Kyushu University Institutional Repository
嫌気性廃水処理における微生物活性に関する基礎的 研究
久場, 隆広
Graduate School of Engineering, Kyushu University
https://doi.org/10.11501/3065507
出版情報:Kyushu University, 1992, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
爪V
嫌気性廃水処理における
微生物活性に関する基礎的研究
平 成 5 年 1 月
久 場 隆 広
目次
第1章 序論
第1節 はじめに
第2節 本論文の目的および構成
.2
・4
第2章 嫌気性廃水処理にかかわる微生物に関する従来の研究 第1節 嫌気性廃水処理の歴史的変遷
第2節 嫌気性廃水処理の特徴
第3節 嫌気的物質代謝とその微生物学的特徴
. 7
・8
・12
・16
第3章 基質要求性を利用した活性微生物量の評価方法に関する検討 ・ ・ ・19
第1節 緒論 ・ ・ ・20
第2節 回分培養における活性微生物量推定のための
動力学基礎式 .22
第3節 活性微生物量推定式の適用条件とその特徴 3-1 従来の適用例
3-2 推定式の適用条件
3-3 動力学的活性微生物量推定式の特徴 第4節 活性微生物量推定法の検討
4-1 反復回分実験結果に基づく推定 4-2 単一回分実験結果に基づく推定 4-3 希釈倍率の違いに着目した推定 第5節 総括
戸3 F3 ζU ハU 2 2 AUT fO 勺f
今JHq,,M
今,ん 弓コ 今コ 今コ 司、d 今コ 今、J
第4章 完全混合槽内の浮遊微生物中の活性微生物量の推定 第1節 緒論
. 38
・39
第2節 パイアルを用いた回分実験によるメタン生成活性の
測定手法に関する検討 .4 1
2-1 実験装置および方法 .41
2-2 還冗剤添加による影響 .47
2-3 実験結果の再現性 . 51
2・4 COD収支に関する検討 .53
第3節 酢酸を基質とした集積培養微生物中の
活性微生物量の推定 .55
3-1 実験装置および方法 .55
子2 反復回分実験による推定 .59
3-3 希釈倍率の違いによる推定 .66 3-4 単一回分実験による推定 .68 第4節 プロピオン酸を基質とした集積培養微生物中の
活性微生物量の推定 .70
4・1 実験装置および方法 .70
4-2 水素生成酢酸生成細菌の活性微生物量推定 .72 4-3 酢酸利用メタン生成細菌の活性微生物量推定 .78
第5節 総括 .82
第5章 嫌気性流動床内の付着微生物による基質分解特性と
その活性に関する検討 .85
第 1節 緒論 .86
第2節 嫌気性流動床による廃水処理の特性 .88
2- 1 実験装置および方法 . 88
2-2 連続運転による廃水処理の特性 .94 2-3 定常状態においてのCOD収支 . 100 第3節 流動床内付着微生物の基質分解活性 . 105
3・ 1 実験装置および方法 . 105 3-2 活性微生物量・増殖速度定数の推定手順 . 108 3-3 活性微生物量と総括的微生物量指標との比較 . 1 1 1
第4節 細胞外バイオポリマーの抽出法に関する検討 . 118 4-1 細胞外バイオポリマーとは . 118 4-2 実験装置および方法 . 119 4-3 細胞外バイオポリマーの簡易抽出法に関する検討 . 122 4-4 嫌気性流動床内の付着生物膜中の細胞外バイオポリマー . 129 第5節 処理水質予測モデルにおける活性微生物量設定の
妥当性の検証 . 131
5-1 モデル化と前提条件 . 131 5-2 非定常条件下における処理応答性に対するモデルの適用 . 134
第6節 総括 . 139
第6章 結論 . 141
謝辞 . 147
記号説明 . 148
参考文献 . 150
第1章 序論
第1節 はじめに
人類は、 昔から、 身の周りに存在する数々の微生物反応の恩恵、を受けて来た。
6世紀初頭の歴史書である古事記に口鳴酒(くちかみのさけ)の記述が見られるよう に、 微生物学の知識なしにその恩恵、を受けてきたと言える。微生物学の展開は、
17世紀のLeeuwenhoekによる微生物の存在の確認を経て、 19世紀のPasteurによる 自然発生説の否定、 すなわち有親発生説(生物発生説)の提唱以降に本格化した。
さらに、 その後の生物学・工学の発展に伴い、 下水・し尿・高濃度有機性廃水の浄 化に微生物が利用されるようになってきた。
従来生物学的廃水処理法として、好気性微生物を利用した活性汚泥法が広く用 いられてきたが、 この処理法では曝気によるエネルギー消費量や発生汚泥量が多 いために、 発生汚泥処理費は非常に高いものとなる。したがって、 近年エネルギ ー消費量や発生汚泥量の少ない処理法である嫌気性処理法が、 高濃度有機性廃 水・汚泥消化のみならず、 低濃度廃水にも適用されるようになってきている。
好気性微生物に比べ嫌気性微生物の増殖速度は遅く、 また増殖収率も低いため に、 嫌気性処理では微生物の流出を抑制し、 長い汚泥滞留時間で処理を行なう必 要がある。したがって、 嫌気性処理には大容量の反応槽が必要であり、 また、 処 理に長時間を要するため、好気性処理には向かない高濃度有機性廃水処理・汚泥 処理にのみ適用されていたが、 近年その見直しが図られ、 研究開発が盛んとなっ ている。このような展開をみせた最も大きな原因は、 生物膜・自己凝集汚泥のよ うな付着微生物の導入である。この付着微生物の利用により反応槽内での高濃度 の微生物保持が可能となり、 処理速度の高速化が達成されることになった。
これまでに嫌気性完全混合型反応槽内の浮遊菌の特性に関する生物学的研究は 数多く行なわれてきた。しかしながら、 付着微生物の研究は少なし これら付着 微生物の増殖特性や基質消費特性については依然として不明な点が多い。また
反応槽内には数種の基質分解微生物群が共生的に関与して存在し、 あるいは不活 性な有機物質が存在しているにもかかわらず、 好気性微生物に関する研究も含め て、 従来の研究では反応速度を支配する微生物量の指標として総括的な指標であ る恥1LVSS(Mixed Liquor Volatile Suspended Solids)やタンパク質濃度が用いられて きた。 このような総括的な指標を利用する限り、 反応槽はブラックボックス化さ れたままとなり、 特に、 非定常下での処理水質予測のためのモデルの高精度化は 困難となる。 このように嫌気性付着微生物法による廃水処理プロセスは数多くの 問題点・研究課題をかかえており、 反応槽の性能や操作特性の解明には、 より一 層の嫌気性付着微生物の生物学的・動力学的検討が必要である。
第2節 本論文の目的および構成
本論文では、 廃水処理にかかわる活性微生物量を、 未知のまま取り扱うのでは なく、 非定常状態下での処理特性をも表わし得るようにするために、 微生物活性 の評価手法を提示することを目的とする。 その基本となる概念は"活性微生物量H である。 これは、 基質消費特異性を利用して、 消費基質ごとに動力学的に推定さ れた微生物量である。 また、 総括的微生物量指標であるvssやタンパク質濃度は 細胞外ポリマー・不活性な微生物・死滅微生物等の不活性有機物を含めて求められ ているが、 活性微生物量はこれらを含まない。 さらに、 従来の研究では、 なんら かの形で測定した微生物量を与えることにより動力学定数を決定してきた。 しか し、 本研究では、 微生物量そのものを推定し、 それにもとづき動力学定数を決定 することを試みており、 今までにない新たな概念を導入している。 また、 反応器 を効率的に運転する上で、 いかに活性のある微生物群を反応槽内に保持するかが 大きな問題の一つである。 この問題を解決するためにも、 活性微生物量を評価す る手法を確立せねばならない。 したがって、 活性のある微生物量を評価するため の実験方法・推定手法を確立することは工学的にも意義がある。 この推定手法 は、 嫌気性微生物以外でも利用基質が明確な微生物群で、あれば適用可能であり、
この手法の大きな特徴の一つである。
微生物の増殖速度式としてMonod式を用い、 さらに微生物増殖と基質消費とが 共役していると仮定して、 まず、 活性微生物量を推定する動力学基礎式を求め る。 この動力学基礎式は、 ある基質濃度とその濃度に到達する反応時間との関係 を表わすものであり、 回分実験から得られる基質消費カーブとこの動力学式を適 用して推定した値を比較することにより、 各基質消費に携わる微生物群ごとの活 性微生物量を推定できる。 同時に、 その活性微生物量を基礎とした最大比増殖速 度を推定することも可能である。
本研究では、 まず、 活性微生物量推定手法を嫌気性処理にかかわる浮遊微生物 に対して適用し、 その妥当性を立証する。次に、 生物膜や自己凝集汚泥中には不 活性有機物が蓄積しやすいため、 特に付着微生物中の活性微生物量を評価するこ
とが重要であると考えられることから、 活性微生物量推定手法を、 生物膜を形成 する嫌気性付着微生物に対して適用する。 その際、 生物膜を利用した廃水処理反 応器である嫌気性流動床を用い、 嫌気性廃水処理で律速段階となると考えられる メタン生成相における水素生成酢酸生成細菌群およびメタン生成細菌群について 検討する。 さらに、 処理水質を予測するモデルにおいての生物量指標として活性 微生物量およびvss量を用いて数値計算を行い、 その計算結果と実験結果とを比 較することにより、 活性微生物量の有用性を明らかにする。
本論文は4章から成っており、 各章の構成 と内容は以下のとおりである。
第2章では、 嫌気性廃水処理の歴史と既往の研究について文献をもとに検討を 加える。
第3章は5節から成っており、 本章では、 基質要求性を利用した活性微生物量の 評価方法について検討する。第1節では目的について述べ、 第2節では、 活性微生 物量を評価する動力学基礎式について記述する。第3節では、 活性微生物量推定 式の適用条件とその特徴について述べ、 第4節ではその応用について説明する。
第5節では、 以上を総括する。
第4章は5節から成っており、 本章では、 完全混合槽内浮遊微生物に対して活性 微生物量推定式を適用し、 その妥当性を検証する。第1節では目的について述 べ、 第2節では活性微生物量推定式を適用するために行う回分実験手法の妥当性 を検討する。第3節では、 完全混合槽内嫌気性浮遊微生物を対象として活性微生 物量の推定を行い、 推定法の妥当性を実験的に明らかにし、 検証する。第4節で は、 プロピオン酸を基質とした集積培養微生物を用い、 水素生成酢酸生成細菌群 と酢酸利用メタン生成細菌群の共生している混合培養系においても、 本推定手法 を適用可能であることを実験的に検証する。第5節では、 以上を総括する。
第5章は6節から成っており、 本章では、 嫌気性流動床内の付着微生物に対して 活性微生物量推定式を適用し、 生物膜中の不活性物質の存在を明らかにする。第 1節では目的について述べ、 第2節では、 嫌気性流動床の廃水処理特性について検 討する。第3節では、 流動床内の担体付着微生物に対して活性微生物量推定手法 を適用し、 生物膜内の不活性物質の存在を明らかにする。第4節では、 生物膜の 形成において重要な物質の一つであると考えられる細胞外バイオポリマーの抽出
方法について検討し、 さらに、 嫌気性流動床内の生物膜中のその存在量について 考察する。第5節では、 活性微生物量を用いたモデルによる処理水質のシミュレ ーションから、 活性微生物量の必要性を明らかにする。第6節では、 以上を総括 する。
第6章では以上の各章を総括し、 結論を述べる。
以上本論文は、 嫌気性浮遊微生物を用いて活性微生物量の評価手法を理論的・
実験的に検討し、 さらに嫌気性流動床内の嫌気性廃水処理付着微生物量の推定に 適用し、 これより得られた基礎データをもとに、 嫌気性廃水処理反応器の処理効 率の向上の一助にすることを目的としたものである。
微生物に関する従来の研究
第2章 嫌気性廃水処理にかかわる微生物に 関する従来の研究
第1節 嫌気性廃水処理の歴史的変遷
嫌気性処理の歴史は大きく三つの期間に分けられるO 即ち、(1)1770年代以前、
(2)1770年代から1960年代、(3)1950年代以降の3期間である1)。 以下に各期間を要 約する。
(1)1770年代以前:
嫌気性微生物に関する知識は皆無であったが、これらの嫌気性微生物による発 酵を利用し、 酒などの醸造がおこなわれていた。
(2)1770年代から1960年代:
この時期は、メタン発酵に関する微生物学や生化学の知識の蓄積期であり、後 の嫌気性処理プロセスの発展・利用に対しての重要な時期であったと考えられ る。
Volta(1776)やReiset(1856)らは、湖沼・池あるいは尿尿の分解から自然にメタン ガスの生成が起こることを発見し、Bechamp(1868)はこのメタン生成が生物学的 プロセスによることを最初に指摘したといわれる。 Van Senus( 1890)は嫌気性分 解には数種の微生物群が関与していることを指摘した。 1927年にはCastellaniらに よって、メタン生成における嫌気性微生物群の共生関係に関する多くの研究が報 告されたO これら初期の研究は、嫌気性処理の制御に関するものであり、結果と
してこの処理法は二つのステップより成るという重要な知見を生み出し、この知 見はBuswellらによって、より一層発展したといわれている。 これは、今日の二 相消化の思想、の基礎であり、嫌気性プロセスの制御における重要な概念となっ た。
1920年代から1930年代にかけて、酢酸からのメタン生成についてSohngenの"酢
酸の脱カルボキシル化"理論が提出され、Buswellらにより支持された。一方、 こ れに対してNielのH酢酸分解におけるCO2還元経由"理論(1934)が報告され、B訂ker らの支持を得ていた。結局、Buswell、 Solloらのその後の研究により、 トレーサ
一C14を用いた実験から、酢酸からのメタン生成はCO2還元を経由していないとい う結論に達した。即ち、SohngenによるソタンはCO2還元と酢酸の脱カルボキシ ル化とにより生成されるHという理論が、今日も支持されている理論となった。
1940年代から1950年代以降での重要な研究としては、Bryant(1967)らによる水 素生成酢酸生成細菌と水素利用メタン生成細菌との共生関係に関する研究であ る。Bryantらは嫌気性分解には、次に示す三つの微生物群の共生反応、が必要であ ると考えた。
1)第一の微生物群:炭水化物、タンパク質、脂質などの高分子ポリマーを脂 肪酸、アルコール、CO2、アンモニアや水素に転換する加水分解・発酵 を行なう微生物群
2)第二の微生物群:第一の微生物群による生成物を水素、 C02、酢酸へ転換す る水素生成酢酸生成細菌と呼ばれる微生物群
3)第三の微生物群:
(i) I\+C02からメタン生成を行なう微生物群
(ii) 酢酸の脱カルボキシル化によりメタン生成を行なう微生物群 特に、第二の微生物群(水素生成)と第三の微生物群(水素酸化)の共生関係は重 要であり、後にエネルギ一学的研究からその重要性が明らかとなった。
(3)1950年代以降:
1950年代以降は、プロセス開発の盛んな時期である。表2-1に嫌気性処理プロ セス開発の歴史を示す。 この時期、プロセス開発の発展に貢献した二つの大きな 発明は、(i)消化槽内での撹枠および(ii)嫌気性接触法(anaerobic contact process) の開発である。
1950年代以前には機械撹持は行なわれていなかったために消化槽の底部には汚 泥が堆積し、表面にはスカム(scum)層ができ、 固液が分離していた。 また、 この スカム層の存在が消化槽の有効容量を低下させていた。しかし、機械撹祥の導入 によりスカム層を除去するだけでなく、微生物と廃水が密に接触するために消化
表2-1 嫌気性処理プロセス開発の歴史 下水の嫌気性処理の最初の試み
腐敗タンクの開発 二階式腐敗タンク イムホフタンク 中混・高温消化法 標準消化法の確立
嫌気性活性汚泥法(接触法)の開発 高率消化(撹祥の導入)
嫌気性ろ床 嫌気性汚泥床法 嫌気性膨張床 嫌気性回転円板法 パッフルリアクター 嫌気性流動床法
: Mourasの密閉式タンク(1881) : Cameron (1985)
: Travis (1904) : Imho行(1905)
: Fair and Moore (1934) : 1930年代後半
: Schroefer(1955)
: Morgan (1954), Torpey (1955) : Young and McCarty (1969) : Lettinga (1979)
: Switzenbaum and Jewell (1980) : Tait and Friedam (1980)
: McCarty (1982) : Jeris (1982)
速度が増す結果となり、 高速かつ効率的な消化が行えるようになったO
嫌気性接触法は、好気性標準活性汚泥法と同様なプロセスを持ち、 その開発に より反応槽内に高濃度の微生物が維持され、 水理学的滞留時聞が2日程度でも、
嫌気性廃水処理反応器の効率的な運転が可能となった。微生物の流出を抑制し、
微生物の滞留時間を長くするというこの原理は、 後の付着生物膜や汚泥の自己凝 集能を利用した嫌気性処理プロセスに応用されて行く。生物膜処理法である嫌気 性ろ床法(anaerobic filter)は1972年に実規模で初めて運転されたO さらには、 比 較的日詰まり(clogging)の起こりにくい嫌気性膨張床(anaerobic attached-film ex
panded bed)あるいは嫌気性流動床(anaerobic fluidized bed)、 自己凝集(グラニュ ール)汚泥による嫌気性汚泥床法(upflow anaerobic sludge blanket、 UASB)、 嫌気 性回転円盤法(anaerobic rotating disk reacter)が開発された。
このように、 非常に重要な自然現象の一つであるメタン発酵は、 既に18世紀に は確認されていたが、 その生物学的な基礎や複雑な共生関係は、 ごく最近になっ て解明されてきた。しかし、 それらも、 いまだ完全であるとは言えず、 様々な研 究課題を抱えている。
次に、 嫌気性流動床の歴史について簡単に述べる2)、旬。流動床がJerisらにより 嫌気性廃水処理に用いられたのは1982年頃であるとされている。しかし、 これ以
前にも流動床はさまざまな分野において利用されてきたO 最初に流動床の使用に 成功したのは、 第二次世界大戦中のアメリカであり、 航空ガソリン需要の増大か らガソリンの接触分解に応用されたのが始めとされている。 その後、 化学、 金属 工業分野においても応用、 研究され、 焼却や乾燥、 吸着等の各種単位操作に利用 されきた。
1970年代以降にようやく流動床は好気性廃水処理分野に適用され始め、 BOD除 去、 硝化・脱窒流動床として使用され始めた。 先にも述べたように、 1980年代に なると、 初めて流動床は嫌気性処理の分野においても適用され始めた。特に、 産 業廃水処理の分野においてはアメリカ、 オランダでは既に実装置が稼動してい る。
第2節 嫌気性廃水処理の特徴
嫌気性廃水処理は、 高度に還元された嫌気環境下において、 通性嫌気性細菌お よび絶対 嫌気性細菌の働きにより、 タンパク質、 脂質、 炭水化物などの複雑な有 機固形物を加水分解して揮発性脂肪酸等を生成し、 最終的にはメタン、 二酸化炭 素、 アンモニア、 硫化水素にまでガス化することである。
この嫌気性処理の一般的な利点として次に述べるような点が挙げられる4),5)。
1)好気性処理と比較して汚泥の発生量が少なく、 汚泥処理コストの削減が可 能である。一般に、 その汚泥発生量は好気性処理に比べて1/4から1/3程度 であるといわれている。これは、 嫌気性微生物の増殖収率が低いためであ り、 ATP回収率はグルコース1mol当たり、 好気性微生物で、38molで、あるの に対して、 嫌気性微生物ではわずか4molと低い。メタンというエネルギー レベルの高い物質までの分解で反応が終結するために、 嫌気性微生物に とってはその分だけATP回収率が低くなり、 増殖収率の低下をもたらして いる。
2)エアレーション・コストが不要であり、 好気性処理に比べてエネルギ一消 費量 が少 ない。ただし 、 反応槽の加温・ 処理水の循環 ・流動床反応器や UASB反応器においての床の膨張のための循環が必要な場合には、 一概に は省エネルギー型の処理法であるとは言えない。
3)廃水および廃棄物の潜在エネルギーをメタンガスというエネルギーレベル の高い物質として回収できる。発生ガス中のメタン含量は65から75%であ り、 エネルギ一資源回収の面からも有益である。
4)病原菌類・ウイルス・寄生虫卵等の病原微生物の死滅が期待できる0 5)構成 微生物群が好気性処理に比べ単純であり制御しやすい。
6)基質なしでも嫌気性微生物は長期間保存可能であり、 再スタートが早い。
特に、 付着微生物の死滅係数は低いことが確認されている。
7)消化汚泥は、 窒素・りんおよび腐植質に富み肥料価値が高く、 家庭厨介と 混合して堆肥化することができる。
このように、 多くの利点を持つ反面、 次のような欠点もある4),5)。
1)嫌気性微生物の増殖・代謝速度が遅い。したがって、 反応槽の容積が大き くなり、 建設・用地費が増加する。
2)透明度の高い良好な処理水質が得られない。 また、 溶存メタンの問題があ り、 80mg-COD/lものメタンが処理水中に含有されている場合もある6)。
3)スタートアップに長時間を要する。
4)温度の影響を受け易い。
5)研し酸還元作用に伴う硫化水素の発生により、 悪臭の問題が起こる。
次に、 嫌気性処理プロセスの例をあげ、 その特徴について述べる。 図2-1に5つ の嫌気性処理反応器の例を示す九嫌気性処理は従来、 高濃度有機性廃水処理に 対して用いられてきた。その処理方式はそれほど多くはなく、 一般的には、 図2- 1 a)に示されるような完全混合型の処理方法で、 標準嫌気性消化法(Conven
tional Anaerobic Digestion)などがその代表例である。
その後、 高濃度有機廃水のみならず、 対象処理廃水の種類の増加により、 多く の処理方法が開発された。その処理方式は微生物の存在形態により、 浮遊方式 (活性汚泥法)と付着方式(生物膜処理法)の二つに分けらる。 浮遊方式としては嫌 気性活性汚泥法(Anaerobic Activated Sludge Process、 嫌気性接触法Anaerobic Contact Process、 図2・1 b))があげられ、 エアレ-ションを行なわない好気性標 準活性汚泥法のフローと同じである。これは、 沈澱槽の汚泥を回収し返送するこ とによって、 反応槽内に汚泥を高濃度に保持し、 水理学的滞留時間(HRT)の短縮 を可能にした処理法である。付着方式は、 微生物をろ材(接触材、 充填材)、 不活 性な担体(砂、 ゼオライト、 活性炭、 アンスラサイト、 高密度プラスチッ夕、 セ ラミクスなど)に付着させるか、 あるいは微生物自体の自己固定化によるグラ ニュール汚泥により、 反応槽内に微生物を高濃度に保持する方式である。嫌気性 ろ床法(Anaerobic Filter、 図2-1 c))は鉛直流(上向流、 下向流)で廃水を流入させ、
ろ材に付着した微生物により処理する方式である。嫌気性流動床法(Anaerobic Fluidized Bed、 図2-1 d))や嫌気性膨張床法(Anaerobic Expanded Bed)では粒径 の小さな砂やゼオライトを微生物付着担体として用い、 微生物付着担体を反応、槽 から流出しない程度の上昇流により、 流動状態に保持する。嫌気性汚泥床法(お1・
CH.+CÜ2
a)標準嫌気性消化法
b)嫌気性活性汚泥法
CH4+CÜ2
生物膜 c)嫌気性ろ床法
流入水
d)嫌気性流動床法
CH.+CÜ2
沈殿ゾーン
e)嫌気性汚泥床法 図2-1 嫌気性廃水処理反応器の例
aerobic Sludge bed System、 図2-1 e))は、 上向流嫌気性スラッジブランケット反 応器(Upflow Anaerobic Sludge Blanket Reactor、 UASB)中で、 微生物自体の自 己凝集能を利用して、 微生物を粒状に発達させてグラニュール汚泥を形成させ、
向流により浮遊させた状態で廃水を処理するものである。
これらの処理方式以外にも腐敗槽(Septic Tank)、 嫌気性ラグーン法(Anaerobic
Lag∞n)、嫌気性回転円板法(Anaerobic Roatating Biological Contactor)なども利 用されている。 さらには、UASB型処理プロセスにパッフルを入れて改良を加え たパッフルリアクタ- (Anaerobic Buffled Reactor)l)なども研究されている。
従来、反応槽の設計・管理は経験主義に頼りがちであり、しばしばprocess fail
ureを起こしがちであった。 これら全ての処理方式においても、廃水処理は可能で あるが、適切な設計・維持管理がなされない限り、良好な処理水質を得ることは できない。
最後に、嫌気性流動床の特徴を以下に示す2), 6)。
1)担体の比表面積が大きく、高濃度の菌体を保持できる。
2)菌付着担体は常に流動した状態に保たれ、 閉塞がない0
3)固液の接触が密であり、かつ均一であるため、保持されている菌体全てが 有効に機能できる。
4)固定床と比較して生物膜が薄く、 生物膜内への基質の拡散律速とならな I./�。
5)余剰汚泥は、生物膜厚が最大となった粒子が存在する床の上部から、菌付 着担体をヲ|き抜き、剥離させ、担体を再生することにより除去される。
しかし、実プラントでは反応器内の均一な流れを確保するための水理学的な課 題(下部の注入構造、上昇流の設定・制御など)が残されている。 また、表面、粒 径、密度などの担体の物理的性質、 コストなどをふまえた上での担体の選定な ど、いくつかの課題を抱えている。
第3節 嫌気的物質代謝とその微生物学的特徴
第1節でも述べたように嫌気性分解にはいくつかの微生物群が関わっており、
それらの微生物群はそれぞれ共生・競合して反応槽内に存在し、いくつかの段階 を経て有機物を最終的にメタンへと分解している。このいくつかの菌群とは、(1) 発酵性細菌あるいは酸生成細菌(Fermentati ve bacteiaあるいはAcid producing bacteria)、(2)水素生成性酢酸生成菌(Hydrogen producing acetogenic bacteria)、
(3)ホモ酢酸生成細菌(Homoacetogenic bacteria)、(4)酢酸利用メタン生成細菌 (Acetotrophic methanogenic bacteria)および(5)水素利用メタン生成細菌(Hydro
genotrophic methanogenic bacteria)である。 図2-2に、この5つのグループの嫌気性 細菌の代謝作用によって行なわれる嫌気性消化過程の概要を示す6)�9)。段階的に は(i)加水分解段階、(ii)酸生成段階、(iii)メタン生成段階に分けられる。各段階を
簡単に説明するとへ
(i)加水分解段階:高分子量の図形有機物や溶存有機物を加水分解する段階であ る。有機物の大部分は固形物の形で存在していることが、 ごく一般的な流入廃水 の性質である。そのため、生物膜処理法では巨大な分子は膜内に拡散できず、生 物膜深部に基質を供給できない可能性があり、加水分解段階は重要なプロセスで あると考えられる。加水分解は発酵細菌の細胞外酵素により行われ、非常に反応 速度は遅いとされている。特に、炭水化物に比べ、脂質の加水分解は遅く、律速 段階になりがちである。 また、加水分解速度はpH、滞留時間の影響を受けやす
u、。
(ii)酸生成段階:加水分解段階で、生成された低分子有機物を揮発性脂肪酸へ分解 する段階である。最終的には酢酸・水素・二酸化炭素に分解される。嫌気性消化過 程の最終段階を担うメタン生成細菌の利用可能な基質は水素と二酸化炭素の他、
酢酸・ギ酸・メタノールにすぎない。したがって、これ以外の有機物は水素生成性 酢酸生成菌により酢酸等に転換される必要がある。汚泥滞留時間(SRnが短い場 ム、 プロピオン酸・水素の蓄積が起こり易く、prωess failureを引き起こす原因と なる。
(iii)メタン生成段階:主に酢酸の還元によるメタン生成が行なわれる段階であ
Carbohvdrates Proteins
LiP.ids
ORGANIC POLYMERS
‘‘ .• ,,,
4.,
,,aE・‘、
、、.Eノ噌EA,,.‘‘、
Sugars
、‘‘.a,,41.,
,,a・‘、
Amino acids
、‘aa''4.,
,,EEZ‘‘
、‘.,,,唱Ea〆'a‘、
水
貯
分 解
段階VA
Butyric acid Propionic
acid
山川酸生成段階
(2)
(うi�
(3) ンヲ成生
5v
(1)発酵性細菌あるいは酸生成細菌 (2)水素生成酢酸生成細菌
(3)ホモ酢酸生成細菌(水素消費酢酸生成細菌) (4)酢酸利用メタン生成細菌
(5)水素利用メタン生成細菌
嫌気性廃水処理微生物に関連する代謝作用 図2-2
る。 その反応速度は遅く、 嫌気性処理の律速段階になりやすいといわれている。
一般に生成されたメタンの内、 70%は酢酸を経由して生成され、 残りの30%は二 酸化炭素と水素の反応により生成されるO メタン生成細菌はpH'温度・遊離の揮発 性脂肪酸濃度などに対して鋭敏であり、 非常に影響され易い。
この内、 水素生成性酢酸生成菌(水素を生成)と水素利用メタン生成細菌(水素を 消費)との共生関係は非常に重要である。水素利用メタン生成細菌は水素消費に より低水素分圧の環境を維持し、 水素生成性酢酸生成菌の活性を高め、 逆に水素 生成性酢酸生成細菌は水素利用メタン生成細菌にとって基質となる水素を提供し ている。したがって、 このような有機物分解に関わる微生物群の生態系を研究 し、 把握することは廃水処理システムの適切な運転あるいは反応槽タイプを含め たプロセス設計において非常に重要である。
本論文では、 おもに、 嫌気性消化の最終段階を担うメタン生成段階について研 究を行なう。メタン生成細菌の生化学的な特徴について以下に示すlO)�問。
メタン生成細菌の生理・生化学は最近までほとんど知られていなかったO しか し、 最近の研究結果から、 メタン生成細菌は真核生物とも原核生物とも異なる
"古細菌(Archaebacteria)"という特殊な進化的位置に属する第三の生物群であるこ とが知られてきた。この古細菌というのは、 他の細菌・生物よりも進化的に古い ということで、 WoeseとFoxによりつけられた名称、であるが、 その後の研究で、
古細菌といわれる細菌群は、 逆に普通の細菌よりも進化的に新しいのではないか という論議が起こり、 むしろ真正細菌から真核生物へいく中間の生物で、 後生細 菌(Metabacteria)と呼ぶべきだともいわれている。
また、 メ夕ン生成細菌は他の生物には見られないCoenzyme M(ο2
tωoe抗thanesui増pho∞nl比c aωci同d、 CoM)、 F420、 F430、 メタノフラン(MEF)、 テトラヒドロメ タノプテリン(百品1P)のような補酵素を持ち、 これらはみなメタン生成に関係し ていることから、 これらの補酵素の有無がメタン生成細菌であるかどうかの判定 基準のーっとなっている。
メタン生成細菌は絶対嫌気性菌であり、 高度な嫌気状態を必要とする。メタン 生成細菌が 生育できる酸化還元電位はーO.33V以下であるとされており7)、 した がって、 メタン生成細菌を用いて実験を行う際には、 空気の混入等に十分な注意 が必要である。
評価方法に関する検討
S..I・・ーーーーーーー---・ーーーーーー・
511・骨ーーー・ーーーー・ーーーーー・・・ーーーー・ー 1回目基質J却
-v‘ Jv aa ω出歯周回司圃市
反応時間I
第3章 基質要求性を利用した活性微生物量の 評価方法に関する検討
第1節 緒論
微生物による廃水処理特性を評価する上で重要な因子である微生物量は、 従来 実用的な側面より、 ssやvss、 タンパク質濃度などの総括的な指標で扱われてき ている。しかしながら、 バイオマス中には無機分や不活性な有機分がかなり存在 しており1), 2)、 その割合も処理装置の種類や運転条件などによって大きく左右され ることが考えられる。現実に、 種々の廃水処理の動力学的研究において微生物量 の評価方法が異なるために、 本来普遍的な値であるべき比増殖速度や比基質消費 速度の報告値に大きな相違が見られる。
また、 実際の混合培養系である廃水処理反応槽内には様々な微生物群が存在し ている。これまで、 最確値(MPN、 Most Probable Number)法などにより、 嫌気 性廃水処理を担う様々な微生物群のそれぞれの微生物数を計数しようとする試み はあるものの、 バイオマス中の微生物群組成には未だ不明な点が多い。したがっ て、 廃水処理反応槽が混合培養系であるにも拘らず、 従来の研究では、 ssや vss、 タンパク質濃度などの総括的な微生物量指標が用いられてきた。
このように反応槽内に微生物でない図形有機物質や様々な種類の基質を分解す る微生物群が共存している系について動力学的な解析を行う場合、 微生物量指標 としてssやvss、 タンパク質濃度などの総括的な指標を用いることは適切でな い。特に、 付着生物膜の増殖や蓄積を伴うような長期的な応答性を解析しようと する場合に、 総括的な微生物量指標にもとづいて求めた基質消費活性や増殖速度 定数を用いて、 このような非定常な過程を表現することは困難であり、 バイオマ ス中の各微生物群ごとの活性量を微生物量指標として用いることが必要であると 考えられる。さらに、 処理水質を予測するモデルを構築する上で重要なそれぞれ の微生物量を基質消費別に与え、 その微生物量を基礎とした動力学定数を定義す
ることにより、 非定常な処理状況や微生物増殖過程を長期的に表現することが可 能になると考えられる。
一方、 廃水処理における微生物学の発展とともにバイオマス中の微生物組成が 徐々に明らかにされてきており、 各微生物の基質消費に関する生理学的な知見も 蓄積されてきている。 それらの知見を利用して処理すべき物質別にその分解を担 う微生物の量を推定できれば、 有効な微生物量指標となる。 本章では、 活性微生 物量の評価手法を提示し、 その適用条件と特徴について述べる。
第2節 回分培養における活性微生物量推定のための動力学基礎式
従来の嫌気性廃水処理における動力学的な研究3)-6)では、連続流完全混合反応、
槽をいくつかの条件のもとで長期間運転して、各定常状態での基質濃度や微生物 濃度から動力学的な定数を求める手法がとられてきた。 しかしながら、この手法 では定常状態を得るために長時間を要する欠点がある。 回分培養では容易にかっ 短期間に様々なデータを得ることができ、適切に条件を設定できれば動力学的な 検討を行う上で有効な実験手法となり得る。
一般に回分培養での微生物増殖、基質消費および代謝産物の蓄積は以下のよう に表現される。 また、図3・1にその概略図を示す。
、‘,j今コ〆'E1
命但
一一
Y ny 却ω一命、、,ノウム/・1
X
u--一V勺= x v
一一
/,.‘、 唱Ei 、、.,,, お一命
X
、、./D K HM・〆'EK一一
α一白ただし、x:微生物濃度、s:基質濃度、P:生産物濃度、t:反応時間、yx:増殖収 率、YP:生産物収率、 ν:比基質消費速度、μ:比増殖速度、K(D):比死滅速度。
ここで、(1)式の比増殖速度μはMonod式で、表現され、さらに比死滅速度K(D)が 比増殖速度μに比べ無視できる場合は簡単な(1')になる。従来の研究7)、8)から、
嫌気性細菌群の比死滅速度は比増殖速度に比べ1オーダー小さいことから、以後 の回分培養での考察においては、比死滅速度K は無視できるものとした。 ま(D) た、基質消費と微生物増殖が共役していることを示す(2)式に(1')式を代入し、初 期条件(t=Oで、s=s。およびx=xo)を与えて積分すると、(2')式が得られる。 同様 に、基質消費と代謝産物生成の関係を示す(3)式に、初期条件(t=Oで\ S=S。および P=PJを与えて積分すると、(3')式が得られる。
dX-" v-
J..lmSrμ X一己ず (1') X=X爪(い).
•.(2') 阿o尚(い)
• •.(3')
nu s a尽ill-ω凶喧劃席値柑 dS 1
I了 =- yx}J入v
×凶喧興蓉川mg
Xo
乱世幽RS#制川相
dP " dS
dt 司Pdi
反応時間t 一一(診
図3-1 回分培養における微生物増殖および 基質消費、 代謝産物の蓄積
ただし、 μm'最大比増殖速度、 ks:飽和定数O ここに、 添字0は初期状態を示 す。
これらの微生物増殖と基質消費の式を連立することにより、 反応時間tと基質濃 度Sの関係を示す(4)式が得られる。 同様に、 反応時間tと生産物濃度Pの関係を示 す(5)式が得られる。
h川附th=S品o+Xo/Yx1 { -州�+(So+X ' � s。 灯仏山xけ+必弘K凡刷s
μm t-So+Xr/Yx ' � _
�
_ _ {-Ksln � (Po-Pぞ
50 Yp+おXo+(Po・P)YJYD
+(5o+Xo/Yx+Ks)ln"'''"U I \� u_� / ... XI ... P} . . .(5)
.1\.0
本来、 Monod式は連続培養条件で用いられるべきものではあるが、 微生物の増 殖が対数的に行われている場合には、 四分培養条件においても十分適用可能であ ると考えられている。 したがって、 培養期間中に馴致時間を必要とするような環 境条件の大きな変化がない限り、(4)式により基質消費を、(5)式により代謝産物 生成を表現できるものと考えられる。
ここで、 この基礎動力学式を用いる上での仮定は、
1)微生物の増殖はMonod式にしたがう、
2)最大比増殖速度・飽和定数・増殖収率などの増殖速度定数は回分実験中一 定である、
3)微生物を他の培地に移植して回分実験を行う際も、 全く同じ組成の培地 を用いるため、 遅滞時間は無視できる、
4)微生物はほとんど対数増殖期あるいは定常期にあり、 死滅は無視でき る。
第3節 活性微生物量推定式の適用条件とその特徴
3-1 従来の適用例
反応時間と基質濃度の関係を示す(4)式はKnowles3)によっても提示されてい る。 Yang and Okos4)は、さらに基質阻害を考慮することにより(6)式を導いてい る。
μmt = A
ln玄+
Bln_S_+ S-So
•.・(6)
Xo
so
Kiただし、Ki:阻害定数、A=l+K/(So+XrfY)+(So+XJY)fK..、B=-K/(So+XrfY)
(6)式において阻害定数klを無限大、即ち基質阻害がないとすれば、(4)式と等し くなる。 Yang and Okosは、 四分実験により得られた基質消費あるいは代謝産物 生成のデータをもとに(6)式を用いて、増殖速度定数の決定を試みている。 ただ し、初期微生物量X。は既知の値(微生物の乾燥質量)として与えている。
Gates and Marlar戸.5叫5
線形関係に着目した動力学定数の推定法を考えた。 そこでは、初期微生物量X。を 既知とし、試行錯誤的にa(=Y;Xo)を与えることにより、 グラフから最も良い直線 関係にあるaを得て、その値を用いて最大比増殖速度μmおよび飽和定数ks、増殖 収率YXを求めている。 さらに、Ong6)はこの図解法を最小自乗法による統計的な推 定法に改良する必要性を指摘している。
これらの研究は、本質的には微生物量が与えられることを前提に議論を進めて いるものの、Gates and Marlar自身も、初期の活性微生物量の測定のために酵素活 性を利用するなどの工夫が必要であることを示唆している。 さらに、1組の回分 実験の基質濃度変化データから3つのパラメーターを同時に推定することは、実 験条件の設定をかなり適切にしない限り、全てを精度よく推定できないと考えら れる。 以上の点を考慮して、本研究では、本来増殖動力学上最も重要である活性 のある微生物量を第一のパラメーターとして推定することを目的とし、動力学式
を(4')式のように簡略化した。
3・2 推定式の適用条件
3-2-1 飽和定数について9)
式(4)を無次元化すると、 式(4')が得られる。
μmt= 志 { -Ks ln S + (1品むln l罰 (4')
ただし、玄=s/s。、 文=X/(Yx・so)、 Ks=KjS。
後述するように(第4節)、 反復回分実験から得られる2組の任意の反応時間と基 質濃度から初期微生物量を推定することができる。反復回分実験とは、 最初の基 質が一旦消費された後、 再度同一基質を添加するものである(p.32、 図3-5)。無次 元式(4')は、 反復回分実験の1回目と2回目の基質消費において共に成立し、 その 比をとることにより式(7)が得られる。ただし、 最大比増殖速度μmは実験期間中 一定であるとする。
1 {ζhg;+(1+克+疋) ln 1+XO必j
t 2
_1 + Xo2 j
\二ご一� . . .(7) X02
Jt1 _ 1 I -志hg;+(1+芯;+志) ln 1+をどS1!
1+Xo1 \ X01 /
式(7)を無次元飽和定数芯について整理すると、 式(8)が得られる。
(克�+l)(ln1+至宝S2__ 包lnl+をどSL)
K s- I: =
ーよー\X…
ど乙ーーtl ニヨ Xγ f L � .
..(8)
弘1+亙blnlさ�l-SL+ln 宅乙?と
t1 1+Xo1 Xol Sl 1+Xo2-Sl
1回目と2回目の初期基 質濃度をS。とし、任意の基 質濃度S1、S2を、たとえば 初期 濃 度 の 50%と す る (年ξ=0.5)0 さらに、1回 目の全ての基質が消費さ れた後に、2回目の基質を 添加するとすれば、2回目 の無次元初期微生物濃度 は、記=(X01+ y. SO)/(y.
SO)=文;;+1となる。 これら の仮定を用いると、任意 の反応時間比t/t1に対して
無次元飽和定数Z;と無次
元初期微生物濃度え(=文01 )
0.20
0.15
lT0・10
×
0.05
0.00
Wt2=0.25
0.20
0.15
0.10
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
Ks
[-]
図3-2 無次元飽和定数と無次元初期 微生物濃度との関係
の理論的な関係は図3-2のようになる。支;によらずξの値はほぼ一定であること がわかる。
したがって、式(4)および式(5)を簡略化するために、初期基質濃度S。が飽和定数 ksよりも十分に大きいとすれば(すなわち、支;→0)、基質濃度Sおよび生産物濃度 Pと反応時間tとの関係は以下のようになる。
Jlmt = 1n ぬで )YX 例 μmt= h Xo+(Po-P)YxlY - x
E_.. .(
1 0)
.1\.0
すなわち、式(9)および式(10)は、初期の基質または生産物濃度と増殖収率Yxが 与えられれば、あるそれらの濃度に達する時間は、初期微生物濃度X。のみに依存 していることを示している。 さらに、 回分培養条件での基質および生産物濃度経 時変化データをもとに、これらの式を用いて微生物量を推定することが可能なこ とを意味している。
3-2-2 初期微生物濃度について
表3-1に示す2つの条件のもとで、 式(9)を用いて計算した理論的な基質消費カー ブを図3-3に示す。 この2つの例では、 最大比増殖速度μmと初期微生物濃度X。の 値はこれらの積が一定となるように変化させ、 その他は全て同じ値とした。
この例のように初期微生物濃度X。が高い場合、 ほとんど同ーの基質消費カーブ を描く。 x。が高い場合、 初期微生物濃度Xo(500あるいは20∞mg/l)に対して微生物 増殖ムX(50mg/l)が無視で、き、 基質消費速度は以下のように表わされる。
表3-1 理論的な基質消費カーブの計算条件(1 )
例- 1 (Ex.1) 例-2 (Ex.2) 初期基質濃度80[mg-COD/I] 1000
e.・�...--_.--.---・・・・・・・・・・・・・・・・・・ _.-.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・---
増殖収率Yx[mg/mg-COD] 0.05
-ーーーーーーーーーーーーーーー・- --ーーーーー・・ーーーーーーー・,ーーーーーーーーー ーーーーーーーーーーーー・・ー・-- ーーーーーーー・ーーーー・・ーー・,ー
初期微生物濃度Xo[mg/I] 500 2000
ーーーーーーーーーーーーーー・・ーー・・ー岨,申ー・・・・ーーーーーーーー・・,ーーーーーーーーーーーーーーーーーー'ーーーーー ーーーーー圃ーーーーーーーーーー‘ 最大比増殖速度μm[打1] 0.02 0.005 初期基質消費速度
μmXO/Yx [mg-COD/I/h] 200 最終増加微生物濃度
b. X=80Yx [mg/I) 50
一
1000
200
�I
Ex.1 Ex.2� ド\
\、 、ドミ\
nu nu nu nu nu nu au au 凋MY
{てGOO-mE}ωMm噴出糊
0
o 1 2 3 4 5
反応時間t[h]
図3-3 初期微生物濃度が高い場合の基質消費カーブ
益- -上μX =ー上h三X ::::::: -上μm(XO+企X)=÷μmXo. • .(2") dt Y x • Y x Ks+S Y x . --- - y
すなわち、 最大比増殖速度μmと初期微生物濃度X。の積が同じであれば、 その 基質消費カープはほぼ一定となり、 μmとX。を別々に求めることはできない。
また、 実験から図3-3に示すような基質消費カーブが得られ、 実際に求められ た総括的微生物濃度が2∞O[mg/l]であったと仮定すれば、 この実験結果から得ら れる最大比増殖速度μmはO.005[h-1]となる。 しかし、 実際には活性のある微生物 濃度が500[mg/l]であったとすれば、 μmはO.02[h-1]となり、 求められるμmの値に 非常に大きな差が出てくる。 つまり、 どのように微生物濃度を評価するかによ り、 μmのイ直は大きく変わる。
次に、 初期微生物濃度X。が低い場合の例を図3-4に示す。 本図には基質消費カ ーブと同時に、 微生物増殖カーブも図示している。計算条件は表3・2に示すとお りである。 ここでは、 最大比増殖速度μmを前述の例(表3・2)と同じ値とし、 初期 微生物濃度X。のみを低い値に設定した。 ただし、 μmとX。の積は一定で、ある。
初期微生物濃度X。が低い場合、 最大比増殖速度μmと初期微生物濃度X。の積が 一定であっても、 それぞれ特異的な基質消費'カーブが得られる。 これは、 初期微 生物濃度XoC5あるいは20mg!l)に対して微生物増殖ムX(50mg!l)が無視できず、 微 生物濃度の増加に伴って、 基質消費速度が時間とともに増加するためである。 し たがって、 実験条件として初期微生物濃度を微生物増殖ムXに比べ十分に低く設 表3-2 理論的な基質消費カーブの計算条件(2) 定できれば、 実験
初期基質濃度50 [mg-COD/I]
ーーーーーーーーーーーーーーーーー'ーーーーーー・・ー曹司ーーー串圃ー岨骨・・ーーーーーーー
増殖収率Yx[mg/mg-COD]
ーーーーーーー'ー-ー-ーーーーー-ー・・・・ーーーー圃ーーー・・ーーーーーーーーーーーーーー
初期微生物濃度Xo[mg/I]
-ーーーーーーーーーーー骨ー喧ーーーーー・ーーー・・ーーー・ーー,ーーーーーーーーーーーーーー
最大比増殖速度μm [h-1]
初期基質消費速度
μmXO/Yx [mg-COD/lIh]
最終増加微生物濃度
fl.X=SJYx [mg/I]
何ιl' (Ex. 1') 例-2・(Ex.2') 1000
ーーーーーー・・ーーーー・・ー- -ー---ーーー---ーーー・・----ーーー
0.05
ー・・ーーーー--ーーーーーーー--ー ー司・ーー- -ー・・ーーーーーーーーー
5 20
ーーー・・・・ーーーーー・・ーー・・圃圃ーー ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
0.02 0.005
2 50
から得られる基質 消費カーブから最 大比増殖速度μm と初期微生物濃度 X。を別々に推定す ることが可能であ る。
EX.1' Ex.2・
ミに \[Ë
400
200
{一\OOO'mE}ω制酬明組欄
0 80
.J戸
60
1...1...l〆//
/ ! 〆 1
1---
- - - - �::�・EX.2'i/
{一\切E}X制側四容川相誕
200 300 反応時間t[h]
初期微生物濃度が低い場合の基質消費カーブ
動力学的活性微生物量推定式の特徴
図3-4
3-3
式(9)によって推定される初期微生物濃度X。は、 動力学的に求められた微生物濃 度であり、 工学的に求められたいわばモデル上での微生物濃度である。 これを
"活性微生物濃度"と定義する。 この活性微生物濃度評価法の特徴は、
1)バイオマス中には活性のある微生物群の他、 細胞外ポリマ-・不活性な 微生物群・死滅微生物群・金属イオン等の不活性物質が含まれている。 ま た、 そこには多種多様な微生物群が存在している。 そこで、 ss.vss.タ ンパク質濃度のような総括的微生物量指標でなく、 利用基質ごとの微生
物量を評価することができる。 この評価方法は、 不活性物質の蓄積が予 想される生物膜反応器において特に重要であろう。
2)コロニーの計数・酵素活性・アイソト-プ等を利用した微生物量の評価よ りも簡便で、 嫌気性微生物のような増殖速度の遅い微生物群に対して も、 比較的短時間に評価可能である。
3)speciesあるいはstrainのレベルでの評価ではなく、 利用基質の種類にし たがってグループ化し、 それぞれの微生物群の濃度を評価する。
この推定手法は利用基質に着目し、 その種類にしたがって各微生物群の濃度を 推定するものであるため、 利用基質が明確な微生物群であれば、 この手法を適用 可能である。 したがって、酢酸利用メタン生成細菌などの嫌気性細菌の他に、 ア
ンモニアや亜硝酸を酸化し増殖する硝化細菌などにも適用可能である。
活性微生物量推定法の検討 第4節
反復回分実験結果に基づく推定 4-1
本節では、 式(9)を基礎とした活性微生物濃度推定の具体的な方法について述べ る。
図3・5に示すような反復回分実験結果から活性微生物濃度を推定することがで きる。反復回分実験とは、 最初の基質が一旦消費された後、 再度同一基質を添加 する実験である。基質消費速度は1回目と2回目とで異なり、 2回目の消費速度が 速くなる。これは、 1回目の基質消費により微生物が増殖して、 2回目においては 消費活性が増大するためである。
2回目基質添加
�---Á
�
S02l2
1回目基質添加
S01
c/)
住民 軍当
額501/2
st←一一一一
X02�一一一一一一一一一一一一一一一一一一一〆ーグ一一本 :�X
Y
XMm終禁制緩ヤ
X01
反応時間t
反復回分実験概略図
図3-5
基質濃度Sと反応時間tの関係を示す式(9)は、反復回分実験の1回目と2回目の基 質消費においてともに成立し、その比をとることにより式(11)が導かれる。
lnX01 +(�)1-S1) y� ln X01+(�)1-So1/2) Y x
旦旦旦1 _ X01 _ X0� .____ ...(11)
μm2t2 ln X02+(So2・�)Y� ln X02+(So2-So2i2) Y x
X02 X02
_x01+�x_x01+ Y x(SOl-Sf)
2- r - r f ...(12)
ただし、rは基質再添加による初期微生物濃度の希釈度を意味し、添字0は各回 分実験の初期、1は1回目、2は2回目、fは最終をそれぞれ示す。t1、t2は、例とし て、それぞれの初期基質濃度の50%(Sl=SO/2、S2=SO!2)に達した時の反応時間と した。
増殖収率YXは他の実験から推定可能であり、基質濃度SOl、Sf、Sωは測定値で、あ る。また、実験期間中、最大比増殖速度μmは一定であり、μml-μm2となる。し たがって、式(11)において、ある濃度Sに到達する反応時間比t/t2を与え、また、
2回目の初期微生物濃度X02が式(12)のように1回目の初期微生物濃度X01を用いて 表わされるため、未知数はX01だけとなる。したがって、試行錯誤的に初期微生物 量X01を決定することができる。また、式の形から判断できるように、X01とX02が 大きく異なるほど結果として反応時間比が大きくなり、感度良く微生物量を推定 することが可能となる。したがって、前述のように実験条件としてl回目の初期 微生物濃度XOlを、基質消費に伴い増殖する微生物濃度ムXに比べ十分小さくする ことが望ましい。
この推定法は、基質消費データだけでなく代謝産物生成データにも適用でき る。すなわち、式(10)に示されるように、生産物収率Ypを導入することで反応時 間tと生産物濃度Pの関係が導かれ、上記と同様に生産物濃度経時変化からも活性 微生物濃度が推定可能となる。
以上のように、未知数をl回目の初期微生物濃度のみにできることから、図3-6 に示した推定手順で初期微生物濃度が推定されるとともに、その活性微生物濃度
図3-6 初期微生物濃度および 最大比増殖速度の推定手順
を基礎とした最大比増殖速度μmも推定可能となる。
また、式(11)の分母・分子を増殖収率YXで割ればわかるように、本推定法では XrfYxの値を推定していることになり、yxが2倍になれば、推定される初期微生物 濃度X。の値も2倍となる。
4-2単一回分実験結果に基づく推定
4-1節でまとめた活性微生物量推定では、反復回分実験を行うことにより、基 質濃度が飽和定数より十分高い領域を2回確保し、それぞれの初期微生物量の違 いを反応時間の違いに読みかえて推定を行っている。 図3-7に示す様に、単一の 回分実験においても、基質が十分に存在する領域では微生物量推定の基礎式であ る式(9)、(10)を常に満足している。 したがって、 この領域内で2組の反応時間と 基質濃度(S1とt1、S2とら)を与えると、式(13)が得られる。
So
ω世終値糊 S1
t2
恒 男堅
高
士H P1t2
反応時間t
図3-7 単一回分実験概略図
lnXO+(So-SI)Y
x11= X0 ...(13)
t2
lnXO+(So-S2) Y
xx。
式(13)において未知数は初期微生物濃度X。だ、けとなり、 両者の反応時間比t/t2を 満足するような初期微生物量X。を一義的に求めることが可能となる。 以下同様 に、 図3-6のフローチャートにしたがって最大比増殖速度μmも推定可能となる。
4-3 希釈倍率の違いに着目した推定
図3-8に示す様に、 無希釈およびある既知の倍率rで希釈した懸濁液を用いた回 分実験から得られる基質消費カーブからも、 活性微生物量を推定することが可能 である。r倍に希釈した懸濁液を用いた回分実験では、 基質除去速度が遅く、2つ の特徴的な基質消費カーブを得ることが可能である。 それぞれの基質消費カーブ の任意の反応時間と基質濃度を与えることにより、 式(14)が得られる。
一一一一 原液 一一一ー バ音希釈液 50
S2
cf)
援S1
出直 補1VA
VA
XMm照套川明憲 12
Xo XoIr
/ / ... 戸' J"
---
反応時間t
図3-8 希釈倍率の遣いに着目した推定方法の概略図 lnXO+(SO-Sl) Y
x11= X0 ...(14)
t2 ln
Xr/r+( So-�)Y
xXo/r
式(14)において未知数は初期微生物濃度X。だけとなり、 両者の反応時間比tんを 満足するような初期微生物量X。を一義的に求めることが可能となる。
第5節 総括
本章では、従来総括的微生物量指標であるss.vss.タンパク質濃度に代わる活 性微生物量を推定するための基礎式およびその適用条件を示した。 この活性微生 物量推定法はその利用基質に着目し、その種類にしたがってそれぞれの微生物群 の微生物量を動力学的に推定しようとするものである。 本章を総括すると以下の ようである。
l)Monod式を基礎とした活性微生物量推定式を提示した(式(9)、(10))。 すなわ ち、回分実験から得られる任意の反応時間と基質濃度あるいは代謝産物濃度を 与えることにより、活性量を評価できる。
2)その際、 初期基質濃度So は飽和定数ksよりも十分に大きくなければならず、 ま た、実験条件として、初期微生物濃度X。を微生物増殖ムXに比べ十分に低く設 定する必要がある。
3)この評価法により推定される活性微生物量は、利用基質に着目したものであ り、利用基質ごとの微生物量である。 しかも、従来のように不活性物質を含 み、さらにあらゆる微生物群種をも含んだ指標ではない。 いわば、モデル上で の微生物量指標である。 また、種々の微生物量指標に応じて、本来普遍である べき増殖定数に違いが生じてくることが示唆された。
4)活性微生物量推定式を用いて一義的にその微生物量を推定する方法を提示し、
活性微生物量をもとにした最大比増殖速度μmも推定可能である。
の活性微生物量の推定
nu
nv nuw
《v a・
内4
之内〕00・回E}U〈工・』且エ
Vial No.P
00 0400
第4章 完全混合槽内の浮遊微生物中の 活性微生物量の推定
第1節 緒論
嫌気性廃水処理に関わる微生物群のメタン生成活性を測定するために、バイア ルびんを用いた実聯吉果が報告されている1)-九それらの実験手法は純粋培養系 で使用されているもの4)-6)を、混合培養系に適用したものである。 パイアルびん による活性テストは、種々の条件下で大量の実験を同時に、かつ簡単に行える利 点を有する反面、その試駒吉果は実験時の操作や培地条件の影響を受ける欠点が あるη。特に、 絶対嫌気性微生物であるメタン生成細菌にこの手法を適用する場 合、酸素の混入により微生物が失活したり、培地条件により活性に違いが生じ る。 また、代謝産物であるメタンガスの発生量に関するデータは重要で、あるにも かかわらず、 これまで余り報告されておらず、しかも、パイアル実験でのガス発 生量の計算方法やバイアル内部で、のCOD(Chemical Oxygen Demand、化学的酸素 要求量)収支についての報告例も少ない。 このように、廃水処理系でのメタン生 成活性測定のためのパイアル実験手法は確立されているとは、未だいえない状況 にある。
本章では、まず最初に、酢酸および混合酸(酢酸+プロピオン酸+酪酸)による集 積培養微生物を用いたバイアル実験に基づき、還元剤であるシステインと硫化ナ トリウムの添加・無添加によるメタン生成活性への影響、実験結果の再現性、そ のCOD収支について検討を加える。
次いで、嫌気性微生物のうち基質特異性が比較的明瞭な酢酸利用メタン生成細 菌(集積培養)を用いて、パイアル回分実験を行う。 この回分実験から得られる反 応時間と基質濃度あるいは代謝産物濃度の関係をもとに、前章で提示した活性微 生物量推定式を用いて活性微生物量および、増殖速度定数の推定を行い、その妥当 性を実験的に検証する。
同様に、 プロピオン酸を基質とした集積培養微生物を用いてパイアル回分実験 を行い、 その微生物中に存在する水素生成酢酸生成細菌および酢酸利用メタン生 成細菌の活性微生物量および増殖速度定数の推定を行う。 この結果をもとに、 混 合培養系においても、 本推定手法が妥当であることを実験的に検証する。