北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2017 年 2 月 1 日〜13 日
マメ外皮に含まれるオリゴ糖の特定と機能性評価
生物資源科学専攻 家畜生産生物学講座 動物機能栄養学 岸 宏之
1.背景と目的
マメ外皮はマメ類の加工過程において排出される副産物である。近年は良質な繊維源として機能 性が示唆されつつあり,単胃動物の腸内環境改善を目的とした飼料源としての応用が期待されてい る。当研究室ではこれまでに,マメ外皮の給与によりラット盲腸内における有用菌や短鎖脂肪酸の 増加,腐敗産物の低減が生じることを見出し,マメ外皮の給与が単胃動物の腸内環境を改善する可 能性を示唆した。この要因として,マメ外皮に含まれる非構造性炭水化物(NSC)の存在が考えら れるが,NSC を主成分とするマメ外皮の水溶性画分が腸内有用菌の増殖を選択的に促進することを すでに確認している(安田, 2007; 新居, 2013)。本研究では NSC の構成成分であるオリゴ糖に特 に着目し,マメ外皮に含まれるオリゴ糖の特定と腸内有用菌への影響を評価した。
2.方法
1) オリゴ糖の分離および構造解析 ダイズ外皮およびフジマメ外皮の水溶性画分を薄層クロマ トグラフィー(TLC)分析に供し,マメ外皮に含まれるオリゴ糖の存在を確認した。次に,水溶性 画分をゲルろ過クロマトグラフィーに供し,オリゴ糖の分離を行った。得られた画分それぞれにつ いて,フェノール硫酸法で糖含量を測定し,各オリゴ糖の存在量および存在比を求めた。また,単 一のオリゴ糖のみを含む画分を ESI-MS 解析および NMR 解析に供し,オリゴ糖の同定を行った。
2) オリゴ糖の機能性評価 本研究で同定されたオリゴ糖であるラフィノースおよびスタキオー スを基質とし,腸内有用菌としてLactobacillus属細菌 4 菌種の増殖モニタリングを行った。また,
マメ外皮水溶性画分を基質とし,同じく有用菌として近年注目されている Akkermansia muciniphilaの増殖モニタリングを行った。
3.結果と考察
TLC 分析の結果,ダイズ外皮およびフジマメ外皮にはそれぞれ 3 種の異なるオリゴ糖が存在する ことが判明した。これらのオリゴ糖が水溶性糖類に占める割合はダイズ外皮で 13.3%,フジマメ外 皮で 15.6%であり,マメ外皮原物中の含有量はいずれも約 0.25%であった。ESI-MS 解析および NMR 解析の結果,マメ外皮に含まれるオリゴ糖のうち 2 種をそれぞれラフィノース,スタキオースと同 定した。これらのオリゴ糖純品を基質として実施した純菌培養では,Lactobacillus属細菌 2 菌種 の増殖が促進された。以上より,これらオリゴ糖が単胃動物の腸内環境改善効果の要因の一つであ ることが示唆された。また,A. muciniphilaの純菌培養試験において,フジマメ外皮水溶性画分を 基質とした場合,ダイズ外皮水溶性画分を基質とした場合よりも増殖促進が顕著であった。同菌種 は過去の給与試験においても,フジマメ外皮給与時にのみ存在比が増加していた。フジマメ外皮に は未同定のオリゴ糖 L3 が存在し,その存在比が高いことから,この糖がA. muciniphilaの増加に 寄与している可能性が考えられる。L3 については構成糖候補がグルコースおよびガラクトースであ ること,質量が 794 u であることが判明しているが,今後さらなる情報を得るために NMR による構 造解析ならびに L3 を基質としたA. muciniphilaの純菌培養試験を予定している。