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移 行 期 に お け るハ ン ガ リー の 第 二 経 済
その現実 と労使 関係へ の影響
大 梶 俊 夫
1.は じ め に
1993年4月 初 め の新 聞 に は,ウ ィー ン発 の 次 の よ うな 記事 が 掲 載 され て い た。 「ブ ダペ ス トか らの 報 道 に よ る と,ハ ン ガ リー 政 府 の税 財 政 管 理 当 局 者 の 推 計 で は,92年1年 間 に 同 国 民 が 申告 しなか っ た所 得 は3千 億 フ ォ リン ト
(約34億 ドル)に 達 した。 国 内総 生 産(GDP)の11%に も相 当 す るた め,政 府 は徴 税 体 制 の 強化 に乗 り出す 考 え。 た だ 先 月末,最 高裁 が,政 府 が 計 画 し て い た納 税 者 に す べ て の 資 産 の 申告 を義 務 づ け る制 度 は,プ ラ イバ シー 保 護 に 反 す る との 判 決 を下 し た た め,申 告 漏 れ 防 止 対 策 は 難 航 し そ う だ。」ω ハ ン ガ リー は社 会 主 義 体 制 の 下 で,市 場 機 能 の 導 入 に積 極 的 で あ った が,そ れ が体 制 に は公 認 され な い 経 済 領 域 と して,い わ ゆ る第 二 経 済 と して イ ン フ ォ ー マ ル ・セ ク ター を形 成 して きた 。 しか しそ の 第 二 経 済 が社 会 主 義 体 制 が 終 焉 を告 げ た現 在 で も,な お 盛 ん で あ り,市 場 経 済化 が 進 み つ つ あ る今 です ら, ア ン ダー グ ラウ ン ド化 しつ つ,国 内総 生 産 の1割 以 上 を 占め て い る とい うの で あ る。 市 場 経 済化 をめ ざ し,私 的 経 済 活 動 を公 認 した現 在 です ら,税 務 当 局 の 推 計 が正 しい とす る と,1割 強 が 捕 捉 され て い な い とい うの で あ るか ら, 社 会 主 義 時代 に は,こ う した未 登 録 の,統 計 に の ら な い経 済 活動 が どれ ほ ど 浸 透 して い たか は,想 像 に 難 くな い。 こ う した イ ン フ ォー マ ル な経 済 はハ ン ガ リー一に だ け 存 在 す るの で は な い。 程 度 の差 は あ れ,社 会 主 義 社 会 に は ど こ で も見 られ た現 象 で もあ った 。 また逆 に い えば,ロ シ ア を初 め と した 旧社 会 主 義 諸 国 の経 済 が 激 し く落 ち込 ん で い る とい わ れ,何 度 も危 機 が 叫 ば れ て も, そ の都 度 乗 り越 え られ て い るの は,こ う した地 下 経 済 の発 達 の お か げ で もあ
る。
本 稿 は,ハ ン ガ リー社 会 主義 体 制 の下 で 市 場 経 済 の担 い手 と して 重 要 な役
割 を果 た して きた,こ の 第 二 経 済 につ い て,い くつ か の調 査 報 告 に基づ い て, そ の現 実 を 明 ちか に し,企 業 内 労使 関 係 に 対 す る その 影 響 を考 え よ う とす る もの で あ る。
2.第 二 経 済 の 概 念 定 義
第二経 済 とい う概 念 をハ ン ガ リー の社 会 科 学 文 献 に 導 入 した最 初 は ガ ー ボ ル とガ ラ シ で あ る とい わ れ る が(2),彼 らは 第 二 経 済 を 国 家 に よ って 規 制 さ れ て い るの で は な い 経 済 セ クター,す な わ ち私 的 セ クター と して定 義 して い る。 彼 らが 「私 的 経 済 セ ク ター 」 とい う表 現 を避 け た の は,イ デ オ ロ ・ギー 的 批 判 を避 け る ため だ っだ とい う。 ガ0ボ ル は 第 二 経 済 とい う概 念 に 以 下 の 活 動 を含 め て い る(3)。(1)市場 あ る い は 家 族 の 自 己 消 費 の た め の 私 的 生 産,② い わ ゆ る家 族 地 所 あ る い は私 的 所 有 ・開 発 した 他 の地 所 に お け る農 業 生産, (3)社会 主 義 セ クター に お け るチ ップや 賄賂,(4)私 的 所 有 の 住 居 や 他 の私 有 財 産 の 賃 貸 か ら生 じた所 得 。 彼 らが 除外 して い る もの は,社 会 主 義 セ ク ター に お け る超 過 労 働,副 業,犯 罪 活 動 か ら生 じた所 得,国 営 企 業 ・コー ポ ラ テ ィ ブ経 済 単 位 に お け る半 犯 罪 的 活 動 や その 経 営 者 との イ ン フ ォー マ ル な 人 間 関 係 か ら発 生 した利 潤 で あ る。
ア ン ドル カが 用 い る第 二 経 済 の概 念 は ガー ボル とガ ラ シ の そ れ とは 多少 違 って い る④ 。 そ こ で は,「 社 会 主 義 セ クター(す な わ ち 国営 企 業 ・コー ポ ラ テ ィ ブ経 済 単 位)で の 主 業 の 規 制 的 な労 働 時 間 外 に遂 行 さ れ,GDPや 福 祉 の増 大 に貢 献 す る あ らゆ る合 法 的 活 動 を含 む もの 」 と して 第 二 経 済 が 定 義 さ れ て い る。 こ こで の 概 念 は残 業 や 副 業 や,い わ ゆ る 「企 業 内請 負 集 団」 を含 む が,チ ップや 賄 賂 や,私 有 財 産 の 賃 貸 に 関 連 して社 会 の構 成 員 間 を移 転 す る所 得 は 排 除 して い る。 こ の 第二 経 済 の定 義 の特 徴 は,(1)犯 罪 行 為 に よ る所 得 は含 ま な い こ と,し か し② 第二 経 済 活 動 か ら派 生 した所 得 に 関 して個 人所 得 税 が支 払 わ れ て い るか ど うか の 問 題 を定 義 は 無視 して い る こ とで あ る。 そ れ ゆ え 第 二 経 済 の こ の定 義 は,資 本 主 義 社 会 で用 い られ て い る,イ ン フ ォー マ ル,ア ン ダー グ ラ ウ ン ド,非 合 法 の経 済 の概 念 と同一 視 して は な らな い が, こ う し た概 念 に よ っ て示 され て い る現 象 と,ハ ンガ リー の 第 二 経 済 の現 象 は 多 くの類 似 点 を もっ て い る と し,こ の 第 二 経 済 の概 念 に最 も近 い概 念 は夜 間 ア ル バ イ ト(moonlighting)で は な い か とア ン ドル カ は 述 べ て い る。 し た
移行期におけるハンガ リーの第二経済25 が っ て 「第 二 経 済 」 よ り も 「所 得 補 足 的 活 動 」(income‑supplementing activities)と 呼 ぶ 方 が 適 切 で あ るが,前 者 の 用 語 は そ の 簡 略 さ に お い て使 用 され て い る と彼 は い う。
ま た 門脇 延 行 に よ れ ば ⑤,第 二 経 済 は 広 義 に解 釈 す る と,① 社 会 主 義 セ ク ター(=第 一 経 済)の 外 で 展 開 され る生 産 とサ ー ビス 活 動 の総 体,(2)社 会 的 に組 織 され な い 国 民 の 間 の所 得 再 配分 過 程,が 含 め られ,(2)の 過 程 に は,
チ ップ,医 者 な どへ の 謝 礼,店 貝 な どへ の袖 の下,賄 賂 ま でが 第 二 経 済 の な か に 入 っ て くる,と され て い る。 そ の上 で 門脇 は合 法 性 の程 度 を基 準 に して, 第 二 経 済 を次 の3種 類 に分 け,そ れ ぞ れ の具 体 例 を上 げ て い る。
(1)合 法 的 活 動 。 農 業 生 産 協 同 組 合 員 の住 宅 付 属 地 経 営 や 組 合 の 補 助 活 動, 私 的 セ ク ター で の手 工 業 者 ・建 設 業 者 ・小 売 業 者 の活 動 。 特 に住 宅 付 属 地 経 営 を 中心 とす る農 業 小 生 産 は 生 産 規 模 と役 割 か ら して 重要 で あ る。 こ こで の 生 産 は農 業 粗 生 産 の1/3,純 生 産 物 の1/2を 占め る とい う。 特 に 野菜 ・果 物 の 栽 培 や 畜 産 の分 野 に お い て 国 民 の 消 費 生 活 に大 き く貢 献 して い る。 また私 営
の 手工 業 者,特 に電 器 製 品や 自動 車 の修 理 や 保 守 作 業 に お け る貢 献 も大 きい。
私 営 建 設 業 者 も毎 年35,000‑一 一40,000軒 の 一 戸 建 て 住 宅 を建 設 して お り,こ れ は全 受 託 建 設 の40〜45%に 達 す る。 国 の 住 宅 建 設 は都 市部 で の 団 地 建 設 に 集 中 して い るの で,地 方 に お け る一 戸 建 て 住 宅 建 設 に お け る私 営 建 設 業 者 の 果 た して い る役 割 は大 きい。 ま た食 料 品 販 売 な どの 私 営 小 売 業 者(約1万 人, 1981年)も 商 い 高 は小 さい(1%未 満)が,需 要 へ の 柔 軟 な適 応,選 択 の 幅, 品質 や サ ー ビ ス な ど の点 で,住 民 の欲 求 に よ く応 えて い る。
(2)厳 密 に は合 法 で は な い が,社 会 的 に許 容 され る範 囲 内 で社 会 的 必要 の 充 足 の た め の 生 産 ・サ ー ビス に 従 事 して い る活動 。 無 許 可 の私 営 業 で あ り, 税 金 を払 わ な い とい う点 で は合 法 で は な いが,社 会 的要 求 を 自 己の 労 働 に よ
っ て充 足 して い る点 で社 会 的 に 許 容 さ れ て い る。 た と え ば い わ ゆ るmoon‑
lighter(月 明 か りの 労 働 者)の 活 動 。 つ ま り第 二 経 済 に 定 職 を もつ もの に よ る,勤 務 時 間前 後 時 に は 勤務 時 間 中,あ るい は休 日を利 用 した ア ルバ イ トで あ る。 具 体 的 に は テ レ ビや ラ ジ オ の修 理,一 戸建 て住 宅 の建 設 や 保 守,室 内装 飾,あ る い は 民宿 な ど。
(3)明 らか に違 法 な 活 動 。fiszzokと 呼 ば れ る社 会 的 資 産 を用 い て 私 腹 を 肥 や す 人 々 が い る。 勤務 時 間 中 に製 造 した もの を横 流 し した りす るの が この
表1第 二経 済の概念
自給 自足 合 法 的市 場 非合 法的取 引 家 計に関与 す る もの
家 計に関与 しない もの 計
all
aZi
Al
aiz
aZa
Az
ais
aas
A3
部 類 で あ る 。
以 上 み て き た よ うに,第 二 経 済 の 定 義 は 研 究 者 に よ っ て か な り異 な っ て い る。 バ ラー ジ ュ と ラ キ は 表1を 掲 げ て,概 念 の 整 理 を行 っ て い る ⑥ 。
そ れ に よ れ ば,ガ ー ボ ル(と ユ ハ ー ス)の 第 二 経 済 の 定 義 はA、 十A2十A3 で あ り,ケ メ ー ニ ュ(と ジ ル)の 定 義 はa、1十a、3十a2、 十a22と な っ て い る と
し て い る。 こ の 基 準 か らす れ ば,ア ン ドル カ の 定 義 はA、+A2と い う こ と に な ろ う。 彼 ら 自 身 はa、2+a、3を,家 計 を 通 じ て 計 測 で き る 私 的 経 済 の 範 囲 と し て 考 え,後 述 の よ う に,こ の 部 分 を 対 象 に し た 調 査 を 行 っ て い る。
現 象 の ど の 部 分 に 着 目す る か よ っ て 定 義 は 異 な っ て くる 。 こ こ で は,マ ク ロ経 済 的 な 視 点 か ら ア プ ロー チ す る の で も な け れ ば,犯 罪 と して 問 題 に す る わ け で も な い 。 労 働 社 会 学 的 視 点 か ら 第 二 経 済 の 問 題 に ア プ ロ ー チ を 試 み る わ け で,し た が っ て 暫 定 的 な 定 義 と して は,社 会 主 義 体 制 に 特 有 の,非 社 会 主 義 セ ク タ ー す な わ ち私 的 セ ク タ ー へ の 参 加 に よ る 所 得 補 足 活 動 と定 義 し て お き た い 。
3.第...経済 の 実態
で は,そ う した 第 二 経 済 はハ ン ガ リー 社 会 で どの程 度 の 広 が りと影 響 力 を も って い るの で あ ろ うか 。 まず,公 式 統 計 で私 的 セ ク ター の 比率 を確 認 して お こ う。 表2に 示 され て い る よ うに,サ ー ビス業 や 農 業 で の私 的 セ ク ター の 比 率 はか な り高 くな って い る。 製 造 業 の場 合 に は新 しい 企 業 形 態 を も分 析 に 入 れ な け れ ば正 しい評 価 は で きな いが,こ れ らの新 企 業 形 態 は 当初,拡 大 し た が,80年 代 後 半 に は そ の 成 長 は ス トップ し,そ の 時 点 で も製 造 業 の 生 産 高 で の 比率 は相 対 的 に小 さ い もの に 止 ま って い た とい う(7)。
次 に幾 つ か の 調 査 報 告 を用 い なが ら,第 二 経 済 の 実 際 の 状 況 を明 らか に し て い きた い と思 う。 まず 最 初 は ラ ドル フ ・ア ン ドル カ の 調 査 報 告 で あ る ⑧。
移行 期 におけ るハ ンガ リー の第二経済27 表2主 要 経 済 部 門 の 生 産 高 に お け る合 法 的,伝 統 的 私 的 セ ク タ ーの 比 率
年代 製造業 建設業 商業
サ ー ビス業
農業1981 2982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989
n.a.
1.3
n.a.
n.a.
n.a.
1.5 1.6 2.3
n.a.
9.fi
9.8 10.6 11.3 10.9 r・
12.7 n.a.
n.a.
n.a.
1.3 1.6 1.8 2.1 2.5 2.7
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
54.0 55.5 56.8 63.7 67.0
21.4 20.fi 20.8
22.5 21.4 22.2 23.O
n.a.
k.a.
n.a.=notavailable
出 典:Statisticalyearbook,1989.
ア ン ドル カが 利 用 して い る主 要 な調 査 は,1988年 秋 に行 わ れ た18才 以 上 の 3,000人 を対 象 に した 調 査 で あ り,第 二 経 済 活 動 の 有 無 そ の 形 態(超 過 勤 務,副 業,企 業 内請 負 集 団,協 力 事 業,自 営 農 民,小 売 活 動)に つ い て質 問
して い る。 そ の他,1963年,76/77年,86/87年 の 国 民 生 活 時 間調 査,1972年 と82年 の 家 族 地 所 と補 足 地 所 所 有 世 帯18,000を 対 象 に した生 活 時 間 調 査 お よ び1962年 以 降,5年 間 隔 で行 わ れ て い る世 帯 所 得 調査 の デ ー タ も使 用 して い る。
これ らの調 査 結 果 に よれ ば,第 二 経 済 へ の 参 加 状 況 は次 の よ うに い え る。
表3は 多様 な所 得 補 足 活 動 へ の参 加 に 関 す るデー タ で あ る。 パ ー セ ン テ0ジ は年 間 を通 じて規 則 的 あ るい は 臨 時 的 に あ る活 動 を行 っ た被 調 査 者 の 比 率 を 示 して あ る。 全 体 の参 加 率 につ い て 示 され て い な いが,別 の 箇 所 の 記 述 か ら 判 断 す る と70〜75%だ と思 わ れ る。 結 果 と して この デ ー タ は第 二 経 済 活 動 の 広 が りを示 して は い るが,参 加 の 強 度 は 明 らか で は な い。 第 二 経 済 の うち農 業 活 動 は 最 も広 範 囲 に行 われ て お り,成 人 人 口の ほ ん ん ど半 数 が そ れ に参 加 して い る こ とが わ か る ⑨ 。 ま た私 的 な住 宅 建 設 と メ イ ン テ ナ ン ス,お よ び 家 庭 で の 設 備 取 りつ け 作 業 が 二 番 目に 多 い 活 動 で あ る。 「1988年 に は50,600 戸 の新 住 宅 が 建 設 され た が,そ の うち45,400戸 は私 的 手 段 に よ る もの で あ っ
た」 とい う。 つ ま り,ほ とん どの新 住 宅 は私 的 に建 て られ て い る とい え よ う。
表3第 一 ・第 二 経 済 に お け る所 得 補 足 活 動 へ の 参 加 率(1988年 調 査)
所得補 足 活動 の種類
男性
参加 率(%)
女性
職 場 で の残 業
副 業(セ カ ン ド ・ジ ョブ) 企 業 内請 負集 団
農 業 第 二 経 済
住 宅 建 設 とメ イ ンテ ナ ン ス 電 器 設 備,塗 装,等
耐 久 消 費 財 の修 理
ドレ ス ・メー キ ン グ その 他 工 業 労 働 商 業 とサ ー ビ ス
専 門職 業
そ の 他 の ノ ン ・マ ニ ュ ア ル労 働 ビ ジ ネ ス協 力事 業
自営 職 人,副 業 と して の 商 売 職 人 と主 業 と して の 商 売
自営 農 民
1 8 1 0 5 6 5 2 1 9 1 9 7 2 2
2 4 3 8 0 2 4 3 2 4 3 1 1 4 1 9 白 ‑ ← 4 つ ﹂ り 0 ■1 9 3 3 9 5 4 0 7 8 5 4 7 5 9 4
0 8 1 1 7 3 3 9 2 3 4 0 0 1 0 1 ■ ﹂ 些 ー エ 9 白
出典:Andorka,1991.
自分 で私 的 に フ ァ ミ リー ・ハ ウ ス を建 て よ う とす る人 は建 設作 業 の大 部 分 を, 家 族 員,親 類,同 僚,友 人 の参 加 に よ っ て行 う。 この 私 的 住 宅 建 設 の枠 組 と
な っ て い るの は ほ とん ど原 始 的 と もい え る特 殊 な 「互 酬 性 」 の 原 理 で あ る。
助 力 は賃 金 の 支 払 い な しに行 わ れ るが,必 要 な場 合 に は互 酬 され る とい う確 か な期 待 で行 わ れ る。 つ ま り,親 類,同 僚,友 人(あ い は そ の 子 供)の 住 宅 建 設 に参 加 した 人 は,次 に 自分 あ る い は子 供 の 新 居 を建 て る時 に は 同様 な助 力 が期 待 で き るの で あ る。 耐 久 消 費財 の修 理,ド レ ス メー キ ン グ,他 の 同様 な産 業 的 労 働 活 動 は,ハ ン ガ リー一社 会 で は,do‑it‑yourself活 動 が 普 及 して い る こ とを示 して い る。 職 場 で の超 過 労 働 や 副 業 も広 く行 わ れ てお り,第 一 セ ク ター 内 で の労 働 時 間 の延 長 は か な りの程 度 に な って い る。 しか し企 業 内 請 負 集 団 は1988年 に はす で に 衰 退 しつ つ あ る。 私 的 経 済 に最 も近 い形 態 で あ る,ビ ジネ ス協 力事 業 や 副 業 と して の 自営 活 動 は頻 繁 で は な く,現 実 の 私 的 セ ク ター は ま だ小 さ い とア ン ドル カ は述 べ て い る。
移行期におけ るハ ンガ リーの第二経済29
次 に,生 活 時 間 調 査 に よ って60年 代 以 降 の 第二 経 済 へ の参 加 の傾 向 を確 認 し よ う。 残 念 な が ら生 活 時 間 調 査 で 区別 され て い る第 二 経 済 活 動 は 詳 細 で は な い が,主 要 な活 動 は大 抵 記 録 され て お り,ま た これ らの 活 動 に毎 日費 や す 平 均 時 間 が 参 加 の 強 さ を示 して い る。1963年,1976/77年,1986/87年 の 全 国 調査 を比較 す る こ とに よ っ て,第 二 経 済へ の 参 加 の 強 度 の変 化 が 明 瞭 に示 さ れ て い る。 最 も顕 著 な こ とは,農 業 部 門 の就 業 者 は 減 少 して い る とい う事 実
(1960年 の38.5%か ら1984年 に は21.4%)に も係 わ らず,農 業 の 第 二 経 済 に 費 や す 時 間 は 男性 で は増 加 し,女 性 で は変 化 して い な い こ とで あ る(表4参 照)。 つ ま り,農 業 以 外 の 他 の経 済 部 門 に お け る就 業 者 の なか で小 規模 農 業 生 産 へ の参 加 が増 加 して い る こ とに な る。 住 宅 建 設 と修 理 活動 も1960年 代 以 降 強 ま って い る。 表 に は示 して い な いが,70年 代 の 後 半 か ら80年 代 の 後 半 に か け て,非 農 業 部 門 での マ ニ ュ ア ル 活動 で 費や され る時 間 は 非 常 に顕 著 に増 加 して お り(男 性 で3分 か ら14分 に,女 性 で1分 か ら7分 に),1978年 以 降 に導 入 され た農 業 以 外 の 第 二 経 済 の刺 激 政 策 が こ う した活 動 へ の 人 口の 参 加 に影 響 して い る こ と を示 して い る。
こ う した 変 化 の結 果,全 体 として の 労 働 時 間 は か な り延 長 され て きて い る と も考 え られ るが,ア ン ドル カ は 「第 二 経 済 で費 や され る時 間 の 増 大 は,第 一 経 済 と家 事 雑 用(女 性 で は)で の 時 間 の短 縮 でバ ラ ン ス が 取 られ て お り, ハ ンガ リー 社 会 の成 人 メンバ ー が 過 重 負 担 に な るの を防 い で い る」 と指 摘 し
て い る。 だ が,一 般 に は,moonlighterに 示 され る よ うな 長 時 間 労 働 の 問 題 点 を指 摘 す る意 見 も多 い。
表4所 得 補 足 活 動 に割 い て い る時 間(1963年,1976/77年) 1日 の 活 動 時 間(分)
男 性 女 性
1963年 1976/77年 1963年 1976/77年
農 業 第二経済
副 業
建 設 ・修 理 計
30 6 18 54
46 4 38 88
42
‑
6 48
42 2 11 55
*18〜60歳 を 対 象 に し た 国 民 生 活 時 間 調 査
出 典:Andorka,1991.
表5世 帯 収 入 の 源 泉 別 比 率(1962〜1987)
所得源 泉
196219671972197719821987
雇 用 〔賃金 〕金銭 的社会保 障
私 的 ・第二経 済(農 業)
雛獄}
計
70.4ss.4s7.o
?.511.013.9 16.918.914.4
1.42.0 5.11.21.4
1.11.3 100.0100.0100.0
61.960.955.0 20.323.323.6 13,310.310.5
1.52.77.0 1.91.92.9 1.10.91.0 100.0100.0100.0
出 典:Andorka,1991.
次 に ア ン ドル カ は世 帯 収 入 調 査 を使 っ て,世 帯 の収 入 の 中 で の 第 二 経 済 活 動 の 比 率 に 関 す る デ ー タ を提 供 して い る(表5)。 これ に よ っ て 賃 金 や 第 一 経 済 か ら生 ず る所 得 比 率 が低 下 す る傾 向 に あ るの に 対 して,家 族 手 当 て,年 金 な どの社 会 保 障 費 の 増 大 傾 向 と,所 得 源 泉 と して 第 二 経 済 の 重 要 性 が 増 加
して い る こ とが 読 み 取 れ る。 特 に,農 業 以 外 の私 的 経 済 ・第 二 経 済 の所 得 は 1977年 と87年 の 間 で1.5%か ら7.0%に 劇 的 に 増 大 して い る。 私 的 農 業 と第 二 経 済 農 業 の 比 率 は低 下 は,前 述 の生 活 時 間調 査 の結 果 と くい違 って い る よ う で あ るが,大 部 分,投 入 金 額(飼 料,等)の 上 昇 に よ る もの で あ る とア ン ド ル カ は理 解 して い る。
で は,こ う した 第 二 経 済 の 活 動 は ハ ン ガ リー 社 会 に どの よ うな影 響 を与 え て い るの だ ろ うか 。 第 二 経 済 へ の参 加 は社 会 階 層 に よ っ て大 き く分 化 して お
り,以 下 の3つ の傾 向が 確 認 で き る。
1.少 な くと も投 入 労 働 時 間 に 関 す る 限 り,都 市 人 口 よ り農 村 人 口の 方 が 参 加 の 程 度 は 強 い が,そ の理 由 は農 村世 帯 の ほぼ 全 部 が 家 族 地 所 か 補 足 地 所 を所 有 して い る の に対 して,都 市 地 域 で は,そ う した地 所 を所 有 して い るの は都 市 の外 周部 に住 ん で い る人 々 に 限 定 され て い るか らで あ る。
2.1980年 頃 まで支 配 的 で あ っ た農 業 第 二 経 済 へ の参 加 は,裕 福 な世 帯 よ り貧 窮 な世 帯 の 方 に 強 く見 られ た。
3.こ の10年 間 に現 れ て きた,よ り利 益 の 高 い形 態 へ の参 加 は,階 層 的 に は,社 会 的 ヒエ ラル キー の最 上 層 で よ り頻 繁 に 見 られ る。
しか しア ン ドル カ論 文 で使 用 され た3つ の デ ー タは,幾 分 違 っ た傾 向 を示
移行期 におけ るハ ンガ り一 の第二 経済31 表6社 会 階 層 別 所 得 補 足 活 動 へ の 不 参 加 比 率
(1988年)
(単 位:%)
社会階層 男性 女性
上 層 管 理 職 下 層 管 理 職
専 門 職
事 務 職
熟 練 労 働 者 半 熟 練 労 働 者 未 熟 練 労 働 者 自営職 人 ・農民 年 金 生 活 者 被 扶 養 者
22.4 16.4 15.9 17.4 1s.7 20.5 28.6 0.0 33.2 25.0
31.?
25.0 17.0 28.2 18.0 29.6 34.4 0.0 43.0 35.4
*対 象 者 は18歳 以 上 出 典:Andorka,1991.
して い る。 社 会 階 層 別 の参 加 者 ・非 参 加 者 の 割 合(表6)は,社 会 的 ヒエ ラ ル キー を下 るに つ れ て,非 参 加 者 が 増 大 す る こ とを示 して い るが,そ れ に は 例 外 が あ っ て,上 層 経 営 者 で は相 対 的 に参 加 頻 度 は低 くな っ て い る。 これ は 最 高 の所 得 を得 て い るか ら,第 二 経 済 か ら補 足 的 所 得 を得 る必 要 性 が小 さい か らで あ ろ う。 第 二 経 済へ の参 加 比率 の最 も低 い 階 層 は,ほ ぼ伝 統 的 な労働 階 級 に属 して い る,都 市 の 半 熟練 ・未 熟 練 労働 者 で あ る。 だ が 生 活 時 間 調査 は反 対 の傾 向 を示 して い る。 す な わ ち,こ こ で は下 層 階 層 の 第 二 経 済 で の労 働 時 間 は 平均 的 に 長 くな っ て い る。 お そ ら くそれ は,農 村 に住 む 半 熟練 ・未 熟 練 労 働 者 が 自分 た ちの 家 族 地 所 や 補 足 地 所 で の農 業 第 二 経 済 労働 に 非 常 に 長 い 時 間 を費 や して るか らだ と思 わ れ る。 一 般 に,自 家 菜 園 な どで の 第 二 経 済 は,コ ス ト意 識 を もた な い,長 時 間 の 労 働 に な る傾 向 が あ る。筆 者 自身 の 調査 で も,農 村 地 域 に あ る工 場 の社 長 か ら,労 働 者 が いか に割 の合 わ な い農 作 業 を して い るか につ い て,聞 き と りを して い る。
表7の 収 入 デー タ は以 下 の こ とを示 して い る。(1農 業 経 済 か ら発 生 した所 得 は,所 得 区分 の 高低 に係 わ らず ほ ぼ 同様 な 比率 で あ る こ と,(2)他 の 第二 経 済 活 動 か ら発 生 した所 得 は大 き く異 な っ て お り,高 い所 得 区分 で は この所 得
表7所 得 階 級 別 所 得 源 泉(私 的 ・第 二 経 済)比 率(1977年,1987年) 一 人 当 た り 私 的 ・第 二 経 済 他 の 私 的 ・ そ の他 の
世 帯 所 得*(農 業)第 二 経 済 労 働 活 動 〔 計 〕
〔1977年 〕
‑1200 1201‑1600 1601‑1800 1801‑2000 2001‑2200 2201‑2400 2401‑2600 2601‑2800 2801‑3200 3201一
10.8 12.1 12.7 12.7 12.4 13.2 13.7 12.7 12.7 14.9
8 7 0 2 7 1 2 6 7 1 0 0 1 1 1 1 1 1 1 2 0 8 8 5 4 6 6 8 7 4 3 1 1 1 1 1 1 1 1 2
14.6 14.6 15.5 15.4 15.8 15.9 16.5 16.1 16.1 19.4
〔1987年 〕
‑2600 2601‑3400 3401‑4200 4201‑5000 5001‑5800 5801‑6600 6601‑?400 7401‑8200 8201‑10000 10001一
8.7 9.8 10.7 11.9 11.3 11.1 112
9.4 io.0 8.1
0.5 0.7 1.2 1.3 2.5 4.6 6.2 10.2 14.9 27.3
3 2 6 7 4 3 9 2 2 6 1 1 1 1 2 2 2 3 4 7
10.5 11.7 13.5 14.9 16.2 18.3 20.3 22.5 29.1 43.0
*単 位 は フ ォ リ ン ト 。 出 典:Andorka,1991.
源 泉 の 割 合 が 大 き くな って い る こ と,(3)全 体 と して,第 二 経 済 か ら発 生 した 所 得 は,1977年 よ り87年 の 方 が 所 得 水 準 の 差 異 をは るか に大 き く して い る こ
と,つ ま り第 二 経 済 か ら発 生 した所 得 が所 得 の不 平 等 性 を拡 大 す る の に,貢 献 して い るの で あ る。 しか し なが ら,第 二 経 済 へ の 参 加 を通 じて の補 足 的所 得 の 可 能 性 は,1960年 代1970年 代 に お い て は,社 会 の最 貧 層 の生 活水 準 の 改
移行期 におけるハ ンガ リーの第二経済33
善 に と って 重 要 な要 因 で あ り,1978年 以 降 は 下 層 階 層 の よ り深 刻 な 困窮 化 を 防 止 した こ と も強 調 され な け れ ば な らな い。
以 上 の調 査 結 果 か らア ン ドル カ が 結 論 と して導 き 出 した こ とは 以 下 の3点 で あ る。(1)第 二 経 済 へ の参 加 は,ふ つ う考 え られ て い る以 上 に 広 く普 及 して い る こ と,(2に の30年 間 で 第 二 経 済へ の 参 加 の 強 さ も増加 して い る こ と,(3) 第 二 経 済 は初 期 に は所 得 の不 平 等 を無 く し,少 な く と も人 口の最 貧 層 の 生 活 水 準 を改善 す る傾 向 が み られ たが,1980年 代 に は不 平 等 を拡 大 す る方 向 で作
用 を強 め て い る こ と。
次 に バ ラー ジ ュ とラ キ の論 文 に よ って,家 計 の収 入 ・支 出 なか で の 第 二 経 済 の 比 率 をみ て み よ う(10)。彼 らの 調 査 方 法 は1014の サ ンプ ル に よ る質 問 紙 法 の調 査 で あ る。 しか しサ ンプ ル は 必 ず し も母 集 団 を代 表 した もの に は な っ て い な い。 なぜ な ら,私 的 経 済 活 動 に よ る非 合 法 の 所 得 は,調 査 時 点 の1989 年 社 会 主 義 最 後 の 時代 に お い て も,や は り秘 密 に すべ き事 項 で あ り, 一 般 的 な標 本 調 査 で は信 頼 で き るデ ー タが得 られ に くい と考 え だ か らで あ る。
した が って 彼 らは,対 象 者 の属 性 に留 意 しなが ら も,調 査 員 と相 互 に既 知 で あ る人 間 を対 象 者 と して抽 出 して 調査 して い る。
主 な調 査 結 果 で あ る第 二 経 済 へ の非 参 加 率 と家 計 に お け る所 得 比率 は 表8 に 示 した とお りで あ る。 社 会 主 義 セ ク ター 以 外 か らの所 得 が な い世 帯 の割 合, つ ま り,第 二 経 済へ の非 参 加 率 は全 体 で44.2%で あ る。 ま た非 参 加 率 に お け る階 層 的 な差 は あ ま り大 き く,各 階 層 と も40〜60%の 中 に収 ま って い る。 居 住 地 域 別 に は,ブ ダペ ス トよ り も郡 部 の方 が 非 参 加 率 が 高 くな って お り,彼
らは農 村 地 域 で の私 的生 産 の か な りの部 分 が 自家 消 費 に終 わ っ て い て,商 品 と して市 場 まで 来 て い な いか らで は な い か とみ て い る。 この 調査 で は家 計 で の(現 金)所 得 を対 象 に して い るの で,自 給 自足 分 は どん な に大 き くて も, この 場 合 の私 的 所 得 に は該 当 しな い。 第 二 経 済(私 的 経 済)を 量 的 に把 握 す る こ との難iしさが こ こ に も現 れ て い る。
家 計 収 入 に お け る私 的 所 得 の 比 率 は平 均 で10.2%で あ るが,ブ ダペ ス ト居 住 者 で は17.4%に 達 して い る。 回 答 者 の学 歴 別 で は あ ま り大 きな差 異 は み ら
れ な いが,傾 向 と して は 高 学 歴 の 方 が私 的 所 得 の 比 率 が 高 くな って い る。 表 8で は世 帯 主 の 職 業 別 に私 的所 得 比 率 を示 して い る。 「自営 の知 識 人 」(49.2
%)や 「そ の他 の 自営 」(71.4%)な どで の 比 率 が 高 い の に対 して,「 職 長 」
表8私 的所得 の非 参加 率 と家計収 入 に おけ る私 的所 得比率(世 帯 主の地位 別)
地 位 私的所得へ の非 参加 率*私 的所得 比率(%)
上 級経営 者 中間経営 者 下 級経営 者
従 属 的地位 の専 門職 従属 的地位 の知識 人
自営 の知 識 人 運 転指令 員,職 長 熟練 労働 者
半 熟練労働 者
自営農業労働 者 お よび家族従 業貝 自営非農 業労働者 お よび家族 従業 貝 その他 の 自営
計
42.1 44.0 51.9 40.2 41.5
51.5 43.3 44.5 59.6 C?) C?) 44.2
5 8 5 1 9 2 6 3 5 9 9 4 2
3 9 7 9 9 9 4 1 2 5 2 1 0 1 1 4 1 ⊥ ‑ ← ー エ 7 蟹 ‑ ←
*「 社 会 主 義 セ ク タ ー 以 外 で 所 得 を え て い な い 」と 回 答 し た 者 の 比 率 出 典:BalazsandLaki,1991に よ り合 成 。
で は4.5%と 低 い な ど,職 業 に よ っ て か な り大 きな差 が あ り,非 参 加 率 とは 対 照 的 で あ る。 全 体 的 に は職 業 的 に 高 地 位 に就 い て い る人 の 方 が,私 的 所 得 比率 が 大 きい こ とを示 して お り,表7に 示 した ア ン ドル カの 調 査 結 果 と も共 通 して い る。
4.企 業 内 労 使 関 係 と第 二 経 済
1982年1月1日,新 経 済 組 織 を認 可 す る 政 府 規 定 が 公 表 さ れ た 。 こ の82年 改 革 は,68年 改 革 で 農 業 部 門 に 導 入 さ れ た 小 規 模 私 的 経 営 を産 業 部 門 に も適 応 し よ う と した も の,と 評 価 さ れ て い る 。 新 た に 認 可 さ れ た 経 営 形 態 に は, (1)小 企 業,(2)子 会 社,(3)企 業 内 請 負 集 団(VallalatiGazdasagiMunka‑
kozosseg,以 下VGMKと 略 記 す る),(4)小 協 同 組 合,(5)工 業 ・サ ー ビ ス 協 同 組 合 専 門 グ ル ー プ,⑥ 農 業 協 同 組 合 専 門 グ ル ー プ,(7)請 負 制 事 業 部,(8)契 約 制 事 業 部,(9)リ ー ス 部,(10)労 働 経 済 集 団(GMKと 略 記)な ど が あ る 。 も
ち ろ ん,こ れ ら全 て が 第 二 経 済 に 属 す る わ け で は な く,(1)②(4)な ど は 社 会 主
義 セ ク ター に 属 し て い る。 そ の 他 の 形 態 も⑲ が 純 粋 な私 的 セ ク タ ー で あ る と
移行期におけるハ ンガ リーの第二経済35
見倣 され る以 外 は,「 私 的 な発 意 を含 む が 一 応社 会 主 義 セ ク ター に 結 び つ い て お り,一 種 の 混合 所 有 的 性 格 を有 して い る」 とい え る(11)。
ケ メー ニ ュ は 「擬 似 私 的 」 とい う用 語 を こ の部 門 を表 す た め につ か っ て い るが(12),そ れ は こ れ らの 新 組 織 に属 す る構 成 員 の圧 倒 的 大 多 数 が 国 家 との 雇 用 を継 続 し,新 組 織,の所 属 活 動 は彼 らの 自由時 間や,パ ー トタ イム 活 動 と
して の み 行 っ て い るか らで あ る。85年 末 に は,6Q,452人 のGMKの 構 成 員 の う ち,以 前 の 雇 用 か らこ の新 しい私 的部 門 に移 っ た者 は僅 か18,975人 だ け で あ った とい う。 ハ ンガ リー の経 済 政 策 が しば しば 急 な方 向転 回 を して きた こ とは 市 民 た ち に よ く知 られ て お り,完 全 な経 済 的 自立 は,物 質 的 な保 障 を 失 い か ね な い個 人 的 リス ク を含 む か な りの 冒 険 な の で あ る。 こ う し た不 安 が あ るか ぎ り,か な り多 くの 人々 が 自営 や 独 立 に な る こ と を選 択 す る とは考 え られ な い と,ケ メー ニ ュ は述 べ て い る。 ま た彼 は これ らの新 組 織 が 事 実 上, 資 本 を もっ て い な い こ と,ま た 資本 獲 得 の 可 能 性 が小 さ い こ と も限 界 と して 捉 えて い る。 市 場 に お け る成 功 も組 織 自身 の 成 長 に結 びつ か な い よ うな状 況 の な か で は,こ う した新 組 織 が 「正 規 の 雇用 の 固 い地.lm.の上 に 立 ち なが ら,
よ り多 くを稼 ぐた め の厳 しい追 加 労 働 で しか な い」 の もや む を え な い とい え よ う。 それ は個 人 の もつ 心 性 の 問題 で もあ るが,そ れ 以 上 に 「環 境 と規 制 の 結 果 」 なの で あ る。 こ こ で は,そ れ らの 中 で も最 も広 範 に普 及 し,ま た性 格 と して も最 も第 二 経 済 的 だ と考 え られ るVGMKに つ い て 検 討 す る。 ち な み に1985年 の 末 に は,VGMKの 数 は20,265グ ル ー プ で,メ ン バ ー 数 は20万 578人 で あ っ た。
以 下,テ ル ノ ヴ ス キ が 報 告 して い る,ブ ダペ ス トに あ る精 密 エ ン ジニ ア リ ン グ工 場 で のVGMKの 活 動 状 況 につ い て 紹 介 しよ う(13)。
まず,VGMKの0般 的 な概 況 につ い て 述 べ るが,法 的 に はVGMKは 企 業 か ら独 立 の組 織 で あ り,正 規 の労 働 時 間外 に,被 雇 用 者 と雇 用 者 との,ま
た他 の企 業 との 契約 に基 づ い て運 営 さ れ て い る。 しか し設 立 に は 自分 た ち の 企 業 の許 可 が 必要 で あ る。 実 際 に はVGMKの 大 多数 は 自分 の企 業 と契 約 し
て お り,正 規 の 労働 時 間 内 で の労 働 と同一 の仕 事 か,あ るい は 同 じよ うな仕 事 を遂 行 して い る。 こ う した 点 を と ら え て,「 実 際 に は,VGMKの 大 多 数 は た ん な る残 業 ブ リガー ダ で あ り,本 当 の事 業 とは い え な い」 とい う評 価 が な され た りもす る(14)。
VGMKが 形 成 され 普 及 した 要 因 の ひ とつ は,こ の 組 織 へ 支 払 わ れ る賃 金 が,中 央 で厳 格 に 管理 さ れ た賃 金 フ ァ ン ドに 請 求 され る の で は な く,企 業 に よ る独 自の予 算 に請 求 さ れ る こ とで あ る。 これ に よ って,硬 直 的 な賃 金 シス テ ム の 規 制 を免 れ る こ とが で き,企 業 業 績 と労 働 者 の個 人 所 得 の 双 方 を増 大 させ る こ とが 可 能 に な っ た。
企 業 はVGMKと 契約 す るが,そ の 時 の仕 事 の 値 段 は 実 際 の 交 渉 に よ っ て 決 定 され る。VGMKの メ ンバ0は 税 を支 払 う し,道 具 の 使 用 に 関 して も料 金 を支 払 う。VGMK内 で の収 入 の 分 配 は ま っ た く 自分 た ち の 仕 方 で行 え る。
労働 者 の 大 多数 は与 え られ た仕 事 につ い て一 時 間 あ た り手 取 りで い く ら欲 し いか を基礎 に して 交 渉 を開 始 す る。VGMKで 行 わ れ る仕 事 の 項 目毎 の 時 給 は,正 規 の労 働 時 間 よ りも2〜3倍 高 い 。 正 規 の 労 働 時 間 とVGMKと で は, 多 くの場 合 仕 事 自体 は 同 一 だ が,生 産 の 集 中性 〔強 度 〕 と潜 在 的稼 ぎで は 大 きな差 異 が あ る。 正 規 の 労 働 時 間 とVGMKの 労 働 時 間 との 区 別 につ い て の 国 の規 制 は 明確 で あ り,重 複 は 許 され な い。 従 っ て次 の よ うな事 態 に な る。
労 働 者 は朝6時 か ら午 後2時 ま で 自給25フ ォ リン ド,50〜60%の 強 度 で動 き, 午 後2時 か ら午 後6時 ま で 同 じ場 所 で,同 じ仕 事 を強度90%で 行 い,自 給70
フ ォ リン トを稼 ぐ。 だ がVGMKの 枠 内 で稼 い だ賃 金 に は,年 金 フ ァ ン ドに は算 入 さ れ な い こ とな ど,い くつ か の不 利 も あ る。
テ ル ノ ヴ ス キ の 調 査 は経 営 的 に は成 功 して い るあ る工 場 で な さ れ た(15)。
そ こ で は高 度 な技 術 装 置 が 生 産 され,市 場 の 需要 は生 産 能 力 を超 過 して い る。
工 場 は ブ ダペ ス トに位 置 して お り,そ こ で の労 働 市 場 は 労働 力 へ の 超 過 需要 が 特 徴 で あ り,特 に質 の い い 熟練 労 働 者 は不 足 して い る。
工 場 は製 品 の70%を 資 本 主 義 国 に輸 出 して い るが,技 術 開 発 の ため の 資 金 は僅 か しか な く,生 産 性 の 向上 に は組 織 と労 働 生 産 性 の 向上 が 不 可 欠 で あ っ た。VGMK導 入 以 前 の 工 場 の実 績 は,彼 ら 自身 の ノル マ に対 して120%で あ っ た と報 告 され て い たが,実 際 に は 実 績 は50〜60%を 超 え る もの で は なか っ た。 出来 高賃 で働 い て い る労 働 者 の 平均 時給 は,30フ ォ リン トで あ り,1 カ 月 の賃 金 は 平 均5,000フ ォ リン トで あ っ た 。 工 場 の 経 営 者 に とっ て は,生 産 の パ フ ォー マ ン ス を制 限す る留 保一 一労 働 者 の働 き惜 しみ が 存 在 す る
こ とは明 らか だ っ た。 しか し,彼 らに は そ の 量 を正 確 に 計 る こ とは で きなか っ た し,こ う した 留保 を無 くす こ と も賃 金 規 制 のせ い で で きな か っ た。 こ う
移行期におけ るハ ンガ リー一の第二経済37
した状 況 に あ っ て,VGMKの 設 立 は 問題 の 良 い解 決 に な る と思 わ れ て い た 。 調 査 はVGMK導 入 以 前 と導 入2年 後 の2回 行 われ たが,調 査 対 象 は 工 場 全 体 を カバ ー す る の で は な く,切 断,部 品 組 み付 け 〔fitting〕,組立 の 重 要 な3部 門 の み で あ っ た。 工 場 全 体 で は300人 の ブ ル ー カ ラー が い た が,調 査 対 象 に な っ た 労働 者 数 は130人 で あ る。
VGMKの 設 立 に は賛 成 ・反 対 の 意 見 が あ っ た が,経 営 者 は 賃 金 規 制 か ら 逃 れ る絶 好 の機 会 で あ る こ とか ら設 立 を承 認 し た。 労 働 者 もVGMKの 設 立
に よ っ て賃 金 が か な り増 加 す る こ と を理 解 して い た。 しか し交 渉 過 程 で有 利 な 立場 に たつ ため に,経 営 者 も労 働 者 も相 手 か ら の提 案 を待 っ て い た。 ボ ト ル ネ ッ クの部 門 で働 い て る熟練 労 働 者 た ち は,工 場 経 営 陣 に圧 力 をか け るた め に,正 規 の労 働 時 間 の パ フ ォー マ ンス を極 端 に低 下 させ る こ と も した。 結 局,工 場 経 営 陣 が職 場 に 来 て,労 働 者 た ち にVGMKを 設 立 す る よ うに 説 得 し,労 働 者 た ち は こ の 説得 を受 け 入 れ た 。 こ う して労 働 者 の 交 渉 上 の 立 場 は, 生 産 条 件 の 観 点 か ら も,期 待 され る賃 金 の観 点 か ら も,か な り有 利 な もの に な っ た。 しか し,他 の職 場 で は,労 働 者 が イ ニ シ ア チ ブ を取 っ た が,経 営 側 はVGMKの 設 立 を許 可 しなか っ た こ と もあ っ た。 経 営 側 はVGMKの 設 立 条 件 の 基 準 を公 表 しな か っ たが,ど の集 団 に新 しい機 会 を与 え るか の 決 定 は, 彼 らの 重 要 な 戦 略 で あ っ た。 実 際 にVGMKは 工 場 で キー ・ポ ジ シ ョン に あ っ た職 場 と労 働 者 に対 して の み 設 立 が 許 可 され た。
キー ・ホ ジ シ ョン の労 働 者 は,そ の上 手 な戦 略 に よ って,工 場 側 に正 規 の 労 働 時 間 とVGMKの 時 間 の 区分 に つ い て管 理 統 制 を止 め る こ と,す な わ ち VGMKの 活 動 を正 規 の 労 働 時 間 に行 うこ とを認 め させ た。 つ ま り実 績
ノル マ 時 間 の達 成 だ け を問題 に し,労 働 時 間 は管 理 しな い とい う こ とで あ る。 交 渉 の 結 果,従 来 の 実 績 に10%を 上 乗 せ して,130%がVGMK活 動 の ス ター トとな る実 績 率 に な っ た。131%目 がVGMKの 実 績 の 最 初 の パ ー セ ン トに な る。 しか し,そ れ で も あ る職 場 で は130%の 業 績 は 午 前11時 頃 に は達 成 され て し まい,そ れ 以 降 の仕 事 はVGMKの 賃 金 に 基 づ い て行 わ れ て い る。130%に 対 応 す る仕 事 量 は,50〜60%の 労働 強 度(ペ ー ス)で 行 えば, 達 成 す る の に8時 間 か か るが,90%の 労 働 強 度(ペ ー ス)な ら5時 間 以 内 で 達 成 す る こ とが で きた か らで あ る。
VGMKの 集 団 内 部 の 組 織 に 言 及 す る と,調 査 さ れ た 職 場 で は 個 別 の
VGMKが 形 成 され,そ の職 場 の全 労働 者 が メンバ ー に な っ て い た 。VGMK は正 規 の 労働 時 間 と同 じ作 業 組 織 形 態 で運 営 され,シ ョ ップ ・マ ネー ジ ャー が 同 時 にVGMKの 職 長 と して,仕 事 を組 織 ・監 督 し,VGMKか ら 「代 表 手 当 て」 を得 て い た。VGMK内 で の 各 労 働 者 の 賃 金 は,仕 事 の 特 殊 性 と集 団 内 で の 交 渉 立 場 に よ っ て 異 な るが,時 間 当 た り75〜110フ ォ リン トの 幅 に あ っ た。VGMK活 動 に よ っ て 得 られ た 収 入 か ら,VGMKは 様 々 な 料 金 と 税 を支 払 い,メ ンバ ー は所 得 分 配 後 に個 人 所 得税 を支 払 っ て い る。 純 所 得 は VGMKの 契 約 収 入 の約60%で あ った 。
正 規 の労 働 とVGMKの 労 働 との 組 み 合 わせ は,管 理 上 の 困 難 を生 じ,厳 密 な記 録 を必要 と した。 実 際 に は各 人 が 自分 の 実 績 を記録 し,同 時 に代 表 で
あ る職 長 が 誰 が,何 を,ど の くらい,い つ,生 産 した か を記 録 した。 この 記 録 が労 働 者 間 で の 所 得 の 分 配 の 基礎 に な っ た。
表9は1985年11月 か ら86年9月 まで の期 間 の 平 均 を とっ た,所 得 とパ フ ォ ー マ ン ス を示 して い る。 表 か ら分 か る よ うに,労 働 者 の 大 多数 は所 得 を2倍 に し,な か に は3倍 に して い る職 場 もあ る。1日 の平 均 労働 時 間 は9時 間 で
あ り,VGMK導 入 以 前 よ り僅 か1時 間 増 え た だ け で あ る。 パ フ ォー マ ン ス . 率 は90〜120%の 値 か ら少 な く と も30%は 増 加 して い るが,こ れ す ら限 界 的
なパ フ ォー マ ン ス で は な い とテル ノ ヴ ス キ は考 え て い る。 なぜ な ら企 業 経 営 者 がVGMKへ 支 払 い う る資 金 に も限 界 が あ るの で,労 働 者 は そ れ に合 わせ て パ フ ォー マ ン ス を よ り小 さい もの に 限 定 して い る とい うの で あ る。 この 幅 は10%か ら20%に 及 ぶ と推 計 して い る。
調 査 は またi高 所 得 に もか か わ らず労 働 者 が状 況 に 強 い不 満 を もっ て お り, 将 来 に不安 を感 じて い る とい うこ とを報 告 して い る。 労 働 者 は さ ま ざ ま な計 算 をチ ェ ッ クで きな い し,税 制 度 も理 解 して い な い。 ま た なぜ 企 業 が 賃 金 労 働 者 とVGMKメ ンバ ー とい う二 つ の 雇 用 形 態 を必 要 と して い るの か も理 解 して い な い し,な ぜ 所 得 の 全 体 をパ フ ォー マ ンス に よ っ て 変 わ る単 純 な賃 金 で稼 げ な い の か も分 か らな い で い る。 あ る労 働 者 は次 の よ うに 言 っ て い る と い う。 「我 々 が望 ん で い るの は,た だ正 直 な ノル マ で あ り,正 直 な労 働,正 直 な支 払 い で あ る。」 しか しそ れ は 複 雑 な賃 金 規 制 に よ っ て不 可 能 に な っ て い る。 労働 者 が 感 じて い るの は,ノ ル マ が い つ か 変 更 され,パ フ ォー マ ン ス の水 準 を維 持 して い て も所 得 が 急 激 に 落 ち込 む の で は な いか とい う不 安 で あ
移行期 におけ るハ ンガ リー の第二経 済39 表9VGMKの 実 績 と賃 金
賃 金VGMK
の 所 得 組 織
(Ft/一 ・ 人(Ft/一 人 /月)/月)
所 得 合 計 (Ft/一 人
/月)
実 労 働 時 間*
(一 人/月)
時 間 あ た 実 績 率**
り所 得 (Ft/一 人(%)
/時 間) プ ラ ン トA
組 イ寸け5,446 切 断5,592 組 立3,966 プ ラ ン トB
5,453
1・ ・
3,307
け断立付組切組
5,086 5,458 4,259
7,196 7,371 9,954
XO,899 11,080 7,273
12,282
×2,829 14,213
X50 150 150
167
×50
×50
72.7 73.9 48.5
73.5 85.5 94.7
158.3 158.9 12fi.7
154,3 170.5 203.3
*「 月 間 実 労 働 時 間 の デ ー タ は 労 働 者 に よ っ て 我 々 だ け に 提 供 さ れ た が,正 確 で あ る 。 こ の 極 秘 デ ー タ を い か に し て 聞 き 出 し た か に つ い て,こ こ で は 述 べ る こ と は で き な い が, 別 の 論 文 の テ ー マ に な る で あ ろ う。 実 労 働 時 間 は 総 時 間 か ら 欠 勤 と休 日 を 減 ず る こ と で 計 算 さ れ た 。 そ れ ら は 約20%を 占 め て い た 。」
正 規 の 労 働 時 間 内 に 達 成 さ れ た ノ ル マ 時 間 ×VGMKの 達 成 し た ノ ル マ 時 間**実 績 率e 月 間 実 労 働 時 間
出 典:Thernovszky,1989.
る。 長 年 に わ た る 闘争 で 生 み 出 した武 器 を失 い,無 力 で依 存 的 に な って し ま う こ と を恐 れ て い る と述 べ られ て い る。
しか し労 働 者 に は,こ う した不 安 を解 消 す る ため に職 場 を越 え て 団結 ・連 帯 し よ う とい う志 向性 はみ られ な い とテ ル ノヴ ス キ は 報 告 して い る。 実 際 に 職 場 間,VGMK間 で賃 金 や 労 働 条 件 に差 が み られ るが,労 働 者 は相 互 の 情 報 交 換 さ え も しな い の で,こ う した不 均 等 が 存 続 す る とい う。 む し ろ,あ る 労 働 者 に とってVGMKと は こ れ まで行 っ て きた非 公 然,非 公 式 の 個 別 賃 金 交 渉 を,合 法 化 す る もの と して理 解 され て い るの か も しれ な い 。M.ビ ュ ラ
オ イが 「ハ ンガ リー の 第 二 経 済 は労 働 者 階 級 を ア トム 化 した」(16)とい うの も,こ う した文 脈 で は よ く理 解 で き る。
経 営 の側 に とっ てVGMKは,企 業 本 部 か らの生 産 拡 大 の 要 求 に 応 え,労 働 者 の パ フ ォー マ ンス/賃 金 比率 を極 大 化 し よ う とい う要 求 に も応 え る格 好
の手 段 で あ った 。 生 産 高 も増 大 しi所 得 も増 え た。 しか し,一 方 で 多 くの 問
題 を抱 え て い る こ と も事 実 で る。 まず,こ れ らの 労 働 集 団 が 今 の 所 得 水 準 に 慣 れ て し まい,所 得 の 増加 や 労 働 条 件 の 改 善 が な い と,新 しい要 件(質 や 量 の 面 で)受 け 入 れ な くな っ て し ま うの は 問 題 で あ る。 さ らに工 場 内 で の所 得 の分 配 が 歪 め られ て し ま い,ブ ル ー カ ラー 間や ホ ワ イ トカ ラー 間 で 多 くの 葛 藤 が 生 み 出 され る問 題 で あ る。 労 働 市 場 で 良 い 交 渉 立 場 に あ る特 権 的 な労 働 者 が,技 術 エ ン ジニ ア の2〜3倍 も稼 い で い る よ うな現 在 の所 得 分 配 は,い か に彼 らの パ フ ォー マ ンス が 大 きい と して も,長 期 的 に は維 持 不 可 能 な シス テ ム で あ る。 また 量 が優 先 され,品 質 が 低 下 し た こ とや,安 全 規 制 が 無 視 さ れ安 全 性 も低 下 す る こ とは,結 果 と して工 場 に とって も問題 とな る。
テ ル ノヴ ス、キ は結 論 と してVGMKが 不 安 定 な シ ス テ ム で あ る こ と を強 調 して い る。 「現 在 の 成 功 して い るバ ラ ン ス は 調 和 的 で は な い し,満 足 し う る もの で もな い。 ス トレ ス が あ り,コ ン フ リ ク トで0杯 で あ り,経 営 者 に も労 働 者 に も,高 賃 金 に もか か わ らず,不 満 と疑 惑 を もた ら して い る。」
5.お わ り に
これ まで社 会 主 義 体 制 下 で の 第 二 経 済 の 現 実 につ い て み て き たが,89年 以 降 進 行 して い る脱 社 会 主 義 化,市 場 経 済 化 の移 行 期 に お い て,第 二 経 済 の 活 動 は どの よ うに変 化 して きて い る の で あ ろ うか 。 こ こで は,ヤ ー ノ シュ ・ケ レー の 「ハ ン ガ リー 企 業 に お け る現 場 交 渉 の変 容 」 とい う論 文 の なか か ら, 第 二 経 済 の変 化 につ い て 言 及 して お き た い(17)。
ケ レー 論 文 は そ の名 の とお り,ハ ンガ リー 労 働 者 が もっ て い た 労働 パ フ ォ ー マ ン ス につ いて の個 人 的 な 交 渉 力 が,そ の背 景 の 変 化 と と もに 失 わ れ て き た こ とを論 じて い る。 彼 が 交 渉 力 の 源 泉 と して 言 及 して い る の は,慢 性 的 な 労働 不 足状 態 に あ っ た労 働 市 場,広 範 な参 加 が み られ た 第 二 経 済,投 入財 不 足 の 労 働 生産 過 程,の3つ で あ る。 この うち,労 働 市 場 と第 二 経 済 の状 況 は 根 本 的 か つ 急 激 な 変 化 を引 き起 こ して い る と見 て い る。 労 働 市 場 に つ い て は,
失 業 率 の 上 昇,求 人 倍 率 の低 下,失 業 保 険 の 悪 化 な どが 指 摘 さ れ て い る。 第 二 経 済 に 関 す る変 化 は 次 の とお りで あ る。
ハ ンガ リー で の 第 二 経 済 の 主要 領 域 は 自家農 園,住 宅 建 設,サ ー ビ ス の3 っ で あ っ たが,ま ず 自家 菜 園 と小 農 園 の 第 二 経 済 は 食 料 需 要 の 落 ち込 み とソ ビエ ト市 場 の 崩 壊 に よ って 打 撃 を受 け て い る(豚 と野 菜 の生 産 は 国 内市 場 の
移行期におけるハ ンガ リーの第二経済41
需 要 縮 小 に よ っ て影 響 を被 り,果 実 と ワ イ ン は ソ ビエ ト輸 出の 減 少 に よ って 大 きな影 響 を受 け た)。 農 業 生 産 高 は22.4%の 落 ち込 み とな り,食 料 価 格 も 下 降 圧 力 の下 に あ り,一 般 物 価 指 数 は136に 上 が っ た の に,食 料 価 格 指 数 は 125に しか な って い な い。 小 農 園 も農 業 共 同 組 合 や 国 営 農 場 との厳 しい競 争 に 直 面 し,そ こか らの援 助 も削 除 され て い る。91年 の 調 査 で は農 業 共 同組 合 支 配 人 の5%し か,私 的 菜 園地 所 の発 展 を優 先 す る と述 べ て い な い 。
も う一 つ の 重 要 な 第 二 経 済 領 域 で あ っ た住 宅 建 設 につ い て も,長 引 く不 景 気 と住 宅 ロー ンの 金 利 が3%か ら30%へ と急 激 に 上 昇 した こ とに よ っ て,建 設 ア ルバ イ トの 需 要 は減 少 して い る。 住 宅 建 設 自体 が80年 代 初 期 の 年 間7
〜9万 戸 か ら,91年 に は3万5千 戸 に ま で落 ち 込 ん で い るの に加 えて,移 民 労 働 者 の 大 量 流 入 に よ っ て,市 場 へ の労 働 供 給 は 増 大 し,賃 金 は低 下 して い る。84年 に は 未 熟 練 建 設 労働 者 の 日当 が500〜700フ ォ リン トだ った の に対 し て,91年 秋 の ブ ダペ ス トの モ ス ク ワ広 場(18)で は1,000フ ォ リン トだ っ た。
しか しこ の 間,工 業 製 品 価 格 は284%上 昇 して い る の で あ る。 また 住 宅 市 場 に よ り小 さ くフ レキ シブ ル な会 社 や ジ ョイ ン ト ・ベ ン チ ャー が 参 入 して き た こ とに よっ て,か つ て 存 在 した よ うな,合 法 セ クター に対 す る グ レー 市 場 の 有 利 さ は小 さ くな るか,消 滅 しつ つ あ る。 つ ま り現 在 の傾 向 と して は,住 宅 建 設 は ソ ビエ ト型 の 高賃 金,パ ー トタ イム 第 二 経 済 に代 わ っ て,西 欧 型 の未 登 録,低 賃 金,フ ル タ イ ム,部 分 的 に は移 民 労 働 力 に よ っ て行 わ れ るブ ラ ッ
ク経 済 の セ ク ター へ とな りつ つ あ る よ うに思 わ れ る。
最 後 の サ ー ビ ス部 門に お い て も,第 二 経 済 は合 法 的 私 的 セ ク ター の 拡 大 に よ って 厳 しい競 争 に晒 され,輸 入 自由化 の 影 響 と も戦 わ ね ば な らな くな って い る。 サ ー ビ ス に お け る 「買 い 手 市 場 」 の発 展 に よ っ て,(第 二 経 済 の)ア ルバ イ ター に 対 す る合 法 的 企 業 や 認 可 され た職 人 の優 位 性 は顕 著 に な っ て き て い る。 そ の 主 な理 由 は,前 者 の 方 が 探 す コス ト ・手 間 が 掛 か らな い こ と と, 消 費 者 の リス ク を低 くしたか らで あ る。
結 局 「こ う した展 開 に よ って,工 場 外 で の伝 統 的 パ ー トタ イ ム労 働 は減 少 して お り,お そ ら く市 場 経 済 へ の移 行 に よ っ て消 滅 す るで あ ろ う。 こ の こ と は 第一 経 済 で の努 力 の最 適 水 準 を上 昇 させ,個 人 の 戦 略 的 可 能 性 の 範 囲 を狭 め る こ とに な ろ う」(19)とい うの が,移 行 期 の 第 二 経 済 に 関 す る ケ レー の 結 論 で あ る。 確 か に,第 二 経 済 を取 り巻 く状 況 は種 々 の原 因 か ら厳 しい もの が