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氏名(本籍)
学位の種類
学位記番号
学位授与年月日
学位授与の条件
研究科専攻
学位論文題目
論文審査委員
ま麻
赫上
み三
博
や
弥(青森県)
士(医学)
医博第2354号
平成18年3月24日
学位規則第4条第1項該当
東北大学大学院医学系研究科
(博士課程)医科学専攻
ShortHairpinRNA-mediatedSelective
KnockdownofN'aV1.8Tetrodotoxin-resistant
Voltage-gatedSodiumChannelinDorsalRoot
GanglionNeurons
(後根神経節細胞におけるヘアピン型siRNAを
介したテトロドトキシン抵抗性電位依存性ナトリ
ウムチャネルNaVL8遺伝子の発現抑制)
(主査)
教授加藤正人
教授小野哲也
一385一
教授谷内一彦
論文内容要旨
ゴヒ量
目泉
電位依存性ナトリウムチャネルは神経細胞における活動電位の発生と伝搬に関与する重要な分
子で,類似する分子種ファミリーにより構成される。分子種それぞれは生理学的,病理学的に異
なる機能を持つことが知られている。NaV1.8は電位依存性ナトリウムチャネルのアイソフォー
ムのひとつで,主に末梢神経細胞に発現しており,神経因性疼痛の発症に関与していると示唆さ
れている。NaVL8ノックアウトマウスを使った研究では,通常の行動,成長,繁殖能は維持さ
れたままで,有害な機械的刺激に対する痛覚の消失,炎症性痛覚過敏の発現遅延が観察されてい
る。現時点ではアイソフォーム特異的にこのNaVL8のみの機能を抑制する薬物などは存在し
ないが,このチャネルを選択的に阻害することは神経因性疼痛の治療につながると考えられる。
さらに,アイソフォーム特異的に電位依存性ナトリウムチャネルを抑制することが出来れば,各
アイソフォームの機能解析にもつながり,痛みに加え,その他の生物学的プロセスの理解に役立
つと思われる。遺伝子の発現が何らかの形で抑制されることを遺伝・子のサイレンシングといい,
RNAillterference(RNAi,RNA干渉)のメカニズムは転写後サイレンシング,つまり転写は
正常に行われるが,mRNAが何らかの原因で分解されるか,または翻訳が阻害されることによ
り遺伝子の発現が抑えられる現象である。近年,様々なタンパクをターゲットとして,RNAiを
用いた研究はにわかに増えているものの,イオンチャネルをターゲットとしてノックダウンに成
功したとする報告はまだ少ない。著者のグループはこの技術を用いて,アイ'ノフォーム特異的な
電位依存性ナトリウムチャネルの抑制を,特にNaVL8をターゲットとして試みた。
方法
ラットNaVL8遺伝子のコーディング配列(Accession#92184)からRNAiのターゲットと
なる19塩基対を5箇所選択し,加えて,NaV1.1,L2,1.3,1.7に共通して存在する配列を選び
出し,汎テトロドトキシン感受性配列(pan-TTXsellsitivetarget)とした。これらの配列の
センス鎖とアンチセンス鎖を短いループ配列によりつなげ,DNAテンプレートから1つのプロ
モーターにより転写されて二本鎖RNAと似たshRNA(shorthairpinRNA)を生じるような
レンチウイルスベクターを作成した。ShRN'Aを発現している細胞においてNaV1.8が選択的に
阻害されることを,タンパクレベル,messengerRNAレベル,機能的レベルにわたる解析に
より確認した。shRNAレンチウイルスベクターはEGFP(EnhancedGreenFluorescence
Protein)を同時に発現するようにデザインされ,ウイルスが導入された細胞を蛍光下に確認で
きるようにした。
一386一一
結果
NaV1.8遺伝子をステイブルに発現させたHEK293細胞にshRNAレンチウイルスベクター
を導入し,ウエスタンプロット法を用いてNaVL8タンパクレベルを解析したところ,ターゲッ
ト特異的なタンパクレベルの減少が時間依存性に観察された。次に,実際のラット後根神経節細
胞を用いてshRNAレンチウイルスベクターの効果を調べたところ,免疫組織学的実験,逆転写
PCR(ReverseTral/scriptiol/-PolymeraseChaillReaction)により,ターゲット特異的な抗
NaV1.8抗体反応タンパク,RNAレベルの減少がみられた。さらに,テトロドトキシンを使用
することでテトロドトキシン感受性ナトリウムチャネルを除外し,さらに一定の電圧をかけ
NaVL8チャネルのみが活動するようなプロトコールを使用しパッチクランプ法を施行した。
shRNAが導入されたラット後根神経節細胞では,NaVL8電流の特徴は変わることなく,電流
の密度のみが減少していた。
結論
炎症性疼痛や神経因性疼痛の原因は様々なものが考えられており,NaVL8は1つのターゲッ
トに過ぎないものの,他の原因遺伝子と組み合わせて遺伝子発現制御を行うことにより効果的な
鎮痛効果が得られることが予想される。shRNAを細胞に導入することの禾IL点は,DNAをテン
プレートとして細胞内でsiRNAを産生できることであるが,従来のトランスフェクション法で
は神経細胞など,非分裂細胞への導入効率が低いことが問題であった。レンチウイルスは非分裂
細胞にも効率よく導入される特徴を持ち,神経疾患分野での利用が期待される。レンチウイルス
により導入されたshRNAにより選択的に遺伝子発現制御を行うこの手法は,神経の過興奮や神
経因性疼痛をコントロールする新しい遺伝子治療のアプローチとして有用であると考えられた。
一387一
壷
審査結果の要旨
複数の電位依存性ナトリウムチャネルが神経細胞における活動電位の発生と伝搬に関与してい
る。NaVL8は電位依存性ナトリウムチャネルのアイソフォームのひとつで,主として末梢神経
細胞に発現しており,炎症性および神経因性疼痛の病態機序に重要な役割をはたすことが示唆さ
れている。現時点ではアイソフォーム特異的にNaVl.8のみの機能を抑制する薬物などは存在し
ないが,このチャネルを選択的に阻害することができれば,神経因性疼痛の治療につながるばか
りではなく,各アイソフォームの機能解析にも連なる可能性がある。
本研究は,RNAinterference(RNAi,RNA干渉)とよばれる技法を用いて,アイソフォー
ム特異的な電位依存性ナトリウムチャネルの抑制を,特にNaVL8をターゲットとして試みた。
ラットNaV1.8遺伝子のコーディング配列(Accession#92184)からRNAiのターゲットとな
る19塩基対を5箇所えらび,加えて,NaVL1,L2,1.3,1.7に共通して存在する配列を選び出
し,汎テトロドトキシン感受性配列(pan-TTXsensitivetarget)とした。これらの配列のセ
ンス鎖とアンチセンス鎖を短いループ配列によりつなげ,DNAテンプレートーつのプロモーター
により転写されて二本鎖RNAと似たshRNA(shorthairpinRNA)を生じるようなレンチウィ
ルスベクターを作成した。このベクターによりNaVl.8が選択的に阻害されることを,蛋白レベ
ル,messengerRNAレベル,機能的レベルにわたり解析した。
NaVL8遺伝子を発現させた.HEK293細胞にshRNAレンチウイルスベクターを導入し,ウェ
スタンプロット法でNaV1.8を解析した結果,蛋白レベルの減少が観察された。次にラット後
根神経節細胞でshRNAレンチウイルスベクターの効果をみた結果,免疫組織学的解析と逆転写
PCRにより,ターゲット特異的な抗NaV1.8抗体反応蛋白とRNAレベルの減少が観察された。
さらにテトロドトキンを使用してテトロドトキン感受性ナトリウムチャネルを除外し,また一定
の電圧を加えNaV1.8のみが活動するような条件でパッチクランプ法を施行した。その結果,
shRNAが導入されたラット後根神経節では,NaVL8電流の特徴は不変だったが,電流の密度
のみが減少していた。
本研究では,shRNAを神経細胞に導入しているが,この方法は,DNAをテンプレートとし
て細胞内でsiRNAを産生できる利点をもつ。レンチウイルスは非分裂細胞である神経細胞にも
効率よく導入されるので,神経疾患や神経因性疼痛の新しい遺伝子治療のアプローチとして有用
である可能性を明らかにした点に意義がある。
よって,本論文は博士(医学)の学位論文として合格と認める。
一388一
『レ、