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福岡工業大学社会環境学部社会環境学科 : 准教授

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

ステファン・レンケンス著『私的ガヴァナンスと公 的権威 : グローバル経済における持続可能性を制御 する』

渡邉, 智明

福岡工業大学社会環境学部社会環境学科 : 准教授

https://doi.org/10.15017/4377856

出版情報:政治研究. 68, pp.85-92, 2021-03-31. 九州大学法学部政治研究室 バージョン:

権利関係:

(2)

書 評

ステ ファ ン・ レン ケン ス著

﹃私 的ガ ヴァ ナン スと 公 的権 威︱

︱グ ロー バル 経済 にお ける 持続 可能 性を 制 御す る︱

︱﹄

S t e f a n R e n c k e n s . P r i v a t e G o v e r n a n c e a n d P u b l i c A u t h o r i t y : R e g u l a t i n g S u s t a i n a b i l i t y i n a G l o b a l E c o n o m y . C a m b r i d g e U n i v e r s i t y P r e s s , 2 0 2 0 . X i v + 3 1 4 p p .

渡 邉 智 明 近年

︑人 権︑ 環境 に関 する グロ ーバ ル・ ガヴ ァナ ンス にお いて

︑非 国家 主体 は︑ 国家 や国 際機 構な どの 公的 なア クタ ー に協 力す るだ けで なく

︑自 らル ール や規 制を 制定 する など

︑ 積極 的に 制度 的秩 序を 形成 しう る存 在と なっ てい るこ とが 注 目さ れて きた

︒I SO

︵国 際標 準化 機構

︶を はじ め︑ 非国 家 主体 によ る認 証︑ 規格 とい うル ール が権 威化 し︑ 多国 籍企 業︑ 国家 の行 動を 方向 づけ るプ ライ ヴェ ート

︵私 的︶

・ガ ヴァ ナン スを 形成 し︑ 国際 秩序 が多 様化 して いる

︒ 私的 ガヴ ァナ ンス で中 心と なる 認証 とは

︑非 国家 主体 が予

め定 める 規格 に基 づき

︑企 業等 が自 主的 に行 う環 境や 人権 等 に対 する 配慮 行動 や手 続き につ いて

︑第 三者 機関 が担 保︑ 認 証す る仕 組み であ る︒ この よう な民 間認 証を はじ めと する

︑ グロ ーバ ルな サプ ライ

・チ ェー ンに 影響 を及 ぼし 問題 解決 を 図る 試み は︑ 特に

﹁市 場志 向型 非国 家ガ ヴァ ナン

(

)

﹂と 呼ば れて いる

︒グ ロー バル 化が 進む 今日

︑一 国に おけ る規 制だ け では 十分 な効 果を もた らす こと がで きな い︒ 今や

︑生 産か ら 消費 まで の過 程は

︑国 境を 越え たグ ロー バル なサ プラ イ・ チェ ーン によ って 担わ れて いる から であ る︒ 環境 問題 に対 して

︑認 証製 品の 流通 を拡 大さ せる こと で環 境負 荷の 低減 を目 指す

︑と いう この 市場 活用 型の アプ ロー チ は︑ ステ イク ホル ダー にと って 受け 入れ やす いも のと 言え る︒ 環境 認証 はあ くま で自 主的 なも ので あり

︑環 境負 荷の 高い 製 品の 流通 を禁 止す るな ど強 権的 な規 制的 手法 に比 べて

︑ス テ イク ホル ダー の行 動判 断の 余地 が広 がる から であ る︒ 現在

︑ サス テイ ナビ リテ ィ︵ 持続 可能 性︶ に関 する グロ ーバ ルな 民 間認 証ス キー ムは

︑森 林︑ 漁業

︑農 産物 など の多 くの 分野 に おい て設 立さ れて いる

︒そ して

︑認 証が 普及 して ゆく につ れ︑ 市場 に対 する 影響 を拡 大し つつ ある

︒現 在︑ 国家 や国 際機 関 は︑ その 役割 に注 目し

︑法 的規 制の 遵守 の指 標や 公共 調達 の 基準 とす るな どの 例が 見ら れる よう にな って い(

)

(3)

この よう に公 私の 制度 が一 種の 協力 関係 を構 築す るよ うに なっ てい るも のの

︑ど のよ うな 場合 に︑ 国家

︑国 際機 構な ど の公 的権 威は

︑私 的ガ ヴァ ナン スに 関わ ろう とす るの であ ろ うか

︒こ の問 いに 答え よう と試 みた のが

︑本 書で ある

︒本 書 でレ ンケ ンス は︑ 理論 的視 座を 提示 しな がら

︑公 的な 権威 が 私的 ガヴ ァナ ンス

・ス キー ムに

﹁介 入︵ 介在

︶﹂

︵i nt er ve nt io n︶ を試 みる 条件 を明 らか にし よう とし てい る︒ 本書 は︑ 以下 の七 つの 章か ら構 成さ れて いる

︒問 題背 景や 本書 の理 論的 仮説 を提 示す るの は︑ 第一 章︑ 第二 章で ある

︒ 第三 章以 降で は︑ 有機 農業

︵第 三章

︶︑ バイ オ燃 料︵ 第四 章︶

︑ フェ アト レー ド︵ 第五 章︶

︑漁 業︵ 第六 章︶

︑と いっ た︑ EU

︵欧 州連 合︶ の各 事例 を検 証し てい る︒ そし て︑ 第七 章で は︑ それ らの 分析 を評 価︑ 総括 し︑ 結論 をま とめ てい る︒ まず 第一 章で

︑著 者は

︑﹁ 公的 な権 威が

︑私 的ガ ヴァ ナン ス を規 制し よう とす る条 件と は何 か﹂

︑﹁ これ らの 規制 的な 介入 はど のよ うな 形態 をと るの か﹂

︑﹁ その よう な介 入が

︑私 的ガ ヴァ ナン スの 本質 や機 能︑ さら に大 きな 政策 分野 にと って の 示唆 とは どの よう なも のか

﹂と いう 問い を設 定す る︒ そし て︑ 持続 可能 性に 関連 する 政策 領域 の事 例の 検証 を通 じて

︑公 私 のガ ヴァ ナン スの 交錯 を明 らか にし よう とす る︒ 著者 は︑ 多 様な 事例 を一 貫し た理 論枠 組み によ って 説明 する こと を試 み

る︒ 第一 章の 理論 的枠 組み は︑ 第二 章に おい て詳 述さ れる

︒ 以下 では

︑二 つの 章で 提示 され た分 析視 角を 追っ てい こう

︒ レン ケン スは

︑E Uの 私的 ガヴ ァナ ンス への 関与 を以 下の 二つ の変 数の 相互 作用 によ って 説明 する

︒第 一の 変数 は︑ 規 制的 な関 与が

︑持 続可 能性 を担 保し た製 品の 差別 化を 明示 す るこ とに よっ て国 内の 生産 者に 提供 する 利益 であ る︒ 環境 認 証を 取得 した 製品 は︑ 環境 配慮 とい う点 で︑ 他の 製品 と差 別 化を 行う こと がで きる

︒し かし

︑こ れら 認証 を取 得す る上 で︑ 生産 者は

︑手 続き への 対応 や審 査に 関わ る金 銭的 負担 を余 儀 なく され る︒ しか し︑ 例え ば︑ EU にお いて

︑こ れら の認 証 が義 務付 け︑ ある いは 優遇 され れば

︑認 証製 品は 非認 証製 品 に対 して 市場 にお ける 競争 で優 位と なり うる

︒逆 に︑ 民間 認 証の 求め る水 準が 高す ぎれ ば︑ 国内 の生 産者 に不 利に なる た め︑ 介入 が魅 力的 とな るか もし れな い︵ 三三 頁︶

︒ 第二 の変 数は

︑公 的な 関与 が︑ 私的 ガヴ ァナ ンス の市 場の 断片 化︵ fr ag me nt at io n︶ が生 じる 問題 を解 決で きる 程度 であ る︒ 現在

︑ナ ショ ナル

︑リ ージ ョナ ル︑ グロ ーバ ル・ レベ ル それ ぞれ にお いて 多く の民 間認 証ス キー ムが 設立 され てい る︒ 認証 スキ ーム の設 立を 後押 しし たN GO

︵非 政府 組織

︶ や︑ 生産 者の 業界 など

︑ス テイ クホ ルダ ーが 関与 する よう に なっ た経 緯や 背景 は異 なっ てい る︒ その ため

︑そ れぞ れの 認

(4)

証ス キー ムの 質︑ 厳格 さや 範囲

︑対 象と する 生産 者の タイ プ は異 なっ てい る︒ 私的 ガヴ ァナ ンス

・ス キー ムの 断片 化は

︑ 域内 統一 市場 とい う点 から EU 当局 にと って 必ず しも 好ま し いも ので ない し︑ 環境 ラベ ルが 多く 存在 する 場合

︑生 産者 と 消費 者の 間で 持続 可能 性に つい て正 確な 情報 が共 有さ れな い︒ また

︑生 産者 は︑ 自ら の都 合の よい 認証 を取 得し よう と する かも しれ ない し︑ 各々 の認 証が どう 異な って いる かが 不 明確 な場 合︑ 認証 の取 得の 判断 が難 しく なる

︵三 五頁

︶︒ これ らの

﹁情 報の 非対 称性

﹂の 解消 は︑ 公的 な介 入へ の動 機づ け とな ると 指摘 する

︒ま た︑ 民間 認証 の断 片化 は︑ 貿易 およ び 競争 を歪 める 恐れ があ り︑ それ も介 入の 契機 とな ると みる

︒ すな わち

︑特 定の 加盟 国に おい て設 立さ れた 認証 が︑ 他の 国 の市 場へ のア クセ スを 妨げ たり

︑他 国で また 別の 認証 を取 得 する 必要 性を 生じ させ たり する から であ る︒ これ らの 独立 変数 に対 し︑ 従属 変数 に相 当す るの が︑ EU の関 与の 形態 であ る︒ これ は︑ 私的 ガヴ ァナ ンス の二 つの 特 質と 大き く関 わっ てい る︒ 第一 に︑ ビジ ネス にと って 適切 な 行動 につ いて の標 準を 設定 する

﹁標 準規 制﹂ であ る︒ 標準 規 制は

︑単 に生 産過 程を めぐ る実 質的 なル ール 形成 だけ でな く︑ 標準 の遵 守に つい て広 く関 心あ る人 々と 対話 する こと を求 め る公 的権 威の

﹁介 入﹂ を含 むと され る︒ これ は持 続可 能性 の

定義 や異 なる 認証 を調 和さ せる 秩序 の形 成に 資す ると いう

︒ 第二 は︑

﹁手 続規 制﹂ であ る︒ これ らの 手続 きに は︑ 私的 ガヴ ァ ナン ス・ スキ ーム が実 質的 な自 らの 標準 を発 展︑ 改定 する た めに とっ てい る慣 行︑ 私的 スキ ーム を構 成す るメ ンバ ーシ ッ プ︑ 私的 スキ ーム と実 質的 な標 準を 遵守 する こと を追 求す る 企業 との 関係

︑私 的ス キー ムと その 遵守 を検 証す る認 証監 査 者と の関 係︑ 監査 者の 認定 も含 まれ る︵ 二七 頁︶

︒こ れら の介 入は

︑私 的ガ ヴァ ナン スに 対し て︑ 彼ら のル ール や慣 行の 再 調整 を通 じて

︑私 的ガ ヴァ ナン スを 再構 築す ると いう 点で 重 要だ が︑ 他方 で︑ 私的 スキ ーム の規 制的

・統 制的 な権 威を 損 なう とい う点 があ ると する

︒そ の上 で︑ 著者 は︑ 公的 介入 の 四つ の形 態を 提示 する

︒す なわ ち︑ 断片 化や 差別 化に よる 国 内利 益が 低い 場合 には

︑規 制は 行わ れず

︑断 片化 が高 いも の の︑ 国内 利益 が低 い場 合に は手 続規 制︑ 断片 化が 低い が国 内 利益 が高 い場 合に は標 準規 制︑ いず れも 高い 場合 には 手続 規 制︑ 標準 規制 とも に導 入さ れる とす る︵ 八九 頁︶

︒ 第二 章で は︑ 私的 ガヴ ァナ ンス

・ス キー ムを 利益 集団 とと らえ る視 角に つい て論 じら れて いる

︒こ こで は︑ 私的 ガヴ ァ ナン ス・ スキ ーム は従 来の 利益 集団 と異 なる こと が指 摘さ れ る︒ 第一 に︑ 私的 スキ ーム は︑ 持続 可能 性に 関す るル ール と 検証 手続 きに 関す る政 策関 連情 報を 提供 でき る点 であ る︒ ま

(5)

た︑ 私的 ガヴ ァナ ンス は︑ アク ター が従 うべ き特 定の ルー ル やガ ヴァ ナン スを 提示 する

︒第 二に

︑他 の利 益集 団は 組織 と して の生 き残 りに 関心 を持 つの に対 して

︑私 的ガ ヴァ ナン ス は︑ ルー ル形 成統 括者 とし て生 存す るこ とを 目指 す点 であ る︒ この よう に︑ 私的 ガヴ ァナ ンス

・ス キー ムが 自身 の政 治的 環 境を 変容

︑調 整し てい こう とす る主 体で ある とす る︒ そし て︑ 先の 二つ の変 数の 相互 作用 の中 で生 じた 公的 介入 の具 体的 な 有り 様は

︑利 益団 体で ある 私的 ガヴ ァナ ンス

・ス キー ムの ロ ビー イン グに よっ て大 きく 左右 され ると いう

︒ 第三 章以 下で は︑ EU の具 体的 な介 入の 事例 が︑ 理論 的枠 組み に基 づい て検 討さ れて いる

︒ま ず第 三章 では

︑有 機農 業 政策 の展 開を 検討 して いる

︒E Uの 有機 農業 政策 にお ける 私 的ガ ヴァ ナン スへ の介 入は

︑一 九九 一年 の有 機農 業規 則か ら はじ まる

︒こ の規 則は

︑有 機農 業産 品を 生産 過程 の本 質で 定 義し てお り︑ 手続 規制 およ び標 準規 制を 含む もの であ った

︒ この 後︑ 二〇

〇七 年の 理事 会規 則に 至る まで

︑公 的な 関与 を めぐ る政 治過 程が 展開 され る︒ この 間︑ 認証 の基 本的 な水 準 を担 保す るべ くI SO 規格 への 準拠 や︑ 認証 間の 調和 化の た めロ ゴが 義務 化さ れた

︒こ の公 的な 介入 は︑ ヨー ロッ パで も 有機 農業 に対 する 消費 者の 関心 の高 まり によ って 市場 が拡 大 しつ つあ った こと を踏 まえ

︑域 内の 生産 者に 対し て新 たな 経

済的 機会 を創 出す るこ とが でき ると 考え られ たこ とが 影響 し てい た︒ また

︑私 的ガ ヴァ ナン ス・ スキ ーム の断 片化 とい う 点で は︑ 既に 有機 農業 に関 する 私的 ガヴ ァナ ンス が︑ 一九 七

〇年 代前 半に 形成 され て以 降︑ 一九 八〇 年代 には

︑E U︵ 当 時E C︶ が多 くの 有機 農業 産品 を輸 入し てい るア メリ カを は じめ

︑E U加 盟各 国に おい て多 くの 民間 標準 が登 場し てい た こと も注 目さ れる

︒二 つの 変数 から 見る よう に︑ 現実 にE U︑ 欧州 委員 会は 介入 を試 みて いく

︒こ のE U当 局の 介入 は︑ 伝 統的 な農 業ロ ビー の不 在と IF OM A︵ 国際 有機 農業 運動 連 盟︶ のプ レゼ ンス が重 要で あっ たと いう

︒た だ︑ その 後の 相 互認 証の 推進

︑監 督主 体へ の手 続き 的規 制な ど強 化な どの 欧 州委 員会 の提 案は

︑私 的ガ ヴァ ナン スの スキ ーム の統 括能 力 を損 なう こと に対 する 懸念 を抱 く︑ 有機 農業 運動 の反 対に よっ て失 敗し てい る︒ 第四 章で は︑ 同じ く公 的ア クタ ーに よる 介入 が見 られ たバ イオ 燃料 の事 例が 検証 され る︒ 二〇

〇三 年の

﹁バ イオ 燃料 指 令﹂ は︑ EU 市場 で販 売さ れる すべ ての 輸送 用燃 料に おけ る バイ オ燃 料の 混合 率を 定め

︑加 盟国 の自 主的 な目 標と した

︒ しか し︑ 私的 ガヴ ァナ ンス に関 する 言及 はな かっ た︒ 二〇

〇 九年 の﹁ 再生 資源 によ るエ ネル ギー 使用 に関 する 指令

﹂は

︑ 持続 可能 性の 基準 とし て認 証制 度を 導入 し︑ それ に関 連す る

(6)

規定 は私 的ガ ヴァ ナン スに 関す る標 準規 制と 手続 規制 とい う べき もの であ った

︒バ イオ 燃料 に関 して は︑ RT RS

︵責 任 ある 大豆 に関 する 円卓 会議

︶︑ BO SU CR O︵ 持続 可能 なサ トウ キビ 生産 イニ シア ティ ブ︶

︑I SC C︵ 国際 持続 可能 性 カー ボン 認証

︶な どグ ロー バル なも のだ けで なく

︑オ ラン ダ やイ ギリ スな どの ナシ ョナ ルな レベ ルの 私的 ガヴ ァナ ンス で も断 片化 が見 られ た︒ この ため

︑イ ギリ ス︑ オラ ンダ など の 加盟 国︑ 欧州 委員 会に は調 和化

︑メ タ・ ガヴ ァナ ンス の設 立 への 動機 があ った

︒ま た︑ 国内 産品 の差 別化 に関 して も︑ 持 続可 能性 を保 証す る認 証は 輸入 バイ オ燃 料に 対す る優 位を 保 証す るも ので

︑バ イオ 燃料 産業 にと って 長期 的に は利 益に な ると いう 議論 は反 対の 声を 抑え うる もの とな った とい う︒ これ らと 対照 的な 結果 とな った のが

︑第 五章 で検 討さ れて いる フェ アト レー ドの 事例 であ る︒ フェ アト レー ドと は︑ コー ヒー など 発展 途上 国の 原料 や製 品を 最低 価格 保証 など

﹁適 正﹂ な価 格で 継続 的に 購入 する こと を通 じて

︑世 界市 場に おい て弱 い立 場に ある 途上 国の 生産 者や 労働 者の 経済 生活 を 向上 させ てい く運 動で あり

︑認 証制 度が 普及 しつ つあ る︒ こ のフ ェア トレ ード に関 する EU の態 度は

︑一 九九 九年

︑二

〇九 年に 見ら れる よう に﹁ 非介 入﹂ であ った とい う︒ 認証 へ の関 与に よる 国内 利益 に関 して は︑ フェ アト レー ドの 対象 と

なる 生産 者が EU 内に いな いと いう こと が指 摘さ れて いる

︒ すな わち

︑フ ェア トレ ード は︑ EU をは じめ とす る﹁ 北﹂ の 先進 国と

︑ア ジア

︑ア フリ カな どに おけ る﹁ 南﹂ の発 展途 上 国と の貿 易に 関わ るも ので あり

︑特 に﹁ 南﹂ から の一 次産 品 が問 題と なる 点に おい て︑ 上の 二つ の事 例と は異 なっ てい た とい う︒ また

︑私 的ガ ヴァ ナン スの 断片 化に つい ては

︑こ の 分野 では

︑補 完的 な私 的ガ ヴァ ナン ス・ スキ ーム の調 和化 が 成功 裡に 進ん でい た︒ 一九 九七 年に 設立 され たF LO

︵フ ェ アト レー ド・ ラベ リン グ国 際機 構︶ がそ の例 とさ れる

︒ま た︑ 途上 国の 農業 に関 わる 認証 であ るレ イン フォ レス ト・ アラ イ アン スな どの 他の 民間 認証 スキ ーム の登 場に よる 断片 化に つ いて

︑E Uの 政策 決定 者は 介入 の必 要性 より も︑ 断片 化が 全 体的 な市 場の 発展 に裨 益す るも のと して 見て いた 点に も言 及 され てい る︒ 第六 章で 検討 され る漁 業は

︑第 五章 と同 様に EU の介 入が 起き なか った 分野 であ る︒ 漁業 につ いて は︑ 一九 九七 年の 欧 州委 員会 コミ ュニ ケ﹁ EU にお ける 水産 品市 場の 将来

﹂に お いて

︑民 間認 証ス キー ムに おけ る信 頼性 問題 に対 する 取り 組 みに 言及 され てい る︒ その 後︑ 二〇

〇五 年の コミ ュニ ケに お いて

︑私 的ガ ヴァ ナン ス・ スキ ーム に対 する 最低 基準 のオ プ ショ ンの 検討 がな され たほ か︑ 二〇 一三 年︑ 二〇 一六 年に は︑

(7)

EU レベ ルで の水 産エ コラ ベル も検 討さ れて いる

︒漁 業分 野 にお いて は︑ 確か にM SC

︵海 洋管 理協 議会

︶を はじ めと し て︑ 私的 ガヴ ァナ ンス

・ス キー ムの 断片 化が 見ら れる ため

︑ EU レベ ルの 介入 が検 討さ れて きた

︒し かし

︑認 証に よる 差 別化 を通 じた 国内 利益 とい う点 では ある 程度 合意 があ った

︒ すな わち

︑欧 州委 員会 は民 間ガ ヴァ ナン スに 対す る最 低基 準 の導 入と いう 手続 規制 を志 向し たの に対 して

︑欧 州議 会は 漁 業者 の利 益に なる とし てE U認 証や エコ ラベ ル・ スキ ーム か ら成 る標 準規 制と 手続 規制 を主 張し てい たの であ る︒ 結局

︑ 加盟 国︑ 私的 ガヴ ァナ ンス

・ス キー ムや 漁業 者は 欧州 委員 会 の手 続規 制を 選好 して いた もの の︑ 欧州 議会 はこ れと 別の ア プロ ーチ を主 張し

︑介 入は 起こ って いな い︒ 第七 章で は︑ これ まで 検討 した 事例 を総 括し なが ら︑ 本書 の示 唆に つい て主 張が 展開 され てい る︒ ここ で︑ レン ケン ス は︑ EU の規 制的 介入 によ って

︑私 的ガ ヴァ ナン スは

︑厳 格 性な どに 対応 しな けれ ばな らな くな った 一方 で︑ 私的 ガヴ ァ ナン スの 規制 的・ 統制 的権 威に 対し て挑 戦し たり

︑毀 損す る もの でな かっ た︑ とい う二 つの 影響 を指 摘す る︒ その 上で

︑ 公的 な介 入の デザ イン と私 的ガ ヴァ ナン スの 行動 空間 が︑ 持 続可 能性 の結 果に 対し て影 響を 与え るこ とを 指摘 する

︒そ し て︑ 持続 可能 性へ の影 響に 関し て私 的ガ ヴァ ナン スだ けを 検

討す るの では なく

︑そ の制 度的 環境 であ る公 的介 入と の関 連 で理 解す る必 要性 を示 唆し てい ると 論じ る︒ また レン ケン スは

︑E Uの よう な公 的な 介入 の示 唆に つい ても 触れ る︒ すな わち

︑介 入が もた らす 政策 波及 の効 果や そ のダ イナ ミズ ム︑ そし て本 書の 分析 枠組 みが

︑非 EU 地域 に おい ても

︑あ るい は異 なる レベ ルの 公的 アク ター によ る規 制 的介 入に も適 用し うる のか につ いて も言 及す る︒ そし て︑ 手 続規 制は

︑国 際レ ベル で起 こり やす い一 方︑ 標準 規制 は国 内 レベ ルで 起こ りや すい 可能 性を 指摘 する

︒そ して

︑本 書は

︑ 研究 の方 向性 への 言及 で締 めく くら れる

︒こ こで は︑ 積極 的 にロ ビー イン グす るも のと

︑そ うで ない もの とい った 私的 ガ ヴァ ナン ス・ スキ ーム の戦 略や 市場 志向 の認 証へ の疑 問へ の 応答 など が示 され てい る︒ 次に

︑本 書の 意義 につ いて 触れ てお きた い︒ 第一 に︑ 本書 は私 的ガ ヴァ ナン スに 対す る公 的ア クタ ーの 関与

︑す なわ ち 公的 な制 度と 私的 な制 度の 相互 作用 を精 緻な 理論 仮説 に基 づ いて 解明 しよ うと した 点で ある

︒先 行研 究は

︑国 家間 交渉 の 失敗 によ る公 的秩 序の 不在 を代 替︑ 補完 する もの とし ての

﹁非 国家 ガヴ ァナ ンス

﹂と いう 点︑ つま り︑ 公私 の境 界を 強調 し てき た︒ その ため

︑個 別の 事例 研究 は別 とし て︑ いつ

︑い か なる 場合 にE Uの よう な公 的ア クタ ーが 私的 ガヴ ァナ ンス に

(8)

関与 する のか

︑と いう 問い に答 える 一貫 した 理論 的枠 組み を 提示 する 研究 は︑ 管見 の限 り確 認で きな い︒ 認証 によ る差 別 化や 私的 ガヴ ァナ ンス の断 片化 とい う変 数を 導入 する こと で︑ 公的 アク ター が介 入し よう とす る条 件に つい て一 貫し た 理論 的説 明を 提供 した 点は

︑私 的ガ ヴァ ナン スの 研究 にと っ て大 きな 意義 があ る︒ 加え て重 要な 点は

︑ア クタ ーに より 焦 点を 当て て︵ 五五 頁︶ 公私 のガ ヴァ ナン スの 交錯 を分 析し た こと であ る︒ 本書 は︑ 公的 アク ター が介 入を 企図 する 条件 を 示し ただ けで なく

︑そ の介 入の 成否 や方 向性 をア クタ ーの 利 益と 行動 の相 互作 用の 中で とら え︑ 公私 のガ ヴァ ナン スの 動 態を 析出 した とい う点 で高 く評 価し うる

︒ 第二 に︑ 本書 は︑ 私的 ガヴ ァナ ンス の公 的ア クタ ーの 関わ り方 につ いて の実 証研 究と いう 点で も示 唆を 与え てく れる

︒ 本書 は政 策文 書な どに 加え て︑ 七〇 名を 超え る関 係者 への イ ンタ ヴュ ーを 行い

︑多 様な 分野 にお ける 環境 認証 に関 する E Uの 関与 を明 らか にし てい る点 で大 きな 意義 を持 つ︒ 特に

︑ EU の積 極的 な干 渉が 見ら れた 事例 とそ うで ない 事例 とい う 対照 的な 事例 を検 討す るこ とで

︑E U当 局の 介入 とい う戦 略 を左 右す る要 因に つい て明 らか にし

︑E Uの 私的 ガヴ ァナ ン スへ の介 入が 必ず しも 単線 的な 歩み を示 して いる 訳で はな い こと が説 得力 をも って 論じ られ てい る︒

第三 に︑ 本書 のE Uの 事例 は︑ 公的 アク ター の関 与の あり 方に つい ても 大き な示 唆を 与え る︒ 国家 は環 境問 題の 解決 に おけ る民 間認 証の 可能 性に 着目 し︑ それ を公 共調 達の 基準 と して 用い るこ とも 多い

︒し かし

︑私 的ガ ヴァ ナン ス・ スキ ー ムの 断片 化や 民間 認証 の市 場に 与え る影 響が 十分 に考 慮さ れ てい ると は言 い難 い︒ これ から 認証 製品 の流 通が 拡大 して い く中 で︑ 彼が

﹁直 接的 な協 働﹂

︵d ir ec ti ve or ch es tr at io n()

︶の 例 とす る公 共調 達だ けで なく

︑認 証の 質や 範囲

︑認 証間 の競 合 とい った 問題 に取 り組 むこ とも 環境 政策 の重 要な 課題 とな っ てい くで あろ う︒ 他方 で︑ 本書 につ いて いく つか の疑 問点 がな いわ けで はな い︒ 第一 に︑ 断片 化の とら え方 であ る︒ 本書 では

︑独 立変 数 とし て︑ 私的 ガヴ ァナ ンス の断 片化 の高 低を 設定 して いる

︒ しか し︑ この 断片 化の 高低 は︑ どの よう に区 分す るこ とが で きる だろ うか

︒断 片化 は︑ 単に 数の 多寡 によ って 判断 され る のか

︑市 場占 有率 や認 証ス キー ムの 能力 の非 対称 によ るも の なの か︒ バイ オ燃 料の 場合

︑E U当 局が 必ず しも 断片 化を 克 服す べき もの と見 てい なか った とあ るが

︑ア クタ ーの 主観 は 断片 化の 程度 の判 断に 関連 する のか

︒断 片化 につ いて は︑ 事 例か ら帰 納的 に判 断し てい る部 分も ある ので はな いか

︒ 第二 の疑 問点 は︑ 政策 アリ ーナ の性 格で ある

︒E Uの 場合

(9)

近年

︑E Uレ ベル では 特に 開放 的な 性格 を持 つよ うに なり

︑ それ とと もに 欧州 委員 会が

︑環 境N GO など を政 策ア リー ナ に取 り込 むこ とで

︑E Uレ ベル での 支持 をえ よう とし てい る 傾向 があ る︒ 認証 の断 片化 は︑ 各国 でも 問題 とな りつ つあ る が︑ EU のよ うに 規制 をめ ぐる 開放 的な 政策 過程 が展 開さ れ る事 例は まだ 少な い︒ その 点で は︑ 官庁 セク ショ ナリ ズム な どの 政治 的機 会構 造に も目 を向 ける 必要 があ るの では ない か︒ 本書 でも EU の総 局間 の対 立に 言及 して いる が︑ この 点 をさ らに 検討 する こと で︑ EU とい う事 例を 超え て︑ 分析 枠 組の 一般 性を 高め るこ とが でき るの では ない だろ うか

︒ 今日

︑認 証ス キー ムに よっ て市 場に 影響 を与 える こと で環 境・ 社会 的な 問題 の解 決に 寄与 しよ うと する 私的 ガヴ ァナ ン スは 大き な意 味を 持つ よう にな って いる

︒し かし

︑こ れら の 私的 ガヴ ァナ ンス は︑ 設立 の経 緯は とも かく

︑国 や国 際機 関 とい った 公的 アク ター との 関係 を考 慮す るこ とな く︑ その 影 響や パフ ォー マン スを 考え るこ とが でき ない

︒私 的ガ ヴァ ナ ンス と公 的権 威は どち らか が一 方的 に影 響を 与え るの では な い以 上︑ 両者 の﹁ 相互 作用

﹂を 見な けれ ばな らな い︒ 著者 も 認め るよ うに

︑私 的ガ ヴァ ナン スに 対す る公 的ア クタ ーの 介 入︑ 公私 の制 度の 交錯 につ いて の研 究は まだ 緒に つい たば か りで ある

︒し かし

︑本 書が 提起 した 理論 的枠 組み とそ れに 基

づく 実証 研究 は︑ 今後 のガ ヴァ ナン ス研 究の 発展 の重 要な 一 歩と なる こと は疑 いな い︒

︻付 記︼ 本稿 は︑ 科学 研究 費・ 基盤 研究 B﹁ プラ イベ ート

・ ソー シャ ル・ レジ ーム の有 効性 の比 較分 析﹂

︵課 題番 号 16 KT 00 93

︶︑ およ び︑ 同﹁ 気候 変動 二〇 五〇 年目 標に 向け た ビジ ネス 行動 促進 のた めの 国際 枠組 みの 設計

﹂︵ 課題 番号 20 H0 43 95

︶の 助成 によ る研 究成 果の 一部 であ る︒ 注

︵1

︶C as ho re ,B en ja mi n.

“L eg it im ac ya nd th ep ri va ti za ti on of en vi ro nm en ta lg ov er na nc e: Ho w no n- st at em ar ke t- dr iv en (N SM D) go ve rn an ce sy st em sg ai nr ul e- ma ki ng au th or it y.

”G ov er na nc e1 5. 4( 20 02 ): 50 3- 52 9.

︵2

︶N ai ki ,Y os hi ko ,a nd Is ao Sa ka gu ch i.

“S us ta in ab il it y, ce rt if ic at io np ro gr am s, an dt he le ga cy of th eT ok yo 20 20 Ol ym pi cs .” Co ns um er Pe rc ep ti on of Fo od At tr ib ut es : Co ns um er Pe rc ep ti on of Fo od At tr ib ut es (2 01 8) :2 77 -2 92 .

︵3

︶A bb ot t, Ke nn et hW ., an dD un ca nS ni da l.

“I nt er na ti on al re gu la ti on wi th ou ti nt er na ti on al go ve rn me nt :I mp ro vi ng IO pe rf or ma nc et hr ou gh or ch es tr at io n.

”T he Re vi ew of In te rn at io na lO rg an iz at io ns 5. 3( 20 10 ): 31 5- 34 4.

参照

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