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所 属 社会科学研究科 経営学専攻 学 位 の 種 類 博士(経済学)

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Academic year: 2021

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(1)

氏 名 河

カワ

シゲ

隆 一 郎

リュウイチロウ

所 属 社会科学研究科 経営学専攻 学 位 の 種 類 博士(経済学)

学 位 記 番 号 社博 第

22

号 学位授与の日付 平成

27

9

30

日 課程・論文の別 学位規則第4条第

1

項該当

学 位 論 文 題 名 情報セキュリティと研究開発への戦略的投資 論 文 審 査 委 員 主査 教授 渡辺 隆裕(首都大学東京)

委員 教授 飯村 卓也(首都大学東京)

委員 教授 芝田 隆志(首都大学東京)

【論文の内容の要旨】

この 10 年の間に,企業にとって情報セキュリティの重要性は非常に高くなっている.しか しながら,従来の議論においてはサイバー犯罪の手口や情報漏えい事故の発生原因の検証 とそれらへの対策とに注目があつまり,「企業にとって,情報管理活動としての情報セキュ リティと研究開発とへの戦略的投資とはどのようなものであるのか」についてモデルを使 った分析は重視されていない.具体的には,自社の情報セキュリティ投資戦略がどのように 競争相手の市場での戦略に影響を与え,その結果による競争相手の戦略の変化が自社の戦 略や利潤に与える効果(こうした一連の競争相手との戦略の相互作用は戦略的効果という) については,明らかではないのである.それならば,ゲーム理論を用いてこの戦略的状況を 明らかに知りたいというのが,本論文の動機である.

したがって本論文の目的は,戦略的効果を考慮して,情報セキュリティ投資が企業の利潤 と戦略とに与える影響を考察することである.そのために,まず第一に本論文のモデルの基 礎となる研究開発投資の分析モデルが有効となるパラメータの範囲をあきらかにして,先 行研究について再検討する.第二に,情報セキュリティ投資による利潤への影響の基本的な 特徴が,直接効果と戦略的効果とに分解されて明らかにする.第三に,情報セキュリティ投 資を行っていない企業が情報セキュリティ投資によって利潤が増加するための条件を検討 する.第四に,情報セキュリティと研究開発のそれぞれについて競争相手の戦略の変化に対 する自社の最適な投資戦略を示す.第五に,市場の規模の変化と技術スピルオーバーの度合 いの変化とに対する,各企業の均衡戦略の変化を示す.第六に,情報セキュリティ投資が社 会全体での研究開発水準に対して与える影響を考察する.

以下,本論文の構成に沿って概要を述べる.第 1 章では,情報セキュリティ投資についての

社会的な背景を示して本論文の動機と議論する問題を明らかにする.1.1 節では,まず企業

(2)

にとっての情報セキュリティがいわゆる IT セキュリティをも含む広い意味での情報管理活 動であることを述べる.また,情報流出に対する企業の戦略に関する理論的分析を行なった 先行研究から,IT セキュリティの経済学と技術スピルオーバーを考慮した研究開発投資に ついての研究を概観する.これらをふまえて,本論文が着目する情報セキュリティ投資によ る戦略的効果の説明をする.そして,本論文で分析される新たな問題が提起される.1.2 節で は,本論文の概要と構成を示す.

第 2 章では,まず,戦略的投資と技術スピルオーバーの分析をした先駆的な研究の概観を する.つぎに,戦略的投資と技術スピルオーバーの分析手法を共同研究の研究に適用するこ と で , そ の後 の 研 究に 転機 を 与 えた d'Aspremont and Jacquemin (1988)["Cooperative andnoncooperative R&D in duopoly with spillovers", The American Economic Review, Vol.78,No.5, pp.1133{1137](以下 DJ と略)のモデルを概観する.DJ のモデルは簡潔であつ かいやすい性質を持つために非常に多くの後継研究を産み出し,被引用件数は 2000 を超え る.数多くのチェックを経たモデルである.本論文でも基本モデルとして拡張を行っている.

よって,他の先行研究よりも詳細に概観する.

つぎに,DJ 基本として,技術スピルオーバーによって競争相手が得る費用の削減分を(こ れ以降,本論文ではこれを実効技術スピルオーバーとよぶ)を企業が変化可能にするように モデル拡張をした先行研究を概観する.

つぎに,多段階ゲームに拡張された研究の中で,意思決定点(手番)で企業が決定する戦略 変数の数と手番の前後関係に着目して先行研究を概観する.

さらに,本節では,DJ を一般化した新たなモデルを構築して再検討する.具体的には逆需 要関数と費用関数に一般形式の関数を与えて,技術スピルオーバーによる戦略的効果の基 本的な特徴を考察する.

第 3 章では,DJ のモデルに基づいて,限界費用が非負であるような均衡の存在条件を再検 討する.

限界費用の非負制約の問題とは,具体的には,得られた均衡において限界費用が正になる か(内点均衡),あるいは限界費用が 0 になる(端点均衡)のかを検討することである.

この問題は,均衡の精緻化に関連する問題である.DJ の均衡の精緻化については,均衡の 安定性の研究を中心として複数の研究が行われている.しかし,限界費用の非負制約を中心 にすえて技術スピルオーバーとの関連性について検討している分析を見かけない.したが って,本章の分析は限界費用の非負制約についての均衡の精緻化として既存研究を補完す る役目を果たすと考える.

3.2 節では,DJ 型のモデルによる Shy(1996)["Industrial organization: theory and

appli-cations", The MIT Press.]の数値例では,得られたゲームの均衡において限界費用

が負の値をとることを示す.もって,限界費用の非負制約を考慮しないことで発生する問題

が明らかになる.3.3 節では,戦略の組を限界費用の非負制約によって 4 つの領域に分け,4

つの領域ごとに企業の純利潤関数を構築する.3.4 節では,前節で定式化したモデルに基づ

(3)

いて数値演算による均衡の分析を行なう.得られたゲームの均衡には,端点均衡が含まれて いることが明らかになる.そして,解析的に内点均衡が存在する外生変数の領域を明らかに する.また,均衡の安定性についても調べる.最後に,DJ 型のモデルによる共同研究の分析結 果は,分析過程に問題はあるが,結果は正しい事が明らかになる.

第 4 章は,情報セキュリティ投資と研究開発投資とを行なう企業の戦略的投資について論 じる本論文の中心となる部分である.本章では DJ のモデルを拡張して,技術スピルオーバー があるときに情報セキュリティ投資と研究開発投資とを市場でのクールノー競争に先立っ て同時に行なう 2 つの企業の 2 段階ゲームを定式化して分析する.このときゲームの均衡と して部分ゲーム完全均衡を用いる.4.2 節では,逆需要関数と費用関数とを一般的な形で与 えてモデル化する.そのモデルから情報セキュリティ投資が利潤に与える効果を戦略的効 果と直接効果とに分解して,それぞれの効果を考察する.そして,情報セキュリティ投資に よる戦略的効果が情報セキュリティ投資の限界投資費用よりも大きいとき,情報セキュリ ティ水準が正の値で純利潤が最大となることを明らかにする.4.3 節では,逆需要関数と費 用関数とを線形関数で与えて,企業の最適な戦略を求める.そして,競争相手の情報セキュ リティ水準の増加が自社の情報セキュリティ水準を減少させることを示す.一方,競争相手 の研究開発水準の増加が自社の情報セキュリティ水準に与える効果は技術スピルオーバー の大きさに依存することを明らかにする.4.4 節では,市場の規模の変化と技術スピルオー バーの度合いの変化とに対する各企業の均衡戦略の変化を考察する.そして,ゲームの均衡 において,逆需要関数が上へシフトするとき情報セキュリティ水準が増加することを示す.

一方,均衡において技術の拡散の可能性が高まるとき,情報セキュリティ投資の投資費用が 大きいときに限って,情報セキュリティ水準が増加することを明らかにする.さらに,前節 で求めたゲームの均衡と情報セキュリティ投資を全ての企業が行わない場合のゲームの均 衡とにおける社会全体での研究開発水準をそれぞれ比較する.その結果,社会全体での研究 開発水準を高めるための条件は,均衡において各企業が情報セキュリティ投資を行わない とコミットすることであることを示す.

第 5 章では,本論文で行なった企業の情報セキュリティ投資戦略に対する分析の総括を

行なう.また,これらの分析をふまえたうえで今後の企業の情報資源管理への戦略研究の方

向性について検討を行なう.

参照

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