グレア錯視に及ぼす輝度勾配とコントラストの効果 水野菜津美 1)・髙橋伸子
2)
Effects of luminance gradient and contrast on the glare illusion Natsumi MIZUNO and Nobuko TAKAHASHI
グレア錯視とは背景と中心領域の輝度は同じであるが周辺領域から中心領域にかけて輝 度勾配をかけると中心領域のほうが背景に比べて明るく知覚されるという錯視現象である
(Zavagno,1999) 。本研究ではグレア錯視を含む異なる 3 つの輝度勾配(glow, halo,uniform)
を用い,中心領域の見えの明るさに及ぼす効果を検討した。その結果,(1)中心領域は,
平均輝度の等しい uniform に比べて glow,halo の方が明るく知覚され,中心領域の明るさ は,平均輝度でなく輝度勾配のある領域の最高輝度と最低輝度のコントラストに影響され ること,(2)周辺領域の最低輝度が等しければ glow,halo,uniform の間に差はなく,グ レア錯視による中心領域の明るさの増強の効果が認められないこと,(3)背景と中心領域 の輝度コントラストによっても明るさの対比効果が認められることが明らかになった。
Keywords:明るさの知覚,輝度勾配,グレア錯視,コントラスト
brightness perception ,luminance gradient,glare illusion,contrast
1.はじめに
明るさ知覚における錯視効果として,グレア錯視がある。グレア錯視とは図 1 に示すよ うに中心領域(A)と背景(B)の輝度は同じであるが(A)と(B)の間の周辺領域の輝度 が周辺から中心に向かって増加する勾配を持つ場合,中心領域(A)のほうが明るく知覚さ れるという錯視現象で,中心領域と背景の輝度に違いがない場合でも発光の鮮明な印象(自 己輝き感; self-luminosity)を作り出す現象である。グレア錯視においては周辺領域の輝度 勾配が発光の印象を誘導すると考えられる。
Zavagno&Caputo (2001)は,図1に示したような中心領域と周辺領域(誘導領域)の輝 度を変化させたグレア刺激を用いて,中心領域の自己輝き感の閾値を調整法により測定し
た。Zavagno らは輝度勾配の傾斜方向を変化させて求めた自己輝き感が得られる中心領域
の輝度の閾値から,中心領域が白い背景より暗い場合でも錯視効果がみられることを発見 した。また,Yoshida, Ihrke, Mantiuk & Seidel (2008)はグレア錯視による明るさの増進の 量をマグニチュード推定法により計測し,グレア錯視により中心領域は参照した白色より
1) 愛知淑徳大学 健康医療科学部 医療貢献学科 視覚科学専攻 学部生
2) 愛知淑徳大学 健康医療科学部 医療貢献学科 視覚科学専攻
も
20%から
35%ほど明るく知覚されることを明らかにした。
Tamura, Nakauchi,
&
Koida (2016)は,平均輝度は等しいが輝度勾配が異なる誘導領域 を用いてグレア錯視の検討を行った。彼らが用いた輝度勾配は,図
2に示すように
glow,
uniform
,
haloの
3種類で,中心領域の輝度は同じであるが,取り囲む誘導領域の輝度勾配
条件が異なるものであった。
glowは誘導領域の外側の境界の輝度が最も低く,内側の境界 から外側の境界に向かって直線的に輝度が低下する輝度勾配を持ち,グレア錯視が生じる 輝度勾配条件であった。
haloは
glowの誘導領域の輝度コントラストを反転させた刺激であ り,誘導領域の外側の境界の輝度が最も高く,内側から外側に向かって直線的に増加する 輝度勾配を持つ刺激であった。一方,
uniformは
glowおよび
haloの誘導領域の平均輝度 で,輝度の変化がなく一様の輝度の誘導領域を持つ刺激であった。
Tamura, et al. (2016)は,標準刺激と比較刺激の2つの刺激を呈示し,中心領域の知覚された明るさの程度が高 い方を回答させた。比較刺激は輝度勾配条件(
glow,
halo,
uniform)の中から試行ごとに ランダムに選択され,標準刺激は常に
uniformであった。背景は
100cd/m²で統一されてい た。また,中心領域の輝度(中心輝度)条件については
0~
200cd/m²の間で
18条件
(
0,5,10,15,20,30,40,50,60,70,80,90,100,120140,160,180,200cd/m²)設定され,それぞれ の標準刺激の中心輝度に対して比較刺激の中心輝度は,標準刺激と等しい条件,標準刺激 に比べて
20%輝度を高くした条件,
20%低くした条件の
3条件を使用した。実験参加者は 固視点を凝視し,
0.3s刺激が呈示された後,どちらの方が明るく見えたか左右のマウスを クリックして選択した。
Tamura, et al. (2016)
の実験の結果,中心輝度
20~
200cd/m²の輝度条件において
glow,
halo
,
uniformの順に明るく知覚されていることが分かった。また,比較刺激の中心輝度を
20
%高くした
uniformよりも標準刺激と中心輝度が等しい
glowが明るく知覚されているこ とが明らかになり,
glowは
uniformより
20%以上明るく知覚されることが示された。
図 1 グレア錯視の例(Zavagno,1999) 図 2 Tamura,Nakauchi,& Koida (2016) の刺激
(A) (B)
glow halo uniform
Zavagno
&
Caputo (2001),
Yoshida, et al.(2008)の研究から,グレア錯視について中心領 域の輝度が背景より暗い場合でも錯視効果はみられること,輝度勾配により囲まれた中心 領域は実際の輝度よりも明るく知覚されることが示された。さらに,
Tamura ,et al. (2016)の研究から,刺激の平均輝度が等しい条件で
glow,
uniform,
haloの輝度勾配を用いて見 えの明るさの検討を行った結果,
glow,
halo,
uniformの順で呈示した輝度よりも明るく 知覚されることが示された。これらの結果は,グレア錯視が誘導領域の輝度勾配の有無や 輝度勾配の向きによって影響されることを示すものと考えられるが,輝度勾配ゼロの
uniform
に比べてどれだけ輝度勾配を変化させればグレア錯視が生じるのか,また輝度勾配
の増大に伴い錯視量も増大するのかという量的側面については検討されていない。そこで 本研究では,
glow,
halo,
uniformの輝度勾配条件について,輝度勾配の傾斜を変化させ るため,コントラスト条件を設定した。コントラストを低くすることにより,
glow,
haloでは誘導領域の輝度勾配の傾斜を小さくすることができる。コントラスト条件を設定する ことによりグレア錯視に及ぼす輝度勾配の量的な効果について検討する。
2. 実験 1
2.1 目的
Tamura
,
Nakauchi,&
Koida (2016)の実験では,刺激画像の平均輝度が等しい条件下で の見えの明るさを測定し
glow,
uniform,
haloの順に明るく知覚されることを示した。実 験
1では輝度勾配の傾斜を変化させるため,
Tamura, et al. (2016)の条件に加えてコントラ スト条件を追加し,誘導領域の平均輝度は等しいが輝度勾配が異なる条件で,
glow,
uniform,
haloの輝度勾配条件の効果を比較する。さらに,コントラストの低下に伴い,中心領域の 輝度が変化するため,中心輝度ごとにコントラスト条件を設定し,中心輝度が同じ条件で のコントラストの効果を検討する。
2.2 方法
ⅰ 実験参加者
視機能健常な女子大学生
4名(平均年齢
21.50±
0.57歳)が実験に参加した。
ⅱ 装置・刺激
刺激は
Tamura, et al. (2016)と同様の中心領域と誘導領域からなる同心円状の刺激で,刺 激の内側となる中心領域の直径は視角にして
0.75°,その外側のドーナツ状になっている 誘導領域の幅は
1.125°で,中心領域と誘導領域を合わせた全体の直径は
3.0°であった。
glow
は誘導領域の外側の境界に向かうのに伴い最も低い輝度になるような輝度勾配をもつ
刺激で,
haloは
glowの誘導領域のコントラストを反転させた刺激であり,
uniformは
glowおよび
haloの誘導領域の平均輝度で輝度勾配が
1の一様な輝度の誘導領域を持つ刺激であ った。
glowと
haloの輝度勾配は
Power Point2013(
Microsoft)のグラデーションツール を使用し,直線的な勾配を用いた。
コントラストは, 表
1に示すように高コントラスト条件と低コントラスト条件を設定し,
高コントラスト条件の誘導領域の最高輝度は中心輝度と等しく,最低輝度は常に画面の最 低輝度である
1.27cd/m²,低コントラスト条件では最高輝度は中心輝度と等しいが,最低輝
度は
1.27cd/m²と最高輝度の中間の輝度に設定した。
中心領域の輝度(中心輝度)は
56.92,
75.74,
102.18,
136.06cd/m²の
4条件設定した。
高コントラスト条件においては誘導領域における輝度勾配は中心輝度から画面の最低輝度 への勾配,低コントラスト条件では中心輝度と画面の最低輝度の中間の輝度への勾配であ り,
uniformは各コントラスト条件における
glowと
haloの誘導領域の平均輝度で一定に した。したがって,中心輝度が同一の場合,高コントラスト条件における誘導領域の平均 輝度は低コントラスト条件より
33%低くなった(表
1参照) 。図
3に輝度勾配条件およびコ ントラスト条件ごとの刺激について輝度と空間位置の関係を表した輝度図(
luminance profiles)を示す。
刺激は,標準刺激と比較刺激を用い,比較刺激は輝度勾配条件(
3)×コントラスト条件
(
2)×中心輝度条件(
4)の計
24条件,標準刺激は
glowの高コントラスト条件で中心輝 度
102.18 cd/m²の条件を用いた。 いずれも刺激は視角にして高さ
33°×幅
52° (高さ
33cm×幅
52cm)のモニタ-(
EIZO Flex Scan SX2462W)に呈示した。
ⅲ 実験条件
誘導領域の輝度勾配について
glow,
uniform,
haloの
3条件,誘導領域のコントラスト について高,低の
2条件,中心領域の輝度(中心輝度)について
56.92,
75.74,
102.18,
136.06cd/m²の
4条件の計
24条件設定した。
表 1 刺激の輝度設定
中心領域 誘導領域 背景
高コントラスト 低コントラスト
最高輝度 最低輝度 平均輝度 最高輝度 最低輝度 平均輝度
56.92 56.92 1.27 29.09 56.92 28.83 42.88 80.73
75.74 75.74 1.27 38.50 75.74 37.53 56.64 80.73
102.18 102.18 1.27 51.73 102.18 50.46 76.32 80.73 136.06 136.06 1.27 68.67 136.06 67.7 101.88 80.73
(単位:
cd/m²)
ⅳ 手続き
図
4に
1試行の流れを示す。刺激は
Super Lab 5.0(Cedrus)で呈示した。
1000ms固視点
(1.0°×
1.0°,
1.27cd/m²
)を呈示し,続いて標準刺激(
glowで高コントラストの中心輝度
102.18 cd/m²条件の刺激)を
300ms呈示し,
300msの空白をおいて比較刺激を
300ms呈 示した。比較刺激呈示後にマスク刺激としてランダムドット画面を呈示し,残像の制御を行 った。
ディスプレイと顎台までの距離が
57.3㎝となるようにセッティングをして,実験参加者 に顎台に顎を固定させ,画面に表示されている固視点が目線の高さと合っているかを調節 した。実験参加者の課題は,呈示された標準刺激の中心領域の明るさを
100としたときの 比較刺激の中心領域の明るさの評定値をマグニチュード推定法で求めることで,キーボー ドにより入力させた。測定は各実験条件の呈示順序をランダム化し,
24条件を
1ブロック として繰り返しを
4回行った。
図 3 輝度勾配条件およびコントラスト条件ごとの刺激の空間位置と輝度図
(luminance profiles)の関係
図 4 実験 1 における 1 試行の流れ
2.3 結果と考察
実験参加者ごとに輝度勾配×コントラスト×中心輝度の
3要因分散分析を行った。輝度 勾配と中心輝度の交互作用はすべての実験参加者で有意であった (実験参加者
NM; F(6,95)= 11.800, p<.001
,
CH ; F(6,95) = 12.103, p<.001,
SK ; F(6,95) = 13.599, p<.001,
EI ; F(6,95) = 3.464, p<.001) 。また,輝度勾配の主効果(
NM ; F(2,95) = 27.48, p<.001,
CH ; F(2,95) = 14.275, p<.001,
SK ; F(2,95) = 38.594, p<.001,
EI ; F(2,95) = 31.653, p<.001) , 中心輝度の主効果(
NM ;F(3,95) = 183.054, p<.001,
CH;
F(3,95) = 124.163, p<.001,
SK ;F(3,95) = 104.291, p<.001,
EI ; F(3,95) = 60.279, p<.001)も,すべての実験参加者で 有意であった。図
5に実験参加者
4名の輝度勾配条件別の中心輝度の変化に伴う明るさの 評定値を示す。単純主効果検定による多重比較の結果,すべての実験参加者において中心 輝度が最も高い条件である
136.06cd/m²では
uniformの明るさの評定値が有意に低くなる ことが分かった(すべて
p<.001) 。しかし,中心輝度が最も低い条件である
56.92 cd/m²で は実験参加者
NM,
CHにおいては
glowの明るさの評定値が他の輝度勾配条件の比べて有 意に低くなり(
NMではいずれも
p<.05,
CHではいずれも
p<.001) ,
SKでは
haloに比べ て
glowが有意に低く(
p<.05) ,実験参加者
EIは輝度勾配条件間に有意差はみられなかっ た。これらの結果から,輝度勾配条件による明るさの評定値は中心輝度により異なり,中 心輝度が高い条件では
uniformが他の輝度勾配条件に比べて低いが中心輝度が低い条件で はそうではないこと,また
glowと
haloの明るさの評定値と,中心輝度の間には一貫した 関係がみられないことが分かった。
輝度勾配の主効果が認められたため,図
6に実験参加者
4名の輝度勾配条件ごとの明る さの評定値の結果を示した。
Bonferroniの方法のよる多重比較を行った結果,すべての実
2600ms
標準刺激 1000ms
ブ ラ ン ク 300ms
比 較 刺 激 300ms
マスク (反応画面) 固 視 点
1000ms
験参加者において
uniformが
glow,
haloよりも明るさの評定値が有意に低くなることが示 された(すべて
p<.001) 。また,
glowと
halo間に有意差は認められなかった。中心輝度の 主効果についても同様に
Bonferroniの方法による多重比較を行った結果,すべての条件間 に有意差が認められ(すべて
p<.001) ,
56.92,
75.74,
102.18,
136.06cd/m²の順に明るさ の評定値は大きく,明るく知覚されていたことが明らかになった。
コントラストの主効果は, 実験参加者
SKのみで有意であった (
F(1,95) = 18.251, p<.001) 。
SKでは高コントラスト条件の方が明るさの評定値は高いことが分かった。 実験参加者
NM,
CH,
EIには有意差が認められなかった。実験参加者の課題は,中心領域の明るさを測定す る課題であったが,同じ中心輝度条件の高コントラスト条件の平均輝度は低コントラスト 条件より
33%低かったため,高コントラスト条件による明るさの促進効果が,低い平均輝
図 5 実験 1 における輝度勾配条件別の中心輝度の変化に伴う明るさの評定値
50 100 150 200 250
0 50 100 150
明 る さ の 評 定 値
中心輝度(
cd/m²)NM
50 100 150 200 250
0 50 100 150
中心輝度(
cd/m²)
CH
glow uniform halo50 100 150 200 250
0 50 100 150
明 る さ の 評 定 値
中心輝度(
cd/m²)
SK
50 100 150 200 250
0 50 100 150
中心輝度
(cd/m²)EI
度により抑制されてしまった可能性が考えられる。
実験
1の結果は,輝度勾配の主効果について
glowと
halo間に有意差が認められなかっ た点が
Tamura et al.(2016)らの結果とは異なるものとなった。
glowと
haloは,誘導領域 のコントラストを反転して作成した勾配である。よって,
glowと
haloは誘導領域の最高輝 度と最低輝度は等しいが
uniformはその平均輝度であるため,最高輝度,最低輝度ともに 平均輝度と等しくなる。このことは,明るさの評定値は平均輝度ではなく,最高輝度と最低 輝度のコントラストに影響されることを示唆する。そこで実験
2では,誘導領域の輝度を最 低輝度で一様にした
uniform最低輝度条件を追加し,中心領域とのコントラストの効果につ いて検証する。さらに,誘導領域のコントラストが中心領域の明るさの評定値に影響すると いうことは,その外側の背景と中心輝度とのコントラストも影響する可能性が考えられるた め,背景輝度を変化させて背景と中心領域のコントラスト効果についても検討する。
図 6 実験 1 における輝度勾配条件別の明るさの評定値
50 100 150 200
glow uniform halo
明 る さ の 評 定 値
輝度勾配
NM
50 100 150 200
glow uniform halo
輝度勾配
CH
50 100 150 200
glow uniform halo
明 る さ の 評 定 値
輝度勾配
SK
50 100 150 200
glow uniform halo
輝度勾配
EI
3. 実験 2
3.1 目的
実験
2では中心領域と誘導領域のコントラストの効果について検討するため,誘導領域 の輝度を最低輝度で一様にした
uniform最低輝度条件を追加して明るさの評定値との関係 を測定する。また,中心領域と背景とのコントラストについても背景の輝度を変化させて 明るさの評定値を測定し,比較検討する。
3.2 方法
ⅰ 実験参加者
視機能健常な女子大学生
4名(平均年齢
21.75歳±
0.5)が実験に参加した。
ⅱ 装置・刺激
刺激については
glow,
haloについては実験
1と同様にそれぞれ高コントラスト条件,低 コントラストを設定した。
uniformについては実験
1の低コントラスト条件(
uniform平均 輝度条件)に加えて,新たに誘導領域の最低輝度(
1.27 cd/m²)で一様にした条件(
uniform最低輝度条件)を設定し,合わせて
6条件を輝度勾配・コントラスト条件として設定した。
また背景輝度条件は,実験
1の
80.73 cd/m²(灰)に加えて,画面の最低輝度である
1.27 cd/m²(黒)及び最高輝度である
181.38cd/m²(白)の
3条件設定した。
中心輝度条件については実験
1と同様に
56.92,
75.74,
102.18,
136.06cd/m²の
4条件設 定した。比較刺激は,輝度勾配・コントラスト条件(
6)×背景輝度条件(
3)×中心輝度条 件(
4)の計
72条件で,標準刺激,使用したモニター,画面の輝度は実験
1と同様とした。
ⅲ 実験条件
誘導領域の輝度勾配・コントラスト条件について
glow高コントラスト条件,
glow低コン トラスト条件,
halo高コントラスト条件,
halo低コントラスト条件,
uniform平均輝度 条件,
uniform最低輝度条件の
6条件,背景輝度について
1.27,
80.73,
181.38cd/m²の
3条件,中心領域の輝度(中心輝度)について
56.92,
75.74,
102.18,
136.06cd/m²の
4条 件の計
72条件設定した。
ⅳ 手続き
実験
1と同様の手続きで行った。
3.3 結果と考察
実験参加者ごとに輝度勾配・コントラスト×背景輝度×中心輝度の
3要因分散分析を行
った。背景輝度と輝度勾配・コントラストの交互作用は実験参加者
ST,
HC,
MFで有意で
あった(実験参加者
ST ; F(10,287) = 3752, p<.001,
HC ; F(10,287) = 2.703, p<.01,
MF ; F(10,287) = 2.604, p<.001) 。また,輝度勾配・コントラストの主効果(
ST ; F(5,287) = 5.073, p<.001,
OI ; F(5,287) = 50688, p<.001,
HC ; F(5,287) = 2.507,p<.05,
MF ; F(5,287) = 4.559, p<.001) , 背景輝度の主効果(
ST ; F(2,287) = 87.022, p<.001,
OI ; F(2,287) = 55.673, p<.001,
HC ; F(2,287) = 61.153, p<.001,
MF ; F(2,287) = 82.166, p<.001)は,すべての実験参加 者で有意であった。図
7に輝度勾配・コントラスト条件別の背景輝度の変化に伴う明るさ の評定値を示す。単純主効果検定による多重比較を行った結果,背景輝度が最も低い
1.27cd/m²(黒)では,
STは
glow低コントラスト条件の明るさ評定値が
glow高コントラ スト条件に比べて有意に低く(
p<.05) ,
MFは
uniform平均輝度条件の明るさの評定値が
glow高コントラスト条件,
halo低コントラスト条件に比べて有意に低く(
p<.05) ,
HCで は有意差は認められなかった。背景輝度
80.73cd/m²(灰)では輝度勾配・コントラスト条 件による有意差はいずれの実験参加者においても認められなかった。しかし,背景輝度が 最も高い
181.38cd/m²(白)では,
STは
glow高コントラスト条件と
glow低条件の明るさ の評定値が他の輝度勾配・コントラスト条件よりも有意に低く(
p<.01) ,
MFでも
glow低 コントラスト条件の明るさの評定値が他の輝度勾配・コントラスト条件よりも有意に低く なることが明らかになった(
p<.05) 。これらの結果から,背景輝度が高い条件の
glow(特 に低コントラスト条件)では誘導領域の背景との境界から中心領域に向かって連続的に輝 度が増加しているため,誘導領域の外側の境界の輝度に刺激全体が同化し,中心領域が暗 く知覚されたと考えられる。また,背景輝度の低い条件における
uniform最低輝度条件は 背景輝度と誘導領域の輝度が等しくなるため,背景上に中心領域のみが呈示される条件で,
他のすべての輝度勾配・コントラスト条件との間に有意差が認められなかったため,誘導 領域の輝度勾配による中心領域の明るさの評定値への影響はなかったと考えられ,誘導領 域の最低輝度のみによって明るさが評定された可能性が示唆される。
輝度勾配・コントラストの主効果について
Bonferroniの方法による多重比較を行った結 果,
STでは
glow低コントラスト条件が他の輝度勾配・コントラスト条件に比べて明るさ の評定値は低く(すべて
p<.001) ,
OIでは
halo高コントラスト条件が
halo低コントラス ト条件,
glow高コントラスト条件,
uniform平均輝度条件より有意に低く,また
glow低コ ントラスト条件は
halo低コントラスト条件より有意に低いことが分かった。
HCは多重比 較の結果すべての輝度勾配・コントラスト条件間で有意差がなく,
MFでは
glow低コント ラスト条件と
uniform平均輝度条件が
glow高コントラスト条件より有意に低かった
(
p<.05) 。これらの結果から,全体として
glow低コントラスト条件の明るさの評定値が低 い傾向であることが示された。背景輝度の主効果についても同様に
Bonferroniの方法によ る多重比較を行った結果,すべての実験参加者において,背景が
181.83cd/m²(白)のとき
80.73cd/m²(灰) ,
1.27cd/m²(黒)に比べて明るさの評定値が低くなることが示された(す
べて
p<.001) 。これは,明るさの対比により背景が明るいとき中心領域がより暗く知覚され
たことによると考えられる。また,中心輝度の主効果も実験
1と同様,すべての実験参加
者で有意であった(
ST ; F(3,287) = 255.723, p<.001,
OI ; F(3,287) = 259.943, p<.001,
HC ; F(3,287) = 170.192, p<.001,
MF ; F(3,287) = 365.674, p<.001) 。
Bonferroniの方法 による多重比較を行った結果,すべての条件間に有意差が認められ,
56.92,
75.74,
102.18,
136.06cd/m
²の順に明るさの評定値は大きく,中心輝度が高いとき明るく知覚されているこ
とが明らかになった(すべて
p<.001) 。
図 7 実験 2 における輝度勾配・コントラスト条件別の背景輝度の変化に伴う 明るさの評定値
0 50 100 150
0 50 100 150 200
明 る さ の 評 定 値
背景輝度(cd/m²)
ST
0 50 100 150
0 50 100 150 200
背景輝度(cd/m²)
OI
glow高 glow低 最低uniform 平均uniform halo高 halo低
0 50 100 150
0 50 100 150 200
明 る さ の 評 定 値
背景輝度(cd/m²)
HC
0 50 100 150
0 50 100 150 200
背景輝度(cd/m²)
MF
実験
1においては,
glow,
haloが
uniformより明るく知覚されることが示され,平均 輝度が等しい条件で誘導領域の輝度コントラスト,特に最低輝度に影響されることが示唆 された。そこで実験
2において用いた輝度勾配・コントラスト条件のうち最低輝度の等し い
3つの条件,すなわち
glow高コントラスト条件,
halo高コントラスト条件,
uniform最 低輝度条件について誘導領域の平均輝度と中心領域の輝度とのコントラスト効果を調べる ため,中心領域と誘導領域の輝度差を算出し,すべての実験参加者の明るさの評定値との 関係を検討した。図
8は中心領域の輝度と誘導領域の平均輝度との輝度差を対数変換し,
明るさの評定値を対数変換したものとの関係をプロットしたもので,回帰直線を求めたと ころ決定係数
(R²
)が
0.9を超える値になり,明るさの評定値の対数と中心領域と誘導領域の 輝度差の対数の間に直線的な関係が示された。図
8より,中心領域と誘導領域の輝度差の 増大に伴い明るさの評定値が高くなり,明るさの対比効果により輝度差の増大に伴う明る さの評定値の増加がみられることが示された。また,最低輝度の等しい
3つの輝度勾配・
コントラスト条件では,
glow,
haloが
uniformより明るく知覚されることが明らかになっ た。しかし, この結果は,
uniform最低輝度条件の平均輝度が,
glowコントラスト高条件 と
haloコントラスト高条件に比べて低いため,図
8において右にシフトしたことによると 考えられ,その結果,同じ輝度差における明るさの評定値は
glow高コントラスト条件,
halo高コントラスト条件に比べて低くなったと考えられる。これは中心輝度と誘導領域の平均 輝度との輝度コントラストの効果を示すものであるが,輝度コントラストは誘導領域の平
図 8 実験 2 の最低輝度の等しい 3 つの輝度勾配・コントラスト条件における 中心輝度と誘導領域の平均輝度との輝度差の変化に伴う明るさの評定値
y = 0.887 x + 0.597 R² = 0.913
y = 1.091 x ‐ 0.065 R² = 0.975
y = 1.061 x + 0.296 R² = 0.995
1.00 1.50 2.00 2.50
1.00 1.50 2.00 2.50
明 る さ の 評 定 値 の 対 数
中心領域と誘導領域の平均輝度との輝度差の対数
TOTAL
glow
高
最低
uniform
halo高
図 9 実験 2 の最低輝度の等しい 3 つの輝度勾配・コントラスト条件における 中心輝度と誘導領域の最低輝度との輝度差の変化に伴う明るさの評定値
均輝度より誘導領域における最低輝度によって決まるとすれば,最低輝度コントラストの 影響について,中心輝度と誘導領域の最低輝度との輝度差と明るさの評定値との関係を検 討する必要がある。
図
9にすべての実験参加者の中心輝度と誘導領域の最低輝度との輝度差の対数に伴う明 るさの評定値の対数を示す。
glow高コントラスト条件,
halo高コントラスト条件,
uniform最低輝度条件の最低輝度はいずれも
1.27cd/m²であった。中心輝度と誘導領域の最低輝度と の輝度差を算出して対数変換したデータについて回帰直線を求めたところ,決定係数
(R²
)が
0.9を超える値になり直線的な関係が示された。図
9より,中心領域と誘導領域の最低輝 度との輝度差で比較した際,
glow高コントラスト条件,
halo高コントラスト条件は
uniform最低輝度条件より誘導領域の平均輝度が高いにもかかわらず,明るさの評定値は近似した 値となった。すなわち,明るさの評定においては誘導領域の平均輝度や輝度勾配の効果は なく,最低輝度によって決定されることが示唆された。
4.総合考察
誘導領域の輝度勾配の効果について検討する目的で実験
1では誘導領域のコントラスト を変化させ,また,
Tamura, et al.(2016)と同様に
glow(グレア錯視)のほかに
halo,
uniformの
3つの輝度勾配条件を設定して見えの明るさを測定した。実験
1の結果,コントラスト の効果は認められず,誘導領域の輝度勾配の大小によって明るさの知覚に違いがないこと
y = 0.862 x + 0.388 R² = 0.919
y = 1.091 x ‐0.065 R² = 0.975 y = 1.027 x + 0.054
R² = 0.994
1.00 1.50 2.00 2.50
1.00 1.50 2.00 2.50
明 る さ の 評 定 値 の 対 数
中心輝度と誘導領域の最低輝度との輝度差の対数
TOTAL
glow
高 最低
uniform
halo高
(glow高)
(最低uniform)
(halo高)
が示されたが,一方,輝度勾配条件による効果は認められ,輝度勾配ゼロの
uniformが
glowと
haloに比べて暗く知覚されることが分かった。また
Tamura, et al.(2016)の結果とは異 なり,
glowと
haloの間に有意差は認められず,誘導領域の平均輝度が等しい場合には,
uniform
は
glow,
haloに比べて暗く知覚され,輝度勾配条件による効果が認められた。
輝度勾配ゼロの
uniformは最高輝度,最低輝度ともに平均輝度と等しくなるが
glowと
haloは最高輝度と最低輝度は平均輝度とは異なる。したがって,中心領域の明るさの知覚 が誘導領域の最低輝度との対比による影響を受けたとすれば,
glowと
haloに差はなく,
uniform
の明るさの評定値が低かった結果が説明できると考えられる。コントラスト条件に
よっても最低輝度は異なったが,実験
1で用いた低コントラスト条件の最低輝度は,高コ ントラスト条件の最低輝度と中心輝度の中間の輝度であり,中心領域の明るさ知覚に変化 を生じさせるには輝度差が小さかったためコントラスト条件の効果が認められなかったと 解釈できる。
誘導領域の最低輝度が中心領域の明るさ知覚に及ぼす影響を検証する目的で,実験
2で は誘導領域の輝度を最低輝度で一様にした
uniform最低輝度条件を加え,さらに背景と中 心輝度との対比による影響を検討するために背景輝度条件を変化させて見えの明るさを測 定した。実験の結果,誘導領域の輝度を最低輝度で一様にした
uniform最低輝度条件が最 低輝度の等しい
glow及び
haloの高コントラスト条件と見えの明るさが一致し,同等の対 比効果を示した。さらに,背景輝度による対比効果が認められ,背景が明るい条件では中 心領域は暗く,背景が暗い条件では明るく知覚された。また,背景輝度条件により,
glowと
haloに違いが生じ,背景が明るい条件の
glow(特に低コントラスト条件)の方が
haloに比べて暗く知覚される傾向が示された。
glowも
haloも,背景と誘導領域との境界には輝 度差が生じ,また
haloでは中心領域と誘導領域との境界にも輝度差が生じるため,対比効 果が輝度差に応じて生じると考えられるが,
glowでは中心領域と誘導領域の境界に輝度差 がなく輝度の変化が連続的であるため,
2つの領域の明るさに同化が生じ,全体として明る い背景に対して中心領域が暗く知覚されたと解釈できる。背景と誘導領域と中心領域間に それぞれ局所的な対比効果が生じている可能性を考慮すると,背景輝度による中心領域の 見えの明るさに及ぼす対比効果は誘導領域がない場合に比べて小さいことが予想されるが,
局所的な対比効果の関係については今後の検討課題である。
2
つの実験から,誘導領域における輝度勾配の効果は誘導領域の平均輝度が等しい場合で
示されるが,誘導領域の最低輝度が等しければ輝度勾配条件や平均輝度に関わらず,中心
領域の見えの明るさは一致することが示された。これらの結果は,中心領域の明るさの知
覚は誘導領域の最低輝度とのコントラストによって決まること,最低輝度が等しければ
glow,halo,uniformの輝度勾配条件間に差はないこと,すなわちグレア錯視による明る
さの増強の効果は認められないことを示すと考えられる。
引用文献
Tamura,H. , Nakauchi,S. , & Koide,K. (2016). Robust brightness enhancement across a luminance range of the glare illusion, Jounal of Vision, 16(1) : 10, 1-13.
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Zavagno, D. & Caputo, G. (2001). The glare effect and the perception of luminosity. Perception 30, 209-222.