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上代における憑依表現の研究 : 「カムガカリ」を中 心に

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

上代における憑依表現の研究 : 「カムガカリ」を中 心に

藤崎, 祐二

http://hdl.handle.net/2324/4474907

出版情報:九州大学, 2020, 博士(文学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

(様式6-2)

氏 名 藤崎 祐二

論 文 名 上代における憑依表現の研究 ――「カムガカリ」を中心に――

論文調査委員

主 査 九州大学 教授 辛島 正雄 副 査 九州大学 教授 高山 倫明 副 査 九州大学 准教授 川平 敏文 副 査 九州大学 教授 坂上 康俊

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

本論文は、『古事記』と『日本書紀』に、それぞれ一回ずつ見える「カムガカリ」の語に焦点を当 て、上代における憑依表現の実態を、用いられた漢字をつぶさに検討することにより、その訓を確 定する中で、浮き彫りにしようとするものである。

「カムガカリ」の語は、アマテラスをアメノイハヤから誘い出す場面において、アメノウズメの 行為として見え、『日本書紀』の「顕神明之憑談」という文字列に対する訓注に「此云歌牟鵝可梨」

とあることから、訓が確定される。同じ場面について『古事記』では、「神懸」と表記しているが、

同様に「カムガカリ」と読むものと判断される。この語を起点にして、上代の文献に見られる憑依 表現を精査すると、「著(着)」「託」「認」「憑」「帰」の文字が憑依の意味で用いられていると思わ れ、「カムガカリ」とも関連づけて、従来しばしば「カカル」と読まれてきた。しかし、それらには 訓注がなく、本当にそのように読んでよいものかについては、慎重な判断が求められる。

そこで、まず用例の多い「著(着)」「託」の読みと語義を検証し、これが「ツク」と読むべきも のであり、「カカル」とは明瞭に区別すべき文字であることを明らかにする。特に使用頻度が圧倒的 に高い「託」の文字については、漢籍では「とりつく」の意での使用が見出しがたい一方、『日本霊 異記』ではすべて「とりつく」の意であるなど、その差異が甚だしく、そうした違いが生じた原因 を、和語「ツク」に《頼る系》の意味と《附着・接着系》の意味とが認められることから、《頼る系》

の意味しかない漢語「託」に和語「ツク」を当てた際、《附着・接着系》の意味にひきずられた結果 ではないかと推定する。また『万葉集』に一例見える「認」も、「ツク」と読むべきとする。

さらに「帰」と「憑」については、「ヨル」と読むべき蓋然性が高いことを示し、ここであらため て「顕神明之憑談」という文字列に立ち返ると、これが、「神明が寄(憑)り、語(談)ることを明

(顕)らかにする」意と説くことができ、特に名を「顕す」ことに重点を置いた「カムガカリ」と いう行為の実態を窺うことができるとする。その上で、上代における神と人との交流や関わり合い を表現するのが「カカル」であり、「ツク」「ヨル」はそれを構成する一要素であると結論付ける。

以上のように、本論文は、用例の乏しい「カムガカリ」に注目し、憑依に関連する漢字とその語 義についての徹底的な検証に基づき、その実態や意味を明らかにしたものとして、独自の成果を上 げており、今後の発展も期待される。よって、本調査委員会は、本論文の提出者が博士(文学)の 学位を授与されるに十分な能力を有することを認めるものである。

参照

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