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博 士 ( 理 学 ) 高 檎 暢 宏

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 高 檎 暢 宏

学 位 論 文 題 名

Studies on the IVIesoscale and lVIicroscale Features  of Heavy Rainfall Events during the Late Period       of the Baiu Season

(梅 雨 末 期の豪 雨のメソス ケールと マイク口 スケ―ル の特徴に 関する研 究)

学 位 論 文 内 容 の 要旨

   

    梅雨末期には頻繁に豪雨が発生し,  しばしば災害をもたらしてきた.  これまでも数 多くの研 究がこの ような豪 雨の発生のメカニズムを解明するために注がれてきた,  本 論文では1988年7月に行 われた梅 雨末期集 中豪雨の 特別観測 のデータをもとに,  これ まで なされ ていなか った豪雨 現象のメ ソスケー ルとマイク ロスケー ルの特徴 をドップ ラーレ― ダ―や時 間・空間 的に密なサウンディングデータ(〜 100 km,3〜6時間)を用 いて運動学的に明らかにした.

    観測は,  おもに長崎県西海町に設置した北大理学部のドップラーレ―ダーを用いて 下層の風 と降水エ コーの発 達過程の 関係に注 目して行 った.  風の場の解析には2台の ドップラ ―レーダ ーを用い た解析,  新たに開 発した1台 のドップラーレーダーによる 風の場の推定法,  等を用いた,  また,  反射強度の3次元データを用いて降雨量の推定 とェコー の3次元構 造を調べ た.  さら にエコー の発生す る環境を知る目的でサウンデ イ ン グ の デ ー タ を 用 い て 収 支 解 析 , 及 び 大 気 の 安 定 度 の 解 析 を 行 っ た .   解 析 し た 事 例 は ,  お も に1988年7月17,  18日 に 観 測 し た 梅 雨 前 線に 伴 う降 水イベン ト,  3例(Casel.Case2.Case3)である.  さらに梅雨期の滋賀県信楽町,

熱帯のパプァニューギニア,  マヌス島,  及び,  夏季の北海道札幌市でのドップラーレ ー ダ 一 観 測 の 事 例 解 析 を 行 い 梅 雨 末 期 の 降 水 現 象 と の 比 較 を 行 っ た .     3っ のケース スタディ にっいて メソスケ ールの特 徴を簡単に まとめる と,CaseIと Case2は クラ ウ ド クラ ス ター に 伴 う降 水 イベ ン ト であ り ,Case3はク ラウドク ラスタ ーを伴わないものであった.  降水はメソスケール現象として現れ,  降水量はCasel.

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Case2ともに局 所的に100  mmを 超した( 例えば,  諌早で3時 間にそれぞ れ165mm. 104 mm) の に対 し てCase3では そ れ ほど 大 雨は 記 録 され な か った ( 最も 多 い 佐世 保 で3時 間に27mm).  これらの 違いはメ ソスケー ルの収支 解析でも水蒸気の収束量の違い等で 現われた,

    ドップラ ーレ―ダ ーの観測 からモれ ぞれのケ ースをまと めると,Case1では大雨を もたらす エコーの 組織化の 原因とし ては,  発 達したエコーから発生したガストフロン トによる 梅雨前線 帯の収束 の強化,  及び梅雨 前線上に発達したレインバンドと南西海 上で発生 した孤立 したエコ ーとの合 流による エコーの発達の効果であった.  その結果 としてレ インバン ドは大き く発達し ,  さらに そのレインパンドが特定の場所に次々に 通過して大雨をもたらした.

  Case2では,  Case1で 大雨がも たらされ た領域と ほぼ同じ所に,  弧状に組織化した エコーに よって大 雨がもた らされた .  エコー の弧状に組織化するプロセスにはやはル ガストフロソトが重要な役割を果していた.  さらに,  エコーの組織化の直前に暖かく 湿 っ た 南 西 風 の 流 入 が あ り ,  こ れ も エ コ ー の 発 達 に 大 き く 貢 献 し て い た ,     Case3は,  細いレインバンドとして現れ,  このェコ―の循環系は環境の風系を反映 し た 構 造 を 持 っ て い た .  ま た ,  こ の ケ ー ス で も エ コ ー の 合 流が 観 測 きれ た .     これらの 事例解析 から明ら かになっ たメソス ケールとマイクロスケールの特徴は,

@ガスト フロント による梅 雨前線帯 の収束の 強化,  @エコ―同士の合流によるエコー の発達,  ◎メソスケールの場での気温,  降水量のコントラストであった.  さらに@と して,  地形,  山岳の効果も挙げられた.  地形,  山岳の効果に関しては7月14,  15 日に観測された孤立したエコーの解析から,  山岳域での強制対流の効果,  及び山岳を 迂回する気流による下層風系を変える効果として現われた.

    梅雨期のガストフロントの特徴は,  ガストフロントがエコーに離れずに存在してい たこ,と,  及び,  ガストフロントの発生のメカニズムはエコーが大きく発達して最大に 達した後 のエコー の崩壊に よること などであ る.  このような特徴はー般によく知られ てい る ア メリ カ 合衆 国 中西部 でのシピ アースト ームで見 られるガス トフロン トの特徴 とは異なるものである.  さらに,  梅雨期と似た環境である熱帯のパプァニューギニア,

マヌス島で観測したガストフロントの発生メカニズムとも異なっていた.  このことは,

ガストフ ロントの 発生,  さ らにはエ コーの形 成のメカニズムが大気の成層や風の鉛直

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シ ア ー 等 の 環 境 に 敏 感 に 反 映 す る こ と を 意 味 す る .

    また,  合流の効果は,  エコ一内の降雨量の15〜35%の増加として現れ,  梅雨末 期の特徴 の停滞前 線である 梅雨前線 による弱い 収束域の 形成と梅 雨前線の南での対流 不安定な 領域の存 在という メソスケ ールの場が ェコーの 合流の起 こりやすい状況を作 っていたことが明らかになった,  このことは,  他の地域でのケーススタディには見ら れ な か っ た こ と で あ り 梅 雨 末 期 に 特 有 の 現 象 で あ る こ と が 分 か っ た .     これらのケーススタディを,  メソスケールとマイクロスケ―ル(雲スケール)の間 での相互 作用という観点でまとめると,  雲スケ―ルのインパクトであるガストフロン トの集合 がメソスケールの収束を強化し,  そこにメソスケールの場でエコーの合流が 起こり,  局所的に大雨がもたらされ,  メソスケールのコントラストを作り出した..  さ らに,  このような場においては,  下層の暖湿気移流が容易に起こり,  再び大雨が同じ 領域にも たらされる.  このように局所的大雨をもたらす例ではクラウドクラスターが 介在していた.  一方,  クラウドクラスターに依らナょいレインパンドはメソスケールの 場を反映 した構造を持っが雲からメソスケールへのインパクトは現われなかった.  ま た,  山岳は,  壬コーをその斜面で発達させてせき止め,  さらに下層風系を特定の方向 に支配す ることによルエコーが特定の場所を通過させる役割を果たし,  このことが降 水の集中化に働いたと考えられる.

  このよう に,  梅雨末期の状況下でメソスケールとマイクロスケールの現象の密接な 結 び っ き に よ り 局 所 的 な ( メ ソ ス ケ ― ル の ) 降 雨 の 発 生 が 明 ら か に な っ た .

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    菊地 勝弘 副査.教授    播磨屋敏生 副査   助教授   上田   博

学 位 論 文 題 名

Studies on the lVIesoscale and lVIicroscale Features  of Heavy Rainfall Events during the Late Period       of the Baiu Season

( 梅雨 末期 の豪 雨の メソ スケー ルと マイ ク口 スケールの特徴に関する研究)

  北日本 及び 東日 本を 除く 日本 列島 南西 部では、梅雨末期には頻繁に豪雨が発生し、

し ぱしぱ 災害 をも たら して きた 。今 日ま で、数多くの研究がこのような豪雨の発生の メ カニズ ムを 解明 する ため に注 がれ てき た。 本論 文で は1988年7月に 行われた梅雨末 期集中豪雨の特別観測のデータをもとに、  これまであまり注目されてこなかった豪雨 の メソス ケー ルと マイ クロ スケ ール の特 徴をドップラーレーダーや時間・空間的に密 なラジオゾンデのデータ(〜 100 km.3〜6時間)を用いて運動学的に明らかにしたもの である。

  本論文 は六 章か ら構 成さ れて おり 、第 一章の序論では、過去の梅雨期の大雨に関す る研究の歴史的な流れをレピュ―し、  豪雨の発生に対するメソスケールとマイクロス ケールの運動学的な研究の必要性を述べている。

    第二章では、  特別観測のために展開されたドップラーレーダーおよびラジオゾンデ 観 測のデ ータ 収集 方法 と解 析方 法に っい て述べ、特に申請者によって新たに開発され た −・台 のド .yプラ ーレ ―ダ ーを用 いた 水平 風の 解析 方法 であ るTVAD(Tangential   Velocity Assumed Display)法にっいて述べている。

    第 三 章 で は1988年九 州地 方で 行っ た特 別観測 の概 要と 解析 事例 の概 況を 述べ 、

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  こ れ ま で 指 摘 さ れ て き た 梅 雨 末 期 豪 雨 時 の 状 況 と の 類 似 性 を 示 し た 。     第四章では、  主に、  特別観測の3っのケーススタディ(Case  1〜3)を示した。  その   うちCase1とCase2はクラ ウドク′ ラスタ― に伴う降水 イベント であり、Case3はクラ   ウドクラス夕一を伴わなぃものであった。  降水はメソスケール現象として現れ、  降水 量 はCase1、CaSe2とも に 局 所的 に100  mmを 超 し た例 で (諌 早 で3時 間に そ れぞれ16 5 mm、10 4mm)、  Case3では最も多い佐世保で3時間に27mmの並の降雨であった。  ド.y プ ラ ーレ ー ダー の 観 測か ら そ れぞ れ のケ ー ス の特徴と して、Case1では 大雨をも たら すエ コ―の組 織化の原 因として 、  発達した エコーから発生したガストフロントによる 梅 雨 前線 帯 の収 束の 強化、及 び梅雨前 線上に発 達したレ インバンド と南西海 上で発生 して 東進して きた孤立 したエコ ーとの合流 によってエコーが発達したものである.こと を指 摘した。Case2では、  Case1で 大雨がも たらされた領域とほば同じ所に、  弧状に 組織 化したェ コーによ って大雨 がもたらさ れたが、  エコ←が弧状に組織化されるプ口 セス にはやは ルガスト フロント が重要な役 割を果していたことが示された。  さらに、

エコ ーの組織 化の直前 に暖かく 湿った南西 風の移流があり、  これもエコーの発達に大 きく 貢献して いたことが明らかになった。  細いレインバンドとして現れたCase3では、

クラウドクラスターを伴わないこのェコ一内の循環系;ま、  梅雨前線帯の風系を反映し た構造を持っていたことを示した。

    これ らのケ― ススタデ ィから豪 雨の発生におけるメソスケールとマイクロスケール の 特 徴と し て、 のガ ストフロ ントによ る梅雨前 線帯の収 束の強化、 @エコー 同士の合 流によるェコーの発達、  @メソスケールの場での気温、  降水量のコントラストが挙げ ら れ た。  さら に@と して、  エ コーが進 む方向の 地形、山 岳の効果も 挙げられ た。

  第五 章では、 梅雨期の 九州に似 た環境を持 つ、梅雨期の滋賀県信楽町、熱帯の´゛プ アニ ューギニ ア、  マヌス島、及び夏季の北海道札幌市周辺でのド.yプラ―レーダ一観 測 の 事例 解 析を 行い 、第四車 で挙げた メソスケ ールとマ イクロスケ ールの現 象との比 較を行った。  ここでは、  梅雨末期のェコーとは異なるタイプのェコーが観測されてお り、  ガストフロントの発生のメカニズムやエコ―の発達のプロセスの連いにっいて言侖 じている。

  第六章で は、全体 のまとめ を行い、 上記の四っ の特徴が 梅雨末期 の豪雨現象に特有 のもので あることを示し、  そのことが梅雨末期の集中豪雨現象の発生機構に重要な役

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割を果たしていると結諭付けた。

  このように、  申請者はドップラーレーダーによる降水現象の観測を積極的に行い、

また、  解析手法を開発するなど、今日まで総合的な観測、  解析があまり行われていな かった梅雨末期の集中豪雨の発生機構を理解する上で、  メソスケールとマイクロスケ ールの相互作用を明らかにした点は高く評価される。  今日までに公表した言侖文は欧文 六篇を含む八篇あり、  また国際学会での口頭発表を行うなど、  この分野では高い評価 を受けている。

  以上により審査貝一同は、申請者が博士(理学)の学位を受けるに十分ナょ資格を有 するものと認める次第である。

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