情報モラルの育成を目指したメディア・リテラシー教育の実践的研究 :―小学校における授業プランの提案―
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(2) 目 次. 第1章研究の目的と研究の方法の概要 2 研究の方法の概要. 19白. 1 研究の所在と目的. 第ll章 情報モラルの育成. 2 コミュニケーション能力. 3 判断力. 4 規範意識. 1 メディア・リテラシー教育とは. 2 対象校の実態 3 授業実践「よりよい情報発信を考えよう」. 4 対象児童への担任教諭の取り組み 5 授業実践「発信しよう修学旅行」. 6 授業実践の考察 第N章 授業実践の省察に基づいた授業プラン. 1 授業実践の考察からの改善点. 2 児童の発達段階 3 コミュニケーション能力を高める学習. 4 授業プランの提案 5 授業プランの可能性. ∩▲ ◎4 8漏 ー﹁ ユD 0門 乙0 55 3 ﹁9D 1∠8 4 11 臼∩ 31 46. 第皿章 情報モラルの育成を目指したメディア・リテラシー教育の実践. 47 ∩1 コー 1 . 1 情報モラルの育成について. 第V章 研究の成果とまとめ. ハ06. 2 研究の課題. にU[り. 1 研究の成果. おわりに. ・・… @ 57. 引用・参考文献. ・・… @ 58. 附記資料.
(3) 第1章研究の目的と方法 1 研究の所在と目的 平成元年3月告示の学習指導要領により,情報教育は,「啓蒙と開発と思考の時代から, 本格的実施の時代」(文部省,1991)となった。それから,20年あまりで情報通信技術は急. 速に進化し,同時に情報教育も大きく発展し,変化し続けている。平成20年3H告示の学 習指導要領に新たに情報モラルの指導の必要性が盛り込まれ,情報教育は一つの節目を迎 えた。. これまでの学校教育の中では,ディジタルディバイド(Digital Divide:情報格差)を 防ぐため,「高度情報社会を生きる児童生徒に必要な資質(情報活用能力)」を養うための 情報教育が中心に今われっつあった。. そのような情報教育が行われはじめたが,情報通信技術の進展は目覚ましく,平成15 年6月の佐世保,大久保小学校女児殺害事件や平成15年11月の奈良,富雄北小学校女児 誘拐殺害事件などを初め,児童・生徒に関わる情報通信機器の使用が要因となった事件が 起きるようになった。これらの事件をきっかけに今まで以上に多くの人が,情報モラル教 育の必要性を訴えるようになった。. その結果,教育現場では,様々な「情報モラル」を育成するための実践が行われている ようになったが,その多くはサイバー犯罪などから自己防衛するための知識伝達的な指導. が中心であった。これらの実践は,自己防衛のためには有効であったが,情報通信技術の 進歩に伴いさまざま技術が工夫,改善される中,同様な手法では効果が期待できないもの が多くなってきている。. そこで,知識伝達的な情報モラルの育成法ではなく,知識・技能を学びながら自然に「情 報モラル」を身につけさせるような指導方法が工夫できないかと考えた。 そのために,「情報モラル」の概念について検討し,「情報モラル」に必要とされる資質 を①「コミュニケーション能力」,②「判断力」,③「規範意識」の3つと定め,それらの 資質を身につけることを「情報モラルの育成」と定義した。 それらを踏まえた上で,「情報モラルの育成」を目指すための指導の取り組み方を模索し,. 文献や先行研究を精査する中で,バッキンガム(Buckingham. D)の提案する「メディア・ リテラシー教育(Media Education)」(Buckingham。 D,2003)が効果的であると考えた。. なぜなら,バッキンガムの提唱する「メディア・リテラシー教育」は,もともと子ども が持っている「メディア」(双方向化の送受信が可能なもの:第皿章 第1節で詳しく説明). の知識に,教師が教育的働きをすることで,メディアについて批判的(Critica1)な能力 と創造的(Creative)な能力の両方を発達させるものであり,それにより,メディアを使 用したよりよい情報の双方向化が可能となる。. そして,現代の高度情報社会では,情報を送受信する媒体として,メディアはその多く. 1.
(4) を占める。児童は,メディアとの接触が多く,日常的にメディアを活用し,メディアの使 用法などの知識がある。身近なものを教材にすることは,子どもが興味関心を持ちやすく, 既存の知識を交流することが容易で,互いに学習を深めやすい。. このことから,筆者の考える「情報モラルの育成」を実践するのにバッキンガムの提唱 する「メディア・リテラシー教育」の指導理論を導入することが最適であると考えた。 そこで,「メディア・リテラシー教育」を実践し,授業の分析を通じて検討することとし. た。さらに,その検討を踏まえ,効果的な「情報モラルの育成」を目指した授業プランを 提案したい。. 2 研究の方法の概要 本研究における研究の方法を要約すると以下のとおりである。. ① 「情報モラルの育成」と「メディア・リテラシー教育」についての文献や先行研究. による理論的な考察 ② 「メディア・リテラシー教育」の授業実践による実証的な研究. ③授業モデルの提案は,②の実証的な研究の分析・考察を踏まえて提案する (1)メディア・リテラシー教育の授業実践(上記②). a.対象 連携協力校の公立小学校5年中の児童(2クラス49名 通級学級児童:1名を含む). b.実施教科 総合的な学習の時間. c.実施日時 平成21年2,月12日(木)第6校時. d.授業者 筆者. e.実施方法 意図的に改ざんした情報をプロジェクターで投影し,その問題点をグループで話し 合う活動を通して,正確な情報を発信することの大切さに気付かせる。 また,著作権,肖像権,個人情報を取り上げ,情報発信では気を付けなくてはなら ないこととして補足説明した。 (2)メディア・リテラシー教育の授業実践(上記②). a,対象 連携協力校の公立小学校6年生の児童(24名 通級学級児童1名を含む). b.実施教科 総合的な学習の時間. 2.
(5) c.実施期間. 平成22年11月∼12月 d.授業者 筆者及び担任教諭(40代女性). e.実施方法 修学旅行に行って学んだことを一枚の用紙(B4)でまとめ,情報発信する。この 作成時に見る相手がいることを意識することを机間指導で意識させるとともに,児童 同士が互いの作品を見せ合い,よりよい情報発信のための工夫を考えさせた。 (3)授業実践の検証方法. 二つの授業実践の対象は,同じ児童たちであり,平成22年の授業実践は,平成21年 の授業実践を行った児童の半分を対象としている。そして,二つの授業実践の実施期間 に間があるため,担任教諭(40代女性)の授業実践を聞き取り調査し,本研究の貴重な 資料として検討に加味した。. また,児童の実態を把握するために,アンケート調査(資料1)を行い,アンケート 結果(資料2)を元に,児童の実態に合わせたメディア・リテラシー教育の授業プラン を考え,授業実践を実施した。. 3.
(6) 第1章 情報モラル教育 1 情報モラルの育成について はじめに,文部科学省が「情報モラル」についてどのように扱っているかを精査した。 (1)文部科学省の「情報モラル」についての見解. 平成20年3月告示の学習指導要領では,「情報モラル」について総則の「指導計画の 作成等に当たって配慮すべき事項」(表2.1)に新たに盛り込まれた。そのため,各学校 で「情報モラル」の指導が重要となった。. さらに,総則以外にも「情報モラル」の指導に関して小学校では,道徳と総合的な学. 習の時間で扱うように求めている。道徳では,指導計画の作成と内容の取扱いに「道徳 の内容との関連を踏まえ,情報モラルに関する指導に留意すること」と明記されている。. 総合的な学習の時間では,指導計画の作成と内容の取扱いに「情報に関する学習を行う 際には,一(中略)一一,情報が日常生活や社会に与える影響を考えたりするなどの学習. 活動が行われるようにすること」が求められている。そして,総合的な学習の時間解説 書には「情報の作成者の権利を尊重し,出典を明示することを学ばせる」「情報社会の一. 員として生活していることについての自覚を促し,発信情報に責任をもつなどの意識を もたせる」「自分自身が危険に巻き込まれないことや情報社会に害を及ぼさないなどの情. 報モラルについても,機を見て丁寧に指導する」と具体的に説明されている。 これらから,学習指導要領では,「情報モラル」を身に付けさせる取り組みを学校教育. 全体で行うことを総則で述べ,道徳の時間において具体的題材をもとに「情報モラル」 を学習することや総合的な学習の時間の活動を通して身に付けさせようとしている。. また,平成20年7月には,情報モラルの指導実践事例や指導に役立っリンク集などを 紹介する『情報モラル指導ポータルサイト∼やってみよう情報モラル教育∼』のインタ. ーネット公開や平成21年度には「学校における情報モラル等教育の推進事業(地域に専 門員を派遣する事業や情報モラルに関する専門的な研修の実施など)」が行われるように なった(文部科学省,2010)。. これらは,学校における「情報モラル」の指導の充実を図ることが目的である。それ と同時に,「情報モラル」を身に付けさせる指導は,歴史が浅く,確立した指導法がない ため,指導する教師を支援する対策とも言える。しかし,『情報モラル指導ポータルサイ. ト∼やってみよう情報モラル教育∼』を閲覧する限り,まだまだ十分な実践をもとに情 報提供しているものとは言えない。. このように文部科学省は,学習指導要領で「情報モラル」を身に付けさせる指導を行 うこと義務としたが,具体的な指導に関しては各学校で試行しながら実践し,高めてい くことを期待していると思われる。. 4.
(7) 表2.1小学校学習指導要領新旧比較対象表. 平成10年告示. 平成20年告示. 総則 第4 指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項 (8) 国教借訓の指導に当たっては,児. (9) 各教科等の指導に当たっては,児. 童がコンピュータや情報通信ネットワ. 童がコンピュータや情報通信ネットワ. ークなどの情報手段に慣れ親しみ,適切. ークなどの情報手段に慣れ親しみ,コン. に活用する学習活動を充実するととも. ピュータで文字を入力するなどの基本. に,視聴覚教材や教育機器などの教材・. 的な操作や情報モラルを身に付け,適切. 教具の適切な活用を図ること。. に活用できるようにするための学習活 動を充実するとともに,これらの情報手. 段に加え視聴覚教材や教育機器などの 教材・教具の適切な活用を図ること。. 太字は加えられた語句 は変更された表現 は情報モラルについて書かれた箇所 (東京書籍編集部編『小学校学習指導要領 ちがいがわかる 新旧対照表』(2008)を一部修正して作成). (2)情報モラルの概念. 「情報モラル」は,広辞苑などの辞書に記述が無く,一定の定義が存在しないため, いくつかの捉え方がある。. 文部科学省では,新「情報教育の手引き」で情報モラルを「情報社会で適正な活動を 行うための基になる考え方と態度」と定義し,「小学校段階から日常のモラルと関連で身 に付くように指導していかなくてはならない」としている(文部科学省,2002)。. また,西・本郷は,情報モラルを「情報倫理意識に基づき,個人の自主的な判断,自 己の内的規制ないしは自己統制による,個人の行動や態度」と捉え,情報倫理は,「情報. 社会における人間のあり方にかかわる問題として,人間社会としての共同体を存続させ るための道理あるいは社会規範」と捉えている(西・本郷,2005)。. 一方,赤堀は,「今求められている情報モラル」と前置きし,「情報社会のもう一つの 断面への対応」と捉えている(赤堀,2008)。. 筆者は,「情報モラル」の概念として西・本郷の考えを概ね支持するが,赤堀の「もう. 一つの断面への対応」すなわち情報社会の「影」の部分を知り,よりょく付き合ってい くことも重要性であると考える。また,「情報モラル」は,赤堀が述べているように求め. られるものが変化すると捉え,概念も扱い方も変化していくものだと考える。 そこで,本研究では,「情報モラル」の概念については,情報社会の進展に伴い,扱い. 方や概念が変化するものであることから,筆者で特定の定義は行わず,一般的な扱いと して「情報モラル」と言う文言を用いることとする。. 5.
(8) (3)情報モラルに必要な資質. 筆者は,情報社会で必要な普遍的な資質を育成することを「情報モラルの育成」とし,. 必要と考えられる資質を以下の3つの資質とした。 すなわち,①「コミュニケーション能力」,②「判断力」,③「規範意識」(亀節以降に. 詳しく説明)である。これら3つの資質は,日常のモラルでも必要な資質であり,情報 社会の中で生きていくための土台となる。. 情報社会の「影」の部分は,情報通信技術の進展や法整備の中で変化し続けるため, 対策としての指導は困難になる。図2.1に示すように,従来の知識補充型の指導法は,. 知識を積み上げることで「影」に対応するが,情報通信技術の進展に合わせて,新たな 知識を補充していく必要がある。この知識の補充が十分になされない場合や対応するた めの知識を得られない場合は,新たな「影」に対応しきれなくなる。. 影. 影. 影. 知識. 影. 知識. 知識 知識. 知識. 新しい知識の積 対応できなかった影 み上げで対応. 知識. 図2.1知識補充型のイメージ図. そこで,筆者は情報モラルの土台となる資質を育成し,土台を固めておくことで情報 社会の「影」に対しても対応していくことが可能になると考えた。そして,その土台と なる資質①「コミュニケーション能力」,②「判断力」,③「規範意識」の育成を「情報. モラルの育成」とし,図2,2に示すイメージモデルを考え出した。このイメージモデル は,3つの資質をバランスよく育てることで,土台を押し上げ広くし,「影」に対応して いる。このように,土台の柱となる資質を高めることで,知識を積み上げていく以上に,. 幅広く情報社会の「影」に対応していくことができる。これが,筆者の考える「情報モ ラルの育成」である。. 6.
(9) 影. 面. 亡. 八. 影 規範意. ︸響灘⋮. 逆調. ≒ミ.ユ;ケー!ヨ. 導!.⋮−⋮⋮. 土台. 3つの資質を高め,土台を大きくして対応. 図2.2筆者の情報モラルの育成のイメージ図. 2 コミュニケーション能力 はじめに,コミュニケーションについて辞典や先行研究を基に概念の整理をした。そし て,その概念を踏まえ,「情報モラル」に必要なコミュニケーション能力をどう捉えるか述 べた。. (1)コミュニケーションの捉え方. コミュニケーション(co㎜unication)は,「分かちあうこと」を意味するラテン語の communicatioに由来し,「伝えること」,「伝達」などと訳させる(大鼠鳴書店『ジーニ アス和英大辞典』)。そして,コミュニケーションには,多種多様な解釈で様々な定義が 行われている。. そこで,本研究でのコミュニケーションは,情報社会の中で行われるものを前提とし たい。情報社会の中で行われるコミュニケーションは,大きく二つに分けられる。. 一つは,メディアを使用し,双方向のコミュニケーションで一対一や一対複数,複数 対複数で情報をやり取りするものである。もう一つは,メディアを使用し,情報発信者 が不特定多数を対象とし,一方的に情報発信を行うものである。. 後者は,発信された情報を選択し,判断する資質となる「判断力」のため,次節で述 べる。また,自身が情報発信側になり不特定多数に情報を発信する場合も一対複数で双 方向化が少ないコミュニケーションと捉えることができる。情報社会でのコミュニケV一一一・. ションは,主として前者の双方向のコミュニケーションであると言える。. では,双方向のコミュニケーションの捉え方を整理したい。双方向のコミュ=ケーシ ョンのプロセスとして,竹内郁朗によって提示された「社会的コミュニケーションのプ ロセス・モデル」を支持したい(図2.3)。. 7.
(10) メッセージ 肖. ﹁レ﹂. ト⋮. 一ン. 斎・﹁. 7.. コ. 一 ︻、、曝. 謀ξ. 竺\. よ﹁. な. ‘ . し 夏⋮;一:rーー至一‘季. ∼﹄ . 用 、メ. 壷. 受信体. ︻ 受 ナ ア ・滋り手. 1. Eーー↑ーー. 疹. ;皇;⋮▲7・:;−−ーー−⋮−⋮. 発信体il. フ♂,一ざバイク. ご. 曇ヤ♪ 肥P ナ . 記写・化. 一lli])]7f. L.wh−L/rl.. 門. L___←_チャン石瞬」 図2.3社会的コミュニケーションのプロセス・モデル. (出典:大石裕『コミュニケーション研究第2版社会の中のメディア』2006,p.11). 一般的に双方向のコミュニケーションは,互いに「受け手」「送り手」が入れ替わりな. がら行う。このモデルには,入れ替わり以外に「フィードバック(送り手が受け手にメ ッセージを伝達し,その結果生じたさまざまな現象をメッセージとして受け取る過程を 説明する際の概念)」(大西,2006)が加えられている。竹内は「自分の発信したメッセ・一一・. ジが自分自身にとってのフィードバックとなる過程」を取り込んでいるとしている。す なわち,「他者にメッセージを伝達するという行為は,自らにとってもそのメッセージに ついて考える機会」となるのである(大西,2006)。 (2)コミュニケーション能カ. コミュニケーションの捉え方を踏まえ,どのような能力が求められるかを考察したい。. コミュニケーションを行うのに必要なカが,コミュニケーション能力であるならば,多 様な能力となる。例えば,わかりやすい言葉の選択,相手を意識した言葉の選択,伝え たい事柄を中心に据えるなど多く挙げられる。. さらに,情報通信機器を使用したコミュニケーションで考えると,日常のコミュニケ ーションよりさらに多様となる。例えば,どんな相手がわからないので誰にでもわかり やすい言葉の選択,絵文字などの少ないメッセージから相手の伝えたいことを読み取る などがある。. 8.
(11) これは,情報通信機器を使用したコミュニケーションの多くは,相手と直接向き合っ て行うやり取りでないため,相手が見えない。そして,知っている相手であっても顔の 表情や声の調子などの情報が得られない場合が多い。また,まったく会ったことの無い 人とのコミュニケーションも成立するため,どんな人であるかの知識がないままやり取 りをする場合も少なくない。そのため,情報通信機器を使用したコミュニケーションは 単なる情報のやり取りと思われがちである。. しかし,コミュニケーションには,四つに基本(①知覚であり,②期待であり,③要 求であり,④情報でない)があるとしているドラッカー(Drucker, P. F.)は,「コミュニ ケーションと情報は相反する。しかし,両者は依存関係にある」(Drucker, P. F.,1974). と述べており,筆者もそれを支持している。ドラッカ…一・・の考えは,相手に伝えたい情報. があるとしても,その情報だけを相手に伝えるのではなく,相手に合わせることやより 伝わりやすい方法を選択するなどすることがコミュニケーション能力であると言える。. そのことは,情報通信機器を使用したコミュニケーションでも同じである。どんな相 手にでも互いに気持ちよくやり取りができるような言葉を選択することや,より確実に. メッセージが伝わる方法としてメールや電話,FAXなどから用いるメディアを選択する などがある。それは,見えない相手を考え,よりよい方法を選択するなど日常のコミュ ニケーションに情報社会で必要となる新たな表現する力を加えたものが求められる。. この表現する力とは,徳田が提唱する「表現のモラルリテラシー(相手・対象,状況 に応じて適切で尊重した『伝え方』『表現の仕方』(についての知識)を理解し,それを 技術として習得し,実行できる能力・技能)」(徳田,2009)に「相手・対象」が不明確な. 点を相手の推定や全人的な対象と捉えて行うものを考えている。. これは,情報社会でのコミュニケーションの経験を重ねることで高まるカであるが, 相手を思いやる道徳的な態度や姿勢も大切である。. これらを踏まえ,「見えない相手などを意識し,表現する力を踏まえたコミュニケーシ ョンを行う力」を,「情報モラルの育成」で求められる「コミュニケーション能力」とし たい。. 3 判断力 判断力を考えるにあたり,はじめに判断力について辞典や先行研究を基に概念の整理を した。そして,「情報モラル」に必要な判断力をまとめた。 (1)判断力の概念. 判断力は,広辞苑で「物事を認識・評価・決断する精神的能力」と概念が述べられて. いる。そして,判断は「ある物事について自分の考えをこうだときめること」としてい る(岩波書店『広辞苑第五版』)。. また,池田は,判断力を「問題解決に際して,いくつかの選択肢を用意し,その中か. 9.
(12) ら最適な選択肢を選んで,自分の意思決定を行う力」としている(池田,1995)。. 筆者は,池田の判断力の捉え方を支持している。情報社会では,情報が溢れている。 その情報の中から,信頼性や信士性がある情報であるかを見極めることが必要である。 そのときに,自身で考えることや他人などにアドバイスをもらい,情報の取捨選択をす ることが考えられる。しかし,他人などにアドバイスをもらっても最終的には,自ら選 択を行なければならない。そのため,「自分の意思決定を行う力」が大切であり,育てな ければならないと考える。 (2)情報モラルの育成に求められる判断力. 判断力の概念を踏まえ,「情報モラル」で求められる判断力を整理したい。先に述べた ように,判断力として,情報の信頼性や信愚性などの見極める力が必要である。しかし,. 信頼性や賢愚性などを見極めるためには,見極めるための基準が必要である。 北尾は,「情報の貯蔵から活用へ」と変化していくことを述べるなかで,そこで必要な 判断力として,「知識を大量にもっことよりも,知識を活用し,現実の状況と対応づけな がら,分析・総合・価値づけを行う能力」を挙げている(北尾,1995)。. また,赤堀は,情報の判断として「情緒でもなく知識だけでもなく,理論的な思考に 裏づけされていること」を挙げている(赤堀,2004)。. 筆者は,基準を考えるにあたり,北尾の考えを支持したい。今日の情報社会では,情. 報通信技術の進歩は目覚しく基準は変化していくものである。そこで,現在の状況と対 応させながら自分自身で基準を設け,判断することが必要である。それは,北尾の「現 実の状況と対応」の考えである。また,判断する基準を考えるにあったっては,既存の 知識を活用することも大切である。そして,設けた基準をもとに信頼性や信慧性のある 情報か見極めるための「分析」や「価値づけ」を行う力が必要となってくる。 さらに,「分析」は赤堀の考えである「理論的な思考に裏づけ」を支持したい。分析を. 行うために知識が必要であるが,それだけでは情報社会で得られる情報の信頼性や信葱 性が得られるわけではない。例えば,信頼性の高い情報を得るためにホームページ等か ら情報を得るときには,公的機関が発信しているものを選ぶことや同様の情報を発信し ているページをいくつか閲覧して総合的に考える必要がある。この一連の行動は,「理論 的な思考に裏づけ」と言えよう。. また,情報の信頼性,信慧性だけでなく自分に必要な情報であるかどうかを選ぶこと も必要な判断力である。情報社会では,情報は氾濫しており,本当に必要な情報を選ぶ ことも必要である。. これらを踏まえ,「情報を見極め,自ら取捨選択して情報を活用していく力1が,「情 報モラルの育成」に求められる「判断力」としたい。. 10.
(13) 4 規範意識 はじめに,規範意識について辞典や先行研究を基に概念の整理をした。そして,規範意 意識の概念を踏まえ,規範意識を高めていくための環境としての情報社会をどう捉えるべ きかを述べた。 (1)規範意識の概念. 規範意識は,大辞泉に「ある対象について価値判断を下す際,その前提になっている 価値を価値として認める意識」と概念が述べられている。そして,規範とは,「行動の判. 断の基準となる模範手本」とされている(小学館『大幌泉』)。 また,高旗は,規範意識を「規範が集団側に属する価値の型であるのに対して行為者 側の価値意識や価値態度を意味する」としている(高旗,2002)。. 規範意識とは,大辞泉に述べられているように価値判断に基づいて価値を認める意識 であり,それは模範や手本となるものである。. また,その意識は,高旗が述べているように集団にあるものではなく,行為者である 個人にあると言える。そのため,個人によって規範意識の程度に差が生じるものであり, 同じ行為に対して行為者によって是非が異なる。. そのため,日常で規範意識が高い,低いと言われるが,その基準はあいまいである。 そして,多くの場合は,行為者に対して他者が自分の価値判断で規範意識が高い,低い を判断している。故に,判断としての規範意識が高い,低いはあまり重要ではない。規. 範意識は,高めることこそが大切なことであり,情報社会の中で生きていくためにも必 要なことである。そして,規範意識は,経験や意識を持ち続けることにより,生涯に渡 り高め続けることができるものである。 (2)規範意識を高めるための環境. 規範意識を高めるためには,経験を得ることが必要である。それは,行為によって他. 者からの賞賛や罰などの評価を得ることで価値判断が変化する。そのため,行為に対し て適切な評価を与える他者と出会うことは,結果として,よりょく規範意識を高めるき. っかけになるが,逆もあり得る。また,評価が無ければ,価値判断に変化が無く規範意 識の高まりは無い。. 淵上は,「現代社会では,従来規範意識形成に関わっていた隣人や地域の年長者との関. 係性が希薄もなっており,このことが規範意識の低下につながっている」と述べている (淵上,2009)。. 淵上が述べるように,現代社会は従来に比べて規範意識を高めることが困難になって いると言える。現代社会では,新興住宅地やマンションなどで暮らす人も多く,地域の カが弱い場合も多い。また,ライフスタイルの変化で,大家族と呼ばれる家庭は少なく. なってきており,核家族の家庭が多い。これらの要因で,隣人や地域の年長者との関わ り自体が少なくなってきている。. 11.
(14) さらに,情報社会では,従来の形成関係者と言われる人との関わりがさらに希薄にな りやすい。それは,メディアを介して関わりあう機会が増えていることやメディアを介 する関わりに年長者が関わりにくいためである。. また,その人を良く知らない他者から評価を受けることもあるが,これは価値判断の 変化につながりにくい。それは,相手をあまり知らずにその人の考えを信じることは少 ないからだ。. これらから,情報社会で規範意識を高めることは難しいことが言える。そこで,メデ ィアを介さない関わりである学校生活や家庭生活で少しでも価値判断の変化を与えるき っかけを作ることが必要である。それは,価値判断を押し付けるのではなく,自ら感じ. 取って価値判断を変化させていくことが重要となる。そうすることは,自身で価値を作 り出し,高いレベルで規範意識が形成され,規範意識に対して高めようと言う意識を持 たせやすいと考えられる。. これらが,「情報モラルの育成」で求められる「規範意識」である。. 12.
(15) 第二章 情報モラルの育成を目指したメディア・リテラシー教育の実践 1 メディア・リテラシー教育とは はじめに,本研究でのメディアの扱いについて整理した。そして,バッキンガムの提唱 するメディア・リテラシー教育について述べ,「情報モラルの育成」に求められる資質がメ ディア・リテラシー教育によって育成される期待について述べた。 (1)メディアの扱い. メディア(media)は,大辞泉で「媒体,手段,特に,新聞・雑誌・テレビ・ラジオなど の媒体」と概念が述べられている。(小学館『大回泉』). また,三上は「社会システムにおいて情報伝達を媒介する文化装置」と定義し,表3.1 に示すようなメディアの種類をメディア・マトリックスとしてまとめている(三上,1991)。. 表3.1メディア・マトリックス(三上,1991). 映像系 i音声系 ;書字系 iライブ系 芳向. 1:n. 有線系. キャ方蕩八パソコ藩サ_} iテレホンサービスiBBaCGM i : テレビ電話 電話 ファクシミリ,電子メールiテレ嚇l i電子会議1. 1:n. 双方向. 電気通信系. P:l. 氏Fn. 芳向. 量 1 T}鰹「鎧劉 i i i i l l l l l. 無線系. 1:n. 双方向. } 1 1 1:n. P11 氏Fn. i l l. 輸送系. 1:n. rデオソフト ; αL切 i 新聞,雑誌 i. @ lオーディオテープ1書籍,CD−ROM i. @ 渤 iダイレクトメールi P:1. d一ルi i郵館配便i. 空間系 (出典:三上俊治『情報環境とニューメディア』1991,P.21筆者が一部加筆). 13.
(16) このメディア・マトリックスは,縦軸で伝達されるメソセージの性格を基準として分 類した①映像系メディア,②音声系メディア,③書字系メディアに分けられている。. そして,横軸で情報を伝える搬送路の性質を基準として分類した①電気通信系メディ ア,②輸送系メディア,③空間系メディアと分けられている。また,①電気通信系メデ ィアは,ケーブル等を介する「有線系」,電波を搬送路とする「無線系」に分化する。さ. らに,情報伝達の方向性を基準に①一方向メディア,②双方向メディアに分けられてい る。①一方向メディアは,一般に「マスメディア」と呼ばれ,送り手から受け手ヘー方 的に情報が伝達されるものである。. 本研究で扱うメディアは,情報伝達の方向性を基準に分けた②双方向メディアを対象 とする。これは,送り手からの情報伝達に対して受け手が直接反応を返すことのできる メディアである。. ただし,表3.1は,現存するメディアをカテゴリーと分けされているものに,筆者が 新しいメディアを加筆した。そして,このカテゴリーの分けにおいて,メディアは,い ずれか一つだけに属するというわけだけではなく,二つあるいは三つの要素を部分的に 含む場合が多い。. (2)バッキンガムのメディア・リテラシー教育 筆者は,バッキンガム(Buckingham, D.)の提唱する「Media Education」を実践する. ことが情報モラルの育成につながるとしている。. 「Media Education」の翻訳において,「メディア教育」と直訳してしまうと,日本で は伝統的な視聴覚教育(Audio−Visual Eduction)の流れと混同されやすいという問題が. ある。そこで,翻訳にあたり鈴木みどりが,日本でいう「メディア・リテラシー教育」 に限りなく近いことから,バッキンガムと相談の上「メディア・リテラシ・一一一・教育」とい. う訳語を使うこととし,翻訳本を発行している。. 監訳者の鈴木みどりは,1994年差日本の大学において,社会学系の科目として「メデ ィア・リテラシー論」を開講している。この開講にあたり,メディア・リテラシーを「市 民がメディアを社会的文脈でクリティカルに分析し,評価し,メディアにアクセスし,. 多様な形態でコミュニケーションを作りだす力をさす。また,そのようなカの獲得をめ ざす取り組みもメディア・リテラシーという」(鈴木,2001)と定義している。. これは,後で述べるバッキンガムの考えに非常に近い。そこで,筆者もこの訳語を支 持し,使用することとする。. バッキンガムの提唱する「メディア・リテラシー教育」は,もともと子どもが持って いる「メディア」の知識に,教師が教育的働きをすることで,メディアについて批判的 (Critica1)な能力と創造的(Creative)な能力の両方を発達させるものである。批判 的(Critical)な能力とは,批判的な分析経過を通じて,メディアが押し付けていると 思われる価値観やイデオロギーから解放させる力である。このカは,メディアを解釈し,. 14.
(17) 十分な情報を得たうえで判断することを可能するため,メディアの本質を「見抜く」こ とにつながる。. また,創造的(Creative)な能力とは,自分のカでメディアの創り手となる力である。. そして,創造性に満ちた制作は,新しくもっと深遠な批判的洞察の手がかりになり得る ことにつながっている。. メディア・リテラシー教育は,メディアについて教えることと学ぶことに関わってい る。そのため,メディア「について」教え学ぶ教育であり,メディア「を使って」教育 するという発想とはまったく異なるものである。 (3)メディア・リテラシー教育による育成の期待. メディア・リテラシー教育が,筆者の考える「情報モラルの育成」に有効であると考 えている。. 現代の高度情報社会では,情報を送受信する媒体として,メディアはその多くを占め ており,メディアとの接触がすることが多い。そして,児童は,日常的にメディアを活 用し,メディアの使用法などの知識がある。身近なものを教材にすることは,子どもが 興味関心を持ちやすく,既存の知識を交流することが容易で,互いに学習を深めやすい。 そのため,学習として進めやすいと考えている。. そして,メディアについて考えるなかで批判的な分析経過を行い,メディアから得ら れる情報を見極めて取捨選択することは,「判断力」の育成につながる。また,メディア. から情報を得るだけでなく,発信するための創造的な制作をするなかで相手を考え,自 身の伝えたいことを発信することで,「コミュニケーション能力」の育成につながり,さ らには,見えない相手を意識することで「規範意識」の育成にもつながる。このことで, 「情報モラルの育成」で求められる資質が高められる。. これらを踏まえ,本研究では,メディアを批判的に分析させるために,意図的に改ざ. んした情報を児童に見せ話し合う授業と,創造性に満ちた制作として修学旅行について 他人に自分の考えを発信するために,情報通信機器を活用して新聞を作成する授業を行 つた。. 2 対象校の実態 実践的研究を行うにあたり,実施対象とした連携協力校の子どもの実態について述べる。. まず,全国の子どもの実態を調べ,グラフに整理して参考資料データとした。そして,連 携協力校で行ったアンケート調査をもとに全国の実態と比較しながら子どもの実態を整理 した。. (1)全国的な子どものICT実態. 全国的なメディアに関わるICTの実態として,総務省編の『情報通信白書』からイン ターネットの利用率をもとに図3.1を作成した。. 15.
(18) ︶ 0 %− 0 ︵. 91,693. 一95.5 94.496・3一. ■. 72.8. 67,968.9. 一. 1. 一㎜ 一一. 80. 90.1. 一 68.5. 口H13. 一. 61.9. 60. 皿H15. 49.2. 40. 一 ■. 一 幽. 20. 図H18. c. o. 口H20. 1. 6∼12歳. 1. 13∼19歳. 20∼29歳. 図3.1インターネットの利用率 (総務省編『情報通信白書』平成16年度版,19年度版,21年度版を参考に作成). 図3.1からインターネット利用率は,どの年代においても平成13年のより上昇してお り,平成15年に大きく伸びている。これは,ブロードバンドのインターネット環境が普 及したことなどが要因であると考えられる。小学生(6∼12歳)は,平成13年が49,2% であったが,平成15年は61.9%と大きく上昇した。その後は,平成18年(67,9%), 平成20(68,9%)と平成15年以降も緩やかに上昇している。. 全国的に児童のインターネット利用率は,上昇傾向にあり,7割近い利用率があるこ とがわかる。. 次に,総務省編の『情報通信白書』から携帯電話によるインターネットの利用率をも とに図3.2を作成した。 ︶∩U. %−0 ︵. 86.8. 80. 73.9. 一 一 一 . 一 一. 口H14 60. T6.6−56.2 一_一_一一. 46.7. 50.4. @ . 皿H15. 40. 口H20. 24.4. 20 1::. 一 14.4. 一 一. } . X.1. o. r. 6∼12歳. 1. 13∼19歳. 20∼29歳. 図3.2携帯電話によるインターネットの利用率 (総務省編『情報通信白書』平成16年度版,21年度版を参考に作成). 16.
(19) 図3.2から携帯電話によるインターネット利用率は,どの年代においても平成14年の より上昇している。小学生(6∼12歳)は,平成14年(9.1%),平成15年(14.4%),. 平成20年(24.4%)と上昇しているが,一般のインターネットの利用率と比べると利用 率が低い。これは,児童の携帯電話の所有が少ないためであると考えられる。. このように全国的に見て情報のやり取りを行うインターネットの利用率は高く,携帯 電話によるインターネットの利用は割合として少ないが,その利用率は上昇している。. どちらも,年々上昇をしていくと考えられるが,携帯電話の新規加入時のガイドライン によって児童の携帯電話所有が減少すれば携帯電話によるインターネットの利用率は,. 学童年代は減少する可能性もある。現段階では,ガイドラインはどのように変わってい くか不明確なため,携帯電話によるインターネットも上昇するものと考え,こちらにも 対応できるように情報モラルの育成をする必要があると言える。 (2)対象校の子どものICT実態. 全国的な児童のICT利用実態と比較しながら,対象校の実態について検討したい。対. 象校は,公立校で郊外の田園が広がる地域に立地する。学校規模は,1学年が1,2ク ラスで,1クラスの児童画が20∼30名である。また,生徒指導上の問題傾向が見られる 児童は少なく,落ち着いた学校であり授業中に大きな混乱が起きることはない。学校で の取り組みとして授業でパソコンを使用する機会も多く設定されており,パソコンには ある程度慣れ親しんでいる。. しかし,学校のインターネット回線の容量が小さいため,インターネットの検索など を一斉に行うとアクセスエラーを起こすなどのトラブルが起きやすく,また授業以外で パソコンを使用する機会は少ないため,十分に活用しているとは言いがたい。. 対象校の児童のICT実態を把握するために,3年生以上を対象としアンケートによる 調査を行った。家庭でのパソコン利用をしているかの結果は,図3.3のようになった。. 生生生生体 年の年 年年全 0 ﹃0 4τ 3. 1 I I. ・:・::::86.7%:::::: 13.3弘ミ. .1... ,1.甲. .19.. .1. .:::::83.o覧:::::: .::::i:心嚢懸. 一 l l I 、.、::・78瀦・,・::: ::::・:蕪u燃. 一 l I l l. ∵:・:82.7瓢・:・:・: ・:・:::脳澱懸. 一 I I l l. ・:・:::82・9%:::::: ・::;:::黙1z,童懸 一一.一一一.一 一 一一.,. 1. o%. 20% 40%. 60%. ロはい. 80%. 100X. ssいいえ. 図3.3家庭でのパソコン利用有無の割合 図3.3から,全体で8割以上が家庭でパソコンを利用していることがわかる。また, 研究対象の5年生は,83.0%であった。総じて,一般的に多くの家庭にパソコンがあり,. 17.
(20) 子どもも家族と一緒に使用していると想像できる。 インターネットの利用経験があるかないかの結果は,図3.4のようになった。. 6年生 5年生 4年生 3年生. rl ■ D・. X8.3瓢÷ ・:1。7. @ §12…1. 一 L. 1 」』 」. ・・87・5・・:…. . 1 1 『1”1’.. X3.5瓢:・ ・:熔.5弘 一 「 l i l .・. .・. V6.9覧・: .・腿■懸23,1第. 一 1 } 1. 全体. W9.3弘:”:農10.7弘、 V0・6弘:”:● ユ29・4%心 .’. 一 } 1 .1. 1. 平成20年. ・’. l I I. o%. 60% 80%. 20% 40% ロはい. 100X. Nいいえ. 図3.4インターネットの利用経験有無の割合 図3.4から,全体で9割近くあることがわかる。また,研究対象の5年生は,87.5% であった。4年生と6年生では,アンケート調査前までの学習で,社会科及び総合的な 学習の時間でインターネットを使用した調べ学習を行っており,欠席した児童を除き学 習を行っているため高い割合になった。. 全体の割合は,全国の実態では「経験」ではなく「使用しているか」の調査なので調 査内容が異なり比べることができない。そこで,筆者が平成20年に実施した公立小学校. 3校(兵庫県1校,山口県2校)を対象にほぼ同様の調査を行った結果では,全体で 70.6%であったことを考えると高い割合である。. しかし,全国のインターネットの利用率の割合が上昇傾向にあることを考えると平成 20年の調べとは,単純比較できない。そのため,高い傾向であるとしておきたい。 メールの使用経験があるかないかの結果は,図3.5のようになった。. 60%. 40% ロはい. 篤いいえ. 図3.5 メールの利用経験有無の割合 図3.5から,全体で13.6%とあまり高くない。そして,研究対象の5年生は,12.5% であった。家庭でのパソコン使用やインターネットの使用経験に対して,メールの利用. 18.
(21) 経験は少ない傾向にあると言えよう。. インターネット等で使用され,情報モラルに関係すると思われる用語について,児童 の理解を調べた。用語について「よく知っている」,「少し知っている」,「名前は聞いた. ことがある」,「まったくしらない」の4項目でアンケート調査を行った。そして,「Aメ ールに関するトラブル」,「B情報関係の法律に関する事項」,「C インターネットにお. けるトラブル」,「Dインターネットで使用される用語」に分類した。 「A メールに関するトラブル」は,「チェーンメール」,「スパムメール」の理解につ いてまとめた。「B情報関係の法律に関する事項」は,「著作権」,「引用」,「肖像権」の 理解についてまとめた。「C インターネットにおけるトラブル」は,「ワンクリック詐欺」,. 「フィッシング詐欺」の理解についてまとめた。「Dインターネットで使用される用語」 は,「チャット」,「BBS」,「プログ」,「プロフ」の理解についてまとめた。. この分類で,「よく知っている」を「1」,「少し知っている」を「2」,「名前は聞いた. ことがある」を「3」,「まったくしらない」を「4」とし,平均化した。そして,2以 上であった児童は,ある程度それらの用語について知っていると言え,理解度が高いと 考えた。この理解度を整理すると図3.6のようになった. A. 實14% ,. B. 4;4撒 凹し9% 一. c. 曜. D. ・:{L9%:・㈱. o%. 物 物. 20%. 目高い. N低い. 40%. 60%. 80%. A メール関するトラブル. B 情報関係の法律に関する事項. C インターネットにおけるトラブル. Dインターネットで使用される用語. 100%. 図3.6 用語の理解度 図3.6から,どの分類の用語もあまり理解度が高いとは言えない。その中でも,「Dイ ンターネットで使用される用語」は,9.9%であり,他の分類に比べて理解度が高い児童. が多い傾向があった。これは,インターネットの使用経験が高いことやテレビ等のマス メディアで言葉についての情報を得ていることが要因と言えよう。 先に述べたインターネットの利用経験がある割合が89,3%あったことと比べると,利 用で関わってくる用語の理解度は低く,あまり理解せずに使用していることがわかる。. さらに,すべての用語の理解について同様に数値化し,平均した。その平均した理解 度を「1.5以上」,「1.5∼2.5」,「2,5∼3.5」,「3.5未満」で分け,図3,7のすべての用語. 19.
(22) の理解度の割合として整理した。また,理解度についての平均値と中央値を求め,表3.2 の理解度の平均値及び中央値とした。 1.5% 3.9%. 表3.2 理解度の平均値及び中央値. @ 圓一 一’,’.’. @ .・::42.4%::’. 冒 . . ・ 幽. ミミー. T2.2. 平均値. 3.39. 中央値. 3.55. N値. 203. z1.5以上 町.5∼2.5 高Q.5∼3.5 団3.5未満 図3.7すべての用語の理解度の割合 図3.7から,用語についてほとんど理解をしていない児童(3,5未満)が,52.2%と. 半数以上を占めている。また,用語について理解があまり無いと考えられる児童(2.5 ∼3.5)が,42.4%であった。これらの児童は,合わせると9割を超えており,用語の指 導の必要性が高いと言える。. さらに,表3.2から理解度の平均値が3.39に対し,中央値が3,55と大きくズレが生 じている。これは,先に述べたように用語の指導の必要性が高い児童が多くであるのに. 対し,その他の児童の中に用語について非常に高い理解を持っている児童がいるため平 均値と中央値に大きなズレが生じる要因になったと考えられる。これは,図3.7におい て理解度が「1.5以上」の1.5%の児童が該当しており,日常的にパソコンを利用するな どしていることが予想される。. そして,これらの理解度が高い児童に対しては,用語の指導の必要性は低いが,既に 知識があるためインターネットなどで見えない相手との関わりを多く経験していること が予想され,サイバー犯罪などの情報社会でのトラブルに巻き込まれかけたことや巻き. 込まれてしまった経験がある可能性非常に高い。そのため,用語の指導の必要性が高い 児童以上に「情報モラルの育成」が重要で急務である児童と言える。. そこで,多くの児童は,用語の指導の必要性が高いことから用語などの知識を教師が 教えることも授業等で取り上げていく必要もあるが,それ以上に情報社会との関わり方 を考えさせ,「情報モラルの育成」に必要な資質を育てていく事が大切である。そして,. 「情報モラルの育成」に必要な資質を育てていくことで,教師が取り上げることができ. なかった知識などを自ら学びながら幅広く情報社会の「影」に対応できるようになって 行くと考えられる。. 20.
(23) 3 授業実践「よりよい情報発信を考えよう」. まず,授業実践の概要とその分析方法について概要を述べた。次に,授業の場面ごとに 発話記録の分析を行った。その分析を踏まえ,授業実践を通して児童に育ったカを分析し, 考察した。. (1)授業実践の概要. この授業実践は,総合的な学習の時間「発信しよう自然学校」の1次(1/1)に設定し た小単元で,「よりよい情報発信を考えよう」である。授業の詳細として,附記資料の資. 料3に学習指導案,資料4にワークシート,資料5に使用したスライド,資料6に発話 記録を載せている。. 本時の目標は,「情報発信で気をつけることを知り,情報発信に対して自分なりの考え 方を持つことができる」である。 授業は,筆者の作成したワークシート(資料4)を用いて,プロジェクタ・・一・しによる提. 示教材をメインに展開した。授業の活動は,前半が主に児童のグループ活動が中心で, 後半は筆者が児童に一斉指導する活動が中心である。. 前半は,メディアを批判的に分析させるために,意図的に改ざんした情報を児童に見 せ,話し合う活動を行った。その話し合いを踏まえ,どのような情報を発信すれば正し く伝えることができるか考え,意見の交流をした。これは,「情報モラルの育成」に求め られる資質の「判断力」の育成につながると考える(写真3.1)。. ’ i v. し き ぜウ ヰ. 職聯町並灘・嘱 1謡 1・晒. ・囑.こ豪猛・. 一。,ny畑“’”“v騨漕 摂肘恥. 鑓響瓢〆!. ・轡tt躍払誰 /’≧・醸.晦.竺 ・ _. Vt’“’1麺月輪∼ 副寺 鍵寧魏遍、画、鴨 {享’ ヘヘ メ. 繍獺鑛灘鐵顯国君灘一f 〆,∼瓢㌧. @噸蜘髭, 一総謡盤船 噸lll輔1 譲’. 1’:聴。. 1日面轡. 一. 静 素雪」鋸 鴇. 縄牽《 畢. 二騨言敬 雛?漏. タ へ ぶ. ㌻載轟熱. 警、、,野 面内晦茎 罫勧 隊都獺. 詩擁∴贈. 醤ヨ.〆. r・萎デ櫨、.. 〉 難轡 織魎_峯一. 、“,.幕. 響、. し を ね まサ. rみ㌦認ひ. 開蟹野. き 曇 纂 へ. 馨騨轟㌦ 鑑 %. 、臨. 嶺認ボ・1 ∈・ Pt. “_ 編矛番鳩一. 寒 、、藩 ↑. ∼鐘曳. 啄一綿。ポ黛. もこ. 鼠 帰. 評.毒響. 磯﹄ご. 懇 ,. 驚灘. 碁 ・ .. ・痴ザ開聞ジ い駅. 鐙「 ・. 噸 講冊. 写真3.1 「よりよい情報発信を考えよう」授業風景(その1) 後半では,前半の話し合い活動で交流した内容以外に情報発信を行うにあたって知っ て欲しい知識として,筆者が一斉指導で「著作権」,「引用」,「個人情報」,「肖像権」に. ついての授業を行った。この内容は,情報を発信するときに必要な判断として必要な知. 21.
(24) 識,情報を発信するときの規範となる知識を教えており,「情報モラルの育成」で求めら れる資質の「判断力」,「規範意識」の育成につながると考える。. そして,本時のまとめとして情報発信についての注意点を「正確な情報を発信する」, 「個人情報は発信しない」,「許可が必要なものは許可を得て使用する」の3点にまとめ て終わった(写真3.2)。. 1. 1. 1“. 1警. み い サ ま. 町. . 1 蝋’. t一 燕嘱μ齢. 諺幽幽端紅轟灘馨. 響三無磯. ﹂・竺戴. 嵐. 編. う. ’ ミ. ザ. ⋮麹乱。. 、. 無難賦物爆. ヘ ヘ昏 ホ喩 季サ 悔 \. 、、. l!iぐ繕繋ご灘㌧1:灘薯. 闇屋. ヰ 響1:、 撫鍵州際羅騨轍麟霜解麟》. 翻毎 “ 魂. 一伽./ 欄黙騰熱輪∼讐騨. 恥鴫一・滅 1玉. 獣譲1羅翻. ∵㌻1観劇翻!;1断編. 護 蓼 職匙灘. 響甑並∵ .v ’鋤繋 za 一 掛蘇. 罪ヤ三翻轟議1攣♂惣 ・銃盆惣犠軸.. =緩曜繍 擁 ・. 寳 、卓チ. 写真3.2 「よりよい情報発信を考えよう」授業風景(その2) 実施した授業の板書の結果は,写真3.3に示した。左側が前半の板書で,右側が後半 とまとめを書いた板書である。. 艦露礁義幽い鑑鵡霧譲. 灘難三三、沸. 鶴麟1≦〆紺綴灘購1. 薗τ欝マ剛﹂則纏. ’一 rv wwr “ . za. z“e−maku“eq T t K 一. 論叢曝癖層 写真3. 3 「よりよい情報発信を考えよう」授業板書. 22.
(25) (2)授業実践の分析方法 授業の記録は,後方から固定ビデオで行った。このビデオ記録デ・・一一・タから,授業を分. 析するために発話記録(資料6)を起した。発話記録の記述は,児童の様子及び,教師 の働きかけは,Oで補い,授業内の主な児童のつぶやきは《》で示した。また,児童の 名前は全て○○で表記し,聞き取りがあいまいな発話には▲を印している。 発話記録とビデオ記録データの児童の活動を学習の流れに沿って記述した。学習の流 れは,「情報を発信する機会について交流する場面」,「誤った情報の箇所を交流する場面」,. 「誤っている理由を交流する場面」,「どんな情報を発信すれば良いかを交流する場面」. の前半の4場面を取り上げている。授業後半は,教えることが中心のため児童の交流活 動が少ないため,本章の第6節の授業実践の考察で取り上げるワークシートの記述を中 心に児童の学びの様子を示し,考察したい。 (3)情報を発信する機会について交流する場面. この場面は,情報を発信する機会はどんなものがあるか考え,交流をしている。発信 する機会として,外で震えている姿を人に見せることは「外は寒い」と情報を発信して いることになると例示し,考える活動をした(表3,3)。. 表3.3 情報を発信する機会について交流した発話記録 T1 「情報を発信する機会」と言うことがわかる人。いっぱいありますね。3人くらい聞きます (児童を指名する)。. C1 みんなと話すとき。▲ T2 みんなと話すとき。うん,そうだね。それも情報発信になりますね。 T3 (児童を指名する)○○君。 C2 紙に書く。. T4 紙に書く。紙に書くもだね。じゃあ,ラスト行こうか。(児童を指名する)○○さん。 C3 人に話す。 T5 話す。そうだね(黒板に板書する)。. T6 たくさんありますよね。. 表3.3から,児童は情報発信の意味を理解し,その機会が多くあることを理解してい ると言える。この交流活動の前に単三指導をした中では,「新聞制作」,「インターネット」. など複数の考えが出ていた。時間の関係で3人に限定したため,表3.3に出てきている 「話す」と「書く」方法しか交流できなかった。C3の「人に話す」と答えた児童は,特. 別支援学級の児童であり,交流活動に積極的だったので指名した。結果として,同様な 考えを交流することとなったが,児童が積極的に活動に参加できる機会を作ったことは この児童にとって成長につながったと考える。 また,机間指導でユニ・・一一・クな発言があったが,取り上げるに至らなかった。授業の中. で取り上げることができなかった発言も多くあったが,児童が情報発信する機会や方法. 23.
(26) に多様なものがあると言うことを認識できたと考える。 (4)適切でない情報を交流する場面. この場面は,意図的に改ざんを加えた情報(図3.8)をプロジェクターで提示し,適 切でない表現をグループで話し合い,交流する場面である。提示した情報には,「プロフ イール」,「ふきだし」,「小見出し」,「写真」等に改ざんを加えている(表3.4)。 劃;雛 ㌧:醗:ll”ミご∴…iユ 語‡㌔ ・t・ ;《1:、. リーダーの紹介 1:曇 麟 ふきだし 鱈’:t‘携難 騰蓑、〆編. 写真. 語閣灘編㌍多竈’ll昇出し. 1鍮、撒灘馨。卿,叫、 趣 灘 ;“‘ 蝋=3◎m職 ヒ” ,・. 醐 歳∵’醒.㈱灘.’隷鳳 ・麟・. ユ ‘』「,撒燃・ プロフィール. 翻蕪撃繰では.瓢た態と}鱒轟に野勢響’い態や,}ッター蜘麟などの. 遇難をしてくれ葱した脅薦ζら舵蚤ことも茄㌘たけξ、や凄しく. 瓢た騰潔してくa*Lt:. 難 鞍 轡 リ ’ 臨.剛嵩. 。鰍猟 }融,纏燃1・・糞灘騰瓢. 図3,8 意図的に改ざんと加えた情報 (自然学校のリーダーだった山本さんに了解を得て作成した情報 資料5のスライドの一部). 表3.4適切でない情報を交流した発話記録 C1 プロフィールがおかしい。 T1 プロフィール。ここ?(プロジェクターを示す)ここがおかしい(板書する)。どこか,他 のグループを当ててあげて。○○さんのグループ。 C2 ふきだし。. T2 ふきだし。この線引いてるやつ?(プロジェクターを示す)そうやな。おかしいな,ふき だし。(板書する。)次当ててあげて。. C3 こみだし。. T3 こみだし。そうやな。この(プロジェクターを示す)「よい子もびっくり恐怖のリーダー山 ちゃん」ってとこかな。ここおかしい(板書する)。. C4 写真のところ。顔の落書き。 T4 写真のところ。顔の落書き。なるほどね(板書する)。4つありました。 C5 まだある。まだある。. T5 まだある?なに? C6 文章。 T6 文章… 。 C7 だって絶対おかしいやん61 f摺導してあげました」.やろe. T7 「指導してあげました。」文章がおかしい。なら文章もいれときます(板書する)。. 24.
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