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ロタテック内用液に関する資料

第2部(モジュール2)

CTDの概要(サマリー)

2.5 臨床に関する概括評価

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2.5 臨床に関する概括評価 - 1 -

目次

頁 表一覧... 5 付録一覧... 6 略号及び用語の定義... 7 2.5.1 製品開発の根拠... 9 2.5.1.1 科学的背景... 9 2.5.1.1.1 ロタウイルス胃腸炎の公衆衛生に及ぼす影響... 9 2.5.1.1.2 ロタウイルス胃腸炎の疫学... 9 2.5.1.1.3 ロタウイルスの血清型別罹患率... 10 2.5.1.1.4 ロタウイルス胃腸炎の発症機序と臨床像... 11 2.5.1.1.5 ロタウイルス胃腸炎の治療... 11 2.5.1.1.6 ロタウイルスの自然感染及び免疫反応... 11 2.5.1.1.7 V260:5価ロタウイルスワクチン ... 12 2.5.1.1.7.1 V260開発の根拠 ... 12 2.5.1.1.7.2 V260の特徴 ... 13 2.5.1.1.8 本邦における本ワクチンの必要性... 14 2.5.1.2 外国におけるロタウイルスワクチンと腸重積症の関連性の評価 ... 15 2.5.1.2.1 腸重積症の背景:疫学、臨床症状、治療法及び病因... 15 2.5.1.2.2 RotaShield(Wyeth-Ayerst社)と腸重積症との関連性 ... 16 2.5.1.2.3 外国におけるV260の開発継続の決定 ... 16 2.5.1.3 ロタウイルス感染と川崎病の関連性の評価... 17 2.5.1.3.1 川崎病の背景:疫学、臨床症状及び病因... 17 2.5.1.3.2 外国におけるロタウイルス感染と川崎病の関連性の評価... 17 2.5.1.4 臨床開発計画... 19 2.5.1.4.1 外国における開発プログラム... 19 2.5.1.4.1.1 第Ⅰ相/第Ⅱ相試験の要約... 19 2.5.1.4.1.2 第Ⅲ相試験の要約-外国における初回製造販売承認申請... 19 2.5.1.4.1.3 外国における初回承認申請後に終了した臨床試験及び追加解析... 20 2.5.1.4.1.3.1 006試験(REST)の最終データの収集・解析時期 ... 20 2.5.1.4.1.3.2 006試験(REST)のカットオフ日以降に入手したデータを用い た追加解析... 21 2.5.1.4.1.3.3 外国における初回承認申請後に終了した臨床試験... 21 2.5.1.4.2 本邦における開発プログラム... 22 2.5.1.5 治験の標準的方法... 24 2.5.1.5.1 V260の力価及び接種回数 ... 24 2.5.1.5.2 有効性... 25

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2.5 臨床に関する概括評価 - 2 - 2.5.1.5.2.1 ロタウイルス胃腸炎を発症した症例の定義(Case基準) ... 25 2.5.1.5.2.2 ロタウイルス胃腸炎の追跡期間... 26 2.5.1.5.2.3 ロタウイルス胃腸炎の重症度判定方法:クリニカルスコアシステム... 26 2.5.1.5.2.4 医療機関の利用状況の評価方法... 26 2.5.1.5.3 安全性... 27 2.5.1.5.3.1 腸重積症の症例定義と安全性評価判定委員会の役割... 27 2.5.1.5.4 免疫原性... 27 2.5.1.5.4.1 V260の免疫原性の評価項目と設定根拠 ... 28 2.5.1.5.4.2 V260と他の既承認小児用ワクチンを併用した場合の免疫原性の評 価方法... 28 2.5.1.5.4.2.1 006試験(REST)の米国における既承認小児用ワクチンの免疫 原性の評価... 28 2.5.1.5.4.2.2 014試験における市販ワクチンの免疫原性の評価 ... 29 2.5.1.5.4.3 製造ロットの一貫性確認試験... 29 2.5.1.6 統計解析... 29 2.5.1.7 日本の規制当局によるガイダンス及び助言... 30 2.5.1.7.1 対面助言... 30 2.5.1.7.1.1 (20 年 月 日) ... 30 2.5.1.8 医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)の遵守 ... 32 2.5.2 生物薬剤学に関する概括評価... 33 2.5.3 臨床薬理に関する概括評価... 34 2.5.4 有効性の概括評価... 35 2.5.4.1 有効性... 35 2.5.4.1.1 試験デザイン及び被験者の内訳の概略... 35 2.5.4.1.1.1 国内臨床試験... 35 2.5.4.1.1.1.1 第Ⅲ相試験(029試験) ... 35 2.5.4.1.1.2 外国臨床試験... 35 2.5.4.1.1.2.1 第Ⅱ相試験(005試験) ... 35 2.5.4.1.1.2.2 第Ⅲ相試験[006試験(REST)] ... 36 2.5.4.1.1.2.3 第Ⅲ相試験(007試験) ... 37 2.5.4.1.1.2.4 第Ⅲ相試験(009試験) ... 38 2.5.4.1.1.2.5 第Ⅴ相試験(014試験) ... 38 2.5.4.1.2 有効性の結果の要約... 39 2.5.4.1.2.1 第Ⅱ相試験における結果の要約... 39 2.5.4.1.2.2 第Ⅲ相試験における結果の要約... 39 2.5.4.1.2.2.1 重症度別の有効性... 40 2.5.4.1.2.2.2 血清型別(ワクチン型・非ワクチン型)の有効性... 41

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2.5 臨床に関する概括評価 - 3 - 2.5.4.1.2.2.3 ロタウイルス感染シーズン別の有効性... 42 2.5.4.1.2.2.4 部分集団別の有効性... 43 2.5.4.1.2.2.5 既承認小児用ワクチンと併用した場合の有効性... 44 2.5.4.1.2.2.6 V260の接種スケジュール別の有効性 ... 45 2.5.4.1.2.2.7 V260の3回接種完了前の有効性 ... 45 2.5.4.1.2.2.8 ロタウイルス胃腸炎による医療機関の利用に対する有効性... 47 2.5.4.1.3 国内第Ⅲ相試験と外国第Ⅲ相臨床試験との比較の要約... 48 2.5.4.1.3.1 ロタウイルス胃腸炎(重症度を問わない)に対するV260の予防効果 ... 48 2.5.4.1.4 有効性/医療機関の利用状況の評価の結論... 49 2.5.4.2 免疫原性... 51 2.5.4.2.1 第Ⅱ相試験(005試験)の結果の要約 ... 51 2.5.4.2.2 第Ⅲ相試験の結果の要約... 51 2.5.4.2.2.1 外国臨床試験[006試験(REST)、007試験及び009試験] ... 51 2.5.4.2.2.2 V260と他の既承認小児用ワクチンの併用[006試験(REST)] ... 52 2.5.4.2.2.3 V260と経口生ポリオウイルスワクチン(OPV)の併用 ... 52 2.5.4.2.3 製造工程の一貫性の確認(009試験) ... 53 2.5.4.2.4 有効性の代替マーカー... 53 2.5.4.2.5 免疫原性のまとめ... 54 2.5.5 安全性の概括評価... 55 2.5.5.1 ロタウイルスワクチンの重要な有害事象の概観 ... 55 2.5.5.2 試験対象集団と治験薬曝露状況... 56 2.5.5.2.1 国内臨床試験... 56 2.5.5.2.2 外国臨床試験... 56 2.5.5.3 比較的よく見られる有害事象... 57 2.5.5.3.1 国内臨床試験... 57 2.5.5.3.2 外国臨床試験... 57 2.5.5.4 死亡、重篤な有害事象、試験中止... 58 2.5.5.4.1 国内臨床試験... 58 2.5.5.4.2 外国臨床試験... 58 2.5.5.5 注目すべき有害事象(腸重積症:Intussusception) ... 60 2.5.5.5.1 国内臨床試験... 60 2.5.5.5.2 外国臨床試験... 60 2.5.5.6 特に注目すべき有害事象... 62 2.5.5.6.1 国内臨床試験... 62 2.5.5.6.2 外国臨床試験... 62 2.5.5.7 特定の集団及び条件における安全性... 63

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2.5 臨床に関する概括評価 - 4 - 2.5.5.7.1 内因性要因... 63 2.5.5.7.1.1 国内臨床試験... 63 2.5.5.7.1.2 外国臨床試験... 63 2.5.5.7.2 接種スケジュール別(地域別)の安全性[外国臨床試験:006試験(REST)] ... 64 2.5.5.7.3 外因性要因... 64 2.5.5.8 ワクチンウイルス株の糞便中排出... 64 2.5.5.8.1 国内臨床試験... 64 2.5.5.8.2 外国臨床試験... 64 2.5.5.9 既承認小児用ワクチンと併用した場合の安全性 ... 65 2.5.5.9.1 国内臨床試験... 65 2.5.5.9.2 外国臨床試験... 66 2.5.5.10 過量投与... 67 2.5.5.11 薬物乱用... 67 2.5.5.12 市販後の使用経験... 67 2.5.5.12.1 副作用... 67 2.5.5.12.2 市販後の安全性情報からCCDSに追加となった副作用... 68 2.5.5.12.3 定期的安全性最新報告... 68 2.5.5.12.4 製造販売後の安全性観察研究(019試験) ... 68 2.5.5.12.5 市販後の使用経験の結論 ... 69 2.5.5.13 用量の妥当性(力価)... 70 2.5.5.14 安全性データの限界... 70 2.5.5.15 安全性に関する結論... 71 2.5.6 ベネフィットとリスクに関する結論... 73 2.5.7 参考文献... 76 2.5.8 付録... 87

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2.5 臨床に関する概括評価 - 5 -

表一覧

頁 表2.5: 1 V260 に含まれる 5 種類の再集合体ロタウイルスワクチン株の抗原構成 ...14 表2.5: 2 日本における臨床データパッケージ... 23 表2.5: 3 第Ⅱ相/第Ⅲ相試験におけるヒト-ウシ再集合体ロタウイルスワクチンの有効性..41

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2.5 臨床に関する概括評価 - 6 -

付録一覧

頁 付録2.5: 1 外国の第Ⅲ相試験の評価項目と治験薬接種した被験者数... 87 付録2.5: 2 006 試験(REST)において、治験薬各接種後 60 日間に発現した腸重積症(確定 症例)...88 付録2.5: 3 腸重積症を発症した乳児の年齢 (006 試験データ対ニューヨーク州データ)...89 付録2.5: 4 接種群別の腸重積症と診断された年齢... 90

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2.5 臨床に関する概括評価 - 7 -

略号及び用語の定義

略号

総合機構 - 独立行政法人医薬品医療機器総合機構

CBER Center for Biologics Evaluation and Research 生物学的製剤評価研究センター

CCDS Company Core Data Sheet 企業中核データシート

CDC Centers for Disease Control and Prevention 米国の疾病予防管理センター

COMVAX -

ヘモフィルスb 型ワクチン(髄膜炎菌

たん白質結合体)及び組換え沈降B 型

肝炎ワクチン

CSR Clinical Study Report 治験総括報告書

DSMB Data and Safety Monitoring Board 安全性データモニタリング委員会

FDA Food and Drug Administratio 米国食品医薬品局

FES Finland Extension Study フィンランドで実施した006試験の追

跡調査延長試験

FHA Filamentous hemagglutinin 繊維状赤血球凝集素

GMT Geometric Mean Titers 幾何平均抗体価

HIV Human Immunodeficiency Virus ヒト免疫不全ウイルス

INFANRIX - ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド及び沈降精製百日せきワクチン

IPOL - 不活化ポリオワクチン

OPV Oral poliovirus vaccine 経口生ポリオワクチン

PFU Plaque-forming units プラック形成単位:プラック法を用い

て測定した力価単位

PREVNAR - 沈降7価肺炎球菌結合型ワクチン(無毒

性変異ジフテリア毒素結合体)

PRP Polyribosyl Ribitol Phosphate ヘモフィルスインフルエンザ菌b 型の

莢膜の主要多糖体成分

PSUR Periodic Safety Update Report 定期的安全性最新報告

REST Rotavirus Efficacy and Safety Trial 外国で実施した第Ⅲ相試験(006試験)

SAGE Strategic Advisory Group of Experts WHO のワクチン関係諮問委員会

SCID Severe combined Immunodeficiency 重症複合型免疫不全

SEAC Safety Endpoint Adjudication Committee 安全性評価判定委員会

SIDS Sudden Infant Death Syndrome 乳児突然死症候群

SUR Safety Update Report 安全性最新報告

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2.5 臨床に関する概括評価 - 8 - 略号及び用語の定義(続き) 定義 同時接種群 V260と OPV を同時接種した群 交互接種群 V260と OPV を交互接種した群

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2.5 臨床に関する概括評価 - 9 - 2.5.1 製品開発の根拠 2.5.1.1 科学的背景 2.5.1.1.1 ロタウイルス胃腸炎の公衆衛生に及ぼす影響 ロタウイルスは、発展途上国、先進国を問わず5歳以下の乳幼児にみられる重度の下痢の主要な 原因ウイルスであり、社会・経済的状態や衛生状態にかかわらず、世界中の小児の約95%が感染 している[資料5.4: 83] [資料5.4: 84]。 このロタウイルスによる胃腸炎は、糞口経路で伝播する疾患として考えられており、感染する と糞便中に多量のウイルスが排出される。さらに、ロタウイルスの感染力は強く、1~10個のウイ ルスが口に入るだけで感染が成立するといわれている。一般的に、感染症は、細菌性赤痢やコレ ラなどのように、下水道などの社会基盤の脆弱な発展途上国で多くみられ、社会基盤が整うと著 しく減少するため、衛生状態の改善が予防対策として重要と考えられている。しかしながら、ロ タウイルス胃腸炎は、衛生状態の改善や下水道などの社会基盤の整備のみによって感染伝播が著 しく改善されることは難しいと考えられている。実際、本邦のような衛生状態の良い国において も、脱水症状に対する適切な治療により死亡例は少ないものの、3~5歳までに80%の小児はロタ ウイルスに感染しており[資料5.4: 85]、医療資源に大きな影響を与えている。本邦でのロタウイル ス感染による経済的損失は500億円ともいわれており[資料5.4: 86]、米国の疾病予防管理センター (以下、CDC)も、ロタウイルス感染による医療費・社会的コストが米国単独でも年間十億ドル を超えると推定している[資料5.4: 87]。 このような点から、世界保健機構(以下、WHO)をはじめとする国際機関は、ロタウイルスワ クチンが最も現実的なロタウイルス胃腸炎の予防策になると考え、ロタウイルスワクチンの開発 と早期導入を優先課題と考えている。 また近年、WHO のワクチン関係諮問委員会(以下、SAGE)は、発展途上国においてロタウイ ルスワクチンを使用した結果を基に、各国でのロタウイルスワクチンの定期予防接種への組入れ を推奨している。特に、ロタウイルスワクチンは乳児の死亡率の減少に重要な役割を担っている ことから、5歳未満の小児の下痢による死亡率が10%以上の国に対しては、ロタウイルスワクチン 接種を強く推奨している[資料5.4: 88]。 2.5.1.1.2 ロタウイルス胃腸炎の疫学 ロタウイルス胃腸炎は、本邦のような温帯地域、すなわち寒暖の季節のある地域では冬期に感 染のシーズンがある。本邦における罹患状況は、厚生労働省の調査研究班の推計では全国で年間 79万人、累積罹患率でみると6歳になるまでにおよそ半数の乳幼児がロタウイルス胃腸炎により小 児外来を受診している。さらに、本邦において実施された WHO のロタウイルス疾病負担調査の 共通プロトコールを用いた調査では、5歳未満の乳幼児で入院を必要とするロタウイルス胃腸炎の 累積罹患率は、6.6%(78,000人)と推定されている[資料5.4: 89] [資料5.4: 90]。 また、本邦でのロタウイルス胃腸炎による入院患者数の月齢別分布調査によると、5歳未満に起 こるロタウイルス胃腸炎による入院率は、生後6ヵ月までが7.8%、生後6ヵ月から24ヵ月(乳幼児 期)が62%となり、生後6ヵ月以降の乳幼児期では、重度のロタウイルス胃腸炎が発症している[資

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2.5 臨床に関する概括評価 - 10 - 料5.4: 89] [資料5.4: 91]。また、本邦でも死亡例の報告がある[資料5.4: 85]。 世界的には、本邦と同様の温帯地域すなわち米国及び欧州では冬期が感染シーズンとなるが、 熱帯及び亜熱帯地域では年間を通じロタウイルス胃腸炎の発症がみられている。ロタウイルス胃 腸炎の年間発症数は13,800万件であり、そのうち自宅療養が約11,100万件、外来受診が約2,500万 件、入院が約200万件にのぼり、死亡例数は35万2,000~59万2,000例と推定されている[資料5.4: 92]。 死亡率及び罹患率は、発展途上国において非常に高いものの、罹患率は先進国でも高く、年間外 来受診は約1,800万件、入院件数は約22万3,000件にのぼる[資料5.4: 92]。 2.5.1.1.3 ロタウイルスの血清型別罹患率 ロタウイルスは、エンベロープを持たない20面体の大きな粒子であり、三層構造のカプシドた ん白質中に11本に分節化した二本鎖 RNA を有している[資料5.4: 8] [2.3.S.1.2項]。 ロタウイルスのP 血清型と G 血清型の分類は、交差中和試験法により行われているものの、技 術的に困難な点がある。そこで近年では、VP4又は VP7の遺伝子の塩基配列から分類する P 遺伝 子型とG 遺伝子型に分類する方法も用いられている[資料5.4: 93] [資料5.4: 15] [資料5.4: 94]。 現在までのところ、ロタウイルスのG 型(VP7)は、23種類の遺伝子型と14種類の血清型が同 定されており、P 型(VP4)は、32種類の遺伝子型と14種類の血清型が同定されている[資料5.4: 93] [資料5.4: 15] [資料5.4: 95] [資料5.4: 96] [資料5.4: 97] [資料5.4: 98] [資料5.4: 99] [資料5.4: 100]。G 血 清型の呼称は、ほとんどがG 遺伝子型と一致しているものの、P 血清型は、遺伝子型とは別の呼 称となっている。つまり、P 血清型は番号及びアルファベット(既知の場合)で示され、P 遺伝 子型は、P 血清型の番号の後ろに[ ]でくくられた番号で示されている。例えば、P1A[8]という表 現は、血清型分類ではP1A であり、遺伝子型分類では P[8]という意味である。 主要なP 型は P1A[8]と P1B[4]、主要な G 型は、G1、G2、G3、G4及び G9である[資料5.4: 94]。 ロタウイルス中のVP4(P 型)と VP7(G 型)は様々な組合せが可能であるが、最も高頻度にみ られるものがG1と P1A[8]の組合せである。 こうした組合せは、ロタウイルスのゲノムが分節遺伝子からなるために起こる現象で、1つの細 胞に2種類以上のロタウイルスが重感染すると、細胞内で遺伝子の交換が生じるためである。この 現象をリアソートメント(再集合)といい、得られたウイルスをリアソータント(再集合体)と いう。このリアソートメント(再集合)は培養細胞だけでなく、自然界でも起きており、さらに ヒトと動物のロタウイルス間でも起きやすく、ロタウイルスの生態を複雑にしている。 このG 型と P 型の分布は、ワクチン開発の重要な基礎データであり、世界的に調査が進められ ている。その結果、全体のウイルス株のうち P 型の P1A[8]、P1B[4]と G 型の G1、G2、G3及び G4の組合せが、全世界で約88%のウイルス型をカバーできている。しかし、これらの分布は年と 場所により大きく異なっており、最近では、G9血清型と P[8]、P[6]及び P[4]との再集合体が、オ ーストラリア、バングラデシュ、日本及びインドにおいて高頻度に認められている[資料5.4: 101]。 本邦では、2001年までは G1血清型が圧倒的に優位であったが、2002年以降は G9血清型も含めて 多数の型が同時に流行しており、G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]及び G9P[8]血清型で全体の96% を占めるようになった[資料5.4: 85] [資料5.4: 82]。

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2.5 臨床に関する概括評価 - 11 - 2.5.1.1.4 ロタウイルス胃腸炎の発症機序と臨床像 ロタウイルスは小腸絨毛の先端で感染及び複製し、細胞を死滅させ絨毛上皮を脱落させる結果、 吸収障害を起こし、水分と電解質の喪失を引き起こす[資料5.4: 102]。このロタウイルス感染は、 無症候性の感染、軽度の下痢から重度の脱水症状を伴う胃腸炎まで様々な臨床症状を引き起こし、 ときに、致命的な場合もある[資料5.4: 103]。 ロタウイルス胃腸炎の特徴は、下痢、嘔吐及び発熱が典型的な症状であり、症状は2~3日の潜 伏期間を経て発症し、平均6日間持続する[資料5.4: 104]。ロタウイルス胃腸炎が他の病因による胃 腸炎と異なる特徴として、強い嘔吐と脱水症状及び症状の長期化がある[資料5.4: 105]。また、ほ とんどの小児は生後2年間でロタウイルスに反復感染するが、これによりロタウイルス胃腸炎の重 症度は低下する[資料5.4: 69]。 2.5.1.1.5 ロタウイルス胃腸炎の治療 現在、ロタウイルス胃腸炎に対する特異的な抗ウイルス療法は開発されておらず、軽度から中 等度の場合には脱水症を防ぐための経口補液などの対症療法が行われている。しかし、嘔吐と長 期間持続する症状に対する効果は十分ではない[資料5.4: 106]。嘔吐や重度の脱水症状のある小児 では、点滴静注による補液療法が必要となることもあるが、順調に脱水症状が回復すれば、通常 は後遺症を伴わず回復する[資料5.4: 104]。しかし、ロタウイルス胃腸炎に対する経口の脱水症状 治療は広く行われているものの、過去10年間の先進国での入院率又は発展途上国での死亡率の改 善はみられていない。なお、近年、ロタウイルスワクチンが導入された国において死亡率の改善 が報告されている[資料5.4: 107]。 2.5.1.1.6 ロタウイルスの自然感染及び免疫反応 ロタウイルスの自然感染は、その後のロタウイルス感染に対する防御免疫となり、反復感染に よりこの防御免疫が増強される[資料5.4: 106] [資料5.4: 69]。ロタウイルス自然感染後の、この防 御免疫の機序は十分に解明できていないものの、外層カプシドたん白質のVP7(G 型)及び VP4 (P 型)に対する血清型特異的な中和抗体が、重要な予防因子の1つと考えられている。 自然感染したロタウイルスに関する免疫原性試験では、2回目以降の感染で異種免疫がみられた ものの、初回感染では血清型特異的な血清中和抗体が誘起された。さらに、自然感染したロタウ イルス及びロタウイルスワクチンに関する有効性試験では、初回感染後の下痢に対する予防効果 は、血清型特異的であった。また、メキシコシティの小児200例を2年間追跡した研究でも、一度 感染した血清型のウイルスに再度感染する可能性は低く[資料5.4: 108]、新生児がロタウイルスに 感染した場合、新たな血清型ウイルスに感染しない限り、生後3年間は重症疾患に対する予防効果 が維持されることが示された[資料5.4: 109] [資料5.4: 110]。さらに、G3血清型に起因したロタウイ ルス感染シーズン中の4価(G1、G2、G3及び G4血清型)ワクチンの予防効果は、1価(G1)ワク チンよりも有意に優れていた[資料5.4: 52]。しかし、原理は不明であるものの異種防御(heterotypic protection)には一貫性がないことから、同種防御(homotypic protection)及び異種防御(heterotypic protection)の両方を有する V260のようなワクチンは、より一貫性のある効果が期待できる[資料

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2.5 臨床に関する概括評価 - 12 - 5.4: 111]。 これらの点を総合すると、ロタウイルスの血清型に対する多価ワクチン接種が、ロタウイルス 胃腸炎に対する最も効果的な予防効果を有するものと考えられる。 2.5.1.1.7 V260:5価ロタウイルスワクチン 2.5.1.1.7.1 V260開発の根拠 前述のように、現在ロタウイルス胃腸炎に対して利用可能な抗ウイルス療法はなく、脱水症状 に対する経口又は点滴静注による補液療法が唯一の治療法となっている。したがって、公衆衛生 上も、安全で高い予防効果を有するロタウイルスワクチンが必要となっている。先進国でも罹患 率が高く、世界中で死亡率が高い重症胃腸炎に対する防御機能を乳児に与えることが特に重要で あると考えられている。

Merck Sharp & Dohme Corp., a subsidiary of Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.

(以下、米国本社)は、ロタウイルスの抗原性が多岐にわたることから、広範な抗原性をカバー するワクチン開発を目指した。 米国本社の開発したV260は、5種類のヒト-ウシ再集合体ロタウイルス株(WI79-9、SC2-9、WI78-8、 BrB-9、WI79-4:簡略化のためそれぞれ G1、G2、G3、G4、P1と略記する)を含む5価ワクチンで ある。いずれの再集合体も、ウシロタウイルス株WC3(Wistar Calf 3)の遺伝子に基づき構成さ れている。これら5つの再集合体のうち4種類は G1、G2、G3又は G4血清型特異性を有するヒト外 層カプシド糖たん白質(VP7)と P7[5] WC3株由来のウシスパイクたん白質(VP4)を持つ。さら に、5番目の再集合体(P1)は、P1A[8]型特異性を有するヒトスパイクたん白質(VP4)を有する が、G6 WC3株由来のウシ外層カプシドたん白質も保有する。これらの、V260に含まれるロタウ イルスのG 血清型(G1、G2、G3及び G4)は、全世界で発現するロタウイルス胃腸炎の85%超の 原因ウイルスであり[資料5.4: 9]、同様に、P1再集合体も、最も高頻度でロタウイルス胃腸炎の原 因となるP 血清型(P1A[8])である[資料5.4: 9]。また、ウシロタウイルス親株 WC3由来の G6血 清型もヒトでの流行がわかっているものの、G1~G4血清型よりも頻度が低い[資料5.4: 5]。要約す ると、V260に含まれるヒト-ウシ再集合体の P 及び G 血清型特異性は、P7[5],G1(G1再集合体)、 P7[5],G2(G2再集合体)、P7[5],G3(G3再集合体)、P7[5],G4(G4再集合体)及び P1A[8],G6(P1 再集合体)である。 V260に G1、G2、G3及び G4血清型を含めた根拠は、ロタウイルス自然感染又はロタウイルス ワクチンに誘起される1次免疫が、血清型特異的であるとしたこれまでの研究結果に基づいている [資料5.4: 112] [資料5.4: 113] [資料5.4: 69]。また V260に P1再集合体を加えた根拠は、P1A 血清型 による免疫反応が、P1A 血清型を含む他の G 血清型に対しても交差防御能を示すとした研究結果 に基づいており、P1再集合体と同種の VP4に対する抗血清は、P1A[8]を含む G1、G3、G4及び G9 型のヒトロタウイルス株を中和することも報告されている[資料5.4: 24]。さらに、自然感染した乳 児において、P1A 血清型に対する中和抗体が G1、G3及び G4血清型に対する異種中和抗体反応を 示すことも報告されている[資料5.4: 25]。

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2.5 臨床に関する概括評価 - 13 - 2.5.1.1.7.2 V260の特徴 ウシロタウイルス親株WC3(P7[5],G6)は、1981年、米国ペンシルベニア州チェスターカウン ティで下痢を発症した仔牛から分離された。その後、アフリカミドリザル腎(AGMK)細胞中で 初代培養後、アフリカミドリザル腎CV-1細胞中で増殖させた[資料5.4: 5] [資料5.4: 6]。当初、ウ シロタウイルスWC3株自体のワクチンへの適性を検討するため、12代の継代培養をしたものを使 用して臨床試験を実施した[資料5.4: 6]。WC3ワクチン濃度を最高3×107 PFU で乳児に接種したと ころ、有害事象発現率の増加は認められず、ワクチンの糞便中への排出は31%以下であった[資料 5.4: 6]。しかし、この1価ワクチンは、米国や他国での複数の臨床試験において、ワクチン予防効 果にばらつきがみられた[資料5.4: 7]。このため、ロタウイルスワクチンの開発では、Jennerian approach に従い、弱毒化型ウシロタウイルス株 WC3に、疫学的に重要な4種類の G 血清型及び1 種類のP 血清型を含めた多価(5価)ワクチンを開発することとした[資料5.4: 7]。 この5価ワクチンは、ロタウイルス遺伝子に元来備わる培養細胞中でのリアソートメント(再集 合)を利用して、V260に含まれる5種類のヒト-ウシ(WC3)再集合体として作成された。 このヒトロタウイルス株は、WI79(P1A[8],G1)、SC2(P2A[6],G2)、WI78(P1A[8],G3)及び BrB(P2A[6],G4)を用いており、WI79株及び WI78株は、 ( )の患者糞便検体から、SC2株及び BrB 株は、それぞれ ) )の患者糞便検体から分離したものである。これらのヒトロタウイルス株を、培養 細胞中で、ウシロタウイルスWC3と重感染させて再集合体を得た。その後、VP7又は VP4再集合 体の子孫ウイルスを増殖する一方で、親株増殖を抑制する作用を有するVP7又は VP4特異的な過 免疫モルモット血清を用いて、それぞれの子孫ウイルスを抽出した。次に、それぞれの子孫ウイ ルスをプラック精製し、必要とする遺伝子組成が得られているか否かを確認するため、RNA セグ メントを電気泳動法により分析した。 V260に含まれる再集合体のヒト-ウシロタウイルス親株と、外層VP7(G型)・VP4(P型)たん 白質を[表2.5: 1]に示す。 本ワクチンは、経口接種用として緩衝液を添加し、十分に安定化した製剤中に懸濁されており、 本剤には精製白糖、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ポリソルベート 80、組織培地(希釈剤として)が含有されている。本剤は、ロタウイルスワクチンを胃酸から守 ることができ、冷蔵保存(2~8ºC)可能な製剤で、使用期限は24ヵ月間と設定されている。本ワ クチンの初回接種は生後6週以上とし、4週以上の間隔をおいて3回経口接種する。ワクチンの容器 はプラスチック製で、同容器のねじ切りキャップを利用してワクチンを直接幼児に与える。

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2.5 臨床に関する概括評価 - 14 - 表2.5: 1 V260 に含まれる 5 種類の再集合体ロタウイルスワクチン株の抗原構成 再集合体株 ウシロタウイルス親株 ヒトロタウイルス親株 (斜体はヒトロタウイルス成分)表面たん白質構成 WI79-9 WC3 WI79 G1, P7[5] SC2-9 WC3 SC2 G2, P7[5] WI78-8 WC3 WI78 G3, P7[5] BrB-9 WC3 BrB G4, P7[5]

WI79-4 WC3 WI79 G6, P1A[8]

2.5.1.1.8 本邦における本ワクチンの必要性 世界中で普遍的にみられるロタウイルス胃腸炎に対する5価の予防ワクチンである本ワクチン は、以下の理由から本邦においてもその必要性が高いと考えられる。 ・ ロタウイルス胃腸炎に対する特異的な抗ウイルス療法は開発されておらず、脱水症を防ぐ ための経口補液や輸液などの対症療法が主となっている。 ・ ロタウイルスは、その感染力の強さと疫学データなどから、衛生状態をいかに改善しても その感染予防は困難であり、積極的な防御方法が必要である[資料5.4: 114]。 ・ 本邦におけるロタウイルス胃腸炎による死亡例はまれであるものの、高い罹患率と入院率 を示しており高い医療費負担が生じている[資料5.4: 86]。 ・ 外国と同様、本邦におけるロタウイルス胃腸炎の疾患負担は大きく、介助にあたる保護者 の労働損失などの経済的負担も大きい[資料5.4: 90] [資料5.4: 115]。 ・ 本邦におけるロタウイルスの血清型別罹患率はG1~G4及び G9型と多種類にわたっており、 4種類のロタウイルス G 血清型(G1、G2、G3及び G4)と G9型と関連する P 血清型(P1A) を含む5価ワクチンである本ワクチンは有用と考える[資料5.4: 82]。 ・ 外国において、本ワクチンの有効性及び安全性は確認されており、2011年8月現在、既に世 界100以上の国又は地域で製造販売承認されている。 ・ 米国では、本ワクチンが定期予防接種に組み込まれた後、毎年みられたロタウイルス胃腸 炎の発生が明確に遅延し、かつ明瞭なピークが認められないままにロタウイルスの検出率 が下がってきたことから、本ワクチンが有効に働いていると解釈された。また、受診及び 入院率の大幅な減少も報告された[資料5.4: 17] [資料5.4: 19] [資料5.4: 20]。 ・ 欧州連合の7ヵ国又はメキシコにおける医療経済学的評価の研究において、本剤接種による 費用対効果が見込まれる結果が得られている[資料5.4: 116] [資料5.4: 117]。 ・ ブラジルでは、他のロタウイルスワクチン導入直後と1年後の流行期(3ヵ月間)とを比較 して重度の下痢症に占めるロタウイルスの割合が27%から5%に減少した[資料5.4: 118]。ま た、メキシコにおいても他のロタウイルスワクチン導入後に死亡率の減少がみられている [資料5.4: 107]。 ・ 2008年10月には、WHO から、本ワクチンの世界各国での積極的な使用が推奨され、事前 認定(Pre-qualification)の指定を受けた。

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2.5 臨床に関する概括評価 - 15 - 2.5.1.2 外国におけるロタウイルスワクチンと腸重積症の関連性の評価 V260を開発中であった1999年、既承認のロタウイルスワクチンである RotaShield(Wyeth-Ayerst 社)の接種を受けた乳児において腸重積症の発症頻度が増えるとの報告があった。このことから、 外国での本ワクチン開発時(第Ⅲ相試験)には、腸重積症に関する安全性を確認するための大規 模な臨床試験(V260群とプラセボ群の合計例数:70,000例以上)が実施され、その安全性が注意 深く評価された。 本項では、外国で第Ⅲ相試験を開始する前の段階で、ロタウイルス感染及びロタウイルスワク チンと腸重積症の関連を評価した結果を記載する。 2.5.1.2.1 腸重積症の背景:疫学、臨床症状、治療法及び病因 腸重積症は、年間2,000人当たり1人の割合(50/100,000人)で乳児に発症する比較的まれな疾患 である。発症率は国によって違いがあり、外国における発症率の範囲は、12ヵ月未満の乳児で年 間18~66/100,000人との報告がある[資料5.4: 28] [資料5.4: 119] [資料5.4: 120] [資料5.4: 121] [資料 5.4: 122]。発生頻度の高い月齢は3~9ヵ月で[資料5.4: 120] [資料5.4: 121] [資料5.4: 123] [資料5.4: 124]、女児より男児で1.5~4倍多くみられるが、理由はわかっていない[資料5.4: 125] [資料5.4: 126] [資料5.4: 62] [資料5.4: 127]。また、本邦での1歳未満の乳児では、年間185/100,000人が腸重積症で 入院したとの報告があり、女児より男児で1.5倍多くみられている[資料5.4: 128]。 症状は、易刺激性、嗜眠、間欠性仙痛性腹痛、嘔吐、粘液便及び血便を含む。腸重積症は、通 常、早期に診断されれば、空気注腸整復法又は造影注腸により治癒する[資料5.4: 127] [資料5.4: 129] [資料5.4: 130] [資料5.4: 131] [資料5.4: 132]。また自然治癒した症例も報告されているが[資料 5.4: 133]、外科的整復又は腸切除が必要なこともある。一方、診断が遅れると、腸虚血により腸 の壊死、穿孔、腹膜炎を引き起こす可能性があり、まれに死亡に至ることもある[資料5.4: 120] [資 料5.4: 125]。 腸重積症の病因は不明であり、乳幼児におけるほとんどのケースは突発性である[資料5.4: 125] [資料5.4: 126] [資料5.4: 62]。腸重積症との関係が最も疑われている病原ウイルスは、呼吸器官の アデノウイルスであり[資料5.4: 134] [資料5.4: 135] [資料5.4: 136] [資料5.4: 137] [資料5.4: 138]、複 数の研究結果から、ロタウイルスの自然感染は腸重積症とは関連がないことが示唆されている。 1978年、今野らが12ヵ月間にわたり腸重積症を発症した日本人乳幼児の37%から電子顕微鏡でヒ トロタウイルスを検出したとの報告があったものの[資料5.4: 139]、オーストラリア、フランス及 び米国で行われた複数の研究では、この所見は確認されていない[資料5.4: 123] [資料5.4: 137] [資 料5.4: 138] [資料5.4: 16]。さらに、ニューヨーク州及び南カリフォルニア Kaiser Permanente Health Care Plan の2件の研究では、ロタウイルスによる入院率が急激に上昇した冬期の数ヵ月間に、腸 重積症による入院率の上昇はなかった[資料5.4: 123] [資料5.4: 16]。以上の点から、ロタウイルス の自然感染が腸重積症を伴ったとしても、ロタウイルスが主要な原因とは考えられない。

なお、外国における大規模な製造販売後の安全性観察研究(019試験)の結果、腸重積症とV260 接種との関連はみられなかった[2.5.5.12.4項]。

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2.5 臨床に関する概括評価 - 16 - 2.5.1.2.2 RotaShield(Wyeth-Ayerst社)と腸重積症との関連性 外国での V260の第Ⅱ相試験(005試験)実施中の1999年7月、CDC から、既承認のロタウイル スワクチンであるRotaShield(Wyeth-Ayerst 社)の接種を受けた乳児において腸重積症の報告数が 増加しているとの発表があった。その後の症例対照研究の結果から、RotaShield(Wyeth-Ayerst 社) 被接種者では、週齢に関係なく、初回接種後3~14日間と2回接種後3~7日間に腸重積症のリスク が増大することが確認された[資料5.4: 28]。 当時、米国本社では、V260の第Ⅲ相試験を計画中であったことから、これらの背景をもとに第 Ⅲ相試験[006試験(REST)]の重要な目的を V260と腸重積症の関連の調査とした。 なお、本邦では、RotaShield(Wyeth-Ayerst 社)は市販されていない。 2.5.1.2.3 外国におけるV260の開発継続の決定 腸重積症とRotaShield(Wyeth-Ayerst 社)の関連は外国で報告されたものの、米国本社では主に 以下の理由からV260の開発を継続することを決定した。 1) ロタウイルスは世界中で乳幼児の罹患及び死亡の重要な原因であり、公衆衛生上、安全 かつ有効なロタウイルスワクチンが求められている。 2) 腸重積症の主要な原因はロタウイルス自然感染ではなく、アカゲザルロタウイルス株が 原因であることを示すデータが存在する[資料5.4: 16]。 3) 第Ⅰ相/第Ⅱ相試験成績より、V260は、ロタウイルス胃腸炎に対する予防効果及び良好 な忍容性を有することが示されている[資料5.4: 11] [資料5.3.5.1: P005]。また、第Ⅰ相/ 第Ⅱ相試験において報告された腸重積症は、2,470例の乳児のうち1例であった[資料 5.3.5.1: P005]。 4) RotaShield(Wyeth-Ayerst 社)と V260では、分子構造的、非臨床的及び臨床的に異なる。 RotaShield(Wyeth-Ayerst 社)で使用されたアカゲザルロタウイルスは BALB/c(正常)マウス や重症複合型免疫不全(SCID)マウスにおいて全身への分布が認められるが、V260のウシロタウ イルスWC3は全身への分布が認められていない[資料5.4: 140] [資料5.4: 30]。また、臨床現場で発 現した有害事象にも顕著な違いがみられている。これらの相違点と腸重積症の病因との関係は不 明であるが、RotaShield(Wyeth-Ayerst 社)と V260の違いは顕著であった。

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2.5 臨床に関する概括評価 - 17 - 2.5.1.3 ロタウイルス感染と川崎病の関連性の評価 外国第Ⅲ相試験[006試験(REST)]において、計6例の川崎病又は川崎病様血管炎が重篤な有 害事象として報告されたことから、本項では川崎病の背景とロタウイルスとの関連の可能性を記 載する。 2.5.1.3.1 川崎病の背景:疫学、臨床症状及び病因 川崎病の発症数は、非日本人と比べ、日本人において約10倍高いと考えられており[資料5.4: 141]、 最近の報告では、3~11ヵ月齢の乳児では、罹患率が年間300~380/100,000人といわれている[資料 5.4: 142]。 川崎病は、5歳未満の小児に好発する原因不明の疾患で、生後3ヵ月未満の乳児での発症はまれ であるものの、発症時にはより重度の症状となる[資料5.4: 143]。川崎病の原因としては、冬から 春にかけての季節的及び地域的な集積性がみられることから、感染症の関与[資料5.4: 144] [資料 5.4: 141]や、多くの病原体や環境要因も疑われているが、特定はされておらず、非感染性の原因 の可能性もある。さらに、多くの環境有害物質、細菌及びウイルス(麻疹ウイルス、エプスタイ ン・バーウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、 ヘルペスウイルス6、パルボウイルス及びロタウイルス)の可能性も考えられる[資料5.4: 144]。 本邦における川崎病の診断は以下の主要症候のうち5つ以上の症状を伴うものとされている。た だし、下記6主要症状のうち、4つの症状しか認められなくても、経過中に断層心エコー法若しく は、心血管造影法で、冠動脈瘤が確認され、他の疾患が除外されれば本症と診断する[資料5.4: 145]。 1) 5日以上続く高熱(ただし、治療により5日未満で解熱した場合も含む) 2) 両側眼球結膜の充血 3) 口唇、口腔所見:口唇の紅潮、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤 4) 不定形発疹 5) 四肢末端の変化:(急性期)手足の硬性浮腫、掌蹠ないしは指趾先端の紅斑 (回復期)指先からの膜様落屑 6) 急性期における非化膿性頸部リンパ節腫脹 2.5.1.3.2 外国におけるロタウイルス感染と川崎病の関連性の評価 ロタウイルスと川崎病の関連性を示すエビデンスはほとんど報告されていない。現在までに、 ロタウイルス感染と川崎病が関連する可能性について評価した試験は1つだけである[資料5.4: 146]。当該試験では、川崎病患者の39例について調査したもので、電子顕微鏡が使用され、イン タクトロタウイルス粒子、あるいは分解又は破損したロタウイルス粒子に属すると推定されたカ プソマーのいずれかが同定された。この文献において著者らは、当該試験によってロタウイルス と川崎病の関連性を示す十分なエビデンスが認められたとは言い難く、今後、ロタウイルスと川 崎病の関連性に焦点を絞った試験を実施する必要があると結論付けた。その試験後24年以上が経 過したが、川崎病とロタウイルス感染の関連を示すエビデンスは認められておらず、当該報告は 依然として関連の可能性を示す唯一の報告となっている。なお、外国における大規模な市販後の

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2.5 臨床に関する概括評価 - 18 -

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2.5 臨床に関する概括評価 - 19 - 2.5.1.4 臨床開発計画 2.5.1.4.1 外国における開発プログラム 2.5.1.4.1.1 第Ⅰ相/第Ⅱ相試験の要約 米国本社のロタウイルスワクチン(ヒト-ウシ再集合体:WC3)の開発は、19 年代初頭に4価 (G1、G2、G3及び P1型)ワクチン製剤を用いた第Ⅰ相試験から開始された。 ヒト-ウシ再集合体ロタウイルスワクチンを用いた5つの第Ⅰ相及び第Ⅱ相試験(001試験、002 試験、003試験、004試験及び005試験)は、3,186例の乳児(実薬接種:2,470例)及び46例の成人 (実薬接種:30例)を対象に実施し、その忍容性、安全性、免疫原性及びロタウイルス胃腸炎に 対するワクチン予防効果(有効性)を確認した。[資料5.4: 10] [資料5.4: 11] [資料5.4: 12] [資料5.4: 13] [資料5.3.5.1: P005] これらの試験成績から、V260の製剤、用量(力価)及び再集合体の構成が推測され、引き続き 実施した第Ⅲ相試験[006試験(Rotavirus Efficacy and Safety Trial: REST)、007試験及び009試験]

により最終製剤を用いたV260の有効性、免疫原性及び安全性が確認された。 2.5.1.4.1.2 第Ⅲ相試験の要約-外国における初回製造販売承認申請 外国における製造販売承認申請時に用いた3つの第Ⅲ相試験では、71,799例の乳児が治験薬の接 種を受け、そのうち36,203例がV260の最終製剤の接種を受けた[付録2.5: 1]。以下に、外国におけ る第Ⅲ相試験とその主な目的を示す。 ・ 006試験(REST):V260(出荷時力価)の有効性、免疫原性及び安全性(特に、腸重積症 の発現)を評価した大規模臨床試験 ・ 007試験:V260の最終製剤の使用期限を設定した力価での有効性を確認した用量確認試験 ・ 009試験:V260の製造工程の一貫性を臨床的に評価(免疫原性)した製造ロットの一貫性 確認試験 これらの3試験では同様の安全性、免疫原性の測定を用い、006及び007試験では同様の有効性評 価(急性胃腸炎の定義、評価項目)を用いた。 特に、006試験(REST)は、腸重積症の発症との関連性を評価するために大規模な臨床試験と して実施された。このため、すべての被験者を対象として腸重積症と重篤な有害事象を評価した 安全性コホート、非重篤な有害事象の評価も含む詳細な安全性コホート、有効性も評価した有効 性コホート等の複数のコホート試験にわけて世界各国で実施し、同時に腸重積症との関連性、有 効性、免疫原性及び安全性を評価できるようにした(コホートの構成図は[2.7.3E.1.4.2.2 項]の[図 2.7.3E: 2]に示した)。 これらの試験の結果より、V260の有効性、免疫原性及び安全性が確認されたことから、世界各 国で製造販売承認申請を行い、2011年8月現在、世界100以上の国又は地域で製造販売承認を取得 し、RotaTeq の商品名で販売されている。また、2006年には、米国の予防接種諮問委員会により、

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2.5 臨床に関する概括評価 - 20 - 米国内のすべての乳児に対する定期予防接種にV260を含めることが推奨された[資料5.4: 89]。さ らに、2008年10月には、WHO から事前認定(Pre-qualification)の指定を受けた。 2.5.1.4.1.3 外国における初回承認申請後に終了した臨床試験及び追加解析 006試験(REST)は、外国における初回製造販売承認申請時に、カットオフ日を設定して試験 データをまとめた。さらに、外国における初回製造販売承認申請後には、いくつかの追加解析及 び製造販売後臨床試験(以下、第Ⅴ相試験)が実施された。本項では、006試験(REST)の最終 データの収集・解析時期、外国における初回製造販売承認申請後の追加解析及び外国で製造販売 後に実施した臨床試験について記載した。 2.5.1.4.1.3.1 006試験(REST)の最終データの収集・解析時期 本試験では、群逐次デザイン(Group-Sequential Design)を用いた。つまり、最初に6万例の被 験者を組み入れ、すべての被験者(安全性コホート)が治験薬の3回接種と最終接種後42日間の安 全性の追跡調査を完了した時点で、安全性データモニタリング委員会(以下、DSMB)が安全性 (腸重積症)の主要仮説の統計学的基準を評価することとした。なお、評価の結果、本仮説が満 たされていない場合には、1万例の被験者を順次組み入れ、最大10万例まで組入れ可能とした。 実際には、本試験の組入れは、2001年1月 日から開始され、20 年 月 日に6万例の被験者 の組入れが終了した。これらの被験者のデータは、最終接種後42日間の安全性追跡調査を完了し た後、DSMB により、安全性(腸重積症)に関する主要仮説の評価及び重篤な有害事象の確認が 行われた。その結果、DSMB は、本ワクチンの安全性に問題はないものの、事前に規定した安全 性に関する主要仮説が満たされていないことから、7万例目まで被験者の組入れを継続するよう提 言した。 その後、20 年 月 日に、7万例目の被験者が組み入れられ、20 年 月 日に、DSMB が再 度開催された。その結果、安全性(腸重積症)に関する主要仮説の統計学的基準が満たされたこ とから、被験者組入れの終了は可能であると提言された。さらに、すべての被験者について治験 薬の接種法の変更は必要なく、規定の安全性の調査を完了させるよう提言された。 この結果を受け、データ入手のカットオフ日を20 年 月 日とし、20 年 月 日にデータ 固定を行い、そのデータを用いてV260の有効性、免疫原性及び安全性の評価を行った。治験総括 報告書(CSR)は、69,274例(本試験の無作為割付け例の99.2%)のデータを用いて作成された。 なお、カットオフ日以降に入手した安全性データは、外国における初回製造販売承認申請後に、 安全性最新報告(Safety Update Report:以下、SUR)として報告した[資料5.3.5.3: SUR]。

また、有効性のデータはカットオフ日以降には収集していないことから、本邦における製造販 売承認申請資料中の006試験(REST)の有効性の評価には、有効性の最終データである外国にお

ける初回製造販売承認申請資料中のデータを用いた。また、安全性は、前述のSUR を含めて評価

した。

さらに、006試験(REST)の安全性コホートのうち、フィンランドの被験者では、追跡調査延 長試験(以下、Finland Extension Study:FES)を実施した[資料5.3.5.1: FES006_sta]。この FES に

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2.5 臨床に関する概括評価 - 21 - は、フィンランドにおいて006試験(REST)の安全性コホートに参加した20,736例の被験者のう ち、20,513例が継続参加した。なお、有効性コホートに参加したフィンランドの被験者(約2,670 例)は、FES の対象としなかった 2.5.1.4.1.3.2 006試験(REST)のカットオフ日以降に入手したデータを用いた追加解析 外国における初回製造販売承認申請後に、以下に示す追加解析を実施した。このうち、006試験 (REST)における医療機関の利用(入院及び救急外来の受診)に関する追加解析では、カットオ フ日(20 年 月 日)以降に入手したデータも含めた。 なお、本製造販売承認申請資料ではこれらの追加解析結果も含めて報告した。 1) 006試験(REST)における最大2年間の医療機関の利用(入院及び救急外来の受診)に関 する解析[資料5.3.5.1: PCS006_sta] 2) V260の3回接種完了前の有効性を評価するために接種間での有効性を評価した解析[資 料5.3.5.1: BDE006_sta] 3) 早産児(妊娠週齢36週以下)における医療機関の利用(入院及び救急外来の受診)に対 するV260の効果を評価した解析[資料5.3.5.1: PI006_sta] 4) FES の成績[医療機関の利用(入院及び救急外来の受診)]を含めた解析[資料5.3.5.1: FES006_sta] 5) V260と百日せきの免疫原性を含むワクチンを併用接種した場合の免疫反応に関する追 加解析[資料5.3.5.1: APR006_sta] 2.5.1.4.1.3.3 外国における初回承認申請後に終了した臨床試験 外国においては、以下に示す臨床試験を初回製造販売承認申請後に実施し、終了している。 1) 健康乳児における V260と6種混合ワクチン(INFANRIX HEXA)併用時の安全性及び免 疫原性に関する臨床試験(010試験)[資料5.4: 21] 2) 健康乳児における V260の免疫原性及び安全性に関する臨床試験-韓国での試験(013試 験)[資料5.4: 22] 3) 健康乳児における V260と経口生ポリオワクチン(以下、OPV)の同時又は交互接種時の 安全性及び免疫原性に関する試験(014試験)[資料5.3.5.2: P014] 4) V260と C 群髄膜炎菌コンジュゲートワクチンを併用時の安全性及び免疫原性に関する 試験(016試験)[資料5.4: 23] 5) V260の短期的な安全性プロファイルをモニタリングするための製造販売後の安全性観 察研究(019試験)[資料5.3.6: P019] 6) 発展途上国(アジア及びアフリカ)における V260の有効性、安全性及び免疫原性試験(015 試験)[資料5.4: 147] 7) インドにおける V260の安全性、忍容性及び免疫原性試験(021試験)[資料5.4: 148]

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2.5 臨床に関する概括評価 - 22 - 2.5.1.4.2 本邦における開発プログラム 本邦での臨床開発は、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(以下、総合機構)との対面助 言(20 年 月 日)の結果に基づき実施した。外国臨床試験[005試験、006試験(REST)、007 試験及び009試験]の結果を用いて設定した用法・用量が、日本人乳児においても有効かつ安全で あることを確認するために第Ⅲ相試験(029試験)を実施した。 今回の製造販売承認申請で提出する臨床データパッケージを[表2.5: 2]に示す。臨床データパッ ケージには日本人の健康乳児を対象とした第Ⅲ相試験(029試験)、外国で実施した第Ⅱ相力価範 囲設定試験(005試験)、第Ⅲ相試験[006試験(REST)、007試験及び009試験]、並びに外国にお いて製造販売承認取得後に実施したOPVを併用した場合の免疫原性及び安全性に関する試験(014 試験)を評価資料として含めた。 本臨床データパッケージが妥当と判断した理由は以下のとおりである。 1) 外国臨床試験[005試験、006試験(REST)、007試験及び009試験]の結果を基に推定し た臨床用法・用量を用いた国内臨床試験(029試験)により、外国と同様に日本人乳児に 対するV260の有効性及び安全性が確認された。 2) 今回の臨床データパッケージに含めた外国臨床試験は、以下に示す根拠から評価資料と して使用可能と判断した。 a) ロタウイルスは世界中どこでも存在し、日本を含む先進国でも、発展途上国でも ほぼ同様に3~5歳になるまでに初感染を経験する[資料5.4: 89]。また、ロタウイ ルスは小腸の絨毛突起先端部の成熟上皮細胞で感染、複製し、これが脱落した結 果、小腸の吸収が障害され、下痢を起こす疾患であり、基本的には、その発症機 序に関して人種差はないと考えられる。 b) 現在のロタウイルス胃腸炎に対する治療は、脱水症を防ぐための経口補液や輸液 などの対症療法が主であり、日本と外国で同様である。 c) 血清型の多様性はロタウイルスの大きな特徴であり、その分布は地域や年度によ って変化している。しかし、高頻度でみられる血清型は、日本と外国で同様であ る。 d) 外国で実施した第Ⅲ相試験[006試験(REST)]の結果から、本ワクチンの免疫 原性及び有効性には人種により大きな差がないことが示された[2.7.3I.3.3]、 [2.7.3E.3.4]。 3) 外国臨床試験成績より、V260の有効性及び安全性が確立している。特に、大規模な臨床 データを用いた腸重積症の発症への影響を評価した結果、V260の安全性が確認された。 4) 国内臨床試験(029試験)及び外国臨床試験成績より、V260の有効性及び安全性のプロ ファイルにおいて日本と外国の乳児で大きな相違はみられなかった。

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2.5 臨床に関する概括評価 - 23 - 表2.5: 2 日本における臨床データパッケージ 評価項目 試験番号 Phase 資料番号 被験者数 (無作為化) 有効性 免疫原性 安全性 国 内 029試験 第Ⅲ相 [資料5.3.5.1: P029] 762 ○ ○ 005試験 第Ⅱ相 [資料5.3.5.1: P005] 1,946 ○ ○ ○ 006試験 (REST 試験) 第Ⅲ相 [資料5.3.5.1: P006] 69,837 ○ ○ ○ 007試験 第Ⅲ相 [資料5.3.5.1: P007] 1,312 ○ ○ ○ 009試験 第Ⅲ相 [資料5.3.5.1: P009] 793 ○ ○ 海 外 014試験 第Ⅴ相 [資料5.3.5.2: P014] 735 ○ ○ 第Ⅴ相試験:外国における製造販売承認取得後に実施した試験

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2.5 臨床に関する概括評価 - 24 - 2.5.1.5 治験の標準的方法 国内臨床試験(029試験)と外国第Ⅲ相試験で用いられた標準的方法は、評価に影響を与える程 の差はなく、全般的に同様であった。以下に、主な標準的方法を記載した。 2.5.1.5.1 V260の力価及び接種回数 029試験の力価の設定根拠 V260は弱毒生ワクチンであることから、その力価は経時的に減弱する。そのため、出荷時のワ クチン力価は、ある程度の使用期限を有し、使用期限終了時にも有効性が認められる必要がある。 つまり、出荷時力価範囲を有するV260及び使用期限を設定する力価を有する V260のそれぞれに ついて、有効性と安全性を証明する必要があった。 外国第Ⅱ相試験(005試験)では、3つの異なる力価(5×106、1.6×106、及び5×105 PFU/再集 合体/用量)の5価ワクチンを比較検討した。その結果、5価ワクチンの忍容性は全般に良好で、 ロタウイルス胃腸炎に対する有効性も確認された。3つの異なる力価(高力価、中力価及び低力価) のワクチン予防効果及び95%信頼区間は、それぞれ68.0%(31.1%, 86.4%)、74.3%(37.9%, 91.0%) 及び57.6%(11.8%, 80.9%)であり、3つの力価の95%信頼区間はそれぞれ重なり合っており、統 計学的な有意差も認められなかった。しかし、低力価におけるワクチン予防効果は、中間力価及 び高力価と比べ数値的に低かった。以上の結果から、使用期限を設定する力価は、中間力価を目 標とするように選択した[資料5.3.5.1: P005]。005試験で使用した製剤は開発初期のものであり、経 口接種前に被験者に食事をさせ、胃酸を中和させる必要があった。第Ⅲ相試験以降では、接種前 の食事が不要となるように緩衝化した製剤を使用しており、005試験で使用した製剤とは処方及び 製造方法が異なる。また、005試験で使用した製剤の力価はプラック法(プラック形成単位)によ り測定しており、第Ⅲ相試験以降の製剤の力価測定法として採用した定量ポリメラーゼ連鎖反応 (以下、PCR)に基づいた多価ウイルス力価試験法(感染単位)とは測定原理が異なる。005試験 で使用した製剤と第Ⅲ相試験以降の製剤との同等性/同質性評価ブリッジング試験は実施してお らず、005試験で得られた目標力価は参考程度の情報でしかないものの、第Ⅲ相試験以降で使用し た製剤の力価範囲を設定する上での有益な情報となった。 そこで、外国第Ⅲ相試験(007試験)において、005試験結果を参考に選択した使用期限を設定 する力価(約1.1×107 感染単位/用量、各再集合体の力価:約2.0×106 感染単位/再集合体/用 量)を有する V260の有効性及び安全性を評価した。その結果、V260の忍容性は全般的に良好で あり、ロタウイルス胃腸炎に対するワクチン予防効果が確認された。 さらに、外国第Ⅲ相試験[006試験(REST)]において、出荷時力価範囲(67.2×106~124×106 感染単位/用量)を有する V260の有効性及び安全性を評価した。その結果、V260の忍容性は全 般的に良好であり、ロタウイルス胃腸炎に対するワクチン予防効果が確認された。 以上の結果から、029試験は、外国臨床試験により設定された力価が、日本人乳児においても同 様の有効性、安全性及び忍容性を示すことを確認するため、外国の市販製剤を用いて実施した。 つまり、029試験で使用した製剤の力価は、再集合体の血清型により2.0×106~2.8×106 感染単位 /再集合体以上で、総力価は116×106 感染単位/用量以下となる範囲とした。

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2.5 臨床に関する概括評価 - 25 - 接種回数の設定根拠 ヒト-ウシ再集合体ロタウイルスワクチンを用いたすべての外国臨床試験において、3回接種法 が用いられた。この3回接種法は、米国本社が本ワクチンの承認を得る以前の19 年と19 年に 及び が実施した試験の結果に基づいて設定 された。 この試験では、G1血清型ヒト-ウシ再集合体ロタウイルスワクチン(WI79-9)を3回接種した大 部分の乳児で、2回接種した乳児よりも有意に高い免疫反応(初回接種前と3回接種後の比較で G1 に対する血清中和抗体価が3倍以上増加)が認められた。本試験は、米国本社が V260の臨床開発 プログラムを開始する前に終了していたため、本試験以降に米国本社が実施したすべての臨床試 験で3回接種法が用いられた[資料5.4: 38]。 2.5.1.5.2 有効性 本ワクチンの有効性は、ロタウイルス胃腸炎に対する予防効果及びロタウイルス胃腸炎による 医療機関の利用を主な評価項目として評価した。これらの評価項目に関連した方法を以下に示し た。なお、本ワクチンの有効性評価の主要な解析対象集団は、治験実施計画書に適合した解析対 象集団(PPS)とした。 2.5.1.5.2.1 ロタウイルス胃腸炎を発症した症例の定義(Case基準) 国内臨床試験(029試験)では、以下の臨床症状の基準と臨床検査の基準を共に満たした症例を、 ロタウイルス胃腸炎を発症した症例と判断し、この定義をper-protocol Case 基準とした。 1) 臨床症状の基準: 水様便又は通常より緩い便が24時間内に3回以上又は強い嘔吐(急性胃腸炎に相当)が認め られた場合 2) 臨床検査の基準: 症状発現後7日以内に採取した糞便検体から野生型のロタウイルスが検出された場合 また、主要評価の対象としたイベントは、上記の基準を満たし、治験薬3回接種後14日目以降に 発症した G1、G2、G3、G4又は P1A[8]を含む G 型(G9など)に起因したロタウイルス胃腸炎と し、ワクチンウイルス株が検出された場合は、Case 基準を満たしていないこととした。 外国臨床試験[005試験、006試験(REST)及び007試験]における、ロタウイルス胃腸炎の臨 床症状の基準は、国内臨床試験(029試験)と同一であった。一方、臨床検査の基準には若干の相 違が認められた。その相違点は、外国臨床試験の臨床検査基準では、糞便検体を症状発現後14日 以内に採取した糞便検体を対象とした点であった。通常ロタウイルスの排出は症状発現後1週間程 度続くことから[資料5.4: 149] [資料5.4: 150] [資料5.4: 151]、いずれの方法においてもロタウイルス の糞便中からの消失前に糞便を採取することは可能であると考えた。

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2.5 臨床に関する概括評価 - 26 - また、国内臨床試験(029試験)では G1、G2、G3、G4又は P1A[8]を含む G 型(G9など)に起 因したロタウイルス胃腸炎に対するワクチン予防効果を有効性の評価に用いたが、外国臨床試験 [005試験、006試験(REST)及び007試験]では G1、G2、G3、G4血清型に起因したロタウイル ス胃腸炎に対するワクチン予防効果を有効性の評価に用いた。これは、外国臨床試験実施時には、 P 型(VP4)を同定するアッセイ方法が確立していなかったためである。なお、029試験実施時に は、P 型のアッセイ法(VP4の RT-PCR・シークエンシング法)が確立したことから、V260に含ま れるP1A[8]型を含めた。 さらに、外国臨床試験では、ロタウイルス胃腸炎の2つの基準(臨床基準と臨床検査基準)のう ち、どちらか一方のみを満たす場合にもロタウイルス胃腸炎とした解析も副次的解析として実施

した。この場合をintention-to-treat Case 基準(ITT Case 基準)と規定し、主要解析の2つの基準を

満たす場合は、per-protocol Case 基準と規定した。 なお、ロタウイルス胃腸炎を特定するために使用したアッセイは国内と外国で同様であった[付 録2.7.3E: 1]。 2.5.1.5.2.2 ロタウイルス胃腸炎の追跡期間 国内臨床試験(029試験)は、イベント発生例数が目標数以上となった時点で開鍵を行う試験で あり、イベント発生例が30例に達成した後、最終来院を終了するまで被験者を追跡した(20 年 月 日まで追跡)。一方、外国臨床試験のうち、005試験は治験薬3回接種後の3回目のロタウイル ス感染シーズンまで追跡した。006試験(REST)は治験薬3回接種終了後の最初のロタウイルス感 染シーズンと2回目の感染シーズンまで追跡し、007試験では、治験薬3回接種後の最初のロタウイ ルス感染シーズンまで追跡した[2.7.3E.1.6.3項]。 2.5.1.5.2.3 ロタウイルス胃腸炎の重症度判定方法:クリニカルスコアシステム 国内臨床試験(029試験)及び外国臨床試験[005試験、006試験(REST)及び007試験]におけ るロタウイルス胃腸炎の重症度の判定は、クリニカルスコアシステムに基づいて実施した。この クリニカルスコアシステムは、下痢、体温の上昇、行動の変化及び嘔吐の臨床症状の程度並びに その持続期間を加味した重症度の判定方法(0~24点)である[2.7.3E.1.6.2項]。保護者(代諾者) は、被験者に急性胃腸炎の症状がみられた場合に、急性胃腸炎調査票に下痢、体温の上昇、行動 の変化及び嘔吐の臨床症状を、症状が消失するまで記録した。この記録を用いてクリニカルスコ アを算出し、そのスコアに基づき、1~8点を軽度、8超~16点以下を中等度、16点超を重度と規定 した。 2.5.1.5.2.4 医療機関の利用状況の評価方法 国内臨床試験(029試験)のロタウイルス胃腸炎による医療機関の利用状況は、急性胃腸炎の発 症による医療機関の利用(入院、救急外来及び病院への受診)を保護者に確認し、入院及び救急 外来の受診を評価した。なお、ロタウイルス胃腸炎を発症した症例は、前述の臨床基準と臨床検

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2.5 臨床に関する概括評価 - 27 - 査基準を共に満たす被験者とした[2.5.1.5.2.1項]。 外国臨床試験[006試験(REST)]の安全性コホートでは、急性胃腸炎による医療機関の利用(入 院及び救急外来受診)及びロタウイルス胃腸炎の臨床基準と臨床検査基準に関する情報を、保護 者から入手した。なお、当該評価項目は、安全性コホートに含まれる被験者(すべての被験者) のうちper-protocol 集団に含まれる被験者を対象とした。また、フィンランドの被験者を対象とし た追跡調査延長試験(FES)におけるロタウイルス胃腸炎による医療機関の利用状況も、同様に 評価した。 006試験(REST)の有効性のコホートでは、入院及び救急外来受診のほか他病院、クリニック 及び診療所の受診状況を収集、評価した。 外国臨床試験(007試験)では、当該評価項目を用いた評価は実施しなかった。 2.5.1.5.3 安全性 2.5.1.5.3.1 腸重積症の症例定義と安全性評価判定委員会の役割 外国第Ⅱ相試験(005試験)、国内臨床試験(029試験)及び外国第Ⅴ相試験(014試験)では、 治験担当医師により診断された腸重積症を確定診断とした。 外国第Ⅲ相試験[006試験(REST)、007試験及び009試験]では、治験担当医師により腸重積症 が疑われると判断されたすべての症例が、試験から独立した安全性評価判定委員会(以下、SEAC) により、事前に規定した定義(レントゲン写真、外科的診断、病理診断に基づく)に従い確定診 断された。

この腸重積症の定義は、後にThe Brighton Collaboration Intussusception Working Group(診断の確 実性でレベル1)が作成した定義と1つの相違点を除き、同一のものであった。すなわち、Brighton Collaboration では、腸重積症の回復後に超音波診断による回復確認を必須としているが、外国第 Ⅲ相試験ではこの要件は設定しなかった[資料5.4: 152]。さらに、外国第Ⅲ相試験の定義では、自 然回復した可能性のある症例を見落とすことのないよう、超音波診断のみの症例も腸重積症と認 めた。 SEAC により腸重積症と診断された場合、当該症例は、独立した DSMB に報告された。 2.5.1.5.4 免疫原性 国内臨床試験(029試験)では、V260の免疫原性を評価していないものの、外国第Ⅲ相試験[006 試験(REST)及び007試験の被験者の部分集団、並びに009試験のすべての被験者]において評価 した。免疫原性の評価は、以下のとおりであった。1)V260の免疫原性を、第Ⅱ相試験で得られ た免疫原性の結果との視覚的な比較評価、2)V260と併用接種した場合の既承認小児用ワクチン の免疫原性の評価、そして3)製造工程の一貫性の臨床的な評価(各ロット間で免疫原性が同等で あることを確認した)を行った。また、主要目的ではなかったものの、外国第Ⅱ相試験(005試験) において免疫原性と有効性についての相関も評価した。 さらに、外国第Ⅴ相試験(014試験)において、OPV と同時接種又は交互接種した場合の免疫 原性も評価した。

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