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感染症 Spot Diagnosis:皮疹・発疹を中心に

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Academic year: 2021

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Fig. 1 Varicella

感染症 Spot Diagnosis:皮疹・発疹を中心に

千葉大学大学院医学研究院小児病態学

石 和 田 稔 彦

Key words : exanthema, infectious disease

はじめに

発疹や皮疹を伴う感染症は多くあるが,それらの症 例の診察にあたっては,発疹・皮疹の形態・性状をよ く観察すると共に,発熱など他の臨床症状やその時間 的経過を把握することが大切である.さらに家族内,

所属集団内の感染症流行状況,予防接種歴,既往歴を 聴取することで,血液検査など行わなくても診断を確 定できる場合がある.また,海外渡航歴やペット飼育 の有無を聴取することも必要な場合がある.本稿では 上記の点を踏まえ,皮疹・発疹を呈する感染症につい て概説する.

水痘(Fig. 1)

水痘は,ヘルペスウイルス科に属する水痘・帯状疱 疹ウイルスが惹起する感染症である.ヒトからヒトへ の飛沫感染,接触感染で伝播するが,ときに空気感染 もきたす.2 週間程度の潜伏期を経て発症する.症状 としては,皮疹と共に倦怠感,38 度前後の発熱が 2〜

3 日続くことが多い.皮疹は,全身性(頭部を含む)

で掻痒感を伴い,紅斑,丘疹を経て水疱となり,約 1 週間で痂皮化し治癒する.急性期に,種々の段階の皮 疹が混在することが特徴である.

帯状疱疹

水痘罹患後に水痘・帯状疱疹ウイルスが脊髄後根神 経節に潜伏感染した後,宿主の免疫能の低下などに伴 い再活性化し発症する.顔面や背・胸・腹などに片側 性に水疱を伴う小丘疹が限局して出現する.激しい疼 痛を伴うことが多いが,小児では神経痛を訴えないこ ともある.通常 2〜4 週間で治癒する.

カポジ水痘様発疹(Fig. 2)

単純ヘルペスウイルス(I 型主体)の感染症である.

アトピー性皮膚炎や湿疹をもつ乳幼児の皮疹部位に紅 暈を伴う水疱が出現し,多発する.中心に臍窩を持つ ことが特徴である.ステロイド外用薬塗布を行うと皮

膚症状が悪化するので,注意が必要である.

突発性発疹(Fig. 3)

乳幼児に多く認められる.突然 3 日間程度 39〜40℃

台の高熱が持続し,解熱と共に体幹からはじまる斑丘 疹性発疹が全身に出現し,2〜3 日で色素沈着を残さ ず消退する.一般的に感冒様症状を伴わず,患児の機 嫌は良い.発熱中に咽頭をよく観察すると,口蓋垂の 両側に粟粒大の隆起(永山斑)が観察されるが,この 時点で診断することは難しいことが多い.原因ウイル スは human herpesvirus 6(HHV6)と HHV7 であり,

したがって突発性発疹には 2 度罹患する可能性があ る.

麻疹(Fig. 4)

麻疹は,パラミクソウイルス科に属する麻疹ウイル スによる感染症である.ヒトからヒトへの空気感染,

飛沫感染,接触感染で伝播し,感染性は非常に高い.

10〜12 日の潜伏期間を経て発症する.症状としては 発熱と同時に咳嗽,鼻汁,眼脂等のカタル症状を認め る(カタル期).発症 3 日目頃に頬粘膜に,紅暈を伴 う白色小斑点(コプリック斑)が出現する.コプリッ ク斑は,麻疹の診断上大切な所見である.発症 4,5 日目頃,一時的に解熱傾向を認めた後,再び高熱と共

別刷請求先:(〒260―8670)千葉市中央区亥鼻 1―8―1 千葉大学大学院医学研究院小児病態学

石和田稔彦

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Fig. 2 Kaposivaricelliform eruption Fig. 3 Exanthem subitum

Fig.4 Measles

に,紅斑性小丘疹が耳後部より出現し,顔面,体幹部,

四肢末端の順に全身に拡がる(発疹期).発疹出現後 3〜4 日間高熱が続いた後,解熱する.発疹は,融合 傾向を示した後,色素沈着を残して消退する(回復 期).麻疹感染の主体は麻疹ワクチン未接種の乳幼児 だが,最近 20 歳代を中心とした成人麻疹が増加して いる.また,麻疹ワクチン接種後時間が経過し,麻疹 に対する免疫力が低下し,再び麻疹に罹患する修飾麻 疹の症例が増加している.修飾麻疹は典型的な臨床症 状を呈さないため,確定診断が困難になってきている.

風疹ウイルスによる感染症である.春から初夏にか けて多く発生し,主に飛沫感染によって伝播する.2〜

3 週間の潜伏期間の後,発熱,発疹,リンパ節腫脹(耳 介後部,後頭部,頸部)が出現する.発疹は紅斑性小 丘疹であり,主に顔面から出現し,数時間で体幹から 四肢へと拡がる.予後良好な疾患であるが,妊娠前半 期の妊婦が感染すると,こどもが先天性風疹症候群を 発症することがある.先天異常として認められるもの としては,先天性心疾患,難聴,白内障などがある.

伝染性紅斑

ヒトパルボウイルス B19 による感染症.発熱,頭 痛,筋痛などの初期症状出現後,1 週間ほど経過した 後,両側頬部にびまん性紅斑が出現し,その 1〜2 日 後四肢にレース状・網目状紅斑が出現する.発疹は 4〜7 日間で消退する.基本的には予後良好な疾患で

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Fig. 5 Group A β-hemolyticstreptococcaldisease

Fig. 6 ToxicShock Syndrome (TSS)

あるが,遺伝性球状赤血球症などの異常をもつ人が罹 患すると,Aplastic crisis を起こし重篤になることが ある.

手足口病

コクサッキーウイルス A16,エンテロウイルス 71 などが原因となる.5 歳以下の小児を中心に夏から秋 にかけて流行する.家族内や保育所,幼稚園などでの 集団感染も多い.潜伏期間は,4〜6 日とされている.

約 30% の症例で 38℃ 前後の発熱を 1〜3 日間認める.

発疹は均一な水疱であること,回復期に水疱が変色す ることはあるが,痂皮形成をほとんど認めないことが 特徴である.また,発疹は臀部,膝部などにも認めら れ,疼痛を伴う場合もある.

Gianotti

B 型肝炎ウイルス感染急性期の幼児に認められる.

発熱・倦怠感と共に孤立性の赤色丘疹が顔面・臀部・

四肢伸側に対称性に出現する.リンパ節腫脹・肝腫大 を伴い,肝機能障害をきたす.15〜60 日で自然に消 退する.

A

β

溶連菌感染症(Fig. 5)

発疹は,A 群β溶連菌による咽頭炎・扁桃炎にし ばしば伴い,発熱後 12 時間以内に出現することが多 い.咽頭粘膜は高度に発赤し,ときに出血性の粘膜疹 を伴う.発疹は初期には淡紅色の点状発疹として散在 性に認められ,急速に拡がりびまん性の紅斑になる.1 週間程度で消退するが,落屑を伴うこともある.また,

掻痒感を伴うこともある.診断方法は,咽頭ぬぐい液 を検体とし,A 群β溶連菌迅速抗原検査もしくは,細 菌培養により行う.迅速抗原検査はベッドサイドで実 施可能であり,初期診断としては有用であるが,検出 には 104〜105PFU!綿棒の菌量が必要とされる.一方,

細菌培養は,時間はかかるものの少数でも検出でき,

薬剤感受性検査も行えるので,感染反復例などでは実 施すべきである.A 群β溶連菌はしばしば流行する ので,家族や所属集団内での流行状況を確認すること も大切である.この他,稀ではあるが,皮膚・軟部組 織の壊疽を伴う劇症型溶連菌感染症を惹起することが あり,注意を要する.

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Fig. 7 NeonatalToxicShock Syndrome-like ExanthematousDisease (NTED)

Fig. 8 StaphylococcalScalded Skin Syndrome (SSSS)

Fig. 9 Echo virusinfection

毒素性ショック症候群

Toxic Shock Syndrome(TSS)(Fig. 6)

写真の症例は生来健康であった 2 歳の幼児.ポット のお湯をこぼして下肢に熱傷を負い近医に入院し,消 毒,セフェム系抗菌薬投与を 1 週間受け,治療経過は 良好であった.しかし,抗菌薬投与を中止した夜,突 然 40℃ 台の発熱があり,翌日,けいれん,血圧低下,

頻脈,乏尿,多臓器不全を認め,当科に緊急入院となっ た.入院時,写真に示すような皮疹を認めた.熱傷部 からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が分離 され,TSST-1 毒素産生株であったこと,臨床経過か ら TSS と診断した.TSS は,急性全身性疾患であり,

高熱,低血圧,嘔吐,下痢,筋肉痛,非限局性の神経 症状,紅斑性発疹などを特徴とする.身体に定着した TSST-1 毒素産生黄色ブドウ球菌が疾患を惹起すると され,創部感染や熱傷などがその一因となる.

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Fig. 10 Catscratch disease

Fig. 11 Kawasakidisease

新生児

TSS

様発疹症

Neonatal Toxic Shock Syndrome-like Exanthematous

Disease(NTED)(Fig. 7)

写真の症例は日齢 14 の新生児.在胎 41 週 2,854g で出生.出生後,多血症があり,産院で輸液療法を施 行された.10 日後に産院を退院.退院時より頸部間 擦部位に丘疹性紅斑認め,以後徐々に全身に拡がった.

哺乳力は良好であったが,紅斑出現 3 日後から発熱認 め,翌日紹介入院となった.この症例では,入院時,

全身の皮膚をよく観察してみたところ,点滴刺入部に 痂皮形成を認めた.痂皮を剥離したところ膿を認め,

その培養から TSST-1 産生 MRSA が分離されたため,

臨床経過とあわせ NTED と診断した1).NTED は,新 生児期に発症し発疹(全身性紅斑,突発性発疹様),

血小板減少(15 万!mm3以下),発熱(直腸温 38℃ 以 上)を 3 兆候とする.CRP は弱陽性(1〜5mg!dl)で あることが多く,TSS と異なり,比較的予後良好な

疾患である.NTED では,咽頭・臍部から MRSA が 高 率 に 分 離 さ れ,病 因 と し て MRSA の 産 生 す る TSST-1 が関与するとされる2)

ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群

Staphylococcal Scalded Skin Syndrome(SSSS)(Fig. 8)

37℃ 台の発熱と全身にびまん性の紅斑と水疱を呈 する.Nikolsky 現象陽性(摩擦により広範なびらん を生じる)が特徴とされ,口周囲の膿痂疹様病変と亀 裂性痂皮,眼脂を認めることが多い.皮膚びらん面は 乾 燥 し て 落 屑 す る.黄 色 ブ ド ウ 球 菌 の Exfoliative toxin が病態に関与するとされる.

エコーウイルス

30

感染症(Fig. 9)

写真の症例は,発熱を主訴に入院した 9 歳の女児.

頸部リンパ節腫脹・疼痛があり,検査上は,白血球減 少と軽度肝機能障害を認めるのみであった.第 2 病日 から抗菌薬を投与したが,発熱は持続し,第 10 病日

(6)

から癒合傾向のある紅斑が全身に出現した.掻痒感や 熱感を認めた.発疹は 1 週間程で色素沈着を残し消退 した.発熱は計 2 週間持続した.この症例では,咽頭 ぬぐい液・便からエコーウイルス 30 が分離され診断 が確定した.エコー(Enteric cytopathogenic human orphan,Echo)ウイルスは,発疹を呈するウイルス 感染症として有名であるが,ウイルス分離を積極的に 行わないと診断を確定出来ない.原因不明の発疹性疾 患の中には,このようなウイルス感染症が少なからず 含まれていると考えられる.

バルトネラ感染症(ネコひっかき病)(Fig. 10)

写真の症例は,2 歳男児.両大腿部に 2〜3mm 前後 の紅斑が出現し,翌日より 39℃ 台の発熱が出現.2 日後近医を受診.咽頭発赤を指摘され抗菌薬投与を受 けたが,約 2 週間発熱と発疹が続いたため,精査目的 で当科に紹介され入院となった.不明熱の鑑別のため,

病歴を詳細に聴取したところペット飼育歴はないが,

隣家の犬と接触があり,Bartonella henselaeの抗体価 を測定したところ IgM 抗体陽性と IgG 抗体の有意な 上昇を認め,バルトネラ感染症(ネコひっかき病)と 診断した.このように発疹を伴う不明熱の症例に対し ては,ペット等の飼育歴・接触歴を聴取することが,

診断につながる場合がある.

川崎病(Fig. 11)

川崎病は,いまだ原因の確定されていない疾患であ るが,小児の場合,川崎病の頻度は高く,発疹性疾患 を診た場合には,必ず鑑別疾患のひとつとして念頭に

おくことが必要である.典型例では,5 日以上の発熱 と共に,写真のような不定形発疹,眼球結膜充血,口 唇発赤,いちご舌,四肢の硬性浮腫,非化膿性頸部リ ンパ節腫脹を認める.回復期には,四肢の末端の膜様 落屑が特徴的である.

おわりに

主な発疹・皮疹を伴うウイルス感染症,細菌感染症,

細菌毒素関連疾患について症例を提示しながら概説し た.この他にも,発疹・皮疹を伴う感染症は数多く存 在する.原因微生物診断のためには,詳細な病歴聴取 と臨床所見を正確にとることの重要性を改めて強調し たい.本稿が日常診療の一助になれば幸いである.

謝辞:貴重な写真をご提供いただきました千葉県済生会 習志野病院小児科 寺嶋周先生,外房こどもクリニック 黒木春郎先生,帝京大学ちば総合医療センター小児科 永 井文栄先生に深謝いたします.

文 献

1)Ishiwada N, Nagatake E, McParland Y, Hattori M, Tanabe M, Ohnuma N,et al.:A case of se- vere neonatal exanthematous disease accompa- nied with septicemia caused by methicillin- resistant Staphylococcus aureus. 感染症誌 1999;

73:606―8.

2)Takahashi N, Nishida H, Kato H, Imanishi K, Sakata Y, Uchiyama T:Exanthematous disease induced by toxic shock syndrome toxin 1 in the early neonatal period. Lancet 1998;351:

1614―9.

Spot Diagnosis of Infectious Exanthema Naruhiko ISHIWADA

Department of Pediatrics, Chiba University Graduate School of Medicine, Chiba, Japan

There are lots of infectious diseases accompanied with exanthema. When the physicians see the pa- tients with exanthema, they should carefully examine the form of exanthema and accessory symptoms. The physicians also should inquire of the patients about past history, history of vaccination and situation of cur- rent infectious disease epidemic in surrounding area. These clinical approaches lead to specific diagnosis. On this manuscript, I show the photos of several major infectious exanthema caused by viral, bacterial, bacte- rial toxin and so on.

〔J.J.A. Inf. D. 81:127〜132, 2007〕

参照

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8) Kardaun SH et al: Acute generalized exanthematous pustulosis caused by morphine confirmed by positive patch test and lymphocyte transformation test.. Acute

tor subtype. 19) Fisher SA, Absher M: Norepinephrine and ANG II stimulate secretion of TGF-6 by neonatal rat cardiac fibroblasts in vitro. 22) Schunkert H, Dzau VJ,

[r]

9) Hensgens MP, Kuijper EJ.:Clostridium difficile infection caused by binary toxin-positive strains.Emerg Infect Dis. 10) Walk ST, et al.: Clostridium difficile ribotype

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