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図4.2 アメリカ合衆国,台湾,メキシコの都市における

      中流階級の少年の道徳性発達段階(Kohlberg,1969)

  (出典:荒木紀幸編『わたしがわかるあなたがわかる心理学』(1987),p. 225)

3 コミュニケーション能力を高める学習

 ヴィゴツキーのことばの発達の理論が,コミュニケ・一・・ション能力を高める学習を考える ことの手がかりになる。ヴィゴツキーは,ことばの発達について2つの法則があると述べ

ている(表4,3)。

       表4.3 ヴィゴツキーのことばの発達の理論

①ことばの初歩的・低次の特性の無自覚的取得から,言語の音声的構造や文法形式の自覚的使用   へと発達するという法則

②「話しことばと書きことば」「生活的概念と科学的概念」「母国語と外国語」とのあいだには相   関関係があり,反対方向へ発達するという法則

       (出典:柴田義松『ヴィゴツキー入門』2006,p.72)

 書きことばは,他人に最大限に理解されることを目指しているため,形式的には,話し ことば以上に完全な社会的ことばである。情報発信などでは,話しことばより書きことば を多く用いるが,他人に最大限に理解される書きことばは高いコミュニケーション能力を 必要とする。

 しかし,子どもの書きことばの発達水準と話しことばの発達水準とのあいだにはかなり 大きな隔たりがあり,発信する文章は子どもの話し方に似た文章しか書けない子どももい る。それは,話しことばはほとんど無意識的に発音されているが,書きことばは単語を考

えるや文法を考えるなど意識的に行動しなければならないためである。書きことばは,高 度の抽象性と随意性・自覚性を特徴とする心理活動であり,書きことばの基礎となるこれ

らの基本的な精神機能が子どもは未発達であり,発達がはじまったばかりである。そのた め,書きことばは,子どもにとっては難しい。子どもは,学校で書きことばを学習するな かで,自分の話していることを意識することを学び,無意識的・児童的局面から意識的・

随意的・意図的な局面へと移行していく。

 このことを踏まえ,言語活動は段階を踏んで学習し,繰り返し学習していくことが,コ ミュニケーション能力の高まりにつながると言える。そこで,授業プランには,言語の学 習段階と繰り返しの面を考慮し,作成したい。

4 授業プランの提案

 発達段階を踏まえると「情報モラルの育成」は,第3学年から行うことが望ましい。そ のため,第3学年以上の学習内容で考えた。

 そして,教科の枠を越えて横断的に行うために,「情報モラルの育成」の特定の科目のみ で行うのではなく,各種教科で行い,総合的な学習の時間や道徳の時間で情報モラルの育 成に必要な知識や態度を補充深化していくことを想定している。さらに,学びが深まって いくように,段階のある学習になるようにしている。

 授業プランは,第3学年以上の各教科で「情報モラル育成」が可能となる教科内容をま とめて提案した。各学年の教科内容は,学習指導要領を参考にしている。以下に,授業プ ランとして,例なる内容,単元等の案を考えて示した(表4.4)(表4。5)(表4.6)(表4.7)。

      表4.4第3学年授業プラン

教科 国語

国語

内容,単元等の例

○「自分をしょうかいしよう」

 自分についてスピーチで紹介を行う。この活動で,

知ってほしい自分のこと相手に伝えることを学習

る。

※ 相手を意識させることを学び,情報発信をするこ   との基礎的位置づけである。

0「みんなの物知り本をつくろう」

 自分が興味を持っていること,持ったものについて 調べ,そのことをまとめてレポートを作成する。レ・・

一トをまとめて一冊の物知り本とする。

※ まとめるための調べ学習で多能な情報に触れるな   かで,必要な情報を取捨選択できるようにする。

学習指導要領  出来事の説明 調査の報告をした

り,それを聞いて忌 見を述べたりするこ

 疑問思ったこと を調べて,報告する 文章を書いたり,

 新聞などに表した りすること

育成できる力

・コミュニケー ション能力

・コミュニケー ション能力

・判断力

社会 ○「しょうかいカードをつくろう」 身近な地域や市の地 ・コミュニケー 自分たちの学校の周りの様子をカードにしてみんな 形,土地利用,公共 ション能力

に紹介しあう活動を行う。 施設などの様子 ・判断力

※ 何を紹介するか判断し,カードを作る。

道徳 ○「きまりはなんのためにあるの」 4一(1) ・規範意識 きまりを守ることの大切さを理解させ,進んで決ま 規律尊重・公徳心

りを守ろうとする態度を育てさせる。

表4.5第4学年授業プラン

教科 内容,単元等の例 学習指導要領 育成できる力

国語 0「自分新聞をつくろう」

@新聞の書き方を知り,新聞をまとめて伝えたいこと ゥ分の体験や出来事を選び新聞を作成する。

ヲ 発信する制作物としての創造性を磨かせる。

B 疑問思ったこと 調べて,報告する カ章を書いたり,学 艶V聞などに表した

閧キること

・コミュニケー Vョン能力

国語 ○「表やグラフでまとめよう」

@自分の身長の変化などの自分に関わる数値をもとに

¥やグラフを作成し,伝わりやすさを実感察せる。

ヲ 文字とグラフなどの視覚的データとの伝わりの違

@ いに気付かせる。

B 収集した資料を 果的に使い,説明 キる文章などを書く

アと

・コミュニケー Vョン能力

E判断力

理科 ○「季節による生き物の変化をしろう」

@実物を見ることが難しい季節によって見るが左右さ 黷髏カ物をインターネソトで調べ学習する。

ヲ インターネットの情報の収集の仕方に触れ,その

@ 中で情報の信頼性・信慧性に触れる。

B生命・地球

i2)季節と生物

・判断力

図工 ○「グループ合作を作ろう」

@グループで協力して,ダンボールの家を作成する。

ヲ 共同で作成するとみんなの作品であることを理解

@ させ,著作権の意識の基礎に触れる。

A 表現

i1)一イ

Vしい造形

・規範意識

道徳 ○「自分を振り返ろう」

@自分の欠点や過ちを素直に認め,自分を意欲的に変 ヲていこうとする意識を養う。

ヲ この中でインターネットでのやり取りを例にだ

@ し,人間関係の難しさに触れてやる。

1一(1)

s動・生活

・規範意識

表4,6 第5学年授業プラン

教科 国語

国語

社会

道徳

内容,単元等の例 0「工夫して発信しよう」

 いろいろな通信手段の良さや問題点について自分の 考えを整理し,道筋を立てて文章を書くことを行う。

※ あらゆるメディアに触れ,情報を発信するために   どのような方法や内容が良いかを考えさせる。

○「自分の考え,人の考え」

 紹介文を作成し,調べて書いたところと,自分で いたところを明確にした文章を作成する。

※ 自分の文章以外の部分について,どこから参照し   たか明確にさせるために,引用先を書くことを日   導する。

○「わたしたちの生活と情報」

 生活と情報の関わりを知り,どのように情報に向き 合っていけばよいか考える。

※ 学習指導要領で定められた,情報との関わりにつ   いて学習する内容で,小学校の情報教育の核とな   る単元である。

○「自分のこころに問いかけよう」

 落書きは卑怯な行為であり,相手の心を傷つけ,言 すことのできないことであることの理解を深める。

※ 落書きを題材とする中で,インターネットの掲示   板の書き込みに触れる指導を行う。

学習指導要領   自分の課題につ いて調べ,意見を言 押した文章や活動を  上した文章などを 書いたり編集したり  ること

  自分の課題につ いて調べ,意見を言 述した文章や活動を 報告した文章などを 書いたり編集したり すること

・放送,新聞などの 産業と国民生活との かかわり

・情報化した社会の  子と国民生活との

関わり 4一(2)

公平公正・正義

育成できる力

・コミュニケー ション能力

・判断力

・コミュニケー ション能力

・判断力

・規範意識

・判断力

・規範意識

・規範意識

表4.7第6学年授業プラン

教科 国語

内容,単元等の例

○「情報をもとに考えをまとめて書こう」

 インターネットなどの情報の信望性に触れ,どのよ うな情報を集めればよいか考えさせる。そして,信遍 性の高い情報を集めてまとめの新聞を作る。

※ 情報の信頼性・信悪性に触れさせ,必ずしもイ   ターネット上の情報が正しいとは限らないことに   気付かせる。

学習指導要領   自分の課題につ いて調べ,意見を言 節した文章や活動を  凹した文章などを 書いたり編集したり  ること

育成できるカ

・コミュニケー ション能力

社会 ○「学習のまとめ『○○新聞』をつくろう」 各種単元のまとめの ・コミュニケー 学習のまとめで新聞を作成し,あらゆるデータやグ 方法として提案 ション能力 ラフを扱い,その中で引用などを確認しながら指導を ・判断力 行う。

※ 情報発信を反復指導するために,まとめ新聞を作 成させる。

体育 ○「生活しかたと病気の予防」

G保健

・判断力

生活の仕方によっておきる病気に触れ,どのように 病気の予防 ・規範意識 防止していけば良いか指導する。

※ この中で,コンピュータによる新しい病気として,

テクノ依存症を紹介する。

道徳 ○「情報を正しく活用しよう」 4一(2) ・規範意識

情報社会の光の部分とともに,情報化の進展に伴っ社:会参加の促進 ておきる影の部分を知り,新しい人権問題について触

れる。

 これらの授業プランは,学習指導要領の内容をもとに,筆者が単元の案を示したもので,

あくまでも一例である。そして,メディア・リテラシー教育の実践を中心に考えため,調 べ学習の単元案が多い。そのため,各学校で実践時には,これを参考に再構成して使用す

ることを考えている。

5 授業プランの可能性

 この授業プランは,学習指導要領を参考に一般的な授業プランを提案したため,あらゆ る学校で実践可能な授業プランであると考える。また,案の一例を示したものであるため,

他の単元の設定や他教科で取り組むことを実践者が加えることや変更することが可能であ る。その反面,指導する側に裁量が求められ,教材の準備などにより学習効果が左右され る可能性が高い。

 しかし,第2章で筆者が述べた「情報モラルの育成」に求められる資質の「コミュニケ ーション能力」,「判断力」,「規範意識」の育成を目標に授業が行えれば学習効果は高い授 業が展開できると考える。

 また,コミュニケーション能力を高める学習について本章第3節で触れたように,児童 のコミュニケー・一・ション能力は未成熟であり,それを高めるために繰り返し行っていくこと が必要である。授業プランでは,各学年で同じような単元案を設置しているが,繰り返し て学習することに効果があると考えており,学習を継続する中で高まってくると思われる。

授業プランを実践に移行した場合,繰り返し学習することは,短い期間で育成を見るので はなく,長い期間で育成を判断すれば必ず高められていると考える。

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