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論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

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Academic year: 2021

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別紙1

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

報告番号 甲 第

3240

篠原

論文審査担当者

主査 教授 美島 健二 副査 教授 高見 正道

副査 教授 荒木 和之

(論文審査の要旨)

論文題名「Time-dependent dynamics required for degradation and restoration of vascular endothelial glycocalyx layer in LPS-treated septic mice」

掲載雑誌名:CHEST(投稿中)

上記の主査1名、副査2名が個別に審査を行った。

本論文では、 血管内皮表層に存在するグリコカリックス層(GCX)が健常状態から病態変化し,その後 回復までの過程を様々な指標をもとに調べGCXの時間依存的ダイナミクスを解明することを目的とした。

LPS(lipopolysaccharide)投与により誘導したマウス敗血症モデルを使用し、全身指標として体重、血圧、

GCXの崩壊マーカーとして知られる血漿中のsyndecan-1(CD138)濃度を測定した。結果として、LPS投与前 と比較して投与後24時間後に血漿中syndecan-1濃度は最高値、GCXの厚みは最低値を示し、GCXの薄弱化 を示した。またローリング白血球が有意に増加した。これらの変化は48時間後にはLPS投与前値に戻った ことから、GCXの傷害が48時間以内に回復したことが示唆された。一方で体重と血圧においても有意な変 化が認められたが回復までに3~4日を要した。LPS投与敗血症モデルでは投与後24時間でGCXの崩壊が 発生し、その後24時間以内に再生され、生体の恒常性回復に重要な役割を担っていることが示唆された。

本論文の審査において、副査の高見委員および荒木委員から多くの質問があり、その一部とそれらに対 する回答を以下に示す。

高見委員の質問とそれらに対する回答:

1.LPS投与前後の血管の組織切片を作製し、GCXを検出すべきではないか?

(組織切片で抗体染色(シンデカン-1)を行うことは考えたが、抗シンデカン‐1抗体を用いた免疫組織化 学染色に関する先行研究が乏しく、参考になる事例がみられなかった。抗体は市販されていることが分か ったので次の段階でパラフィン切片による免疫組織化学染色の条件検討を始めたかったが、そこまで到達 することができなかった。GCXが病態変化により減少し、回復により増加するデータが本研究ではGCX 厚み(TI)の測定データのみであったため、組織化学染色像が得られれば信憑性が増す論文になったと考え る。他に生体顕微鏡下観察で血管内にエバンスブルーやアルシアンブルーを注入しGCXの観察を行う方法 もあるが、健常時と病態時の変化を比較するのは難しそうだが検討しても良かったと考える。)

2.GCXがどの程度回復すれば全身の回復をもたらすと考えるか。

(本研究ではGCXの回復をLPS投与前の測定データ(血漿中シンデカン-1濃度、GCXの厚み、白血球-血管内

皮接着数)と比較して回復しているとみなしていた。全身の回復をもたらすために必要なGCXの構造的な回 復としては構成成分グリコサミノグリカンにより水を多く含む層に内包されていた血管内皮細胞表層の受

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容体や血漿蛋白質が露出していた状態から再び内包されている時であると考える。) 3. この研究が歯科医療、歯科医学に資するのはどのような点か。

(口腔内において歯周病菌はグラム陰性細菌のためで細胞表層にLPSを持つ。本研究で使用したLPSは大 腸菌Escherichia coli O26 B6由来であるため構造は異なるが、どちらにおいても存在し増殖すること が体内への悪影響となる。GCXの崩壊予防や回復促進に寄与する治療法探索としてLPSに対してアプロー チし病態が悪化しないようにする薬剤の開発を行えば歯科医療にも貢献できると考える。)

荒木委員の質問とそれらに対する回答:

1.白血球-血管内皮粘着数の測定で蛍光標識を2種類投与し、その撮影間隔を8秒に設定した理由は。

(予備実験で撮影間隔を3パターン(5,8,10秒)行い、一番わかりやすく粘着白血球とローリング白血球示

すことができたのが8秒であった。)

2.血管透過性の変化が先行研究と異なった理由は。

(一番の理由はLPSの投与量と考えています。先行研究ではLPS4mg/kg投与し血管透過性を認めました

が死亡率が高く本研究では2mg/kgとしました。他にも観察に使用した光学顕微鏡が異なることやLPS Lot番号の違いもあげられますが、一番の要因はLPSの投与量と考えています。)

3. 敗血症病態の再現でLPSを使用した理由は。

(敗血症病態の再現はLPS、CLP(盲腸結紮穿刺法)、大腸菌の投与などが挙げられますがマウスの系統に より効果に差があり、本研究で使用したBALB/cマウスにはCLPで効果を認めずLPSを使用しました。)

両副査は、上記を含めた質問に対する回答が、いずれも満足のいくものであることを確認した。

主査 美島委員の質問とそれらに対する回答:

1.グリコカリックス(GCX)の障害と回復のメカニズムは?

(敗血症や虚血再灌流障害によりTNF-αやIL-1β、IL-6GCXなどの炎症性サイトカインや活性酸素種が増

加し、これらはGCXの構成成分を分解する酵素を活性化させるとされている。その一つである白血球から 放出されるエラスターゼやマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は血管内皮細胞膜から直接シンデカン -1などのプロテオグリカンを切断しGCXは容易に障害され血中に遊離するとの報告があり、本研究で見 られた結果においてもこれらのメカニズムに基づいたものであると考えられる。なお、障害後の回復過程 については、本研究では48時間後に回復していることを認めたが、血管内皮細胞から構成成分の再生が 行われたのか、血液成分中の血漿成分から補われたのかなどのメカニズムに関してはまったく報告がない ため、GCX研究の今後の課題である。)

2.敗血症モデルで白血球が血管内皮に接着する際のGCXの役割について答えよ。

(白血球の粘着は白血球上のインテグリン分子と血管内皮細胞上のICAM-1、VCAM-1接着分子との結合に より行われる。GCXは構成成分のグリコサミノグリカンにより水を多く含む層を血管内皮細胞表層に作 っている。これは健常時に血管内皮細胞上の接着分子を内包し白血球との粘着を制御している。しか し敗血症モデルにおいてGCXは破壊されてしまい接着分子が露出し白血球との粘着が発生してし

まう。GCXの役割としては白血球の血管内皮粘着を制御するため必要なものである。)

主査の美島委員は、両副査の質問に対する回答の妥当性を確認するとともに、本論文の主張をさらに 確認するために上記の質問をしたところ、明確かつ適切な回答が得られた。

本論文は本学大学院学位論文(博士)審査基準を満たしており、学位論文に値すると判断した。

(主査が記載)

参照

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