聞き手の視線の遮蔽が話 し手の発話 ・身振 りに 及 ぼす影 響 につ いて※1
‑幼稚園年長児,小学校
5年生,大学生における発達心理学的考察一
畠 山 まどか ・森 和 彦
I nt e r ac t i onbe t we e nge s t ur ea nde yec ont ac t i nc ommuni c at i on
‑Developmentalinvestigationofeyecontactandgesture‑
MadokaHATAKEYAMAandKazuhikoMoRI
Thepurposesofthisstudyaretoinvestigatetherelationbetweeneyecontactandthefrequency ofgestureduringspeech.Anexperimentwasadministeredto6‑year‑oldpreschoolersand5thgraders anduniversitystudents,andeachgroupwasdividedintotwoconditions(eyecontactconditionand non‑eyecontactcondition).Theywereinstructedtoexplainaswingandscissors.
Theresultsshowedthattherewasnodifferenceofthetotaldurationofspeechproductionandthe frequencyofgesturebetweenbothconditions,andthatthefrequencyofgesturechangedtracingaU‑
shapedacrossdifferentagegroups.Thefindingofnodifferencebetweenbothconditionsindicated thattheeyecontactwerenotinfluenceonthefrequencyofgesture.Wediscussedtheinteraction"lis‑ tener'simage"andgestureproduction.
Keyword:gesture,eyecontact,listener'simage,developmentaldifferenceofgesture
1.は じめに
これまで身振 りはその機能 について,様々な研究がな されている。西尾 (2000)によれば,①視覚的手段によっ て話 し手の情緒的 (affective),認知的 (Cognitive)な 情 報 を聞 き手 に伝 達 す る機 能 (Ekman& Friesen, 1969)と,(多発話者の発話生成過程 と関連 して,身振 り を行 うことにより発話 を促進する機能 (McNeil,1992;
Purnima&Krauss,1994;Rime,Schiaratura,Hupet
&Ghysselinckx,1984)が挙 げ られている。 そ して, このような身振 りの2つの機能 につ いて,鹿取 ・溝
測
(1994)は,① の機能 を 「聞 き手指 向的機能 (listener‑ oriented)」と呼び,② の機能を 「自己指向的機能 (self‑ oriented)と呼んだ。瑞 1 本研究 の一部 は,東北心理学会第
54回大会で発表 された。
これ らの身振 り研究のテーマにおいては 「聞 き手のど のような条件において聞 き手指向的機能なのか,それ と も自己指向的機能なのか」 ということが問題にな った。
そ して このことを検討するために,聞 き手 と話 し手がお 互いの姿が見える状況 (対面状況)で起 こる身振 りと, 聞 き手 と話 し手の間に衝立や目隠 しなどを用いてお互い の見えが制限 された状況 (非対面状況)で起 こる身振 り 頻度の比較検討がなされてきた。 これ らの実験では,身 振 り機能の指向性 と関連する状況 において身振 りが増加 するという前提で行われてきた。 しか し, この場合,得 られた結果 は一貫性がない.例えば,Cohen (1977)で は,身振 り頻度 は非対面状況下 よりも対面状況下の方が 高い, という結果が得 られている。 また,西尾 (1994) で も同 じように,対面状況下での身振 り頻度が非対面状 況下での身振 り頻度 よ りも高 い。 一方で, 鹿取 ・溝測 (1994)では,対面状況 と非対面状況 とで は, 身振 り頻 度の差 はほとんどみ られないと述べ られている。 このよ
うに,単 に対面 か非対面 か とい う実験状況で は結果 がま ちまちであ り,身振 り頻度 に影響 を及 ぼす要因が しぼ ら れていない ことが示唆 され る。
一方 で,身振 りを発達的観点か らと らえた研究 もなさ れて いる。藤井 (1999)は,幼稚園児 と小学生,大学生 にそれぞれ同 じ説 明課題 を提示 し,そ こで得 られた身振 りを分析 した。す ると,幼児 と大学生 の身振 りは機能的 に異 な るとい うことが明 らかにな った。つ ま り,幼児 は 身振 りを 「不十分 な発話 の補助」 として使用 し,一方, 大学生 は 「聞 き手 の理解 の補助」 と 「話 し手 (自分 自身)
の語嚢 の検索」 のために身振 りを使用す るのである。
以上 の ことを踏 まえて,本研究 では身振 り頻度 に影響 を与 えてい るもの と して,聞 き手 の姿 ではな く,聞 き手 の 目の動 きのみ に着 目 し,聞 き手 の 目の動 きが見えず, かっ 「聞 く」 とい うことに関係 ない動作 (カメラの操作) が提示 され る条件 と,同様 の動作 (カメラの操作) で聞
き手 が話 し手 を見 ることによ って, アイコンタク トが と れている条件 を比較 し, これ らの違 いが話 し手 の身振 り や発話 にどのよ うな影響 を与 え るのかを調べた。 また, 藤井 (1999)よ り,幼児 と大学生 の身振 りは機能的 に異 な るとい うことに も着 目 し,藤井 (1999)の結果 を追試 す ると共 に,聞 き手 の目の動 きの条件 の違 いが,発達的 にどのよ うな影響 を及 ぼすのか も調べた。
2.日的
本研究で は, 門脇 (1999)に基づ き,幼稚園年長児, 小学校5年生,大学生 を被験者 とす る3年齢群を構成 し,
さ らにそれぞれの被験者 を,聞 き手 の 目の動 きが見え る 条件 (以下視認条件) と聞 き手 の目の動 きが見えない条 件 (以下非視認条件) に分 けた。 そ して, 2種類 の対象 の説 明の際 に現れ る発話量 ・身振 り数 などの違 いについ て, 2つの身振 り機能 の役割 と発達 の特徴 につ いて,以 下 の仮説 を立 てて検証 す る。
本研究 における仮説 は次 の通 りであ る。
( 1
) 藤井 (1999),門脇 (1999)の結 果 か ら, 幼 児 の 身振 りは大学生 の身振 りと違 い, 自己中心 性があ るため, 聞 き手 の視覚 に訴 え るもので はない こと が明 らか にな っている。 よ って,幼児 の身振 りの 使用量 は聞 き手 の目の動 きが見えてい るか どうか に影響 を受 けないだ ろ う。(2)藤井 (1999),門脇 (1999)の結 果 か ら, 幼児期 の身振 りか ら成人 の身振 りへの過渡期 とされ る小 学校5年生 の身振 りの使用量 は,一時的に減少す ることが明 らか にな っている。 よ って,小学校5 年生 の身振 りの使用量 は,聞 き手 の 目の動 きが見 え る/見 えない とい う状況 の変化 に拘 わ らず減少
す ると考 え られ る。 よ って,聞 き手 の 目の動 きが 見 える場合 と見 えない場合 で, それぞれの身振 り の使用量 を比 べて も大 きな差 はないだろ う。
(3)聞 き手 と話 し手 との問 にアイコ ンタク トが生 じて いない非視認条件 において は,話 し手 に 「聞 き手 が 自分 の話 を理解 していないので はないか?」 と 思 わせ ると考 え られ る。 この場合,話 し手 は大学 生 の身振 りの機能 の1つで あ る 「話 し手 の語童 の 検索」 のために身振 りを多 く使用す ると考 え られ る。 また,聞 き手 が 自分 の話 をあま り理解 して い ないので はないか と思 うことは,身振 りの もう一 つの機能であ る 「聞 き手 の理解 の補助」 のために 身振 りを多 く使用す ると考 え られ る。 よ って,大 学生 の場合 は,視認条件下 よ りも非視認条件下 で 身振 りが多 く見 られ るので はないか と考え られる。
3.方法
∩
) 実験計画2つの実験条件 (視認条件/非視 認条 件)×3つ の年 齢条件 (幼稚園年長児 ・小学校5年生 ・大学生) の2要 因計画が用 い られた。実験 は同一 の実験者 によ って各被 験者 ごとに個別 に行われた。 なお,実験条件 は被験者 問 要因であ る。
(2)被験者
被験者 はA市内の幼稚園年長児40名 (男 女 各20名 ), A市 とK町の小学校5年生32名 (男12名 ・女20名), 秩 田大学 の学生32名 (男9名 ・女23名 ) の計104名 で あ っ た。 しか し,非常 に発話 の少 ない者 などは分析か ら除 い たため,最終的 に分析 の対象 とな ったの は,幼稚園年長 児28名 (男17名 ・女11名,平均6才1ケ月 :年齢範囲5 才7ケ月〜6才7ケ月),小学校5年 生32名 (男12名 ・ 女20名),大学生30名 (男9名 ・女21名)の計90名であっ
た 。
(3)説 明課題
門脇 (1999)に従 い,被験者 か ら発話 と身振 りを得 る ために, プランコの説 明 と‑サ ミの説 明の2つの課題 を 用意 した。 これ らの課題 は, どの年齢群 の被験者 もよ く 知 ってお り, また, どち らも形 と動 きがあ って,説 明す る際 に身振 りを使用 しやす い ものであ ると考 え られ る。
(4)実験装置 と配置
被験者 の発話 と身振 りを記 録 す るため にSONYデ ジ タル ビデオカメラを用 いた。
また被験者 に説 明 して もらう前 に, ビデオカメ ラに向 か って話 をす る女 の人 の映像 を見せ た。 この ビデオは, 女 の人が 自然 な身振 りを交えなが ら話 している様子 を ビ デオカメラで正面か ら撮影 した ものであ る。 これ は,被
ー 70‑
験者が言葉 だけで プランコや‑サ ミの説明をす るものだ と勘違 い しないために, また,なかなか ビデオカメラに 向か って話す ことがで きない幼稚園児のお手本 として用 いた。 ただ し
,
「身振 りを交えて説明 して ください。」 と は伝えていない。なお,実験 を行 った部屋の配置 は図1の通 りである。
ビデオカメラは被験者 に向けて設置 し,実験者 はビデオ カメラの後 ろに座 って被験者が説明 している様子を録画 した。 また,被験者 と実験者 との間隔 は2.5メー トル と した。 これは,被験者 と実験者の距離が2メー トルのと き,被験者が実験者 に対 して最 も話 しやすい印象を持っ とい う大森 ・宮 田 (1998)の結果を基 に設定 した もので ある。 なお,部屋の中か ら外が見え る場合 は,見えない よ うに衝立 を立てた りカーテ ンを閉めた りした。
図.1 実験状況の配置
(5)手続き
視認条件 ・非視認条件共 に,被験者が入室 して きた ら 実験者 と向かいあ うようにイスに座 って もらう。 これか
ら行 うことについての簡単 な説明の後,お手本 ビデオを 見せ,具体的な教示をす る。 その際の教示 は 「ブランコ (‑ サ ミ) が ない ところに住 んでお り, まだ プラ ンコ (‑サ ミ)をみた ことがな くて, ブランコ (‑ サ ミ) の ことを全然知 らない人 に, ブランコ (‑サ ミ)が どんな ものであるかを ビデオ レターによって教える」 とい う内 容である。
被験者が説明を行 っている間,実験者 はその様子 を ビ デオカメラに記録す るが,視認条件の場合では,実験者 は被験者 の方を見て軽 く領 さなが ら話を聞 く。一方,罪 視認条件の場合では,実験者 はカメラのファイ ンダーを 覗 き続 け, レンズ越 しに被験者を見 なが ら話を聞 くこと
によ って,被験者 と目を合わせないように した。
(6) データの収集
(丑ビデオの記録か ら,全ての発話を文字 におこし,文節 に区切 ってその数 を集計 し,説明に要 した時間 (秒)
を計 る。なお,文節数 を数え る際 は,言葉 に詰 まった 時や言葉の初めに使 う 「え っと」や 「あの」 とい うよ うな,それ 自身が説明の意味を持 たない言葉は省いた。
② ビデオの記録か ら,身振 り数 とビー ト数を数える。 ビー ト数 とは対象の形や動 きを表す ものではな く,手 を上 下 に動かす最 も単純な身振 りであるが, これは発話 の 構成 と深 い関連を持っ もの (藤井,1999)と言われて いる。 なお,身振 り数を数え る際は,身振 りが変わ っ た り止 まった りするところまでを一回とした。 したがっ て,同 じ動作を何度 も繰 り返 している身振 りは, それ をまとめて一回 とした。身振 りの分類 は実験実施者 と 同大学の学生 の2人でそれぞれ独立 に行 い,不一致 の 項 目は実験実施者が もう一度VTRを見直 し判 断す る
ことに した。
③視認 ・非視認条件 において,発話量や身振 り数 など量 的な違 いだけでな く,話 し手の話 している様子か ら条 件問 に何 らかの違いがあるか どうかを検討するために,
8名の新たな被験者 (大学生/男4名 ・女4名) を対 象 に 「実験条件弁別 テス ト」を行 った。 このテス トで は,被験者 に今B]の実験で得 られた ビデオの記録 を見 せ,話 し手の話 している様子だけで視認条件 と非視認 条件の区別を強制選択 させた。 さ らに, テス トを終え た時点で被験者 にはどのようなポイ ン トで2つの条件 を区別 したのかを尋ねた。 この弁別 テス トの正答率が 全 く分か らないケース (50%)に対 して統計的に有意 な差があれば,視認条件 と非視認条件の間 には, はっ きりと違 いを指摘で きない場合であって も, ビデオを 見て区別で きるよ うな身振 りを含む何 らかの違 いが存 在す ると判断 した。
4.結果
(1)発話時間
発話時間について2要因の分散分析を行 った。 その結 果,年齢の主効果には有意な差が認め られたが(F(2,84)
‑
20.7, pく 01),視認条件 と非視認条件 の主効果 に は有 意 な差 は認め られなか った。次 に,視認条件 と非視認条 件それぞれにおいて,年齢 について1要因の分散分析を 行 ったところ両条件 において有意 な差が認 め られ た (F (2,42)‑ll.71,p<.01;F(2,42)‑9.09,p<.01)。また, 多重比較の結果,視認条件では幼稚園年長児 と小学校5 年生 の間,幼稚園年長児 と大学生の間 に有意 な差 が認 め られ (p<.01;p<.01),小学校5年生 と大学生 の問 に は有意傾向があ った (.05<p<.10)。 また,非視認 条件 では幼稚園年長児 と小学校5年生 の間,幼稚園年長児 と 大学生の間に有意 な差 が認 め られ (p<.05;p<.01), 小学校5年生 と大学生 の問 には有意傾 向が あ った (.05
< pく10)。 よって このことか ら, 視認条件 と非視認条 件のそれぞれにおいて,年齢が高 くなるにつれて発話時 間が長 くなるということが示 された (図.2)0
発話時間の平均
ヽ4
505
40
35 30 25
20151050 厄 視LIua̲̲巨認視萱条件認条件モト 「
‑ ll
年長 小五 大学生
(2)丈節数
次に,文節数 について2要因の分散分析を行 った。そ の結果,年齢の主効果 には有意な差が認め られたが (F (2,84)‑29.0, pく01), 視認/非視認条件 の主効果 に は有意な差 は認め られなか った。次に,視認/非視認条 件それぞれにおいて,年齢について1要因の分散分析を 行 ったところ,両方の場合において有意な差が認め られ た (F(2,42)‑21.20,p<.01;F(2,42)‑10.82,p<.01)o また,多重比較の結果,視認条件では幼稚園年長児 と小 学5年生の間,幼稚園年長児 と大学生の間,小学5年生 と大学生の問で有意な差が見 られた (p<.01;p<.01;
p<.05)。 また,非視認条件で は幼稚園年長児 と小学5 年生の問,幼稚園年長児 と大学生 の間,小学5年生 と大 学生 の問で有意 な差が認 め られ た (p<.05;p<.01;
p<.05)。 よって このことか ら, 視認/非視認条件 のそ れぞれにおいて,年齢が高 くなるほど文節数 は増加する ということが示 された (図.3)0
図.3 文節数の平均のグラフ
(3)身振 り数
身振 り数 については,それぞれの被験者が発話時間の 中でどの くらいの割合で身振 りを行なっているかを見 る ため,単位時間 (1秒)あたりの身振 り数を算出 した。
①視認/非視認条件間と年齢間の比較
得 られた身振 り数を基 に,条件 と年齢 について2要 因の分散分析を行 った。その結果,年齢の主効果には 有意な差が認め られた (F(2,84)‑ll.07,pく01)が, 視認/非視認条件の主効果には有意な差 は認め られな か った。次に,視認/非視認条件それぞれにおいて, 年齢について1要因の分散分析を行 ったところ,両方 の条件 において有意 な差 が認 め られ た (F(2,42)‑
4.49,p<.05;F(2,42)‑7.29, p<.01)。 また, 多重 比較の結果,両方の条件において,幼稚園年長児 と小 学5年生の間,小学5年生 と大学生の問でそれぞれ有 意な差が認め られた (pく05;p<.01)。 よ って この ことか ら,視認/非視認条件のそれぞれにおいて,身 振 り数 は小学5年生 で一時減少す ることが示 された
(図.4)O
回/秒
身振り数 (1秒あたり)の平均
0.18 0.16 0.14 0.0.121 0.08 0.06 0.04
0.020
】
年長 小五 大学生
図.4 身振 り数 (1秒あた り)の平均のグラフ
②身振 りの質的違いから見た条件間と年齢間の比較 藤井 (1999)に基づき,身振 りを質的な違いに分 け て条件間の比較をするため,視認/非視認条件のそれ ぞれにおいて,身振 りを主観的身振 り (自分の身体を 身振 りに組み込み, 自分を中心 として対象を捉えて, 身体の前後左右に大 きく措 く身振 り) と客観的身振 り (表現対象を外側か ら捉え,身体 の前 で ミニチ ュアの ように措 く身振 り) とに分類 し分散分析を行 った.す ると,視認条件 と非視認条件における主観的身振 りと 客観的身振 りの量 に有意な差 は認め られなか った。そ こで,主観的身振 りと客観的身振 りそれぞれについて, 分散分析を行 ったところ,視認条件 において客観的身 振 りの量 に年齢間で有意な差が認められた(F(2,42)‑
5.88, p<.01)。 また,多重比較 の結果, 幼稚園年長 児 と大学生の問,小学校5年生 と大学生の間でそれぞ
‑72‑
れ有意 な差 が認 め られた (p<.05・,p<.01). さ らに, 非視認条件 において も,客観的身振 りの量 に年齢間で 有意 な差 が認 め られた (F(2,42)‑5.35,p<.01)。 ま た,多重比較 の結果,幼稚園年長児 と大学生 の間,小 学校5年生 と大学生 の間でそれぞれ有意 な差 が認 め ら れた (p<.05;p<.01)。 この ことか ら, 両 条件 にお いて,大学生が幼稚園年長児や小学校5年生 と比べて 客観的身振 りを多 く使用 しているとい うことが示 され た (図.5)
。
回/ 秒 客観的身振り(1秒あたり)の平均
0.14 0.0.121 0.08 0.06 0.04 0.020
□視 認 条 件
■ヨ巨視 認 条 件
年長 小五 大学生
図.5 客観的身振 り(1秒あた り)の平均 のグラフ
(4) ビー ト数
ビー トは,幼稚園年長児で は全 く見 られず,小学校5 年生 の視認条件で は3名,非視認条件で は1名 に見 られ た。 また,大学生で は各条件 に14名ずつ見 られた。 ビー トは主 に 「ここにあ って」 や 「動 か して」 などの語尾部 分で生 じた。
ビー ト数 につ いて も身振 り数 と同様 に単位時間 (1秒) あた りの ビー ト数 を算 出 し, 2要因の分散分析を行 った。
その結果,年 齢 の主 効 果 に は有 意 な差 が認 め られ たが (F(2,84)‑25.71,p<.01),視認/非視認条件の主効果 には有意 な差 は認 め られなか った。次 に,視認/非視認 条件 それぞれ において,年齢 につ いて1要因の分散分析 を行 った ところ,両方 の場合 において有意 な差が認 め ら れた (F(1,29)‑10.49, p<.01;F(1,29)‑19.79, p<
.01)。 また,多重比較 の結果,両方 の場合 において, 大 学生,小学5年生 の問でそれぞれ有意 な差 が認 め られた (p<.01)。 よ って この ことか ら,視認/非視認条件 のそ れぞれにおいて, ビー ト数 は年齢が高 くなるにつれて増 加す ることが示 された (図.6)。
図.6 ビー ト数 (1秒あた り)の平均のグラフ
( 5)
実験条件弁別 テス トの結果8名 の被験者 に対 して行 ったテス ト結果 は,正答率 の 平均 が49%であ った。 よって この ことは視認条件 と非視 認条件での被験者 の様子 の問 に ビデオで判断で きる何 ら かの違 いが存在す るとは言えないと考え られる (図. 7)0
正答率 実験条件弁別テスト結果
70%
60%
50% 40%
30%
20% 1 0% 0%
∩
B D E F G HJr
ー
ーI ∫
】A C
蘇
図.7 実験条件弁別 テス トの平均 グラフ
5.考察
今回 の実験結果で は,聞 き手 の目の動 きが見 え る視認 条件 と聞 き手 の目の動 きが見えない非視認条件 のそれぞ れにおいて,発話時間,文節数,身振 り数, ビー ト数 に 年齢 の主効果が認 め られた。 つ ま り,発話時間,文節数 は年齢が高 くなるにつれて増加す ることが示 された。 ま た, ビー トについて は幼稚園児で はほとん どみ られず, 小学校5年生 で はわずかにみ られ,大学生 になると大幅 に増加 した。一方,身振 り数 は小学校5年生 (児童期) に一時減少 したが,大学生 にな ると幼稚園児 を越 え るほ どの使用量 に戻 っていた。 これ らのことは,藤井 (1999), 門脇 (1999)の結 果 を支 持 す る もの で あ った。 藤 井 (1999)によれば,幼児 と成人の身振 りは機能的に異 なっ てお り,幼児 の身振 りは不十分 な発話 の補助 であ り,成
人 の身振 りは聞 き手 の理解 の補助 と話 し手 自身 の語嚢 の 検索 のために使用 され ると解釈 され る。 そ して,幼児 と 成人 の間 にあた る小学校5年生 に関 して は,幼児 の身振 りか ら成人 の身振 りの過渡期 とされている。 この時期 は, 幼児的な身振 りも減少す るが,か とい って成人的な身振
りもまだ使 い こなせないため‑,身振 り量 は一時的 に減少 す ると解釈 され る (藤井,1999:門脇,1999)。
一方,視認条件 と非視認条件 の差 に関 して は,発話時 間,又節数,身振 り数, ビー ト数 のいずれにおいて も有 意 な差 は認 め られなか った。 よ って,幼稚園年長児,小 学校5年生,大学生 において,視認/非視認条件 とい う 状況 の違 いは発話時間,又節数,身振 り数, ビー ト数 に 影響 を及 ぼ さない とい うことが明 らかにな った。 この こ とか ら,幼稚園年長児,小学校5年生 は聞 き手 の 目の動 きが見え る/見 えない とい う状況 の違 いか らは発話時間 や身振 り数 は影響 を受 けないとい う本研究 の仮説 は検証 に耐 えた ことにな る。 しか し,大学生 につ いて は,聞 き 手 の理解 の補助 のための身振 りが増 えていると想起 され, 実際身振 り数 が増 えて いる (特 に客観 的身振 り) に もか かわ らず
,
「条件問 に差 が見 られ る」 とい う仮説 は実証 されなか った。 この ことは以下 の原因か らで はないか と 考 え られ る。今 回設定 した2つの条件 (視認条件/非視認条件)で は,聞 き手 と話 し手 との間 に直接的なアイコ ンタク トの あ る/ な しの違 いはあ った ものの,聞 き手 がそ こにいる とい う話 し手 のイメー ジは十分 にコン トロール していな か った。 この ことが,両条件 の被験者が 「自分 の前 に聞 き手 がいて, 自分 の話 を聞いている」 とい う共通 の認識 を持 った ことにつなが ったので はないだろうか。さらに, 実験条件弁別 テス トの結果 も聞 き手に伝える非言語的メッ セー ジに差 がなか った ことを意味 している。 これ は実験 条件 が聞 き手 の状況 に対 して操作 されていない ことを示 す。 また, この結果 は,両条件 において大学生 が他 の年 齢群 に比べて客観 的身振 りを多 く使用 していた ことか ら も考 え られ る。藤井 (2000)は,話 し手 が聞 き手 の存在 を想起 した条件 と聞 き手 の存在 を想起 しに くい条件 を設 定 し,身振 り頻度 の比較 を行 った。 それ によると,聞 き 手 の存在 を想起 した条件 の方が,聞 き手 の存在 を想起 し に くい条件 に比 べて客観的身振 りが多 く使用 されている とい うことが明 らか に な った。 この こ とか ら, 藤 井 (2000)は客観 的身振 りは話者 と聞 き手 とによ って共有 された場 の中で示 され る, よ り聞 き手 を志向 した ジェス チ ャーであ ると推論 した。本研究で得 られた結果 を考え ると, 直接 のアイ コンタク トがなか った非視認条件 にお いて も,話 し手 は聞 き手 の存在 を想起 していた可能性 が 高い。
例 えば,西尾 (2000)は,話 し手が聞 き手 か らの視覚
的 ・聴覚的な反応が全 く得 られない場 合 は, "そ こに相 辛 (聞 き手) がいるのだ" と聞 き手 の存在 を話 し手 自 ら 強 くイメー ジす ることによ って,伝えたい とい う意思 を 強 く示 した被験者 はど身振 り頻度 が高 か った とい う結果 が得 られている。 すなわち,話 し手が持つ聞 き手 の存在 につ いてのイメー ジや, 話 し手 が聞 き手 に対 して持 っ
"伝えたい" とい う動機づ けが身振 り頻度 に影響 を与 え ているとい うことが示唆 され る。
以上 の ことか ら,身振 り頻度 に影響 を与 え る要因 に関 連 して,聞 き手か ら話 し手 に送 られ る, ある一部分 の視 覚的 ・聴覚的な要因 (聞 き手 の姿 ・アイ コンタク ト・う なず き ・相づ ちなど) だ けに注 目す るので はな く, それ 以外 の仮想的な聞 き手 イメー ジ全体 に関わ る要 因や,伝 達への動機づ け要因を中心 と した研究 を,今後行 う必要 がある。
謝辞
本研究 の実験 の実施 にあた り, ご協力 いただ きま した 秋 田市 ひが し保育 園,秋 田大学教育文化学部附属幼稚園, 秋 田市み どり幼稚園,秋 田市立外旭川小学校,秋 田市立 桜小学校,秋 田大学教育文化学部附属小学校,河辺町立 岩見三 内小学校 の職員 と児童 の皆様, そ して,秋 田大学 の学生 の皆様 に感謝 いた します。記 して厚 く御礼 申 し上 げます。
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