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同種造血幹細胞移植における血清可溶性

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 小 林 寿 美 子

学 位 論 文 題 名

同種造血幹細胞移植における血清可溶性 IL ― 2 レ セプ ター値の動態に関する研究

学位論文内容の要旨

    I緒言

  血 清 可 溶 性IL2レ セ プ 夕‑a鎖 (血 清sIL‑2R)は ,T細胞 を 中心 とす る種 々の 細 胞表 面に 存在 し ,生 体 の免疫防御機構やT細胞系の活性化に伴い上昇する,移植片対宿主病(g raft・v ersus・host  dis ease; GVHD) は 同 種 造 血 幹 細 胞 移 植 に 起 こ り, これ を 克服 する こと は移 植 成績 向上 に重 要で あ る. しか し現 在 のと こ GVHDの 病 勢 把 握 , 発 症 予 知 , 治 療 効 果 判 定 に 定 量 性 や 客 観 性 の あ る 指 標 が な いた め, 免疫 反 応の 中 心 と な るT細 胞 系 の 活 性 を 反映 す る血 清sIL2R値 の変 動を 検 索す るこ とは 臨床 的 に有 用で ある と 考え ら れ る . そ こ で 同 種 造 血 幹 細 胞 移 植 後 のGVHDに お け る 血 清sIL‑2R値 の 臨 床 的 意 義 と移 植前 後に 投 与さ れ るサイトカインが血清sIL‑2R値に与える影響につい て検討した,

    II対象と方法

  同 種 造 血 幹 細 胞 移 植 を 実 施 し た38例 を 対 象 と し た , 症 例 の 内 訳 は 急 性 骨 髄 性 白血 病が11例 , 急性 リ ンパ 性自 血病jj,5例 ,慢 性骨 髄 性自 血病10例 ,急 性 混合 型白血病が1例,骨髄異形成症候群カヾ6例,3系統 に 異 形 成 を 認 め る 急 性 骨 髄 性 自血 病が1例 ,重 症再 生 不良 性貧 血が2例 ,非 ホジ キ ンリ ンパ 腫と 多 発性 骨 髄腫が各1例の計38例で ある.急性GVHDは21例に認められ(I度:12例,II度:5例,III度:2例,IV例:2例),

慢性GVHDは11例 (全 身型 :8例, 限局 型3例) に認 め た, 血清sIL2R値の観察時期は移植前,生 着時,急性 GVHD発 症 時 と 治 療 後 お よ び 慢 性GVHD発 症 時 と し た . 生 着 促 進 目 的 で 投 与 し た サ イ ト カ イ ン は 顆 粒 球 コロ ニー 刺激 因 子(GーCSF) が35例, マク 口 ファ ージ コロ 二 一刺 激因 子(M−CSF) 及び顆粒球/ マク□ファ ー ジ コ 口 二 ー 刺 激 因 子 (GM‑CSF) 使用 例 が各 々1例 ず つで あっ た. さ らに ,移 植後 の血 清sIL‑2R値 がG CSFの 投 与 や 免 疫 抑 制 剤 の 種 類 に よ っ て 影 響 を 受 け る か 否 か , ま た 移 植 前 に 投 与 さ れ たG‑CSFの 血 清 sIL‑2R値 へ の 影 響 に つ い て も 検 討 し た . 血 清sIL‑2Rの測 定方 法は ,2っの 異な る エピ トー プを 認 識す る モ ノ ク 口 ナ ー ル 抗 体 を 使 用 す る サ ン ド イ ッ チ 酵 素 免 疫 吸 着 法 に よ り 比 色 定 量 で 測 定 し た(C ellfree interleukin‑2 receptor bead assay kit,Cambridge社),血清G―CSF濃度はEIA法(CyclizerGーCSF,Kainos 社)により測定した(健 常人における正常値は126 +5.87pg/ml).検体は血清 に分離後,測定まで・40℃で 保 存 し , 血 清sIL‑2R値 の コ ン ト口 一ル にfま健 常人16名を 対象 とし た(3 41土81U/ml) ,統 計学 的 検討 は

‑ 113一

(2)

Student t‑testを用い,危険率5%以下を有意と判定した,

    III結果 1.生着前後の検討

  1)生 着時 の血 清sIL‑2R値:GーCSFを使 用した全例が急性GVHDの有無にかかわらず移植前(541土 349U/ml)に比較して血清sILー2R値は生着時に有意に高く(2,416土93 2U/ml)(pく0.01),検討しえた26例 中1例を除く25例が経過中の最高値を示した(1,080〜4,200 U/ml).前処置前および生着時における血 清sIL‑2R値と急性GVHDの発症に相関を認めなかった.

2) 移植 前の サイ トカイン投与の影響:移植前にG‑CSFを使用した3例 (1,263土181U/ml)における移 植前 血清sILー2R値はG−CSF未使 用例(368+一28U/ml,394土85 U/ml)に比して有意に高値を認めた(G‑

CSF;pくO.01).

3) 急性GV HD予防法の影響;急性GV HD予防法やG―CSF投与期間と血 清sIL‑2R値には有意差は認めな かった,

2.急性GVHD発症時期の検討

1) 急性GV HDを認 めた16例 は認 めな かっ た11例に比較して,発症時 において血清sIし2R値は有意に 高値であった(2,349士215 U/ml vsl,462+123 U/ml)(pく0.01).また急性GVHDI度とII度以上の群の比 較においても同様に有意差を認めた(2,114土271 U/ml vs2,852土651U/ml)(pくO.04),ー方急性GVHD を 認 め な か っ た11例 は , 移 植 後12週 目 で ほ ぼ 移 植 前 値 に 復 し て い た(541土67U/ml) . 2) 急性GV HD発症 とG−CSF使用 時期 :G−CSF投与後にGVHDを認めた10例の血清sIL−2R値は,G‑CSF 投 与中 にGV HDを 発症 した6例に 比し て有 意に低かった(1,834土614 U/mJ vs2,845+703U/ml)(pく 0. 01).

3.慢性GVHD発症時期の検討

  de novo type4例の発症前血清sIL‑2R値は急性GVHDのみを認めた群 のそれに比して有意に高かった

(pく0.02).全身型は限局型に比較して有意に血清sIL‑2R値は高値を認め(pくO.01),生死別では慢性 GVHD関連死3例は全例が全身型で あり,発症前値および治療後におし、ても生存8例と死亡3例に有意差 を認めた(662土125U/mll vs 290土172 U/ml)(pく0.01‑).

    IV考察

  同 種造血幹細胞移植後における血清sIL・2R値の変動は,生着時に全経過中の最高値を認め,生着時の 指標 になりうると考えられた.しかレこの現象は血清G・CSFの濃度と血清sIL‑2R値との間に正の相関 を 認め て おり ,外 因性 のG・CSFの影 響に よってもたらされる可能性 が示唆された,また同値は急性 GVHDの 重 症度 に→ 致し て高 値と なり ,特 にII度以上の急性GVHDにお けるモニタリングには有用性が 高い ことが示唆された.一方で移植前あるいは生着促進目的で投与されるG・CSFは,移植後早期に活性 化 され る 様々 な内因性サイ卜カインと影 響を及ぼし合い,T細胞系の 活性化のみならずサイトカイン ネッ トワークを介した調節機構から血清sIL・2R値の変動に影響していることが示唆された.慢性GVHD

114 ‑

(3)

の動態に関しては,先行する急性GVHDの有 無や変動値の差などから早期より高値を示し,治療後も高 値を持続する症例は予後不良であったこと から,発症の予知のみならず予後の推測にも利用できるこ とが示唆された.

    V結語

  同種造血幹細胞移植後における血清sIL‑2R値は,移植後の生着時に全経過中の最高値を認め,これは 外因性に投与されるG‑CSFが影響を及ぼすが,前処置や免疫抑制剤の投与内容とは無関係であった.急 性GVHDにおいては重症度に一致して上昇し ,G―CSFの影響がない時期の急性GV HDの発症予知は可能 であった,慢性GVHDでは発症の予知と治療効果判定,予後の推測など臨床的意義が高いと考えられた.

115ー

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

同種造血幹細胞移植における血清可溶性 IL ― 2 レセ プタ ー値の動態に関する研究

  血 清 可 溶 性IL‑2レ セ プ タ ー ロ 鎖 (sIL‑2R) は 生 体 の 免 疫 防 御 機 構 の 活 性 化 や 、T 細 胞 系 の 活 性 に 伴 い 上 昇 す る た め 、 同 種 造 血 幹 細 胞 移 植 後 の 移 植 片 対 宿 主 病

(Graft‑Versus―Host Dis ease;GVHD) に お い て 変 動 す る と 考 え ら れ る 。GVHDの 病 勢 把 握 、 発 症 予 知 、 治 療 効 果 判 定 に は 定 量 性 や 客 観 性 のあ る 指標 が な いた め 、免 疫 反 応 の 中 心 と な るT細 胞 系 の 活 性 を 反 映 す る と 考 えら れ る 血清sIL・2R値 の変 動 を 検 索 レ 、 臨 床 的 意 義 に つ い て 臨 床 的 検 討 を 行 っ た 。38例 の 同 種 造 血 幹 細 胞 移 植 例 を 対 象 と レ 、 血 清sIL‑2Rの 測 定 は 前 処 置 前 、 生 着 時 、 急 性GVHD発 症 時 期 お よ び 治 療 後 、 慢 性GVHD発 症 時 期 と し た 。 生 着 促 進 目 的 で 投 与 し た サ イ ト カ イ ン は 顆 粒 球 コ 口 二 ー 刺 激 因 子 (G‑CSF) が35例 で あ っ た 。 さ ら に 、移 植 後 の血 清sIL‑2R値 がG・ CSFの 投 与 や 免 疫 抑 制 剤 の 投 与 の 違 い に よ っ て 影 響 を 受 け る か 否 か に つ い て も 検 討 し た 。 血 清sIL−2Rの 測 定 方 法 は 、2っ の 異 な る エ ピ ト ー プ を 認 識 す る モ ノ ク 口 ナ ー ル 抗 体 を 使 用 す る サ ン ド イ ッ チ 酵 素 免 疫 吸 着 法 に よ り 比色 定 量で 測 定 した 。 同種 造 血 幹 細 胞 移 植 後 に お け る 血 清sILー2R値 の 変 動 は 、 生 着 時 に 全 経 過 中 の 最 高 値 を 認 め 、 生 着 時 の 指 標 に な り う る と 考 え ら れ た 。 し か レ こ の 現 象 は 血 清G・CSFの 濃 度 と 血 清sIL‑2R値 と の 間 に 正 の 相 関 を 認 め て お り 、 外 因 性 のG‑CSFの 影 響 が 大 き い こ と が る 示 唆 さ れ た 。 ま た 同 値 は 急 性GVHDの 重 症 度 に 一 致 し て 高 値 と な っ た 。 慢 性GVHDに つ い て は 、G‑CSFの 影 響 が 少 な い た め 、 発 症 の 予 知 と 治 療 効 果 判 定 に 有 用 な 結 果 が 得 ら れ 、 予 後 の 推 測 な ど 臨 床 的 意 義 が 高 い と 考 え ら れ た 。   公 開 発 表 に 際 し て 、 副 査 の 小 児 科 の 小 林 教 授 か ら 、G‑CSF使 用 の 有 無 に よ る 血 清sIL‑2R値 の 変 動 は ど う か と の 質 問 が あ っ た 。 申 請 者 は 、G‑CSFの 未 使 用 例 で は 生 着 時 に 血 清sIL―2R値 の 上 昇 は 認 め ら れ な か っ た が 、 急 性GVHDが 発 症 す る 例 で は

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上昇を示したと答えた。続いて、慢性GVHD の皮膚病変の改善時期での血清sIL ―2R 値の推移についての質問があった。申請者は、特に全身型の慢性GVHD の場合には 病 態 の 改 善 と 此 例 レ て 改 善 す る の で 有 用 と 思 わ れ る と 答 え た 。 次いで副査の加齢制御医学の今村教授から、何故生着時期において血清sIL‑2R 値 上昇を起こすのかについての質問があった。申請者は、生着時の主な細胞は骨髄系 の幼若な細胞で、これらがsIL ー 2R を発現していることにより、血清sIL‑2R 値上昇 の主体になりうると思われると答えた。続いて、より重症の急性GVHD では血清 sIL‑2R 値はどのように変動するのかという質問があった。申請者は、今回の重症 急性GVHD 症例は 5 例と少数でああったため、検討の余地はあるものの、他の文献 と合わせて重症度に一致レて高値を認めると答えた。続いて、モノク口ーナル抗体 を使用したGVHD 治療への応用に関する質問があった。申請者は、生着時に血清 sIL‑2R 値が5 ,OOOU/ml を超え、高値を持続するような場合には重症急性GVHD の頻 度が高まると予測されるので、このような場合には予防投与する価値が高いのでな いかと答えた。最後に、主査の第3 内科の浅香教授から、同種移植後のG‑CSF 使 用時のみに血清sIL‑2R 値が上昇する機序についての質問があった。申請者は、allo reactlve な T 細 胞 の 活 性 化 が血 清 sIL ― 2R 値上昇 に強 く関与 する と答え た。

   本研究は、同種造血幹細胞移植における血清 sIL‑2R 値の動態を検討し貴重な知

見を得たものであり、GVHD 発症予知や治療のモニタリング、予後の推測に応用可

能で、臨床的有用性が高いと考えられた。審査員一同は、これらの成果を高く評価

し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものとした。

参照

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