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1-アシルー1-チオカルボカチオンを用いる合成反応

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(1)

1‑アシルー1‑チオカルボカチオンを用いる合成反応

著者 田村 恭光, 石橋 弘行

著者別表示 Tamura Yasumitsu, Ishibashi Hiroyuki

雑誌名 有機合成化学協会誌

巻 40

号 7

ページ 658‑666

発行年 1982‑07‑01

URL http://hdl.handle.net/2297/3679

(2)

新しい試薬

1-アシルートチオカルボカチオンを 用いる合成反応

田村恭光鵜・石橋弘行“

1-Acyl-1-thiocarbocationsinOrganicSynthesis.

YasumitsuTAMuRA*andHiroyukiIsHIBAsHI*

Thecarbon-carbonbondformingreactionsofl-acyl-1-thiocarbocationsaredescribed、Thecat‐

ionscaneasilybegeneratedfroma-acyl-a-chlorosulfidesundertheFriedel-Craftsreactioncon・

ditionsorfroma-acylsulfoxidesunderthePummererreactionconditionsThereactionsareclassi‐

fiedmtothefollowingfourfeatures:1)electrophilicaromaticsubstitution,2)enereaction,3)

olefincyclization,and4)cationicpolarcycloadditionApplicationsofthesereactionstosynthe‐

sesofsomemedicinesandnaturalproductsarealsomentioned.

川,米光らは,β-ケトスルホキシド1aがPummerer反 応条件下,α-チオ炭素カチオン2を経て閉環して3を与 えることを報告し2),その後,このようなα-チオ炭素カ チオンと電子の豊富な芳香環との分子内閉環反応が,複 素環化合物の合成等に,広く利用し得ることが明らかに された(例えば,4→53),6→74))。著者らは最近,硫黄原 子とアシル基(ニトリル基を含む)に隣接した炭素カチ オン8(1-アシルー1-チオカルポカチオン)が極めて一 般性の高い,興味ある炭素一炭素結合形成反応を行うこ とを見出した。本稿では,これらの反応および,その医 薬品,天然有機化合物合成への応用について,著者らの 研究を中心に紹介したい。

1.はじめに

硫黄原子がα-炭素上の陽イオンを安定化させる性質を 有することは,よく知られており,このα-チオ炭素カチ オンを用いる合成反応としては,Pummerer反応がその 代表的な反応で,炭素一ヘテロ原子結合形成の有用な手 段として,現在,広く利用されている')。一方,このカ チオン種を用いる炭素一炭素結合形成反応に関しては,

有用な反応がほとんど知られていなかった。1972年,及

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R11-CH2-R2

ン{ 、「ノ

R’=CH30rPh

810

R2=COOR,COR,CONR2,CN

2.カチオンの発生法

カチオン8は,α-アシルーα-クロロスルフイF9をル イス酸処理するか(Friedel-Crafts反応条件下),もし くは,α-アシルスルホキシド10を酸または酸無水物処 理すること(Pummerer反応条件下)により,容易に発 生させることができる*')。

*大阪大学薬学部(565大阪府吹田市山田丘1-6)

*FacultyofPharmaceuticalSciences,Osaka University(l-6Yamada-oka,Suita,Osaka565,

Japan)

-658-

(3)

1-アシルー1-チオカルポカチオンを用いる合成反応

(59) 659

よい結果を与える。たとえば,アニソールとの反応で,

SnCl4を用いるとα,α-ジアリール酢酸エチル15の副生 を伴う。また,反応温度に関しては,クロロベンゼンと の反応が還流条件を必要とする以外は,氷冷下または室 温で円滑に反応が進行する。なお,安息香酸エステルと の反応では,還流条件下でも成績体を得ることができな い。このような12aの反応の優れた結果は,(メチルチ オ)メチルクロリド16とベンゼンとのF・C反応によ る成績体17の収率がわずか35%であること⑩),と比 較しても興味深い。

鵬oC( 鵬`c「`…ハ‘い`い’0MW,

15 16 17

F.C反応成績体13は,ラネーニッケノレまたは亜鉛末 一酢酸による脱硫によって,高収率でフェニル酢酸エチ ル誘導体14に導くことができる。亜鉛末一酢酸による 脱硫の結果を表1に示す。14cおよび14fは,加水分解 することによって,さらに抗炎症剤イプフェナック18お よびアルクロフェナック19に,それぞれ導くことがで きる。また,14mより得られる2-チエニル酢酸20は,

ペニシリン,セファロスポリンの有力な化学修飾剤であ る'1)。

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18ibufenacl9alclofenac

Ocぃ。叩

20

以上のように,クロリド12aのF・C反応Iま,操作が 簡便で,収率も大変よいことから,芳香環への酢酸基の 導入法として,合成化学上,極めて有用と思われる。

3.2.フエニルアセトンおよびフエニルアセトニトリ ル誘導体の合成'2)12aのエステル基の代りに,ケトン またはニトリル基が置換しても,F・C反応は同様に好 3.α-アシルーα-(メチルチオ)メチルクロリドと芳

香族化合物とのFriedeI-Crafts反応

クロロ酢酸エチルとベンゼンとのFriedel-Crafts反 応(以下,F、C反応と略称)でフェニル酢酸エチルを得 ようとしても,ポリエチルベンゼンが得られるだけであ り5),また,モノクロロアセトンとベンゼンとのF、C 反応によるフェニルアセトンの収率は,極めて低いこと が知られている6)。このように,F、C反応による芳香 環の直接アシルメチル化が一般に困難である理由として は,この反応の親電子錯体’1の反応活性が,電子吸引 基が存在するために弱められているためと,考えられる。

ところが,アシルメチルクロリドのα位にメチルチオ基 を導入した,2は,芳香族化合物と,緩和な条件下,収率 よくF・C反応を行うことがわかった。

6-6+

fCH3

A1C13-C1…CH2-CORCl-CH-R

ml2a-d a:R=COOEt,b:R=COMe c:R=COPh,。:R=CN

3.1.フエニル酢酸誘導体の合成7,8)クロリド12a

*2)を当モルのSnCl4存在下,大過剰のベンゼンと室温 で反応させると,α-(メチルチオ)フェニル酢酸エチル 13a(Ar=C6H5)が91%の収率で得られる。この反応 を詳細に検討したところ,1)ルイス酸は12aに対して

LeWis

,w÷q-iIU:。。c丸型一‘r-i1ui0oリ,

12al3 Zn

--ArCH2COOC2H5

AcOH 14

当モル必要で,ポリアノレキル化体は全く与えない,2)こ の反応は塩化メチレン中,2aとベンゼンの当モルの反応 でも収率よく進行する(87%),3)ルイス酸の活性の 順序はSnCl4=AlCl3>TiCl4>ZnCl2である,などのこ とが明らかとなった。12aと他の芳香族化合物との反応 の結果を表,に示す。これら反応は,_般的にSnCl4を 用いて行うことができるが,アニソールとかチオフエン,

フランなど反応性の高い芳香環との反応の場合には,

TiCl4またはZnCl2のような弱いルイス酸を用いる方が,

fCH3LeWiS ArH+C1-CH-R竺辺--

12b,c,。21R=COMe b,R=CONe22R=COPh c,R=COPh23R=CN d,R=CN

Zn

--ArCH2R AcOH

24R=COMe 25R=CN

fCH3

Ar-CH-R

*1)9のFriedel-Crafts反応条件下での反応は,おそらくルイス酸 とからなる親電子錯体が反応種と考えられるが,本稿では,形式的に カチオン8を経たものとして取り扱う。

*2)対応するスルフイドをN-クロルコハク酸イミド(NCS)でクロル 化することにより得られるの。

(4)

有機合成化学第40巻第7号(1982)

660 (60)

TabIelFriedel-Craftsreactionofl2awitharomati6compounds,andreductionofl3tol4.

Friedel-Craftsreactionofl2a Reductionofl3

Reactionconditionsa) Product Product Arinl3andl4 ArH Cat./Temp/

Time(min)

ArHm2a No. %Yield No. %Yield

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67 71

a)AUreactionswerecarriedoutinmethylenechlorideb)

e)YieldsarebasedonArHf)Yieldsarebasedonl2a. notexaminedc)o/P=1/4..)。/P=2/5

収率で進行する。クロリド12b~。*2)と種々の芳香族化 合物との反応の結果および成績体21,23の脱硫(亜鉛末 一酢酸)によるフェニルアセトン24およびフェニルア セトニトリル誘導体25への変換の結果を表2に示す。

12bの反応は一般に,TiC14を用いると収率が悪く,

SnCl4を用いるとよい結果が得られる。

3.3.NonacticAcid合成への応用'3)Nonacticacid 27はマクロライド抗生物質nonactinの構成ユニットで ある。これまで述ぺてきたF・C反応を利用すると,以 下に示すルートで,Gerlachら'4)の27の重要合成中間 体26が得られる。

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鱸入1曲…す腱心い…

26 Ne

-,,.〆llLiPl『tc..‘ ̄….

27

4.Pummerer反応を用いる芳香族親電子 置換反応'5)

先にも述ぺたように,及川,米光らの反応(1a→3)は,

Pummerer反応を利用した炭素一炭素結合形成反応の優 れた反応例である。もし,この反応が分子間反応に応用

SIIe C1-CHCOOMe

--

ZnC12

59%

G9HcooMo

SMe

_u-u2uL2EE--

2)Mel

87%

(5)

1-アシルー1-チオカルポカチオンを用いる合成反応 661 (61)

TabIe2Friedel-Craftsreactionofl2b-dwitharomaticcompounds,andreductionof 21and23to24and25.

Reductionof21,23 Friedel-Craftsreactionofl2b,12c,andl2d

Arm21,22,23,

24,and25 Product

Product Reactionconditionsa)

ArH

12 Cat./Temp/

time(min) No. %Yield No. %Yield ArH:12

on代r没翰も⑩0000繊囎も⑩

ⅡⅡ

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1:1

111111

●●●●●●●●●●●● 111112

2:1

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00

1:1

111 ●●●●●●

111

Allreactionswerecarriedoutlnmethylenechlorideexceptwiththereactionswithbenzene.b)notexamined. O/'=1/6..)O/P=3/7.e)O/P=2/3.f)Yieldsarebasedonl2b.

、ノ、ノac

できれば,前述12のF・C反応と同様に,この反応も芳 香環への炭素基導入の新しい方法となることが期待され る。

まず最初の試みとして,α-(メチルスルフィニル)酢酸 エチル28と大過剰のベンゼンとの反応を,CF3COOH または(CF3CO)20を用いて行ったところ,ジチオアセ タール29または通常のPummerer反応成績体30が,

それぞれ得られるだけであった。これらの成績体は,反 応中生成するH20やCF3COO-が,ベンゼンよりも優 先的にカチオン8に攻撃して,生成したものと考えられ る。このことは1bの分子内反応においても認められる。

すなわち,1bを(CF3CO)20で処理しても閉環は起こら

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-(CH3S)2CHCOOC2H50rCH3SfHCOOC2H5

oCOCF3

29

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30

1b 31

ず,3,のみを与える2)。そこで,著者らは,比較的求核 性の弱い対陰イオンを生ずると考えられるカーTsOHを

○ つ

(6)

有機合成化学第40巻第7号(1982) (62)

662

用い,次のような反応条件で目的の反応を達成すること ができた。

すなわち,28のベンゼン溶液を2当量の無水P-TsOH 存在下,Dean-Stark(D-S)装置を用いて1時間還流を 行ったところ,13aが88%の高収率で得られた*3)。ベ

ArⅡザ。H31cぃ。。cハニーニLビニエニlLAr-iIU:o0c2H,

…(儲"鴛樽「篤

いC-oj0⑳ C'(13f)(139)(131)

ンゼンの代りに,トルエンまたはクロロベンゼンを用い ても同様に反応は進行し,13b,139をそれぞれ89%,

60%の収率で与える。この反応で,電子豊富な芳香環の 場合は,これを28に対して当モルを用い,ジクロロエ タン中,上と同様の操作を行えば,目的物を収率よく得 ることができる。イソプチルベンゼン,カーキシレン,0-

(アリルオキシ)クロロベンゼン,ナフタレンは,13c,13.,

13f,131をそれぞれ58%,55%,74%,62%の収率で与 える。

○m:L[CID〔ii腱]竺○〔ア(iMo

32a,b,c

蕊1蝋と1W鍛 加&。,…

fCH3

C1-CH-COCl 33

CH3SCH2COC1

36

アニリンを出発原料として用いるオキシインドールの 合成法の中で,最も簡単で一般的と思われる方法は,α-

ハロアセトアニリドをA1Cl3を用いて閉環させる方法で ある18)。しかし,この方法はAlCl3の精製が重要で,し かも反応は200℃近い高温を必要とする。著者らの方法 は,緩和な条件下で反応を行うことができ,満足すべき 収率で目的物を与えることから,オキシインドールの新

しい合成法として利用価値が高いと思う。

このオキシインドール合成法を利用すると,下図に 示すルートで抗炎症剤ジクロフェナック40が高収率で 合成できる。

5.分子内芳香族親電子置換反応

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39

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39

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Ar 40dichlofEnac

以上述べた芳香族親電子置換反応は,もちろん分子内 の反応にも有効で,以下のような種々の複素環化合物が 合成できる。

5.1.オキシインドールの合成16)_ジクロフエナック 合成への応用'7) アニリン32aを,塩化メチレン中ト リエチルアミン存在下,酸クロリド33でハルアシル化し,

生成するアミド34aを単離することなく,当モルのSnCl4 で処理すると,3-(メチルチオ)オキシインドール35aが,

32aから61%の収率で得られる。同様に,35bおよび35e が,32bおよび32cからそれぞれ94%,56%の収率で得 られる。一方,アニリン32a~cを酸クロロド36でN-ア シル化し,次いでメタクロロ過安息香酸で酸化すること により得られるアミド37a~cを2当量のP-TsOHで処理 すると,35a,35b,35cが,それぞれ5%,82%,86%の 収率で得られる。

上記反応で得られた35a~cは,ラネーニツケルで脱硫 することにより,好収率で38a~cに導くことができる。

5.2.その他の複素環化合物の合成ベンジルアミ ン41a,bを出発原料として用い,上記の反応を行うと,

1,4-ジヒドロー3(2H)-イソキノリノン42a,bが得られ る'6)。42a,bも,ラネーニッケルによる還元で43a,bに 好収率で導くことができる。同様に,クロリド44または スルホキシド45から1-アシルイソチオクロマン46が 好収率で得られる'`)。

*3)この反応で,D-S装置を用いないと,少壁の29が副生し,また,

P-TsOHの量を半分(1当量)に減らすと,D-S装置をつけても,13a の収率は極端に減少し,29との混合物(1:1)を与える。

(7)

(63) 1-アシノレー1-チオカルポカチオンを用いる合成反応 663

することなく,トルエン中で加熱すると,クロマト精製

後,ペリトリン52が64%の収率で得られる。ペリトリ

ンはA"αCycZus”γethmmDC・の根に含まれる殺虫

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CH2CHMe2

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44 6787 5910 86/14

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88/12 82/18

46 45

6.エン反応

*notdetermined

カチオン8はオレフィンとの反応でenophileとして ene反応を行う。

6.1.1-アルケンからElE-Z4-aIkadienoicesterの

合成'9)スルホキシド28のトリフルオロ酢酸溶液に,

氷冷下,当モルの(CF3CO)20および1-アルケン47

(n=2~7)を順次加え,後処理を行うと,ene反応成績

体48(n=2~7)が72~79%の収率で得られる。この反 応を塩化メチレン中で行うと,30が得られるだけである が,この30を再びトリフルオロ酢酸に溶かし,1-アル ケンと反応させると48が得られる。48は'3C-NMRの 検討で,E/Z比が約85-90/10-15であることがわかっ

た。48をNalO4で酸化し,生成するスルホキシドを単 離することなく,ベンゼン中で加熱すると,クロマト精

製後,E,E-2,4-alkadienoicester49が高収率で得ら

れる。

作用を有する物質で,今までに多くの合成法が報告され ているが,そのほとんどは対応するエステル49(n=5)

またはそのカルポン酸から導くものである。著者らの方 法は,これらを経ることなく,直接52が得られ,工程を 短縮できる。

7.オレフィン環化反応

1-アシルー1-チオカルポカチオンは,オレフィン環化 反応のinitiatorとしても優れた反応活性を示す。

7.1.五員環および六員環ラクタムの合成21)

スルホキシド53を塩化メチレン中,氷冷下当モルの (CF3CO)20で処理すると,6員環ラクタム54および55 が,それぞれ43%,35%の収率で得られる。同様の反 応を56について行うと,この場合は上と異なり,5員 環ラクタム57(jγα"s/cZs=69/31)が92%の収率で得 られる。58の場合にはPummerer反応成績体59が,定 量的に得られるだけであるが,これをさらにCF3COOH

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6.2.ペリトリンの合成20)α_(メチルスルフイニ ル)アセトアミド50と1-アルケンとの反応も円滑に進 行し,ene成績体51を好収率で与える。51(R1=H,R2=

CH2CHMe2)をNalO4で酸化し,スルホキシドを単離

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(8)

有機合成化学第40巻第7号(1982)

664 (64)

原子を炭素に置換えても,同様に閉環反応は進行する。

68の塩化メチレン溶液に,氷冷下当モルの(CF3CO)20 を加えると,まず最初に69の生成が観察されるが,室 温でさらに4時間反応させると,5員環ケトン70が70%

の収率で得られる24)。また,Manderら25)も,71から72 が65%の収率で得られることを報告している。

7.3ハノービニルーα-スルフイニルアセトアミドの酸接 触閉環反応一Erythrinane骨格の新合成法26)スルホ キシド73を塩化メチレン中,当モルの(CF3CO)20で 処理すると,閉環体76が22%の収率で得られる。この 反応は,Pummerer反応中間体74から75への環化を経 由していると考えられる。このタイプの反応は比較的起こ

りにくいとされている5-eMo-Dig型の閉環反応22,27)

で,その意味からこの反応は興味深い。

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一輔鵬]--○詞(i洲。

76 Ne

(溶媒)で処理すると,5員環ラクタム60および61が,

それぞれ9%,39%の収率で得られる。上記53,56,58 の閉環反応は,下図に示すルートで進行したものと考 えられる。

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54and5557

一般に,5-ヘキセニルカチオン63の環化反応は6-

eMo-Trig型22)で進行し,6員環64を与えるのが普通 で,5-eZo-T7q`g型閉環して5員環を与える場合は,生 成するカチオン65が極めて安定化される場合に限られ ている。このことから,56および58の閉環反応が,5 員環化合物のみを与えることは極めて興味ある゜Ben-

O-2二四2ニエエl2oi三里型-b

qii'柵…[てirIiIM1-lf;i'耐

Ishaiも66を酸処理すると5員環ラクタム67のみが得 られると報告しており23),環内のカルポニル基が環化の 方向の決定に重要な役割を果たしているのではないかと,

述べているが,著者らの結果もこれとよく一致する。53 の6員環形成は,おそらく,環化によって生成されるカ チオン62の高い安定性に基くものと思われる。

7.2.シクロペンタノン環の合成上記反応の窒素

i(CH3SCH2CO)20,C5H5NiiNalO4iii(CF3CO)20/CH2Cl2

上の反応で73の代りに77を用いると,一挙にerythri‐

nane骨格が合成できる。すなわち,77のジクロロエタ ン溶液を2当量の無水p-TsOH存在下,還流すると,

erythrinane誘導体78が60%の収率で得られる。この 際,少量(8%)のベンゾアゼピン誘導体79が副生する。

78の生成はPummerer反応中間体80の5-eMo-Tγig 型閉環反応によって生じた新しいカチオン81に対して 芳香環が分子内求核攻撃したものと考えられる。81のカ チオン中心であるアシルイミニウムイオンがオレフィン

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筆鶚 齢陥

69 70

鱸。oSTli鱸鶚.cSr

71 72

(9)

1-アシルー1-チオカルポカチオンを用いる合成反応 665

(65)

当モルのSnCl4存在下,スチレン,スチルペン,フエニ ルアセチレン等と[4++2]型のpolarcycloadditionを 行い,チオクロマンおよびチオクロメン誘導体86,87,

88を与える。この反応を分子内反応に応用すると,89か ら90(27%)が91(20%)と共に得られる。また,スル ホキシド92を58と同様の処理を行うと,90(33%),93 (21%),94(14%)が得られる3D。

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辿○〔>6“+"i〕ご>“

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91

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2)CF3COOH

OCOCF3

93

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89

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環化反応の強力なinitiatorであることは,すでに多くの 報告がなされている28)。二つの強力なオレフィン環化反応

のinitiatorによってなされた,このような一工程のery‐

thrinane骨格合成は,スピロ化合物の新しい合成手段と して興味深く,合成化学的価値が高いと思われる。78は 図に示すように,種々のerythrinane誘導体に導くこ

とができる。

77の芳香環をオレフインに変えた82も,同様に閉環 反応を行い,低収率ではあるが,83(13%)と84(4%)

を与える29)。

92

94

硫黄原子を含む系のpolarcycloadditionは,今まで ほとんど研究例がなく,ジチエニウムカチオン95の[2+

+4]型の反応が知られているだけである32)。上のような 新しい[4斗2]型の反応は含硫複素環化合物の新規合成 法として興味がもたれる。

M堅輔電 .;可゛ ズーロコql:

BF4 ̄

95

オレフィン環化反応の優れたinitiatorを求める研究が 最近活発に行われているが,上に述べたように,この1-

アシルー1-チオカルポカチオンはその新しいinitiatorと して,種々の環状化合物の合成に幅広く利用し得るもの と思われる。

8.CationicPoIarCycIoaddition3o)

9.おわりに

以上のように,1-アシルー1-チオカルポカチオンを用 いる炭素一炭素結合形成反応は,有機合成において,新 しい手法を提供し,医薬品または天然有機化合物を含む 多くの有機化合物の優れた合成法となることが明らかと なった。著者らは,このカチオン種の優れた反応活性を生 かした合成反応を,さらに発展させたいと考えている。

おわりに臨み,この研究に終始熱心な努力を惜しまな かった共同研究者,崔洪大,前田ひろし,上西潤一,

新堂裕久,石山幸一,上田祐子,赤井周司,水木康之,

水谷昌子,の諸氏に心から感謝の意を表します。

(昭和57年3月8日受理)

S上にフェニル基を有するα-クロロスルフイF85は,

。Ⅶ僻辿[。「章]四一

85aDboc

C〔i〕「(。〔i〕〔AC〔ドユハ

86a(72%)

87a(剛篭:I3Ili1

85bにOZ)

85c(60%)

a:R=CONHe2b:R=COOEtc:R=H

文献

1)沼田達雄,有合化,36,845(1978).α-ハロスル フィドを用いる合成反応の総説としてはHGross,

EH6ft,A719℃Z0.C)iem.,79,358(1967);新井

(10)

(66)

有機合成化学第40巻第7号(1982)

666

A・HBeckett,R,W,Daisley,J・Walker,

TetγαbeZjγo",24,6093(1968)

19)Y・Tamura,H、-,.Choi,H・Maeda,

HIshibashi,Tetγ`zhea7o〃“tt.,22,1343

(1981)

20)Y、Tamura,HMaeda,H-D・Choi,

HIshibashi,Sy〃thesjs,1982,56

21)Y、Tamura,H・Maeda,SAkai,KIshiyama,

H、Ishibashi,Tetγαh“γo〃Lett.,22,4301

(1981)

22)』.E・Baldwin,、八C/2cm・SOC.,Che、、CommTL".,

1976,734

23)DBen-Ishai,j6id.,1980,687

24)田村恭光,石山幸一,前田ひろし,石橋弘行,未

発表データ

25)L・NMander,H、C・Mundill,SWzthesjs,1981,

620

26)Y・Tamura,H・Maeda,SAkai,HIshibashi,

Tet7zzhed7o〃Lett.,inpress、

27)RGrigg,J・KemP,J・Molone,

A・Tangthongkum,JChem・SOC,Che、、

Comm皿私,1980,648andreferencescited

therein

28)HESchoemaker,J、Dijkink,W、N・Speckamp,

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H・ESchoemaker,W、N・Speckamp,j6fd.,36,

951(1980)

29)田村恭光,前田ひろし,赤井周司,石橋弘行,第 10回有機硫黄・リン化合物討論会講演要旨集,

p、86(1982)

30)YTamura,KIshiyama,Y・Mizuki,HMaeda,

HIshibashi,Tetγαhed7o〃Lett.,22,3773

(1981)

31)田村恭光,前田ひろし,赤井周司,石山幸一,

、石橋弘行,第14回複素環化学討論会講演要旨集,

p93(1981)

32)E、J・CoreylSW・Walinsky,J、A、、Che、、

SOC.,94,8932(1972)

和孝ゴー有合化,39,374(1981)がある.

2)Y、Oikawa,0.Yonemitsu,TBtmhed7℃〃比tt.,

」1972,3393;ノdem,Tetmhedγo",30,2653

(1974)

3)YOikawa,OYonemitsu,J、079.Che、.,41,

1118(1976)andseejaem,J・Che、、SOC.,

Peγ賊汀T7[、s、1,1976,1479

4)BM・Trost,M、Reiffen,M・Crimmin,J「.A、、

Che、、Soo,101,257(1979)

5)LRTsukervanik,1.V・Terent'eva,Dole!.

Acad・Mz弘jbSSSR,50,257(1945)[Che、、

A6stγ・’43,4638.(1949)]

6)J・P・Mason,L・LTerry,J・Am,Che、、Soo,

62,1622(1940)

7)YTamura,HShindo,J・Uenighi,H、Ishibashij

Tetmhed7o九Lett.,21,2547(1980)

8)Y・Tamura,H-DChoi,H・Shindo,HIshibashi,

Che、.P/Za7m.B似",30,915(1982)

9)H・B6hme,W・Krack,A""、Che、.,1977,51

10)HGrOss,G、Matthey,dzem・Beγ・'97,2606

(1964)

11)EH・Flynn,@℃ePhaZoSPo冗刀sα"dPe7zjcj"i"s,

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12)Y・Tamura,H-DChoi,M・Mizutani,

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mpress、

13)田村恭光,崔洪大,上田祐子,石橋弘行,未発 14)H・Gerlach,H・Wetter,HbZu.C/Zjm・Actα,57,

表データ

2306(1974)

15)Y・Tamura,H・-DChoi,HShindo,

J・Uenishi,H・Ishibashi,Tetγαbedγo〃Lett.,

22,81(1981)

16)Y・Tamura,J・Ueilishi,H・Maeda,H-DChoi,

H,Ishibashi,Sylzthesjs,1981,534

17)田村恭光)上西潤一,石橋弘行,未発表データ

18)W、C;SumPter,Che、、Reu.,37,443(1945);

参照

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