▶▶▶ はじめに 日本では、毎年約15,000人が子宮頸癌(上皮内癌 含む)と診断され、約3,500が死亡している。そのう ち、44歳までに約400人が死亡している。子宮頸癌 合併妊娠 は妊婦10万人あたり約30人である。その うち、約30%は進行癌である。20代30代の女性に限 ればもっとも罹患率が多い癌は子宮頸癌であり、増 加傾向が続いている。日本の現状の問題点は①検診 受診率が低い②従来法細胞診での診断が続いている ③ HPV 予防ワクチンの接種の遅れである。一方、 日本と違い欧米では、①高い受診率②液状検体化細 胞診とHPV 検査の普及③ HPV 予防ワクチンが普及 している。米国では、1988年からベセスダシステム を導入し、液状検体化や HPV 検査が普及し、高い 精度の検診が行われている。 また欧米では2006年から HPV 予防ワクチンが導 入されている。オーストラリアではすでに若年者の 子宮頸部異形成の著明な減少とコンジローマの減少 が確認されている。このワクチンの予防効果は全年
抄 録
日本では、毎年約15, 000人が子宮頸癌(上皮内癌含む)と診断され、約3, 500が死亡している。そのうち、 44歳までに約400人が死亡している。20代30代の女性に限ればもっとも罹患率が多い癌は子宮頸癌であり、増 加傾向が続いている。 日本の現状の問題点は①検診受診率が低い②従来法細胞診での診断が続いている③ HPV 予防ワクチンの接種 の遅れである。日本産婦人科医会は子宮頸がんの撲滅をめざして、①ベセスダシステム(TBS)の導入②液状化 検体細胞診(LBC)の導入③ HPV 併用検診の導入④ HPV 予防ワクチンの積極的な勧奨の再開(WHO や FIGO は再度安全宣言を出している)⑤受診率の向上を目指している。今回は TBS、LBC、HPV 併用検診とワクチン に関するトピックスについて解説する。 (総合健診.2014;41:322-331.) キーワード ベセスダシステム、液状検体化細胞診、ヒトパピローマウィルス、HPV 併用検診、HPV 予防 ワクチン 1 )おざわ女性総合クリニック 2 )島根県立中央病院産婦人科特 集
特 集
子宮頸がん検診と HPV 予防ワクチンのトピックス
小澤 信義
1)岩成 治
2) 齢では約70%と言われている。また若年者に限れ ば、子宮頸癌からみつかる HPV のなかで16型と18 型の割合は約90%である。つまり HPV ワクチンの 接種の普及により、現在発生している若年子宮頸癌 は最大約90%発生しなくなる。子宮頸癌による死亡 を避けることができるだけでなく、若年女性が放射 線治療や子宮摘出手術や円錐切除手術を受けずに済 むことは、少子化対策としてもメリットが大きい。1
.ベセスダシステム(TBS)について 2008年より日本産婦人科医会は「ベセスダシステム 2001」に準拠した、新しい報告様式への変更を決め た。ベセスダシステムのポイントは、「標本の適否」、 「ASC」、「AGC」「推定病変の記述」等である。特に、 従来法細胞診検体では8,000個以上の標本を適正とし 標本の適正・不適正を定めたことは意義が大きい。 また産婦人科医会がん対策委員会は、ベセスダシ ステムの報告用語の日本語訳などを工夫し、検診受 診者への説明資料などを提供している。細胞診の精 度向上のために、本報告様式の徹底した普及が必要 であり、厚労省もベセスダシステムの普及を促して いる1,2)(図 1 )。子宮頸がん検診と HPV 予防ワクチンのトピックス
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.液状化検体細胞診(LBC) 米国では細胞診のほとんどが液状検体化細胞診 (LBC)となっている。LBC のメリットは①不適正 標本が減少する。② ThinPrep 法で HSIL の検出感 度が向上する(LBC 全体では感度はほぼ同等とする 報告が多い)。③同一検体で HPV-DNA 検査が可 能である。④鏡検時間の短縮がはかれるなどであ る。デメリットとしては、導入コストとランニング コストがかかることである。LBC の方法としては ThinPrep 法、SurePath 法,TACAS 法などがある。 今後は、ベセスダシステム(TBS)と HPV 検査の 普及のためにも、我が国においても、LBC の普及が 望まれている。3
.HPV 検査と細胞診/HPV 併用検診 HPV 検査(ハイリスク型 DNA 検査)は、HPV に感染しているか否かを判定するだけでなく、子宮 頸部高度病変のリスクを判定するためにも実施され る。つまり、現在の状態の判定だけでなく、将来病 変として進行する可能性を予測できる。診断薬キッ トとしては① HPV DNA「キアゲン」HC Ⅱ、②ア ンプリコア HPV、③インベーダー Cervista HPV HR、④コバス HPV 検査(ロッシュ)などである。 これらの検査法のなかで標準法とされているのは HC2法である。検診に用いるには、病変発見に対す る臨床的感度と特異度の間で最適のバランスをとる ことが求められる。 ①細胞診陰性・HPV 陰性(受診者の約90%)は 3 年後の定期検診、②細胞診陰性・HPV 陽性(受診者 の約 3 %)は 1 年後再検、③細胞診 ASC-US・HPV 陰性(受診者の約 2 %)は 1 年後再検、④細胞診 ASC-US・HPV 陽性(受診者の約 3 %)はコルポ生 検、⑤細胞診 LSIL 以上(受診者の約 2 %)はコル ポ生検へトリアージする3)(図 2 )。 また、コバス HPV 検査では、HPV16型、18型の 型も同定できるため、細胞診陰性、HPV 陽性例での その後の対応に有用である。米国の ASCCP のガイ ドラインでは、細胞診陰性・HPV 陽性は原則 1 年 後再検であるが、16型、18型陽性例は、 1 年を待た ずにコルポ・生検することが勧められている。4
.HPV 併用検診のメリットとデメリット HPV 併用検診のメリット① CIN2 以上の発見感 度が向上②細胞診 ASC-US 判定受診者が HPV 検査 に再来院せずに済む③検診の受診間隔の延長が可能 であることなどである。デメリットは①特異度がや や低い、②20代では HPV の陽性率が高く、一時的 な感染者に不要な不安を与えること、③ HPV 検査 費用の問題である。コストに関しては、受診間隔を 3 年とすれば、細胞診単独による検診より26%費用 削減できるとの報告がある。 細胞診単独による検診の CIN2 以上の発見感度は 44~86%であるが、HPV 併用検診では98~100%で ある。HPV 検査単独検診では93~98%である。両 検査の併用では100%近い感度が得られることから、 図 1 HPV䡯䡤䢕䡹 ㍍ᗘ␗ᙧᡂ 䠄CIN1䠅 㧗ᗘ␗ᙧᡂ 䠄CIN䠏䠅 ᾐ₶⒴ 㝧ᛶ ⣙䠕䠌䠂䛿⮬↛ච䛷㝖 䛥䜜䜛 ୰➼ᗘ␗ᙧᡂ 䠄CIN2) 䠒䛛᭶ᚋ᳨ 㝜ᛶ䠄NILM䠅 ㍍ᗘኚ䛔 䠄ASC-US䠅 䠄ASC-US䠅 ㍍ᗘኚ 䠄LSIL䠅 㧗ᗘኚ 䠄HSIL䠅 㧗ᗘኚ䛔 ASC-H-H䠅 䛜䜣 䠄SCC) 㗹ษ㝖 Ꮚᐑฟ 㧗䢔䡹䡴 HPV 䠍䡚䠎ᖺẖ᳨デ 䠏䛛᭶ᚋ᳨ 㝜ᛶ 1ᖺᚋ᳨ ␗ᖖ䛺䛧 HPV㝧ᛶ ⣙䠑䠌䠂 2ḟ᳨ᰝ䠄⤌⧊デ䠅 䝁䝹䝫デ䞉⏕᳨ 䠍ḟ᳨ᰝ䠄⣽⬊デ䠅 ୖ⓶ෆ䛜䜣 䠄CIN䠏䠅 䛭䛾ᚋ䛾᪉㔪 䠄⤒㐣ほᐹ䞉⒪䠅 図 2 ⣽⬊デ䠄䠅 +39䠄䠅 ⣽⬊デ䠄䠅 +39䠄䠇䠅 ⣽⬊デ$6&86 +39䠄䠅 ⣽⬊デ$6& 86 +39䠄䠇䠅 ⣽⬊デ 䠄䠇䠅 ⣽⬊デ䠇+39 䠄ᖺᚋ䠅⣽⬊デ䠇+39'1$᳨ᰝ
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Mar䡇E. Sherman, et.al: JNCI, Vol.95, No.1, 2003
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Ronco et al. Lancet Oncol. 2010;11:249-57. p<0.001 p=0.021 ୍⥙ᡴᑾ (3~5ᖺᚋ) (3~5ᖺᚋ) Ꮚᐑ㢕䛜䜣䛾Ⓨぢ p=0.166 p=0.031 䜸䝷䞁䝎䛾RCT Study 䠄POBASCAM䠅
Rijkaart DC, et al. Lancet Oncol. 2012;13:78-88.
CIN2+䛾Ⓨぢ
p=0.015 p=0.234
子宮頸がん検診と HPV 予防ワクチンのトピックス 図 8 図 9 図 7
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2007年から島根県では細胞診/HPV 検査併用検 診が開始されている。CIN2+ の検出感度が2.2倍 アップし、若年層の受診者が1.5倍アップし、市町村 の検診助成費用が約30%削減できている。さらに、 2012年の地域癌登録では、発見癌のなかで上皮内が んが77.9%を占めるようになり、進行癌(Ⅱ、Ⅲ、 Ⅳ期)は8.8%まで減少している(図 7 )。 将来が予想できる併用検診を行えば、女性に安心 感をあたえる。岩成ら8)の約 6 年間の経過観察では、 細胞診陰性 HPV 検査陽性から CIN3 になったのは 17.5%あり、細胞診陰性、HPV 陰性からは1.37%の みであった(図 8 )。 HPV 検査が陰性であれば、将来的に前がん病変を 発生するリスクが極めて低いことがわかる。つま り、両検査とも陰性であれば 3 ~ 5 年は癌が発生し にくい。また、CIN2/3 以内で発見できれば日帰り の簡単な円錐切除で治療でき、妊孕性が温存でき る。
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.HPV 併用検診ガイドライン 2011年に日本産婦人科医会がん対策委員会から 「子宮頸がん検診リコメンデーション─ HPV-DNA 検査併用検診にむけて─」2)が報告されている。 2012年に USPSTF(米国予防医学特別作業部会)と ACS(米国癌協会)/ASCCP(米国コルポスコピー 子宮頸部病理学会)/ASCP(米国臨床病理学会) は、新しい子宮頸がん検診のガイドラインを発表し ている。ほぼ同様な内容であるが、米国では受診間 隔について 5 年間隔を推奨しているが、医会リコメ ンデーションでは 3 年間隔を推奨している。また、 岩成らは25~29歳と30歳台の HPV 検査陽性率の差 がわずか 4 %で細胞診異常率と CIN2/3 の検出率が ほぼ同じことから、25歳以上への併用検診を勧めて いる(図 9 )。8
.HPV 予防ワクチンの日本でのながれ HPV 予防ワクチンは世界では2006年頃より国家 プログラムとしての接種が開始され、現在では120 カ国以上で接種され、いまだ中止をした国はない。 一方日本では2013年 4 月から定期接種として組み入 れられた直後に、積極的な勧奨を中止することに ワクチンは異物を注入して、免疫反応を高めるも ので、ある確率で副反応がおきる。したがってワク チンのリスクとその疾患に対するベネフィットを評 価検討して使用するものである。世界の各国はその リスクとベネフィットを比較検討して接種を継続し ている。ワクチンに関してリスクゼロはあり得な い。その上で、ワクチンの重篤な副反応に対して は、国の救済制度で救済する事としている。 2013年 4 月からの定期接種化に反対する「子宮頸 がんワクチン被害者連絡会」が立ち上がり、マスコ ミへの活動が活発化した。 5 月に国会でもとりあげ られ、活発に反対運動が展開された。そのなかで、 6 月14日厚生労働省の副反応検討部会「厚生科学審 議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」が 開かれ、積極的な勧奨を中止する決定となった。定 期接種化は継続されているが、接種率は激減した。9
.日本のワクチン行政の迷走 日本では厚労省が突然ワクチン接種を中止したこ とが今までに 4 回あり、今回で 5 回目である。過去 4 回はいずれも、その後接種が再開されている。 1 回目は1975年の DPT の中止である。しかし原因が SIDS とのことで1976年には再開されている。 2 回 目は 1989年の MMR の中止である。髄膜炎の多発 原因とされたが、1993年に再開されている。2013年 には風疹の大流行と先天性風疹症候群児報告が相次 いだ。 3 回目は2005年の日本脳炎ワクチンの中止で ある。急性散在性脳脊髄膜炎(ADEM)はワクチン とは関係ないことが判明し、2009年にワクチン再開 された。 4 回目は2011年の Hib、肺炎球菌ワクチン の中止である。 1 ヵ月後に再開されている。 5 回目 が今回の2013年 6 月14日の HPV ワクチンの勧奨の 中止である。 今回の厚生労働省の副反応検討部会のメンバーに は、子宮頸癌と HPV ワクチンの専門家である婦人 科医は参加していない。ワーキンググループによる 詳細な科学的な検討もなく勧奨の中止が決定されて いる。 このように、ワクチン行政の迷走は根本的なワク チンに関わる組織がないことが影響している。たと えば、米国の ACIP(ワクチン接種に関する諮問委 員会)の日本版が必要と以前から言われている。つ まり、政府から独立して判断できる常設委員会が必子宮頸がん検診と HPV 予防ワクチンのトピックス 要である。ワクチンに関する長期的なプランニング はこの専門家委員会で決定し、個々のワクチンに関 しては各専門家が参加するワーキンググループで詳 細な検討をおこなう必要がある。
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.HPV ワクチンの副反応9-11) 日本では2013年 3 月末までに 2 価ワクチンが 6,957,386回接種され、重篤な副反応の報告は医療機 関からの報告が91例(13例/100万接種),製造販売 業者からの報告が704例(101例/100万接種)であ る。医療機関からの報告で重篤とされた91例で件数 の多い副反応は、発熱20件、注射部位疼痛17件、蒼 白16件、意識レベルの低下15件、意識消失15件など である。 一方、 4 価ワクチンは1,688,761接種で重篤な副反 応の報告は医療機関からの報告が15例( 9 例/100 万接種),製造販売業者からの報告が68例(40例/ 100万接種)である。 医療機関からの報告で重篤とされた15例で件数の 多い副反応は、頭痛 3 件、ショック 2 件、意識消失 2 件、失神 2 件、血圧低下 2 件などである。 今回の積極的な勧奨の中止の決定に深くかかわっ たのは、痛みに関わる副反応に関してである。約860 万回以上の接種で、複合性局所疼痛症候群(CRPS) とされた症例が 5 例報告された。しかし、報告され た 5 例中 4 例はその後 CRPS としては典型的でなく 否定された。 また38例の広範な痛みを訴える症例があり、ワク チンとの因果関係は不明であり、更なる調査が必要 とされた。その疼痛が広範にみられた38例として は、①慢性に経過する接種部以外の疼痛で報告時未 回復 8 例、②慢性に経過する接種部以外の疼痛で回 復または軽快 4 例、③慢性化しなかった接種部以外 の疼痛14例、④自己免疫疾患を示唆する所見のある 疼痛 8 例、⑤転帰未確認 4 例とされる。38例中 2 価 ワクチンが34例、 4 価ワクチンが 4 例であった。接 種後に異常あるときは、適切な医療機関への受診を 勧める事となった。 HPV ワクチンの副反応の頻度をまとめると①アナ フィラキシー1/96万接種、②ギランバレー1/430万 接種、③急性散在性脳脊髄炎(ADEM)1/430接種、 ④複合性局所疼痛症候群(CRPS)1/860万接種であ る。11
.ワクチンのベネフィット HPV 予防ワクチンのベネフィットとしては、子宮 頸癌の予防効果のみでなく、中咽頭癌、肛門癌、外 陰癌、膣癌、陰茎癌での予防効果が期待されてい る12)(図10)。 また、日本で年間約 4 万人が罹患している尖圭コ ンジローマの予防効果も期待されている。ワクチン 接種率の高いオーストラリアの報告では、接種開始 5 年目の2011年で、21歳以下の女性で新規の尖圭コ ンジローマの発生が92.6%減少している。21歳以下 図10 ᵐᵊᵎᵎᵎ ᵒᵊᵎᵎᵎ ᵔᵊᵎᵎᵎ ᵖᵊᵎᵎᵎ ᵏᵎᵊᵎᵎᵎ ᵏᵐᵊᵎᵎᵎ᭗ἼἋἁᵦᵮᵴỆឪ׆ẴỦ
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.WHOとFIGOのワクチン接種推奨宣言15,16) ワクチンの安全性に関して、市販後試験は約20ケ 国で実施されており、HPV ワクチンの長期効果およ び安全性がモニターされている。現在、HPV ワクチ ンの安全性を評価・モニターしている全ての規制当 局は、HPV ワクチンは安全かつ効果的であり、ベネ フィットはリスクを上回ると結論づけている。ただ し、ワクチン接種を受ける人は、HPV ワクチン接種 の男性でも81.8%減少している13)(図11)。 また、接種開始 4 年目の2010年で、18歳未満の女 性において、高度子宮頸部病変(CIN2+, AIS)発生 率の著明な低下が確認されている14)(図12)。 米国癌協会(ACS)は、米国疾病対策センター (CDC)のデータを基に、女児および成人女性の HPV 罹患率を、ワクチン導入前と導入後について比 較し、14~19歳女性の HPV 罹患率は、ワクチン導 入後56%減少したことを報告している。ỼὊἋἚἻἼỴʖ᧸ᆔἩἿἂἻἲ
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.HPV 併用検診と予防ワクチンの 今後の展望 HPV 併用検診の普及によって CIN2 以上の偽陰 は約 2 割にとどまっている。2014年からはクーポン 未受診者への再度のクーポン配布が検討されてい る。 また子宮頸がん検診の見直しの厚労省委員会で HPV 併用検診が検討されたが、2013年 3 月の厚労 省の結論としては対策型検診としての本格導入が決 定しなかった。一方 HPV 併用検診に関する研究班 が立ち上がり、 6 年かけて検討し結論をだすことに なった。海外では、RCT の大規模データが続々出て おり、今後 6 年かけての厚労省のデータを待つ必要 はなく、いつ始めるかという段階に入っていると考 えられる。島根県では、2007年から HPV 併用検診 が開始され、2012年には浸潤癌が激減している。島 根県の取り組みが全国へ広がることが期待される。 今後ワクチンの接種勧奨が再開され、接種率が向 上すれば、子宮頸癌の発生数が最大約70%減少する と考えられ、その時代に入れば、まず感度の高い HPV 検査でスクリーニングし、その後特異度の高い 細胞診を行う方がより効率的と考えられる。さらに HPV 予防ワクチンは現在16,18型を中心に展開され て い る が、 9 価(6, 11, 16, 18, 31, 33, 45, 52, 58) のワクチンの phase Ⅲの治験が進行中である。 9 価 のワクチンが普及すれば、子宮頸癌の約87%が予防 可能となり、コンジローマも90%以上予防可能とな る。 ▶▶▶ おわりに HPV 併用検診に関するデータが海外だけでなく国 内でも蓄積されてきており、対策型検診への早い時 期での導入が望まれている。今後の課題としては、 適切な間隔での HPV 併用検診の導入である。また 未受診者への call-recall 制の確立による受診率の向 上施策も急務である。 また世界120カ国以上で使用されている HPV ワク チンが日本だけが積極的な接種の勧奨がされていな い。日本の女性だけがワクチンで予防可能な子宮頸 がんやさらには中咽頭癌や肛門癌、膣癌、外陰癌な どに罹患し続けることは避けるべきである。日本に おいても、WHO や FIGO の意見を尊重し、近い将来 積極的なワクチン接種の勧奨が再開される必要があ1 ) 小澤信義,牧野浩充,亀セツ子,他:ベセスダシステム を用いた子宮頸がん検診の課題とその解決─不適正標本 と ASC-US に対する宮城の対応について─.産婦人科の 実際 2010; 59(4): 597-603. 2 ) 日本産婦人科医会がん対策委員会:「子宮頸がん検診リ コメンデーション─ HPV-DNA 検査併用検診にむけ て─」.2011. 3 ) 岩成 治,森山政司,小村明弘:HPV DNA 検査・細 胞診併用検診による子宮頸がん検診.臨婦産 2013; 67 (8): 771-9.
4 ) Sherman ME, Lorincz AT, Scott DR, et al: Baseline cytology, human papillomavirus testing, and risk for cervical neoplasia: a 10-year cohort analysis. Journal of the National Cancer Institute 2003; 95(1): 46-52. 5 ) Kahn MJ, Castle PE, Lorincz AT, et al: The elevated
10-year risk of cervical precancer and cancer in women with human papillomavirus(HPV)type16 or 18 and the possible utility of type-specific HPV testing in clinical practice. J Natl Cancer Inst 2005; 97: 1072-9. 6 ) Ronco G, Giargi-Rossi P, Confortini M, et al: Efficay of
papillomavirus testing for the detection of invasive cervical cancer and cervical intraepithelial neoplasia: a randomized controlled trial. Lancet oncol 2012; 13: 78-88.
7 ) Rijkaart DC, Berkhof J, Rozendaal L, et al: Human papillomavirus testing for the detection of high-grade cervical intraepithelial neoplasia and cancer: final results of the POBASCAM randomized controlled trial. Lancet Oncol 2012; 13: 78-88.
9 ) 子宮頸がん予防ワクチンの重篤な副反応報告の状況につ いて.(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000 34g8f-att/2r98520000034hsl.pdf) 10) 2 子宮頸がん予防ワクチン接種後の疼痛関連症例等につ いて.(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000 34g8f-att/2r98520000034hte.pdf) 11) 厚生労働省:子宮頸がん予防ワクチン Q&A.(http:// www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou 28/qa_shikyukeigan_vaccine.html)
12) Gillison ML, Chaturvedi AK, Lowy DR: HPV prophy-lactic vaccines and the potential prevention of noncer-vical cancers in both men and women. Cancer 2008; 113(10 Suppl): 3036-46.
13) Ali H, Donovan B, Wand H, et al: Genital warts in young Australians five years into national human papillomavirus vaccination programme: national sur-veillance data. BMJ 2013; 346: f2032.
14) Brotherton JM, Fridman M, May CL, Chappell G, Saville AM, Gertig DM: Early effect of the HPV vac-cination programme on cervical abnormalities in Victoria, Australia: an ecological study. Lancet 2011; 377(9783): 2085-92.
15) World Health Organization Weekly epidemiological record No.29, 2013, 88, 301-12.(WHO の報告の日本語 訳 http://www.cczeropro.jp/assets/files/WHO.pdf) 16) http://www.figo.org/news/safety-hpv-vaccination-
figo-statement-0011437.(FIGO の報告の日本語訳 http: //www.cczeropro.jp/dl/safety_wc_20130831.pdf)
子宮頸がん検診と HPV 予防ワクチンのトピックス
Topics in Cervical Cancer Screening and HPV Vaccination
Nobuyoshi Ozawa
1), Osamu Iwanari
1) Ozawa Ladies Total Clinic
2) Shimane Prefectural Central Hospital Department of Obstetrics and Gynecology
Every year about 15, 000 people in Japan are diagnosed with cervical cancer, and there are
approximately 3, 500 deaths. Cervical cancer in young adults is still increasing.
There are a number of issues facing cervical cancer screening in Japan. Firstly, the attendance rate
for cervical cancer screening is very low. Secondly, although the Bethesda System is gradually
spreading in Japan, conventional cytology is still the major approach, and liquid based cytology is
not popular. Thirdly, HPV and Pap co-test has not been introduced as a method of mass public
screening. Fourthly, without scientific discussion, the Japanese Government abruptly ceased to
recomend HPV vaccination in June 2013.
Cervical cancer is already a preventable disease. The Japanese Government must pay attention to
WHO and FIGO specialists.
(HEP. 2014;41:322-331.)