94 学 会 〔東女医大誌 第60巻 第3号頁312∼313平成2年3月〕
東京女子医科大学学会第281回例会
日時平成2年2月15日(木)3:00∼5:05
会場 東京女子医科大学 弥生記念講堂 第1回(1988年度)山川寿子研究奨励金受賞者研究発表 1.進行性筋ジストロフィー症の進展過程に関する研究 2.インスリン依存型糖尿病とインスリン自己抗体 3.ホルター心電図による心筋虚血の評価 4.1》os砂雇♂αミュータントを用いたCa感受性Kチャネルの調節機i構 第2回(1989年度)受賞者発表 挨拶 選考経過 奨励金授与 1.肝細胞癌における腫瘍マーカーの研究 一PIVKAsの産生機序およびモノクローナル抗体の作製一 2.小児期発見インスリン非依存型糖尿病者の遺伝様式と臨床的特徴 特別講演 「今,医療に携わる人に求められるもの」 (司会)幹事 久保 長久 (座長)幹事 大森 安恵 (小児科)大澤真木子 (第3内科)内潟 安子 (循環器内科)田中 徹 (第1生理)小松 明 学長 吉岡 守正 選考委員 串田つゆ香 学長 吉岡 守正 (消化器内科)古川みどり (第3内科)大谷 敏嘉 講師 片山 文彦氏 (座長)香川 順(衛生学教授) 1.進行性筋ジストロフィー症の進展過程に関する 研究一座1報 正常幼児の運動機能について (小児科)大澤真木子 筋ジストロフィー症の進展過程を検討し,幼少児期 の患児の運動機能からの予後予測を目的とし,以下の 通り3年計画で研究開始した.1)正常幼児の運動機能 と起坐および立ち上がり動作のパターンの発達の検討 と本症の乳幼児の運動パターンの比較検討.2)乳幼児 期における自然歴の基礎データーの確立.3)患児の筋 のコンピューター断層による罹患筋の分析.4)自然歴 の分析から,幼少児期における運動機能からの予後予 測.今回は1)と2)3)の結果の一部を報告する. 1∼7歳の正常児118名で,日常動作の所要時間測定 と後2者の様式をビデオを用い観察した.年齢別各所 要時間平均値と月齢との相関を求めたが,p>0.00001 で,寝返りY=1.21979−0.00736X,10m走行Y= 8.07919−0.08100X,起坐Y=3.5823−0.02818X,起 立Y=3.84773−0.03342Xで負の相関をみた.起坐動 作では1,2歳では全例に,3歳では10%に起坐時に 上体回旋または半回旋をみたが,4歳以上では腹筋を 使用していた.起立動作では,1歳では全例,2,3 歳では90%にA.四つ這い位→高這い位またはB. 四つ這い位→片膝立てのいずれかからの起立がみられ 3歳以上例はBまたは樽躍姿勢からの起立をみた. Duchenne型やBecker型の起立動作の喪失は,正常 児の動作様式発達の逆の方向で進み,さらに筋力低下 により修飾されていると思われた. 2.インスリン依存型糖尿病とインスリン自己抗体 (第3内科)内潟 安子 インスリン依存型糖尿病(IDDM)はすい臓ランゲル ハンス島のB細胞(構成細胞の約80%を占めるインス リン産生細胞)がリンパ球浸潤によって破壊され内因 性インスリンの不足をきたすことに由来する.近年, 患者血清中のいろいろなラ氏島に対する自己抗体の存 在から,自己免疫機序が成因のひとつに考えられるよ うになった.しかし,ラ氏島に対する自己抗体の産生 の前に,なぜ自己のものが抗原化するのかは依然とし てわかっていない.このような自己抗体が血中に微量 一312一95 しか存在しないためである.今回,上記の自己抗体の ひとつであるインスリン自己抗体を取り上げ抗原部位 を決めてみた.IDDM患者血中には微量しか存在しな いため,同様の自己免疫機序で発生するといわれるイ ンスリン自己免疫症候群の一患者血中からインスリン 抗体を精製した.この抗体はヒトインスリンのB鎖3 番asparagineを中心としたep三topeに対するもので あった. 3.ボルター心電図による心筋虚血の評価 (循環器内科)田中 徹 ホルター心電図は,不整脈のみならず虚血性心疾患 の診断および治療効果判定に使用されているが,その ST変化を心筋虚血と意味づけるには,いくつかの間 題がある.現在使用されているホルター心電図は,誘 導方法が胸部双極誘導であり,解析方法が,高速解析 処理のため,単極誘導・実時間処理解析に比して波型 の変化を生じ易い, 本研究の目的は,①ホルター心電図のST解析能に ついて誘導法および解析方法の違いよりその精度を比 較し,胸部単極誘導法および実時間解析処理の有用性 について検討すること,②単極誘導型ホルター心電図 による狭心症例の無症候性虚血(silent ischemia)の 臨床的意義について検討することである, 4.Drosoρ屠aミュータントを用いたCa感受性K チャネルの調節機構の研究 (第1生理)小松 明 D%oso勉磁幼虫筋を用いた電圧固定法による膜電 流測定から,行動異常ミュータントS♂0ゆ0忽(sZO)に は正常型にみられるCa感受性K電流ICFが欠損して いることが知られている.異型接合体∫10/十の膜電流 は正常型+/+と変わらず,パッチクランプ法による単 一チャネル電流のconductance, kineticsおよびCa 感受性のいずれも正常型と区別できなかった.これら の結果はsJo遺伝子はチャネル蛋白をコードしている というより,その調節系に関与していることを示唆す る, 一方,sZo遺伝子をクローニングするのを目的とし て,P因子挿入突然変異系統を作成し,行動異常ミュー タントのスクリーニングを行った.MutatorにはpU・ Chsneo, JumpstarterにはP∠2.3を用い,約2,000の突 然変異系統を作成した.温度感受性および殺虫剤(Res− methrinとFenitrothion)感受性の変化でスクリーニ ングを行ったところ,温度感受性異常のミュータント が1系統得られた. 一313一