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Supersymmetric radiative seesaw modelにおける Affleck-Dine mechanismによるleptogenesis

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(1)

Supersymmetric radiative seesaw modelにおける Affleck‑Dine mechanismによるleptogenesis

著者 東 宏樹

雑誌名 金沢大学大学院自然科学研究科博士学位論文,68p.

号 2010

ページ 1‑68

発行年 2011‑03‑01

URL http://hdl.handle.net/2297/34834

(2)

Supersymmetric radiative seesaw model における Affleck-Dine mechanism による leptogenesis

金沢大学自然科学研究科数物科学専攻 理論物理学研究室

東 宏樹

平成

23

3

2

(3)

目 次

導入

3

1

章 素粒子標準模型

5

1.1

標準模型の粒子

. . . . 5

1.2

ヒッグス機構

. . . . 6

1.3

バリオン数、レプトン数

. . . . 7

2

章 標準宇宙論

9 2.1

ロバートソン・ウォーカー計量

. . . . 9

2.2

フリードマン方程式

. . . . 10

2.3

状態方程式

. . . . 11

2.4

密度パラメータ

. . . . 13

2.5

物質優勢、輻射優勢

. . . . 13

2.6

エントロピー

. . . . 14

2.7

インフレーション

. . . . 16

2.7.1

インフラトン

. . . . 16

2.7.2

再加熱

. . . . 18

3

章 素粒子標準模型の問題点

20 3.1

ダークマター不在の問題

. . . . 20

3.2

ニュートリノ質量の問題

. . . . 21

3.2.1

ニュートリノ観測

. . . . 21

3.2.2

ニュートリノ振動

. . . . 22

3.2.3 MNS

行列とトリバイマキシマルミキシング

. . . . 23

3.2.4

シーソー機構

. . . . 24

(4)

3.3.2

レプトジェネシスシナリオ

. . . . 26

4

章 最小超対称性標準模型

28 4.1

超場

. . . . 28

4.2 MSSM . . . . 29

4.3 R

パリティと

LSP . . . . 30

4.4

超対称性の破れ

. . . . 31

4.5

グラビティーノ問題

. . . . 32

5

章 アフレック・ダイン機構

33 5.1

平坦方向

. . . . 33

5.2

平坦方向の持ち上がり

. . . . 34

5.2.1

繰り込み不可能な項による持ち上がり

. . . . 34

5.2.2

超対称性の破れの効果による持ち上がり

. . . . 35

5.3

平坦方向の発展

. . . . 39

5.3.1

インフレーション中

. . . . 40

5.3.2

インフレーション終了から

ϕ

が振動を開始するまで

. . . . 40

5.3.3 ϕ

が振動する時期

. . . . 42

6

章 本論文の模型におけるアフレック・ダイン機構

44 6.1

超対称輻射シーソー模型

. . . . 44

6.2

平坦方向

. . . . 47

6.3

平坦方向の発展

. . . . 49

6.4

レプトン数の計算

. . . . 53

6.5

レプトン数計算のための条件

. . . . 55

まとめ

58

謝辞

59

付録

60

(5)

導入

近年のニュートリノ質量

[1]

やダークマター

(dark matter : DM)[2]

の観測は、いず れも素粒子の標準模型

(standard model : SM)

では説明できないものである。宇宙に存 在するバリオンの起源であるバリオン数非対称性も同様に標準模型では説明がつかな

[3]。そこで、標準模型を超えた理論でこれらを説明する試みがなされてきた。

まず、ニュートリノ質量とバリオン数非対称性は、シーソー機構の枠組みの中でレ プトジェネシス・シナリオから統一的に説明できることが知られている

[4]。この理論

を発展させた研究は近年活発に行われている

[5]。

次に、元々はヒエラルキー問題を解決するために導入された超対称性

(supersymmetry)

は、宇宙に存在するダークマターの問題にも大きく関与してくる

[6]。なぜなら、超対

称な模型で

R

パリティが保存されているものには、ダークマターの候補に非常に適し た粒子として最軽量超対称粒子

(lightest superparticle : LSP)

が存在するからである。

最小超対称標準模型

(minimal supersymmetric standard model : MSSM)

やその拡張模 型で、ニュートラリーノ

LSP

がダークマター候補として研究されてきた

[6][7][8]。

そこで、レプトジェネシスとダークマター候補を超対称な模型で同時に説明する理 論が有用であると考えられる。しかしながらこの理論では、宇宙の再加熱温度

T

Rが少 なくとも

10

8

GeV

より高くなければ熱的な重いニュートリノの非平衡的崩壊が十分な バリオン数非対称性を生み出せないことがわかった

[5]。そのような高い再加熱温度が

必要になると、グラヴィティーノ問題が起こってきて問題がある

[9][10]。この問題点を

解決しようと、

CP

非対称性を大きくしたり再加熱温度を低く抑えたりする様々な試み がなされてきた

[11][12][13]。

一方で最近、輻射ニュートリノ質量模型

(radiative neutrino mass model)

TeV

ケールの新しい物理の候補として注目を集めている

[14][15][16]。この種の模型の多く

は、右巻きニュートリノや他の新しい粒子が

O(1)TeV

の質量を持つとされる。そして、

新たに導入する

Z

2対称性によりツリーレベルのディラックニュートリノ質量が禁止さ

(6)

構成する粒子が

Z

2偶であるならば、Z2奇な粒子のなかで最も軽いものは安定であるた め、ダークマターの候補となることができる

[14]。この論理は、R

パリティのおかげで

LSP

がダークマター候補となる、という

MSSM

のそれと全く同じである。

残念なことに、この右巻きニュートリノは軽すぎるため、熱的レプトジェネシスで 十分なレプトン数を作ることは出来ない。この欠点を改善するため、輻射シーソー機 構と普通のシーソー機構を同時に用い非超対称な折衷模型が提案された

[17]。しかしこ

の折衷模型を超対称化しようとすると、熱的な重いニュートリノの崩壊を利用し続け る限り、またもやグラヴィティーノ問題に直面してしまう。従って、このタイプの超対 称輻射ニュートリノ質量模型をグラヴィティーノ問題と矛盾することなく熱的レプト ジェネシスと融合させることは困難であると思われる。

本論文の目的は、超対称輻射ニュートリノ質量模型における別のレプトジェネシス の可能性を提案することである。それは、スカラーポテンシャルの平坦方向をもたら す場の配位

LH

uにアフレック・ダイン

(Affleck-Dine : AD)

機構

[18]

を適用すること で、非熱的なレプトン数生成をもたらす方法である。我々の模型と過去になされてき

AD

機構によるレプトジェネシスの研究

[19][20][21]

との違いは、ニュートリノ質量 の生成機構がこのレプトン数生成に用いられる平坦方向と無関係である点である。本 論文では、このレプトジェネシスによって得られるバリオン数と再加熱温度の関係を 計算することで、グラヴィティーノ問題がうまく回避されていることを示す。

本論文の各章について概観しておく。第

1

章では素粒子標準模型について、後の議 論に必要な部分を簡単にまとめておく。第

2

章では標準宇宙論の解説をする。宇宙論 と素粒子論は大変密接な関係があり、本論文も初期宇宙の物理を扱っているため、宇 宙論の様々な知識が必要になる。第

3

章では観測実験から明らかになった素粒子標準 模型の

3

つの問題点を扱う。3つとも我々の模型で解決を図るものであるが、3つ目の バリオン数の破れの問題は本論文の目的そのものである。第

4

章では最小超対称標準 模型を解説する。本模型の基礎になる模型で、非常に重要である。特にグラビティー ノ問題は、これに抵触しないことが計算結果の条件になっている。第

5

章ではアフレッ ク・ダイン機構のレビューをする。この論文はこの機構を使用して計算を行なってお り、本論文の中のもっとも重要な理論である。第

6

章では本模型にアフレック・ダイン 機構を適用する。最初に本模型の概説をしてから、第

5

章と同じ流れで実際の計算を 進める。本論文の核である。

(7)

1 章 素粒子標準模型

1.1 標準模型の粒子

標準模型

(standard model : SM)

とは、素粒子の観測結果を最もよく説明している模

型である。標準模型に含まれる粒子を表

1.1

にまとめておく。

スピン 量子数

0 1/2 1 SU (3)

c

SU (2)

L

U (1)

Y

クォーク

Q

i

( u

iL

d

iL

)

3 2 1/3

U ¯

i

u ¯

iR

¯ 3 1 -4/3

D ¯

i

d ¯

iR

¯ 3 1 2/3

レプトン

L

i

( ν

eLi

e

iL

)

1 2 -1

E ¯

i

¯ e

iR

1 1 2

ゲージ粒子

G

a

g

a

8 1 0

W

b

 

W

+

W

0

W

 

 1 3 0

B B 1 1 0

ヒッグス

H

( ϕ

+

ϕ

0

)

1 2 1

1.1:

標準模型の粒子

この模型は

SU (3)

c

SU(2)

L

U (1)

Y のゲージ対称性を持っており、その繰り込み

(8)

可能なラグランジアンは次のようになる。

L = L

gauge

+ L

matter

+ L

yukawa

+ L

higgs

. (1.1)

ここで、

L

gauge

= 1 4

( G

aµν

G

aµν

+ W

µνb

W

bµν

+ B

µν

B

µν

) ,

L

matter

= ¯ Q

i

µ

D

µ

Q

i

+ ¯ U

i

µ

D

µ

U

i

+ ¯ D

i

µ

D

µ

D

i

+ ¯ L

i

µ

D

µ

L

i

+ ¯ E

i

µ

D

µ

E

i

, L

yukawa

= y

uij

Q ¯

i

HU ˜

j

y

ijd

Q ¯

i

HD

j

y

ije

L ¯

i

HE

j

+ h.c.,

L

higgs

= (D

µ

H)

(D

µ

H) + µ

2

H

H λ

4 (H

H)

2

, (1.2)

である。

1.2 ヒッグス機構

一般に、ディラック粒子

ψ

の質量項は

m ψ ¯

L

ψ

R

+ h.c.

の形でラグランジアンに入っ てくる。ここで

m

は質量、添字

L, R

はそれぞれ左巻き成分、右巻き成分を表す。しか し、この項は標準模型ではゲージ対称性で禁止されている。

そこで、ヒッグス粒子が質量を持つことで

SU(2)

L

U (1)

Y が自発的に破れ、他の粒 子が質量を獲得する機構を考える。これをヒッグス機構と呼ぶ。

ヒッグスのポテンシャルは

(1.2)

L

higgsを見ればわかるように、

V (H) = µ

2

H

H + λ

4 (H

H)

2

(1.3)

である。µ2

< 0

ならポテンシャルの形から、ヒッグスの真空期待値は

0

である。とこ ろが

µ

2

> 0

になると、⟨

H =

2

λ

v2の点にポテンシャルの極小値ができ、ヒッグ スは真空期待値を持つ。

H = 1

2 ( 0

v )

(1.4)

(9)

と真空を選ぶ。すると

(1.2)

の湯川項は

L

yukawa

= y

iju

2 v u ¯

iL

u

jR

y

dij

2 v d ¯

iL

d

jR

y y

ije

2 v e ¯

iL

e

jR

+ h.c. (1.5)

となる。このようにしてクォークとレプトンは質量を獲得する。ただし、標準模型の ニュートリノには右巻きが存在しないので、ニュートリノは質量を持たないことに注 意する必要がある。この点は標準模型の問題点として後に取り上げる。

1.3 バリオン数、レプトン数

標準模型の粒子にバリオン数

B、レプトン数 L

を次のようにアサインする。

B (Q

i

) = B(U

i

) = B (D

i

) = 1

3 ,

他は

0,

L(L

i

) = L(E

i

) = 1,

他は

0. (1.6)

すると、標準模型のラグランジアン

(1.2)

e

iBθ

e

iLθ

U (1)

位相変換で不変であ る。この

U (1)

対称性をそれぞれバリオン対称性、レプトン対称性と呼ぶ。これは、バ リオン数、レプトン数が保存しているということであり、現実の素粒子反応をよく説 明している。

B, L

が保存しているならば、バリオン数カレント

j

Bµ、レプトン数カレント

j

Lµ

µ

j

Bµ

= 0,

µ

j

Lµ

= 0 (1.7)

となる。しかし、量子補正を考慮すると、標準模型の枠内でも

B, L

は破れる。

µ

j

Bµ

=

µ

j

Lµ

= N

f

32π

2

[g

22

W

µνb

W ˜

bµν

g

12

B

µν

B ˜

µν

], (1.8)

ここで、

N

f はフェルミオンの世代数、

W ˜

bµν

12

ϵ

µνρσ

W

ρσb 、Wµνb

, B

µν

SU (2)

L

, U (1)

Y

の場の強さのテンソル、g2

, g

1

SU(2)

L

, U (1)

Y のゲージ結合定数である。

ここで注目したいのは、B, Lは各々単独ならば破れているが、B

L

は保存すると

(10)

いう事実である。すなわち上式より、

µ

j

B+Lµ

= N

f

16π

2

[g

22

W

µνb

W ˜

bµν

g

12

B

µν

B ˜

µν

],

µ

j

BµL

= 0 (1.9)

両辺を時空で積分することで、B

+ L, B L

の変化量が次のように求まる。

∆(B + L) = 2N

f

n,

∆(B L) = 0. (1.10)

ここで、

n

は整数値をとることが知られている。この

B +L

を破る過程の確率は

10

170 度と非常に小さいので、通常は無視できる。しかし、温度

T

100GeV < T < 10

12

GeV

程度の高温状態では、スファレロン過程と呼ばれる遷移過程が熱平衡になるため、

B L

を破る過程が無視できなくなる。この過程は、後述する宇宙のバリオン数生成におい て非常に重要な働きをする。

(11)

2 章 標準宇宙論

現在の宇宙物理学では標準宇宙論と呼ばれる基礎的な理論が確立している。この理 論によると、宇宙はアインシュタインの一般相対性理論に従っており、ビッグバン以降 膨張しながら今日に至っているとされる。この章では標準宇宙論を今回の研究に必要 な部分に絞ってまとめる。なお、この章は文献

[22]

を参考にしている。

2.1 ロバートソン・ウォーカー計量

観測から、我々の宇宙は大局的に見れば空間的に非常に均一な状態にあることがわ かっている。そこで、宇宙は一様かつ等方である、と仮定する。この仮定から導かれる 時空の計量を、ロバートソン・ウォーカー

(Robertson-Walker : RW)

計量と呼ぶ。

RW

計量は極座標

x

µ

= (t, r, θ, ϕ)

を用いて次のように与えられる。

ds

2

= g

µν

dx

µ

dy

ν

= dt

2

a

2

(t)

[ dr

2

1 Kr

2

+ r

2

2

+ r

2

sin

2

θdϕ

2

]

. (2.1)

ここで

g

µνは計量テンソルと呼ばれ、次のように表される。

g

µν

=

 

 

 

1 0 0 0

0

1a2Kr(t)2

0 0

0 0 a

2

(t)r

2

0

0 0 0 a

2

(t)r

2

sin

2

θ

 

 

 

, (2.2)

g

µν

=

 

 

 

1 0 0 0

0

1a2Kr(t)2

0 0 0 0

a2(t)r1 2

0

0 0 0

1

 

 

 

. (2.3)

(12)

これより、計量テンソルの行列式は

| g

µν

| = a

6

r

4

sin

2

θ

1 Kr

2

(2.4)

となる。ここで、Kは空間の曲率のパラメータ、a(t)は宇宙の大きさのパラメータで スケール因子と呼ばれる。

2.2 フリードマン方程式

宇宙の膨張はスケール因子

a(t)

の時間発展で記述される。そこで

a(t)

の従う方程式 を導く。

R

µν

1

2 R g

µν

G

µν

= 8πGT

µν

+ Λg

µν

(2.5)

はアインシュタイン方程式である。Rµνはリッチ曲率テンソル、

R

はリッチスカラー、

G

µν はアインシュタインテンソル、Gは重力定数、Tµν はエネルギー運動量テンソル、

Λ

は宇宙定数

(真空のエネルギー)

である。アインシュタイン方程式に

RW

計量を代入 すれば、エネルギー運動量テンソルは

(T

µν

) =

 

 

 

ρ 0 0 0

0 p 0 0 0 0 p 0

0 0 0 p

 

 

 

(2.6)

と表せることがわかる。これは完全流体のエネルギー運動量テンソルになっており、ρ はエネルギー密度、pは圧力である。

改めてアインシュタイン方程式の時間成分と空間成分を書けば次式を得る。

H

2

( a ˙

a )

2

= 8πG 3

i

ρ

i

K a

2

+ Λ

3 , (2.7)

¨ a

a = 4πG 3

i

i

+ 3p

i

) + Λ

3 . (2.8)

ただし宇宙には様々な種類の粒子があるため、ρ

p

を種々の粒子

i

のエネルギー密度

ρ

iと圧力

p

iの和で表した。これらが

a(t)

の時間変化を決定する方程式であり、(2.7)

(13)

は特にフリードマン方程式と呼ばれる。また、H(t)

a/a ˙

をハッブルパラメータとい い、これは時間の関数になっている。

2.3 状態方程式

宇宙を構成する粒子

i

は様々であるが、そのエネルギー密度

ρ

iと圧力

p

iの間には一 般的に

p

i

= w

i

ρ

i

(2.9)

という関係が成り立つ。この式を粒子

i

の状態方程式といい、wiは粒子によって決ま る定数である。

粒子

i

は非相対論的粒子と相対論的粒子に大別できる。非相対論的粒子とは、運動エ ネルギーに比べて質量エネルギーが十分大きい粒子のことで、現在の宇宙ではバリオ ンやダークマターがこれにあたる。以下ではこれを物質

(matter)

と呼び、添え字

i

m

で書く。相対論的粒子は、質量エネルギーが無視できるほど小さいか、もしくは質 量のない粒子で、現在の宇宙では光子やニュートリノがこれにあたる。以下ではこれ を輻射

(radiation)

と呼び、i

r

で書く。ここでは各種粒子の

w

iを求める。

統計力学によると、熱平衡状態にある粒子

i

の個数密度

n、エネルギー密度 ρ、圧力 p

はそれぞれ

n = g (2π)

3

f (p)d

3

p, (2.10)

ρ = g (2π)

3

E(p)f(p)d

3

p, (2.11)

p = g (2π)

3

| p |

2

3E(p) f (p)d

3

p. (2.12)

ここで

g

は粒子の内部自由度、p

E(p)

はそれぞれ粒子の運動量とエネルギーであり、

質量を

m

とすると

E

2

= | p |

2

+ m

2である。また分布関数

f(p)

f (p) = 1

exp

(

E(p)µ T

) ± 1

(2.13)

(14)

学ポテンシャル、T は温度である。

(2.10)(2.11)(2.12)

(2.13)

を代入した後、非相対論的極限と相対論的極限で計算す ることにより、以下の結果が得られる。

非相対論的な極限

T m

では

n = g

( mT

)

3/2

exp (

m µ T

)

, (2.14)

ρ = nm, (2.15)

p = nT ρ. (2.16)

これより、物質については

w

m

= 0

と近似できることがわかる。

一方、相対論的な極限

T m

では、µ/T

1

の極限

(宇宙論で重要な粒子はこの条

件を満たしている)で計算すると、

n =

 

(ζ(3)/π

2

)gT

3

(ボーズ粒子), (3/4)(ζ(3)/π

2

)gT

3

(フェルミ粒子),

(2.17)

ρ =

 

2

/30)gT

4

(ボーズ粒子), (7/8)(π

2

/30)gT

4

(フェルミ粒子),

(2.18)

p = ρ/3 (2.19)

となる。ここで、ζ(s) =

n=1

n

sはリーマン・ツェータ関数で、ζ(3)

1.2

である。

(2.19)

より、輻射については

w

r

= 1

3

が得られる。

また、宇宙定数

(真空のエネルギー)

を粒子の一種として扱うと、そのエネルギー密 度はフリードマン方程式

(2.7)

より

ρ

Λ

Λ/8πG

となり、さらに

(2.8)

より

w

Λ

= 1

でる。

以上をまとめると、物質、輻射及び宇宙定数の状態方程式は次のようになる。

p

m

= 0 (w

m

= 0), p

r

= 1

3 ρ

r

(w

r

= 1 3 ),

p

Λ

= ρ

Λ

(w

Λ

= 1). (2.20)

(15)

2.4 密度パラメータ

フリードマン方程式

(2.7)

を変形してみる。

K

H

2

a

2

= ρ

3H

2

/8πG 1 ρ

ρ

c

1 1. (2.21)

ρ

c

3H

2

/8πG

を臨界密度といい、ρ

= ρ

cの時

K = 0、すなわち宇宙は平坦になる。

(2.21)

の左辺の

K

が宇宙の曲率を決定するから、結局

が宇宙の曲率を決定する。

> 1 ⇐⇒

曲率は正

⇐⇒

宇宙は閉じている

Ω = 1 ⇐⇒

曲率は0

⇐⇒

宇宙は平坦

< 1 ⇐⇒

曲率は負

⇐⇒

宇宙は開いている

宇宙観測より、現在の宇宙は非常に平坦

(K = 0)

であることがわかっており

(以下では

ずっと

K = 0

と近似することにする)、また、現在の宇宙にある諸エネルギーの割合は 次のようになる。[2]

真空のエネルギー

Λ

0.73

ダークマター

DM

0.23

バリオン

B

0.044

輻射

r

0.016

2.5 物質優勢、輻射優勢

エネルギー運動量保存則

µ

T

µν

= 0

の時間成分から

˙

ρ = 3 a ˙

a (ρ + p)

= 3H(1 + w)ρ (2.22)

が導かれる。ここで

ρ

は全粒子のエネルギー密度の和、pは全粒子の圧力の和であり、

w

p =

と定義した。この方程式がエネルギー密度の時間発展を与える。ただし、

(16)

この保存則は、粒子

i

が他の種類の粒子とエネルギーをやり取りしていなければ粒子

i

単独で成立するから、

˙

ρ

i

= 3 a ˙

a

i

+ p

i

)

= 3H(1 + w

i

i

. (2.23)

物質の場合、wm

= 0

だから

˙

ρ

m

= 3 a ˙

a

i

+ p

m

),

よって

ρ

m

a

3

. (2.24)

輻射の場合、wr

=

13 だから

˙

ρ

r

= 3 a ˙

a

r

+ p

r

),

よって

ρ

r

a

4

. (2.25)

(2.24)

(2.25)

から、aが小さい初期の宇宙では

ρ

m

ρ

rであり、宇宙が膨張して

a

大きくなると

ρ

m

ρ

rになることがわかる。

宇宙のエネルギー密度

ρ

の大部分が輻射で占められているとき、宇宙は輻射優勢で あるという。一方、ρが物質で占められている状態を物質優勢であるという。フリード マン方程式から輻射優勢期、物質優勢期のスケール因子とハッブルパラメータの時間 発展がわかる。すなわち、(2.7)

K = 0, Λ = 0

とすると次のようになる。

a t

12

, H = 1

2 t

1

(物質優勢), (2.26)

a t

23

, H = 2

3 t

1

(輻射優勢). (2.27)

2.6 エントロピー

(2.22)

を変形すると次式が出る。

d(ρa

3

) + pd(a

3

) = 0. (2.28)

(17)

エントロピー

S、内部エネルギー U

、体積

V

、粒子数

N

としたとき、熱力学第一法則

dS = dU + pdV µdN

T (2.29)

V

a

3

(共動体積)

にとり、µ

T

または

dN = 0

とすると

(2.28)

dS = 0 (2.30)

となる。すなわち、化学ポテンシャルが熱エネルギーに比べて無視できるか、あるい は共動体積あたりの粒子数が保存するとき、共動体積中のエントロピーは保存する。

ここで、初期宇宙のエントロピーを求めおく。実際の宇宙では化学ポテンシャルは 無視できるので、エントロピーは

S = U + pV

T (2.31)

となる。エントロピー密度

s S/V

を定義すると、

s = ρ + p

T = (1 + w) ρ

T . (2.32)

初期宇宙を考えれば、エネルギー密度やエントロピー密度への寄与は輻射のみを考慮 すればよい。よって

ρ

(2.18)

を代入し、w

=

13 とすると、

ρ = π

2

30

b,f

(

g

b

T

b4

+ 7 8 g

f

T

f4

)

= π

2

30 g

T

4

, (2.33)

s = 2π

2

45

b,f

(

g

b

T

b3

+ 7 8 g

f

T

f3

)

= 2π

2

45 g

s

T

3

. (2.34)

ただし添字

b

はボーズ粒子、f はフェルミ粒子で、他仕上げはすべてのボーズ粒子と フェルミ粒子について行っている。また、代表的な温度

T

としてを光子の温度を採用 し、有効自由度

g

, g

∗sを次のように導入している。

g

= ∑

b,f

( g

b

T

b4

T

4

+ 7 8 g

f

T

f4

T

4

)

, g

s

= ∑

b,f

( g

b

T

b3

T

3

+ 7 8 g

f

T

f3

T

3

)

. (2.35)

(18)

2.7 インフレーション

初期宇宙においてハッブルパラメータ

H

が定数

H

Iであった時期が存在するとされ ている。

a/a ˙ H = H

Iだから、

a e

HIt

(2.36)

が成り立つ。すなわち、宇宙が指数関数的に膨張したことになる。これをインフレー ションと呼ぶ。インフレーションの模型には様々なものがあるが、ここでは一般的な 解説に留める。

2.7.1

インフラトン

インフレーションが起こるためには

H

が定数であればよいわけだが、これはフリー ドマン方程式

(2.7)

の右辺が定数であることを意味する。この状況は宇宙定数項が他の 項に比べ非常に大きければ実現する。

H

2

= ( a ˙

a )

2

= Λ

3 . (2.37)

しかし文字通りの定数として

Λ

を導入すれば定数ゆえにインフレーションは永遠に終 わらない。そこで初期宇宙に一時的に存在するようなスカラー場

I

を導入し、そのエ ネルギーが宇宙定数のように振舞うと考える。この場をインフラトンと呼ぶ。

インフラトン

I

を複素スカラー場とし、そのポテンシャルを

V (I, I

)

とすると、ラ グランジアン密度は

L =

µ

I

µ

I V (I, I

) (2.38)

となる。作用

S

は、計量の行列式を

g

とすると、次式である。

S =

dx

4

g L . (2.39)

変分原理

δS = 0

よりオイラー・ラグランジュ方程式

µ

( ∂( g L )

∂(∂

µ

I

) )

∂( g L )

∂I

= 0 (2.40)

(19)

が導かれる。ロバートソン・ウォーカー計量

(2.2)(2.3)(2.4)

でこれを計算すると、I 従う運動方程式は

2

I

∂t

2

1 Kr

2

a

2

2

I

∂r

2

1 a

2

r

2

2

I

∂θ

2

1 a

2

r

2

sin

2

θ

2

I

∂ϕ

2

+ 3H ∂I

∂t Kr

2

+ 2 a

2

r

∂I

∂r 1 a

2

r

2

tan θ

∂I

∂θ + dV (I, I

)

dI

= 0

(2.41)

となるが、インフレーションにより

a

が急速に大きくなるので

a

が分母に入っている項

(空間微分の項)

は無視できる。結局

I

の従う運動方程式は

d

2

I

dt

2

+ 3H dI

dt + dV (I, I

)

dI

= 0 (2.42)

となる。また、インフラトンのエネルギー密度

ρ

Iと圧力

p

I

ρ

I

= 1

2 ( dI

dt )

2

+ V (I), (2.43)

p

I

= 1 2

( dI dt

)

2

V (I) (2.44)

となる。インフラトンが非常にゆっくり運動していて、運動エネルギーがポテンシャル エネルギーに比べ無視でき、V

(I)

がほとんど定数と扱えるとする。

1 2

( dI dt

)

2

V (I). (2.45)

これをスローロール近似という。このとき

(2.43)(2.44)

より

w

I

= 1

となり、宇宙定 数と同じ状態方程式を満たすことがわかる。また、宇宙のエネルギー密度がインフラ トン優勢であるとき、フリードマン方程式

(2.7)

より

ρ

I

= 3H

2

M

pl2

(2.46)

となる。ここで

M

pl

1/8πG

である。

(20)

2.7.2

再加熱

上述のように、インフレーション中はインフラトンはスローロールしている。この 時、ハッブルパラメータ

H

は定数

H

Iである。宇宙背景放射のゆらぎの観測から、

H

I

10

14

GeV

と見積もられている。

インフレーションが終わると、インフラトンは振動を開始する。この時、ビリアル 定理よりインフラトンは物質として振舞うことがわかる。インフラトンの崩壊幅

Γ

I 程度になったときにインフラトンは輻射に崩壊し、その時放出されるエネルギーがイ ンフレーションによって冷え切った宇宙を再び高温高密度のプラズマ状態にする。こ れが宇宙の再加熱である。

もっとも、インフラトンの振動中にも徐々に崩壊は始まっており、この時期にもプラ ズマは存在する。ここでは宇宙の再加熱温度

T

Rと、それ以前の振動中のプラズマの温

T

rの関係を求める。

この時期の宇宙のエネルギー密度は次の微分方程式に従う。

˙

ρ

I

+ 3Hρ

I

+ Γ

I

ρ

I

= 0, (2.47)

˙

ρ

R

+ 4Hρ

R

= Γ

I

ρ

I

, (2.48)

ρ

I

+ ρ

R

= 3H

2

M

pl2

. (2.49)

ここでドットは時間微分を表し、

ρ

I

, ρ

Rはそれぞれインフラトンとその崩壊によってで きた輻射のエネルギー密度である。

インフレーションが終了しインフラトンが振動し始める時刻を

t

0とし、その時の物 理量には添字

0

を付けることにする。すると、インフレーション終了直後のエネルギー 密度は

ρ

I

(t

0

) = V

0

(I), ρ

R

(t

0

) = 0 (2.50)

となる。H(t0

) > H(t) > Γ

I の時期を考える。この時期はインフラトンの振動エネル ギーが宇宙のエネルギーの大部分を占めている。(2.47)より

ρ

I

= V

0

(I ) ( a

0

a )

3

exp( Γ

I

(t t

0

)). (2.51)

(21)

よって、(2.48)より、

d

dt (a

4

ρ

R

) = a

4

Γ

I

ρ

I

a

4

Γ

I

V

0

(I) ( a

0

a )

3

(1 Γ

I

(t t

0

)). (2.52)

この時期は

a t

2/3だから、

ρ

R

(t) 2 3

5 Γ

I

V

I1/2

M

pl

( a

0

a

)

3/2

(

1 ( a

0

a

)

5/2

)

. (2.53)

ここで、H

= Γ

Iでの輻射の温度を再加熱温度

T

Rと定義する。

T

R

= ( 90

π

2

g

)

1/4

I

M

pl

)

1/2

. (2.54)

すると、上式は

ρ

R

(t) 6 5

( π

2

g

90

)

1/2

T

R2

M

pl

H (

1 ( a

0

a

)

5/2

)

(2.55)

となる。よって、H(t0

) < H Γ

Iならば

T

r

( 72

2

g

)

1/8

(M

pl

HT

R2

)

1/4

(2.56)

と近似できる。ただし、温度

T

T

R

g

はほぼ等しいとした。

(22)

3 章 素粒子標準模型の問題点

素粒子標準模型は現実を非常によく説明しているが、様々な問題点もある。特に、観 測・実験との矛盾するものは深刻で、理論の拡張が望まれている。ここではその中か ら次の

3

つを取り上げ簡単な解説をする。

1.

ダークマター不在の問題

2.

ニュートリノ質量の問題

3.

バリオン数の破れの問題

3.1 ダークマター不在の問題

宇宙には光を発しない暗黒の物質が存在することが観測されている。これをダーク マターと呼ぶ。観測結果はダークマターに次のような性質があることを示唆している。

1.

電気的電荷、カラー電荷が共に

0 2.

相互作用が極めて小さい

3.

安定して存在する

近年の

WMAP

による宇宙背景放射の精密測定により、ダークマター

(dark matter : DM)

の密度パラメータが

DM

0.23 (3.1)

と計算されている

[2]。

このような物質は標準模型には存在しない。仮にニュートリノに質量があったとし ても(標準模型では

0)、軽すぎるために十分な密度パラメータを持つことはできない。

これがダークマター不在の問題であり、標準模型は拡張される必要があることを示 唆している。

(23)

3.2 ニュートリノ質量の問題

標準模型ではニュートリノの質量は

0

としてきた。しかし近年の観測

[1]

より、ニュー トリノにも微小ながら質量が存在することが確実視されるようになった。このため、標 準理論の拡張が必要である。

3.2.1

ニュートリノ観測

ここでは、ニュートリノの観測、実験結果とその問題を簡単に紹介する。

(1)

太陽ニュートリノ問題

太陽では次のような水素の核融合反応が起こっている。

p + p + p + p

4

He + 2e

+

+ 2ν

e

.

この反応によって放出される電子ニュートリノ

ν

eは相互作用の非常に弱い粒子なので ほぼそのまま地球に届く。しかし、観測される量は理論が予想する量の

1/3

程度しか なかった。

これが太陽ニュートリノ問題である。

(2)

大気ニュートリノ問題

宇宙線が大気と衝突するとパイオン

π

+が生成され、そのパイオンはすぐにミューオ

µ

+とミューニュートリノ

ν

µに崩壊する。ミューオン

µ

+はある一定のエネルギー以 下であれば地表に届くまでに崩壊する。

π

+

µ

+

+ ν

µ

, µ

+

e

+

+ ν

e

+ ¯ ν

µ

.

よって、一定のエネルギー以下の領域では電子ニュートリノ

ν

eとミューニュートリノ

ν

µ

, ν ¯

µの飛来数の比は

1:2

になるはずである。しかし観測結果は、上方の大気から来た ものは予想どおりであるが、地球を通過して下方から来たものは、およそ

1:1.3

と予想 とは食い違う値であった。これを大気ニュートリノ問題という。

参照

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