表情刺激特徴が他者表情の無意図的模倣に及ぼす影響 [ PDF
4
0
0
全文
(2) 各刺激における感情ごとの評定値の平均値と標準偏差を. 手続き 被験者はパソコン画面上に呈示される刺激につい. Table1 に示す.. て SD 法(7 段階尺度)により印象評定を行なった.. 喜び評定値 驚き評定値 悲しみ評定値 怒り評定値 喜び刺激. 6.36(0.66). 1.35(0.19). 1.13(0.21). 1.25(0.52). 驚き刺激. 2.25(1.07). 6.53(0.44). 1.29(0.18). 1.58(0.27). 悲しみ刺激 1.07(0.08). 1.17(0.09). 5.54(0.68). 2.42(0.98). 1.02(0.03). 1.37(0.30). 3.05(0.93). 5.74(0.60). 怒り刺激. Table1. 刺激の感情強度の平均値及び標準偏差(括弧内:標準偏差) *強制選択法では, 喜び刺激は100%, 驚き刺激は97%, 怒りの刺激は92%, 悲しみの刺激は 91%の割合で意図した感情と分類された.. 結果 20 項目の評定値を用い,因子分析(重み付けのない最小二 乗法,バリマックス回転)を行なった結果,3 因子が抽出さ れた(説明率 62.5%).第 1 因子は, 「親しみやすい−親しみ にくい」などの形容詞対で負荷量が高く,「個人的親しみや すさ」に関する因子とした.第 2 因子は, 「自信のない−自 信のある」などの形容詞対で負荷量が高く,「活動性」に関 する因子した.第 3 因子は「責任感のある−責任感のない」 などの形容詞対で負荷量が高く, 「社会的望ましさ」に関す. ①刺激の妥当性 各刺激とも,意図した感情の評定値が他の感情の評定値よ り高く,また強制選択の結果からも,刺激は意図した感情 を表しているといえる.. る因子とした.本研究では,これらのうち「個人的親しみや すさ」因子を対人魅力の指標として用いた.各顔刺激につい て 3 因子の因子得点を算出したものを Figure2 に示す.. ②刺激の性と強度. 個人的親しみやすさ. 刺激の性と刺激の表す感情が刺激の強度に与える影響を調 べるため,強度得点について,2(刺激の性:男女)×4(感情: 喜び,驚き,悲しみ,怒り)の 2 要因分散分析を行なった. その結果,刺激の性と感情に交互作用(F(3,75)=3.88,p<.01). 30 20 10. り(喜び:F(1,25)=9.51,p<.005,驚き:F(1,25)=6.09,p<.05),. 0. いずれも刺激が女性の方が男性よりも強度得点が高かった.. 男1. 男2. 男3. 男4. Ryan 法を用いた多重比較の結果,刺激の性に関わらず,喜 た(Mse=0.33,p<.05).刺激の性による感情ごとの強度得点. 女3. 女4. 実験 目的 喜び,驚き,悲しみ,怒りの 4 つの感情を表す刺激. 男性刺激. ***. を観察している被験者の顔面の様子をデジタルビデオによ. 女性刺激. り記録し,表情の無意図的模倣の観察を行ない,受動的注. *. 視条件と能動的注視条件における模倣の度合いを比較する. 6 強5 度 4 得 点3. ことによって,実験方法を検討する.さらに,表情刺激特 徴(感情カテゴリ,性,親しみやすさ)が表情の無意図的模倣 に及ぼす影響を検討する.. 2 1. 方法. 0 喜び. 驚き. 悲しみ. 怒り. 感情. Figure1. 刺激の性による感情ごとの強度 ***:p<.005.*:p<.05. 刺激人物の印象評定 方法 被験者 大学生及び院生 27 名(男性 12 名,女性 15 名) 刺激. 女2. Figure2. 因子得点. びと驚きの平均が悲しみと怒りの平均より有意に大きかっ. 7. 女1. 顔刺激. しかし,悲しみと怒りに関しては,性差はみられなかった.. 8. 社会的望ましさ. 40 因 子 得 点. があった.喜びと驚きにおいて刺激の性の単純主効果があ. を示す(Figure1).. 力評性. 50. 刺激となる人物の真顔写真 8 枚(男女各 4 名). 質問項目 「積極的−消極的な」など 20 項目からなる特性 形容詞尺度(林ら,1999)を用いた.. 被験者 大学生及び院生 90 名のうち,顔全体が撮影できて いなかったもの,刺激人物と面識のあったものなどに関し ては分析の対象から外し, 63 名(能動的注視群:男性 16 名, 女性 17 名,受動的注視群:男性 16 名,女性 14 名)の有効 なデータを得た. 表情の無意図的模倣の存在を観察するには,できるだけ 自然な表出を記録し,分析する必要があるため,被験者に 顔面を撮影することは,実験前には知らされていなかった. 実験後に研究の本来の目的を伝え,それを理解した上で, 撮影した顔面の様子を分析することに同意を得られた被験.
(3) 者のみ分析の対象とした. 刺激. Table2.コーディングに用いた感情ごとのアクションユニット対応表. 大学生及び院生8名(男女各4名)による喜び, 驚き,. 眉. 悲しみ,怒りの 4 感情を表す表情写真.4×8=32 枚. 喜. 装置 パソコンの上部に小型のスピーカーを固定して置き. び. スピーカーに小さな穴を開け,そこに小型 CCD カメラを設 置した.被験者の気が散らないように,簡易テントを設置. 目. 口. 頬. 目を細める. 口角を引く. 頬を上げる. 上瞼を上げる. 顎を下げる. 眉の内側を上 驚 げる+眉の外 き. した(Figure3).. 側を上げる CCD カ メラ 内臓 ス ピー カ ー. 悲. 眉の内側を. し. 上げる. み. 眉を下げる. 瞼を締める. 怒. (日本人のみ) 上瞼を上げる. 眉を下げる り. 簡 易テ ント. 口角を下げる. 唇を固く結ぶ 瞼を締める. 結果 無意図的模倣が起きているどうかかを調べるために, 感情ごとの模倣得点を用いて,1サンプルの母平均の検定 Figure3. 実験の様子. 手続き 能動的注視条件と受動的注視条件の 2 群に被験者 を分けた.能動的注視条件では,刺激をパソコン画面上に 呈示し,被験者に各刺激の両目,唇の 3 箇所を,マウス操 作で 9 点ポインティングさせた.刺激は 10 秒たつと自動的 に消え,注視点(+)1秒呈示の後,次の刺激が呈示された. 本試行は喜び,驚き,悲しみ,怒りの 4 つの感情ブロック で構成され, 各ブロックの刺激は8枚(表出者8名)であった. 直前の感情ブロックのキャリー・オーバー効果を防ぐため. 各ブロック間には被験者ペースでとる休憩を設けた.練習 試行によって実験手続きを確認後,実験者は部屋を退室し た.各ブロックとブロック内の刺激はランダム順に呈示し た.被験者の顔面の様子はデジタルビデオカメラにより記 録した.受動的注視条件では,被験者は刺激を自然な状態 で観察するように教示された.刺激の呈示法や各ブロック 間の休憩は能動的注視条件と同じであった. コーディング 2 名の評定者により,各刺激呈示時(各 10sec)の被験者の 顔面に,FACS に基づいて,呈示された刺激と同じ感情カ テゴリに属する表情を構成する動き(アクションユニット: 以下 AU)が顔の各部位(眉,目,口,頬)においてみられるか どうかを 3 段階(0=なし,1=小,片側のみ,2=大)で評定 し,模倣得点とした.各刺激呈示時に呈示された刺激と同 じ感情カテゴリに属する表情を構成する動きが複数回みら れる場合は,動きの最も大きなものを評定対象とした. Table2 に感情ごとの AU 対応表を示す. 全データのうち 10%について 2 名が独立に評定した結果, 一致率は 94%であり, さらに一致係数 κを算出したところ, 5%水準で 2 名の評定が一致していることが示された( κ =0.60,p<.05).. を行なったところ,各条件の平均は有意であった.(喜び, 驚き,悲しみ,怒りの順に両側検定:t(62)=6.84,p<.05, t(62)=6.75,p<.05,t(62)=5.58,p<.05,t(62)=6.41,p<.05) したがって, 4 つの感情を表す表情すべてにおいて無意図的 模倣が起きていたといえる. 注視条件,感情カテゴリ,刺激の性,親しみやすさが表 情の無意図的模倣に与える影響を検討するため,模倣得点 を用いて,2(注視条件:能動・受動)×4(感情:喜び・驚き・ 悲しみ・怒り)×2(刺激の性:男女)×2(親しみやすさ:高低) の 4 要因分散分析を行なった .注視条件の 主効果 (F(1,61)=3.72,p<.10)に有意傾向があり.感情の主効果 (F(3,183)=3.11 , p < .05) お よ び 刺 激 の 性 の 主 効 果 (F(1,61)=6.68,p<.05) が有意であった.この他の主効果, 交互作用は有意でなかった.注視条件では能動条件が受動 条件よりも模倣得点が高かった.感情の主効果が有意であ ったので,LSD 法による多重比較の結果,驚きと怒りの平 均が悲しみの平均より有意に大きかった(MSe=0.54,p <.05).その他の感情間に有意な差はなかった.刺激の性に ついては,刺激が男性の方が女性よりも模倣得点が高かっ た.注視条件による感情ごとの模倣得点を Figure4,刺激 の性による感情ごとの模倣得点を Figure5,感情による模 倣得点を Figure6 に示す. 1.2 1 模 0.8 倣 0.6 得 点 0.4. †. 0.2 0 能動. 受動 注視条件. p<.10 Figure4.注視条件による模倣得点 † :.
(4) 0.9 0.8 0.7 模 0.6 倣 0.5 得 0.4 点 0.3 0.2 0.1 0. カテゴリに分類される.. *. 感情の進化的な側面と覚醒水準から,今回の結果を考察す ると,感情のポジティブ/ネガティブに関わらず,緊急性や 覚醒水準の高い感情を表す表情の無意図的模倣がより起こ りやすいと考えられる.表情の無意図的模倣は,顔面フィ 男性. ードバック(Tomkins,1982 など ) や情動伝染(Hatfield,. 女性. Caccioppo & Rapson,1992)によって,自己や他者の感情状. 刺激の性. Figure5.刺激の性による模倣得点 *:p<.05. 態を認知する際の重要な手がかりとなっていると考えられ ていることから,緊急性や覚醒水準が高い感情を表す表情. 1.2. ほどより早く認知される必要があるため,無意図的模倣が. 1. 起こりやすいと推察される. *. 模 0.8 倣 0.6 得 点 0.4. *. b.対人魅力 対人魅力と表情の無意図的模倣の関係はみられなかった. 要因として,刺激人物の累積呈示による既知性の効果が考. 0.2. えられる.また,本研究で対人魅力の指標とした親しみや. 0 喜び. 驚き. 悲しみ. 怒り. 感情. Figure6.感情による模倣得点 *:p<.05. 考察 ①能動/受動条件の比較. すさ以外の対人魅力の指標(例えば,性的魅力など)を用いて 検討する必要があるだろう. c.刺激の性 刺激の性に関しては,刺激人物が男性の方が女性より無 意図的模倣が起こっていた.感情に関わらず,男性の方が. 表情刺激を受動的に注視する条件と表情刺激へのポイン *. 女性よりも模倣されたことは,表情認知よりも先に性別判. ティングを行なう能動的注視条件における模倣の度合いを. 断が働いている可能性が考えられる.この性差を生み出し. 比較したところ,能動的注視条件において,受動的注視条. た要因は,予備的研究から刺激の表出強度の性差によるも. 件より無意図的模倣がみられた.2つの条件における刺激へ. のではないことがわかっている.考え得る他の要因の一つ. の注視の度合いを厳密に比較する必要があるものの,この. として,攻撃性が挙げられる.男性は女性より攻撃性が高. 結果は,表情の無意図的模倣を観察するには,刺激を一定. いとされている(遠藤,1970)ことから,他者の表情を認識す. 時間能動的に注視させることで,安定した注視の得られる. る際,攻撃性の高い男性の感情を攻撃性の低い女性の感情. と考えられる能動的注視条件が適していることを示唆する.. よりも即座に読みとる必要があると推測される.今の段階. 能動的注視条件を用いて表情の無意図的模倣を検討した研. では仮説に過ぎないが,他の要因の可能性も含め,検討す. 究は本研究が初めてであり,今後の表情の無意図的模倣の. べき価値があるだろう.. 研究において重要な示唆となりうるものである. ②表情刺激特徴が無意図的模倣に及ぼす影響 a.感情カテゴリ 表情刺激の感情カテゴリによって,無意図的模倣の度合い に差がみられ,驚きと怒りを表す表情が悲しみの表情より. 本研究から,表情の無意図的模倣の観察方法における能 動的注視条件の有用性が示唆され,また表情刺激の感情カ テゴリや性別によって,無意図的模倣の度合いが異なるこ とが示された.. 模倣得点が高いことが示された. 情動の進化的機能という観点(遠藤,1996)から,怒りは今. 主要引用文献. まさに攻撃するかもしれないという警告として働き,闘争-. Hinsz,V.B.,&Tomhave,J. 1991. Smile and (half) the world. 逃走反応などの生理的反応や行動への信号的機能をもつと. smiles with you, frown and you frown alone.. される.また,驚きは新奇なものに出会ったときに,自己. Personality and Social Psychology bulletin, 17,. の生体を新しい経験に対して準備させる機能をもつとされ. 586-592.. ることから,これら 2 つの情動は,適応的な行動を即座に 導く機能をもち,他の情動よりも緊急性が高いと考えられ る.また,Russell(1980)の感情モデルにおいて,怒りと驚 きは覚醒水準が高いカテゴリに,悲しみは覚醒水準が低い. 市川寛子・牧野順四郎 2004 刺激表情に対する観察者の 同調的表情 心理学研究 75(2) 142-147 吉川佐紀子 2003 表情認識における運動情報の処理 基 礎心理学研究 22(1) 76-83.
(5)
関連したドキュメント
区内の中学生を対象に デジタル仮想空間を 使った防災訓練を実 施。参加者は街を模し た仮想空間でアバター を操作して、防災に関
本試験装置ではフィードバック機構を有する完全閉ループ 方式の電気・油圧サーボシステムであり,載荷条件はコンピ
実験は,硫酸アンモニウム(NH 4 ) 2 SO 4 を用いて窒素 濃度として約 1000 ㎎/ℓとした被検水を使用し,回分 方式で行った。条件は表-1
危険有害性情報 H320 - 眼刺激 注意書き 注意書き 安全対策 •取扱い後には顔や手など、ばく露した皮膚を洗う。 注意書き
以上のことから,心情の発現の機能を「創造的感性」による宗獅勺感情の表現であると
図2に実験装置の概略を,表1に主な実験条件を示す.実
要旨 F
平均的な消費者像の概念について、 欧州裁判所 ( EuGH ) は、 「平均的に情報を得た、 注意力と理解力を有する平均的な消費者 ( durchschnittlich informierter,