12月13日講義参考資料
注意:
• このノートはホームページ
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/ shimizu/LectLB2017.html
(google検索:「清水達郎」+「RIMS」+「線形代数」)から ダウンロードできます.ただし講義の内容と一致するとは限 りません.
• 左に太線を引いてあるところは必ずしも理解する必要はあり ません.
定義3.30. V =W1⊕ · · · ⊕Wkを直和分解とする.任意のi̸=jと 任意のwi∈Wi, wj ∈Wjについて
(wi, wj) = 0
を満たすとき,V =W1⊕ · · · ⊕Wkを直交直和分解という.
V =W1⊕ · · · ⊕Wk を直交直和分解とする.各iについてWiの 正規直交基底をひとつとりBi={wi1, . . . , wki
i}とする.
補題3.31. B:=B1∪ · · · ∪BkはV の正規直交基底である.
Proof. 明らかに(wia, wbj) =δabδij*1である.
線形部分空間W ⊂ V の正規直交基底u1, . . . , uk をひとつとり,
それを延長して(必要なら直交化して)V の正規直交基底u1, . . . , un
を得る.
補題3.32. W⊥=⟨uk+1,· · ·, un⟩.
Proof. W⊥⊂ ⟨uk+1,· · ·, un⟩. V の任意の元vはv=a1u1+· · ·+ anunのように書ける.v ∈W⊥とすると,任意のi= 1, . . . , kにつ いて(v, ui) =ai= 0であるのでv∈ ⟨uk+1,· · ·, un⟩.
W⊥⊃ ⟨uk+1,· · · , un⟩. 任 意 の ak+1uk+1 + · · · + anun ∈
⟨uk+1,· · · , un⟩ に 対 し ,任 意 の a1u1 + · · · + akuk に 対 し て (ak+1uk+1 + · · · + anun, a1u1 + · · · + akuk) = 0 な の で , ak+1uk+1+· · ·+anun∈W⊥.
補題3.33. V =W⊕W⊥.
Proof. 補題3.32の表示を用いて,W∩W⊥ ={0}, W+W⊥ =V を確かめればよい.
命題3.34. (W⊥)⊥=W.
*1a=bかつi=jの時に限り1,それ以外は0ということ.すなわち正規直交.
Proof. 補題3.32より明らか.
引き続きW ⊂V を線形部分空間とする.直和分解V =W⊕W⊥ において,v∈V はw∈W とw′ ∈W⊥を用いてv =w+w′と書 けるとする.写像
pW :V →W, p(v) =w をW 方向への正射影という.
W の正規直交基底u1, . . . , ukをひとつとると,pW を具体的に表 示できる:
補題3.35. pW(x) =∑k
i=1(x, ui)ui. 証明の方針. ∑
i(x, ui)ui ∈ W は明らかであるので,あとは x−
∑
i(x, ui)ui ∈W⊥を示せばよい.すなわち任意のy ∈W について (x−∑
i(x, ui)ui) = 0を示す.そのためにはすべてのyについて示 さなくても各ujたちについて(x−∑
i(x, ui)ui, uj) = 0を見れば十 分であった.(x−∑
i(x, ui)ui, uj) = 0は明らかであろう.
補題3.36. 正射影は線形写像である.
Proof. 上の補題から明らか.
3-6. 直交行列,ユニタリー行列
直交行列
Rn を標準内積をもった数ベクトル空間とする.実正方行列A ∈ Mn(R)から定まる線形写像
fA:Rn →Rn, x7→Ax
が内積を保つとは,任意のx, y ∈Rnに対して (Ax, Ay) = (x, y)
を満たすことをいう.
定義 3.37. fA : Rn → Rn が内積を保つようなA ∈ Mn(R)を 直交行列という.
定義3.38. A= (aij)i,j∈Mn(R)に対し,AT := (aji)i.j∈Mn(R) をAの転置行列という.
補題3.39. (1) (AT)T =A, (2) detAT = detA,
(3) trAT = trA.
命題3.40. A∈Mn(R)が直交行列であることとATA=AAT =In
であることとは同値である.
Proof. (fA(x), fA(y)) = (x, y) for anyx, y∈Rn
⇔(Ax, Ay) = (x, y) for anyx, y ∈Rn
⇔xTATAy=xTy for anyx, y∈Rn
⇔ATA=In.
系3.41. Aが直交行列なら|detA|= 1である.
ユニタリー行列
Cnを標準エルミート内積をもった数ベクトル空間とする.複素正 方行列A∈Mn(C)から定まる線形写像
fA:Cn →Cn, x7→Ax が内積を保つとは,任意のx, y ∈Cnに対して
(Ax, Ay) = (x, y)
を満たすことをいう.
定義 3.42. fA : Cn → Cn が内積を保つようなA ∈ Mn(C)を ユニタリー行列という.
定義 3.43. A= (aij)i,j ∈Mn(C)に対し,A∗ :=AT = (aji)i.j ∈ Mn(C)をAの随伴行列という.
補題3.44. (1) (A∗)∗=A, (2) detA∗= detA, (3) trAT = trA.
命題 3.45. A ∈ Mn(R)がユニタリー行列であることとA∗A = AA∗=Inであることとは同値である.
Proof. (fA(x), fA(y)) = (x, y) for anyx, y∈Cn
⇔(Ax, Ay) = (x, y) for anyx, y ∈Cn
⇔xTATAy=xTy for anyx, y∈Cn
⇔ATA=In
⇔ATA=In
⇔A∗A=In.
系3.46. Aがユニタリー行列なら|detA|= 1である.
Proof. 1 = det(A∗A) = detA∗detA = detAdetA = |detA|2.
4 固有値と固有ベクトル,行列の対角化
4-1. 固有値と固有ベクトル
A∈Mn(C) =Mn,n(C)をn次正方行列とする.複素数λ∈Cと 0でないベクトルxλ∈Cnが
Axλ=λxλ
を 満 た す と き ,λ をA の固有値,xλ を A の 固 有 値 λに 属 す る 固有ベクトルという.λxλ = λInxλ ともかけるので,上の式は次 のように言い換えることもできる:
(A−λIn)xλ= 0
補題 4.1. λ ∈ Cに対し,∃xλ ∈ Cn s.t. (A−λI)xλ = 0 ⇔ det(A−λI) = 0.
定義4.2. det(λI−A)をλの多項式と見たものを,Aの固有多項式 という.
固有多項式の定義からわかるように,固有多項式の解が固有値で ある.したがってn次正方行列の固有値は最大でn個である.
補題4.3. A∈Mn(C)の固有多項式の根*2をλ1, . . . , λnとするとき,
λ1+· · ·+λn= trA, λ1· · ·λn= detA.
証明は固有多項式を因数分解すればわかる(いわゆる 解と係数の 関係 ):
|λIn−A|= (λ−λ1)· · ·(λ−λn).
例. [問] (解説) A=
( a b c d
)
∈M2(C)の固有多項式は
|λI2−A|=λ2−(a+d)λ+ (ad−bc)
である.よって固有値は λ+±= ((a+d)±√
(a+d)2−4(ad−bc))/2∈C の2つ(判別式が0のときは1つ)である.たとえ行列の成 分はすべて実数であっても,固有値は実数とは限らない.固有 値λ±に属する固有ベクトルを求めるには,連立方程式
(A−λ±I2)xλ± = 0
を解けばよい.一般に,固有値λに属する固有ベクトルをすべ て集めると線形部分空間になっていて,それをλの固有空間 という.定義4.4参照.
*2すべて固有値だが,重複もある.
(1) A= (
1 1 0 2
)
∈M2(C)の固有多項式と固有値,さらに各固 有値の固有空間を求めよ.
(2) A= (
1 1 0 0
)
∈M2(C)の固有多項式と固有値,さらに各固 有値の固有空間を求めよ.
(3) A= (
2 −1
−4 2 )
∈M2(C)の固有多項式と固有値,さらに 各固有値の固有空間を求めよ.
(4) A=
1 1 0 0 2 0 0 0 i
∈M3(C)の固有多項式と固有値,さらに 各固有値の固有空間を求めよ.
定義4.4. A∈Mn(C)の固有値λについて,
Wλ={xλ∈Cn|(A−λIn)xλ= 0} ⊂Cn をλの固有空間という.
補題4.5. 固有空間は線形部分空間である.
Proof. 一つの証明方法は,A−λInを左から掛けるという写像が線
形写像であることを用いるもの.その線形写像の核(ker)がλの固 有空間である.他の証明として加法・スカラー倍について閉じている ことを確かめてもよい.
命題 4.6. A ∈ Mn,n(C)が相異なる固有値λ1, . . . , λnを持つとす る.各λiに属する固有ベクトルxi ∈Cn をひとつづずつ任意にと る.このときx1, . . . , xnはCnの基底である
Proof. 線形独立であることを示せばよい*3.a1x1+· · ·+anxn = 0 を0を表す線形結合とする.iをひとつ固定する.
0 = (A−λ1In)· · ·(A−λi−1In)(A−λi+1In)· · ·(A−λnIn)(a1x1+· · ·+anxn)
= (A−λ1In)· · ·(A−λi−1In)(A−λi+1In)· · ·(A−λn−1In−1)((λ1−λn)a1x1+· · ·+ (λn−1−λn)an−1xn−1)
= (A−λ1In)· · ·(A−λi−1In)(A−λi+1In)· · ·(A−λn−2In−2)
((λ1−λn−1)(λ1−λn)a1x1+· · ·+ (λn−2−λn−1)(λn−2−λn)an−2xn−2)
=· · ·=
= (λi−λ1)· · ·(λi−λi−1)(λi−λi+1)· · ·(λi−λn)aixi.
λ1, . . . , λn はすべて相異なるのだったから,ai = 0.同様にして a1 = · · · = an = 0がわかるので,x1,· · · , xn は線形独立であ る.
ひきつづきA∈ Mn,n(C)が相異なる固有値λ1, . . . , λn を持つと する.各λiに属する固有ベクトルxi∈Cnをひとつづずつ任意にと る.このときX :={x1, . . . , xn}はCn の基底なのであった.線形 写像
fA:Cn→Cn, v7→Av
の基底Xに関する表現行列をAXとする.表現行列の定義から,
(f(x1), . . . , f(xn)) = (x1, . . . , xn)AX.
各xiが固有ベクトルであることから,
(f(x1), . . . , f(xn)) = (Ax1, . . . , Axn)
= (λ1x1, . . . , λnxn)
= (x1, . . . , xn)
λ1
. .. λn
.
よって
命題4.7. A∈Mn(C)が相異なるn個の固有値持つとき,異なる固 有値に属する固有ベクトルをならべた基底によるfAの表現行列は対 角行列である.
予習:参考書 8.1節 ( 対角化 ) .
*3Cnの線形独立なn個の元は生成系になり,したがって基底となるのだった.