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所 属 社会科学研究科 経営学専攻 学 位 の 種 類 博士(経営学)

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(1)

氏 名

Tranト ラ ン Thienテ ィ エ ン Vuヴ ュ

所 属 社会科学研究科 経営学専攻 学 位 の 種 類 博士(経営学)

学 位 記 番 号 社博 第

33

号 学位授与の日付 令和元年

9

30

課程・論文の別 学位規則第4条第1項該当

学 位 論 文 題 名

An Empirical Investigation into Public Efficiency and Budgeting:

The Case of Tokyo Local Governments

論 文 審 査 委 員 主査 教 授 野口 昌良

委員 教 授 細海 昌一郎

委員 准教授 遠藤 貴宏 (一橋大学大学院)

【論文の内容の要旨】

1.研究の背景

ニュー・パブリック・マネジメント(New Public Management: NPM)の学説は、1980 年 代以降、世界的なパブリック・セクター、すなわち公共部門の改革において一般的に受容さ れてきている。従来の行政(Public Administration: PA)が官僚的でしばしば非効率な統治機 構に終始する一方、NPM への転換は、より効果的で、透明性の高い説明責任をもたらすよ うな管理および業務に関する改善を実現し得るという意味で、公共部門ガバナンスにとっ て相当のメリットをもたらす可能性がある。

NPM

を扱った研究(いわゆる「NPM パラダイム」)を紐解くと、その顕著な特徴は、

次の

4

点に集約することができる。第一に、上位層の政府組織から基礎自治体に対する財政

の分権化(fiscal decentralization)は、地方政府レベルにおいて最適な効率性と説明責任の向

上をもたらす可能性がある。第二に、資源不足の環境下において、財政支出を合理化するこ

とで、公共サービスの生産過程をより効率的なものにし得る。第三に、公共部門において実

際の業務にあたっている公共部門組織(public sector organizations: PSOs)は、民間の管理

手法、とりわけ発生主義会計(とくに発生主義予算)などの企業会計基準を採用することに

(2)

より、行政の効率化と説明責任の向上をもたらすことができる。第四に、入力管理(いわゆ る「PA モデル」)ではなく、出力管理(「NPM モデル」)に重点をおくことにより、予算 編成を通じて計画的な資源配分がもたらされ、最終的にパフォーマンス(出力と結果)が向 上する可能性がある。 本研究では、東京都内の

49

基礎自治体を主な事例として、 上記の

NPM

パラダイムの妥当性を検証することを目的としている。

都内自治体を分析対象とした理由は次のとおりである。第一に、

OECD

諸国(たとえば、

イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、イタリア、ポルトガル、ドイツ、ベルギー 等)とは対照的に、日本の自治体に関しては、財政管理に関する効率性とパフォーマンスと いう観点から検討した学術研究が明らかに不足している。第二に、日本政府は

1990

年代か ら

NPM

改革に着手し、とりわけ小泉政権下における

2000

年代初頭の改革は地方分権に少 なからぬ影響を与え、さらに

2008

年の世界金融危機(Global Financial Crisis: GFC)は地 方自治体の社会経済状況に著しい悪影響を及ぼしたが、こうした

NPM

GFC

といった要 因が、日本の自治体にどのような影響を与えたのかを検証するような研究は依然として限 られている。研究が実施されていた場合でも、基礎自治体レベルではなく、広域レベルに限 定されている。最後に、学術的意義に加えて、政策的な意義も大きい。すなわち、行政の効 率性とパフォーマンスに対する決定要因を析出することは、自治体の財政管理に責任を有 する為政者の政策立案に貢献することができる。

以上のことから、本研究は、2001 年から

2015

年にかけての都内

49

基礎自治体を対象と したパネルデータ分析を実施し、NPM に関する

4

つのキーコンセプト 、(1)財政の地方分

権化、

(2)公共サービス提供の効率化、(3)公会計改革および(4)パフォーマンス管理について、

その妥当性と制約について検証している。

(3)

2.本論文の構成

本論文は、7 章(本文 208 頁)から構成されている。構成は以下のとおりである。

CHAPTER 1: INTRODUCTION 1.1 Introduction

1.2 Research motivations 1.3 Research objectives 1.4 Research methods 1.5 Structure of the thesis

CHAPTER 2: LITERATURE REVIEW 2.1 New Public Management (NPM) 2.2 Public Sector Finance

2.3 Public sector financial management

2.4 Performance measurement and management 2.5 Summary of underlying theories

CHAPTER 3. THE ROLE OF REVENUE VOLATILITY ON LOCAL EXPENDITURE VOLATILITY

3.1 Introduction

3.2 Tokyo Local Government Remit, Revenue, and Expenditure 3.3 Empirical Strategy

3.4 Research Results and Findings

3.5 Policy Implication and Concluding Remarks

CHAPTER 4. PUBLIC EFFICIENCY IN TOKYO METROPOLITAN LOCAL GOVERNMENTS

4.1 Introduction

(4)

4.2 Public sector setting 4.3 DEA method

4.4 Empirical results 4.5 Conclusions

CHAPTER 5. PUBLIC EFFICIENCY IN TOKYO LOCAL GOVERNMENTS: THE ROLE OF ASSET UTILIZATION AND BUDGETING

5.1 Introduction

5.2 Research background 5.3 Methodology

5.4 Empirical results of double-bootstrapping truncated regression analysis 5.5 Concluding remarks

CHAPTER 6. ARE PERFORMANCE MEASUREMENT SYSTEM USED FOR INCENTIVE OR EXPLORATORY PURPOSES?

6.1 Introduction 6.2 Literature Review 6.3 Research methods 6.4 Research results

6.5 Concluding Remarks and Policy Implications

CHAPTER 7. CONCLUDING REMARKS AND POLICY IMPLICATIONS 7.1 Summary of research results

7.2 Policy implications

7.3 Limitations and future research works REFERENCE

なお、本論文の第

3

章は

Economic Papers, Vol.37, No.4, pp. 443-455.に掲載された共

(5)

著論文

”The Role of Revenue Volatility in Local Expenditure Volatility: A Comparison of Tokyo Metropolitan Local Governments”を、第4

章および第

5

章は

Public Money and Management

に掲 載予 定の共著論文

”Public Efficiency in Tokyo Metropolitan Local Governments: The Role of Asset Utilisation and Budgeting”

を基礎に加筆修正したもの である。

3.本論文の概要

1

章では上記の問題意識が明確化され、第

2

章においては、

(1)パブリック・セクター・

ファイナンス、

(2)パブリック・セクターの財政管理、(3)パブリック・セクターの業績測定・

管理に関する諸理論についての先行研究レヴューが実施される。

先行研究の整理に基づき、パブリック・セクターの会計および予算編成に関連しつつ、

効率性スコアにも影響する要因を識別するための手法が提示される。具体的には次にあげ る

2

段階包絡分析法を指す。基礎自治体の効率性を測定するにあたり、複数のアプローチ が存在しているが、本研究では、ノンパラメトリック手法の代表例であるデータ包絡分析

(Data Envelopment Analysis: DEA)が採用される。DEA

は線形計画法に基づき、比較対 象間の相対的な効率性を測定するが、効率性に影響を与える要因を説明することはできな いという問題がある。そこで本研究では、第

1

段階で推定された効率値を潜在的な環境要 因で回帰するという「2 段階

DEA」を導入することにより、この問題を解決している。

3

章では、都内自治体に対して実施された歳入および歳出の分権化に伴う、「パブリ ック・ファイナンス・メカニズム」についての分析が実施される。自治体の歳出ボラティ リティが自治体財政の健全性に多大な影響を及ぼす可能性があることは広く認知されてお り、その意味で自治体歳入の各構成要素の変動が、歳出ボラティリティにどのように変換 されるかを理解することは不可欠の要素となる。

区部(都内

23

特別区)と市部(都内

26

市)からなる都内自治体の歳入と歳出ボラティ

リティの関連性を、6 年間(2010〜2015 年)の財政データをもとに検証した。その結果、

(6)

地方税のボラティリティと歳出のボラティリティとの間に統計的に有意な正の関連性が識 別される一方、補助金のボラティリティと歳出のボラティリティとの間に負の関連性があ ることを示唆するエビデンスが得られた。このことは、補助金が歳出の安定化に重要な役 割を果たしていることを示している。さらに、通説に反するような結果も得られた。すな わち、地方税への比重を高めるべきとする、先行研究に多くみられてきた処方箋は、都内 自治体に関しては妥当しない可能性があることを示唆している。加えて、区部と市部の違 いに関しても知見が提供されている。とくに、政府間交付金の調整は特別区における歳出 の変動性を抑制するうえでとくに重要であるということが示唆される。

行政の効率性とパブリック・セクター・マネジメントに焦点を合わせた第

4

章では、

DEA

を使用して、2001 年から

2015

年の期間の都内自治体の公共サービス提供に関する効率性 が調査される。また、2008 年における発生主義会計の導入前後の効率性スコアを比較し、

効率性の推移が分析される。分析の結果、区部で公共サービス提供の効率性が低下する一 方、発生主義に基づく新会計システムの導入以後、市部では効率性が増加したことを示唆 するエビデンスが得られた。区部と市部の非対称性は、発生主義会計システムの導入が無 条件に行政の効率性改善をもたらすわけではないことを示唆している。

4

章の結果を受け、第

5

章では、環境要因が効率性スコアにどのような影響を与えて いるかが

2

段階

DEA

を用いて分析されている。2 段階

DEA

を実施するにあたり、Simar-

Wilson(2007)によって提案されたモデル(Double-bootstrap Truncated Regression Model)

を採用する妥当性も説明されている。このモデルを採用することにより、政策変数および 非政策変数双方を用い、推定バイアス補正済効率値が回帰される。分析の結果、公共サー ビスの効率性と保有資産の利用度とは有意な正の関連性を示した。しかしながら、公共サ ービスの効率性は年度予算と決算の整合性との間には有意な関連性を有していないという ことが示唆された。このことは次の

2

つの公共政策上のインプリケーションを提起する。

すなわち、第一に、効率性の低下に抗するうえで、保有資産の活用に一層注力する必要が

あること。 第二に、公共資産をより戦略的に管理するうえで、発生主義会計と現金主義予

(7)

算のミスマッチを解消することが望ましく、自治体の政策立案者には発生主義予算導入の 可能性を検討する必要があること。

上記の結果はさらに

2

つの方向で拡張される。公共資産の利用に基づく、区部と市部の 違いに注目した分析からは、より高い効率性を維持するため、区部には公共資産の削減が 提案される一方、市部には資産投資を積極的に考慮すべきとする施策が提示される。 また、

各種保有資産の分類に基づく研究においては、教育目的資産への投資を拡張させる一方、

生活、衛生、産業などの各種資産については、効率性を向上させるため、投資額を抑制す る必要があることが提示される。

5

章で提示した新規の施策の要諦は、都内自治体において発生主義予算の導入可能性 を模索するということであったが、 発生主義の予算編成は、原則、業績管理システム

(performance management system: PMS)の支援なしでは十分な効果を発揮できない。第 6

章は、構造方程式モデリング(structural equation model: SEM)を駆使しつつ、段階的に 異なるデータ分析手法を組み合わせて要因間の関係性を読み解いていく手法である

Mixed-method Sequential Explanatory Study

を適用して、発生主義予算導入の可能性を 意識した

PMS

の在り方を調査することを目的としている。そのため、第一段階で

SEM、

第二段階で半構造化インタビュー調査が実施される。分析の結果、自治体のなかでも、東 京都庁においては、PMS が探索的な目的(exploratory oriented use)ではなく、実質的にイ ンセンティブ供与指向(incentive oriented use)で使用されていることを示唆するエビデン スが得られた。発生主義予算を効果的に実施するためには、

PMS

の戦略的かつ探索的利用 への重点移行が必要となる。

終章である第

7

章では、NPM のキーコンセプトに基づく行政の効率化に向けた施策は、

あらゆる自治体に無条件に当てはまるものではなく、都内自治体に適用する場合、区部と

市部における

GFC

後の財政構造の変化に留意しつつ、発生主義予算および探索目的

PMS

等の必要な管理手法を具備したうえで実施することにより、本来の効果が期待できるとす

る結論が導かれる。

(8)

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