平成 25 年度 博士論文
Sulfone を用いる拡張型 One-pot シクロアルカン合成法の開発と
海洋天然物合成への応用
略 語 表
本 論 文 中 ,以 下 の用 語 および試 薬 は,下 記 のように示 した.
acac acetylacetonyl BINOL 1,1'-bi-2,2'-naphthol
Bn benzyl
BPO benzoyl peroxide CD circular dichroism Cy cyclohexyl
DABCO 1,4-diazabicyclo[2.2.2]octane dba dibenzylideneacetone
DBU 1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec -7-ene DCC dicyclohexylcarbodiimide
DDQ 2,3-dichloro-5,6-dicyano-1,4-benzoquinone DIAD diisopropyl azodicarboxylate
DIBAH diisobutylaluminum hydride DIPEA diisopropylethylamine DIPT diisopropyl tartrate
DMAP N,N-dimethyl-4-aminopyridine DME 1,2-dimethoxyethane DMF N,N-dimethylformamide DMP Dess-Martin periodinane DMPU 1,3-dimethyl-3,4,5,6-tetrahydro-2(1H)-pyrimidone DMSO dimethylsulfoxide dppp 1,3-bis(diphenylphosphino)propane HMPA hexamethylphosphoramide
m-CPBA m-chloroperbenzoic acid
MNBA 2-methyl-6-nitrobenzoic anhydride MOM methoxymethyl
MPA -methoxy--phenylacetic acid MPM p-methoxyphenylmethyl
Ms methanesulfonyl MS molecular sieves
NMO N-methylmorpholine oxide NMR nuclear magnetic resonance NOE nuclear overhauser effect NOESY NOE spectroscopy
OBO oxabicyclo[2.2.2]octyl PCC pyridinium chlorochromate
PNP bis(triphenylphosphoranylidene)ammonium PPTS pyridinium p-toluenesulfonate
TBAB tetra-n-butylammonium bromide TBAF tetra-n-butylammonium fluoride TBAI tetra-n-butylammonium iodide TBDPS t-butyldiphenylsilyl
TBHP t-butyl hydroperoxide TBS t-butyldimethylsilyl TCAI 2,2,2-trichloroacetimidate Tf trifluoromethanesulfonyl TFAA trifluoroacetic anhydride THF tetrahydrofuran
THP 2-tetrahydropyranyl
TLC thin-layer chromatography TMS trimethylsilyl
TPAP tetra-n-propylammonium perruthenate Tr triphenylmethyl
立 体 化 学 の表 記
本 論 文 中 ,立 体 化 学 は,下 記 のように示 した.
上 記 の 2 つの機 構 は重 水 素 化 標 識 された重 メタノールを用 いた反 応 機 構 解 析 により支 持 さ れている.すなわち,ヨウ化 サマリウムを用 いた脱 スルホン化 の際 は第 二 級 アルキルアニオンか らの脱 アシロキシ化 により反 応 が終 了 するため,重 水 素 (D)が導 入 された生 成 物 は得 られず,ナ トリウムアマルガムを用 いた場 合 はビニルアニオンの重 メタノールからの 重 水 素 化 を受 けるため, 重 水 素 (D)が 91%導 入 された生 成 物 が得 られる. Ramberg-Bäcklund 転 位 は,-ハロスルホンおよび塩 基 を用 いるオレフィン合 成 法 であり,四 置 換 オレフィンの合 成 に適 用 が可 能 である事 ,生 成 するオレフィンの異 性 化 が起 こりにくい事 か ら有 用 な間 接 的 炭 素 -炭 素 結 合 形 成 反 応 として利 用 されている.2 6 , 2 7 ) 本 反 応 の反 応 機 構 は 以 下 の様 に推 定 されている.まず塩 基 によりスルホニル基 の位 もしくは’位 が脱 プロトン化 を 受 けスルホニルカルボアニオンとなる.このアニオンの間 には速 い平 衡 が存 在 するが,’位 がア ニオンとなった時 に位 に対 して分 子 内 求 核 置 換 反 応 が進 行 しエピスルホン(三 員 環 スルホン) を与 える.通 常 ,このエピスルホンは cis 体 および trans 体 の混 合 物 となる.最 後 に熱 もしくは塩 基 触 媒 により二 酸 化 硫 黄 (SO2)が脱 離 し,E/Z 混 合 物 としてオレフィンが生 成 する.本 反 応 の
E/Z 選 択 性 は塩 基 と溶 媒 の両 方 に依 存 し,プロトン性 溶 媒 中 で反 応 (KOH/H2O)を行 うと Z 選
択 的 ,非 プロトン性 溶 媒 中 で反 応 (KOt
Bu/DMSO)を行 うと E 選 択 的 にオレフィンを得 ることがで きるが,詳 細 な理 由 は不 明 である.
一 方 ,著 者 の所 属 する研 究 室 では,脱 離 基 を有 する二 置 換 エポキシドと allyl phenyl sulfone を用 い,one-pot でシクロアルカンを合 成 する方 法 を開 発 している.3 0 ) すなわちエポキシ メシラート i に対 して allyl phenyl sulfone とn
BuLi により調 製 したアニオンが分 子 間 SN2 反 応 し, エポキシスルホンが生 じる.さらに系 内 の塩 基 によりアニオン ii が生 成 し,これがエポキシドに対 して exo 環 化 しシクロアルカン iii が生 じ,これを後 処 理 することで隣 接 位 に酸 素 官 能 基 を有 す るシクロアルカン iv を得 るものである. 本 反 応 は,エポキシド i の炭 素 鎖 の長 さを変 えることでシクロプロパンからシクロヘキサンまで の合 成 が可 能 である.基 質 となるエポキシド i は,Sharpless 不 斉 エポキシ化 反 応 3 1 )を用 いるこ とで容 易 に光 学 活 性 体 として入 手 が可 能 であり,本 反 応 においてはエポキシドの cis/trans を問 わず進 行 するため,エポキシドの立 体 配 置 を適 切 に選 択 することで,生 成 するシクロアルカン iv の立 体 配 置 を制 御 することが可 能 である.さらに,シクロアルカン iv のフェニルスルホニル基 の 除 去 の後 ,残 るオレフィンを利 用 した酸 素 官 能 基 の導 入 や,炭 素 鎖 の延 長 も容 易 であることか ら,天 然 物 に多 数 存 在 する核 間 に不 斉 中 心 を有 するシクロアルカンの合 成 へ応 用 が可 能 であ る.著 者 の所 属 する研 究 室 では,本 反 応 を用 いて海 産 エイコサノイドである constanolactone E や bacillariolides I-III の全 合 成 を報 告 している.3 2, 3 3 ) Constanolactone E は,Gerwick らにより米 国 オレゴン州 の海 岸 で採 集 された紅 藻 Constantinea simplex より単 離 ,構 造 決 定 されたシクロプロパンを有 する海 産 エイコサノイドであ る.3 4 ) Constanolactone E は当 時 ,C-5,C-6 および C-8 位 の絶 対 配 置 が未 決 定 であったため, 全 合 成 とともにその構 造 を明 らかにすることを目 的 に合 成 研 究 を行 った. 本 合 成 では光 学 活 性 なエポキシメシラート 1 に allyl phenyl sulfone と n
NaBH4によりアルデヒドを還 元 し,生 じた第 一 級 水 酸 基 をチオフェニル化 ,酸 化 によりスルホン 3 を合 成 した.スルホン 3 と別 途 2-deoxy-D-ribose より調 製 したアルデヒド 4 とのカップリングにより アルコール 5 とし,これをアセチル化 後 ,前 述 の Julia-Lythgoe オレフィン化 と同 様 に,Na(Hg) による脱 スルホン化 を行 い E-オレフィンを得 た.その後 ,水 酸 基 の脱 保 護 ,ラクトン形 成 を経 て constanolactone E の全 合 成 を達 成 した.合 成 した化 合 物 は天 然 物 と物 理 データが一 致 したこ とから constanolactone E の合 成 を達 成 するとともに,不 明 であった絶 対 配 置 を 5R,6S,8R,11R,12R と決 定 した.3 2 )
Bacillariolides I および II は Rhode Island 大 学 ,清 水 らによりカナダ Prince Edward 島 近 海 で採 集 された珪 藻 Pseudo-Nitzchia multiseries から単 離 ,構 造 決 定 されたシクロペンタンを有 する海 産 エイコサノイドである.3 5 ) また,bacillariolide III は清 水 らにより米 国 Narragansett 湾
で採 集 された同 珪 藻 の培 養 液 中 より単 離 ,構 造 決 定 された炭 素 数 12 のエイコサノイド由 来 の 脂 肪 酸 関 連 化 合 物 である.3 6 ) 当 時 ,bacillariolide I の絶 対 配 置 は誘 導 体 の X 線 結 晶 構 造 解
析 により決 定 されていたが,bacillariolide II および III の絶 対 配 置 は,bicillariolide I の生 合 成 経 路 で生 合 成 されるとの考 察 からの推 定 であった.
D-Malic acid 由 来 のアリルアルコール 6 に対 し,Sharpless 不 斉 エポキシ化 ,3 2 ) 第 一 級 水 酸 基 の保 護 ,脱 保 護 ,脱 離 基 の導 入 を経 て光 学 活 性 なエポキシメシラート 7 を得 た.エポキシメシ ラート 7 に allyl phenyl sulfone と n
BuLi より調 製 したアニオンを 2.4 当 量 作 用 させたところ,立 体 選 択 的 に反 応 が進 行 し,シクロペンタン 8 を単 一 生 成 物 として得 た.次 いでシクロペンタン 8 を Lemieux-Johnson 酸 化 によりヘミアセタールとした後 ,Jones 酸 化 によりラクトンとし,Na(Hg)を 用 いて脱 スルホン化 を行 い 9 を得 た.MPM 基 の脱 保 護 ,生 じた第 一 級 水 酸 基 の Swern 酸 化 の後 ,側 鎖 セグメントを Wittig 反 応 により導 入 し,最 後 に MOM 基 の脱 保 護 を行 い,
第 一 章 海 産 エイコサノイド Hybridalactone の全 合 成 研 究
本 章 では,海 産 エイコサノイド hybridalactone の全 合 成 について述 べる.第 一 節 では, one-pot シクロアルカン合 成 の反 応 基 質 である脱 離 基 を有 するエポキシドの立 体 選 択 的 合 成 に ついて述 べ,第 二 節 では,one-pot シクロアルカン合 成 法 を用 いた cis-シクロプロパン部 の構 築 について述 べる.第 三 節 では,C-1~C-8 位 に相 当 する側 鎖 フラグメントの合 成 および hybridalactone の全 合 成 について述 べる.問 題 となった C-15 位 第 二 級 水 酸 基 の導 入 時 の立 体 選 択 性 についても,(R)-BINOL を不 斉 リ ガンドとして用 いるヒドリド付 加 によりジアステレオ比 10 : 1 以 上 の選 択 性 を達 成 している.しかし 本 合 成 は XVI から XVII のシクロプロパン,およびエポキシドの構 築 において収 率 がそれぞれ 65%,69%と中 程 度 に留 まっており,本 合 成 のボトルネックとなっている.
著 者 らは本 化 合 物 の部 分 構 造 である,隣 接 位 に酸 素 官 能 基 を有 するシクロプロパンに注 目 し,本 部 分 構 造 の構 築 に,序 論 で述 べた二 置 換 エポキシドと allyl phenyl sulfone を用 いる one-pot シクロアルカン合 成 法 3 0 ) を用 いることで前 述 の 2 つの全 合 成 における問 題 点 を回 避 で きるものと考 えた.すなわち,本 合 成 法 により生 成 するシクロプロパンの立 体 化 学 は基 質 として 用 いるエポキシドの立 体 化 学 に依 存 する.特 にシクロプロパンの構 築 については,Sharpless 不 斉 エポキシ化 反 応 3 1 )を用 いることで,アリルアルコールから高 い信 頼 性 で立 体 選 択 的 に構 築 で きるエポキシアルコールを基 質 として用 いることができるため,C-15 位 第 二 級 水 酸 基 およびシク ロプロパンの立 体 化 学 を完 全 に制 御 できると考 えられた.
第 一 節 One-pot シクロプロパン合 成 法 前 駆 体 の立 体 選 択 的 合 成
本 節 では,シクロペンタン部 の立 体 選 択 的 合 成 および one-pot シクロアルカン合 成 法 前 駆 体 である脱 離 基 を有 するエポキシドの合 成 について述 べる. 序 論 で述 べた合 成 計 画 に従 い,L-(+)-ascorbic acid より既 知 の 4 工 程 4 2 )で得 られる光 学 活 性 なブテノリド 13 を出 発 原 料 に用 い合 成 を開 始 した.まず,ブテノリド 13 に対 し,CH2Cl2中 で PPTS 存 在 下 MPM-TCAI4 3 )を作 用 させ,第 一 級 水 酸 基 を MPM 基 で保 護 した MPM エーテル 14 を定 量 的 に得 た (Scheme 1).この MPM エーテル 14 に対 し,THF 溶 媒 中 Me2S および CuI 存 在 下 ,−78 °C で vinylmagnesium chloride を作 用 させたところ, (4-methoxyphenyl)methoxymethyl 基 の立 体 障 害 により面 からのビニル基 の 1,4-付 加 が進 行 し,望 む立 体 配 置 を有 するラクトン 15 を単 一 生 成 物 として 67%収 率 で得 た.ラクトン 15 に対 し, THF 溶 媒 中 −78 °C で,LDA を作 用 させリチウムエノラートとした後 ,allyl iodide を加 えて室 温 まで昇 温 したところ,位 のアリル化 が進 行 し,望 む trans-ラクトン 16a を 72%収 率 ,エピマーで ある cis-ラクトン 16b を 10%収 率 でそれぞれ得 た.これら化 合 物 の立 体 配 置 は,NMR スペクト ルを比 較 することにより決 定 している. ラクトン 16a に対 し,THF 溶 媒 中 室 温 で LiAlH4を作 用 させ,ジオール 17 を 99%収 率 で得 た (Scheme 2).ジオール 17 の第 一 級 水 酸 基 のみを保 護 するため,ジオール 17 を ClCH2CH2Cl 溶 媒 中 室 温 で,pyridine および PivCl を作 用 させたところ,モノピバレート 18 を 94%収 率 で得 た.さらにモノピバレート 18 に対 し,CH2Cl2溶 媒 中 0 °C で,anisole 存 在 下 Cl3CCO2H を作 用 させることで MPM 基 の脱 保 護 4 4 )を行 いジオール 19 を 92%収 率 で得 た.ジオール 19 に対 し,MeOH/H2O 混 合 溶 媒 中 室 温 で,NaHCO3存 在 下 NaIO4を作 用 させ,1,2-ジオールの酸 化 的
た.さらにアルコール 20 を DMF 溶 媒 中 室 温 で,imidazole 存 在 下 TBSCl を作 用 させ,第 一 級 水 酸 基 の TBS 化 を行 い,定 量 的 にシリルエーテルとした後 ,toluene 中 −78 °C で DIBAH を作 用 させ Piv 基 を脱 保 護 し,アルコール 21 を 99%収 率 で得 た.得 られたアルコール 21 を Swern 酸 化 4 5 )しアルデヒドとした後 ,精 製 することなく Horner-Wadsworth-Emmons (HWE)反 応 4 6 – 4 8 ) を行 い,E-,-不 飽 和 エステル 22 を二 工 程 収 率 99%で得 た.エステル 22 を toluene 溶 媒 中 −78 °C で,DIBAH により還 元 しアリルアルコール 23 を 95%収 率 で得 た. 以 上 ,ブテノリド 13 からアリルアルコール 23 を 12 工 程 で得 た.しかし合 成 に多 段 階 を要 する こと,また C-14 位 におけるアリル基 の導 入 の際 の立 体 選 択 性 が 7 : 1 と中 程 度 であることから, 原 料 の供 給 経 路 として用 いるには問 題 のある合 成 経 路 であり,大 量 合 成 を志 向 した新 しい合 成 経 路 の開 発 を行 うこととした. 短 工 程 で基 質 を供 給 するため,ラセミ体 で合 成 した原 料 を光 学 分 割 により光 学 活 性 体 として 得 ることとした.trans-But-2-ene-1,4-diol に対 し室 温 で,H3CC(OEt)3および hydroquinone を加
え 150 °C に加 熱 したところ,Johnson-Claisen 転 位 4 9 )によるエステルの生 成 に続 く,分 子 内 求
核 アシル置 換 反 応 が進 行 し,ラセミ体 のラクトン(±)-24 を得 た (Scheme 3).ラクトン(±)-24 に対 し,安 価 に入 手 が可 能 である(S)-(−)--methylbenzylamine (>99.5%ee)を加 え,1,4-dioxane 溶 媒 中 100 °C に加 熱 すると,アミド 25a が 50%収 率 ,25b が 49%収 率 で生 成 した.谷 口 らの
報 告 5 0 )を参 考 に,これらのジアステレオマーをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分 離 した後 ,
行 しカルボン酸 のカリウム塩 が生 成 する.さらに冷 却 後 ,one-pot で 6.0 M HClaq.を室 温 で作 用 させることにより再 度 ラクトン化 させることで,ラクトン(+)-24 を 80%収 率 ,>99.5%ee で得 た.光 学 活 性 体 として得 られたラクトン(+)-24 に対 し,THF 溶 媒 中 −78 °C で,LDA を作 用 させリチウムエ ノラートとした後 ,allyl iodide を加 え,位 をアリル化 した結 果 ,望 む trans-ラクトン 26 のみを得 た.生 成 したラクトン 26 は揮 発 性 が確 認 されたため,後 処 理 後 精 製 することなく,CH2Cl2溶 液
中−78 °C で,DIBAH を作 用 させヘミアセタール 27 を二 工 程 収 率 85%で得 た.
得 られたヘミアセタール 27 からアリルアルコール 23 を合 成 するには,さらに二 炭 素 の伸 長 が 必 要 となることからヘミアセタールの開 環 と炭 素 鎖 の伸 長 を同 時 に行 うことのできる反 応 として , HWE 反 応 および Wittig 反 応 を検 討 することとした (Table 1).Entry 1 では CH3CN 溶 媒 中 ,
DIPEA および LiCl を HWE 試 薬 (EtO)2P(O)CH2CO2Et とともに加 え,45 °C に加 熱 し,12 時 間
反 応 させたが原 料 であるヘミアセタール 27 が回 収 されるのみであり,生 成 物 は得 られなかった. これは DIPEA の塩 基 性 が低 く,ヘミアセタールが開 環 していないことが原 因 として考 えられたた め,entry 2 では DIPEA の代 わりに DBU を用 いたところ,30 分 後 に TLC 上 で 27 の消 失 を確 認 したが,望 む生 成 物 である,-不 飽 和 エステル 28 は得 られず,28 経 由 で oxy-Michael 反 応 の進 行 したテトラヒドロフラン 29 が 92%収 率 で生 成 した.そこで entry 3 以 降 は塩 基 の添 加 が必 要 ない Wittig 反 応 を検 討 した.THF を溶 媒 とした entry 3 では反 応 は進 行 せず,27 を回 収 す るのみであった.また benzene を溶 媒 とした entry 4 では,oxy-Michael 付 加 体 29 を 87%収 率 で得 るのみであった.溶 媒 による反 応 性 の違 いは現 在 のところ合 理 的 な説 明 を持 たないが, entry 5 で CH2Cl2を溶 媒 としたところ,長 時 間 を要 するものの,oxy-Michael 反 応 の進 行 を伴 う
入 を検 討 した.シクロペンテン 31 に対 し CH2Cl2溶 媒 中 ,0 °C で MsCl および DMAP を作 用 さ
せたところ,エポキシメシラート 32 を 99%収 率 で得 た.同 様 に 31 に対 し,CH2Cl2溶 媒 中 ,0 °C
で p-TsCl および DMAP を作 用 させたところ,エポキシトシラート 33 を 97%収 率 で得 た.さらに
31 に対 し CH2Cl2溶 媒 中 ,0 °C で MsCl および Et3N を作 用 させメシラートとし,後 処 理 後 精 製
することなく acetone 溶 媒 中 NaHCO3および NaI を加 え 40 °C に加 熱 することで,エポキシヨー
ジド 34 を二 工 程 収 率 85%で得 た.
第 二 節 One-pot シクロプロパン合 成 法 による cis-シクロプロパン部 の合 成
本 節 では,one-pot シクロアルカン合 成 法 を用 いる hybridalactone の cis-シクロプロパン部 の 立 体 選 択 的 合 成 について述 べる.
合 成 計 画 に従 い,第 一 節 で合 成 した脱 離 基 を有 するエポキシド 32,33 および 34 を用 いて 本 合 成 の鍵 反 応 である one-pot シクロプロパン合 成 法 3 0 )の検 討 を行 うこととした.まず,エポキ
シメシラート 32 を用 いて反 応 を行 った.Phenyl propyl sulfone (2.4 equiv.) に THF 溶 媒 中 −78 °C で n BuLi (2.3 equiv.)を作 用 させた後 0 °C まで徐 々に昇 温 し,スルホニルカルボアニオ ンを発 生 させた後 ,−78 °C に再 度 冷 却 してエポキシメシラート 32 の THF 溶 液 を滴 下 して室 温 まで昇 温 した (Scheme 6).しかし目 的 の-スルホニルシクロプロパン 35a の生 成 は確 認 されず, 複 雑 な混 合 物 を与 えるのみであった. TLC の追 跡 によりスルホニルカルボアニオンのエポキシメシラートに対 する分 子 間 アルキル化 反 応 が進 行 していないことが判 明 したため,脱 離 基 としてより脱 離 能 の高 いトシラートを用 いて 反 応 を行 うこととした.先 のエポキシメシラート 32 と同 様 の条 件 で,phenyl propyl sulfone (2.4 equiv.)とnBuLi (2.3 equiv.)から調 製 したスルホニルカルボアニオンに対 し,−78 °C でエポキシト シラート 33 の THF 溶 液 を滴 下 して室 温 まで昇 温 したところ,今 度 は反 応 が進 行 し,望 む-スル ホニルシクロプロパン 35a を 84%収 率 で得 た (Scheme 7).またこの際 に C-18 位 に関 するエピ マーである-スルホニルシクロプロパン 35b を 12%収 率 で得 ている.
スルホニル基 のベンゼン環 の ortho 位 プロトン間 に相 関 が観 測 されたことからシクロプロパンに 対 して,シクロペンテン側 鎖 とフェニルスルホニル基 が同 じ側 にあり,C-18 位 が S 配 置 であること を決 定 した.
本 反 応 の立 体 選 択 性 の発 現 は次 のように考 察 した.すなわち,エポキシトシラート 33 と phenyl propyl sulfone 由 来 のスルホニルカルボアニオンとの分 子 間 アルキル化 反 応 により生 じ た中 間 体 であるエポキシスルホンは,系 内 の塩 基 により再 度 脱 プロトン化 を受 け,アニオン 36a および 36b の平 衡 状 態 となる (Fig. 6).このときアニオン 36b ではシクロペンテンとフェニルスル ホニル基 との間 に大 きな立 体 障 害 が存 在 するため,この平 衡 は 36a へと大 きく偏 っており,その 結 果 フェニルスルホニル基 とシクロペンテン側 鎖 が離 れた配 置 となる 35a が優 先 して生 成 したも のと考 えられる. 以 上 の様 に,鍵 反 応 である one-pot シクロプロパン合 成 法 が収 率 良 く進 行 し,望 む立 体 化 学 を有 する-スルホニルシクロプロパン 35a を得 たので,合 成 計 画 に従 い,スルホニル基 を除 去 し
cis-シクロプロパンの構 築 を行 うこととした.35a に対 し MeOH 溶 媒 中 室 温 で,Na2HPO4存 在 下
て得 た (Scheme 11).生 成 物 は酸 に不 安 定 であったため,Mg 由 来 の残 渣 の除 去 に遠 心 分 離 を用 いて後 処 理 を行 い,粗 生 成 物 を CH2Cl2溶 液 中−78 °C で DIBAH を加 えることで,ヘミアセ
タールへと還 元 した.さらに続 けて THF/toluene 混 合 溶 媒 を用 いる Wittig 反 応 によりヘミアセタ ールの開 環 を行 いジエン 45 を三 工 程 収 率 86%で得 た.
第 三 節 Hybridalactone の全 合 成
本 節 では,C-1~C-8 フラグメントである Wittig 試 薬 の合 成 および第 二 節 で合 成 した C-9~C-20 フラグメントとの結 合 による hybridalactone の全 合 成 について述 べる. 合 成 計 画 に従 い,C-1~C-8 フラグメントの合 成 を検 討 することとした.結 合 反 応 の条 件 として, C-11,12 位 のエポキシドおよび 1,4-スキップジエンに対 して不 活 性 であることが挙 げられる.また, C-1 位 の酸 化 段 階 をカルボン酸 の状 態 で反 応 を行 うことができれば結 合 後 の酸 化 による基 質 の分 解 を抑 えることができる.以 上 の条 件 を満 たす反 応 として Wittig 反 応 を用 いることとし, C-1~C-8 フラグメントに相 当 する Wittig 試 薬 として (8-methoxy-8-oxooct-3-enyl)triphenylphosphonium bromide5 8 ) (46)を選 択 した.なお,46 は 既 知 化 合 物 であるが,合 成 過 程 における収 率 の再 現 性 が乏 しく,大 量 合 成 に用 いるには難 し かったことから,46 の安 定 した供 給 を目 的 に新 規 合 成 法 の開 発 を行 った.原 料 である 5-hexynoic acid に対 し CH2Cl2溶 媒 中 室 温 で,3-methyl-3-oxetanemethanol,
させメシラートとした後 ,後 処 理 後 それ以 上 の精 製 を行 うことなく,粗 生 成 物 を acetone 溶 液 とし, LiBr を加 えることでブロミド 51 を二 工 程 収 率 97%で得 た.最 後 に 51 を CH3CN 溶 媒 中 Ph3P と還 流 することで,C-1~C-8 フラグメントに相 当 する Wittig 試 薬 46 を定 量 的 に合 成 した. 以 上 のように,C-1~C-8 フラグメントとして Wittig 試 薬 46 の新 規 合 成 法 を開 発 することができ た. 次 に,第 二 節 で合 成 した C-9~C-20 フラグメントであるジエン 45 から Wittig 反 応 の基 質 とな るアルデヒドの合 成 を行 った.Hybridalactone は C-11,12 位 にエポキシドを有 するため,先 に C-1~C-8 フラグメントを導 入 すると,テトラエンに対 するエポキシ化 が必 要 となり,位 置 選 択 性 の 制 御 に困 難 を伴 うことが予 想 された.そこでジエン 45 の段 階 であれば,二 つの二 重 結 合 のうち 電 子 豊 富 なシクロペンテン側 の二 重 結 合 に対 し,立 体 選 択 的 にエポキシドが導 入 できるのでは ないかと考 え,エポキシ化 の検 討 を行 った.ジエン 45 の CH2Cl2溶 液 に対 し,室 温 で VO(acac)2 触 媒 存 在 下 TBHP を作 用 させたところ,予 想 通 り,-エポキシド 52 が位 置 および立 体 選 択 的 に生 成 した (Scheme 13).本 エポキシ化 反 応 ではバナジウムが C-15 位 第 二 級 水 酸 基 に配 位 し 45a の遷 移 状 態 をとり反 応 が進 行 することで望 む-配 置 のエポキシドが得 られたと考 えている. 本 反 応 において C-19,20 位 の二 重 結 合 が反 応 しなかった理 由 は,環 状 二 置 換 二 重 結 合 であ る C-11,12 位 と比 べ電 子 不 足 であること,また C-15 位 第 二 級 水 酸 基 に配 位 したバナジウムから の距 離 が遠 いことが原 因 として挙 げられる.続 けて C-19,20 位 の二 重 結 合 の還 元 を検 討 した. 検 討 開 始 当 初 は接 触 水 素 化 を用 いて二 重 結 合 の還 元 を試 みたが,Pd 系 触 媒 を使 用 するとシ クロプロパンの開 裂 が進 行 してしまい,生 成 物 を得 ることができなかった.また Rh 系 触 媒 を使 用 するとシクロプロパンに対 しては不 活 性 であるものの,エポキシドが開 環 してしまうことが判 明 した. そこで次 に,ジイミド還 元 を検 討 することとした.ジイミド還 元 ではヒドラジン(H2NNH2)の酸 化 によ り生 じるジイミド(HN=NH)を還 元 剤 として用 いるが,ジイミドは不 均 化 と還 元 が競 合 するため,通 常 大 過 剰 のヒドラジンを使 用 する.しかし,ヒドラジンがエポキシドへ 求 核 付 加 するおそれがある ため小 過 剰 量 のヒドラジンを riboflavin 誘 導 体 触 媒 により酸 化 する直 田 らの報 告 6 1 )を参 考 に反 応 を行 った.すなわちエポキシド 52 に対 し,CH3CN 溶 媒 中 室 温 ,酸 素 雰 囲 気 下 で H2NNH2·H2O および riboflavin tetrabutyrate を作 用 させたところ,二 重 結 合 の還 元 が進 行 し, 望 む還 元 体 53 を二 工 程 収 率 81%で得 た.続 けて 53 の第 二 級 水 酸 基 の保 護 ,第 一 級 水 酸 基 の脱 保 護 により Wittig 反 応 の基 質 であるアルデヒドの前 駆 体 であるアルコールの合 成 を行 った. C-15 位 第 二 級 水 酸 基 の保 護 基 は先 行 検 討 の結 果 ,アセチル基 (-COCH3)を用 いると,Wittig 反 応 後 の加 水 分 解 に抵 抗 し脱 保 護 が困 難 であり,ホルミル基 (-COH)を用 いると C-9 位 の第 一 級 水 酸 基 の酸 化 の際 に脱 保 護 が進 行 し,同 時 に酸 化 されてしまう事 が判 明 していたので,中 間 の反 応 性 を有 するメトキシアセチル基 (-COCH2OCH3)を保 護 基 に選 択 した.アルコール 53 に
対 し,pyridine 溶 媒 中 室 温 で H3COCH2COCl を作 用 させたところ,速 やかにアシル化 が進 行 し
を得 た.またこのとき E 体 の生 成 は確 認 されなかった.57 を THF 溶 媒 中 室 温 で 0.2 M LiOHaq. を作 用 させメチルエステルの加 水 分 解 と C-15 位 第 二 級 水 酸 基 のメトキシアセチル基 の脱 保 護 を行 いセコ酸 58 とし,最 後 に,MNBA および DMAP の CH2Cl2溶 液 に室 温 でセコ酸 58 の
CH2Cl2溶 液 を滴 下 し,椎 名 マクロラクトン化
6 4 )を行 い,13 員 環 マクロラクトンを構 築 し,四 工 程
第 二 章 拡 張 型 One-pot シクロアルカン合 成 法 の開 発
序 論 で述 べたように,著 者 らは alkyl phenyl sulfone と二 置 換 エポキシメシラートを用 いた one-pot シクロアルカン合 成 法 を既 に開 発 している.3 0 ) 第 一 章 では,phenyl propyl sulfone を 本 反 応 に用 いることで cis-シクロプロパンの立 体 選 択 的 合 成 に成 功 した.脱 スルホニル化 の際 に側 鎖 間 の立 体 障 害 により trans-シクロプロパンへの異 性 化 が進 行 したため,hybridalactone の全 合 成 経 路 へ組 み込 むことはできなかったが,前 述 の constanolactone E3 2 )および bacillariolides I-III3 3 )の全 合 成 への応 用 と合 わせて,本 反 応 の有 用 性 を証 明 することができ た. 一 方 ,海 洋 生 物 から得 られる天 然 物 の中 には,シクロアルカン上 に四 級 不 斉 炭 素 を持 つ化 合 物 が数 多 く存 在 する (Fig. 9).例 えば,cyanthiwigin D は海 綿 Myrmekioderma styx.から単 離 された,腫 瘍 細 胞 に対 して増 殖 阻 害 活 性 を示 すジテルペノイドである.6 2 )
また,reiswigin A は海 綿 Epipolasis reiswigi から単 離 された,単 純 ヘルペスウイルス type I (HHV-1)とマウス肝 炎 ウイルス A59 株 (MHV-A59)に対 して抗 ウイルス活 性 を持 つジテルペノイドである.6 3 )
著 者 は,これらの海 洋 天 然 物 に含 まれる共 通 部 分 構 造 XVIII の合 成 に,序 論 で述 べた脱 離 基 を有 するエポキシドと alkyl phenyl sulfone を用 いた one-pot シクロアルカン合 成 法 を応 用 できると考 えた.つまり,基 質 となるエポキシドに予 め置 換 基 を導 入 しておくことで,エポキシドに 対 する exo 環 化 の結 果 ,四 級 不 斉 炭 素 が導 入 されたシクロアルカン XVIII が生 成 することが予 想 される.また,本 反 応 は基 質 であるエポキシド v の炭 素 鎖 長 を n = 0, 1, 2 と変 化 させることで, それぞれ四 級 不 斉 炭 素 を有 するシクロプロパン,シクロブタンおよびシクロペンタンを作 り分 ける ことが可 能 になると考 えられる.すなわち,脱 離 基 を有 する三 置 換 エポキシド v に対 し alkyl phenyl sulfone と塩 基 から調 製 したアニオンを作 用 させアルキル化 を行 いエポキシスルホン vi と した後 ,系 内 の塩 基 による再 アニオン化 ,エポキシドに対 する exo 環 化 が進 行 することで
one-pot で四 級 不 斉 炭 素 を含 むシクロアルカン viii が合 成 できると考 えた (Fig. 10).シクロアル カン iv からは脱 スルホニル化 等 により容 易 に共 通 部 分 構 造 XVIII へ導 くことが可 能 である.し かし,本 反 応 においては,二 置 換 エポキシドに対 する one-pot シクロアルカン合 成 法 の場 合 と異 なり,exo 環 化 が進 行 する際 ,置 換 基 の立 体 障 害 により反 応 性 の低 下 が予 想 される.
第 一 節 三 置 換 エポキシドを用 いた 5-Exo 型 One-pot シクロペンタン合 成 法 の開 発
本 節 では,脱 離 基 を有 する三 置 換 エポキシドを用 いた 5-exo 型 one-pot シクロペンタン合 成 法 の開 発 について述 べる.導 入 部 で述 べたように著 者 らはすでに二 置 換 エポキシメシラートと alkyl phenyl sulfone を用 いた one-pot シクロアルカン合 成 法 を開 発 している.そこでまず,本 反 応 条 件 をそのまま三 置 換 エポキシメシラートに対 して適 用 してみることとした. 3-Phenylpropanal から既 知 の三 工 程 6 6 )で合 成 可 能 したアルコール 59 に対 し,CH2Cl2溶 媒 中 0 °C で MsCl および DMAP を加 え,室 温 に昇 温 することで,メシラート 60 とした後 ,続 けて CH2Cl2溶 媒 中 0 °C で m-CPBA および Na2HPO4を加 え室 温 に昇 温 し,オレフィンのエポキシ 化 を行 い,one-pot シクロペンタン合 成 の反 応 基 質 であるエポキシメシラート 61 を二 工 程 収 率 94%で得 た (Scheme 15).
検 討 を行 った.アルコール 59 に対 し,CH2Cl2溶 媒 中 0 °C で p-TsCl および DMAP を加 え,室
温 に昇 温 することで,トシラートとした後 ,続 けて CH2Cl2溶 媒 中 0 °C で m-CPBA および
Na2HPO4を加 え室 温 に昇 温 し,オレフィンのエポキシ化 を行 い,エポキシトシラート 64 を二 工 程
収 率 85%で得 た(Scheme 17).さらにエポキシトシラート 64 に対 し acetone 溶 媒 中 ,NaI および NaHCO3を作 用 させエポキシヨージド 65 を 89%収 率 で得 た.
これら 3 種 の脱 離 基 を有 する三 置 換 エポキシドを用 いて allyl phenyl sulfone との分 子 間 ア ルキル化 の検 討 を行 った (Table 2).Entry 1-3 では,これまでの反 応 条 件 と同 様 ,THF 溶 媒 中 −78 °C で allyl phenyl sulfone (2.4 equiv.)に対 しn
BuLi (2.3 equiv.)を作 用 させ,スルホニルカ ルボアニオンを調 製 した後 ,三 置 換 エポキシド 61,64 および 65 をそれぞれ加 え−20 °C に昇 温 した.エポキシメシラート 61 およびエポキシトシラート 64 を基 質 として用 いた場 合 はエポキシスル ホン 62 がそれぞれ 35%,43%と低 収 率 で得 られるのみであったが,エポキシヨージド 65 を用 い た場 合 は定 量 的 に 62 が得 られた.そこで脱 離 基 をヨウ素 に固 定 し,続 けて試 薬 の当 量 につい てさらなる検 討 を行 った.それぞれの試 薬 の当 量 を変 化 させて反 応 を行 った結 果 , entry 4 では allyl phenyl sulfone (1.2 equiv.) および nBuLi (1.1 equiv.)を用 いると 57%収 率 でエポキシスル ホン 62 が得 られ,entry 5 では allyl phenyl sulfone (1.7 equiv.)および n
その理 由 は,本 反 応 の反 応 温 度 ではスルホニル基 に結 合 しているベンゼン環 の ortho 位 の プロトンが脱 プロトン化 されるため,スルホニル基 の位 の脱 プロトン化 のための 1 当 量 に加 え, もう 1 当 量 の塩 基 が必 要 になるためであると考 察 される.また,この仮 定 が正 しいのであれば, allyl phenyl sulfone を 1 当 量 ,nBuLi を 2 当 量 用 いても反 応 は進 行 するはずである.そこで entry 6 では,allyl phenyl sulfone (1.2 equiv.) および nBuLi (2.3 equiv.)として反 応 を行 ったとこ ろ,予 想 通 りエポキシスルホン 62 を 99%収 率 で得 た.このことから余 分 な 1 当 量 分 の塩 基 は, 基 質 の反 応 点 ではない部 位 の脱 プロトン化 によるものであると推 定 された.以 上 の検 討 の結 果 , 三 置 換 エポキシドの脱 離 基 はヨウ素 を選 択 し,allyl phenyl sulfone (1.2 equiv.)および n
BuLi (2.3 equiv.)を用 いることで一 段 階 目 の分 子 間 アルキル化 反 応 において 良 好 な結 果 を与 えるこ とが判 明 した.
次 に,二 段 階 目 の 5-exo 環 化 反 応 の反 応 条 件 の検 討 に着 手 した (Table 3).まず,entry 1 ではエポキシスルホン 62 に対 し THF 溶 媒 中 ,−78 °C でn
BuLi (1.1 equiv.) を作 用 させ,スルホ ニルカルボアニオンを調 製 した後 ,0 °C に昇 温 した.その結 果 ,望 む 5-exo 環 化 体 63 が 16% 収 率 で得 られるとともに 6-endo 環 化 体 67 が 35%収 率 で生 成 した.また entry 2 では,n
加 を検 討 した.Lewis 酸 として entry 3-5 では EtAlCl2,Et2AlCl および Me3Al を,entry 6 では
BF3·OEt2,entry 7 では TiCl(O
ニルスルホニル基 の間 の立 体 障 害 により,この平 衡 はアニオン 62a へと偏 っており,Lewis 酸 を 用 いない entry 1 および 2 では反 応 温 度 を室 温 まで昇 温 するため平 衡 がアニオン 62a に完 全 に偏 り,アニオン 62b 由 来 のシクロペンタン 66 は生 成 しない.一 方 ,最 適 条 件 とした entry 5 に おいては,エポキシドの求 電 子 性 の向 上 を目 的 に Lewis 酸 である Me3Al を添 加 したため,アニ
オン 62a と 62b の平 衡 が偏 りきる前 に 5-exo 環 化 反 応 が進 行 し,entry 1 および 2 では確 認 さ れなかった 3-epi 体 であるシクロペンタン 66 が生 成 したと考 察 している.
以 上 の結 果 により,各 段 階 の反 応 条 件 を最 適 化 できたものとし,脱 離 基 としてヨウ素 を持 つ エポキシヨージド 65 を基 質 とし,改 めて one-pot シクロペンタン合 成 法 の検 討 を行 った (Table 3).まずこれまでの検 討 を元 に,分 子 間 アルキル化 の最 適 条 件 である allyl phenyl sulfone (1.2 equiv.)および nBuLi (2.3 equiv.)より調 製 したスルホニルカルボアニオンに対 し,−78 °C でエポ キシヨージド 65 を作 用 させ,−20 °C に昇 温 した.TLC により原 料 の消 失 を確 認 した後 ,再 度 −78 °C まで冷 却 し,Me3Al (1.1 equiv.)を加 え,室 温 まで昇 温 した.その結 果 ,エポキシスルホ ン 62 を 50%収 率 ,5-exo 環 化 反 応 まで進 行 したシクロペンタン 63 を 8%収 率 ,シクロペンタン 66 を 4%収 率 でそれぞれ得 た (entry 1).Entry 1 の条 件 では中 間 体 であるエポキシスルホン 62 が主 生 成 物 として得 られたことから entry 2 では原 料 の消 失 を確 認 後 ,n BuLi (1.1 equiv.)を追 加 した後 に Me3Al (1.1 equiv.)を加 えたところ,63 および 66 の収 率 はそれぞれ 38%および 14% に向 上 した.更 なる収 率 の向 上 を目 的 に各 試 薬 の当 量 を調 製 し,entry 5 ではシクロペンタン 63 および 66 をそれぞれ 66%および 18%収 率 で得 るに至 った.また本 反 応 は,entry 6 のように 最 初 から n BuLi を過 剰 量 加 えてしまうと収 率 が低 下 する傾 向 にあることが判 明 した. 以 上 の結 果 より,一 段 階 目 の分 子 間 アルキル化 に,allyl phenyl sulfone (2.4 equiv.)および n
equiv.)より調 製 したスルホニルカルボアニオンを用 い,原 料 の消 失 後 , 二 段 階 目 の 5-exo 環 化 反 応 に n
BuLi (2.1 equiv.)および Me3Al (2.2 equiv.)を用 いる entry 5 の条 件 を,5-exo 型
第 二 節 拡 張 型 One-pot シクロアルカン合 成 法 の開 発 と展 開
本 節 では,前 節 で開 発 した三 置 換 エポキシドと allyl phenyl sulfone を用 いる 5-exo 型 one-pot シクロペンタン合 成 法 の置 換 基 および炭 素 鎖 長 による反 応 性 の 影 響 について述 べる. また,海 洋 天 然 物 に多 く見 られる共 通 部 分 構 造 である,隣 接 位 に酸 素 官 能 基 を有 するシクロア ルカンの合 成 法 についても述 べる.
まず,エポキシドの置 換 基 としてメチル基 以 外 の置 換 基 を持 つ基 質 の合 成 を行 った.
2-bromobut-1-ene およびtBuLi から調 製 した有 機 リチウム試 薬 に対 し 3-phenylpropanal の Et2O
溶 液 を作 用 させアルコール 72 とした後 ,触 媒 量 の CH3CH2CO2H 存 在 下 H3CC(OEt)3を加 え, 140 °C に加 熱 することで,Johnson-Claisen 転 位 4 9 )を行 いエチルエステル 73 を得 た (Scheme 21).得 られたエステル 73 を Et2O 溶 媒 中 0 °C で LiAlH4を作 用 させエステルの還 元 を行 いア ルコール 74 を三 工 程 収 率 8%で得 た.アルコール 74 に対 し CH2Cl2溶 媒 中 0 °C で p-TsCl お よび DMAP を加 え,室 温 に昇 温 することで,トシラートとした後 ,続 けて CH2Cl2溶 媒 中 で m-CPBA および NaHCO3を加 え,オレフィンのエポキシ化 を行 い,エポキシトシラート 75 を得 た.
さらにエポキシトシラート 75 に対 し acetone 溶 媒 中 ,室 温 で NaI および NaHCO3を加 え,50 °C
p-TsCl および DMAP を加 え,室 温 に昇 温 することで,トシラートとした後 ,続 けて CH2Cl2溶 媒 中 0 °C で m-CPBA および NaHCO3を加 え室 温 に昇 温 し,オレフィンのエポキシ化 を行 い,エ ポキシトシラート 80 を得 た.さらにエポキシトシラート 80 に対 し acetone 溶 媒 中 ,室 温 で NaI お よび NaHCO3を加 え,50 °C に昇 温 し,エポキシヨージド 81 を三 工 程 収 率 83%収 率 で得 た.本 基 質 は前 節 で述 べた 5-exo 型 one-pot シクロペンタン合 成 法 の基 質 であるエポキシヨージド 65 の置 換 基 がメチル基 からフェニル基 に置 換 した化 合 物 である.なお,エポキシヨージド 76 および 81 の合 成 は最 適 化 を行 っておらず,収 率 は未 だ改 善 の余 地 がある. 上 記 の合 成 により得 られたエポキシヨージド 76 および 81 を用 いて,5-exo 型 one-pot シクロ ペンタン合 成 法 を試 みた (Scheme 23).Allyl phenyl sulfone (3.1 equiv.)および n
BuLi (3.0 equiv.)より調 製 したスルホニルカルボアニオンに対 し,−78 °C でエポキシヨージド 76 を作 用 させ, −20 °C に昇 温 した.TLC により原 料 の消 失 を確 認 した後 ,一 度 −78 °C まで冷 却 し,n BuLi (2.7 equiv.)および Me3Al (2.9 equiv.)を加 え,室 温 まで昇 温 したところ,シクロペンタン 82 を単 一 の生 成 物 として 38%収 率 で得 た.シクロペンタン 82 の立 体 化 学 は,NOESY スペクトルの測 定 により図 に示 した NOE 相 関 が確 認 されたことにより決 定 した.
また,allyl phenyl sulfone (2.4 equiv.)およびn
のみであり,シクロペンタン 83 は得 られなかった. 以 上 の結 果 より,本 反 応 は基 質 の立 体 障 害 の影 響 を大 きく受 ける反 応 であり,現 在 のところ メチル基 以 外 の置 換 基 を有 するエポキシドに対 しては十 分 な収 率 で環 化 体 を得 ることは困 難 で あり,適 切 な Lewis 酸 の選 択 による更 なる収 率 の改 善 は今 後 の課 題 である. 次 に炭 素 鎖 長 による反 応 性 の影 響 について検 討 することとし,まず初 めに Fig. 10 における n = 0 の基 質 の合 成 を行 った.3-Phenylpropanal から既 知 の二 工 程 6 7 )で合 成 したアルコール 84 に対 し,CH2Cl2溶 媒 中 0 °C で m-CPBA および NaHCO3を加 え,オレフィンのエポキシ化 を行 い,エポキシアルコール 85 を得 た (Scheme 25).得 られたエポキシアルコール 85 に対 し, CH2Cl2溶 媒 中 0 °C で I2,Ph3P,imidazole および 2-methylbut-2-ene を作 用 させ,第 一 級 水 酸 基 のヨウ素 化 を行 いエポキシヨージド 86 を二 工 程 収 率 49%で得 た. 次 に Fig. 10 における n = 1 の基 質 の合 成 を行 った.アルコール 84 に対 し,CH2Cl2溶 媒 中
室 温 で 4ÅMS 存 在 下 ,NMO および TPAP を用 いる Ley-Griffith 酸 化 により,-不 飽 和 アルデ ヒド 87 を得 ,さらに Wittig 反 応 を行 うことにより一 炭 素 増 炭 を行 いジエン 88 を二 工 程 収 率 27% で得 た (Scheme 26).ジエン 88 に THF 溶 媒 中 0 °C で別 途 調 製 した Cy2BH を作 用 させ,位
0 °C で p-TsCl および DMAP を加 え,室 温 に昇 温 することで,トシラートとした後 ,CH2Cl2溶 媒 中 0 °C で m-CPBA および NaHCO3を加 え室 温 に昇 温 し,オレフィンのエポキシ化 を行 い,エ ポキシトシラートを得 た.さらに得 られたエポキシトシラートに対 し acetone 溶 媒 中 ,NaI および NaHCO3を加 え,エポキシヨージド 90 を三 工 程 収 率 48%収 率 で得 た.なお,エポキシヨージド 86 および 90 の合 成 は最 適 化 を行 っておらず,収 率 は未 だ改 善 の余 地 がある. 上 記 の合 成 により得 られたエポキシヨージド 86 および 90 に対 し,前 節 で述 べた 5-exo 型 one-pot シクロペンタン合 成 法 と同 様 の反 応 条 件 を付 すことで,それぞれシクロプロパンおよびシ クロブタンが合 成 できると考 えた.まず,エポキシヨージド 86 を用 いる one-pot シクロプロパン合 成 を試 みた.Allyl phenyl sulfone (2.2 equiv.)および n
BuLi (2.1 equiv.)より調 製 したスルホニ ルカルボアニオンに対 し,−78 °C でエポキシヨージド 86 を作 用 させ,−20 °C に昇 温 した (Scheme 27).TLC により原 料 の消 失 を確 認 した後 ,再 度 −78 °C まで冷 却 し,nBuLi (1.1 equiv.)を作 用 させ,−20 °C に昇 温 したところ,Lewis 酸 の添 加 無 しで 3-exo 環 化 反 応 が進 行 し, シクロプロパン 91 を単 一 の生 成 物 として 91%収 率 で得 た.シクロプロパン 91 の立 体 化 学 は, NOESY スペクトルの測 定 により図 に示 した NOE 相 関 が確 認 されたことにより決 定 した.
次 に,エポキシヨージド 90 を用 いる one-pot シクロブタン合 成 を試 みた.Allyl phenyl sulfone (2.1 equiv.)およびnBuLi (2.05 equiv.)より調 製 したスルホニルカルボアニオンに対 し,−78 °C で エポキシヨージド 90 を作 用 させ,−20 °C に昇 温 した (Scheme 28).TLC により原 料 の消 失 を確 認 した後 ,再 度−78 °C まで冷 却 し,n
BuLi (1.5 equiv.)および Me3Al (1.1 equiv.)を加 えたとこ
ろ,驚 くべきことに予 想 した 4-exo 環 化 体 93 ではなく,5-endo 環 化 体 92 を単 一 の生 成 物 とし て 95%収 率 で得 た.92 の立 体 化 学 は,NOESY スペクトルの測 定 により図 に示 した NOE 相 関 が 確 認 されたことにより決 定 した.
用 いた場 合 でも 5-endo 環 化 反 応 に対 し 4-exo 環 化 反 応 が優 先 して進 行 し,シクロブタンのみ が生 成 していたことに対 し,三 置 換 エポキシドを用 いた本 拡 張 法 においては 4-exo 環 化 反 応 に 対 して 5-endo 環 化 反 応 が優 先 して進 行 し,環 の内 部 に第 三 級 水 酸 基 を有 するシクロペンタン が生 成 したことは新 たな知 見 であり,拡 張 型 one-pot シクロアルカン合 成 法 のさらなる有 用 性 を 示 す結 果 であるといえる.
以 上 本 節 では,三 置 換 エポキシドと allyl phenyl sulfone を用 いる 5-exo 型 one-pot シクロペ ンタン合 成 法 における置 換 基 および炭 素 鎖 長 の違 いによる反 応 性 および環 化 形 式 の変 化 に ついて検 討 した.その結 果 ,メチル基 以 外 の置 換 基 については良 好 な収 率 で生 成 物 を得 ること ができず,今 後 の課 題 である.また,炭 素 鎖 長 が n = 0 のエポキシヨージドを基 質 とする,3-exo 環 化 反 応 を含 む one-pot シクロプロパン合 成 法 は Lewis 酸 の添 加 無 しで進 行 することを明 らか にした.さらに,三 置 換 エポキシドを用 いる反 応 の特 徴 として,炭 素 鎖 長 が n = 1 のエポキシヨー ジドを基 質 として反 応 を行 うと,4-exo 環 化 反 応 より 5-endo 環 化 反 応 が優 先 して進 行 することを 新 たに発 見 した. 海 洋 生 物 由 来 の天 然 物 には,5-endo 型 one-pot シクロペンタン合 成 法 により得 られる部 分 構 造 を有 する化 合 物 が存 在 する (Fig. 14).Scabrolide B は Sinularia 属 の軟 体 サンゴから単 離 さ れた四 環 性 ノルジテルペノイドである.6 8 ) 本 化 合 物 は同 時 に単 離 された yonarolide を除 いて
例 のない yonarane 骨 格 (tricyclo[7,5,0,03, 7
第 三 章 海 産 ノルジテルペノイド Xestenone の全 合 成 研 究
本 章 では,海 産 ノルジテルペノイド xestenone の初 の全 合 成 及 び絶 対 配 置 の決 定 について 述 べる.第 一 節 では,第 二 章 で開 発 した 5-exo 型 one-pot シクロペンタン合 成 法 による四 級 不 斉 炭 素 を含 むシクロペンタンフラグメントの合 成 について述 べ,第 二 節 では,側 鎖 フラグメントの 立 体 選 択 的 合 成 およびフラグメントとのカップリングの検 討 について述 べる.第 三 節 では, xestenone の全 合 成 および絶 対 配 置 の決 定 について述 べる. Xestenone は,1988 年 に Andersen らによりカナダ ブリティッシュ・コロンビア州 沿 岸 で採 集 さ れた海 綿 Xestospongia vanilla から単 離 ・構 造 決 定 された diquinane 骨 格 を有 する海 産 ノルジ テルペノイドである (Fig. 16).7 0 )また,secoxestenone は同 種 の海 綿 から単 離 されたジケトン構 造 を有 するノルジテルペノイドである.Andersen らは secoxestenone を xestenone の生 合 成 前 駆 体 であるとしており,実 際 に secoxestenone に塩 基 処 理 による分 子 内 アルドール反 応 を行 い,微 量 ではあるが xestenone を得 ている.Xestenone は bicyclo[3.3.0]octane 上 に 2 つのメチル基 と 側 鎖 まで繋 がる共 役 エノンを有 する.本 化 合 物 の平 面 構 造 は,赤 外 分 光 法 ,質 量 分 析 法 およ び核 磁 気 共 鳴 分 光 法 により決 定 されている.また,立 体 化 学 については C-3 位 および C-7 位 の 相 対 配 置 が cis 配 置 であることが NOE 実 験 により確 認 されているのみであり,C-12 位 の相 対 配 置 および本 化 合 物 の絶 対 配 置 は未 決 定 である.これまでに xestenone の生 物 活 性 に関 する報 告 は無 いが,特 異 な共 役 ジエノン構 造 を持 つことから何 らかの生 物 活 性 が期 待 されている.
最 後 にカップリングする収 束 的 合 成 法 を基 本 計 画 とすることで,C-3 位 ,C-7 位 および C-12 位 に関 する全 ての立 体 異 性 体 が合 成 可 能 である.また,本 化 合 物 の比 旋 光 度 は[]D 0 (c 1.00, MeOH)という報 告 があり,比 旋 光 度 での絶 対 配 置 の決 定 は不 可 能 であるが,円 偏 光 二 色 性 (CD)スペクトルにおいて,323 nm に正 のコットン効 果 ,258 nm に負 のコットン効 果 が観 測 される ことが報 告 されていることから,このパターンを比 較 することで絶 対 配 置 を決 定 できると考 えた. 標 的 化 合 物 である(3S,7S,12R)-xestenone (94)は,(3R,7S,12R)-secoxestenone (95)から分 子 内 アルドール縮 合 により合 成 できると考 えた (Fig. 17).(3R,7S,12R)-secoxestenone (95)は, ジオール E の酸 化 により得 ることとし,ジオール E は,シクロペンタンフラグメントに相 当 するエポ キシド F および側 鎖 フラグメントに相 当 するビニルヨージド I との C-9 位 /C-10 位 間 でのカップリ ングにより得 ることとした.エポキシド F は,シクロペンタン G の脱 スルホニル化 に続 く C-2 位 への 水 酸 基 の導 入 ,さらにエポキシドの構 築 により合 成 可 能 であると考 え,C-7 位 に四 級 不 斉 炭 素 を含 むシクロペンタン G は,エポキシヨージド H に対 し,allyl phenyl sulfone および Lewis 酸 を 用 いた 5-exo 型 one-pot シクロペンタン合 成 法 を適 用 することで得 ることとした.エポキシヨージド
H は,ゲラニオールから既 知 の方 法 7 1 )で合 成 可 能 であるアルコール 96 から Sharpless 不 斉 エ
ポキシ化 反 応 3 4 )
を用 いることにより,立 体 選 択 的 に合 成 できると考 えた.また,側 鎖 フラグメント であるビニルヨージド I は,1-bromo-3-methylbut-2-ene と 2-propyn-1-ol から Sharpless 不 斉 エ ポキシ化 反 応 を含 む既 知 の方 法7 2 )にて立 体 選 択 的 に得 られるプロパルギルアルコール 97 から
第 一 節 5-Exo 型 One-pot シクロペンタン合 成 法 によるシクロペンタンフラグメントの
合 成
本 節 では,合 成 計 画 に従 い 5-exo 型 one-pot シクロペンタン合 成 法 によるシクロペンタン G の 合 成 およびシクロペンタンフラグメント F の合 成 について述 べる. Geraniol から既 知 の工 程 7 1 )で合 成 可 能 であるアルコール 96 に対 し,CH2Cl2溶 媒 中 0 °C で pyridine および p-TsCl を作 用 させトシラート 98 を 90%収 率 で得 た後 ,MeOH 溶 媒 中 で K2CO3を作 用 させることにより Ac 基 を除 去 し,アリルアルコール 99 を 94%収 率 で得 た (Scheme 29).アリルアルコール 99 に対 しL-(+)-DIPT を用 いた Sharpless 不 斉 エポキシ化 反 応3 1 )を行 い, 光 学 活 性 なエポキシアルコールとした後 ,acetone 溶 媒 中 で NaI および NaHCO3を作 用 させヨヨージド 101 を 95%収 率 で得 た.
脱 離 基 としてヨウ素 を有 するエポキシヨージド 101 が得 られたので,第 二 章 にて述 べた 5-exo 型 one-pot シクロペンタン合 成 法 を適 用 した.まず,allyl phenyl sulfone (2.3 equiv.)の THF 溶 液 に−78 °C で n
BuLi (2.2 equiv.)を加 え,0 °C に昇 温 することで allyl phenyl sulfone 由 来 のス ルホニルカルボアニオンが発 生 し,溶 液 が黄 色 へと変 化 した (Scheme 30).この黄 色 溶 液 を −78 °C へと冷 却 した後 エポキシヨージド 101 の THF 溶 液 を加 え,反 応 温 度 を−20 °C に昇 温 し, TLC にて原 料 の消 失 を確 認 した.その後 再 び−78 °C に冷 却 し,nBuLi (1.2 equiv.)を加 え,反 応 温 度 を−20 °C に昇 温 することでアニオンを再 発 生 させると反 応 溶 液 は橙 色 へと変 化 した.こ の橙 色 溶 液 を−78 °C に冷 却 し,Me3Al を作 用 させたところ,反 応 溶 液 は赤 色 へと変 化 し,TLC にて反 応 の進 行 を確 認 した後 ,1.0 M HClaq.にて後 処 理 を行 ったところ.望 む立 体 化 学 を有 す るスルホニルシクロペンタン 102 が単 一 の生 成 物 として 98%収 率 で得 られた.得 られたスルホニ ルシクロペンタン 102 の C-3 位 および C-7 位 の相 対 配 置 は,その NOESY スペクトルより決 定 し た.すなわち,102 の NOESY スペクトルでは C-2 位 のメチンプロトンと C-17 位 のメチルプロトン 間 に NOE 相 関 が観 測 されたことからビニル基 とメチル基 は cis 配 置 であり,C-3 位 および C-7 位 の相 対 配 置 を図 のように決 定 した.
本 反 応 の立 体 選 択 性 の発 現 については次 のように考 察 している (Fig. 19).Allyl phenyl sulfone 由 来 のアニオンとエポキシヨージド 101 のアルキル化 により生 じるエポキシスルホン 103 は系 内 の塩 基 により再 度位 の脱 プロトン化 を受 け,さらに Me3Al の添 加 によりスルホニルカル
在 するが,アニオン 103b はエポキシドの側 鎖 部 位 とフェニルスルホニル基 との間 に大 きな立 体 障 害 が存 在 するため、この平 衡 はアニオン 103a へと大 きく偏 っており,その結 果-スルホニル シクロペンタン 102 が選 択 的 に生 成 したものと考 えられる.
-スルホニルシクロペンタン 102 に対 し,CH2Cl2溶 媒 中 0 °C で 2,6-lutidine および TBSOTf
を作 用 させ第 二 級 水 酸 基 の保 護 を行 い,ビスシリルエーテルを定 量 的 に得 た後 ,MeOH 溶 媒 中 ,Na2HPO4および Na(Hg)を作 用 させたところ,二 重 結 合 の異 性 化 を伴 う脱 スルホン化 が進
第 二 節 側 鎖 フラグメントの合 成 と Xestenone 基 本 骨 格 の構 築
本 節 では,合 成 計 画 に従 い側 鎖 フラグメントであるビニルヨージド I の合 成 および第 一 節 にて 合 成 したシクロペンタンフラグメントであるエポキシド 109 とのカップリングによる xestenone の基 本 骨 格 の構 築 について述 べる. 側 鎖 フラグメントは 1-bromo-3-methylbut-2-ene と 2-propyn-1-ol から既 知 の方 法7 2 )で合 成 し た光 学 活 性 なプロパルギルアルコール 110 (93%ee)を用 いて合 成 した.プロパルギルアルコー ル 110 の DMF 溶 液 に imidazole および TBSCl を作 用 させシリルエーテル 111 を 97%収 率 で 得 た (Scheme 34).シリルエーテル 111 に対 し THF/HMPA 混 合 溶 媒 中 ,CuCN,nルヨージド 112 を得 た反 応 と,ビニルスズ化 合 物 の生 成 までは同 様 の過 程 を経 るはずである.し たがって,基 質 の分 解 の原 因 はビニルスズからビニルリチウムへのトランスメタル化 の段 階 にある ことが予 想 された.そこでビニルスズからビニルリチウムへの変 換 と比 較 し,より低 温 で進 行 するト ランスメタル化 として,ビニルマグネシウムからビニルリチウムへの金 属 交 換 を狙 い,MeMgBr お よび CuBr·Me2S を用 いる Avery らの方 法 7 7 )に従 い反 応 を試 みたが,本 反 応 条 件 ではカップリ ングの前 段 階 であるシリルエーテル 111 へのメチル基 の導 入 の段 階 で反 応 が進 行 せず,カップ リングには至 らなかった.
以 上 ,シクロペンタンフラグメントの反 応 性 向 上 を目 的 に C-8 位 /C-9 位 間 でのカップリングを 試 みたが,側 鎖 フラグメントであるアリルブロミド 117 はハロゲン−リチウム交 換 に対 し位 のシロキ シ基 の脱 離 が進 行 する ために求 核 試 薬 への変 換 が困 難 であった.そこで,側 鎖 フラグメントの 安 定 性 の向 上 を目 的 とし,Horner-Wadsworth-Emmons 反 応 4 6 - 4 8 )を用 いる C-10 位 /C-11 位 間 でのカップリングについて検 討 を行 った (Fig. 22). シクロペンタンフラグメントの合 成 は第 一 節 にて述 べた合 成 中 間 体 であるアセトニド 107 に対 し THF/H2O 混 合 溶 媒 中 45 °C で HIO4·2H2O を作 用 させたところ,アセトニドの脱 保 護 ,1,2-ジ オールの酸 化 的 開 裂 ,ヘミアセタール形 成 が一 挙 に進 行 した (Scheme 41).得 られたヘミアセ タ ー ル は 不 安 定 で あ っ た た め , 単 離 す る こ と な く Et2O 溶 媒 中 −78 °C で allylmagnesium bromide を作 用 させた後 ,0 °C に昇 温 したところホモアリルアルコール 119a および 119b がそれ ぞれ二 工 程 収 率 50%,36%で得 られた.なお,これらのジアステレオマーはシリカゲルカラムクロ マトグラフィーで容 易 に分 離 可 能 であった. ジオール 119a および 119b の C-8 位 水 酸 基 の立 体 配 置 は,それらをテトラヒドロフラン 120a および 120b へと誘 導 し決 定 した.すなわち,ジオール 119a および 119b に対 し,それぞれ CH2Cl2溶 媒 中 で,DMAP,Et3N 存 在 下 p-TsCl を作 用 させたところ,C-2 位 の水 酸 基 のトシル 化 と同 時 に C-8 位 水 酸 基 からの分 子 内 SN2 反 応 が進 行 し,テトラヒドロフラン 120a および 120b
ンプロトン,C-2 位 メチンプロトンと C-3 位 メチンプロトン,C-2 位 メチンプロトンと C-8 位 メチンプロ トン,C-3 位 メチンプロトンと C-17 位 メチルプロトン,C-8 位 メチンプロトンと C-17 位 メチルプロト ン間 にそれぞれ NOE 相 関 が観 測 されたことから C-2 位 および C-8 位 の側 鎖 は cis 配 置 であり, ジオール 119b の C-8 位 の立 体 配 置 は S 配 置 であることが確 認 された. ジオール 119a および 119b の C-8 位 水 酸 基 は後 に酸 化 してケトンとするため,どちらも後 の 合 成 に用 いることが可 能 であると考 えられたが,実 際 に先 の工 程 に進 んだところジオール 119b からの反 応 では C-8 位 の立 体 化 学 の何 らかの影 響 により後 の工 程 の収 率 が低 下 することが判 明 したため,この段 階 でジオール 119a への変 換 について検 討 した.ジオール 119b に対 し, DMF 溶 媒 中 で imidazole 存 在 下 ,TBDPSCl を作 用 させ,C-2 位 水 酸 基 を選 択 的 に TBDPS 基 で保 護 した後 ,得 られたシリルエーテルを CH3CN 溶 媒 中 ,IBX を加 え還 流 し,C-8 位 水 酸 基
を酸 化 しケトンを得 た (Scheme 43).得 られたケトンの MeOH 溶 液 に NaBH4を加 え還 流 したと
次 に,合 成 計 画 に従 い,ジオール 119a に対 し,末 端 二 重 結 合 の酸 化 的 開 裂 を行 い,シクロ ペンタンフラグメントに相 当 するアルデヒド M への変 換 を行 った.すなわち,アルコール 119a に 対 し CH2Cl2溶 媒 中 0 °C で 2,6-lutidine 存 在 下 ,TBSOTf を作 用 させ C-2 位 および C-8 位 水 酸 基 を TBS 基 にて保 護 し,ビスシリルエーテル 121 を 99%収 率 で得 た (Scheme 44).得 られた ビスシリルエーテル 121 に対 し,オゾン酸 化 を行 った.本 反 応 では,中 間 体 であるオゾニドが,精 製 後 ,重 クロロホルム溶 媒 中 で NMR 測 定 を行 うことが可 能 であるほどに安 定 であり,Me2S を用 いる還 元 処 理 では反 応 は全 く進 行 せず,条 件 検 討 の結 果 ,MeOH 溶 媒 中 ,AcOH,Zn および KI を用 いる還 元 条 件 でアルデヒド 122 を定 量 的 に得 ることができた. シクロペンタンフラグメントに相 当 するアルデヒド 122 が合 成 できたので,合 成 計 画 に従 い,既 知 の 方 法 7 9 )に 従 い 別 途 合 成 し た ホ ス ホ ナ ー ト 123 を 用 い た Horner-Wadsworth-Emmons
(HWE)反 応4 6− 4 8 )による側 鎖 フラグメントとの結 合 を検 討 した (Table 4).Entry 1 では塩 基 として DBU,添 加 剤 として LiCl を用 いて反 応 を行 ったが,望 む HWE 反 応 は進 行 せず,アルデヒド
122 の C-9 位 プロトンの脱 プロトン化 による E1cB 反 応 が進 行 した,-不 飽 和 アルデヒド 125 が
脱 保 護 に至 らなかったものと考 え,entry 3 および 4 は PPTS および Amberlyst-15®を用 いたとこ ろ,Tr 基 の脱 保 護 とオレフィンが異 性 化 したアルコール 131 が生 成 した.TLC により反 応 の進 行 を追 跡 したところ,entry 3 および 4 では Tr 基 の脱 保 護 が進 行 する前 に二 重 結 合 の異 性 化 が 進 行 した,-不 飽 和 ケトン 130 を経 由 していることが判 明 した.以 上 の検 討 により,プロトン酸 を 用 いた脱 保 護 では,先 に二 重 結 合 の異 性 化 が起 こり,その後 Tr 基 の脱 保 護 が起 こるという反 応 順 は変 化 しないと考 えられたため,以 降 の検 討 では Lewis 酸 を脱 保 護 に用 いることとした. Entry 5 では MgBr2·OEt2を用 いたが,反 応 開 始 直 後 に基 質 の分 解 が確 認 された.次 に,entry
6 では Et2AlCl を用 いたところ,反 応 開 始 5 分 で反 応 停 止 すると,望 む脱 保 護 体 129 が主 生 成
物 として確 認 されるものの,本 条 件 は反 応 速 度 がとても速 く,反 応 のスケールを大 きくすると,二 重 結 合 の異 性 化 の進 行 した 131 の生 成 が増 加 し,再 現 性 良 く生 成 物 を得 ることができなかった. また,反 応 時 間 を 3 時 間 とすると,完 全 に二 重 結 合 の異 性 化 の進 行 した 131 を 78%収 率 で与 えるのみであった.そこで entry 7 では,より弱 い Lewis 酸 として Yb(OTf)3を用 いたところ,予 想
通 り反 応 は穏 やかに進 行 し,反 応 時 間 を 3 時 間 としても過 反 応 の進 行 した 131 の生 成 は 6%収 率 に留 まり,望 む脱 保 護 体 である,(3R,7S,12RS)-secoxestenone (129)を 79%収 率 で得 ることが できた.
弱 い Lewis 酸 である Yb(OTf)3を用 いることで,(3R,7S,12RS)-secoxestenone (129)を収 率 良
く得 ることができたものの,この段 階 に至 っても C-12 位 の水 酸 基 に関 するジアステレオマー混 合 物 を分 離 することができなかったため,混 合 物 のまま Andersen らの条 件 7 0 )に従 い,xestenone
ころ,分 子 内 アルドール縮 合 が円 滑 に進 行 し,(3S,7S,12RS)-xestenone (94 および epi-94)の混 合 物 が 88%収 率 で得 られた (Scheme 46).このジアステレオマー混 合 物 はシリカゲルカラムクロ マトグラフィーおよび順 相 HPLC では分 離 が困 難 であったため,ダイセル社 製 キラルカラム CHIRALPAK IA®を用 いて分 離 を試 みたところ,保 持 時 間 の短 い生 成 物 94 と保 持 時 間 の長 い 生 成 物 epi-94 を分 離 することに成 功 した.なお,94 が天 然 物 (3S,7S,12R)-xestenone であること を後 述 の解 析 により確 認 しているため,ここでは予 め立 体 化 学 を示 している. 得 られた 94 および epi-94 の C-12 位 の水 酸 基 の絶 対 配 置 は,Mosher−Trost 法 8 3 )を適 用 す ることにより決 定 した (Fig. 23).すなわち,94 に対 し,CH2Cl2溶 媒 中 で DCC および DMAP 存
在 下 ,(S)-および(R)--methoxy--phenylacetic acid (MPA) を別 途 作 用 させ(S)-MPA エステル
132a および(R)-MPA エステル 132b とし,それぞれの 1H-NMR を測 定 した.水 素 の帰 属 を行 っ