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現代の子どもたちに求められる家庭科教育

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現代の子どもたちに求められる家庭科教育

光松 佐和子、名古屋経済大学人間生活科学部教育保育学科 1 子どもたちを取り巻く環境と家庭科教育 現代の子どもたちを取り巻く環境は、経済の発展やAI、IoT をはじめとする科学技術の進歩によ り、著しく変化している。個人の生活を見ても、女性の社会進出をはじめとする男女共同参画社会 の実現に合わせた家電製品の開発および普及、家事の外部委託化により、家事労働の負担は軽減さ れつつある。ライフスタイルが多様化し、便利で快適、そして豊かな生活を送れるようになったが、 一方で少子高齢社会の進展、核家族化による教育機能の低下、地域交流の希薄化などが問題となっ ている。 これまで、家庭内で家事を分担することによって、親の見よう見まねで親から子へ伝承されてき たライフスキル(生活技術)は途絶え、子どもたちが技術を学ぶ機会が減少している。例えば衣生 活を取り上げてみても、母親や祖母が衣服を手作りしていた時代から、戦後、既製服の時代に変わ り、現在はファストファッションが巻き起こす流行により低価格の商品が氾濫し、欲しいものは手 軽に入手できる時代となった。衣服の管理の面でも、高性能洗濯機が開発され、洗浄力の高いジェ ル状洗剤の販売や手入れのしやすい化学繊維の普及により、私たちの衣生活は大きく変化した。住 生活においてもロボット掃除機や高機能掃除機の開発、食生活においても自動調理機能付きオーブ ンや食器洗浄機の普及など、家電製品の進化は加速する一方である。モノを一から作る時代から、 多様な商品やサービスの中から選択する時代になったと言える。私たちの生活は非常に便利で快適 になったが、子どもたちに力強く未来を生き抜いて欲しいと願う時、個人、家庭、社会全体それぞ れが大きな問題を抱えているように思われる。 2020 年度より本格実施される「小学校学習指導要領(家庭)」1)では「生活の営みに係る見方・ 考え方を働かせ、衣食住などに関する実践的・体験的な活動を通して、生活をよりよくしようと工 夫する資質・能力を育成すること」を目指して、これまで分かれていた食生活と衣および住生活を 一つにまとめ、「A家族・家庭生活」、「B衣食住の生活」、「C消費生活・環境」の三つの内容を項目 として挙げている。そして、「実践的・体験的な学習活動を通して、家族・家庭、衣食住、消費や環 境等についての科学的な理解を図り、それらに係る技能を身に付けるとともに、生活の中から問題 を見いだして課題を設定し、それを解決する力や、よりよい生活の実現に向けて、生活を工夫し創 造しようとする態度等を育成すること」を基本的な考え方としている。 本稿では「小学校家庭」で取り扱う内容について現状を把握し、未来を生きる子どもたちを取り 巻く環境において、これからの家庭科教育に必要なものは何か、有用な生活技術・知識を見極め、 現代生活に見合うよう内容について検討したい。 (1)家庭科教育の役割 家庭科は小学校5 年生から始まる教科であり、家庭科で取り扱う内容は「家族・家庭生活」、「衣 食住の生活」、「消費生活・環境」であり、人間が生きていくために必要な領域すべてを含んでいる と言える。具体的には日本家政学会編「新時代の家庭科教育」2)に示される「生活に必要な衣食住 等の基本的な知識・技術」を中心としたカリキュラム構想の概念図によると図1 の領域となる。 家庭科教育の歴史を見てみると、家事家庭科が教科として新設されたのは、第二次世界大戦後で

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ある。以後、1989 年、家庭科の男女共修が学習指導要領 に盛り込まれ、1994 年度から実施され、小学校 5 年生 から高校まで男女が一緒に学ぶ共修の教科となった。今 日まで小・中・高等学校を通して、家庭における生活技 術の伝承機能の低下を補う役割を担い、子どもたちがこ れからの生活を送るうえで必要な生活力を習得するため の教科として、また「生活を工夫創造する能力」と「実 践的態度」を養成する教科として確立されてきた。家庭、 家族が多様化する中で、今後ますます、家庭というもの を広範な生活環境等の相互作用により、総合的に把握す る重要性が増していると考えられる。 生活を総合的に把握するため、人間を取り巻く環境を、 図2 に示すような時間軸と空間軸との関係を用いて表す3) 新学習指導要領「指導内容の示し方の改善」1) 「空間軸 と時間軸という二つの視点からの学校段階に応じた学習対象 の明確化が必要であり、空間軸の視点では、家庭、地域、社 会という空間的な広がりから、時間軸の視点では、これまで の生活、現在の生活、これからの生活、生涯を見通した生活 という時間的な広がりから学習対象を捉えて指導内容を整理 することが適当である」とある。さらに「家族・家庭生活に 関する内容の充実」として、 少子高齢社会の進展に対応して、 家族や地域の人々とよりよく関わる力を育成するために、 「A家族・家庭生活」においては、幼児又は低学年の児童、 高齢者など異なる世代の人々との関わりに関する内容を新設 している。子どもたちが、家族を含め、地域社会の様々な人々 との関係の中で自分の生活が成り立っているということを理解し、これからのライフステージにお ける課題に対応できる問題解決能力を身に付けることが求められる。これらの点を踏まえ、人間の 一生を時間軸に、「個人→家庭→地域社会」という横のつながりを空間軸として、家庭科の幅広い生 活に関わる領域に対して取り扱うべきである。 1)家族・家庭の役割 内閣府の平成 29 年度「国民生活に関する世論調査」4)によると、日頃の生活の中で充実感を感 じる時は「家族団らんの時」を挙げた人の割合が49.0%と最も高く、「ゆったりと休養している時」 (46.1%)、「友人や知人と会合、雑談している時」(43.5%)、「趣味やスポーツに熱中している時」 (42.7%)の順となっている。(複数回答、上位4項目)家庭の持つ意味について聞いたところ、「家 族の団らんの場」を挙げた者の割合が65.2%、続いて「休息・やすらぎの場」が 64.0%と高く、以 下、「家族の絆を強める場」(54.8%)、「親子が共に成長する場」(37.9%)の順となっている。(複 数回答、上位4項目)家族が団らんしている時が最も充実していると感じ、家族は絆を深めること に意味があると考え、親子が成長する場ととらえられている。時代は変化しても、多くの人が家族 はかけがえのない存在であり、重要な意味を持つものであると考えていることがわかる。大切な役 割を持つ家族と家庭生活の現状はこの期待に沿うものとなっているのであろうか。以下の生活技術 の習得状況との関連で述べる。 図 2 空間軸と時間軸から 家庭科をとらえる 図 1 家庭科で取り扱う内容

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2)生活技術の習得状況 現代の小学生の生活時間について考えてみると、塾や習い事に費やす時間、つまり家庭外で過ご す時間が長く、家庭内で家族と団らんする時間や家事労働を分担する時間は減少傾向にある。限ら れた時間の中で、子どもたちが家事を手伝う時間は、一日平均 24 分であるという報告がある 5) 家庭の果たす大切な役割として生活技術の伝承がある。これは同じく家庭科で取り扱う重要項目の 一つであるが、小学生の実態調査によると生活力が著しく低下しているとの報告がある。田中ら 6) は小学生、中学生及び大学生の生活基礎力調査を実施し、家庭科の学習内容が実生活にどの程度定 着しているかを調べた。その結果、食領域では全ての学校種段階で、ある程度の定着がみられたが、 衣領域では学校種が上がるにつれて定着度は低下し、住領域では学校種に関わらず、定着度は低い ことがわかった。男女の定着度の比較では、小学生においては、大きな差は認められなかったが、 中学生、大学生においては、男女差が大きく、男子の定着度が低下する傾向にあることが明らかに なった。 小学生の生活技術として「できること」と「できないこと」について分野ごとに表1 に示す。 表 1 小学生の生活技術について できる できない 食生活 卵の黄身を壊さずに割れる リンゴの皮を包丁で上手にむける 朝食をほぼ毎日取っている 五大栄養素を知っている 調理器具の安全で衛生的な取扱いができる ファーストフードをほとんど利用しない 食材を買うとき賞味期限を気にする バランスのとれた日本型朝食を作ることができる 衣生活 カッターシャツのアイロンかけができる 取扱い表示を確かめている衣類を購入する ミシンが使える セーターの手洗いに適した洗剤を選ぶことができる ボタン付けができる PET のリサイクル繊維名を知っている 下着やシャツ、靴下を手洗いできる スカートやズボンのほころびを直せる 住生活 ごみの分別をしている 本を読むとき明るさに気を付けている 電化製品の故障時の対応を知っている 脱いだ自分の靴は揃える 地震に備えて避難経路をチェックできている 部屋の掃除を週1回以上する 「できる」と考えられていて実施度の高い項目は「朝食を毎日食べる」、「ゴミの分別」など、比較 的時間がかからず簡便なもので、技術や知識、経験を必要とするものは少ない。 衣領域については「カッターシャツのアイロンがけができる」、「ミシンが使える」、「下着やシャ ツ、靴下の手洗いができる」の項目は、小学校において重点的に学習している項目であり、小学校 の定着度が高いことは学習効果の表れと言える。しかし、学校種が上級化するにつれ、定着度が低 下し、家庭での実践の機会が減少すると考えられるため、家庭での実践に応用できるような学習内 容を工夫するなど、学習効果の低下を防ぐ方策が必要である。また、「セーターの手洗いに適した洗 剤を選ぶことができる」および「スカートやズボンのほころびを直せる」については、洗剤の成分 や補修の仕方など応用的な知識技能を要するので、中学校以降の学習の連携が必要である。「PET のリサイクル繊維名を知っている」の項目では、高等学校の家庭基礎の教科書で取り上げられてお ある。以後、1989 年、家庭科の男女共修が学習指導要領 に盛り込まれ、1994 年度から実施され、小学校 5 年生 から高校まで男女が一緒に学ぶ共修の教科となった。今 日まで小・中・高等学校を通して、家庭における生活技 術の伝承機能の低下を補う役割を担い、子どもたちがこ れからの生活を送るうえで必要な生活力を習得するため の教科として、また「生活を工夫創造する能力」と「実 践的態度」を養成する教科として確立されてきた。家庭、 家族が多様化する中で、今後ますます、家庭というもの を広範な生活環境等の相互作用により、総合的に把握す る重要性が増していると考えられる。 生活を総合的に把握するため、人間を取り巻く環境を、 図2 に示すような時間軸と空間軸との関係を用いて表す3) 新学習指導要領「指導内容の示し方の改善」1) 「空間軸 と時間軸という二つの視点からの学校段階に応じた学習対象 の明確化が必要であり、空間軸の視点では、家庭、地域、社 会という空間的な広がりから、時間軸の視点では、これまで の生活、現在の生活、これからの生活、生涯を見通した生活 という時間的な広がりから学習対象を捉えて指導内容を整理 することが適当である」とある。さらに「家族・家庭生活に 関する内容の充実」として、 少子高齢社会の進展に対応して、 家族や地域の人々とよりよく関わる力を育成するために、 「A家族・家庭生活」においては、幼児又は低学年の児童、 高齢者など異なる世代の人々との関わりに関する内容を新設 している。子どもたちが、家族を含め、地域社会の様々な人々 との関係の中で自分の生活が成り立っているということを理解し、これからのライフステージにお ける課題に対応できる問題解決能力を身に付けることが求められる。これらの点を踏まえ、人間の 一生を時間軸に、「個人→家庭→地域社会」という横のつながりを空間軸として、家庭科の幅広い生 活に関わる領域に対して取り扱うべきである。 1)家族・家庭の役割 内閣府の平成 29 年度「国民生活に関する世論調査」4)によると、日頃の生活の中で充実感を感 じる時は「家族団らんの時」を挙げた人の割合が49.0%と最も高く、「ゆったりと休養している時」 (46.1%)、「友人や知人と会合、雑談している時」(43.5%)、「趣味やスポーツに熱中している時」 (42.7%)の順となっている。(複数回答、上位4項目)家庭の持つ意味について聞いたところ、「家 族の団らんの場」を挙げた者の割合が65.2%、続いて「休息・やすらぎの場」が 64.0%と高く、以 下、「家族の絆を強める場」(54.8%)、「親子が共に成長する場」(37.9%)の順となっている。(複 数回答、上位4項目)家族が団らんしている時が最も充実していると感じ、家族は絆を深めること に意味があると考え、親子が成長する場ととらえられている。時代は変化しても、多くの人が家族 はかけがえのない存在であり、重要な意味を持つものであると考えていることがわかる。大切な役 割を持つ家族と家庭生活の現状はこの期待に沿うものとなっているのであろうか。以下の生活技術 の習得状況との関連で述べる。 図 2 空間軸と時間軸から 家庭科をとらえる 図 1 家庭科で取り扱う内容

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り、身近な素材である PET についてよく理解しておくことは、循環型社会の実現のために必要で ある。 生活技術の低下の原因として、父親も母親も有職者であり、生活技術を伝える時間がないという 要因が挙げられる。現代の子どもたちの生活時間に即して考えると、家庭科という教科の中で生活 技術を学び、実生活で繰り返し実行することで、生活者として自立する能力や家庭を築き、経営し ていく能力を育てる。そして変化する社会において、子どもたちが主体的に対応し、新しい生活文 化の創造に取り組む意欲を持てるようサポートする必要がある。田中ら6)によると小学校の家庭科 で学んだことが、その後、大人になった際にも定着しているということがわかっており、小学校で 基礎的な技術を学ぶ重要性を示していると言える。 ただ、ここで心にとどめておかなければならないことは、生活技術の伝承と言っても、伝えるこ とは技術だけではなく、各家庭には古くから受け継がれた創意工夫が存在することや、技術を伝え る時間の共有と対話を通して強い結びつきを持った家族関係を構築することができるということで ある。 2 家庭科教育に求められること (1)学習指導要領の改訂を踏まえて 新学習指導要領「改訂の要点」1)として 「家族・家庭生活の多様化や消費生活の変化等に加えて、 グローバル化や少子高齢化の進展、持続可能な社会の構築等、 今後の社会の急激な変化に主体的に 対応することができる資質・能力の育成を目指す」とある。先に述べたように家庭は「家族・家庭 生活」、「衣食住の生活」、「消費生活・環境」の内容で成り立っている。「教育内容の見直し」として、 「家族の一員として家庭の仕事に協力するなど、家庭生活を大切にする心情を育むための学習活動 や、家族や地域の異世代の人々と関わるなど、人とよりよく関わる力を育成するための学習活動、 食育を一層推進するための食事の役割や栄養・調理に関する学習活動を充実する。また、消費生活 や環境に配慮した生活の仕方に関する内容を充実するとともに、他の内容との関連を図り、実践的 な学習活動を一層充実する。さらに、主として衣食住の生活において、日本の生活文化の大切さに 気付く学習活動を充実する。」とある。この中で本稿では「消費生活や環境に配慮した生活の仕方に 関する内容の充実」および「日本の生活文化の大切さに気付く学習活動」について、現状をまとめ、 考えを述べる。 1)消費者教育―消費生活や環境に配慮した生活 消費者としての教育は、消費生活に関する知識や技能を学び、実際の生活にそれを活かし、豊か で安全、安心なくらしを実現していくという目的を持つ。内閣府の調査(平成28 年度)7)による と、小学生のスマートフォン所有率は61.8%、ノートパソコンやゲーム機などその他の機器も合わ せるとインターネット利用率は84.2%である。年齢が上がるとともに所有率も上昇し、現代の子ど もたちは情報化社会の渦の中で生活していると言える。そのため、小学校においても、消費者がど のような被害に遭いやすいのか認識し、被害を回避することができる能力を身に付けるため、消費 者としての教育が必要である。 「消費者教育体系イメージマップ」(2013 年、消費者庁)8)では、消費者教育の4 つの領域で、消 費者のライフステージごとに消費者教育の目標が公開されている。図3 に一部紹介する。4 つの領 域とは「消費者市民社会の構築」、「商品等の安全」、「生活の管理と契約」、「情報とメディア」であ り、消費者のライフステージとは「幼児期」、「小学生期」、「中学生期」、「高校生期」「成人期(特に

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若者)(成人一般)(特に高齢者)」である。 具体的な内容は「生活の管理と契約」とし て「物や金銭の大切さに気づき、計画的な 使い方を考えよう」や「お小遣いを考えて 使おう」などがある。マップ上の各内容に ついて、項目ごとに、HP にジャンプする 仕組みである。すごろくやゲームなどを活 用し、子どもたちが楽しみながら消費生活 について理解を深めるような各都道府県や NPO 法人の取り組みが紹介されている。 このような資料を学校教育の現場で是非活 用してはどうかと考える。 新学習指導要領「履修の改善」1)では、 「自立した消費者の育成に関する内容の充 実や持続可能な社会の構築などに対応して、 自立した消費者を育成するために、「消費生 活・環境」においては、中学校との系統性 を図り、「買物の仕組みや消費者の役割」に 関する内容を新設するとともに、他の内容 と関連を図り、消費生活や環境に配慮した 生活の仕方に関する内容の改善を図ってい る。」とあり、小学校5、6 年と中学校 3 年 間のカリキュラムの中で継続的に学習する ことが望まれる。 科目間の関係性に着目してみると、消費 者教育について、主に家庭科と社会科で取 り扱っており、いずれも小学校から高校ま での教育課程で取り扱う。小学校の家庭科 では「身近な消費生活と環境」として、 モノや金銭の活用の視点から生活を見つめ、限りある物や金銭の大切さに気づき、自分の生活が身 近な環境に与える影響を知り、主体的に生活を工夫できる消費者としての素地を育成することを目 的としている。そして中学校の家庭科では「身近な消費生活と環境」として、消費や環境に関する 実践的・体験的な学習活動をとして、消費生活と環境についての基礎的・基本的な知識及び技術を 習得し、消費者としての自覚を高め、身近な消費生活の視点から持続可能な社会を展望し、環境に 配慮した生活を主体的に営む能力と態度を育成することを目的としている。さらに高校の家庭科で は「生涯の生活設計」として、生活と経済のつながり、主体的な資金管理の在り方やリスク管理な ど不測の事態への対応にかかわる内容を重視している。このように家庭科では小中高を通して縦断 的に消費者教育について学習する計画が立てられている。 社会科では、地域の発展に携わる仕事の工夫についての学習や、経済活動の意義につながる発展 的学習などについて取り上げるため、両科目を通して現状の問題に対処できる力だけでなく、時代 の変化によって発生する新たな課題に対応するための学習として効果を上げることを目指している。 これらの多方面からのアプローチによる消費者教育を通し、売買契約の基礎を学ぶことで、経済 図 3 消費者教育体系イメージマップ り、身近な素材である PET についてよく理解しておくことは、循環型社会の実現のために必要で ある。 生活技術の低下の原因として、父親も母親も有職者であり、生活技術を伝える時間がないという 要因が挙げられる。現代の子どもたちの生活時間に即して考えると、家庭科という教科の中で生活 技術を学び、実生活で繰り返し実行することで、生活者として自立する能力や家庭を築き、経営し ていく能力を育てる。そして変化する社会において、子どもたちが主体的に対応し、新しい生活文 化の創造に取り組む意欲を持てるようサポートする必要がある。田中ら6)によると小学校の家庭科 で学んだことが、その後、大人になった際にも定着しているということがわかっており、小学校で 基礎的な技術を学ぶ重要性を示していると言える。 ただ、ここで心にとどめておかなければならないことは、生活技術の伝承と言っても、伝えるこ とは技術だけではなく、各家庭には古くから受け継がれた創意工夫が存在することや、技術を伝え る時間の共有と対話を通して強い結びつきを持った家族関係を構築することができるということで ある。 2 家庭科教育に求められること (1)学習指導要領の改訂を踏まえて 新学習指導要領「改訂の要点」1)として 「家族・家庭生活の多様化や消費生活の変化等に加えて、 グローバル化や少子高齢化の進展、持続可能な社会の構築等、 今後の社会の急激な変化に主体的に 対応することができる資質・能力の育成を目指す」とある。先に述べたように家庭は「家族・家庭 生活」、「衣食住の生活」、「消費生活・環境」の内容で成り立っている。「教育内容の見直し」として、 「家族の一員として家庭の仕事に協力するなど、家庭生活を大切にする心情を育むための学習活動 や、家族や地域の異世代の人々と関わるなど、人とよりよく関わる力を育成するための学習活動、 食育を一層推進するための食事の役割や栄養・調理に関する学習活動を充実する。また、消費生活 や環境に配慮した生活の仕方に関する内容を充実するとともに、他の内容との関連を図り、実践的 な学習活動を一層充実する。さらに、主として衣食住の生活において、日本の生活文化の大切さに 気付く学習活動を充実する。」とある。この中で本稿では「消費生活や環境に配慮した生活の仕方に 関する内容の充実」および「日本の生活文化の大切さに気付く学習活動」について、現状をまとめ、 考えを述べる。 1)消費者教育―消費生活や環境に配慮した生活 消費者としての教育は、消費生活に関する知識や技能を学び、実際の生活にそれを活かし、豊か で安全、安心なくらしを実現していくという目的を持つ。内閣府の調査(平成28 年度)7)による と、小学生のスマートフォン所有率は61.8%、ノートパソコンやゲーム機などその他の機器も合わ せるとインターネット利用率は84.2%である。年齢が上がるとともに所有率も上昇し、現代の子ど もたちは情報化社会の渦の中で生活していると言える。そのため、小学校においても、消費者がど のような被害に遭いやすいのか認識し、被害を回避することができる能力を身に付けるため、消費 者としての教育が必要である。 「消費者教育体系イメージマップ」(2013 年、消費者庁)8)では、消費者教育の4 つの領域で、消 費者のライフステージごとに消費者教育の目標が公開されている。図3 に一部紹介する。4 つの領 域とは「消費者市民社会の構築」、「商品等の安全」、「生活の管理と契約」、「情報とメディア」であ り、消費者のライフステージとは「幼児期」、「小学生期」、「中学生期」、「高校生期」「成人期(特に

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のしくみの一端を知り、消費者としての自覚を持つようになる。さらには経済的な観念を持つこと が子どもたちの将来の職業観とも深く連動すると考える。 2)日本の生活文化 学習指導要領「履修の改善」1)では「日本の生活文化に関する内容の充実」として「グローバル 化に対応して、日本の生活文化の大切さに気付くことができるようにするために、衣食住の生活に おいては、和食の基本となるだしの役割や季節に合わせた着方や住まい方など、日本の伝統的な生 活について扱う」とある。 食生活では無形文化遺産に登録されている和食文化の基本について学習し、実際に調理実習を行 う。和食は、食材の持ち味を大切にし、おせち料理のように年中行事ごとのアレンジがあり、日本 各地の地域に根差した郷土料理があること、そして栄養のバランスのとれた健康的な食生活である ことなど、世界からも高く評価されている。和食について理解を深めると同時に、ごはんやみそ汁、 箸などを配膳する時の日本の伝統的な配膳の仕方があることについても学習し、実生活に役立てる。 衣生活においては和服の構造や特徴について知る。時代ごとに素材や着用方法など随所に工夫が 見られるが、中でも春夏秋冬に合わせた「襲の色目(かさねのいろめ)」は日本人独特の感性に裏付 けられた配色技法であるため、図工と関連してデザインの学習に取り入れれば発想の幅が広がる。 さらに、和服は収納しやすく、何度でも仕立て直して着用することができる持続可能なデザインで あることや、成長期に身長が伸びたり、大人になり体型が変化したりしても着用可能なユニバーサ ルデザインであることを、日本の未来を担う子どもたちに理解して欲しいと思う。 現在、パリをはじめとする世界中で活躍する日本人ファッションデザイナーの山本耀司氏や川久 保玲氏の表現する黒のドレスは、日本の伝統文化である水墨画からインスピレーションを受けてい ると言われている。水墨画に表現されるさまざまな微妙な黒はヨーロッパの人々の価値観には存在 しない色とのことであり、毎シーズンのコレクションでも好評を博している。 住生活においては、日本の住まいが西洋建築と異なり、自然と融合し、自然の力を効果的に活用 するしつらいや「打ち水」、「すだれ」、「緑のカーテン」など、季節の変化に合わせた快適な住まい 方を目指している点を重視し、CO2排出削減のために環境に配慮した住まいを考える。また、日本 独特の感性に触れる機会を持ち、「粋」、「わび・さび」などについて、時代背景とともに理解を深め る。 衣食住生活の一面を見るだけでも、このように日本の優れた伝統文化は海外でも引けを取らず、 誇りを持てるものである。できれば本物の芸術作品を鑑賞する機会を持ち、日本独自の芸術文化と 衣食住生活との関わりを子どもたちに肌で感じてもらうことが重要である。政府が推し進めている クールジャパンと連動し、プロフェッショナルな職人の技術に触れ、豊かな感性を磨いて欲しいと 考える。 (2) 家庭科教育に求められる新たな視点 2-(1)「学習指導要領の改訂を踏まえて」で述べた家庭科教育の内容に加え、さらに必要である と考えられる「キャリア教育、シティズンシップ教育」および「異文化理解」について言及する。 1)キャリア教育、シティズンシップ教育 ここでは家庭科教育をキャリア教育およびシティズンシップ教育の視点から見直し、その可能性 について検討する。 そもそもキャリア教育とは、1971 年にアメリカでシドニー・マーランドが連邦教育局長官に就任

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した際、「すべての教育はキャリア教育であるべきである。」と述べたことから始まった。日本では 1999 年の中央教育委審議会答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」で初めて登場 し、「小学校段階から発達段階に応じてキャリア教育を実施する必要がある」と提言された9)。日本 の未来を担う子どもたちがより良い生き方を求め、自立していく過程で、職業について知り、選択 し、希望を持つことはとても重要である。自分自身を理解し、自分らしく生きていくために、より どころとなるのがキャリア教育である。ここで家庭科とキャリア教育との関係を見てみると、繰り 返しになるが、学習指導要領1)に「現在または将来において、自らの生活を主体的により良いもの にしていくために必要な資質や能力をはぐくむ教科である」とある。 家庭科という教科は、授業では自分の生活や家族に関心を持ち、将来の人生設計について考える。 そして学習したことを実際に生活の中で実践してみるという、理論と実践の両輪で成り立っている。 その学習内容は家庭の中にとどまっているものでなく、常に地域や社会とつながっており、私たち の人間生活を総合的にとらえた内容である。地域や社会の中で仕事をしながら貢献していくことが、 実は自分の生活をよりよいものにしていくことにつながるのである。家庭科を通して子どもたちが 将来の生活の主体的にかかわっていける能力や態度を育成する必要がある。 仕事と生活の調和をワークライフバランスと呼ぶが、少子高齢化社会における仕事と生活との調 和をどのように実現すればよいのであろうか。ワークライフバランスの考え方としては、個人は仕 事と生活を共存させながら、持っている能力をフルに発揮し、それぞれが望む人生を生きることを 目指す。そして企業は、社員が働きながら仕事以外の責任や要望を果たせる環境を提供することに より、能力を最大限発揮し、会社に貢献してもらうことを考える。個人と職場が有益な関係性を持 つことになり、少子化対策の根本的な考え方とすることができるであろう。内閣府は「仕事と生活 の調和(ワークライフバランス)憲章」(平成19 年 12 月 18 日)10)において、長時間労働の削減 や年次有給休暇の取得促進等に向けた企業の取組みの促進、育児・介護休業法の周知徹底や男性の 育児休業の取得促進などの、仕事と家庭の両立支援等に取り組んでいる。子どもの頃から、将来自 分がどのような生活を送りたいのか、そのためにどのような努力が必要か、未来のビジョンを描く ことは非常に重要である。自分が大人になって仕事をする姿を想像し、夢を持って生きることが大 切であり、子どもたちと接する大人も同様である。 さらに、家庭科は日常生活の営みの軸足から地域や社会とつながっていることを実感する教科で あり、従来の教科の中に取り上げられてこなかったとされるシティズンシップ教育について、家庭 科ではその言葉を用いずともシティズンシップを育成してきた教科である 11)「シティズンシップ (citizenship)」は、日本語では「市民性」という意味であるが、「市民権」や「公民権」などと訳さ れ、これまでは国籍や参政権に近い概念としてとらえられていた。現代では「市民社会でいかに振 る舞うか」といった概念へと広がり、めまぐるしく変化する現代社会において、子どもたちが将来、 市民としての十分な役割を果たせるように学校教育で導入されてきている。文部科学省は、学校教 育における取組として、「学校教育では従来、小学校・中学校の社会科や高校の公民科を中心に、民 主政治や政治参加、法律や経済の仕組み、勤労の権利と義務についての教育が行われている。また、 消費者としての知識や態度を身に付けるため、社会科や家庭科を中心に子どもの発達の段階に応じ た指導が行われている」としている。社会参画という視点を重視し、例として、「社会生活を営む上 で大切な法やきまり」(小学校)、「契約の重要性」(中学校)、「国民の司法参加」(小学校・中学校・ 高校)を新たに扱うこととするなど、教育内容の充実が図られている。」としている。家庭科でシテ ィズンシップ教育を行う場合、例えば「地域の安全を守る」など地域が抱えている問題を解決する ための取り組みなどがあげられる。シティズンシップ教育は単に知識を学ぶのではなく、生徒が参 加することによって学ぶという特徴があるため、教員は生徒の参加意欲を高めながらグループワー のしくみの一端を知り、消費者としての自覚を持つようになる。さらには経済的な観念を持つこと が子どもたちの将来の職業観とも深く連動すると考える。 2)日本の生活文化 学習指導要領「履修の改善」1)では「日本の生活文化に関する内容の充実」として「グローバル 化に対応して、日本の生活文化の大切さに気付くことができるようにするために、衣食住の生活に おいては、和食の基本となるだしの役割や季節に合わせた着方や住まい方など、日本の伝統的な生 活について扱う」とある。 食生活では無形文化遺産に登録されている和食文化の基本について学習し、実際に調理実習を行 う。和食は、食材の持ち味を大切にし、おせち料理のように年中行事ごとのアレンジがあり、日本 各地の地域に根差した郷土料理があること、そして栄養のバランスのとれた健康的な食生活である ことなど、世界からも高く評価されている。和食について理解を深めると同時に、ごはんやみそ汁、 箸などを配膳する時の日本の伝統的な配膳の仕方があることについても学習し、実生活に役立てる。 衣生活においては和服の構造や特徴について知る。時代ごとに素材や着用方法など随所に工夫が 見られるが、中でも春夏秋冬に合わせた「襲の色目(かさねのいろめ)」は日本人独特の感性に裏付 けられた配色技法であるため、図工と関連してデザインの学習に取り入れれば発想の幅が広がる。 さらに、和服は収納しやすく、何度でも仕立て直して着用することができる持続可能なデザインで あることや、成長期に身長が伸びたり、大人になり体型が変化したりしても着用可能なユニバーサ ルデザインであることを、日本の未来を担う子どもたちに理解して欲しいと思う。 現在、パリをはじめとする世界中で活躍する日本人ファッションデザイナーの山本耀司氏や川久 保玲氏の表現する黒のドレスは、日本の伝統文化である水墨画からインスピレーションを受けてい ると言われている。水墨画に表現されるさまざまな微妙な黒はヨーロッパの人々の価値観には存在 しない色とのことであり、毎シーズンのコレクションでも好評を博している。 住生活においては、日本の住まいが西洋建築と異なり、自然と融合し、自然の力を効果的に活用 するしつらいや「打ち水」、「すだれ」、「緑のカーテン」など、季節の変化に合わせた快適な住まい 方を目指している点を重視し、CO2排出削減のために環境に配慮した住まいを考える。また、日本 独特の感性に触れる機会を持ち、「粋」、「わび・さび」などについて、時代背景とともに理解を深め る。 衣食住生活の一面を見るだけでも、このように日本の優れた伝統文化は海外でも引けを取らず、 誇りを持てるものである。できれば本物の芸術作品を鑑賞する機会を持ち、日本独自の芸術文化と 衣食住生活との関わりを子どもたちに肌で感じてもらうことが重要である。政府が推し進めている クールジャパンと連動し、プロフェッショナルな職人の技術に触れ、豊かな感性を磨いて欲しいと 考える。 (2) 家庭科教育に求められる新たな視点 2-(1)「学習指導要領の改訂を踏まえて」で述べた家庭科教育の内容に加え、さらに必要である と考えられる「キャリア教育、シティズンシップ教育」および「異文化理解」について言及する。 1)キャリア教育、シティズンシップ教育 ここでは家庭科教育をキャリア教育およびシティズンシップ教育の視点から見直し、その可能性 について検討する。 そもそもキャリア教育とは、1971 年にアメリカでシドニー・マーランドが連邦教育局長官に就任

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クやクラス討論全体を管理し促進していく方略をとらなければならない難しさがあるが、今後、様々 な教科で問題解決型の授業を展開していくうえで教授方法にも工夫が必要となる。 仕事を持つ社会的意識の高い女性が子育てする際に、子どもの生活技術を身に付ける上で、どの ような影響があるのか、筆者は愛知県および岐阜県の保育園と幼稚園において0 歳から 6 歳までの 男女園児の母親に対して調査した12)13その結果、母親の就労形態と乳幼児衣服の購入との関わ りについて、フルタイマーはパートタイマーや専業主婦と比較して「衣服の仕立て」や「子どもの 自身の意見」を重視する割合が大きいことがわかった。乳幼児が精神的に自立し始める時期に、母 親が生活習慣の一部として衣服着用習慣における正しい知識を伝え、乳幼児に自らの生活について 関心を持たせることが必要であると考えられた。母親が乳幼児の嗜好を取り入れながら、発育発達 に応じた適切な衣服を着用させることは幼児教育の一環として必要不可欠であり、乳幼児自身の創 造性豊かな生活につながると考えられた。Ⅰ-1-(2)「生活技術の簡略化と生活力の低下」で、 親が仕事をすることで子どもに生活技術を伝承できていない点を指摘したが、親や教員が自ら仕事 をすることで生活意識が高まり、子どもに対する教育効果をあげることができると考える。キャリ ア教育やシティズンシップ教育を充実させることで、学習内容に個人の実践による知恵をプラスし ながらパワーアップし、次世代につなげていくことを期待したい。 2)家庭科教育における自己肯定感の獲得 古田ら 14)は、家庭科が、教科の目標到達以外に果たしている働きについて明らかにし、それを 意図的に指導の中に位置づけることで、子どもの自己肯定感を育むことができると述べている。小 学校の高学年から中学生期にある子どもは、自我が芽生え、「自分とは何か」というような本質的な 疑問を持つようになるが、自分に自信がなく、不安定な状態に陥ったり、葛藤に苦しんだりする。 家庭科は、小学校5 年生という思春期のこのような心理状態の時に、初めて出合う教科であり、そ れまでの価値基準とは異なる側面で、友だちの良さを発見する機会を多く含んでいるのではないか。 子どもたちの生活体験が乏しくなっている現代であるからこそ、生活上必要とする技能を身につけ ている子どもが自立した姿と映り、友だちから認められる機会を得ることになる。授業を通して得 た自信と自己肯定感は、学習へのモチベーションを向上させ、家庭科以外の学習活動全般において も能力を発揮することになるのではないか。この側面を、家庭科の指導過程に位置づけることで、 家庭科の目標の到達とともに、自己肯定感を得られる学習過程の一つに設定することが可能ではな いかと考える。 筆者は教育系の学生に対し、自作ドレスによるファッションショーの企画を提案したところ、専 門科目以外の学びの場で新しい学生たちの可能性に気付くことができた。学生たちは授業時間外の 放課後や夏期休業中も登校し、積極的に作業に取り組み作品を製作していく。完成までには莫大な 時間と労力が必要であるが、何度もくじけそうになりながら努力し続ける。その背景には友人の励 ましがあり、自分が頑張ったと思うところを認められた場合と、自分では意識していなかったとこ ろに友達が気づいてくれた場合の、両方の嬉しさがあったためであると思われる。 子どもの場合は、「友だちに誉められて嬉しかった」という古田ら14)の結果に集約されるが、個 人の「前に踏み出す力」だけでなく、社会人基礎力を培う場である学級集団としての協働意識(チ ームで働く力)も芽生えていく。自己肯定感を育てることができ、家庭だけでなく、学級集団にお いても人間関係を育てる力となっている。さらに、家庭科は5、6 年生が学習する教科であるので、 2 学年合同の企画を立ち上げるなど、学年を超えたつながりを意図的に作ることで、より充実した 教科となるのではないかと考える。

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3)異文化理解 新学習指導要領では日本の文化をクローズアップしているが、同時に、家庭科でも異文化を理解 するための教育が必要であると考える。異文化理解とは、単に外国語を自由に操るという意味では ない。相手のことを理解しようとし、相手の立場に立って考え、相手のために行動できる人間との ことである。そのために外国語の習得がおのずと必要となるが、言語はあくまでも手段であり、相 手を思いやり、鋭敏な国際感覚をもっていることが異文化理解には不可欠である。元国連事務総長 チョウドリ氏のことばに「世界市民とは、単に海外の人と多くつながっているだけではない。たと え海外に行くことはなかったとしても、貧しい生活を強いられている人々がいることに思いを馳せ、 食べ残しを減らそうと努力し、節電を心掛ける人も世界市民である。恵まれた日本の生活に安住せ ず、各地の様々な問題に目を向けて欲しい」とある。日本は先進国で、ある意味では安全性が保障 されている国である。しかし世界中には、清潔な水さえ確保されていない子どもたちが必死で生活 している現状がある。今後は持続可能な社会を構築するため、急激な変化に主体的に対応すること が必要とされる。世界で求められる持続可能なライフスタイルの確立に向けて、家庭科教育が何か 役割を担うことができないであろうか。 衣生活分野を例に挙げると、衣料マーケットの対象が低年齢化し7)、小中学生を中心にファッシ ョンへの興味・関心が高まっている。このような子どもたちの現状を踏まえ、衣生活の実情に即し て消費者サイドに立った学習内容が必要であると考える。安価なアパレル製品を消費して廃棄する システムに組み込まれた子どもたちに必要な家庭科とはどのようなものか。例えば、ファッション 業界の裏側にいる人々やその現場について知ると、その衝撃的な現実にショックを受けるかもしれ ない。世界の最も貧しい多数の労働者たちが衣服の生産に従事しており、その多くが女性である。 これらの女性の多くが最低限の生活賃金以下の賃金で、危険で劣悪な労働環境で、基本的な人権さ えない状況で働いている。2003 年にバングラディシュで起こった縫製工場の崩落事件では、約 1000 名の従業員が亡くなった。胸を痛めずにはいられない事件である。ここで、2-(1)-1)「消費者教 育」とも関わりのある“ethical consumer” について考えたい。「倫理的な消費をする人」と訳せ るが、「買うことで環境や社会問題の解決に貢献できる商品を買い、そうでない商品を買わない消費 活動をする人」のことである。子どもたちにわかるよう具体的に表現するとすれば「自分たちの買 うものがどのような人たちによって作られたものか考えることができる人」と言える。子どもたち が、自分の消費生活が人や環境にどう影響を与えるかについて考えることができるよう教育の場で しっかり伝えていくことが必要である。 国連の持続可能な開発目標(SDGS)の対象は17 の分野、169 項目という非常に多岐にわたるも のであり、本当に実現するのかという声もある。現実はそれだけ大勢の人が深刻な問題に直面して いることを示しているのである。家庭科に関係性のある課題として、「目標5 ジェンダー平等を達 成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」や「目標 6 すべての人々の水と衛生の利用可能 性と持続可能な管理を確保する」が挙げられる15)。問題が大きすぎて複雑化していると、人は自分 自身との関わりが見出せず、無力感が先に立つことが多い。異文化を理解する力とは、突き詰めて 言えば人間性であり、真の国際人とはどんな時も相手の状況に思いを巡らし、痛みや苦しみを理解 できる心豊かな人間のことである。家庭科教育を通して「同じ人間として同じ地球で共に生きる」 という思いを深め、自分自身の行動や生き方が地域の未来や地球の未来に密接につながっていると いうことを伝えていきたい。 おわりに かつてのように子どもは家事労働の担い手ではなく、将来をよりよく生きるために学習すること クやクラス討論全体を管理し促進していく方略をとらなければならない難しさがあるが、今後、様々 な教科で問題解決型の授業を展開していくうえで教授方法にも工夫が必要となる。 仕事を持つ社会的意識の高い女性が子育てする際に、子どもの生活技術を身に付ける上で、どの ような影響があるのか、筆者は愛知県および岐阜県の保育園と幼稚園において0 歳から 6 歳までの 男女園児の母親に対して調査した12)13その結果、母親の就労形態と乳幼児衣服の購入との関わ りについて、フルタイマーはパートタイマーや専業主婦と比較して「衣服の仕立て」や「子どもの 自身の意見」を重視する割合が大きいことがわかった。乳幼児が精神的に自立し始める時期に、母 親が生活習慣の一部として衣服着用習慣における正しい知識を伝え、乳幼児に自らの生活について 関心を持たせることが必要であると考えられた。母親が乳幼児の嗜好を取り入れながら、発育発達 に応じた適切な衣服を着用させることは幼児教育の一環として必要不可欠であり、乳幼児自身の創 造性豊かな生活につながると考えられた。Ⅰ-1-(2)「生活技術の簡略化と生活力の低下」で、 親が仕事をすることで子どもに生活技術を伝承できていない点を指摘したが、親や教員が自ら仕事 をすることで生活意識が高まり、子どもに対する教育効果をあげることができると考える。キャリ ア教育やシティズンシップ教育を充実させることで、学習内容に個人の実践による知恵をプラスし ながらパワーアップし、次世代につなげていくことを期待したい。 2)家庭科教育における自己肯定感の獲得 古田ら 14)は、家庭科が、教科の目標到達以外に果たしている働きについて明らかにし、それを 意図的に指導の中に位置づけることで、子どもの自己肯定感を育むことができると述べている。小 学校の高学年から中学生期にある子どもは、自我が芽生え、「自分とは何か」というような本質的な 疑問を持つようになるが、自分に自信がなく、不安定な状態に陥ったり、葛藤に苦しんだりする。 家庭科は、小学校5 年生という思春期のこのような心理状態の時に、初めて出合う教科であり、そ れまでの価値基準とは異なる側面で、友だちの良さを発見する機会を多く含んでいるのではないか。 子どもたちの生活体験が乏しくなっている現代であるからこそ、生活上必要とする技能を身につけ ている子どもが自立した姿と映り、友だちから認められる機会を得ることになる。授業を通して得 た自信と自己肯定感は、学習へのモチベーションを向上させ、家庭科以外の学習活動全般において も能力を発揮することになるのではないか。この側面を、家庭科の指導過程に位置づけることで、 家庭科の目標の到達とともに、自己肯定感を得られる学習過程の一つに設定することが可能ではな いかと考える。 筆者は教育系の学生に対し、自作ドレスによるファッションショーの企画を提案したところ、専 門科目以外の学びの場で新しい学生たちの可能性に気付くことができた。学生たちは授業時間外の 放課後や夏期休業中も登校し、積極的に作業に取り組み作品を製作していく。完成までには莫大な 時間と労力が必要であるが、何度もくじけそうになりながら努力し続ける。その背景には友人の励 ましがあり、自分が頑張ったと思うところを認められた場合と、自分では意識していなかったとこ ろに友達が気づいてくれた場合の、両方の嬉しさがあったためであると思われる。 子どもの場合は、「友だちに誉められて嬉しかった」という古田ら14)の結果に集約されるが、個 人の「前に踏み出す力」だけでなく、社会人基礎力を培う場である学級集団としての協働意識(チ ームで働く力)も芽生えていく。自己肯定感を育てることができ、家庭だけでなく、学級集団にお いても人間関係を育てる力となっている。さらに、家庭科は5、6 年生が学習する教科であるので、 2 学年合同の企画を立ち上げるなど、学年を超えたつながりを意図的に作ることで、より充実した 教科となるのではないかと考える。

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が求められる存在である。親の意識も変化し、生活技術の伝承の必要性についてそれほど認識して いない。このような時代にあって、親子関係あるいは家族全員の関係性構築の一端を担う機会とし て、また相互理解の場として家庭科の教育内容が価値を生むことを期待する。人間が生きていくた めに必要な家庭という教科は様々な側面を持つ。スイスの教育者ペスタロッチの思想の核心は「居 間の教育」とされている16)。彼は「居間」すなわち「家庭」における教育こそ、人間教育の理想と 考え、「すべての家庭の居間の中にあらゆる真の人間陶冶の本質的な根本手段が全部集まっている」 と述べている。教育思想家であり教育実践家でもあったペスタロッチは「居間の教育」をモデルと して、健全な人間の発達は信頼の雰囲気のなかで活動しているときにのみなし遂げられることがで きるとし、真に望ましい親子関係、家庭関係に教育関係の原型を探ろうとした。子どもたちは普段、 無意識に日常生活を送っている。家庭科の調理実習でご飯の炊き方とみそ汁の作り方を学ぶことに より、作り方や材料の選び方に関心を持つ。何より自分が作ったみそ汁が「とてもおいしかった」 という喜びや満足感が、積極的に家庭生活に関わりたいという意欲を引き出し、やればできるとい う自信につながる。そしていつも食事を用意してくれている家族に感謝の気持ちが生まれ、家庭科 を学習することで「家庭生活を大切にする心情をはぐくむ」(学習指導要領)ようになるのでないか。 家庭科教育は生涯にわたる家庭生活の基盤となる能力や態度を育成し、未来を創り出す「生きる力」 となる。また、家庭科教育には、子どもたちが自己との対話を深めながら、家族や近隣の人々など 他者や社会、自然や環境に心を開き、ともに生きて行こうとする共生の心を持ち、生活をよりよく しようと主体的に創意工夫する能力や態度を育成することの大切さが込められている。 リンダ・グラットン氏によると世界一平均寿命が長い日本では、2050 年までに 100 歳以上の人 口は100 万人を突破する見込みである17)。これまでの常識が通用しない、一層変化に富んだ様々な 生き方が選択可能となる。そのとき人はどのような生き方をすれば良いのであろうか。その答えが 生活を創意工夫する能力の育成を目指し、問題解決的な学習を重視してきた歴史を持つ家庭科教育 の中にあるように思われる。末松孝治氏が「人生で大切なことはすべて家庭科で学べる」の中で家 庭科は人間が生きること、すべてについて学ぶ教科であると述べている18)。東日本大震災を経験し た氏ならではの非常に重みのある言葉である。震災時に身に染みて感じた大切なもの、すなわち、 家族の絆、郷土の絆、お金の価値観 いざという時の保険、災害対策の重要性、環境(エネルギー) 問題はすべて家庭科で取り扱う分野であったとのことである。家庭科はすべての人が主体的に生き ていくために必要な力を身につけていくことにかかわる教科なのである。 そして、家庭科だけでなく教育は人を正しい道へ導くことを目的とする。「自分の生活さえ快適で あれば問題ない」という自己中心的な幸せは成立しない。教育の役割は、子どもたちに対し、近視 眼的な発想で行動するのではなく、世の中で今何が起こっているのか、正しい知識を提供し、広い 視野からの正しい理解を促進することである。子どもたちには大きな世界観に立って将来の夢を抱 く人生を歩んで欲しい。知識は学習者一人の人間を助けるものであるが、学んだ知識を有用に使う ことで社会全体につながり、貢献できるということを家庭科教育を通して伝えていきたいと考える。 参考文献 1.文部科学省,小学校学習指導要領解説 家庭編,2017 2.日本家政学会編,新時代の家庭科教育,東京書籍,1988 3.中間美砂子,家庭科教育学事典,日本家庭科教育学会編,実教出版,43,1992 4.内閣府,平成 29 年度 国民生活に関する世論調査,2017 5.薩本弥生,生活を豊かにするために必要とされる衣生活教育,日本家政学会誌,Vol.67,No.3, pp.192-198,2016

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6.田中志穂,内田惠美子,家庭科学習の定着度,奈良教育大学教育実践総合センター研究紀要 (19), pp.53-59, 2010 7.内閣府調査,平成 28 年度 青少年のインターネット利用環境実態調査,2016 8.消費者庁,消費者教育体系イメージマップ,2013 9.人見佳代子,赤塚智子,キャリア教育の視点を取り入れた小学校家庭科構想,宇都宮大学教育 学部 教育実践総合センター紀要,第31 号,pp.97-104,2008 10.内閣府,仕事と生活の調和(ワークライフバランス)憲章,平成19 年 11.髙木直,市民社会を開く家庭科,大学家庭科教育研究会編,ドメス出版,1-2,2015 12.近藤トシエ,光松佐和子,堀てる代,籏美代子,佐野恂子,乳幼児の着衣調査 衣服選択に及 ぼす母親の影響(第1報)-購入-,日本衣服学会誌,第46 巻 ,第 2 号,2003 13.光松佐和子,近藤トシエ,堀てる代,籏美代子,佐野恂子,乳幼児の着衣調査 衣服選択に及 ぼす母親の影響(第2 報)-着用-,日本衣服学会誌,第 46 巻 ,第 2 号,2003 14.古田豊子,小学校高学年から中学生期における自己肯定感獲得に果たす家庭科の働き,日本家 庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 59(0), 49, 2016 15.方田江綾子,国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関する国際家政学会(IFHE)の意見草 案書案[その 3]目標 5 と目標 6 に関する草案の概要,日本家政学会誌,Vol.68,No.6,pp303-307, 2017 16.長尾 十三二,ペスタロッチ,清水書院,2014 17.リンダ・グラットン,アンドリュー・スコット,池村千秋訳,ライフシフト,東洋経済新報社, 2016 18.末松孝治,人生で大切なことはすべて家庭科で学べる,文芸社,pp.164-165,2014 が求められる存在である。親の意識も変化し、生活技術の伝承の必要性についてそれほど認識して いない。このような時代にあって、親子関係あるいは家族全員の関係性構築の一端を担う機会とし て、また相互理解の場として家庭科の教育内容が価値を生むことを期待する。人間が生きていくた めに必要な家庭という教科は様々な側面を持つ。スイスの教育者ペスタロッチの思想の核心は「居 間の教育」とされている16)。彼は「居間」すなわち「家庭」における教育こそ、人間教育の理想と 考え、「すべての家庭の居間の中にあらゆる真の人間陶冶の本質的な根本手段が全部集まっている」 と述べている。教育思想家であり教育実践家でもあったペスタロッチは「居間の教育」をモデルと して、健全な人間の発達は信頼の雰囲気のなかで活動しているときにのみなし遂げられることがで きるとし、真に望ましい親子関係、家庭関係に教育関係の原型を探ろうとした。子どもたちは普段、 無意識に日常生活を送っている。家庭科の調理実習でご飯の炊き方とみそ汁の作り方を学ぶことに より、作り方や材料の選び方に関心を持つ。何より自分が作ったみそ汁が「とてもおいしかった」 という喜びや満足感が、積極的に家庭生活に関わりたいという意欲を引き出し、やればできるとい う自信につながる。そしていつも食事を用意してくれている家族に感謝の気持ちが生まれ、家庭科 を学習することで「家庭生活を大切にする心情をはぐくむ」(学習指導要領)ようになるのでないか。 家庭科教育は生涯にわたる家庭生活の基盤となる能力や態度を育成し、未来を創り出す「生きる力」 となる。また、家庭科教育には、子どもたちが自己との対話を深めながら、家族や近隣の人々など 他者や社会、自然や環境に心を開き、ともに生きて行こうとする共生の心を持ち、生活をよりよく しようと主体的に創意工夫する能力や態度を育成することの大切さが込められている。 リンダ・グラットン氏によると世界一平均寿命が長い日本では、2050 年までに 100 歳以上の人 口は100 万人を突破する見込みである17)。これまでの常識が通用しない、一層変化に富んだ様々な 生き方が選択可能となる。そのとき人はどのような生き方をすれば良いのであろうか。その答えが 生活を創意工夫する能力の育成を目指し、問題解決的な学習を重視してきた歴史を持つ家庭科教育 の中にあるように思われる。末松孝治氏が「人生で大切なことはすべて家庭科で学べる」の中で家 庭科は人間が生きること、すべてについて学ぶ教科であると述べている18)。東日本大震災を経験し た氏ならではの非常に重みのある言葉である。震災時に身に染みて感じた大切なもの、すなわち、 家族の絆、郷土の絆、お金の価値観 いざという時の保険、災害対策の重要性、環境(エネルギー) 問題はすべて家庭科で取り扱う分野であったとのことである。家庭科はすべての人が主体的に生き ていくために必要な力を身につけていくことにかかわる教科なのである。 そして、家庭科だけでなく教育は人を正しい道へ導くことを目的とする。「自分の生活さえ快適で あれば問題ない」という自己中心的な幸せは成立しない。教育の役割は、子どもたちに対し、近視 眼的な発想で行動するのではなく、世の中で今何が起こっているのか、正しい知識を提供し、広い 視野からの正しい理解を促進することである。子どもたちには大きな世界観に立って将来の夢を抱 く人生を歩んで欲しい。知識は学習者一人の人間を助けるものであるが、学んだ知識を有用に使う ことで社会全体につながり、貢献できるということを家庭科教育を通して伝えていきたいと考える。 参考文献 1.文部科学省,小学校学習指導要領解説 家庭編,2017 2.日本家政学会編,新時代の家庭科教育,東京書籍,1988 3.中間美砂子,家庭科教育学事典,日本家庭科教育学会編,実教出版,43,1992 4.内閣府,平成 29 年度 国民生活に関する世論調査,2017 5.薩本弥生,生活を豊かにするために必要とされる衣生活教育,日本家政学会誌,Vol.67,No.3, pp.192-198,2016

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参照

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