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2.5.4 有効性の概括評価

2.5.4.2 免疫原性

V260の免疫原性の評価は、国内臨床試験(029試験)では実施しなかったが、外国臨床試験に おいて評価した。

外国臨床試験では、006試験(REST)及び007試験の被験者の一部並びに005試験並びに009試験 及び014試験の全例で免疫原性を評価した。

以下、免疫原性評価の結果について考察する。

2.5.4.2.1 第Ⅱ相試験(005試験)の結果の要約

本試験では、3種類の異なる力価の5価ワクチンの免疫原性を比較する目的で、各力価のG1血清 型に対する血清中和抗体価を評価した。

その結果、G1血清型に対する血清中和抗体価が3倍以上増加した被験者の割合は、中間力価及 び低力価に比べて高力価のものが、より高値を示した。

また、G1血清型に対する血清中和抗体反応を誘発した被験者の割合が最も高かったワクチンは、

高力価の5価ワクチンで、次いで中間力価、低力価の順であった。一方、前述のように、有効性に 関しては、高力価、中間力価及び低力価の5価ワクチンのいずれも、全般的に同様のワクチン予防 効果を示した。これらの結果を総合して、V260の使用期限を設定する力価は、免疫原性の結果で はなく、有効性の結果を参考に設定した。

2.5.4.2.2 第Ⅲ相試験の結果の要約

2.5.4.2.2.1 外国臨床試験[006試験(REST)、007試験及び009試験]

V260の免疫原性として、G1、G2、G3、G4及びP1血清型に対する血清中和抗体反応と抗ロタウ

イルスIgAを評価した。

第Ⅲ相試験における3回接種後の血清中和抗体のGMTは、第Ⅱ相力価範囲設定試験(005試験)

と同様、力価により異なった。G3血清型を除き、血清中和抗体反応は、第Ⅱ相試験でみられたも のと全般的に同様であった。

V260の3回接種後のG1、G4及びP1血清型に対する血清中和抗体のGMTと抗ロタウイルスIgA

は中~高値、G2及びG3血清型に対するGMTは低値であった。このうちG2血清型に対する血清 中和抗体は、第Ⅱ相/第Ⅲ相臨床試験のいずれの試験においても低値であった。G3血清型に対す る血清中和抗体は、002試験では低かったが、005試験では高値を示した。しかし、第Ⅲ相試験で は、低値であった。このG3血清型に対する反応が、第Ⅲ相試験で低値であったことの要因を特定 するためにアッセイ、製剤処方、製造工程及び対象集団の検討を行ったものの、明確な原因は不 明であった。調査の詳細な報告については[資料5.4: 71]に示した。また、G2及びG3血清型に対す る血清中和抗体反応が低かったことは、これらの血清型に対する有効性の結果とは異なるもので あった。

ワクチン予防効果との相関が示されている抗ロタウイルス IgA に関しては[資料5.4: 53] [資料

5.4: 54]、3回接種後に抗ロタウイルスIgAがベースラインから3倍以上増加した被験者の割合が、

高値を示した。

2.5 臨床に関する概括評価 - 52 -

2.5.4.2.2.2 V260と他の既承認小児用ワクチンの併用[006試験(REST)]

006試験(REST)の米国での併用コホートの被験者1,358例において、米国の既承認小児用ワク チンであるINFANRIX、COMVAX、IPOL及びPREVNARと併用接種(同日)した場合の既承認 小児用ワクチンの免疫原性を検討した。その結果、併用した既承認小児用ワクチンの17抗原中16 抗原に対する抗体反応において、V260併用群のプラセボ併用群に対する非劣性が示された。非劣 性が示されなかったのは、百日せきパータクチンに対する抗体反応であり、プラセボ併用群より

もV260併用群で低値となった。しかし、その差は小さく、GMTの結果から、百日せきワクチン

の活性は認めらた。これらの結果は[2.7.3I.2.2.1.1.5.3項]及び治験総括報告書(CSR)[資料5.3.5.1:

P006]に示した。

外国における初回製造販売承認申請後の検討の結果、この百日せきパータクチンに対する抗体 反応が低値を示した生物学的に妥当な理由はなかった。さらに、百日せきの専門家グループによ り、本試験は十分な検出力を持つものの、百日せきの抗体反応を評価した被験者が少数であった こと及び百日せきに対する抗体反応の測定方法のバリデーションに懸念があることから、より多 くの検体数を用いて別の測定機関で測定することが推奨された。

そこで、百日せきワクチンに対する抗体反応の測定を、別の機関(

)で実施した。この追加測定では、最初に百日せきワクチンに対す る抗体反応を測定した検体集団に、最初に百日せきワクチンに対する抗体反応を測定しなかった 検体集団(その他の既承認小児用ワクチンに対する抗体反応を測定)を加え、米国での併用コホ ートの被験者数とほぼ同数からなる集団で実施した。

最初に百日せきワクチンの抗体反応を測定した集団での追加測定の結果は、最初の測定で得ら れた結論と一致していた。一方、最初に百日せきワクチンに対する抗体反応を測定しなかった集 団、及び両群を併合した集団では、3つの百日せき成分(百日せき毒素、百日せきFHA及び百日 せきパータクチン)に対する抗体反応は、いずれもV260併用群とプラセボ併用群で同様であった。

この における測定に続き、百日せきワクチンに関する US postmarketing

commitmentを果たすため、006試験(REST)の米国既承認ワクチン併用集団の全検体で追加測定

が行われた。本測定は、006試験(REST)の米国での併用コホートに組み入れられたすべての被 験者のうち、3回接種後42日目前後の十分なサンプル量のあるものを用い、

において行われた。その結果、百日せき成分の抗体反応は、プラセボと百日せきワ クチン併用接種時及びV260と百日せきワクチン併用接種時で同様であった[表2.7.3I: 23]。

以上の点から、百日せき抗原に対する免疫反応を総合的に判断すると、百日せきワクチンのワ クチン予防効果は、V260と併用した場合にも、大きな影響は受けないものと考えられる。したが って、これら既承認小児用ワクチンはいずれも併用接種が可能であると考える。

2.5.4.2.2.3 V260と経口生ポリオウイルスワクチン(OPV)の併用

014試験では、V260とOPVを併用(同時又は交互接種)した場合のOPVの免疫原性とV260の

免疫原性をそれぞれ評価した。なお、同時接種の被験者は、V260及びOPVを56~84日(8~12週)

の間隔で、計3回同時に経口接種した。交互接種の被験者は、最初にV260を接種し、V260接種か

2.5 臨床に関する概括評価 - 53 -

ら次のOPV接種までは14~28日(2~4週)の間隔をあけ、OPV接種から次のV260接種までは42 日(6週)以上の間隔をあけてそれぞれ3回経口接種した。

その結果、OPV の免疫原性について、同時接種群のポリオウイルス1型、2型及び3型に対する 血清抗体保有率(中和抗体価が8倍以上増加した被験者の割合)が、交互接種群のそれらに対して 非劣性を示すことが確認された。

一方、V260の免疫原性は、血清抗ロタウイルスIgAのGMT比の95%信頼区間の下限が0.5を下 回ったことから、同時接種群の、交互接種群に対する非劣性の基準は満たされなかった。そこで、

post-hoc解析として、血清抗ロタウイルスIgAが3倍以上増加した被験者の割合に関して同時接種

群の交互接種群に対する非劣性を検証したところ、同時接種群で93.3%となり、交互接種群

(97.7%)との非劣性が検証された。このように血清抗ロタウイルスIgAが3倍以上増加した被験 者の割合が両群間で93%以上となったことは、006試験(REST)の結果とも類似していた[表2.7.3I:

33]。また、G1、G2、G3、G4及びP1A血清型に対する血清中和抗体反応の非劣性解析の結果、同

時接種群の各血清型のGMTは、交互接種群のGMTと比較して非劣性が示された。

さらに、本試験で得られた免疫原性のデータを、外国の第Ⅱ相試験(005試験)及び第Ⅲ相試験

[006試験(REST)及び007試験]の有効性データと比較したところ、V260とOPVの同時接種群 と同程度の免疫原性(血清抗ロタウイルス IgA)を示した被験者群では、有意なワクチン予防効 果が認められている[表2.7.3I: 36] [表2.7.3I: 37]。

以上の点から、V260とOPVの同時接種は、OPVの免疫原性に対して影響を与えず、V260の免 疫原性に対しても、若干低下する可能性はあるものの、この免疫反応のレベルであれば、重度の ロタウイルス胃腸炎に対して高い有効性を維持するものと考える。

2.5.4.2.3 製造工程の一貫性の確認(009試験)

009試験では、V260の製造工程の一貫性を評価した。

その結果、ロタウイルスG1、G2、G3、G4及びP1血清型に対する血清中和抗体反応はV260の3 ロット間で同程度であった(P値はいずれも0.001未満)。また副次解析の結果、3回接種後の抗ロ タウイルス IgAのGMTも3ロット間で同程度であった[資料5.3.5.1: P009]。したがって、V260の ワクチン製造工程の一貫性が臨床的に確認された。

2.5.4.2.4 有効性の代替マーカー

ヒト-ウシ再集合体ロタウイルスワクチンの第Ⅱ相試験において、免疫原性と有効性の相関を評 価したが、ロタウイルス胃腸炎に対する有効性の代替マーカーを確立するには至らなかった。第

Ⅱ相試験の005試験では、G1血清型に対する血清中和抗体価が一定の閾値を超える場合、ロタウ イルス胃腸炎の発症リスクの減少がみられたが、このような所見についての確認及び妥当性の評 価は実施されていない。第Ⅲ相試験におけるロタウイルス胃腸炎発症被験者から採取した追加血 清検体試料の検査終了後、有効性の潜在的な代替マーカーについて検討したもののロタウイルス 胃腸炎に対する有効性の代替マーカーを確立するには至らなかった。

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