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Flow cytometry による精巣胚細胞性腫瘍      の核 DNA ploidy の 研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 柏 木    明      学位 論文題 名

Flow cytometry による精巣胚細胞性腫瘍      の核 DNA ploidy の 研究

学位論文内容の要旨

I研究 目的

  精 巣腫瘍 は胚 細胞性 腫瘍と して, 組織学 的多 様性や 発生過 程での 形態 的分化能,年齢と出現す る 組織型 との関 係ナょ ど他 の固形腫瘍とは異なる様々な特徴を有するが,その生物学的機序や発生 病 因論に っいて はいま だ未 解明の 点が多 い。一 方高 い抗癌 剤感受 性を示 すことから近年治療成績 が 飛躍的 に向上 し,進 行癌 といえ ども治 癒可能 な固 形腫瘍 のモデ ルとし て,臨床的にも注目され て い る 。 本 研 究 はflow cytometryを 用 い て 精 巣 腫 瘍 の 核DNA ploidy解 析 を 行 い , 核DNA 量 の面か ら精巣 腫瘍の 生物 学的性 質を評 価し, その 組織発 生上の 機序に っいて考察することを目 的 とした 。

1| 対象 および 方法

  対象 :1969年 から1989年まで に北海 道大 学医学 部附属 病院で 精巣 摘除術 を行った精巣腫瘍76例 を対 象とし ,組織 分類 は成人 型59例中 セミ ノーマ : 35例(平均36.5歳;定型的セミノ―マ28例,

退 形 成 性 セ ミ ノ ー マ7例 ) , 非セ ミ ノ ー マ(nonseminomatous germ cell tumor):24例 ( 平 均30.5歳)で あり, 小児型 は17例 (平均1.6歳 )中ヨ ークサ ック腫 瘍:9例, 奇形腫:8例であつ た 。 標準 組 織 と し て前 立 腺 癌 患 者 の正 常 精 巣5例(64歳 〜77歳 ) , およ び6歳児の 正常精 巣1例 を用 いた。

  検体 の 選 択 : ホリ マ リ ン 固定 パラフ アン 包埋ブ ロック として 保存さ れて いた腫 瘍組織 よりHE 染 色 標本 を 作 成 , 鏡検 に よ り 壊 死 組織 を 除 い た 腫瘍 部 分 を 確 認し ラ ン ダ ムに1症例 にっ き1〜 4検 体, 計190検 体 (1症 例平 均2.5検 体)を 選択し た。な お成人 の複 合組織 型のう ち4例で組 織 成 分 によ る 検 体 の 分離 が 可 能 で ,同 一 腫 瘍 中 の セミ ノ ー マ 部 分と そ れ 以 外 の部 分 の 核DNA量 の相 違を比 較した 。

  核懸 濁 液 の 作 成: 選 択 し た組 織標本 を50〃 で薄切 後1〜2枚の組 織を用 手的に 乱切 し,Hedley

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の方法に準じキシレンにて脱パラフィンし100%,80%,60%工夕/―ルで漸次再水和,0.5%ペ プシンで37℃,60分処理後tritonX−100で 処理し裸核化を行った。っいでVinde14vの方法 に 準 じRNase (100,u g7mE)処 理 後 ,propidium iodide (200肛g/mE)にて 核DNA染 色 (4℃,30分)を行った。

DNA ploidy解 析:flow cytometerはCoulter社EPICS一Cを 用い ,488nm Arイオ ンレ ー ザ ーに て励 起さ れた 赤 色螢光量を相対的核DNA量を反映するものとしてDNAヒストグラム 上に表示した。 測定条件は核流速200個/秒,1検体あたり15000〜20000個の核を測定しDNA diploid standardは 正 常精巣組織の2C細胞 のGo/G!ピ―クを用い,得 られたDNAヒスト グラムはDNA index  (DI)で評価した。DIは 腫瘍細胞のGo/G,ピークの チャンネル数を正 常細胞のGo/G,ピークのチャンネル数で除して求めた。

  DNA ploidyの 判 定 :DNAヒ ス ト グ ラ ム 上 のlC,2C,4C以 外 のチ ャン ネ ルにGo/G, ピ ーク か存 在す るも の をDNA aneuploidとし ,2Cに単一のGo/G,ピー クを持っもの,あ る い は1C,2C,4Cにの み ピー クを もっ もの をDNA diploidとし た。 小児 型 では2Cに 単 一のGo/G,ピー クを示す場合DNA diploid, 全細胞数に対し4C分画が15%を超えるものは DNA tetraploidとした。なお同一腫瘍でDI値の差か0.2以上異ナょるピークが出現した場合,

ま たは 同一 検体 内に 複 数のDNA aneuploidピークが出現した場合をDNA heterogeneityあ りとした。統計的有意差判定はWilcoxonの順位和検定を用いた。

  結  果

DNAヒストグラムは成人の奇形腫の1例を除く75例(99%)において変異係数(coef ficient of variation:CV)が3〜10%の範囲で解析が可能であった。

  1)DNA aneuploidの頻度:セミノーマでは35例全例に,非セミノーマは解析可能であった 23例中22例(96%)に,成人型全体では58例 中57例(98%)にDNA aneuploidを認めた。こ れ に対 し小 児で はヨ ークサ ック腫瘍の3例がDNA tetraploidであった他はDNA dioloidで あった。すなわち小児型は全例 DNA euploid を示し,成人例に多く見られたtriploid周辺 のDNA aneuploidは認められなかった。

  2)成人型の組 織分類とDI:セミノーマのなかで増殖能がより高いと考えられる退形成性セ ミノーマは定型的セミノーマに比ベ小さいDIを示す傾向があった(Pく0.06)。さらにセミノー マに比ベ生物学的悪性度が高いと考えられる非セミノーマが有意に小さいDIを示した(pくO. 01)。

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  3)DNA heterogeneityにっいて :組織学的にheterogeneousナょ複合組織型は解析できた 非セミ ノーマ23例中19例(83%)あ ったが,DNA heterogeneityはそのうち4例(17%)に認 められたのみであった。セミノーマと非セミノーマが混在する混合型で組織成分ごとの比較が可 能であ った4例では,セミノーマ部 分と他の組織型部分の間で異なるDNA ploidyを示したも のは4例中1例(25%)のみであった。

IV考  察

  一般 に悪性腫瘍では当初はDNA dioloidから発癌し,生物学 的進展とともにDNA aneu・ ploidの頻度が増加すると考えられており,悪性度が高まるとDI値は増大すると報告されてい る腫瘍が多い 。一方精巣腫瘍の核DNA dloidyは,成人型でfまほぼ全例がDNA aneuploidを 示しDNA diploidの腫瘍は稀であるととも に,組織学的に悪性度が高いものほどDI値が小さ いこと,小児 精巣腫瘍では同じ組織型で も核DNA量パターンは成人型とは大きな相違がある ことなどDNA ploidy上の特徴が他の固形腫瘍とは大きく異なるものであった。精巣腫瘍の発 生はセミノ―マは胚細胞が直接癌化し,非セミノーマの各組織型は胎児性癌から分化発生すると 考えられた従来の説に対し,近年その発生母地として精巣のcarcinoma in situ(CIS)が注目 され,精巣腫瘍の各組織型は多分化能を有するCIS細胞より一元的に発生するとの考え方が一 般 的 と な っ て お り, さら に最 近Oosterhuisら はDNA tetraploid付 近 のCIS細胞 か ら核 DNA量が減少することによルセミノーマをへて非セミノーマが発生するとしている。染色体の 4倍体化とそ れに引き続く染色体の欠失ま たは構造異常の形成による核DNAの滅少により癌 のgenetic evolutionがもたらされるとするShackneyらのモデルに従えば,今回の結果は成人 の精巣腫瘍はDNA tetraploidの胚細胞か ら腫瘍化し,生物学的悪性度が高くなるにっれ核 DNA量が少ナょくなるものと解釈することが可能であろう。また異なる組織型が混在しても,核 DNA量上は均 一な場合が多いことは複合組 織型でもその組織発生は一元的に説明できる最近 の学説をより支持するものである。さらにこれは臨床的には精巣腫瘍が高い化学療法感受性示す ことを説明する傍証とも考えられるとともに,セミノーマ成分と非セミノーマ成分が混在する混 合型腫瘍ではセミノーマ部分が形態的にはセミノーマでもその発生や性格はむしろ非セミノーマ に近いものであり,混合型は臨床的には非セミノーマとして取り扱うというわれわれの日常の認 識を支持する ものである。一方高率にCISを随伴する成人型に対し,CISを伴わない小児型は DNA ploidyの パターンも大きな相違があ り,成人型が減数分裂期の胚細胞からCISを経て発 生するのに対し,小児型は減数分裂開始前の原始生殖細胞由来の腫瘍であるという発生起源の違

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いを反映したものと考えられる。

V結  語

  Fow cytometryを 用 い て 精 巣 胚 細 胞 性 腫 瘍 の 核DNA ploidy解 析 を 行 い , そ の 組 織 発 生 上 の 特 徴 に っ い て 考 察 し た 。CISを 経 て 発 生 す る と され る 成人 型はDNA tetraploidの 胚細 胞 か ら 腫 瘍 化 し 生 物 学 的 悪 性 度 が 高 く な る ほ ど 核DNA量は 減 少す ると 考 えら れる 一 方, 小児 型 は 組 織 学 的 に 同 じ で も そ の 発 生 起 源 は 成 人 型 とtま 異 な る こ と が 推 定 さ れ た 。

学位論文審査の要旨

  精巣 腫 瘍は 胚細 胞 性腫 瘍と して組織学的多様 性や発生過程での 形態的分化能,年齢 分布など他 の 固形 腫 瘍と は異 な る特 徴を 有するが,その生 物学的機序や発生 病因論にっいてはい まだ未解明 の 点が 多 い。 一方 臨 床的 には 進行癌といえども 治癒可能な固形腫 瘍のモデルとして最 近注目され て い る 。 本 研 究 はFlow cytorretryを 用 い た 核DNAploidy解 析 か ら 精巣 腫 瘍の 生物 学 的性 質 と その 組 織発 生上 の 機序 にっ い て考 察す る こと を目 的 とし た。

  対 象 は 成 人 精 巣 腫 瘍59例 :Seminoma35例 ,nonSeminomatouSgermCelltumor(NS− GCT)24例 , お よ び 小 児 精 巣 腫 瘍17例 :yolksactumor(YST)9例 ,teratoma:8例 , 計 76例で , ホル マリ ン 固定 パラ フィン包埋組織か ら鏡検により壊死 組織を除いた腫瘍部 分を確認し ラ ンダ ム に1症 例に っき1〜4検 体, 計190検 体(1症例 平均2.5検 体) を 選択 した 。 なお 成人 の 複 合 組 織 型 の4例 で 同 一 腫 瘍 中 のsemlnoma部 分 と そ れ 以 外 の 部 分 の 核DNA量 を 比 較 検 討 し た 。

  選 択 し た 組 織 標 本 を50肛 で 薄 切 後Hedley法 に準 じxyleneで 脱パ ラ フィ ンしethan01で再 水 和 ,pepslnとtritonX−l00で 裸 核 化 後Vindel¢v法 に 準 じRNase処 理 後propidiumiodide で 核DNA染 色 し た 。FCMはCoulter社EPICS―Cを 用 い , 得 ら れ たDNAヒ ス ト グ ラ ム は DNAindex(DI) で 評 価 し た 。DIは 腫 瘍 細 胞 のGo/Glピ ー ク のchanne1数 を 正 常 細 胞 の

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知 純

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Go/G,ピ ー ク のchannel数 で 除 し て 求 め た 。DNA ploidyの 判 定 は1C,2C,4C以 外に Go/G,ピ ーク が存 在す るも の をDNA aneuploid,2Cに単一のGo/G,ピークを持っものを DNA diploidとし,小児型で4C分画 が全細胞の15%を超えるものはDNA tetraploidとした。

また同 一腫瘍でDIの差が0.2以上 異なるピークが存在する場合をDNA heterogeneityありと し,統計的有意差判定はWilcoxon順位和検定を用いた。

  DNAヒストグラムは成人型1例を 除く75例(99%)において変 異係数3〜10%で解析可能で あった 。1)semlnomaは35例全例,NSGCTは解析できた23例中22例(96%),成人型全体で5 8例中57例(98%) にDNA aneuploidを 認め た。 一方 小児型はYSTの3例がDNA tetraploid の 他DNA diploidで全 例 DNA euploid を示し,成人型に多いtriploid周辺のDNA ane‑

uploidは 認め られ なか った 。2)semlnomaのなかで増殖能が高 いanaplastic siminomaは typjcal semlnomaに比 べ小 さ いDIを示 す傾 向 にあ った(pくO.06)。さらにsemlnomaに 比 べ生 物 学的 悪性 度が 高いNSGCTが 有 意に 小さ いDIを示 し た(PくO.01)。3) Indiana 分 類に よ る臨 床進 行度 では 予後不 良なadvanced extentは予後 良好なmlnlmum/moderate extentに比べ有意に小さなDIを示し た(pくO.05)4)組織学的 にheterogeneousな複合組 織 型は 解析できたNSGCT23例中19例 (83%)あったが,DNA heterogeneityはそのうち4例 (17% )に のみ 認 めら れた 。同一腫 瘍でsemlnoma部分とNSGCT部 分の比較が可能であった 4例では ,異なる組織型で異なるDNA ploidyを示したものは4例 中1例(25%)のみであつ た。

  一般 に 悪性 腫瘍 ではDNA diploidか らprogressionによりDNA aneuploidの頻度が増加 し,悪性度が高まるとDI値は増大すると考えられている。精巣腫瘍では成人型ではほぼ全例が DNA aneuploidを示しDNA diploidの腫瘍は稀であるとともに, 組織学的・臨床的に悪性度 が高い ものほどDI値が小さいこと ,小児型は核DNA量パターンが成人型とは大きな相違があ ること など他の固形腫瘍とは異なるDNA ploidy上の特徴が示された。精巣腫瘍の発生は,セ ミノーマは胚細胞が直接癌化し,非セミノーマの各組織型は胎児性癌から分化発生すると考えら れた従来の説に対し,近年その発生母地として精巣のcarclnoma in situ  (CIS)が注目され,

精巣腫瘍の各組織型はCIS細胞より一元的に発生するとの考え方が一般的である。さらに最近 Oosterhuisら はDNA tetraploidのCISか ら 核DNA量 の 減 少 に よ りsemlnomaを へてNS‑

GCTが 発生するとしており,染色体のtetraploidizationとそれに引き続く染色体のlossまた はstructural abnormalityの形成 による核DNA量の滅少により 癌のgenetic evolutionがも た ら さ れ る と す るShackneyら の モデ ルに 従え ば, 今 回の 結果 は成 人の 精 巣腫 瘍はDNA

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tetraploidの胚細胞から腫瘍 化し,生物学的または臨床的悪性度が高くなるにっれ核DNA量 が少 なく なる もの と 解釈す ることが可能であろう。また 核DNA量上homogeneousの場 合が 多いことは複合組織型でもその発生は一元的とする最近の学説を支持するとともに,臨床的には 精巣腫瘍の高い化学療法感受 性を説明する傍証であり, 混合型のsemlnoma部分は形態的に semlnomaでも その 性 格は むし ろNSGCTに近 く, 混 合型 は臨 床的 にはNSGCTとして取 り扱 うという我々の日常の認識を 支持するものである。一方CISを伴わない小児型はDNA ploidy も大きな相違があり,成人型が減数分裂期の胚細胞からCISを経て発生するのに対し小児型は 減数分裂開始前の原始生殖細胞由来であるという発生起源の違いが示唆された。本研究は精巣腫 瘍に対して細胞解析の手法を用いて行われた数少ない研究の1っで,その生物学的特性,発生等 に っ い て 新 た な 知 見 を 与 え て く れ た も の で 学 位 の 授 与 に 値 す る と 判 定 さ れ た 。

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参照

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