はじめに
我が国は,生活習慣の欧米化に伴い,高血圧・ 糖尿病・脂質異常症等生活習慣病を基盤として 発症する心不全患者が増加の一途をたどってい る.さらに,世界でも類を見ないペースで人口 の高齢化が進行し,超高齢社会を迎えている. 人口の高齢化は,循環器疾患の診療に費やされ る医療費増大の最大要因である.入退院を繰り 返す高齢の心不全患者が,循環器救急の現場で 著しく増加しており,有効な対策を打ち出すこ とが急務となっている. 心不全に対する薬物治療は,利尿薬や強心薬 による治療から神経体液性因子を抑制する治療 へと,そのパラダイムが大きくシフトした.数 多くの大規模臨床試験によって,アンジオテン シン変換酵素(angiotensin-converting enzyme: ACE)阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬 (angiotensin II receptor blocker:ARB),ミネラ ルコルチコイド受容体拮抗薬(mineralocorticoid receptor antagonist:MRA)等レニン・アンジオ テ ン シ ン・ ア ル ド ス テ ロ ン(renin-angioten-sin-aldosterone:RAA)系抑制薬及びβ遮断薬が, 軽症から重症までの慢性心不全の予後を改善す ることが明らかにされ,これらの薬剤を中心に 治療が行われてきた.しかしながら,依然とし心不全治療の新たな展開
筒井 裕之 要 旨 心不全に対する薬物治療は,利尿薬や強心薬による治療から神経体液性因子を抑制する治療へと,そのパラダ イムが大きくシフトした.現在,アンジオテンシン変換酵素(angiotensin-converting enzyme:ACE)阻害薬, アンジオテンシンII受容体拮抗薬(angiotensin II receptor blocker:ARB),ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 (mineralocorticoid receptor antagonist:MRA)等レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(renin-angio-tensin-aldosterone:RAA)系抑制薬及びβ遮断薬が心不全の標準治療薬として位置付けられている.欧米を含 め,世界各国では,既にアンジオテンシン受容体―ネプリライシン阻害薬(angiotensin receptor neprilysin inhib-itor:ARNI)サクビトリル/バルサルタン(LCZ696)とIfチャネル阻害薬イバブラジンも使用されている.また, 糖尿病治療薬であるナトリウム・グルコース共輸送体(sodium glucose cotransporter:SGLT)2 阻害薬のエ ンパグリフロジンとカナグリフロジンが心血管イベント,特に心血管死や心不全による入院を減少させることが 明らかとなり,心不全を対象とした大規模臨床試験が我が国も含め進行中である.〔日内会誌 107:1115~1122,2018〕
Key words heart failure,angiotensin receptor-neprilysin inhibitor,SGLT2 inhibitor, disease management,telemedicine
九州大学大学院医学研究院循環器内科学
The Cutting-edge of Medicine;New trend of heart failure treatment.
て,心不全患者の予後は不良であり,これらを 上回る効果を有する新たな心不全治療薬とし て,アンジオテンシン受容体―ネプリライシン阻 害薬(angiotensin receptor neprilysin inhibitor: ARNI)サクビトリル/バルサルタン(LCZ696) とIfチャネル阻害薬イバブラジンが開発され, 欧米を含め,世界各国で既に使用されている. また,ナトリウム・グルコース共輸送体(sodium glucose cotransporter:SGLT)2阻害薬は糖尿病 治療薬であるが,エンパグリフロジンとカナグ リフロジンが心血管イベント,特に心不全によ る入院を減少させることが明らかとなり,新た な心不全治療薬になり得るか注目されている. 本稿では,心不全治療の新たな展開として, 新規治療薬のARNI,Ifチャネル阻害薬,SGLT2 阻害薬,さらに,治療効果を最大限発揮するた めに必要な疾病管理及び今後期待される遠隔医 療について紹介する.
1.標準的薬物治療
心不全を左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)により,40%未満の「左室駆 出 率 が 低 下 し た 心 不 全(heart failure with reduced ejection fraction:HFrEF)」及び 50%以 上の「左室駆出率が保たれた心不全(heart fail-ure with preserved ejection fraction:HFpEF)」に
分類するのが一般的となっている1).40~49%
の群はHFmrEF(heart failure with midrange EF) と定義される.このような分類は,患者背景, 基礎疾患,併存症,治療への反応の違いと合致 しており,有用である. 慢性心不全治療の目標は,運動耐容能,生活 の質(quality of life:QOL)を改善し,入院を予 防し,死亡を抑制することにある.心不全治療 薬として推奨されるには,生命予後の改善が求 められるが,心不全による入院の抑制や運動耐 容能の改善も重要な治療目標である. 1)HFrEFに対する治療薬
ESC(European Society of Cardiology)ガイド ライン(2016 年)では,推奨薬剤を 1)全ての 有症候患者に推奨される薬剤,2)一部の患者 に推奨される薬剤,3)有効性が明確でない薬 剤,4)推奨されない(有用性が証明されてい ない)薬剤,5)推奨されない(有害である)薬 剤の 5 つに区分している(表 1)1).神経体液性 因子の過剰な活性化を抑制するACE阻害薬,β遮 断薬,MRAの 3 つはHFrEF患者の生命予後を改 善し,禁忌がない限り,全ての患者に推奨され る(図 1).さらに,我が国において,現在治験 が実施されているARNIとIfチャネル阻害薬の位 置付けも示されている1). 2)HFpEFに対する治療薬 HFpEFの病態は多様であり,心血管疾患(心 房細動,高血圧,冠動脈疾患,肺高血圧等)や 非 心 血 管 疾 患( 糖 尿 病,CKD(chronic kidney 表 1 HFrEF 患者に推奨される薬剤 (文献 1 より改変引用) (1)全ての有症候患者に推奨される薬剤 ① ACE 阻害薬 ②β遮断薬 ③ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 (2)一部の患者に推奨される薬剤 1)利尿薬 2)アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬 (ARNI) 3)If チャネル阻害薬 4)アンジオテンシン受容体拮抗薬 5)ヒドララジン/硝酸イソソルビド併用 (3)有効性が明確でない薬剤 1)ジギタリス 2)n-3 多価不飽和脂肪酸 (4)推奨されない(有用性が証明されていない)薬剤 1)スタチン 2)抗凝固薬と抗血小板薬 3)レニン阻害薬 (5)推奨されない(有害である)薬剤 Ca 拮抗薬
disease),貧血,鉄欠乏,COPD(chronic obstruc-tive pulmonary disease),肥満等)等の併存症を 有している.HFpEF患者の入院や死亡の多くは非 心血管疾患によるものである.従って,併存症 のスクリーニングを行い,これらに対して有効 な介入を実施することが重要である.HFpEF患者 の生命予後を改善する治療は確立していない. 患者の多くは高齢で,症状のためにQOLの低下 が顕著であることも多いため,治療目標として, 症状の軽減も重要である.利尿薬はうっ血を軽 減し,EFによらず,心不全の症候を改善する. 一方で,ACE阻害薬やARB,MRA,β遮断薬によ る症状改善のエビデンスは一貫していない.
2.新規薬物治療
1)ARNIサクビトリル/バルサルタン ネプリライシンは,体内に広く分布する膜結 合型エンドペプチダーゼであり,中性エンドペ プチダーゼとも呼ばれる.主たる作用は,利尿 ペプチドの分解である.利尿ペプチドの分解に 図 1 欧州心臓病学会(ESC)心不全診療ガイドライン 2016 における HFrEF の治療アルゴリズム (文献 1 より改変引用) CRT:心臓再同期療法 H-ISDN:ヒドララジン―硝酸イソソルビド LVAD:左心補助装置 ICD:植込み型除細動器 VT/VF:心室頻拍/心室細動 症状を有するHFrEF患者 ACE阻害薬とβ遮断薬 (エビデンスに基づく最大忍容用量まで増量) ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を追加 (エビデンスに基づく最大忍容用量まで増量) 症状の残存 LVEF≦35% 最大忍容用量の ACE阻害薬(またはARB) QRS時間≧130 msec洞調律 心拍数≧70 bpm洞調律 ACE阻害薬を ARNIに変更 CRT適応を評価 必要であれば上記治療を組み合わせる 症状の残存 う っ 血の症状 と 徴候 を 軽減す る ための利尿薬 至適薬物治療に も かか わ ら ず LVEF≦35% ま たは症候性 VT/VF の既往が あ る 場合, ICD の植込み ジゴキシン,H-ISDNの投与, LVADまたは心臓移植を検討 利尿薬の減量を検討 イバブラジン Class Ⅰ Class Ⅱa 症状の残存 LVEF≦35% Yes No No No Yes Yes Yesはクリアランス受容体も関与するが,ネプリラ イシンによる分解が主であり,ネプリライシン を阻害すると内因性利尿ペプチドが増加する. 一方で,ネプリライシンは利尿ペプチドのほ か,ブラジキニンをはじめ,アドレノメデュリ ン,サブスタンスPやエンドセリン,アンジオ テンシンIIの分解にも関与する.サクビトリル/ バルサルタンは,1分子中にARBバルサルタンと ネプリライシン阻害薬のプロドラッグであるサ クビトリルを1:1で結合含有させた化合物であ る(図 2).サクビトリルは吸収後 3~4 時間で 活性体(LBQ657)に変換され,ネプリライシ ン阻害作用を発揮する.LBQ657 は,主として 内因性利尿ペプチドの分解を阻害し,ACEや aminopeptidase Pは阻害しない.従って,ブラ ジキニンの分解が弱く,血管浮腫が少ないと期 待される.
NYHA(New York Heart Association)II度 以 上,LVEF 40%以下の慢性心不全患者を対象に したPARADIGM-HF試験では,一次エンドポイン トの心血管死または心不全による入院は,サク ビトリル/バルサルタンがエナラプリルより有 意に少なかった2).さらに,心血管死,心不全 による入院のいずれもサクビトリル/バルサル タンの方が有意に少なかった.有害事象とし て,症候性低血圧や重症ではない血管浮腫の発 生率はサクビトリル/バルサルタンでエナラプ リルよりも高かったが,腎障害や高カリウム血 症,咳は少なかった.PARADIGM-HF試験によっ て,HFrEFの標準治療薬であるACE阻害薬を上回 る効果を有する薬剤として,ARNIが登場した. 現在,我が国においても,治験(PARALLEL-HF 試験)が実施されている3).さらに,HFpEFを対 象にしたPARAMOUNT試験でバルサルタンより NT-proBNP(N-terminal pro-B-type natriuretic peptide)の低下が大きいことが報告され4),予 後への効果を検証する大規模臨床試験(PARA-GON-HF試験)が我が国も含め進行中である.
図 2 ARNI(LCZ696)の薬理作用 ANP:atrial natriuretic peptide BNP:brain natriuretic peptide CNP:C-type natriuretic peptide NEP:neprilysin × × HO OH HN O O T O OH N N N N NH O O ANP,BNP,CNP, アドレノメデュリン, サブスタンスP,ブラジキニン, Ang Ⅱ,Ang Ⅰ,エンドセリン―1 LCZ696 サクビトリル (AHU377:プロドラッグ) RAA系 Angiotensinogen Ang Ⅰ Ang Ⅱ AT1受容体 LBQ657 (NEP阻害薬) バルサルタン 分解 ネ プ リ ラ イ シ ン LBQ657とバルサルタンの比 1:1 亢進 血管拡張 ↓血圧 ↓交感神経 ↓アルドステロン ↓肥大 ↓線維化 ↓Na利尿 抑制 血管収縮 ↑血圧 ↑交感神経 ↑アルドステロン ↑肥大 ↑線維化
2)Ifチャネル阻害薬イバブラジン イバブラジンはIfチャネルを特異的に抑制 し,洞結節のペースメーカー活性を弱めること によって,心拍数を減少させる.心拍数 70/分 以上の洞調律,左室駆出率 35%以下,β遮断薬 を含む心不全治療を受けている慢性心不全患者 (NYHA II~IV) を 対 象 に イ バ ブ ラ ジ ン 最 大 7.5 mgを投与したSHIFT試験では,心血管死と 心不全増悪による入院が有意に抑制された5). SHIFT試験を踏まえ,我が国においても治験が 実施されている6). 3)SGLT2阻害薬 SGLT2 阻害薬は,尿中へのグルコース排泄を 増加させ,血糖を低下させる.同時に利尿作用 を有するが,ループ利尿薬やサイアザイド系利 尿薬と異なり,脂質・尿酸等の代謝改善作用を 有し,電解質に影響を及ぼさないという大きな 利点を有している.2 型糖尿病患者を対象とし たEMPA-REG OUTCOME試 験 とCANVAS試 験 に おいて,いずれも主要評価項目である心血管 死,非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中からな る 3 つの複合心血管イベントを減少させた7,8). さらに,心血管死の減少と密接に関連していた のは,心不全による入院の減少であった.その 効果は治療開始 3 カ月後には既に認められてい ることから,体重や脂質等の代謝面での改善で は説明できず,HbA1c(hemoglobin A1c)の低 下も約 0.4~0.6%程度で血糖コントロールによ るものとは考えにくいことから,SGLT2 阻害に よる利尿効果が心不全の増悪,さらには心血管 死 の 減 少 に 寄 与 し た と 考 え ら れ て い る9). EMPA-REG OUTCOME試験のサブ解析で,エンパ グリフロジンによる心不全入院の減少は,心不 全既往のない群では 41%に対し,ある群では 25%であった10).本試験の対象患者の多くは冠 動脈疾患の既往を有し,心不全ハイリスク糖尿 病患者であるが,心不全患者の割合は10%程度 であり,この試験結果をもって,SGLT2 阻害薬 が心不全患者の予後を改善するとまでは結論で きない.さらに,本試験では心不全の原因疾患 や左室駆出率,BNP(brain natriuretic peptide) 等のデータは収集されていない.現在,心不全
表 2 心不全を対象とした SGLT2 阻害薬の大規模臨床試験
EMPEROR-Preserved1 EMPEROR-Reduced2 Dapa-HF3
患者数 4,126 2,850* 4,500 主要 組み入れ基準 ・慢性心不全(NYHAclassⅡ~Ⅳ) ・NT-proBNP 増加 ・eGFR>_ 20ml/min/1.73m2 ・症候性 HFrEF(NYHAclassⅡ~Ⅳ) ・NT-proBNP 増加 ・eGFR>_ 30ml/min/1.73m2
HFpEF(LVEF>40%) HFrEF(LVEF<_ 40%) HFrEF(LVEF<_ 40%) 1 次 エンドポイント ・心血管死または心不全による入院 ・心血管死または心不全による入院または心不全による救急受診 主要 2 次 エンドポイント ・1 次エンドポイントの各項目 ・全死亡 ・全入院 ・eGFR の持続的低下 ・KCCQ の変化 ・心不全による入院または全死亡 ・全死亡 ・>_ 50% の eGFR の持続的低下また は ESRD または腎臓死 ・KCCQ の変化 開始時期 2017 年 3 月 2017 年 3 月 2017 年 2 月 予定終了時期 2020 年 6 月 2020 年 6 月 2019 年 12 月 eGFR:estimatedglomerularfiltrationrate,ESRD:end-stagerenaldisease,HF:heartfailure,KCCQ:KansasCityCardiomyopa-thyQuestionnaire,LVEF:leftventricularejectionfraction,NT-proBNP:N-terminalpro-B-typenatriureticpeptide 1.ClinicalTrials.govNCT03057951;2.ClinicalTrials.govNCT03057977;3.ClinicalTrials.govNCT03036124
患者を対象としたSGLT2 阻害薬の大規模臨床試 験が我が国も含め進行中である(表 2).
3.疾病管理と遠隔医療
1)疾病管理 心不全増悪による再入院の誘因は,塩分・水 分制限の不徹底が最も多く,過労,治療薬服用 の不徹底,精神的または身体的ストレス等の予 防可能な因子が上位を占め,感染症・不整脈・ 心筋虚血・高血圧等の医学的要因より多い.加 えて,抑うつ,不安,ソーシャルサポート等の 心理・社会的要因が心不全患者の予後に関与す ることも明らかになっている.これらの結果 は,心不全増悪による再入院の予防には,心不 全の標準的治療に加えて,患者教育や支援を行 う疾病管理が重要であることを示している11). 心不全患者に対する疾病管理には,退院時指 導,ガイドラインに沿った薬物治療,十分な患 者教育・カウンセリング,患者による自己モニ タリングによる心不全増悪の早期発見等が含ま れる.なかでも,患者教育は極めて重要である. 具体的には,一般的知識,症状のモニタリング と増悪時の対処方法,食事療法,薬物治療,活 動及び運動,危険因子の是正等について,入院 中,退院時,さらに外来において継続的に取り 組む.特に患者教育によるセルフモニタリング 及びセルフケアの強化,継続的なフォローアッ プによる増悪徴候の早期発見が重要である.患 者教育をどのような形態で,どのような職種が 実施するかについては,患者背景,患者・家族 が有する医学的及び社会的問題,医療機関や地 域の特性を加味する必要があるが,単なる知識 提供に終わることなく,効果的治療の継続につ ながる行動変容や安定的な在宅生活の実現を見 据えた支援が求められる.そのためには,疾病 管理を実施する医療チームは多職種で構成さ れ,患者を中心に患者が抱える問題に応じて, それぞれの職種の専門性が十分に発揮される必 要がある. 疾病管理プログラムを効果的,効率的に運用 するツールとして,教育用パンフレットや患者 手帳が使用されている.患者手帳は,患者自身 が自らの体調を振り返るためのモニタリング ツールであるとともに,患者・家族と医療者を つなぐコミュニケーションツールでもある. 2)期待される遠隔医療近年の情報通信技術(information and commu-nication technology:ICT)の進歩はめざましく, 外来・入院・在宅医療に続く第 4 の医療として の遠隔医療に大きな期待が寄せられている.こ れらには心血管画像の読影を行う遠隔画像診断 や冠動脈インターベンションにおける専門医に よる遠隔相談(コンサルテーション),遠隔支援 や教育(カンファレンス)等医療者同士(医療 者間;D to D)の遠隔医療が含まれる.また, セキュアな情報プラットフォームの整備により ICTを活用した,より効果的かつ効率的な遠隔患 者管理や在宅医療・介護等を提供する医師から 患者(医療者―患者間;D to Pや医療者―看護師― 患者間;D to N to P)への遠隔診療の環境整備 も進んでいる.ICTを活用した遠隔診療による心 不全患者の疾病管理の取り組みが実際に始まっ ている(図 3).今後は,心不全診療における遠 隔医療の安全性・有効性・経済性の評価を行う とともに,遠隔医療を標準的医療として確立・ 普及させていく必要がある.遠隔医療は,我が 国の高齢者医療の効率化,さらに循環器救急・ 高度医療の標準化によって社会福祉にも大きく 貢献する.また,遠隔医療の発展・普及は,そ の基盤となるキーテクノロジーであるICT,さら にはIoT(internet of things)やビッグデータ, AI(artificial intelligence,人工知能)を中心と した科学技術イノベーションの医療への応用を 活発化させ,我が国発の技術として新産業創出 へとつながることも期待される.
おわりに
現在の標準的心不全治療に続く新たな展開と して,ARNI,Ifチャネル阻害薬,SGLT2 阻害薬 を取り上げた.これらの薬剤の臨床試験の結果 は,我が国における心不全治療に大きな影響を 与える可能性があり,今後公表される試験結果 が注目される.また,標準治療の効果を最大限 に発揮するには疾病管理が重要であり,さらに 外来・入院・在宅医療に次ぐ第 4 の医療として 期待される遠隔医療の普及は,少子化と高齢化 が同時進行する我が国にとって重要な医療課題 であり,産学官をあげた取り組みが進展するこ とを期待したい. 著者のCOI(conflicts of interest)開示:筒井裕之;講演 料(MSD,大塚製薬,小野薬品工業,第一三共,武田薬 品工業,田辺三菱製薬,帝人ファーマ,日本ベーリン ガーインゲルハイム,バイエル薬品,ファイザー),原 稿料(医学書院,メディカルレビュー社),研究費・助 成金(アクテリオン ファーマシューティカルズ ジャパ ン),寄附金(アステラス製薬,第一三共,武田薬品工 業,ノバルティス ファーマ) 図 3 心不全患者に対する遠隔医療のための情報プラットフォーム(将来における可能性のイメージ図) 心不全増悪の 可能性があります 血行動態データを 拝見します ■テレビ会議を用いた医療者間での情報共有 ⇒ 医師間での診療支援 ■医療者の多職種連携 ■テレビ会議を用いた医療者による遠隔診断, 遠隔診療・在宅支援の実施 ■患者コミュニティの形成 ⇒ 患者間の連携・支援・バーチャル患者会 診察が必要です 手足がむくんでいます 患者データです 医療者間(D to D) 画像の通り 足にむくみが これから 診察します 医療者―患者間(D to P/ D to N to P) 私も同じ症状 でした… 私の場合は…文 献
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