• 検索結果がありません。

気軽に取り組める「体つくり運動」の教材開発

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "気軽に取り組める「体つくり運動」の教材開発"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

宇都宮大学教育学部教育実践紀要 第2号 2016年8月1日

気軽に取り組める「体つくり運動」の教材開発

―低学年の授業実践を通して―

山田 明子

・茅野 理子

**

宇都宮市立雀宮中央小学校

宇都宮大学教育学部

**

  Akiko YAMADA* ・ Masako CHINO**: The D e v e l o p m e n t o f T e a c h i n g M a t e r i a l s o f Karadatsukuri-Movement in Elementary School.

 * Suzumenomiyachuo Elementary School, Utsunomiya

** Faculty of Education, Utsunomiya University (連絡先:[email protected] 著者2) 概要  本報告では,低学年の「体つくり運動」の教材開発を目的として,先行資料による教材研究,授業実践, 対象児童への事後アンケートを行い,それらを通して,授業カードと運動教材一覧表を作成した。作成にお いては,PLAN(指導計画案)→DO(授業実践)→CHECK(見直し) →ACTION(授業実践による検証) を繰り返し,授業実践は県内6校17時間で実施した。児童への事後アンケートからは,よい授業の4原則に 関連する項目すべてにおいて90%以上の好結果が得られた。  キーワード:体つくり運動,教材開発,授業カード,多様な動き,体ほぐし,小学校低学年 1.はじめに  体つくり運動は,「心と体の関係に気付くこと, 体の調子を整えること,仲間と交流することなどの 体ほぐしをしたり,体力を高めたりするために行わ れる運動」1)であり,その内容は,「体ほぐしの運動」 及び,小学校低中学年においては「多様な動きをつ くる運動(遊び)」,高学年においては「体力を高め る運動」で構成されている。  子どもの体力低下傾向が依然深刻な状況にあり, 加えて,じっとしていない,キレる,やる気がとぼ しい等の心の問題が顕著になってきている。野井 (2015)は,子どもの「前頭葉機能」の育ちそびれ や不調が心配されるケースが保育現場や教育現場で 問題となっていると指摘している。  こうした子どもたちが抱える問題を背景として, 「体つくり運動」の意義について改めて論究すると, 身体的発達,「体と心」の発達,そして学校保健の 観点からの3点があげられる。  しかし,その一方で,2014年に行われた東京都の 調査は,「体つくり運動」の学習に対し,「少し指導 しにくい」「指導しにくい」と答えた教師が半数以 上見られたこと,指導計画の作成や評価の仕方に悩 みを感じていることを報告している。  また,2016年に筆者が宇都宮市他の教員25名を対 象に調査した結果からは,以下のような課題や要望 が挙げられた。 ・年計を見ただけでは授業ができない ・具体的な活動のアイディアがほしい(活動量が確 保できる教材/楽しくていつの間にか体力がつく教 材/準備が簡単な教材/子どもが変容する手立て/ 1時間の流し方/その動きはどの運動につながって いるのか/子どもの動かし方/時間配分) ・図や映像があるとよい ・体育倉庫等にカードがあるとよい  重要であるはずの「体つくり運動」だが,手立て がわからず思うように授業ができないと感じている 教師が多いことが認められる。  大塚(2005)は,「体つくり運動」が難しい領域 と言われる一因には,「同一の運動を『体ほぐしの 運動』としても『体力を高める運動』としても指導 できる可能性があるにもかかわらず,両者は別々の 内容として考えられているという点」にあるのでは ないかと指摘している。  このような現状の課題を反映して,国立情報研究 所CiNiiの文献検索からは,文部科学省『学校体育

(2)

実技指導資料第7集』を始めとする図書文献21冊, 実践的研究などの先行研究123件が抽出された。  しかし,1時間の授業をする上で,すぐに活用で き,気軽に取り組める具体的な「体つくり運動」の 資料は少ない。そこで,基本的な体の動きを身につ ける入門期にある低学年に焦点を絞り,現場的な視 点で,「体つくり運動」の教材開発に着手したいと 考えた。具体的には,系統ごとに分類した運動一覧 表を作成すること,1時間の授業を行う場合に活用 できる授業カードを作成すること,それぞれの運動 について行い方を示すことである。  これらを現場で有効に活用できるような教材にし ていくことを目的として研究を進めていく。 2.研究方法 (1)先行資料による「体つくり運動」教材の抽出  『小学校学習指導要領解説体育編』(文部科学省, 2008),『学校体育実技指導資料 第7集 体つくり 運動−授業の考え方と進め方−(改訂版)』(文部科 学省,2012)をもとに,先行資料や書籍から「体つ くり運動」の教材を抽出し,1時間の授業をデザイ ンする(PLAN)。 (2)授業実践  県内6小学校,1・2年生,15学級,延べ560名 を対象として17時間の実践を行った。実施時期は, 平成27年12月∼平成28年2月。指導は筆者が行った。 詳細を,表1に示した。  実践にあたっては,PLAN (指導計画案)→DO(授 業実践)→CHECK(見直し) →ACTION(授業実 践による検証)を繰り返した。実践授業の様子はビ デオに撮り,授業後に児童と参観していただいた先 生方からアンケートを回収し,反省改善して次時を 行う。これを繰り返しながら「よい授業」を模索し た。ここでいう「よい授業」とは高田(1982)が提 唱した「よい体育授業の4原則」(精一杯運動させ てくれた,技や力を伸ばしてくれた,友だちと仲良 く学習させてくれた,何かを新しく発見させてくれ た)である。 (3)事後アンケート    県内4小学校(10学級)において12時間の実践後, 1・2年生(のべ422人)を対象として事後アンケー トを行った。  アンケート項目は,①友達と仲良く運動できたか, ②進んで運動できたか,③新しい運動のやり方はわ かったか,④体を精一杯動かしたか,⑤楽しかった か,の5項目である。 3.結果及び考察 (1)先行文献資料を基にした運動一覧表と授業モ デルの作成 ①「体ほぐし運動」と「多様な動きをつくる運動遊び」  前述したように,「体つくり運動」を難しい領域と させてしまう要因として,両者の内容に関する混乱 がある。そこで,このことについて,まず考察したい。  徳永(2015)は,「体ほぐし運動」は「誰にでも できるやさしい各種の運動(遊び)によって心を解 放し,『気付き・調整・交流』を果たしていくこと がねらい」(p.15)であり,「多様な動きをつくる運 動(遊び)」は,「動きを身につけることがねらいで あり,(略)習熟できるよう一定程度繰り返す時間 を確保することが必要になる」(p.16)としている。 特に,高学年の「体力を高める運動」については,「一 人ひとりが体力を高めるためのねらいをもって運動 する(略)子ども自身が体力作りを意識し,計画的・ 継続的に運動することができるようになることを目 指している」(p.17)と説明している。  一方で檜皮(2015)は,「体つくり運動は,様々 なねらいに応じて創意工夫できるが,常に多面的な 側面を有する。それ故,体つくり運動は,一定のね らいに応じて運動内容を構成するが,体力向上的な 側面と体ほぐし的な側面を明確に区分することは難 しいと考える」(p.19)とし,「重要なことは,体力 表1.授業実践

(3)

向上なのか,体ほぐしの運動なのかという線引きに とらわれないことである」(p.20)と指摘する。  同様に,大塚も(2005),「体ほぐしの運動」と「体 力を高める運動」の課題を指摘し,「『体ほぐしの運動』 で体力を高めることができ,また『体力を高める運 動』でも心や体をほぐすことができるというような, 両者を有機的に関連づけた『体つくり運動』教材の 研究が今後の課題である」(p.23)と述べている。  そこで,授業を組み立てて行く際に,同じ運動で あっても「体ほぐし運動」にも「多様な動きをつく る運動遊び」にもなり得,それは教える側がねらい をどこに据えて行うかが大切であり,両方の側面を 持っている場合もありうるのではないかということ を前提に授業を行うことにした。 ②先行文献資料を基にした運動一覧表と授業モデル の作成  以上のことを踏まえ,1時間の授業の中に,「体 ほぐし運動」と「多様な動きをつくる運動遊び」の 両方を入れることと,「多様な動きをつくる運動遊 び」では4つの運動遊び(体のバランスをとる運動 遊び・体を移動する運動遊び・用具を操作する運動 遊び・力試しの運動遊び)を17時間の実践ですべて 挑戦することとした。  4つの運動遊びについては,先行資料の検索により, 教材例を抽出し,学習形態等を考慮して運動教材一 覧表(案)を作成した。また,書籍等の活動例を参 考に3時間扱いの単元として授業プランを計画した。 (2)授業実践  まず,授業プランにそって最初の7時間を同一校 で行うことで,授業計画,指導案の原型を作り,さ らに10時間を5校の協力校で行った。  また,授業実践にあたっては,高田の「よい体育 授業の4原則」(精一杯運動させてくれた授業,技 や力を伸ばしてくれた授業,友達と仲良く学習させ てくれた授業,何かを新しく発見させてくれた授業) に基づき,授業展開できるように留意した。  実践内容の一部を表2に示す。  授業実践を通して,考察されたことは以下のよう なことである。 ・1時間の授業の中に,10個以上の活動を入れる と集中力が途切れず楽しんでできること ・基本的な動きを身に付けさせる上では,前回 やった動きのおさらいも大切であること ・授業の中に新しい動きを取り入れることが児童 の学習意欲につながること  これらの考察を授業カード並びに運動教材一覧表 の作成につなげた。 (3)事後アンケート  授業後に行ったアンケートの質問項目とそれぞれ の結果は表3,図1∼5のとおりである。  各項目とも「とてもそう思う」と答えた児童が 90%以上と多かった。特に「楽しかったですか」の 質問には97%(422人中408人)がとても楽しかった と答えている。  自由記述欄(次頁に一部を掲載)を見てみると, 具体的にどんな運動を好み,運動に対して何を期待 しているのかが見えてきた。  人気が高かったものは「猛獣狩りに行こう」「進化 じゃんけん」「バナナ鬼」「きゅうりの塩もみ」であった。  これらの結果及び児童の感想から,今回実践した 「体つくり運動」の授業はまさに,体をたくさん動 かす授業,今まで知らなかった新しい運動を教えて くれる授業,「できた」と実感できる授業,友だち と仲良くなれる授業であったのではないかと考えら れる。この4つの要素は先にも述べたが,高田が提 唱する「よい体育の授業の4原則」と一致している。 表3.「体つくり運動」アンケート結果(N=422) 表2.実践①(平成28年12月7日)

(4)

 本授業実践が有効であったことを示す結果であ り,肯定的な回答につながった要因であると考える。 (4) 授業カードの作成  これらのことを踏まえ,授業実践を通して手応え を感じた活動を組み合わせ,授業カードを作成した。  授業カードは,以下の4種類を作成し,左頁に1 時間の流れ,右頁に詳しい解説を配した。  ・Aメニュー 教師も児童も初めて行う場合  ・Bメニュー ペア活動を多く取り入れたい場合  ・Cメニュー 運動量を多くしたい場合  ・Dメニュー グループや全体での達成感を味わ   わせたい場合  この授業カードの展開のまま行うことはもちろ ん,運動教材一覧表から教材を入れ替えて行ったり, 他領域の授業を行う前の準備運動で,1部を取り入 れて行ったりしてもよいと考えている。  参考資料として,巻末に授業カードの一部(Cメ ニュー)と運動教材一覧表を提示する。 4.おわりに  17時間の授業実践を通して,低学年の体つくり運 動の授業において心がけなければならない大切なこ とが3つあると感じた。 ①運動の種類と運動量の確保  運動の種類を増やすことは子どもたちの興味関心 を高め,運動量も増える。多様な運動経験は多様な 体の動かし方の経験であり,今後の体育やスポーツ に生かされていくだろう。  例えば,風船を片手で上に弾く運動を「初めてや る運動」と喜ぶ子どもの姿があった。「あんたがた どこさ」の歌はほとんどの子どもたちが口ずさめな かった。子どもたちの体の動かし方の未経験を減ら   図1.質問項目1   図2.質問項目2   図3.質問項目3   図4.質問項目4   図5.質問項目5

(5)

さなくてはならないと痛感した。  一方で,子どもたちは新しい運動を知った喜び を,アンケートの中に,たくさん寄せてくれた。授 業実践では1時間の授業で10種類以上の運動を行っ てきた。体育の授業の中で運動する喜びや楽しさを 味わえれば,進んで運動に親しむ子どもの育成につ ながっていくのではないかと思うのである。 ②メリハリのある授業  授業の中に「はじめ−なか−おわり」を意識した 運動を配置する。心が高ぶる導入の運動(はじめ), 本時で伸ばしたい力を育てるメインの運動(なか), 心と体がクールダウンする運動(おわり)を一連 の流れとして行うと授業の中にひとつの物語が生ま れ,児童教師ともに達成感がもてた。また,運動量 を確保するために,説明を最小限にとどめ,たくさ んの運動に触れさせる。運動と運動をつなげる言葉 を工夫し,流れを大切にしたい。 ③低学年は「運動遊び」  体育の授業が,児童の興味関心を欠いた単調な動 きの反復練習に終わってしまってはいけない。  低学年の「体つくり運動」に「多様な動きを作る 運動遊び」が内容として示されているが,末尾が「運 動遊び」となっている。これは,児童が易しい運動 に出会い,伸び伸びと体を動かす楽しさやここちよ さを味わう遊びであることを強調したもので,他領 域においても同様の趣旨である。  ある学校での授業実践後に担任の先生から寄せら れたアンケートの回答に以下のような一文があった。 「すごく遊んだ」と子どもたちが感じ取れたとい うことは,「すごく楽しかった」「すごく体を動 かした」ということであろう。つまり体を動か すと気持ちよいことや楽しいことを充分味わえ たのである。低学年で「体つくり運動」を行う 際には,「遊び」の中で,仲間と交流し,基本的 な体の動きを培い,楽しく学習するのだという ことを教師の側が忘れてはいけないのである。  低学年期における運動経験の大切さを考えると, 運動の日常化や,幼保との連携の在り方について今 後さらに研究を深めていく必要がある。 謝辞  アンケート調査並びに授業実践にご協力いただい た各校の先生方,児童のみなさんに感謝します。 引用・参考文献 1)文部科学省(2008)小学校学習指導要領解説体 育編.東洋館出版社.p.13. ・ 野井真吾(2015)子どもの からだと心 に異変 あり.体育科教育63(11):10‐13. ・ 東京都教育委員会(2015)平成26年度 教育研 究員研究報告書 小学校・体育. ・ 大塚 隆(2005)「体つくり運動」の教材研究−「体 ほぐしの運動」と「体力を高める運動」に関す る意識調査−.東海大学紀要体育学部34:15-24. ・ 文部科学省(2012)学校体育実技指導資料 第 7集 体つくり運動−授業の考え方と進め方− (改訂版).東洋館出版. ・ 高田典衛(1982)よい体育授業の探求.大修館書店. ・ 徳永隆治(2015)「体つくり運動」の内容構成を 問い直す.体育科教育62(11):14‐17. ・ 檜皮貴子(2015)体力向上と体ほぐしを融合させ た教材の可能性.体育科教育62(11):18‐21. ・ 文部科学省国立教育政策研究所教育課程研究セ ンター(2011)評価基準の作成.評価方法等の工 夫改善のための参考資料【小学校体育】.教育出版. ・ デビット・L・ガラヒュー,杉原隆訳(1999) 幼少年期の体育 発達的視点からのアプローチ. 大修館書店. ・ 池田延行・村田芳子(2010)よくわかる「体つ くり運動」の授業づくり.明治図書. ・ 白旗和也(2014)これだけは知っておきたい「体 つくり運動」の基本.東洋館出版. ・ 細江文利(2010)すぐ使える!体つくり運動の 指導法.小学館. ・ 池田延行・名古屋市体育研究会(2000)すぐ使 える体ほぐしの運動136選.明治図書. ・ 全国ダンス・表現運動授業研究会(2015)みん なでトライ!表現運動の授業.大修館書店. ・ おもしろ準備運動研究会(1995)体育おもしろ 準備運動100選.明治図書. ・ 平塚昭仁(2013)体育の授業づくり.フォーラムA. ・ 正木健雄・井上高光・野尻ヒデ(2004)脳をき たえる「じゃれつき遊び」.小学館. ・ 日 本 体 育 協 会(2010) ア ク テ ィ ブ チ ャ イ ル ド プ ロ グ ラ ム http://www.japan-sports.or.jp/ Portals/0/acp/index.html (参照日2015.12.2)

(6)
(7)
(8)

平成28年 3月31日 受理    表4.運動教材一覧表

参照

関連したドキュメント

( 同様に、行為者には、一つの生命侵害の認識しか認められないため、一つの故意犯しか認められないことになると思われる。

脱型時期などの違いが強度発現に大きな差を及ぼすと

つまり、p 型の語が p 型の語を修飾するという関係になっている。しかし、p 型の語同士の Merge

Q7 

大村 その場合に、なぜ成り立たなくなったのか ということ、つまりあの図式でいうと基本的には S1 という 場

自分ではおかしいと思って も、「自分の体は汚れてい るのではないか」「ひどい ことを周りの人にしたので

これも、行政にしかできないようなことではあるかと思うのですが、公共インフラに