ただ飼育に用いたトウモロコシが比較的トリプト フアンの多い紅色種であったことは検討の余地がある。

 また,同量の割合で腹腔内鼠痢を行なったのに,クロ ロホルムによるものは四塩化炭素によるものより血清ア ルドラーゼ値の上昇が,その上昇開始も最高活性への到 達も共におくれており,上昇程度も四塩化炭素では正常 の15倍強であるのに対し12倍弱と低いが,これは四塩化 炭素とクロロホルムの肝実質に与える障害の強弱による と老えられる。このことから推して,血清アルドラーゼ 値の上昇程度は肝実質障害の度合いを知る指標とするこ

とができるといえる。

 臨床上黄疸が肝実質障害に由来するものか,閉塞性障 害によるものかの鑑別はしばしば困難であり,従来から

もDubslo), Kollerら11)Heilmeyerら12)の報告等種 々学的な鑑別方法が老えられているが,Bruns−Puls6),

Sibley−Fleischerg), Eismann15)らも指摘しているよう に,血清アルドラーゼ値による鑑別が可能なことも以 上の結果から首肯できる。但し,本実験では実験動物と して生理的に輸胆管を欠除するラットを用いたため,人 工的な閉塞性障害を作ることができず,両者の活性度の 比較ができなかった。

 以上,実験的肝実質障害において臨床生化学的観察と 同一の結果をえたし,血清アルドラーゼ値が肝実質障害 の初期に高度に.上昇するのは,障害され肝細胞内アルド ラーゼの急速な血中流出による一過性の血清アルドラー ゼ量の増加にあるとしても,一度上昇した.血清アルドラ ーゼ値が速やかに正常に復すのは,如何なる機転による ものだうか。同一ラットのIE常値がかなり安定した値を 示すことと老えあわせ,アルドラーゼの血申放出と消失 一2783一

(7)

とが動的平衡状態にあることは想像されるが,当然考え られる肝臓への道にも多くの疑問点があり,その機転は まだ未解決であり,今後の研究課題として残されてい

る。

        第4章 結   論

 1) ラットを用いて実験的肝障害時における血清アル ドラーゼ活性度の測定をSibley−Lehninger氏法によ り行ない次の結果をえた。

 2)正常ラヅトの血清アルドラーゼ活性度は16〜41,

平均27で,性別により差は認められない。また同一ラッ

トではかな.闊タ定した値がえられた。

 3) 四塩化炭素の腹腔内注射による実験的障害におい て,血清アルドラーゼが活性度は注射後10時間頃より上 昇し,注射後20時間前後で最高に達し.同60時間で正常 に復した。また最高時の活性度は正常値の約15倍強であ

る。

 4)クロロホルムの腹腔内注射による実験的肝障害で は,注射後24時頃より上昇し,同45時聞前後で最高に達 し,同120時間で正常に復し最高時の活性度は正常の約 12倍弱であった。

 5) }ウモuコシ食飼育では飼育日数100日までの観 察で,隔日に測定したが,対照群同様全て正常範囲にあ

軌活性度の上昇は認められなかった。

 6)実験的肝障害時における血清アルドラーゼ活性度 の.上昇は急性肝炎の臨床生化学的観察によると同様の傾 向を示した。

 7)血清アルドラーゼ値の上昇の程度は肝機能障害の 度抄いを知る指標にすることはできないが,肝実質障害 の度合いを知る指標にすることはできると思われる。

 稿を終るに臨み,終始御懇篤なる御指導御校閲を賜 わった松村義寛教授,藤野冷子助手に心から感謝すると 共に御協力御鞭鍵頂いた生化学教室各位に謝意を表しま

.す。また動物実験に関し御協力および御指導を頂いた薬 理学教室亀井博士に深謝いたします。

      文   献

 1) Warburg, O. and Christian,  W.: Biochim    Z, 51.4 399 (1943)

2) Dounce, A. and Thannhauser−Beyer, G.:

  J Biol Chem,175 160 (1948)

3) Sibley, J.A. and laehninger, A.: J Biol   Chem, 177 859 (1949)

4) Sibley, J.A. and Lehninger, A.: J Nat   Cancer lnst, 9 202 (1949)

5) Schapira, G., Dreyfus, J.C. and Schapira,

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6) Bruns, F. and Puls, W.: Klin Wschr,

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7) Volk, L.S., Losner, L.S., Aronson, S.M.

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9) Sibley, J.A. and Fleisher, G.A.: Proc.

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10) Dubs, P.: Schweiz. Med. Wschr., 73 (1952)

11) Forell, M.M. and Koller, F.: MUnch   Med Wschr, 55 (1953)

12)Heilmeyer, L。=最:新医学,1101550(昭30)

13) Eismann, J.: Deutsch. Med J Berlin., 10    (1956)

参照

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