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レプトン数計算のための条件

第 6 章 本論文の模型におけるアフレック・ダイン機構 44

6.5 レプトン数計算のための条件

この節では、(6.22)で与えられたnsB の値が、観測から得られた宇宙のバリオン数非 対称性のそれと同一の値として扱える為の条件を考察する。というのも、式(6.22)は、

H m3/2 で生成されたレプトン数が、すべてバリオン数に転化するという仮定の上 でnsB を見積もっているが、この仮定は以下の条件が満たされたときのみ正しいからで

ある。

1. 平坦方向は、インフラトンの崩壊によって生まれたプラズマとの散乱や自身の崩 壊によって、H ∼m3/2以前に消滅してはならない。

さもなければ、平坦方向の振動で nsL を生成することができない。

2. H ∼m3/2からスファレロン過程が脱結合するまでの期間、平坦方向ϕの関わる レプトン数を破る相互作用は熱平衡から外れている。

まず、条件1.について説明する。条件1.にあるような反応が起こるためには、Γ> H かつ∑

iEi >

fmf が必要である。ここで、Γは反応率、Ei、mf はそれぞれ、始状 態(initial state)に含まれる粒子のエネルギーと終状態(final state)に含まれる粒子の 質量である。再加熱前のプラズマのエネルギーは、温度Tr ≃kr(MplHTR2)1/4で見積も られる。ここでkr =

( 72 2g

)1/8

である[22]。yを結合定数、αy = y2 とすると、ϕとプ ラズマとの散乱率はΓ≃αy2Trであるから、Γ> Hであるためには、

H .(kr4α8yMplTR2)1/3 ∼m3/2 ( y

0.25

)16/3( TR 105GeV

)2/3

(6.23) が要求される。gは有効自由度で、ここではg 100とした。この式は、TR 105GeV を仮定すると、H ∼m3/2ϕがトップ・クォーク(y1)を用いた散乱で消滅してしま うことを示すようにみえる。しかしながら、終状態に含まれる粒子の質量は平坦方向と の相互作用(ヒッグス機構)によってy|ϕ0(H)|となることを考慮しなければいけない。

ここで、yは平坦方向ϕとの結合定数である。これより、次の運動学的条件が導ける。

y|ϕ0(H)| Tr

Hm3/2

((m3/2Mpl)1/2

|ξ|TR

)1/2

y

3×106

(105GeV TR

)1/2

. (6.24)

最も厳しい条件である電子の結合定数y∼105を仮定したとしても、TR105GeVに おいてもy|ϕ0(H)|> Trは満たされている。以上の議論より、再加熱温度TR 102GeV という条件を満たしつつ、平坦方向が消滅する前にnnL

ϕ が十分な値になり得ることがわ かった。

ここで、平坦方向はスファレロン過程が脱結合するT 102GeV以前にプラズマ中 に消滅することにも触れておく。H < m3/2になるとϕはポテンシャルミニマムϕ0 = 0 の周りを振動し始めるから、ϕとの相互作用による終状態の粒子の質量への寄与はな くなる。図(6.1)のケースがその典型的な例である。そのような状況が実現している限

り、ϕによって作られたレプトン数は、レプトン数を保存する散乱を通じて速やかにプ ラズマ中に放出されることが式(6.23)での議論からわかる。このような散乱過程には ヒグシーノH˜d交換によるϕτR→τ˜Rντ LϕbR →ντ L˜bRが含まれる。

次に、条件2.について説明する。レプトン数を破る相互作用はスーパーポテンシャ ル(6.2)中のλu,d項からくる。相互作用λdηdHuφを通じた平坦方向の崩壊は運動学的 に禁じられている。なぜなら、シングレット場φの質量が十分に重いからである。ϕの φ交換による散乱率はu,d|4に比例する。u,d|O(104)程度だと考えている。よっ て、H ∼m3/2からスファレロン過程が脱結合するまでの期間Γ < Hは満たされてお り、レプトン数を破るような危険な相互作用は無視できるため、条件2.も満たされて いる。H ∼m3/2ϕが生み出したレプトン数はすべてプラズマ中に放出され、スファ レロン過程でバリオン数に変換される。平坦方向LHuを用いたAD機構をMSSMに適 用して得られた成果は、本論文で得られたより低い再加熱温度TR 105GeVでも変わ らないことがわかった。

まとめ

超対称輻射シーソー模型は小さなニュートリノ質量を説明しつつ、同時にダークマ ター候補も持つ模型である。しかし、この模型では通常の熱的レプトジェネシスを使っ て宇宙のバリオン数非対称性を説明することは困難であると思われた。なぜなら、こ の模型の右巻きニュートリノ質量はO(1)TeV程度と軽すぎるため、非熱平衡的崩壊で 十分なレプトン数を生み出すことが出来ないからである。

そこで、本論文で超対称輻射シーソー模型においてアフレック・ダイン機構を用い たレプトジェネシスの可能性を考察した。ここでアフレック・ダイン機構を適用した 平坦方向は、よく知られたLHuである。我々の模型ではこの平坦方向がニュートリノ 質量に重要な寄与をしないため、アフレック・ダイン機構に関していかなるニュート リノ質量への制限も発生しない。この点が、同じ平坦方向を用いた従来の研究と大き く違う点であった。

計算の結果、この模型において平坦方向LHuでのアフレック・ダイン機構から、105GeV という低い再加熱温度で十分なバリオン数を生成できることがわかった。この機構の 重要なパラメータがアノーマラスU(1)対称性を導入することによってこの模型の他の パラメータに関係付けられた。この模型は、素粒子標準理論の残した問題点、すなわ ち、ダークマターの問題、ニュートリノ質量の問題、バリオン数の破れの問題をうま く説明している。

謝辞

まず、指導教官である末松大二郎先生に感謝いたします。先生には修士課程の頃から 長年にわたりご指導いただき、大変お世話になりました。ここに御礼申し上げます。ま た、共同研究者の石間崇宏君にも感謝いたします。石間君とは一緒にゼミや議論をし、

物理の理解を深めることができました。また、研究室のスタッフの先生方、秘書の西川 さん、先輩方、後輩のみなさんにも様々なことでお世話になり、大変感謝しています。

付録

-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5

-3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

< n

L

/ n

φ

>

θ

a

図 6.7: θaでプロットしたレプトン数の平均値nnL

ϕx=0.1xiA= 0).

-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5

-3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

< n

L

/ n

φ

>

θ

a

図 6.8: θaでプロットしたレプトン数の平均値nnLϕx=0.1xiA= 14π).

-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5

-3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

< n

L

/ n

φ

>

θ

a

図 6.9: θaでプロットしたレプトン数の平均値nnLϕx=0.1xiA= 12π).

-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5

-3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

< n

L

/ n

φ

>

θ

a

図 6.10: θaでプロットしたレプトン数の平均値nnLϕx=0.1xiA= 34π).

-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5

-3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

< n

L

/ n

φ

>

θ

a

図 6.11: θaでプロットしたレプトン数の平均値nnLϕx=0.1xiA=π).

-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5

-3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

< n

L

/ n

φ

>

θ

a

図 6.12: θaでプロットしたレプトン数の平均値nnLϕx=0.1xiA= 54π).

-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5

-3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

< n

L

/ n

φ

>

θ

a

図 6.13: θaでプロットしたレプトン数の平均値nnLϕx=0.1xiA= 32π).

-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5

-3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

< n

L

/ n

φ

>

θ

a

図 6.14: θaでプロットしたレプトン数の平均値nnLϕx=0.1xiA= 74π).

参考文献

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