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第 5 章 アフレック・ダイン機構 33

5.2 平坦方向の持ち上がり

平坦方向の持ち上がりは、次の2つから得られる。すなわち、

1. 繰り込み不可能な項 2. 超対称性を破る効果

この節では、各々の効果によって平坦方向が持ち上がる様子を見る。なお、以下で は一般的な議論のために、ゲージ対称性とRパリティを保存する項は存在可能である とする。

5.2.1 繰り込み不可能な項による持ち上がり

スーパーポテンシャル中の繰り込み不可能(nonrenormalizable)な項は平坦方向を特 徴付けるXのべき乗で与えられ、その最低次の項は

Wnr = λ

nMn3Xk, (

スカラー成分は λ nMn3ϕn

)

(5.2) となる。ここでn =mkである。Mは繰り込み不可能な項が効き出すスケールであり、大 統一スケールやプランクスケールをとる。また、Rパリティ保存より、kR(Wnr) = +1 になるように決められる。

R(X) = +1 ならk = 1

R(X) =−1 ならk= 2 (5.3)

平坦方向を持ち上げる最低次のスカラーポテンシャルは V(ϕ) = |λ|2

M2n6ϕ)n1 (5.4)

になる。

5.2.2 超対称性の破れの効果による持ち上がり

次に、超対称性の破れの効果による平坦方向のスカラーポテンシャルの持ち上がり を考える。一般的に、超対称性の破れが大きいほどこの持ち上がりも大きくなる。現 在の宇宙でも超対称性の破れは存在している(隠れたセクターによる超対称性の破れ)。

しかし、初期宇宙においてはインフレーションをもたらすインフラトンのポテンシャ ルによって現在の宇宙とは比較にならないほどの超対称性の破れが起こっている。イ ンフレーション中は正の真空エネルギーがドミナントであるし、インフレーション終 了直後はインフラトンの振動エネルギーが支配的である。これはインフラトンのF項 あるいはD項が大きな期待値を持つことを意味し、インフラトン部分で超対称性は強 く破れている。平坦方向を与える場ϕはこのインフラトン場との重力相互作用により 超対称性を破る項を生成し、スカラーポテンシャルが生じる。

この有限温度による超対称性の破れには、一般的には繰り込み可能な項と繰り込み 不可能な項の両方からの寄与がある。しかし今は平坦方向には繰り込み可能な項から の寄与はなく、繰り込み不可能な項のみを考えることにする。

fab をゲージキネティックファンクション、W をスーパーポテンシャル、K をケー ラーポテンシャル、Iをインフラトンとし、

W =Wnr(ϕ) +Winf(I),

K =K(ϕ, ϕ) +K(I, I) + [K(ϕ, I) +h.c.], (5.5) とする系を考える。添字nrは平坦方向の繰り込み不可能な項を、添字infはインフラ トンの項を表している。

超重力理論から、スカラーポテンシャルは次のように与えられる。

V =eK/Mpl2 (

DiW Ki¯jD¯jW 3

Mpl2|W|2+1

8fab1DaDb )

. (5.6)

ただし、

DiW ≡Wi+KiW

Mpl2,    Wi ∂W

∂ϕi, Ki¯j (

Ki¯j

)1

=

( 2K

∂ϕi∂ϕ )1

,    Da≡KϕTaϕ.

(5.6)の第1項及び第2項がF項、第3項がD項である。ここで、ϕiは平坦方向、イン フラトン、隠れたセクターを含んだ一般的な場である。ただし、隠れたセクターの関 与する部分は一般的にグラビティーノ質量m3/2 = O(1)TeVのオーダーであると仮定 されるのに対して、有限温度の超対称性の破れはハッブルパラメータHのオーダーで

ある(後述)。よって、平坦方向の発展中、H > m3/2の時期は隠れたセクターは無視で

きるため、しばらくは平坦方向ϕとインフラトンIのみを考えることにする。

インフレーション中から再加熱まではインフラトン優勢であるから、(5.6)では、イ ンフラトンIのポテンシャルV(I)が最も大きな寄与をする。ただし、インフラトンの D項が存在するとポテンシャルが十分に平坦にならず、十分なインフレーションが起 こせないことが知られている[27][28][29]。よって、以後はF項からの寄与のみを考え る。この場合スカラーポテンシャルは

V(I)≃eK(I,I)/Mpl2 (

FIFI 3

Mpl2|Winf(I)|2 )

(5.7) となる。ただし、FIFI ≡DIWinf(I)KII¯DI¯Winf (I)とした。

ここで、KII¯1を仮定すると、インフラトンポテンシャルが正であることから、

3

Mpl|Winf(I)|.DIWinf(I)∼√

V ∼√

3HMpl (5.8)

と評価できる。よって、次式が導かれる。

Winf(I).HMpl2. (5.9)

また、インフレーション終了後、I ≪MplではKI ≪Mpl, DIW →WI,|W|/Mpl ≪WI

である。よって、Vinf(I)≃WIWIとなる。

さて、超対称性の破れによる平坦方向の持ち上がりは式(5.6)から出てくるわけであ るが、その形は平坦方向についての繰り込み不可能な項の存在によって変わってくる。

そこで、Wnr(ϕ)の寄与する部分としない部分に分けて平坦方向のポテンシャルV(ϕ)を 導くことにする。

(1)Wnr(ϕ)が寄与しない部分

(5.6)のF項においてW =Winf(I)とすると、

V =eK/Mpl2 [

DIWinf(I)KII¯DI¯Winf (I) 3

Mpl2|Winf(I)|2 +DϕWinf(I)Kϕϕ¯Dϕ¯Winf (I)

+ (

DϕWinf(I)KϕI¯DI¯Winf (I) +h.c.

)]

(5.10) となり、この中からϕ に関係する部分を取り出すと、

V(ϕ) =eK(ϕ,ϕ)/Mpl2V(I) +KϕKϕϕ¯Kϕ¯

|Winf(I)|2 Mpl4 +

(

KϕKϕI¯DI¯Winf (I)Winf(I) Mpl2 +h.c.

)

(5.11) となる。このポテンシャルの各項はfを適当な関数として、次のような一般的な形を していることがわかる。

V(ϕ) =H2Mpl2f(ϕ/Mpl). (5.12)

ここで、ϕのケーラーポテンシャルK, ϕ)がミニマルである場合を考える。K =ϕϕ であるから、(5.7)とH2 =Vinf(I)/3Mpl2を使い

V(ϕ) = (

2 + FIFI Vinf(I)

)

H2|ϕ|2 ≡cH2|ϕ|2 (5.13)

となる。ただし、ϕはMplに比べ十分小さいとした。インフレーション後のI Mpl にはVinf(I)≃FIFIであるから、(5.13)のcO(1)スケールの定数になることがわか る。これは、ϕがオーダーO(H)スケールの正の質量mϕを持つことを意味している。

そのため、このポテンシャルの形ではϕ= 0がポテンシャルの極小点となり、ϕは大き な値を持ち得ない。従って、アフレック・ダイン機構はうまく実現できない。

しかしながら、ケーラーポテンシャルがミニマルではなく一般的な形をしている場 合は、超重力スカラーポテンシャルは虚数質量に対応する超対称性の破れを生むこと ができる。例えば、隠れたセクターによる超対称性の破れでの例を[26]に見ることが できる。そのような場合はϕに大きな値を持たせることができる。

また、現在の宇宙の超対称性を破っている隠れたセクターからくる項は、(5.12)のH

m3/2に変わった寄与を与える。これは、ϕの質量項になる。

V(ϕ) =m2ϕMpl2f(ϕ/Mpl). (5.14)

(2)Wnr(ϕ)の寄与する部分

次に、平坦方向の繰り込み不可能な相互作用項による寄与を考える。(5.6)のF項を W =Wnr(ϕ) +Winf(I)として書き下すと、

V =eK/Mpl2 [

DI(

Wnr(ϕ) +Winf(I))

KII¯DI¯

(Wnr(ϕ) +Winf (I))

+Dϕ(

Wnr(ϕ) +Winf(I))

Kϕϕ¯Dϕ¯

(Wnr(ϕ) +Winf (I)) +

( Dϕ(

Wnr(ϕ) +Winf(I))

KϕI¯DI¯

(Wnr(ϕ) +Winf (I)) +h.c.

)

3

Mpl2Wnr(ϕ) +Winf(I)2]

(5.15) となる。この式から(5.11)で求めたWnr(ϕ)によらない項を取り除くことにより、

V(ϕ) = ( 1

Mpl2KIKII¯KI3

) (Wnr(ϕ)Winf(I) Mpl2 +h.c.

)

+ (

WϕKϕI¯DI¯Winf (I) +h.c.

) +

(

WϕKϕϕ¯Kϕ¯

Winf (I) Mpl2 +h.c.

)

(5.16) を得る。このポテンシャルの各項はgを適当な関数として、次のような一般的な形を していることがわかる。

V(ϕ) =HMpl3g(ϕn/Mpln). (5.17)

また、(5.17)中のHm3/2に置き換えれば通常のA項がでる。

V(ϕ) =m3/2Mpl3g(ϕn/Mpln). (5.18)

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