• 検索結果がありません。

5-Endo 型 One-pot シクロペンタン合 成 法 によるシクロペンタンフラグメントの合 成

本 節 では,合 成 計 画 に従 い5-endo型one-potシクロペンタン合 成 法 および立 体 選 択 的 脱 ス ルホニル化 によるシクロペンタンフラグメント Pの合 成 について述 べる.

4-Hydroxybutan-2-oneから既 知 の方 法9 5 )に基 づき三 工 程 で合 成 したアルコール135に対 し,

D-(−)-DIPT を用 いたSharpless 不 斉 エポキシ化 反 応 3 1 )を行 い,光 学 活 性 なエポキシアルコー ル136を97%収 率 で得 た (Scheme 48).エポキシアルコール136の光 学 純 度 は,Chirabite-AR を用 いて決 定 した.7 3 ) まず,別 途 調 製 したラセミ体 のエポキシアルコールrac-136を75 mol%の Chirabite-ARと混 合 し1H-NMRを測 定 し,C-9位 プロトンのピークが良 好 な分 離 を示 すことを確 認 した後 ,合 成 したエポキシアルコール 136を同 様 に 75 mol%のChirabite-AR と混 合 し

1H-NMRを測 定 した.その結 果 ,エポキシアルコール 136由 来 のピーク及 びエナンチオマーに

由 来 するピークの積 分 比 が 71 : 1となり,これより光 学 純 度 を>95%eeと算 出 した.エポキシアル コール 136の第 一 級 水 酸 基 をBnBr,NaHおよび TBAIによりBn 基 にて保 護 してベンジルエ ーテル137を得 ,次 にDDQを用 いてMPM基 の脱 保 護 を行 いアルコール138を得 た.この際 , MPM 基 の脱 保 護 の際 に汎 用 されるCH2Cl2/H2O (10 : 1)混 合 不 均 一 溶 媒 にて反 応 を行 うと,

酸 による基 質 の分 解 が進 行 し生 成 物 を得 ることができなかったが,CH2Cl2/sat.NaHCO3aq.

(10 : 1)混 合 不 均 一 溶 媒 を用 いることで基 質 の分 解 をほぼ抑 えることができた.さらに生 じた第 一 級 水 酸 基 を CH2Cl2溶 媒 中 I2,Ph3P およびimidazole を用 いてヨウ素 化 し,合 成 計 画 の R に相 当 する 5-endo型 one-potシクロペンタン合 成 の反 応 基 質 となるエポキシヨージド139 を三 工 程 収 率 91%にて得 た.

続 いて,得 られた光 学 活 性 なエポキシヨージド 139に 5-endo型 one-pot シクロペンタン合 成 法 を適 用 した.まず,methallyl phenyl sulfone (1.30 eq uiv.)に対 してTHF 中−78 °Cで nBuLi (1.25 equiv.)を加 え,そのままの温 度 で 30分 間 撹 拌 することで methallyl phenyl sulfone 由 来 のスルホニルカルボアニオンを調 製 した (Scheme 49).このとき溶 液 は黄 色 へと変 化 する.この 黄 色 溶 液 に対 し,−78 °Cで,エポキシヨージド 139のTHF溶 液 を加 え,反 応 温 度 を18時 間 か

けて−45 °Cに昇 温 し,TLCにて原 料 の消 失 を確 認 した.その後 再 び−78 °Cに冷 却 し,nBuLi (2.00 equiv.)を追 加 し,15分 間 撹 拌 しアニオンを再 発 生 させると反 応 溶 液 は橙 色 へと変 化 する.

この橙 色 溶 液 を−78 °C へ冷 却 し,Me3Alを作 用 させた後 ,反 応 温 度 を−55 °Cに昇 温 し2.5時 間 撹 拌 したところ,反 応 溶 液 は赤 色 へと変 化 した.TLCにて反 応 の進 行 を確 認 した後 ,1.0 M

HClaq.にて後 処 理 を行 ったところ.望 む立 体 化 学 を有 するスルホニルシクロペンタン 140が単

一 の生 成 物 として99%収 率 で得 られた.得 られたスルホニルシクロペンタン140のC-4位 および C-9 位 の相 対 配 置 は,その NOESYスペクトルより決 定 した.すなわち,140の NOESYスペクト ルではC-3 位 の-メチンプロトンとフェニルスルホニル基 のortho 位 プロトン間 ,C-8位 メチレン プロトンと C-10位 メチルプロトン間 ,C-3 位 の-メチンプロトンとC-9 位 メチンプロトンおよびC-9 位 のメチンプロトンと C-11位 メチルプロトン間 にそれぞれ NOE相 関 が確 認 されたことからフェニ ルスルホニル基 とベンジロキシメチル基 はcis配 置 であり,C-4位 およびC-9位 の相 対 配 置 を図 のように決 定 した.

本 反 応 の推 定 機 構 および立 体 選 択 性 の発 現 は以 下 の様 に考 察 している.すなわち,

methallyl phenyl sulfone とnBuLi により調 製 されたスルホニルカルボアニオンとエポキシヨージ ド139のアルキル化 により生 じるエポキシスルホン141は系 内 の塩 基 により脱 プロトン化 を受 け

位 に再 度 アニオンを生 じる (Fig. 28).これにLewis酸 としてMe3Alを作 用 させるとエポキシドの 活 性 化 が進 行 し,アニオン 141b および141c の平 衡 状 態 となる.このときアニオン 141bではベ ンジルオキシメチル基 とフェニルスルホニル基 との間 に大 きな立 体 障 害 が存 在 するため,この平 衡 は 141cへと大 きく偏 っており,その結 果 フェニルスルホニル基 が配 置 となる140が優 先 して 生 成 したものと考 えられる.

次 に,5-endo型 one-potシクロペンタン合 成 法 により得 たスルホニルシクロペンタン 140 に対 し,合 成 計 画 に従 い脱 スルホン化 を試 みた.第 三 級 スルホンの脱 スルホン化 には,一 電 子 還 元 の適 用 が通 例 であるが,本 基 質 に対 して一 電 子 還 元 条 件 である Birch 還 元 9 3 )やMeOH 溶 媒 中 Na(Hg)5 4 )を用 いると,脱 スルホン化 とともに二 重 結 合 の異 性 化 が確 認 された.そこで Pd触 媒 を用 いた-allyl 錯 体 経 由 のヒドリド付 加 反 応 により脱 スルホン化 を行 うこととした.

まず,予 備 検 討 において,アリルスルホンに対 して良 好 な-allyl 錯 体 形 成 能 を示 した

PdCl2(dppp)をPd 触 媒 として用 い,ヒドリド源 の選 定 を行 った (Table 7).Entry 1 ではNaBH4, entry 2 では LiBHEt3をヒドリド源 としてそれぞれ用 いた.しかし望 む生 成 物 である142 は得 られ ず,二 重 結 合 が異 性 化 した 144が得 られるのみであった.Entry 3 ではヒドリド源 としてHCO2H および Et3N から系 内 で調 製 したアンモニウム塩 を用 いたところ低 収 率 且 つ低 立 体 選 択 性 なが らも二 重 結 合 の異 性 化 を起 こすことなく142および143が生 成 したためヒドリド源 として本 条 件 を 用 いることとした.また,Pd触 媒 はPdCl2(dppp)の代 わりにPd2(dba)3·CHCl3nBu3Pとともに用

いた entry 4 において十 分 な収 率 が得 られたためこの組 み合 わせを採 用 することとした.次 に

entry 5 で THF溶 媒 中 還 流(b.p. 66 °C)することで収 率 の向 上 が見 られたため,反 応 溶 媒 を THF から1,4-dioxane へと変 更 し,さらに反 応 温 度 を上 昇 させたところ,entry 8 で1,4-dioxane 溶 媒 中 還 流(b.p. 101 °C)で望 む142を91%収 率 ,4-epi体 である143を4%収 率 でそれぞれ得 た.Entry 9ではPd触 媒 を0.01当 量 へと減 らして反 応 を行 ったがentry 8と比 較 して立 体 選 択 性 が低 下 した.また,entry 10ではリガンドをPh3Pへ変 更 して反 応 を行 ったが,entry 4と比 較 し て収 率 が低 下 した.以 上 の検 討 により本 反 応 の最 適 条 件 として entry 8 の条 件 を用 いることとし た.

また,シクロペンタン142および4-epi体143の相 対 配 置 は,そのNOESYスペクトルより決 定 した (Fig. 29).すなわち,142の NOESYスペクトルでは C-4位 のメチンプロトンとC-10 位 メチ ルプロトン間 ,C-8 位 メチレンプロトンとC-10 位 メチルプロトン間 ,C-9 位 のメチンプロトンとC-11 位 メチルプロトン間 にそれぞれ NOE 相 関 が確 認 されたことからイソプロペニル基 は配 置 であり,

C-4位 およびC-9位 の立 体 配 置 は4S,9Sと決 定 した.また,4-epi 体 143のNOESYスペクトル では C-8位 のメチレンプロトンと C-10位 メチルプロトン間 ,C-8位 メチレンプロトンと C-11位 メチ ルプロトン間 ,C-4 位 のメチンプロトンとC-9位 メチンプロトン間 にそれぞれ NOE相 関 が確 認 さ れたことからイソプロペニル基 は配 置 であり,C-4位 およびC-9位 の立 体 配 置 は4R,9Sと決 定 した.

本 反 応 の位 置 選 択 性 および立 体 選 択 性 の発 現 は以 下 の様 に考 察 した (Fig. 30).本 反 応 においては,まずスルホニルシクロペンタン 140に対 して,HCO2H とEt3N により系 内 で生 じたア ンモニウム塩 の存 在 下 ,Pd(0)が作 用 し,立 体 反 転 を伴 い-allyl 錯 体 144aを生 じる.これが

-allyl錯 体 へと異 性 化 し,144bおよび 144cとなる.-Allyl錯 体 144b144cは単 結 合 の回 転 による回 転 異 性 体 であるが,C-8 位 のベンジルエーテルの酸 素 原 子 とPd 原 子 の間 にキレー ションが存 在 するため,この回 転 異 性 体 は144cへと大 きく偏 る.この状 態 で脱 炭 酸 を伴 うヒドリド 移 動 が進 行 することで望 む立 体 化 学 を有 する 142 が優 先 して得 られたものと考 えられる.

脱 スルホン化 により得 られた 142に対 し液 体 アンモニア中 金 属 Na を作 用 させ,C-8 位 水 酸 基 の Bn 基 を脱 保 護 し,アルコール145 を得 た (Scheme 50).さらに生 じた第 一 級 水 酸 基 を

IBX 酸 化 6 0 )し,合 成 計 画 のシクロペンタンフラグメントPに相 当 するアルデヒド 146を二 工 程 収

率 95%で得 た.

以 上 ,本 節 では sinularianin B のシクロペンタンフラグメントであるアルデヒド 146の合 成 につ いて述 べた.本 合 成 では,5-endo型 one-potシクロペンタン合 成 法 を用 いることで立 体 選 択 的 に第 三 級 水 酸 基 を環 内 に有 するシクロペンタンを効 率 的 に得 ることができた.次 節 ではシクロヘ キセンの構 築 によるtrans-5,6縮 環 構 造 および-spirolactoneの構 築 によるsinularianin Bの全 合 成 について述 べる.

関連したドキュメント