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歯周病原菌Porphyromonas gingivalisと関連菌のタンパク分解酵素と鉄獲得機構

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〔総説〕松本歯学28:61∼69,2002        key words:歯周病原菌一Porphyromonαs gingivαlis一タンパク分解酵素一鉄獲得機構

歯周病原菌Porphyromonas gingivalisと関連菌の

タンパク分解酵素と鉄獲得機構

藤 村 節 夫

松本歯科大学 ロ腔細菌学講座

Proteolytic Enzymes and lron Uptake Mechanism of Periodontopathogen

Porphyromonas gingivalis and lts Related Microorganisms

SETSUO FUJIMURA

Deραrtment of Orα1 Micr・ろiologOr, Matsum・to Dentα1 University Scho・》・デDeπZεs的

Summary

 Porphγromonαs gingivαlis, an oral indigenous bacterial species has been implica七ed in the pathogenesis of adult human periodontitis. This microorganism lacks, however, sydero− phore system which serves the purpose of iron uptake function in bacteria. Therefore, an alternative mechanism responsible for iron uptake system must be found in R gingivαlis. III this review, the present knowledge of acquisition of iron source and possible role of endo− geneous proteolytic enzymes in the iron uptake sys七em in periodontopathogens including P.gingivαlis and i七s related species. は じ め に  歯周炎は歯肉炎と異なり歯の支持組織にまで炎 症が広がったもので,歯槽骨の吸収に至れば歯 を喪失することになる.ヒト(成人性)歯周炎の 原因菌としてPorphyromonαs gingivαlis(旧名 Bαcteroides melαninogenicus, Bαcteroides gin− givαlis)をはじめ, Prevotellα intermediα, Pre− votella nigrescens,など血液平板で培養すると 黒色集落を形成する偏性嫌気性グラム陰性桿菌が 挙げられている25・34・4°・47).  細菌は発育上鉄が必須であることは当然である が,宿主生体内の遊離鉄濃度は極端に低く10’igM 程度しかないといわれる”・2‘).この濃度は細菌の 必要とする濃度の10−11∼10−’°に過ぎず,これでは 細菌は宿主内で発育することはできない33).した がって病原細菌には鉄キレート機能を持つシデロ フォアが備わっており,トランスフェリン(Tf) やラクトフェリン(LDなどの鉄運搬タンパク質 に結合した鉄原子をキレートしている.しかし上 記の歯周病原菌にはシデロフォアが備わってな い8’ 9)ので,別の手段で鉄を獲得している筈であ る.現在のところ歯周病原菌は鉄源としてヘムを 利用するものと,野とLf(いずれもポロ型)を タンパク分解系を通して利用するものが報告され ている.本稿ではそれらに関連した文献について 紹介する. (2002年6月17日依頼;2002年8月25日受付)

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1.タンパク分解酵素(プロテアーゼ)とペ   プチダーゼについて  この20年来P. gingivαlis(以下ジンジバリス 菌と表記)のプロテアーゼについては多くの内外 の研究者によって調べられてきており多数のレ ポートが発表されている.ここではそのうち古典 的なものと鉄獲得機構に関連したものについて紹 介し.最近出始めたプロテアーゼ関連酵素である ペプチダーゼの知見を付記する.  いささか手前味噌的になるがこの分野での端緒

的な報告はFujimuraとNakamuraによって

1981年に発表されている17.ジンジバリス菌がま だBαcteroides melαninogeniCUSと呼ばれていた 頃で,われわれもプロテアーゼは始めて扱うの で,発色合成基質のような便利なものがあるとも 知らず,わざわざカゼインを用いて面倒な手法で タンパク分解活性を測定している.骨子は菌体の 粗抽出液をクロマトグラフィーで分別すると二峰 性の活性を呈しそれぞれの分子量が420kDaと73 kDaでこの二酵素の熱安定性,カゼインに対す るミカエリスーメンテン定数(Km),各種の群特 異薬剤の影響などを比較している.この程度の稚 拙なものでも当時ではlnfection and lmmunity (米国細菌学会誌の一つ)に掲載されたのであ る.その3年後Yoshimuraら:sは膜結合性のプ ロテアーゼを可溶化,精製している.この酵素は トリプシンの活性測定に使われるbenzoyl−ar− ginine−p−nitroanilide(BAPNA)をよく加水分 解するので「トリプシン様酵素」の常用名が与え られ,SH保護剤(還元剤)による活性上昇,ロ イペプチン,アンチパイン、キモスタチン,金属 キレーターによる阻害を始めあらかたの基礎的性 状が記載され,この論文が以後のジンジバリス菌 プロテアーゼ研究の方向性を決めたといって過言 ではない.  その後の研究の進展によりジンジバリス菌プロ テアーゼの主要なものにアルギニン残基のC末 端側を切断するアルギニンジンジパイン(ar. ginine gingipain, RGP)とリジン残基のC末端 側を分解するリジンジンジパイン(1ysine gingi− pain, KGP)が知られるようになった. RGPは 分子量43 kDaで合成基質のみならずタンパク分 解能も陽性である(プロテアーゼの合成基質は分 9  8 7  6 一 ■頃夢

■鴎 ■■●

_一叫■■■」㊨“一■L 図1 5  4  3  2  f 一 ゜一噂■■■■・ 一 94kDa −−

@67kDa

Pt 43 kDa

       一30kDa

鞠■口 胴隙電旨峰 已口 一 20.rl kDa 一 14.4kDa RGPとKGPによるタンパク質の分解(SDS −PAGE) 1:分子量マーカー 2:対照IgG 3:RGP−Aで処理したIgG 4:RGP−Bで処理したIgG 5:KGPで処理したIgG 6:対照ヘモグロビン 7:RGP−Aで処理したヘモグロビン 8:RGP−Bで処理したヘモグロビン 9:KGPで処理したヘモグロビン 解するが天然のタンパクは分解できない酵素も存 在する).筆者らの知見ではエンベロープ結合性 のRGPを精製していくと2種の存在が明らかで (RGP−AとRGP−B),両者の問には目立った酵 素学的差異は認められないが、ヘモグロビンを分 解させるとRGP−Bはほぼ完全に分解してしまう がRGP−Aには分解能がなかった(図1)L’1.し

かしLeWisらによればヘモグロビン分解能は

RGPにもKGPにも認められ, KGPの方が分解

はより活発である:“/という.この矛盾用いた菌 株,精製手段や他の手法の違いに起因するのかも 知れないが,両者の扱ったそれぞれのRGP, KGPそのものに酵素学的差異がある可能性も否 定できない.  このところプロテアーゼの研究動向もその遺伝 子解析へと移るとともに「銅鉄的転回」のそしり も免れないが,タンパク質よりも小分子のペプチ ドを基質とするペプチダーゼに興味を持つ研究者 が出てきている.現在のところジペプチジルペプ チダーゼ(DPP)とトリペプチジルペプチダー ゼ(TPP)がペプチダーゼ研究の対象となってい る.ジンジバリス菌のようにブドウ糖をはじめ 種々の糖をエネルギー源として利用できない細菌

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松本歯学 28(2)2002 63 にとっては,プロテアーゼで分解されたオリゴペ プチド断片をペプチダーゼでさらにジペプチドも しくはトリペプチドにまで分解し,細胞内でエネ ルギー源とさせる重要な機能がある(ジンジバリ ス菌ではオリゴペプチドは細胞膜を通過できな い)という意味でも無視できない酵素であろう. DPPではAla−Ala−Xaa, Ala−Phe−Xaa, Gly− Phe−Xaaを分解するDPP−7はセリン酵素で分 子量は76kDaで, C末端側アミノ酸配列は黄色 ブドウ球菌のV8エンドペプチダーゼに類似し ている5).Lys−Ala−Xaa, Ala−Ala−Xaa, Val−Ala −XaaなどC末端側から2番目の位置にアラニン をもつジペプチドを分解するDPPは分子量が64 kDa, pl 5.7のセリン酵素である.これらの3ペ プチドに対する酵素活性の比(Vnax/K血)はそ れぞれ34.95,5.86,6.41であった.本酵素の基 質特異性は極めて限定的で上記の3つのペプチド 基質以外の加水分解は見られなかった23).Ala− Phe−Pro−Xaaのようなプロリントリペプチドを 分解するTPPがジンジバリス菌‘)で, P. nigres− cence(Fujimura未発表)で分離されており今 後ペプチダ…一ゼによるプロテアーゼの補助的では あろうが有意な酵素の機能が明らかにされる可能 性も高い. 2.ヘムタンパク質の利用 生体内での鉄源として最も単純にはヘモグロビ ン(Hb)のポルフイリン環の鉄原子の利用が考 えられる.このこどはジンジバリス菌などを培養 するとき鉄源を加えないと発育しないが(通常ヘ ミンすなわちプロ.トポルフィリンIX(PPD()と 鉄の化合物を5μg/mlほどの濃度で加える), Hb を添加することで増殖が見られることからも可能 性がある.歯周疾患病巣部は易出血傾向にあり, 日常生活上の物理的刺激によって出血が起こり易 いので歯周病原菌へのHbの供給は期待できる. しかし且bから鉄原子を取り出すには,溶血,タ ンパク部分の分解という段階を踏む必要がある. 溶血に関してはすでにジンジバリス菌のヘモリジ ン産生能が報告されており’2・27),菌体近傍での溶 血を通してのHbの供給は可能である.問題は Hbをそのまま菌体内に取り込むことは考えにく く,その前に分解されるー必要があろうと思われ る.しかもそれは菌体近傍というよりは菌体表層 部(エンベロープ)で行われなければならない. そのための第一段階としてHbをエンベロープに 固定する機構があろうと仮定し,エンベロープと 且bの結合の有無を調べてみると,たしかに菌体 そのものとも,また超音波破砕と100,000G遠心 で調製したエンベロープとも結合は起こることが 確認できた.この結合は低温(4℃)では起こら ず,70℃,15分加熱したエンベロープでも起こら ない.塩化ナトリウムをO’: 15 M∼0.5Mに加え ても阻害は見られないので結合は静電的なもので はない.定量的実験から1mgのエンベロー一プは 最大58μgのHbと結合でき,エンベロープとHb き5’° 』 2 ; 4・〇 三 き …a。 量 き :z。 ξ 旦 呈、。 曇 『 呈 o       唖:結合 pH 5・O       pH 6・O       pH 7.O       pH 8.O       pH 9.0 、t,ec,s.,PH、。.、b、、、i、g、and、rell、、se、。,、h。,,t。9i釦._。伽_輌 [コ・離    hatChed bar, bindin鳥  open bar;rebase 図2:P. gingivαlis ATCC 33277とヘモグロビンの結合と解離

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の結合における解離定数は1.7×10U]°Mであっ だ旬.またAmanoらによればこの結合は可逆的 で,ヘミン,Hb以外のヘムタンパク質,鉄運搬 タンパク質,ヘミンおよびプロトポルフィリンな どで大きな阻害を受けないのでリガンドとHbの 結合部位はヘム部分ではないと考えられ,菌体と Hbの結合の解離定数は1.0±0.9×10’6Mであっ だ1.結合にはpHの影響が強く,酸性側でよく 結合し中性以上ではほとんど結合しない.またエ ンベロープと結合したHbはアルカリ緩衝液中で 解離する(図2).本結合はエンベロープ中のタ ンパク質すなわちHb結合タンパク質(HbBP) に担われており,その分離精製と結合様式が明ら かにされた2°).それによるとHbBPはデタージェ ント(CHAPS)によりエンベロープから可溶化 され,イオン交換クロマトグラフィー,Hbア ガーロースを担体とするアフィニティクロマトグ ラフィー(pH 5.5で吸着し, p且9.0で解離させ る),等電点電気泳動で精製され,分子量は19 kDaで等電点は4.3であった.精製HbBPはドッ トプロット法でHbと結合することが証明され

た.このHbBPは鉄源となるHbを菌体表層に

固定させる役割がありその意義は大きい.菌体に 結合した且bは次に断片に分解される必要があ る.前述のようにジンジバリス菌はタンパク分解 能が強いが,ここで問題にしたいのは,RGP, KGPのロケーションで,エンベロープにも存在 しているかどうかである.報告者によって分布量 の多少に違いはあるが,両プロテアーゼともにエ ンベロープ画分に菌体外,細胞質内と共に有意量 存在している18・es).またRGPとKGPにはHbに 対する分解能がある2L36,1ことも示されているので Hbの菌体表層での分解は期待できる.しかし断 片化された品のうちどのペプチドが本当に鉄源 となっているのかは未解決である.  HbBPの遺伝子解析もなされ次のような考察 がされている.ジンジバリス菌の染色体上には

RGPをコードする遺伝子rgpA, rgρBとKGP

をコードするhgpが存在する. rgpA遺伝子はN 末端のプロペプチド,プロテアーゼドメインとC 末端アドヘジン領域からなっている.アドヘジン はさらにHGP(highmolecular−mass gingipain complex)44, HGP 15, HGP 17, HGP 27の各ド メインから構成されている.rgpBにはC末端ア ドヘジンの大部分が認められない.kgpはrgpA とよく似た構造をしており,特にC末端アドヘ

ジン部分は共通である.HbBPのN末端域の18

個のアミノ酸配列は4例のRGP7’16’31’42),2例の KGP’39)および1例の血球凝集素1’6)のHGP 15に よってコードされるタンパクのそれと同一で,1 例のRGpi)とは一ケ所異なるだけである.このこ とから,このタンパク質はrgpA, kgp, hαgA(血 球凝集素遺伝子)の内部領域のHGP 15によって コードされていると考えられる38).  これとは別の株から精製したジンジバリス菌の

Hb結合タンパク質は分子量がKGPと同じ51

kDaで,かつ両タンパクのN末端側の23アミノ 酸配列は同一であったことから,Hb結合タンパ

ク質の実体はKGPであり,舳との結合はKGP

分子内のプロテアーゼ活性サイトとは別のドメイ ンによって成立しているという見解もある32).  ジンジバリス菌以外の歯周病原菌では,且仇 2◎  2−1  2−2  2−3  2−4  2−5

A ● ● ● ●

B

C

D

E

[iMIMMUt M

国:国〕ヨ:〔〔〔〔口

図3:HbBPとヘムタンパク質と鉄運搬タンパク   質の結合   倍数稀釈したHbBPサンプルをスポットし   たニトロセルロース膜をスキムミルクでブ    ロックし,各タンパク質とカップリングした   パーオキシダーゼと反応後過酸化水素水を加    え4一メトキシー1一ナフトールで発色させ   た.    A:ヘモグロビン  B:ミオグロビン    C:チトクロームc D:カタラーゼ    E:ホロトランスフェリン

(5)

松本歯学 28(2)2002 65 0.6  0.4 i I § <  02

1

1 ‘ ∫ 1 l  l 撃 へ㌔  σ @’ @’ @’ @’ A,

八11

’ 、、 、\  ノ 、   ’   ’ ’ O.6 0.4 0.2 0      0 40    50    60    70    80    90   100 Fraction number

1

§

8

図4:P. gingivαlis ATCC 33277のエンベローププ    ロテアーゼで処理したミオグロビンのセファ    クリルS−300でのゲル濾過   矢印は未処理ミオグロビンの溶出位置.ヒス    トグラムは各フラクションのP. gingivαlis   ATCC 33277の発育促進の度合いを示す. termediαでHbとの結合能および鉄源としての 利用が観察されている35).LiuらはP. intermediα

の膜画分のCHAPS抽出物のアフイニティクロ

マトグラフィーで且bBPを分離しその分子量を ウェスタンブロット法で約100kDaと算定してい る.ジンジバリス菌の場合と同様結合は低pHで 強く高pHで弱い37).  HbBPはHb以外のヘムタンパク質とも結合し 特にミオグロビン(Mb)とはHbの50%程結合 できる(図3).Hbはαサブユニット2個とβ サブユニット2個からなっている(2α2β)が,

MbはHbのサブユニット1本だけでできてい

る.したがって構造の複雑なHbよりもより単純 なMbを用いた方が今後の実験で種々有利な点も 多かろうと思われる.そこでMbをジンジバリス 菌のエンベロープ由来のプロテアーゼ(エンベ

ロープをCHAPSで可溶化した粗抽出標品)で

処理し,分解産物をゲル濾過し各フラクションの 一定量を鉄欠乏培地に無菌的に加えジンジバリス 菌の発育をサポートする画分があるかどうかを調 べた.結果は(図4)に示すように増殖サポート 活性域は3つあり,1つは未分解でインタクトあ るいはそれに近いMbの部分にある.最後出の ピークはかなり小分子のペプチド域と考えられ る.この部分の物質の同定はこれからの課題であ るが,プロテアーゼは鉄獲得に少なくともMbを 鉄源するとき実質的な役割をしていることが示唆 されている22)、 3.ヘミンの利用  ジンジバリス菌の培養に際しては鉄源として普 通にはヘミンを加える.PPD(とFe(III)の混合 物を加えても発育できるが,PPIX, Fe(II), Fe (III)を単独で加えても発育はできない.ヘミン の代わりにHbやMbを加えても有効であること はすでに述べたが,与えられたヘムタンパク質は 菌によって分解されヘムを誘導するものと思われ る.ただしヘム分子内の鉄はFe(II)であるが, タンパク部分を切り離されると酸化防止効果がな くなるのでヘミンの鉄同様Fe(III)に変わる. ヘミンを与えるということはヘムタンパク質から ヘムの取り出し過程を飛ばして直接鉄源物質を利 用させることに他ならない.歯肉溝液中のヘミン の濃度がそれほど高いとは考えにくいが,はたし て宿主生体内にジンジバリス菌に必要な量のヘミ ンが存在するのかという基本的な問題は未解決の ようである.  ヘミン利用に関しても最初の段階として結合が 必要と考えられ,ヘミン結合タンパク質は菌体表 層部に認められ分子サイズは30kDa∼32 kDa で,菌体による鉄取り込みの前段階としてヘムか らの鉄キレートの過程があると推測されてい る13’3°’45).しかしこのタンパク質が分離精製され たわけでもないので結合様式などのデータは得ら れていない.ヘミン利用についてのレポートは多 い割には詳しいことは分かっていない. 4.トランスフェリン(TDの利用  Tfは鉄の吸着,運搬上重要な役割をする血漿 中の分子量約76kDaのタンパク質で,1分子に

2つのFe(III)が結合する.このTfを5pMに

加えた培地とヘミンを7. 7 pM(5 pg/m1に相当) に加えた培地での3株のジンジバリス菌の増殖を 比較するとTf加培地ではヘミン加培地の約50% ∼70%の増殖が認められ,Tfを10μMにすれば ヘミン7.7μM加培地での増殖と同じレベルに達 するので,Tfが鉄源として利用されることが証 明された.このffの効果は鉄キレート剤のジピ リジルによって失われる99).Tfからの鉄獲得機構

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の可能性の一つとしてやはり菌のタンパク分解系 によってTfの鉄結合サイトが破壊され遊離した 鉄原子が利用されるという過程が考えられる.菌 体とTfとの結合の解離定数は1.37±0.16μMで 細胞あたり1.13±0.26 x IO5個のTfレセプターが あり,菌体を80℃で1時間あるいはプロテイナー ゼKで処理すると結合能が失われる46).Tfを唯 一の鉄源としたときその分解と増殖に対するプロ テアーゼの役割を変異株を用いて調べた詳細な論 文が出ている.まずジンジバリス菌にはドットプ

ロット法で調べるとTfとの結合能はない.

RGP, KGPいずれかの欠損株とRGP, KGP両 方の欠損株を用いての実験から,ffの分解には

KGPの方がRGPより重要な働きがあることが

分かった.またTf存在下でKGP欠損株は増殖

できずRGP欠損株は発育可能である.しかしそ の世代時間は野生型より長く,最終的な発育も野

生型の約半分しかない(660nmでのODで測

定)のでRGPもTfからの鉄獲得機構に関与し

ているらしいことが分かる.(表1)このことは 培地にTLCK(RGP, KGP両方の阻害剤),ロ イペプチン(RGPの阻害剤),カテプシンBイ ンヒビター(RGPの阻害剤)を培地に加えて培 養するといずれの阻害剤使用のものでも増殉ま認 められないことからも裏付けられる8).  ジンジバリス菌と近縁のP. nigrescensでもTf を単独の鉄源として利用することができる.その 結合は加熱あるいはプロテアーゼ処理によって失 われる.Tf結合タンパク質も分離されていて分 子量は37kDaであるという.精製にはTfアガー ロースでのアフィニティクロマトグラフィーを行. うが,この場合は且bBPとは逆にアルカリ(pH 8.0)で吸着させ酸性緩衝液(p且3.2)で溶出さ せるのが興味深い41).この論文の著者たちも述べ ているように,Tfを鉄源とするにはその分解過 程が必要であろうが,P. nigrescensには少なく もRGP, KGPといったプロテアーゼはないの で,未知の酵素の存在が有力で新しい課題が提起 されている. 5.ラクトフェリン(Lf)の利用  Lfも鉄結合タンパクで唾液や母乳中に存在 し,ジンジバリス菌,且励ermε直α, P. nigres−

censによって分解されることが分かってい

る2・14・15・29).とくに」P.intermediαとP. nigrescens のLfの結合はヘミンによって阻害されるが, P. gingivalisでは促進される2).最近のレポートで ジンジバリス菌の培養でHbを単独の鉄源とし, Lfを加えると発育が阻害される(ジンジバリス 菌はLfを鉄源として利用することはできない) という観察から非常に示唆に富む報告が出され た.ジンジバリス菌のLfのレセプターはHbBP

であり,その結合はHbと且bBPの場合と異な

りpH依存性がない. HbBPとの親和性はLfの

方がHbBPより強くHbBP−Hb結合体にLfを導

入するとHbは遊離する.この遊離はジンジバリ ス菌のシステインプロテアーゼ(RGP, KGP) ?ンヒビターによって阻害される.さらにLfは 耳bを単独の鉄源とした培地でのジンジバリス菌 の発育を抑制し静菌作用がある.この作用はLf 分子内の25アミノ酸からなるラクトフェリ,シンB によっても起こすことができるが,そのメカニズ

ムは次のように説明されている.HbBPのN末

端側の27アミノ酸組成を見るとアスパラギン酸残 基とグルタミン酸残基で8つ含まれ,塩基性アミ ノ酸はヒスチジンが1つのみ,残りは中性アミノ 表1:P. gingivαlis変異株のトランスフェリン分解と利用 トランズフェリン         無添加   分解能 増 殖* P.gingivalis変異株 ヘミン  トランスフェリン (1μ9tml) (1 mg/・nl) 野生株  (RGP+, KGP+) KDP 112(RGP−, KGP+) KDP 129(RGP+, KGP−) KDP 128(RGP−, KGP−) 十 十 ± 十 十 十 十 十 十 *メナジオン(1 pg/ml)を加えたマイコプラズマ用培地にヘミンまたはトランスフェリンを加  えたときの増殖の有無

(7)

松本歯学 28(2)2002 67 酸となっており,電気的にマイナスにチャージし ている.この部分がLfのプラスにチャージした 部位と電気的に結合し,HbBPとエンベロープ との非コバレント結合を緩め細胞表層から遊離さ

せるというものである.したがって且bBPを

失った菌はHbを単独の鉄源として与えられたと きLf存在下では発育できない“).  歯周病には成人性と若年性のものがあり,前者 の主要病原菌はジンジバリス菌と考えられ後者は 通性嫌気性グラム陰性桿菌であるActinobαcillus αctinomγcetemcomitαnsといわれる.本菌にお いてもLfと酸性側では結合するが,中性以上で はほとんどしないというpH依存性の結合につい ての報告がある.その結合は塩化ナトリウムによ る阻害がほとんどなく,4M尿素で約50%の阻害 があるので疎水結合の傾向もある.カオトロピッ ク試薬(チオシアニンカリウム)で強い阻害が見 られる.外膜にLf結合タンパク質があってウェ スタンブロットで分子量を調べると,29kDaと 16.5kDaであるという3).

おわり に

 以上歯周病原菌,特にジンジバリス菌のタンパ ク分解酵素,ペプチダーゼおよび鉄獲得機構につ いてのトピックを紹介した.これらのトピックは それぞれ独立して研究が進んで来たのであって, むろん相互に関連し合って来たわけではない.し かし歯周病原菌が鉄を獲得するためにはタンパク 分解系が働かなければ不可能であろうことはまず 間違いない、’したがってこれらの間の接点を探り つつ解明のための実験をすすめることは両者の研 究の進展にも役立つであろう.ほとんどの人は歯 周病を避けて通れない中,その予防と治療にこれ らの知見がヒントになることも考えられので今後 ともこの分野の研究の進展が望まれる.  ‘‘The great questions of the ti皿e are not de− cided by speeches and m司磁ty decisions.._, but by iron and blood.,,       (O.von Bis皿arck,1862) 文 献 1)Aduse−Opoku J, Muir J, Slaney J M, Rangara−  jan M and Curtis M A(1995)Characterization,  genetic analysis, and expression of a protease   antigen(PrpR I)of PorρゐOrromonαs gingivαlis.  Infect Ilnm1ユn 63:4744−54. 2)Aguilera O, Andres M T, Heath J, Fierro J F   and Douglas C W I(1998)Evaluation ofthe an−  timicrobial ef壬bct of lactoferrin on Porphy−  romonαs gingivαlis,Prevotellαinterme(liα and  Prevotellα nigre8cens.FEMS Immunol Med Mi−   crobio121:29−36. 3)Alugupalli KR, Kalfas S, Edwardsson S and  Naidu A S(1995)Lactoferrin interaction with  ActinobαcillusαctinomPtcetemcomitans.Oral  Microbiol Immuno110:35−41. 4)Amano A, Kuboniwa M, Kataoka K, Tazaki K,   Inoshita E, Nagata H, Tamagawa H and Shi−   zukuishi S (1995)Binding of hemoglobin by  Porρhyromonαs gingiひαlis.FEMS Microbiol   I」ett 134:63−7. 5)Banbula A, Yen J,01eksy A, Mak P, Bugno M,   Travis J and Potempa J(2001)Porphyromonαs  gingivαlis DPP−7 represents a novel type of   dipeptidyl peptidase. J Biol Chem 276:6299−   305. 6)Banbula A, Yen J, Oleksy A, Silberrings J, Du−   bin A, Nelson D, Travis J and Potelnpa J   (1999)Prolyl tripeptidyl peptidase丘om Poグ  phyromonαs gingivαlis.Anovel enzyme with   possible pathological implication f()r the devel−   opment of periodontiもis. J Biol Chem 274:   9246−52. 7)Barkocy−Gallagher G A, Han N, Patti J M,   Whitlock J, Progulske−Fox A and l.antz M S   (1996) Analysis of the prtP gene encoding por−   phypain, a cysteine proteinase of PoηPゐy−   romonαs gingivαlis.JBacteriol l78:2734−41. 8)Bramanti T E and Holt, S C(1990)Iron−regu−   1ated outer membrane proteins in the periodon−   topathic bacterium,、Bacteroi(ies gingivαlis.Bio−   chem Biophys Res Comm 166:1146−54. 9)Bramanti T E aIld Holt S C(1991)Roles of por−   phyrins and host transport proteins in regula−   tion of…rr, oWth of Porphyromonαs.gingivαlis W   50.JBac七erio1173:7330−9. 10)Bronchu V, Grenier D, Nakayama K and May−   rand D(2001)Acquisition of iron丘om human   transfenin by PorワhyromonαS gingivαlis :a   role fbr Arg−and Lys−gingipaill activities. Oral   Microbiol Immuno116:79−87 11)Bullen J J (1978)The significa皿ce of iron in in−   fection. Rev lnfect Dis 3:1127−38.. 12)Chu L, Bramanti T E, Ebersole J L, Holt S C   (1991)Hemolytic activity in the periodontopa−   thogen Porphyromonαs gingivαlis:kinetics of

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参照

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