ISSN 0919 ̶4029 第2巻第18号 2019年3月1日 編 集 ・ 発 行 高崎健康福祉大学図書館 http://www.takasaki-u.ac.jp/library/ 〒370-0033 高崎市中大類町37-1 TEL.(027)352-1290 ㈹ FAX.(027)353-2055
高崎健康福祉大学図書館報
[ 巻頭随筆 ]
モラトリアムというぜいたく
看護学科長
池 田 優 子
モラトリアムとはE.H.エリクソンが提唱した概念で
ある。大辞林では、「知的・肉体的には一人前に達し
ていながら、なお社会人としての義務と責任の遂行を
猶予されている期間」と記述されている。エリクソン
は、青年期の自我同一性の拡散の中で、自己のアイデ
ンティティの確立という発達課題をクリアし、「自分
自身を見つける」ために必要な猶予期間として「モラ
トリアム」を位置付けた。
しかし現在の日本では、社会に出て一人前になるこ
とを躊躇する、遅延するという意味でモラトリアムに
ついて否定的に捉えられている。事実私も、将来のキャ
リアの道筋が描けない学生に対して、「どうしたもの
か」とつい思いがちになる。しかし改めて考えると、
学生たちが、「この道でいいのだろうか」と気持ちが
揺らぎ、「自分は本当は何がしたいのか」と悩むのは、
しごく自然なことに思える。未来が不確実な時代であ
るがゆえに、親たちがよかれと思って子供のために人
生設計のレールを敷いてあげようとする。自分で判断
できる材料がない子供にとって、親の意見に頼らざる
を得ず、ようやく大学に入り自分の意思に気づくこと
もあるだろう。
実際、私も親の言う通り勧められた大学を受験し、
いくつも落ちた中で受かった大学に不本意な思いを抱
きながら入学した。しかし、歴史学の授業を受け、「大
学で学ぶというのはこういうことなのか」と衝撃を受
けた。中国現代史では中国文化革命の実際をライブ感
覚で伝えられ、ドイツ現代史では、ナチスと戦い続け
たローザ・ルクセンブルグという女性活動家の生きて
きた歴史の講義を受け、歴史は過去のものではなく、
今を生きる自分たちがどう生きたらいいかを問いかけ
るものだと、わくわくしながら聴講した。当初、親の
勧める英文科に進み通訳にでもなろうと漠然と考えて
いたが、歴史を学びたいと史学科を選択し、ドイツ現
代史を専攻することになった。
日々の大学生活は、リベラルアーツを標榜する大学
であったため、教養を積むことが重視されたこと、更
に今の時代と異なり、出欠を問われることもなかった
ため、しんと静まりきった図書館でずっと本を読み続
けた。様々なジャンルの本の数々は、私を未知の世界
に誘ってくれた。専攻に関してはエーリッヒ・フロム
の『自由からの逃走』を読み、ヒトラーが権力を握っ
ていったのは、彼の誤謬のみならず、人々が「自由か
ら逃走」し、自ら強いものに身を委ねていったという
事実に、人は自由への希求と同時に、自由から逃走も
するのだと深く考えさせられた。またブームであった
サルトルの本をよく理解できないまま読み進め、それ
でも「関与」という言葉に納得し、彼とボーボワール
の恋愛観や生き方に憧れた。そして、世の中のこと、
どう生きるかについて友と語り合い、議論し合う日々
を送った。今思うとモラトリアムを満喫できる、ゆっ
たりとした時間が流れる環境があったからこそ、世界
を見る目を広げ、自分探しの旅ができたといえる。
20代の頃は、すべてが自分自身のため、自分が満た
され充実できるかを一生懸命考えてきた。しかし、32
歳で看護の世界に入り、誰かの役に立つために自分の
力を注ぎたいと思ったし、それにより自分も満たされ
るということを知った。何より生老病死という人生の
局面において、人々を身近で支えつつ、その人生に関
与し、そこから学ばせてもらった多くのものが、今の
私を支える基盤となっている。
いろいろ回り道をしたが、そのすべてが自分にとっ
て糧になり、自分を大きく成長させてくれたと思って
いる。だから、今学生たちが進路に悩み、相談に来る
と「人生看護だけがすべてじゃない。他の道もあるよ」
と伝えている。学生達は早くに看護を目指している場
合が多く、資格取得が絶対条件の中での学生生活は、
過密でゆっくり考える暇もないのが現状である。しか
も決めたレールから外れるという選択肢は、怖さを伴
う。追い詰められた中でリセットして考えてみたらと
言うと、肩の荷が下りたようにほっとする場合もある。
もしかしたら学生たちにとって「これでいいのだろ
うか」と悩む時が、一番自分と向き合うチャンスなの
かもしれない。今や、「いろいろ周りを見て、どんな世
界があるのか見てみる」というモラトリアムの期間は、
ぜいたくなものになってしまった。多くの学生がモラ
トリアムの期間を満喫できる環境がないことは残念で
もあり、成果を求め結論を急がせる時代を腹立たしく
思う。それでも忙しい中で自分のための時間を確保し、
自分が何になりたいのか、本当にめざすものは何かを
考える、逞しさを持った学生達にエールを送りたい。
参考資料
1)松村明、三省堂編集所 編 (2006). 『大辞林』 三省堂 2)エーリッヒ・フロム著、 日高六郎訳 (1951). 『自由からの逃走』 東京創 元社mmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmm mm
私の薦める1冊の本
hhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh『お嬢さまことば速修講座 改訂版』
加藤ゑみ子 著 ディスカバー・トゥエンティワン 2017
健康福祉学部医療情報学科講師 太 田 克 子 「貴方、そんな所へ寝ると 風邪ひいて よ。」夏目漱石の『門』の中で、縁側の日当 たりの良さそうな所で横になっている宗助 が、細君(奥さんのこと)にこんなふうに心 配されます。細君はお嬢さまことばを使っています。少し古い ですが、マンガの『エースをねらえ』(山本鈴美香著)のお蝶夫 人やコバルト文庫の『マリア様がみてる』(今野緒雪著)などで お嬢さまことばを耳にしたり、目にしたりすることがあったかと 思います。 そこで『お嬢さまことば速修講座』加藤ゑみ子著(ディスカ ヴァー・トウェンティワン)を紹介します。お嬢さまはとにかく、 ゆっくりお喋りになります。「ごめんあそばせ。よろしくって? こちらの花柄のスカーフを見せていただけますこと?」お嬢さ まは沈黙とほほえみの術を使います。お嬢さまは省略や短縮を なさいません。間違っても「コンビニ」、「スマホ」などとは言 いません。読むだけでお嬢さまことばになってしまう困った本 なのです。巻末に「お嬢さまことば小辞典」や「卒業考査ミニ テスト」があります。 もちろん、話す内容も大切。自分の内なる言葉・考えを整理 し言葉にしていく過程を指南してくれる『言葉にできるは武器 になる。』梅田悟司著(日本経済新聞出版社)も合わせてご覧 ください。「自分との対話」で言葉が鍛えられます。よろしくって?『夏への扉』
ロバート・A・ハインライン 著 福島正実 訳 早川書房 2010
健康福祉学部社会福祉学科准教授 戸 澤 由美恵 このジュブナイル(死語?)の傑作は、主 人公の飼い猫ピートについての、こんな素敵 なエピソードから始まります。「その冬が来 るとピートは、(中略)人間用のドアをあけ てみせろと、ぼくにうるさくまとわりつく。彼は、その人間用の ドアの、少なくともどれかひとつが、夏に通じているという固 い信念を持っていたのである。」(p.8-9) わたしはこの素敵なエピソードだけで惹きこまれ、一気に読 み終え、爽やかな気持ちになりました。あえてストーリーにつ いては触れませんが、これは、いわゆるタイム・トラベルもの(そ う、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」みたいな)で、ハート・ ウォーミングで、ロマンチックで、そして、ハッピー・エンドな 物語です。これだけであなたも読んでみたくなりませんか? そういえば、あの山下達郎もこの物語をテーマに(隠れた?) 名曲を作っているんですよ。 最初に「ジュブナイル」と書いたのには理由があります。若 い頃に読んで感銘をうけた本は、たとえほとんどその内容を忘 れてしまったとしても、心のどこかに住処をみつけているもの です。みなさんがこれから社会にでて、辛いことや困ったこと や悲しいことがあった時に、ふと「そういえば、ピートは…」と、 この本のことを思いだすかもしれない、そして、「夏」への扉を みつけるための一歩を踏み出すかもしれない、そう私は思うの です。 先ほどの引用はこう続きます。 「だが、彼は、どんなにこれをくりかえそうと、夏への扉を探す のを、決して諦めようとはしなかった。」 hhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh『やり抜く力』
アンジェラ・ダックワース 著 神崎朗子 訳 ダイヤモンド社 2016
健康福祉学部健康栄養学科助手 町 田 大 輔 人生の成功を決めるのは何か。非凡な才 能、明晰な頭脳、類い稀な強運。様々な要 素があげられます。その一つが「GRIT(や り抜く力)」であり、それは才能よりも重要 だと著者は説きます。 本書は、GRITに関する知見を三部構成で紹介しています。 第一部では、GRITとは何か なぜそれが大事なのか を、豊富 なデータを交えて説明します。GRITは「情熱」と「粘り強さ」 で構成されます。「情熱」は、じっくりと長期間にわたり取り組 む姿勢です。また、「才能×努力=スキル」「スキル×努力=達 成」であるとし、何かを達成するには、2度の努力が必要だと 言います。努力は「粘り強さ」の指標となります。第二部では、 GRITを内側から伸ばす方法を示します。GRITを育むには、興 味・練習・目的・希望(楽観)の4つが重要であり、これらを 伸ばす要因を紹介します。さらに第三部では、GRITを外側か ら伸ばすための「賢明な子育て」の方法や、どのような環境に 身を置くべきかを提示します。全体を通して具体例を交えなが ら噛み砕いて書かれているので、気楽に読めてかつ実践的な内 容です。 情熱や努力の大切さを、根拠をもって教えてくれる良書。「ど うせ私にはできないから…」と、何かをあきらめそうになって いる方にお薦めの一冊です。ディスカヴァー・トゥエンティワン
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『自由からの逃走』
エーリッヒ・フロム 著 日高六郎 訳 小倉敏夫 カバーデザイン
現代社会科学叢書 1 東京創元社 1951
人間発達学部子ども教育学科教授栗 原 幸 正
現代日本を生きる人々はまさに「自由」を 謳歌しているように見える。自動車等の工 業製品を気ままに使い、SNS等を駆使して 自分に必要な情報を選択できる。そして、どこへでもいく「自 由」を獲得しているのである。ただ気がかりなのは、この現代 日本の「自由」を獲得した世代が少なくなり、「自由」を生ま れながら享受している人々により社会が形成されている現実で ある。 E・フロムは、ドイツ生まれのユダヤ人であり、社会学者・ 精神分析学者である。彼は、ヒトラーに代表されるナチズムが ドイツの人々の心を巧みに操り台頭し、その国の首相として国 を覆い、最終的にドイツを破局の道へといかにして導いたかを、 人々の内面から考察している。本書は、当時ドイツの「自由」 を享受した人々が、「自由」の重さに耐え切れずに、「国家的権 威主義」に熱狂し、一方社会的弱者を迫害していく内的メカニ ズムが、まさに「自由からの逃走」そのものであり、多くの人々 の命を奪う大きな要因であったと世に問うたのである。 「自由」を享受し、さらに希求し続ける現代を生きる人々が、 「自由」を本当に自分のためのものにするためにどうするのか。 今、読むべき、至高の1冊である。『チェンジング・フォー・グッド』
ジェイムス・オー・プロチャスカほか 著 中村正和ほか 訳 法研 2005
保健医療学部看護学科教授 小笠原 映 子 「わかっちゃいるけどやめられない」と いう生活習慣はありませんか。喫煙や飲酒、 食べ過ぎなどの生活習慣はストレスとの関 連があるため、「定期健診で問題がなければ・・・」と放置 してしまいがちです。本書は、喫煙などの望ましくない行動 を改善するための理論である「行動変容ステージモデル」を 一般向けにわかりやすく説明しています。「行動変容ステー ジモデル」は、現在様々な書籍で紹介されていますが、本書 では理論を提唱したプロチャスカ博士が理論構築までの道の りも記述しています。父親をアルコール依存症で大学1年の 時に亡くしたことがきっかけとなり心理学を学んだこと、一 般の人が心理学から得られる知見を利用できない現状につい ての問題提起など、一貫して「父のような人が自ら行動を変 えていくために役立つ方法は何か」という問いを持ち続け、 研究に取り組んでいたことが伝わります。また、この理論は 学問的な統計や複雑な解析に基づくものではなく、いわゆる 「普通の人」たちが、どうしようもない習慣から逃れるため に努力した結果、得られた共通の経験を注意深く調べ、構築 された理論であることも大変興味深く感じました。事例など も具体的で「人間くささ」が伝わってくる一冊です。 hhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh『統計学が最強の学問である』
西内啓 著 ダイヤモンド社 2013
保健医療学部理学療法学科教授 解 良 武 士 なんとも挑戦的なタイトルですが、なぜ 最強なのか皆目想像がつかないでしょう。 多くの学生にとって統計学は学問でしかな く、とても身近には感じられないと思いま す。しかしこの書籍は日常生活で誰もが経験する事象や、最 近話題のビックデータなど、小さなことからホットなことま で統計学に関わる話題について、数式を使わずわかりやすく 説明しています。例えば、だれもが平等だと思っていたあみ だくじは実はそうではなかったとか、サンプル調査では1万 人と2万人規模では、その標準誤差はわずか0.1%にしかな らない(したがって調査によってはサンプルが大きくてもお 金ばかりかかるだけで大きな意義がない)、など基本的であ るが、知っておいたら科学や経済が楽しくなるような事象が 満載です。統計学の入門としてもよいのですが、どちらかと いうと統計学に興味が出てきて勉強を始めたかたやすでに研 究で使っているかたにおすすめです。私もこの書籍からヒン トを得て実際の研究に生かした事例もありました。そのよう なインスピレーションを引き起こすのだから統計学はやはり 最強なのかもしれません。mmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmm mmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmm
私の薦める1冊の本
期間中は主に、開館前準備・カウンター業務・文献複写・書架整理等を体験していただきました。図書館の仕事 は事務作業がメインに見られがちですが、利用者のみなさんが思っているより、色々と動いて作業することがあり ます。時にはかなりの重労働をすることも。 今回職場体験にいらした生徒さんたちも、自分で抱いていたイメージと違った部分の作業をすることになり、大 変だと思いながらも責任感や、やりがいを感じられたようです。 生徒さんからは「通勤は少し大変だったけれど、まだまだやりたいと思った」、「図書委員になったら今回学んだ ことを教えてあげられるようになりたい」といった感想が寄せられました。 今回の体験を生かし、今後の学校生活を頑張っていただきたいと思います。 日 程:平成30年6月11日(月)〜 15日(金) 人 数:高崎市立倉賀野中学校2年生2名 活動時間:8:45 〜 15:00高崎市やるベンチャーウィーク(職場体験学習)実施報告
『キケン』
有川浩 著 角川文庫 KADOKAWA 2016
薬学部薬学科助手 吉 田 一 貴 本書はとある工学部の部活、機械制御 研究部、略して「機研」を舞台としている。 機研は「キケン=危険」として確かな実 力を持っているが、敵に回すと厄介な部 活として描かれている。男子率99%の工学部で繰り広げられ る数々の事件と男子特有のバカ騒ぎ。あぁ、これぞ青春と感 じさせてくれる一冊だ。そんな青春が過ぎ去ってしまい、社 会人になった主人公が思い出話として回想する厳しくも楽し かった「機研」の日々。卒業して疎遠になっていく仲間たち。 寂しさを感じたくないために行動できない自分。過ぎ去って しまったからこそ共感できる心の機微に感情をコントロール できなくなってしまう。 あの頃はレポートを、実習を、試験をこなした後の解放感 や打ち上げの楽しさばかりに目が行っていた。しかし、仲間 とともに立ち向かったという事こそが輝かしい思い出として 残っているのだ。「学生の頃はね・・・」と話せる思い出話 を皆様はお持ちだろうか?読者一人一人がそれぞれの「機研 =青春」を持っていると思う。本書を読んで昔を思い出して みてはいかがだろうか? 本書は著者の他作品に比べて糖分少なめなので甘いもの (恋愛物)が苦手でも読める作品となっている。 1 日のスケジュール 8:45 ・カウンター等拭き掃除 ・検索機 PC 起動 ・各所の返却日を変更◆開館準備 ・返却日しおり準備 ・ゲートカウントチェック ・新聞の整理 9:00 ◆開館 ・返却ポスト確認 ・開館プレート取り換え ・カウンター業務 ・図書の装備 ・ILL( 文献複写、発送作業等 ) ・雑誌受入作業 ・書架整理 11:30 昼 食 12:30 ・カウンター業務 ・相互貸借 ( 資料準備、発送準備等 ) ・図書ラベル 貼り替え ・製本装備 ( 蔵書印押印、バーコードラベル貼り等 ) 【本館】・ 本館、薬学部図書資料室への巡回 ・郵便物整理 ・書架整理 ・掲示 物作成 15:00 ◆帰宅学術データベース(PubMedなど)での検索結果に表示されるリンクからご利用いただけますが、
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10 258 Science
11 252 The Journal of Immunology 12 214 Molecular Cell
13 197 Blood
14 195 Cancer Research 15 163 Cell Reports
16 156 Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 17 148 Nature Communications*
18 129 Nature Medicine 19 117 Food Chemistry*
20 115 Journal of Medicinal Chemistry
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