発話 に伴 う身振 りの補足 的 コ ミュニケー シ ョン機能
〜 でた らめ語 による発声条件 を用 いて 〜 池 田 瑠璃子 ・森 和 彦
Ac ompe ns a t or yr ol eo fge s t ur ewi t hs pe e c hc ommuni c a t i on
〜
By me ansoft hej ar goni z e ds pe e c hc ondi t i on
〜Rur i koI KEDAandKazuhi koMoRI
Thi ss t udye xa mi ne dac ompe ns a t or yf unc t i onofge s t ur ewi t hs pe e c hc o mmuni c at i on.Fort hi s pur pos e , weana l yz e dt hedi f f e r e nc eofge s t ur ef r e que nc ywi t hs pe e c hbe t we e ni nJ a pane s ea ndi nj a r ‑ gonwhi c hi sr e qui r e dofc ompe ns a t or yc of nmuni c at i on.I nt hi se xpe r i me nt ,s t ude nt sf r om 1 8‑ ye a r l ol dst o23‑ ye ar ‑ ol dswe r epa r t i c i pa n t .Ther e s ul t ss howe dt hes l gni f i c antdi f f e r e nc ebe t we e nt wo c ondi t i onsi nl a ngua ge .Tot a lge s t ur ef r e que nc ywi t hJ apane s el a nguagewa shi ghe rt ha nt ha twi t h j a r gon.Andi nt her e pr e s e nt a t i ona lge s t ur e ,t he r ewe r es l gni f i c a ntdi f f e r e nc e sbe t we e nor de rc ondi ‑ t i onsa ndbe t we e nl a ngua gec ondi t i o ns .Buti nbe a tge s t ur e , t he r ewa sas l gni f i c a ntdi f f e r e nc ebe t we e n or de rc ondi t i onsonl y.Andi ns e l f ‑ t ouc hi ngbe ha vi or , t he r ewa sas i gni f i c antdi f f e r e nc ebe t we e nl a n‑
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Ke ywor d:c ompe ns a t or yf unc t i on,j a r gon,s pe e c hc ommuni c at i o n,r e pr e s e nt a t i ona lge s t ur e ,be a tge s ‑ t ur e , s e l f ‑t ouc hi ngbe havi or
1.
問題提起コ ミュニケー ション
( c ommuni c a t i on)
のために, 我々は言語以外 にも,表情 ・身振 り ・接近性などの多様 な非言語手段を用いている. コ ミュニケーションにおけ る言語情報の寄与 は10%〜3 5%であり,残 りの9 0‑6 5%
は,非言語的情報であるとの指摘 もある (荻野,2
00 2 )
。 本研究では, この非言語的 コ ミュニケー ションの1
つで ある身振 りに焦点をあて,言語 と身振 りの関係 について 探 ることを目的 とす る。
なお,McNei l
l( 1 9 8 5 )に従 っ
て, ここで取 り上 げる身振 りは会話中にだけ起 こるもの と定義す る。言語 に付随する身振 りが,話す内容をより 補 って表現するために起 こっている (j ミュニケーショ ン機能) とす るな らば,共通言語が使えない状況では, 言語 とい う理解の欠如を埋めるために身振 りの表出量 は 多 くなると思われる。本研究では, このロジックを基に,「でた らめ語」 を定義す る。 即興で被験者 自身が作 り出 し,発せ られた言語を 「でた らめ語」 と定義する
。
本研 究では, この 「でた らめ語」 と日本語を用 いて,説明課題が実施 された。すなわち,共通言語が使えない状況で の説明 (でた らめ語条件) と,共通言語 (日本語)での 説明 における身振 りの違 いをみ ることによ り,本研究 は 身振 りの補足的機能を検証す る。
さらに,得 られた身振 りを, コ ミュニケーションを目 的 とす る表象的な身振 り, 自己指向性があると考え られ ている自己接触行動 (荻野,2
0 02 )
, ビー トなどに分頬して も分析を行 うこととした。
2.
作業仮説 、1:
日本語条件 より,でf=らめ語条件の方が,発話 中の身振 りの表出頻度が高い。2:
でた らめ後での説明を先 に した後 に, 日本語で の説明をす るより, 日本語での説明を先に行 った後 に, でた らめ語での説明を行 う方が, 日本語 と比較 して説明しづ らくなるため,身振 りの表出頻度が高い。
‑ 65 ‑
3.
方法 1) 実験計画順序条件 (日本語 で先 に説明す る条件/でた らめ語 で 先 に説 明す る条件 :被験者 間要因) ×言語条件 (日本語 で説明す る条件/ でた らめ語 で説明す る条件 :被験者 内 要因) の
2
要因計画で行 なわれた。1
) 被験者 :秋 田大学 の大学生48
名 (男女各24
名, 日本語先条件2 4
名, でた らめ語先条件2 4
名) で各条 件 に, ランダムに配置 され た。2)
説 明課題空間的表象 を伴 う説明 は,一般的 に身振 りが表 出 しや すい と考 え られている。 そ こで,空間的表象を伴 う説 明 が多 い と考 え られ る 「お正月の遊 び ・行事」 につ いての 説明を,
3
分間かけて説明す るように教示 した。 日本語 ・ でた らめ語 の両条件 で繰 り返 して行 われ るため, これ ら の説 明 は ビデオカメ ラに向か って,計6
分間行 われた。3
)実験装置 と刺激被験者 の発話 と身振 りを記録 す るた め,
′ S ONY
ハ ン デ ィーカムデ ジタル ビデオカメ ラ( DCR‑ PCI OO)
を用 いた。3分間か けて説 明 して もらうことを目的 と したた め, お正 月の遊 び ・行事 に関す る絵 (羽子板, こま,初 日の 出, 獅子 舞, おみ くじ, 餅 っ き,) をイ ラス ト集 (小林正 樹1 9 9 8 t 1 2
ヶ月 の イ ラス ト集 マール社)か らコ ピー して一枚の紙 に配置 した。 また,でた らめ語 の 説 明 の 際 に は;S ONY
の ミニ デ ィス ク ウ ォー クマ ン (MD‑MT77)とスピー
カーを繋 いだ ものを例 示用 に使 用 した。実験 を行 った部屋 の配 置 は図 1に示す。 ビデオカメ ラ
図
1
実験室の配置は,被験者 に向 けて設置 し,実験 中,実験者 は, ビデオ カメラか ら離れた被験者か ら見えないところに位置 した。
実験者 と ビデオカメラの位置 は,視力の良 し悪 し,背の 高 さなどによ って調節 し,
2
メー トルの間隔を開 けた。4)
手続 き被験者 が入室 した時 に,被験者 に ビデオカメ ラの向か いに置 いてある椅子 に座 って もらう
。
実験者が これか ら どんな実験 を行 うか簡単 な説明を した後, 日本夢先条件 の被験者 には,3
分間か けて, 日本語で, お正月の絵 の 中にある遊 び ・行事 の説明\をす るよ うに伝 えた。でた ら め語先条件の被験者 には,でた らめ語 とは,共通言語で はない とい う説明 と,でた らめ語 の例 を, ス ピーカーを 通 して実際の音で聞いて もらい,3
分間か けて,でた ら め語で, お正月の絵 の中にある遊 びや行事 の説明をす る よ うに伝 えた。 なお,でた らめ語 の説明 には, あ らか じ め実験者 がSONY
の ミニデ ィス クウォー クマ ンに録音しておいた3種類 のでた、らめ語 を提示 した。 とい うのは 本研究で は,被験者のオ リジナルな言語 を引 き出すため, でた らめ語 を,共通言語でなければ何 を話 して も良 い,
と定義 していたが,す ぐにで きない場合 を考慮 して,参 考 のため この実例 を用意す る必要があると判断 したか ら である。
日本語先条件 の 日本語 での説明を終 えた被験者 には, でた らめ語 の説明 と,でた らめ語 の例 を聞 いて もらい, 3分間か けて,お正月の絵の中にある遊 び ・行事 の説明 をす るよ う伝 え,でた らめ語 での説明をお願 い した。で た らめ語先条件 のでた らめ語 での説明を終 えた被験者 に は, 日本語でお正月の遊 び ・行事 を,
3
分間か けて説明 す るよ うお願 い した。 この実験 で は, 自然 に発生す る身 振 りを調査す ることを 目的 と したため,被験者 には,身 振 りの調査であると教示 しなか った。 そ して, 日本語 と でた らめ語の両方 で,量 や内容 に特 に差 をっ けな くて も よい, と教示 した。 また,話す内容 は日本語 とでた らめ 語 で全 く同 じである必要 もないとい うことを同時 に教示 した。注意事項 と して, ビデオカメラに向か って話す こ と,話す内容 を頭 の中で イメー ジしなが ら話す とい うこ と,伝 わ るよ うに熱心 な感 じで話 をす る, とい うことを 書 いた紙 も話 す直前 に提示 した。 また, お正月の遊 び ・ 行事 の絵 は,何 を どのよ うに説明す るか考 えて もらうた めに,実際説明す る前 に被験者 に提示 した。 そ して,そ の絵 の中央 に穴 を開 け, そ こか らビデオカメ ラで撮影 を 行 った。絵 は,被験者が説明 し終 わ るまで掛 けたままにし,絵 を見 なが ら説明 して もらう実験 とな った。
被験者 が説 明を行 っている間,実験者 はその様子 を ビ デオカメ ラに記録す る。
5
) でた らめ語 の例 の教示(
丑5 0
音 は使わず,特定 の行 に限定 して話す。 (ア行 のみ,夕行のみ) (例 :た‑たたててて‑とて とちち一つ 一つ つ‑た‑た,たた‑たたたて‑,'て‑て一つ一つちて)
②普段使わないような, 自分で選んだ,意味を持たない 反復語で話す。 (例 :さ りさりさり一, るれるれ るれ‑)
③小 さな 「やゆよ」が入 った言葉などをっなげて話す。
(りゅ, ち ゅ,ぴち ゅ)(例 :りゅぴ ゃぴ ゃぴ ゃりゅりゅ りゅりゃりゃりゃりゃりゃ‑)
6
)デ‑夕の収集① ビデオの記録か ら,身振 り全体,および,表象的身振 り, ビー ト, 自己接触行動 に分類 したものを抽出 した。
また, これ らの身振 りに要 した時間 (秒)を計測 した。
② ビデオの記録か ら,①の身振 りの数を数える。 なお, 身 振 り数 を数 え る時 , マ イ ク ロ ソ フ ト社 の
me di a pl a ye r
とい うプ ログラムを用 いて観察 し,身振 りの変 化点で区切 った。一連の操作 は全で このプログラムで行 われた。 これ らの身振 りの抽出と分析 は実験者が行 った。4.
結果発話中に得 られた身振 り頻度 は,身振 り数を総発話時 間 (秒)で割 ったものを用いた。 さらにこのデータを正 規分布 させ るため,角変換 により変数の変換を し,その 値で分散分析を行 った。全体の身振 りにおいて,条件の 後先に関係 な く, 日本語での説明の方が身振 りの頻度が 高 く
( F(
1, 4 6 )
‑10. 6 6
9<. 0
1),交互作用 も有意であっ た( F( 1 , 4 6 ) ‑5 , 0 0
9<. 0 5 )
(図2
を参照)0図
2
全体の身振 り頻度また,′表象的身振 りは, 日本語で先に説明する条件の 方 がでた らめ語 で先 に説明す るよ り身振 り頻度が高 く
( F( 1 , 4 6 ) ‑4 . 2 9 ♪< . 0 5 )
, また, 日本語で説明す る方が,で た らめ語 で 説 明 す る よ り身 振 り頻 度 が 高 い
( F ( 1 , 4 6 ) ‑
ll . 3 5
♪<. 0 1 )
とい う結果 にな った (図3
を参 輿)0EI/ 、
口日本措 l■でたらめ情
7 i L65432
1 0
月 本譜先 でたらめ活先
図
3
表象的身振 りの身振 り頻度ビー トは, 日本語での説明を先 にす るほうがでた らめ 語 で の説 明 を先 にす る よ り身 振 り頻 度 が 高 く
( F
( 1 , 4 6 ) ‑7 . 0 3
9<. 0 5 )
, 交 互 作 用 に 有 意 差( F ( 1 , 4 6 ) ‑4. 5 3 ♪<. 0 5 )
もみ られた (図4
を参照)0ロ
日本括■
でたらめ括たらめ括日本古書先 でたらめ語先 順序条件
図
4
ビー トの身振 り頻度自己接触行動 において も,でた らめ語での説明よりも 日本 語 で の 説 明 で , 身 振 り頻 度 が 高 くな る (F (1
, 4 6 ) ‑5 . 0 5 ♪<. 0 5 )
とい う結果 にな った (図5
を参‑ 6 7‑
照)0
図
5
自己接触行動の身振 り頻度5.
考察5‑1 仮説 1についての考察
日本語での説明が,でた らめ語での説明よりも身振 り 表出頻度が高いという結果 は,作業仮説 とは逆の結果 に な った (図
2
)。 よって仮説1
(日本語条件 よ り,でた らめ語条件の方が,発話中の身振 りの表 出頻度が高い。) は支持 されなか った。 この ことか ら,本実験の条件下で は,身振 りというのは,言語が確立 されなければなかな か表出 しないのではないか と推論 しうる。 言いかえれば, コ ミュニケーション手段である共通言語を妨害 されたか らといって,それを補 うべ く身振 りが増すわけではない, ということになる。 でた らめ語 は,普段使 い慣れている 言語を使わず,被験者内で作成 された言語であるため, 身振 りで コ ミュニケー ションを補 うという前 に,言語を 構築することに意識が集中 し, 日本語 より身振 りが表出 しに くいとい う結果 にな ったのだと考 えることもできよ う。 この ことか ら,言葉で うま く説明できないところは 身振 りで表す という,言語の補償的代用 として身振 りが 働 くとい うよりは,言語 に伴わせ ることによりコ ミュニ ケーション.を円滑 に しようと働 くものであるのではない か とも考え られる。5 ‑ 2
仮説2
についての考察図
2
か ら, 日本語先でた らめ語条件では,最 も身振 り 頻度が低 いという結果 になった。 よって,仮説2
(でた らめ語での説明を先 に した後 に, 日本語での説明をす る より, 日本語での説明を先に行 った後 に,でた らめ語で の説明を行 うことは, 日本語 と比較 して説明 しづ らくなるため,身振 りの表出頻度が高 い。) も支持 されなか っ た。すなわち,説明 しづ らくなることが身振 りを増加 さ せ るわけではなか った。 さらに,でた らめ語条件 におい て, 日本語先条件 と,でた らめ語先条件では,有意差が み られない。 これは, 日本語条件 と比較 しての説明 しず らさに,身振 り頻度が影響を受 けていないことを示 して いる。 この傾向は,すべての身振 りにおけるでた らめ語 条件で見 られ,身振 りの コ ミュニケーション機能, また は自己指向性機能 に関係 な く観察 された。
5 ‑ 3
でたらめ語の役割についてMa r c os(1979)
のバイ リンガルを被験者 とした 研究では,スペイ ン語 と英語のどちらかを第1言語,第2
言語に持っ 8
名ずつの,計1 6
名の正反対のバイ リンガ ルが,5
分間ずっのモノローグ場面での,発話 と身振 り を表出 した。 このモノローグは,第1
言語 と第2
言語, および話す内容の抽象的な内容 と具体的な内容 とで比較 された。結果は,第1
言語 と第2
言語での比較 において, ビー トなどのSpe e c h‑Pr i ma r y
(話が主 となる)身振 りは,第2
言語が第1
言語 よ りも高 い頻度で発生 した( P<・ 0
01)。 串た, 自己接触行動などのGr opi ng
(検索 的)身振 りにおいて も,第2
言語の方が第 1言語 よりも 高 い頻度で発生 した( P <. 0 0 5 )
。そ して,表象的身振 り には差がみ られなか った。 この結果について,話が主 と なる身振 りや検索的身振 りは,第2
言語 を言語化す る上 で重要な役割を持 っていると考え られた。本研究 におい ては,図4
にも示 されているとお り, ビー トにおいて順 序条件 には有意差がみ られたものの,言語条件間におい ては有意差がみ られなか った。 また,図5
に示 されてい る自己接触行動 においては,言語条件間で有意差 はみ ら れた ものの,第2
言語をでた らめ語 に対応 させて考える な らば,Ma r c os( 1 9 7 9 )
の実験の結果 と,本研究での 結果 は,逆の結果 になっている。′た しかに,バイ リンガ ルにとっての第2
言語 は,言語構築が通常使用す る言語 と比べ ると,難 しいという点ではでた らめ語 と共通 して いると考えることができる。 しか し,本研究での日本語 を第1
言帯 と考えた時,バイ リンガルの第2
言語 とは異 な り,でたらめ語の基本 となる言準 イメージは日本語に す ぎないという点を指摘することもで きる。 ここで,第2
言語 とでた らめ語の違 いを,Le ve lt ( 1 9 8 9 )
の話す ことと身振 りをす ることの違いをモデル化 したアイデア (図6
参照) に基づいて考え るな らば,第2
言語 は話 し ている内容を聴覚 モニ ター( Audi t or ymoni t or )
か ら 監視 しなが ら話す ことかできるという点 において,でた らめ語を話す ときとは異 なる。 すなわち,でたらめ語 は, それほどモニターの必要 はないのか もしれない。それと も言語構築が難 しくて も,話す内容を言語 と照 らし合わ せ ることができなければ,身振 りは表出 しに くいのか もS p a t i a
lのy n a mi c Mo t o r Le xi c a l s p e c i f i c a t i o n s Pr o g r a m Mov e me n t
図
6 Leve lt (1989)のモデル
しれない。今後,発話 における言語表象のモニターがどのように身振 り表象行動 に関わるかについて,より詳細 に検討す る必要があろう。
謝辞
本研究 の実施 にあた り, ご協力 いただ きま した秋 田大学 の学 生 の皆様 に深 く感謝 いた します。記 して厚 く御礼 申 し上 げます。
参考文献
藤井美保子
2 0 0 2
ジェスチ ャー表現 に関す る聞 き手 の存在 斎藤洋典 ・喜多壮太郎編著 ジェスチ ャー ・行為 ・意味 第4
章 共立 出版8 0‑1 0 0 .
久恒啓一
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Camb r i d geuni v e r s i t ypr e s s .
荻野美佐子