研 究 ノ ー ト
「CSR経 営 会 計 に 関 す る一 考 察 」 各 国 の 歴 史 的 展 開 を 中 心 と して
山 田 英 俊 柳 田 仁
1.CSRの 意 義
最 近 、 環 境 会 計 等 の 会 計 に 代 わ り 、CSR(経 営)会 計 と い う用 語 が 企 業 経 営 で し ば しば 使 用 され る よ う に な っ た 。 新 聞 雑 誌 等 で もCSRの 特 集 記 事 が 見 か け られ る よ うに な っ た 。
本 稿 で は 、 どの よ うな 理 由 でCSR経 営 会 計 が 普 及 して き た か 、 そ の 意 義 は ど の よ うに 理 解 され て い る か 、 さ ら に 各 国 で の 共 通 点 、 相 違 点 を 導 出 す る 。
こ の こ と に よ っ て 、 日本 で のCSR経 営 会 計 の 展 望 を 述 べ る 。
そ も そ もCSRと は 、"CorporateSocialResponsibility"の 略 語 で あ り、 企 業 の 社 会 的 責 任 とい う意 味 で あ る。 企 業 は 営 利 主 体 で あ り、 よ り良 質 の サ ー ビ ス を 、 よ り安 価 に 提 供 す る こ と に よ っ て 、 当 該 業 界 に お い て 競 争 力 を 発 揮 し 、 市 場 調 査 に よ っ て 常 に 新 しい ニ ー ズ に 応 え る こ とが 要 求 され る。
現 代 は 、 大 量 生 産 ・大 量 消 費 社 会 で あ り、 ま た 消 費 者 は 新 しい 製 品 ・サ ー ビ ス に敏 感 に な っ て い る。 テ レ ビ 、 ラ ジ オ 、 イ ン タ ー ネ ッ ト等 、 い わ ゆ る マ ス メ デ ィ ア の 発 達 が これ を さ ら に助 長 して い る と い え よ う。 こ う し た 市 場 社 会 に 対 し 、 企 業 は そ の 活 動 に よ っ て 貢 献 を し な け れ ば な ら な い 。
しか し現 代 は 、 市 場 に 提 供 され る財 貨 ・サ ー ビ ス が 、 ど の よ うな 方 法 に よ っ て 生 み 出 され て い る も の な の か 、 さ ら に どの よ うな 経 営 体 制 の 下 で 生 み 出 さ れ て い る も の な の か と い う こ と も 、 重 要 な 問 題 と して 社 会 か ら 注 目 され て い
「CSR経営会 計 に関す る一考 察」171
る。日本 で は 公 害 問 題 に端 を発 し、 海 外 で も公 害 、 企 業 不 祥 事 が 、 技 術 と企 業 規模 の 発 達 に よ っ て様 々 な 問題 に な る こ と とな っ た。 そ こで 登 場 した概 念 がCSRで あ る。
倫 理 的 意 思 決 定 を 行 い 、 か っ コ ン プ ライ ア ンス(法 令 遵 守 等)を 貫徹 し、
情 報 開 示 や 環 境 対応 な どに対 し、積 極 的 に 取 り組 む 企 業 を推 奨 す る この概 念 は 、 米 国 で発 生 した 。 しか しな が ら、CSRの 明確 な 定 義 は未 だ にな され て い な い。 とい うの は 、CSR自 体 の研 究 が 遅 れ て い る とい う理 由 で は な く、
そ の 意 味 す る とこ ろ が非 常 に広 範 で あ るた め で あ る。
高 巌 氏 他 の著 書 に お い て も 、CSRの 定 義 は 、 「CSRと は 実 際 に何 を指 す の か 、何 に対 応 しな けれ ば な らな い の か(例:人 権 、労働 環 境 、環 境 保 護 、 地 域 貢 献 な ど)と い う具 体 的 な 定 義 は ほ とん ど不 可 能 で あ る と考 え て い る。
な ぜ な らば 、CSRは 、社 会 又 は 市場 との 関係 に お い て そ の 内 容 が決 ま っ て くる もの だ か らで あ る。 つ ま り、CSRの 指 す と こ ろは 、 市場 や 地 域 の 人 々 との 交 流 や 対 話 を通 じて 、又 は相 互 作 用 を通 じて何 をや る か を決 めて い くこ とで 、 そ の具 体 的 な 実 践 内容 が 決 ま っ て くるか らで あ る」1と 述 べ て い る。
しか し、 明確 なCSRの 定義 が な され て い ない とは い え、CSRへ の 取組 を 実 践 す る こ とに よ り、 同氏 は6つ の利 点 を挙 げて い る。 即 ち、
① 組 織 の継 続 的 ・安 定 的 な成 長
② 社 会 か らの信 頼 性 の確 保
③ グ ロー バ ル 市 場 で の 企 業 競 争 力 の 向上
④ 効 果 的 な コ ン プ ライ ア ン ス 手 法 の 提 供
⑤ 地 域 社 会(企 業 市 民)と の 協 調
⑥ 社 会 的 責 任 投 資(SRI:SociallyResponsibleInvestment)か らの 支 持 で あ る。
1高 巌 他著 『企業 の社 会的 責任』p11日 本規格 協会2004年
172国 際 経 営 論 集No.302005
これ ら の 点 が 企 業 に と っ て 有 効 に 作 用 す る と 同 時 に 、 一 般 社 会 に も 良 い 影 響 を 与 え る こ と に な る と 筆 者 は 考 え て い る。 特 に 、 ⑥ の 「社 会 的 責 任 投 資 (SRI:SociallyResponsibleInvestment)か ら の 支 持 」 に つ い て は 、 「社 会 的 責 任 投 資 の 日 欧 米 比 較 」"Japan‑U.S.A‑GermancomparisonofSocially
ResponsibleInvesting"と し て 、 神 奈 川 大 学 研 究 年 報 で そ の 概 要 を 述 べ た2。
そ こ で は 、 次 の よ うにSRIを 定 義 した 。 即 ち 、 「従 来 の 投 資 活 動 は 、 企 業 の 収 益 性 の み を 重 視 し、 投 資 家 の 投 資 に よ る 、 投 資 先 か ら の利 益 享 受 に 関 心 が 強 く 向 け られ て い た 。 し か し な が ら、 現 在 で は 、 投 資 家 の 利 益 だ け で は な く 、 投 資 先 企 業 が 社 会 貢 献 を して い る か ど うか とい っ た 考 え 方 や 、 投 資 家 自 身 が 行 う投 資 に よ っ て 社 会 に 貢 献 す る と い う考 え 方 が 生 ま れ て き て い る 」 と い う
も の で あ る。
こ う した 考 え方 に 加 え て 、 社 会 的 責 任 を 考 慮 し て い る企 業 は 、 そ うで な い 企 業 よ り も成 長 性 が あ る と い う見 解 も 注 目 され て き て い る 。 こ の 見 解 を 包 含 した 投 資 概 念 が 、 社 会 的 責 任 投 資 で あ る。 即 ち 、 通 常 の 財 務 分 析 等 に 加 え 、 コ ン プ ライ ア ン ス 、 環 境 配 慮 、 人 権 擁 護 、 地 域 社 会 貢 献 な どの 取 組 に お い て 、 社 会 的 責 任 を 果 た し て い る か 否 か を 基 準 に 、 当 該 企 業 へ の 投 融 資 判 断 を 行 う
とい うの が 社 会 的 責 任 投 資 で あ る 。 こ のSRIがCSRと 密 接 に 関 係 して い る と筆 者 は認 識 して い る。
し か し 、 こ のCSRに 対 し て 疑 問 視 す る 声 も あ る。 例 と して 、 ドイ ツ の ベ ル リ ン 自 由 大 学 経 営 学 教 授 で あ る ギ ュ ン タ ー ・ ド ゥル ー ゴ ス 氏 の 講 演 、 「企
業 利 害 と疑 わ しい 倫 理 指 針 要 因 と して の 公 共 の 福 祉 」3が あ る 。
同 氏 は 中央 大 学 商 学 部 教 授 会(研 究 会)に お い て 、 次 の よ うに 述 べ て い る 。 即 ち 、 「企 業 活 動 は 、 無 関 心 、 補 足 的 、 そ して コ ン フ リ ク ト と い っ た 様 式 の
2拙 著 『社 会的 責任 投 資の 日欧 米比較 』神奈 川 大学研 究年 報第9号2005年 参 照
3ギ ュ ンター ・ドゥル ー ゴス講演 高橋 由明訳 『企 業利 害 と疑 わ しい倫 理指針 要 因 と し ての公 共 の福祉 』 商学論纂 第32巻4号 中央大 学商 学研 究 会
4『 上掲書』pp92 ‑93
「CSR経 営 会 計 に 関 す る一 考 察 」173
多 くの 種 々 の利 害 の焦 点 を形 成 す る。 コ ン フ リク ト的利 害 は 、 経 済 的 な形 式 的 諸 目標 へ の相 互 の指 針 にお い て少 な く と も潜 在 的 で あ れ 交 換 関係 に基 礎 づ け られ て い る。 これ らの利 害 は 、広 い 競 争 状 態 か らや 、 例 え ばエ コ ロジー の よ うに 一 方 の妨 害 か ら生 じ るの で あ る。 コ ン フ リク ト的利 害 は、 別 々 の職 能 の担 い 手 の 間 ば か りで は な く、 同 一職 能 の担 い 手 の 間 に も生 じる。 そ こか ら 結 果 す る諸 コン フ リク トは 、正 常 で あ り基 本 的 に は ア ン ビバ レン ツ な社 会 現 象 で あ り、 そ の発 現 は 、 ま た企 業領 域 で は決 して 特 別 な もの で は な く、 こ こ で は最 初 か ら否 定 的 な もの と判 断 され て は な らな い」4と い う。
さ らに 、 自 由州 バ イ エ ル ンの 州 法 で は 、 公 共 の福 祉 につ い て 、 「全 体 的 経 済 活 動 は公 共 の福 祉 に役 立 ち 、個 人 の経 済 的 自由 は 隣人 な らび に 国家 の公 共 の福 祉 の 要 求 を 考 慮 す る と き限 界 を有 す る」5と 州 法Y51条 で 定 め てい る こ と も述 べ て い る。
結 論 と して 同 氏 は 、 「法 制 化 と判 例 が この 疑 問 の 多 い設 計 案 を放 棄 す べ き な の か の 問題 は 、 法律 の 文 献 で の接 近 方 法 の論 争 で論 議 され 、 これ まで優 勢 な の は 否 定 的 に しか 回答 され て い な い 」 と して お り、 同氏 は企 業 倫 理 や企 業 の社 会 的 責 任 とい った領 域 に対 して 、 法 的 解 釈 の視 点 か ら限界 を有 す る も の と して 、否 定 的 立場 で あ る と考 え られ る。
で は 、CSRは こ う した疑 問 や 否 定 的解 釈 に対 して 明 確 な理 論 的根 拠 を示 して い る の で あ ろ うか。 現 段 階 の 筆 者 の 考 え は 、否 で あ る。 そ の要 因 は 、筆 者 自身 の研 究 不 足 も多分 に あ るが 、CSRの 理 論 的構 築 が 困難 で あ る こ と と、
そ の領 域 の 広 範 さ故 で あ る と筆 者 は 考 え て い る。
しか し、 そ もそ もCSRが 主 張す る の は 、 これ ま で の 営利 追 求 型 企 業 は悪 で あ り、社 会 指 向 的 、 慈 善 事 業 的 な企 業 は 善 で あ る とい うよ うな 、 勧 善懲 悪 型 の 分 類 に よ っ て企 業 を扱 うもの で は な い 。 なぜ な らば 、営 利 な く して企 業
0『 上 掲 書 』p94 s『 上 掲 書 』p98
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は 存 在 しえず 、企 業 活 動 そ の もの が 否 定 され て しま うか らで あ る。
CSRは 、 営利 のみ を 追 求 す る こ とを 問題 視 して い る の で あ る。 即 ち 、 こ れ ま で 成 功 を収 めて き た営 利 追 求 志 向 が 生 み 出す い くつ もの弊 害 が 、 現 代 社 会 にお い て は 、企 業 経 営 者 な どの 個 人 の み な らず 、組 織 構 成 員 も含 め た 、 当 該 企 業 の企 業 活 動 全 体 を否 定す る こ とに繋 が る とい うこ とを 、CSRは 示 唆 す る。 そ して 、 そ の 弊 害 を未 然 に防 ぐ行 動 規 範 の確 立 の 必 要 性 を 主 張 して い
るの で あ る。
今 後 、 特 定 の企 業 が 倫 理 的 な行 動 規 範 を確 立 し得 な か った 場 合 、 当該 企 業 の企 業 活 動 は停 止 せ ざる を得 な い 状 況 に な るで あ ろ う。
さ らに 、 こ こで重 要 な問題 とな るの は、 当該 企 業 の み の 問題 解 決 行 動 で は 、 社 会 全 体 の 問題 解 決 に至 らな い とい うこ とで あ る。 具 体 的 に言 え ば 、 企 業 に お け る労働 者 に対 す る問 題=労 働 問題 、環 境 汚 染 な どの 問題 を発 生 させ た こ とに よ る 自然 環 境 汚 染 の 被 害=自 然 環 境 問題 、 自社 製 品 の 品 質 管 理 の 問 題 で あれ ば 、 そ の製 品 に よ って 被 っ た 消 費 者 側 の被 害=対 消 費者 問 題 、 とい っ た 問題 が 挙 げ られ る。 これ らの 問題 は 互 い に連 鎖 ・増 幅 し、 後 世 ま で 尾 を 引 く こ と とな る。 即 ち 、企 業 の 規模 が拡 大 し企 業 活 動 が 世 界規 模 に 拡 大 した こ と、
そ して 情 報 技 術 の発 展 等 が 大 き く関 与 し、 こ うした 問題 を さ らに拡 大 させ る こ と とな る の で あ る。
そ して 、現 実 的 問 題 と してCSRは 、様 々 な 問題 を有 して い る現 代 に お い て 、必 要 不 可 欠 な研 究 領 域 で あ り、 総 論 的 な理 論 構 築 が 困難 で あ っ た と して も 、各 論 的 な 理 論 を展 開 し、 そ れ らを収 束 させ る こ とは可 能 で あ る と筆 者 は 考 え る。
本 稿 の テ ー マ がCSR経 営 会 計 で あ る こ と も、 こ う した 考 え に基 づ くも の で あ る。 即 ち 、会 計 学 の領 域 を 、社 会 責 任 会 計 や 環 境 会 計 か ら さ らに 広 い 学 問領 域 と し、 会 計 とい う経 営 学 の 中の 一 領 域 に お い て 、CSRを 考 察 す る と い う点 を 「各 論 的 な理 論 」 と して筆 者 は位 置 づ け てお り、 こ の点 にCSR考 察 の意 義 が あ る とい え よ う。
rCSR経 営会計 に関する一考察」175
で は 、 次 章 に お い て 、CSR経 営 会 計 へ の 展 開 に つ い て 述 べ る こ と とす る 。
2.CSR経 営 会 計 へ の 展 開
「CSR経 営 会 計 」 とい う用 語 は 、従 来 の会 計 学 にCSRを 加 味 した研 究 領 域 で あ る。CSRは 先 に述 べ た よ うに、 これ ま で成 功 を収 め て きた 営利 追 求 志 向 が 生 み 出 す い くつ もの 弊 害 が 、 現 代 社 会 に お い て は 、企 業経 営者 な ど の 個 人 の み な らず 、組 織 構 成 員 も含 めた 、 当該 企 業 の企 業 活 動 全 体 を否 定す る こ とに繋 が る とい うこ とを、 示 唆す る も の で あ る。 一 方 で会 計 の場 合 、企 業 の継 続 的経 営 や 、受 託 財 産 の保 全 、情 報 開示 さ ら には 、 内部 会 計 と呼 ばれ る 「管 理 会 計 」 に よ る組 織 の 安 定 的成 長 を 目的 と して い る。 そ して 、企 業 が 引 き起 こす 内部 的 、外 部 的 問題 を 、未 然 に 防 ぐ行 動 規 範 の 確 立 の必 要 性 を 主 張 してい る社 会 責任 会 計 と呼 ばれ る もの が あ る。
しか し、本 稿 で 「CSR経 営 会 計 」 と した理 由 は 、1960、70年 代 に脚 光 を 浴 び た 「社 会 責 任 会 計 」 と区 分 す る た め で あ り、 社 会 責 任 会 計 とい う用 語 よ り、 そ の ま まCSR会 計 、CSR経 営 会 計 とい う用 語 が使 用 され る こ とが多 い とい う現 状 を踏 ま えた 為 で あ る。
先 の 「社 会 責 任 会 計 」 の生 成 基 盤 は 、 企 業 と一般 社 会 とに発 生 す る コ ン フ リク トの解 決 の た め 、 当該 企 業 の社 会 的 活 動 に 関す る情 報 を 開示 す る こ とに あ った。 そ の起 源 は 、欧 米 で は早 期 に発 達 して い た もの で あ り、 我 が 国 で は、
1970年 前 後 に第1次 ブ ー ム が生 じた 。
当時 は 、 オ イル シ ョッ ク等 に よ る景 気 の 悪 化 や 、企 業 に よ る社 会 的責 任 に 関す る活 動 を有 効 に行 うシ ス テ ム が構 築 され て い な か っ た こ と、 ま た 、企 業 や 消 費者 は 、今 日の よ うにCSRと い っ た概 念 に対 して 、 関 心 を あ ま りもっ て い な か った こ と等 に よ っ て 、社 会 責任 会 計 は長 期 的 に定 着 しな か った の で あ る。
社 会 責 任(CSR)会 計 の第2次 ブ ー ム は 、1990年 代 で あ っ た。 それ は 、 企 業 と社 会 との 間 の コ ン フ リク トが 、 更 に 増 大 した こ と、 企 業 活 動 の グ ロー
176国 際経営論集No.302005
バル 化 、 さ らに は環 境 問題 の 管 理 ・会 計 技 法 の発 達 、 情 報 技 術 の発 展 等 に よ る と ころ が大 きい と考 え られ る。
このCSR経 営 会 計 とい う用 語 を説 明 す るた め に 、 「ア カ ウン タ ビ リテ ィ」
とい う概 念 が しば しば使 用 され る。
ア カ ウン タ ビ リテ ィ とい う用語 は、 説 明 責任 ・会 計 責任 とい うよ うに一 般 的 に は 訳 され て い るが 、 この 用語 の 概 念 は 、 企 業 の登 場 と発 展 に よ って 変 化 して きた 。 す な わ ち、 受 託 者(財 産 運 用 者)が 、受 託 財 産 の保 全 ・管 理 に加 え て 、 有 効 活 用 をす る責 任 も包含 した 概 念 の 生 成 で あ る。
経 営 活 動 が 、継 続 的 ・組 織 的 にな り、 ゴー イ ン グ コ ンサ ー ン の公 準 が 成 り 立 っ よ うにな る と、 受 託 者 で あ る企 業 と委 託 者 で あ る出 資者 の 関係 も複 雑 化 す る。 そ して 、委 託 者 の 中 に は 出資 者 の他 に 、 債 権 者 等 の利 害 関係 者 も含 ま れ る よ うにな っ た。
さ ら に、企 業 に対 す る委 託 財 産 の保 全 ・管 理 、 有 効 利 用 に と どま らず 、 運 用 の 結 果 や 業 績 等 を詳 細 に示 す 情 報 が 要 求 され る時 代 とな っ た 。 そ の 結 果 、 会 計 責 任 を果 た した か ど うか の判 断 は 、株 主総 会 へ の決 算 報 告 とそ の 承 認 を 得 る こ とで 果 た され た も の と見 な され る よ うに な っ た の で あ る。 これ が い わ ゆ る伝 統 的 な ア カ ウン タ ビ リテ ィ概 念 で あ る と筆 者 は考 え る。 そ して 現 代 で は 、企 業 の 規 模 が 、 情 報 技 術 の発 達 と と もに 拡 大 す るに つ れ て 、 そ の 利 害 関 係 者 の 関係 す る範 囲 、 人 数 等 が 、 これ ま で と比 較 に な らな い ほ ど増 大 して い
る。
加 え て 、 企 業 規 模 の 発 達 に よ る企 業 の 社 会 的 影 響 力 の増 大 に した が っ て 、 従 来 の よ うに 経 済合 理 性 の み を追 求 す る利 害 関係 者 だ け で は な い とい う状 況 が発 生 した。 即 ち、 ス テ.̲....,クホ ル ダー の 中 に、 経 済 的利 害 以 外 の 情 報 を 要 求 す る存 在 ま で もが含 まれ る よ うに な り、企 業 会 計 の果 た す べ き責任 も、 変 化
して き た の で あ る。
例 え ば 、企 業 の環 境 汚 染 問 題 で影 響 を受 け る周 辺 住 民 のみ な らず 、企 業 の 経 営 活 動 に よ っ て社 会 生活 上 、 何 らか の影 響 を被 る住 民 ・国 民 、 さ らに は人
「CSR経営会計に関する一考察」177
類 全 て が ス テ ー ク ホ ル ダ ー と な り う る こ と に な っ た 。 彼 等 が 、 企 業 を どの よ うな 情 報 で 評 価 ・判 断 す る か に よ っ て 、 企 業 の ア カ ウ ン タ ビ リテ ィ も変 化 し、
そ れ に伴 い 、 伝 統 的 な 経 営 会 計 技 法 だ け で は 対 応 が 不 十 分 と な っ た の で あ る。
ス テ ー ク ホ ル ダ ー が 、 環 境 保 全 を は じめ 、 倫 理 性 、 コ ン プ ラ イ ア ン ス 、 人 権 ・雇 用 関 係 等 の 評 価 指 標 を 要 求 す る こ と に な れ ば 、 当 該 企 業 は そ れ に 対 応 した 情 報 を デ ィ ス ク ロー ズ し な け れ ば 、 ア カ ウ ン タ ビ リテ ィ の 履 行 が 果 た せ な い 。 こ う し た 理 由 に よ っ て 、CSR経 営 会 計 が 意 義 を 持 つ よ うに な っ て き て い る 。 簡 単 に わ が 国 のCSR経 営 会 計 実 施 例 を 挙 げ て み る と 図 表2‑1の よ う に な る 。
図 表2‑1
報告 書の名 称 CSR担 当 部 署 CSRと 環境会計との区分 重点 目標
ブ ラザ ー 環 境 ・社 会 報 告 書 環 境推進部 統 一 環境 問題
リ コ ー 環境経 営報 告書 社 会環境本部 分 割 出版 環境 問題
富 士 ゼ ロ ック ス 社会 と社員、社会 と企業の架け橋 社会 貢献推進 室 統 一 ・ 環境問題
キ ヤ ノ ン CanonSustainabiolityReport グローバル環境推進本部 環境 保護 のみ 社会的責任
NEC CSRア ニ ュ ア ル ・ レ ポ ー ト CSR推 進 本 部 統 一 社会 的責任
富士 通 ア ニ ュ ア ル レ ポ ー ト 広 報IR室 統 一 環境 問題
ソ ニ ー CSRReport 環 境CSR戦 略 グ ル ー プ 統 一 環境 問題
パ イ オ ニ ア EnvironmentalReport 社会環境 部 統 一 環境 問題
トヨ タ トヨ タ の社 会 貢 献 活 動 広報部社 会文化室 統 一 社会 的責 任
日産 サ ス テ ナ ビ リ テ ィ リ ポ ー ト IR本 部CSR係 統 一 環境 問題
横 浜 ゴム エ コ レ ポ ー ト 環 境保護推進 室 環 境保護 のみ 環境問題
コ ス モ石 油 サ ス テ ナ ビ リ テ ィ レ ポ ー ト CSR環 境 推 進 室 分 割 出版 環境問題 三 井化学 レス ポ ン シ ブル ・ケ ア 報 告 書 IR・ 広 報 室 統 一 社会的責任
トス テ ム 社会環境 報告書 環境 室 統 一 環境問題
JR東 日本 社会環境 報 告書 エ コ ロ ジー推 進 委 員 会 統 一 ・ 環境問題
イ トー ヨ ー 力 堂 企業 の社 会的責任 報告書 企業行動 委員会 統 一 祉会的責任
西友 西 友 サ ステ ナ ビ リテ ィ レポ ー ト ジ ャパ ンフ ォ ー サ ス テナ ビ リテ ィ 統 一 環境 問題
注1筆 者 が各 社 の報 告 書 を も とに作 成 178国 際 経 営 論 集No.302005
この よ うに、 日本 に お い て 各 社 は様 々 な形 式 でCSR経 営 会 計 に 関す る活 動 を行 っ て きて い る とい うこ とが わ か る。
しか し、 日本 にお け るCSR活 動 は 環 境 会 計 の 分 野 を 中心 と して お り、 総 合 的 なCSR経 営 会 計 に 対 す る研 究 は未 だ研 究 途 上 で あ る。 さ らに 、CSR に対 して懐 疑 的 な 意 識 が あ る こ とに も触 れ た 。 だ が 、 そ うした状 況 を踏 ま え て もCSRの 重 要 性 は変 化 しな い 。
CSR経 営会 計 が どの よ うに運 用 され るべ き か とい った 問題 は 未 だ研 究 段 階 で あ り、 日本 の 場 合 はCSRと い え ば 、ISO14000シ リー ズ に代 表 され る環 境 問題 に対 す る取 り組 み が 中心 的 問 題 と して 挙 げ られ る の で あ る。 そ して 、 現 在 の よ うに企 業 活 動 が グ ロー バ ル 化 して い る状 況 下 で は、 各 国 に よ っ て そ の 中心 的 課 題 や 、 そ の発 展 経 緯 は 異 な る と考 え られ る。
そ こで 、次 にCSR経 営 会 計 に 関す る各 国 の 比 較 を行 うこ とに よ っ て 、 当 該 テ ー マ の課 題 を 導 く こ と とす る。
3.各 国 のCSR経 営 会 計 一 主 に 日 本 、 ア メ リ カ 、 ドイ ツ
各 国 に お い てCSR経 営 会 計 に は ど の よ うな 事 例 が 存 在 す る の か 。 本 章 で は 、 日本 と ア メ リカ 、 ドイ ツ の3力 国 の 事 例 を 挙 げ る 。 こ の こ と に よ り 、C
SR経 営 会 計 の 課 題 と展 望 を 述 べ る こ とが 可 能 で あ ろ う。 で は ま ず 、 日本 の 事 例 を 挙 げ 、 次 に ア メ リカ 、 そ し て ドイ ツ と い っ た 順 で 考 察 を進 め る 。
3‑1日 本 に お け るCSR経 営 会 計
2005年 の 時 点 に 於 い て 、 産 業 廃 棄 物 や 生 活 廃 棄 物 の 増 大 に 代 表 され る 地 球 環 境 問 題 や 、 政 治 ス キ ャ ン ダ ル の 問 題 が 毎 日の よ うに 報 道 さ れ て い る。 そ し て 、 多 くの 人 々 は 、 そ れ ら の 諸 問 題 に 限 っ た こ とで は な い が 、 自 らが 関 心 を 持 っ た 対 象 に 関 す る よ り詳 細 な 情 報 を 、 よ り容 易 に 、 か つ 迅 速 に 入 手 す る こ と が 可 能 と な っ て い る。 な ぜ な ら ば 、 パ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ ー タ(パ ソ コ ン 、 以 下PCと 略 す)の 普 及 と 、 イ ン タ ー ネ ッ トに 代 表 さ れ る 双 方 向 通 信 網 の 整
「CSR経営会計 に関す る一考察 」179
備 が 、 日本 で は急 速 に進 ん だか らで あ る。 これ ら情 報 技術(イ ンフ ォ メー シ ョ ン ・テ ク ノ ロ ジー 、 以 下ITと 略 す)の 発 達 は 、 社 会 を 大 き く変 え て しま った とい え る だ ろ う。
この よ うな 状 況 の 中 で 、会 計 もそ の役 割 を拡 大す る こ と とな っ た。 そ こで CSR経 営 会 計 が 登 場 す る こ と とな る。CSR経 営 会 計 は 、各 企 業 のCSR へ の 取 り組 み を、 貨 幣 価 値 に加 えて 物 量情 報 を会 計 的 に 測 定 し、評 価 す る こ
とに よ っ て 、 当該 情 報 を活 用 す る もの で あ る。
外 部 会 計 と呼 ばれ る財 務 会 計 的 に は 、外 部 情 報 開示 に有 用 な 情 報 を貨 幣 価 値 、 物 量 を可 能 な 限 り数 値 化 して ア カ ウ ン タ ビ リテ ィに活 用 す る ツー ル で あ り、 内部 会 計 と呼 ばれ る管 理 会 計 と して は、外 部 情 報 開示 内容 の検 討 も含 め、
内部 管理 に役 立 つCSRに 係 る コス トや 収 益 の把 握 を行 うこ とが 目的 で あ る と筆 者 は 考 え て い る。
現 在 の グ ロー バ ル 化 した 世 界 で は 、 様 々 な ス テ ー ク ホル ダ ー と関係 を しな が ら事 業 活 動 を行 わ ね ば な らな い。CSR経 営 会 計 は 、CSR全 般 に関 す る ア カ ウ ン タ ビ リテ ィ の履 行 が 可 能 で あ り、 この こ とに よ っ て社 会 的信 用 を得 る倫 理 的 に優 良 な企 業 と して 社 会 的 信 用 を得 る こ とが 可 能 とな る。
麗 澤 大 学 の 「CSR会 計 ガ イ ドライ ン」 に よれ ば 、CSR会 計 の導 入 に よ り、企 業 は次 の よ うな メ リッ トを得 る こ とが で き る と して い る。 即 ち 、
「1こ れ ま で は 主 と して 定 性 的評 価 に よっ てCSR活 動 の評 価 は行 わ れ て き た が 、 定 量 的 な分 析 が これ に加 わ る こ とに よ り、時 系 列 的 な 検 証 が 可 能 と な る。 これ は、 社 会 に対 して 取 組 状 況 をい つ で も説 明 で き る体 制 と、外 部 の ス テ ー ク ホル ダー に よ る企 業 等 の評 価 ・支 援 を行 う仕組 み が整 うこ とを意 味 す る。 例 え ば 、 投 資 家 はCSRに 積 極 的 に 取 り組 む企 業 等 に対 して投 資 額 を 増 や す だ ろ うと考 え られ 、地 域 住 民 は協 力 な ど も行 いや す くな る。
7麗 澤 大 学 企 業 倫 理 研 究 セ ン タ ー 『R‑BECoo4』p132004年 8図 表 は 章 末
180国 際 経 営 論 集No.302005
2企 業 等 がCSR会 計 情 報 を収集 す る こ とに よ り、CSRマ ネ ジ メ ン ト体 制 の 整 備 が促 進 され る。 これ は 、CSRマ ネ ジ メ ン ト ・サ イ クル の側 面 を数 値 情 報 に よっ て評 価 す る こ とに よ り、CSR活 動 の改 善 の 手 がか りが つ か め 、 取 り組 み の評 価 ・見 直 しが 可 能 とな る た めで あ る。
3CSR会 計 情 報 は 、外 部 との コ ミュ ニ ケ ー シ ョンだ け で な く、 企 業 内 部 の 有 効 な コ ミュニ ケ ー シ ョン ツ ール とな り得 る。 と くに 従 業 員 に対 して は 、
CSR会 計 情 報 の 収 集 を通 してCSRに 対 す る意 識 が 高 ま る と とも に 自律 的 な行 動 を促 す な ど、 経 営 行 動 に 対す る 内部 牽 制機 能 を発 揮 す る こ とが期 待 さ れ る。」
とい うもの で あ る
麗 澤 大 学研 究セ ン ター で は 、具 体 的 にCSR会 計 報 告 の た め の ガ イ ドライ ンが 提 案 され て い る。 図 示 す る と図3‑1の よ うに な っ て い る。
日本 で はCSR研 究 が 遅 れ て い る とい うの が 一 般 的 な 見解 で あ り、 事 実 で もあ る と筆 者 は認 識 して い る が 、CSR最 先 進 国 とは差 が あ る にせ よ、 具 体 的 な ガ イ ドラ イ ン も提 案 され て い る こ と も考 慮 す る と、決 して 展 望 が 開 け て い な い もの で は な い と筆 者 は 考 え る。 た だ し、 情 報 公 開 にお い て 、数 値 情 報 化 か 、物 量 晴報 化 が 良 い の か とい う議 論 が な され てお り、 今 の と こ ろ統 一見 解 は 無 い。 筆 者 は情 報 化 とい う問題 に 関 して 、 大 切 な の は情 報 利 用 者 が 費 用 対 効 果 を適 切 に把 握 で き る こ とで あ り、情 報利 用 者 の 判 断 に よっ て 当該 企 業 に様 々 な影 響 を 与 えて い く こ とが 重 要 で あ る と考 え る。 即 ち 、数 値 化 に拘 る の で は な く、 い か に 当該 情 報 を ステ ー クホ ル ダ ー に理 解 で き る よ う提 示 す る か とい うこ とが 問題 で あ ろ う。
3‑2ア メ リカ に お け るCSR経 営 会 計
ア メ リカ に お け るCSRに 関 して 、 ま ず そ の 定 義 に つ い て 簡 略 に 考 察 す る。
本 稿 で は 、 様 々 なCSRに 関 す る研 究 が 、 ア メ リカ に お い て も発 達 して き て い る と い う事 実 も 踏 ま え た 上 で 、 エ プ ス タ イ ン を 中 心 とす る 学 派 の 、 企 業 倫 rCSR経 営会 計 に関する一 考察 」181
理 に 関 す る 学 説 を 「ア メ リカ 企 業 倫 理 学 」 と設 定 す る。 そ こ で ま ず 、 彼 の 主 張 す る 「CSR」 の 定 義 を 「ア メ リカ のCSR」 の 代 表 的 定 義 と して こ こ で 提 示 、 考 察 して い き た い 。
エ プ ス タ イ ン の 定 義 に よ れ ば 、 ま ず 、CSRに つ い て 、4つ の 概 念 を示 し て い る 。 そ れ は 、 「企 業 倫 理 」(BusinessEthics)、 「経 営 社 会 責 任 」
(CorporateSocialResponsibility)、 「経 営 社 会 即 応 性 」(CorporateSocial Responsiveness)、 そ し て そ れ を 超 え た 概 念 で あ る 「経 営 社 会 政 策 過 程 」
(CorporateSocialPolicyProcess)の4つ で あ る。
エ プ ス タ イ ン の 考 え で は 、 ま ず 、 「企 業 倫 理 」 を 「経 営 者 の 行 う体 系 的 な ・ 価 値 観 に も とつ く 内 省 に 関 係 を 持 ち 、 経 営 者 は そ れ を 伝 統 的 に は 個 人 と して 、
しか し最 近 で は ま す ま す 集 団 的 な 枠 組 の な か で 、 ま た 、 人 格 的 な らび に組 織 的 な 企 業 行 為 と、 そ れ が 全 体 社 会 の 利 害 関 係 者 た ち に 対 して 及 ぼ す 影 響 とに 関 し て 行 うの で あ る 」9と 定 義 し て い る 。
「経 営 社 会 責 任 」 は 、 「企 業 の 特 定 の 利 害 関 係 者 た ち に 対 し、(な ん ら か の 規 範 的 基 準 に 照 ら し て)不 利 で は な く ・む し ろ 好 ま しい 影 響 を も た らす よ う な 特 定 の 事 項 も し く は 問 題 に 関 し て 、 組 織 的 決 定 が 生 み だ す 成 果 の 達 成 に 第 一 義 的 に 関 わ っ て い る 」loも の と 定 義 して い る
。
そ し て 、3つ め の 経 営 社 会 即 応 性 は 、 「企 業 の 意 思 決 定 者 た ち が 、 不 十 分 か つ 不 完 全 な 情 報 の 制 約 の も とで 、 組 織 的 な 政 策 な らび に 実 践 の 全 体 的 展 開 を 集 団 的 に 予 知 し ・即 応 し ・管 理 す る た め に 用 い る 、 組 織 的 意 思 決 定 過 程 の 開 発 に 主 に 関 わ りを 持 っ て い る。 した が っ て 、 こ の 概 念 は 決 定 的 に 、 過 程 志 向 的 で あ る」1'と 定 義 して い る 。
そ して 、 これ ら3つ を ま ず 定 義 し、 今 日の 企 業 倫 理 の 概 念 は 、 そ の 道 徳 的
9エ プ ス タ イ ン 著 中 村 瑞 穂 他 訳 『企 業 倫 理 と 経 営 社 会 政 策 過 程 』 眞 堂1996年
10『上 掲 書 』p919〜12文 眞 堂1996年
"『 上 掲 書 』p9113〜17文 眞 堂1996年
182国 際 経 営 論 集No.302005
p915〜8文
内省 の 明 確 な 枠 組 の 内 部 に お い て 、 成 果 と過 程 と の 両 側 面 を 結 合 し て い る こ とが 特 筆 す べ き 点 で あ る と主 張 す る。
4つ め の 「経 営 社 会 政 策 過 程 」 に つ い て で あ る が 、 こ れ に つ い て の 定 義 は 前 述 の3つ を 超 え た(beyond)概 念 で あ る と して お り、 こ の 「超 え た 」 とい う こ との 意 味 は 、 前 出 の3者 を 結 合 す る ・包 含 す る と い う意 味 で あ る 。 即 ち 、
経営社会 政策過程 ≧企 業倫理+経 営社 会責任+経 営社会即応 性
とい う、式 が な りたつ 。 エ プ ス タイ ンは 、企 業 倫 理概 念 、経 営社 会 責任 概 念 、 経 営 社 会 即応 性 概 念 の どれ か ひ とつ を理 論 的 ・実 践 的 に用 い る よ りも 、 この
3者 を結 合 させ た 「経 営 社 会 政 策 過 程 を用 い る ほ うが有 用 で あ る と主 張 して い る の で あ る。
さて 、 そ の 定義 は 、 「具 体 的 な 諸 事 例 に 関 す る経 営 学 的 な分 析 と経 営 実 践 とに役 立 ち、 そ して企 業 行 動 を 、 これ ま で の概 念 の いず れ か 一 っ だ け を適 用 す る こ とに よ って 達 成 され る よ りも、 さ らに倫 理 的 で 、社 会 的 に責 任 の あ る、
ま た社 会 に対 して 即 応 的 で も あ る よ うな も の に 改 善 す る こ とで あ る」12と し て お り、経 営 社 会 政 策 過 程 の核 心 は 、 「企 業 倫 理 ・経 営社 会 責 任 ・経 営 社 会 即 応 性 の それ ぞ れ か ら と り出 され た基 本 要 素 を、 企 業 組 織 の 内部 に お い て制 度 化 す る こ とで あ る」 と定 義 して い る。
で は 、CSR経 営 会 計 の分 野 は どの よ うに な っ て い るの か 。 ア メ リカ で は CSRが 非 常 に重 要 視 され て お り、社 会 的 責任 投 資(以 下SRIと 略 す)も 盛 ん で あ る。 そ もそ もSRIと い う用 語 が英 米 語 で あ る こ とか ら もわ か る よ
うに 、社 会 的 責 任 投 資発 祥 の 地 は 米 国 で あ った 。SRIは 、米 国 で は酒 ・タ バ コ等 の健 康 を害 す る恐 れ の あ る嗜 好 品や 、軍 需 産 業へ の投 資 を控 え る とい っ
12エ プ ス タ イ ン 著 眞 堂1996年
中村 瑞穂 他 訳 『企 業 倫理 と経 営社 会政 策過 程 』p11118〜22文
「CSR経 営 会 計 に 関 す る一 考 察 」183
た 運 動 が 始 ま り で あ る 。 そ して 現 在 で は1990年 以 降 か ら米 国 に お け るSRI 資 産 総 額 は 伸 び を 見 せ て い る 。 ま ず は 歴 史 的 背 景 か ら見 て み よ う。
SRIの 発 展 は 大 き く3つ の 区分 に 大 別 す る こ とが 可 能 で あ る 。 一 つ め は 1920年 頃 か ら の キ リス ト教 教 会 に よ る 運 動 、 二 つ め は70年 代 か ら の 公 民 権 運 動 や ベ トナ ム 戦 争 反 戦 運 動 、 反 ア パ ル トヘ イ ト(人 種 隔 離 政 策)に 関 わ る 運 動 、 そ して 三 つ 目 は90年 代 前 半 か らのCSR発 展 に 関 わ る 運 動 で あ る。
筆 者 が 現 在 のSIFに よ る2003年 ま で の 投 資 増 加 デ ー タ(図3‑2)を 調 査 した 結 果 、 や は り増 加 して い る こ と が 判 明 し た 。2003年 に は 若 干 減 少 して い る も の の 、97年 と 比 較 す る と979(単 位 億 ドル)の 増 加 が 見 られ る。
こ の デ ー タ を 見 る と、 ア メ リカ に お い て 、SRIは 強 い 関 心 が 向 け られ て い る投 資 で あ る こ とが わ か る。
即 ち 、 米 国 で は1920年 代 の キ リス ト教 教 義 に よ っ てSRIが 発 展 し た こ と が 理 解 で き 、 現 在 で も そ の 投 資 額 は 増 加 して い る とい う こ と。 そ して 、 そ の 特 徴 は 、 社 会 的 に 害 を 及 ぼ す よ うな 企 業 に 対 す る 「批 判 的 投 資 」 と して 、
SRIが 認 識 され て い る とい う こ とが 理 解 で き た 。
さ て 、 これ らの こ とは 、 ア メ リカ のCSR経 営 会 計 と ど の よ うに 関 連 して い る の か 。CSR経 営 会 計 を 実 施 す る こ とは 、 外 部 評 価 と 内 部 評 価 を 貨 幣 的 ・ 物 量 的 に 測 定 し、 そ れ ら を 経 営 意 思 決 定 に 役 立 て る こ と に 繋 が る 。
ア メ リカ で は 、SRIと い っ た 投 資 に よ る 企 業 イ メ ー ジ の 向 上 や 、CSR関 連 浩 動 に よ っ て 、 地 域 貢 献 を 行 っ て い る。 そ れ は 民 間 が 主 導 で 行 っ て い る も の で あ る 。
す な わ ち 、 ア メ リ カ に お け るCSR経 営 会 計 は 、 企 業 の 自発 的 発 達 形 態 を と っ て い る も の で は な く 、 ま た 、 政 府 の 指 示 に よ る も の で も な い 、 民 間 か ら の 要 請 に よ っ て そ の 会 計 技 法 が 発 展 し て い る も の で あ る とい え る 。
ア メ リカ のCSR経 営 会 計 の 事 例 と して 、1868年 に 設 立 され たTATAグ ル ー プ の 事 例 が あ る 。 当 該 企 業 の 主 要 業 務 は 装 飾 品 、 ホ テ ル 業 、 重 機 械 とい うよ
う に 多 岐 に わ た る 。 184国 際経 営論集No.302005
TATAグ ル ー プ の 中 で も 、TlvrA重 工 はCSRに つ い て 以 下 の よ うに 述 べ て い る 。 即 ち 「TATA重 工 はCSR概 念 の パ イ オ ニ ア で あ る。 こ の こ と は 従 業 員 の 企 業 内 、 そ して 家 庭 で の よ り よ い 暮 ら し に 貢 献 で き る と信 じて い る 。 TATA重 工 は 社 会 に 対 し て 恒 常 的 な 貢 献 を 目指 す も の で あ る。」'3CSR経 営 会 計 に 関 して は 明 確 な 情 報 開 示 を して い な い よ うで あ る が 、CSRに 対 す る 取 組 に 関 して は 重 要 で あ る と考 え て い る よ うに 見 受 け られ る 。
3‑3ド イ ツ に お け るCSR経 営 会 計
ドイ ツ に お け る社 会 的 責 任 の 歴 史 は 、 一 般 的 に か な り浅 い とい わ れ て い る。
とい うの も 、 社 会 的 責 任 が 本 格 化 した の は 、 政 府 の 関 連 部 署 主 導 で1990 年 代 後 半 で あ る た め で あ る 。 ドイ ツ で は2001年 に 年 金 法 改 正 が 行 わ れ た が 、 米 国 と比 較 した 場 合 に 異 な る の は 、 米 国 が 教 会 や ベ トナ ム 戦 争 、 公 民 権 運 動 とい っ た 民 間 か ら の 要 請 に よ っ て 発 展 した の に 対 し、 ドイ ツ 他EU諸 国 は 政 府 主 導 に よ っ て 、 法 律 を含 め たCSRに つ い て の 制 度 化 が 行 わ れ て い る 点 で あ る。 で は 、 こ う し た 事 実 か ら ドイ ツ の 企 業 倫 理 や 社 会 的 責 任 投 資 は 遅 れ て い る とい え る の だ ろ うか 。 答 え は 否 で あ る 。
CSRとSRIが 密 接 な 関係 に あ る とい う こ とは 既 に 述 べ た 。 ま ず 、CS Rに つ い て で あ る が 、 こ こ で は 、 ドイ ツ のCSR(Unternehmensethik)を 、 シ ュ タ イ ン マ ン を 中 心 とす る 学 派 の 、 企 業 倫 理 に 関 す る 学 説 とす る 。
シ ュ タ イ ン マ ン は そ の 著 書 の 一 節 で あ る 「皿 企 業 倫 理 の 概 念(Ein BegriffvonUnternehmensethik)」 の 中 で 、 企 業 倫 理 を 次 の よ う に 定 義 し て い
る 。 つ ま り、 「企 業 倫 理 と は 、 利 害 関 係 者 と の 、 対 話 的 合 意 を 通 じ て 、 根 拠 付 け る 、 も し く は 根 拠 付 け られ う る す べ て の 実 質 的 、 過 程 的 規 範 を 包 含 す る
も の で あ る 。 そ の 規 範 は 、 企 業 経 営 に よ っ て 、 束 縛 的 な 自 己 拘 束 の 目 標 の た め に 発 効 され る も の で 、 利 潤 原 理 の 利 害 衝 突 に 関 連 した 影 響 を 、 具 体 的 な 企
13http://www .tata.com/tataLsteel/releases/20040316.htm
「CSR経 営 会 計 に 関 す る一 考 察j185
業 活 動 の 指 導 の 際 に 制 限 す る も の で あ る 。」1と い うも の で あ る。
さ て 、 シ ュ タ イ ン マ ン の 企 業 倫 理 の 定 義 か ら 、 彼 の 主 張 に つ い て 、 どの よ う な 考 え が 導 き 出 され る で あ ろ うか 。 筆 者 は さ しあ た っ て 二 つ の 主 張 が 導 出 で き る と考 え て い る 。
第 一 に 、 企 業 倫 理 で は 、 利 害 関 係 者(Betroffene)と の 対 話 を 重 視 し て い る こ と で あ る。 で は 、 こ こ で い う 「対 話 」 と は何 か 。 こ の 対 話 とい う も の は 、 様 々 な 利 害 関 係 者 が 挙 げ られ る 中 で 、 そ れ ら利 害 関 係 者 集 団 と の 、 双 方 向 の 対 話 を 示 す も の で あ る。 そ して 、 利 潤 の 増 大 を 目指 す 企 業 経 営 の 側 と 、 当 該 利 害 関 係 者 と の 対 話 を 通 じ て 、 起 こ り う る 利 害 衝 突 を 調 整(Ausgleich)す る こ
と を 目指 す と い うも の で あ る。
第 二 に 、 利 潤 原 理(Gewinnprinzip)と 企 業 倫 理 と の 関 係 に つ い て 、 シ ュ タ イ ン マ ン は そ の 定 義 に 用 い て い る 「自 己 拘 束(Selbstbindung)」 と い う言 葉 に あ る よ うに 、 利 潤 原 理 と企 業 倫 理 は 対 立 関 係 に あ る と考 え 、 そ の 上 で 、 両 者 が 、 た だ 単 に 対 立 関 係 に あ る の で は な く、 企 業 経 営 に お い て 、 企 業 倫 理 が 、 利 潤 原 理 に 優 先 し て 考 え られ る べ き で あ る と い う こ と を 主 張 して い る 。 つ ま り、
彼 の 主 張 す る 企 業 倫 理 が 、 利 潤 原 理 の 制 限 す る も の で あ る こ と を 認 識 しつ つ も 、 利 潤 原 理 に 対 して 優 位 に 位 置 して い る と して 捉 え て い る と 考 え られ る 。 そ して 彼 は 、 利 潤 原 理 と企 業 倫 理 の 対 立 関係 を 承 認 し て い る そ の 前 提 に お い て 、 企 業 倫 理 と い う考 え 方 を企 業 内 で 活 用 し、 い か に して そ の 対 立 を 「調 整 」 す る か と い う こ と に 問 題 意 識 を も っ て い る と 言 え よ う。 こ う した 考 え は 、 1920年 代 に 活 躍 し た ドイ ツ の 経 営 学 者H.ニ ッ ク リ ッ シ ュ の 学 説 に 通 じ る も の が あ り、CSRの 研 究 は 諸 外 国 と比 較 して 遅 れ て い る と は 言 え な い と筆 者 は 考 え る 。 む し ろCSRの 基 盤iは1920年 代 に 萌 芽 期 を 迎 え た の で あ る と筆 者 は 考 え る 。
さ て 、 ドイ ツ に お け るCSRの 発 展 は歴 史 が 浅 い も の で は な い との 認 識 を 前 提 と し た 場 合 、CSR経 営 会 計 は ど の よ うな 状 況 に な っ て い る の か 。
EUと し て のCSR経 営 会 計 に 関 す る 全 体 的 資 料 は 少 な い も の の 、 186国 際経 営論集lNo.302005
"CorporateSocialResponsibility"と い う題 名 の 専 門 書 が あ る 。 題 名 こ そ 英 語 で あ る が 、 内 容 は ヨー ロ ッパ に お け るCSRの 専 門 書 で あ る 。 そ の 中 で 、 事 例 と し て ス イ ス のBAERAGと い う企 業 が 挙 げ られ て い る。 こ の 企 業 は1922 年 に 創 立 され 、 現 在3代 続 く チ ー ズ の 製 造 ・販 売 を 行 っ て い る とい う。'4
当 該 企 業 は 経 営 理 念 を 明 確 に 打 ち 出 して お り、 従 業 員 に 対 し て ア ン ケ ー ト とい う形 で コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 行 っ て い る。CSR経 営 会 計 の 側 面 か ら 見 る と、 当 該 企 業 は 数 値 化 で き な い 情 報 は 外 部 に 公 開 す る こ と な く 、 経 営 理 念 の も と 、 ど の よ うに 「経 済 ・社 会 ・環 境 の 持 続 性 に 対 し て 我 が 企 業 が 発 展 」'5
して い る の か を 物 量 表 示 して い る 。 そ の 表 を 提 示 す る と 図3‑3の よ うな も の とな る。
こ の よ う に 、 ドイ ツ語 圏16のCSR経 営 会 計 は 数 値 化 、 物 量 表 示 化 と い っ た 問 題 に 視 点 を 置 く事 無 く 、 「効 果 」 を 提 示 す る こ と を 評 価 し て い る よ うで あ る。
4.CSR経 営 会 計 の課 題 と展 望
日本 、 ア メ リカ 、 ドイ ツ と3力 国 のCSR経 営 会 計 に 関 す る努 力 を概 観 し て きた が 、共 通 して 、情 報 開 示 が 非 常 に 困難 で あ る こ とが 理 解 で き る。CS R経 営 会 計 は 、経 済 、環 境 、社 会 と幅 広 く関 連 す るの で 、環 境 会 計 の よ うに ガ イ ドライ ン を作 成 す る こ とは非 常 に 困難 で あ る。 そ の 内容 に は多 種 多 様 な も の が 包 含 され 、 た と え一 般 的 、抽 象 的 なル ー ル の み に と どめ た と して も 、 膨 大 な もの に な るだ ろ う。
そ れ 故 に 、 経 済 、環 境 、 社 会 関連 領 域 の協 力 の 下 に 、学 際 的 な研 究 が 不 可 欠 で あ る。 ま た 、 そ の 実 施 の 前 提 と して 各 分 野 に 精 通 した 専 門 家 を養 成 し、
MKoeppl/Neureiter(Hrsg)
T,CorporateSocialResponsibility"s248〜259LindeVerlagWien2004 isKoeppl/Neureiter(Hrsg)
CorporateSocialRespQnsibility"s247LindeVerlagWien2004 isド イ ツ に 限 定 し た も の で は な く
、 ウ ィ ー ン 大 学 のFachbuchに よ っ た た め 、 ス イ ス の 事 例 を 提 示 し た 。
「CSR経 営 会 計 に 関 す る一一考 察 」187
当該 企 業 に ふ さわ しい制 度 的 なCSR経 営 会 計 シ ス テ ム を構 築 す る こ とが 要 請 され る。
した が っ て 、 現 状 で は 、 中小 企 業 で の 実 施 は 困難 で あ る と筆 者 は考 え る。
さ ら に、 環 境 会 計 ガ イ ドライ ンの よ うに 、 世 界 的 に認 知 され た水 準 にま で 引 き 上 げ る た め に は 、 各 国 の法 律 、慣 習 、 宗 教 、 歴 史 、 地 理 、 民 族 問題 等 、 そ の 国情 に 関 して も充 分 に留 意 す る必 要 が あ る。
特 に 、 最 近 で は企 業 が 関連 す る社 会 問 題 が 、 数 多 く発 生 して い る。 それ に は 、形 態 、 規 模 共 に、 多 種 多 様 で あ る。 企 業 自身 が 引 き 起 こ して い る問題 が あ る一 方 で 、 企 業 が 提 供 す る財 ・サ ー ビス に よ っ て 引 き 起 こ され る もの もあ る。
しか しそ の い ず れ で あ っ て も、 問題 が 既 に顕 在 化 して お り、 そ の直 接 的 ・ 間 接 的 原 因 が 企 業 に あ る以 上 、 企 業 に 対 して 問題 の 解 消 ・抑 制 につ なが るな ん らか の施 策 を提 示 ・実 行 す る こ とが 必 要 で あ る。 こ う した 問題 を解 決 す る た め、CSR・ 環 境 報 告 書 の 作 成 ・開 示 が役 立つ こ とを期 待 した い。
現 代 は情 報 化 社 会 で あ る。CSR経 営会 計 の分 野 は 、 先 に述 べ た様 に 学 際 的 な研 究 が不 可欠 で あ る。 これ ま で の人 類 の 歴 史 の 中で 、今 日ほ ど技 術 革 新 の進 度 が 速 い時 代 は な い で あ ろ う。 即 ち 、各 企 業 は貨 幣経 済 の 中 で 、株 式 会 社 に代 表 され る よ うな現 在 の企 業 形 態 を と り、 そ して それ らの 企 業 は 、技 術 の進 歩 と とも に規 模 を拡 大 した。 そ して 、 規 模 の 拡 大 に伴 って 、 活 動 領 域 の 拡 大 を も進 め る こ とに な った 。加 え て 現 代 で は 、 コ ン ピ ュー タ の発 達 や そ れ に伴 う情 報 技 術 の発 達 に よ って 、 企 業 活 動 の 大 規 模 化 が急 速 に促 進 され て い る 時代 で もあ る。
しか し、 情 報 技 術 の発 達 に代 表 され る様 々 な 技 術 の発 達 は 、 同 時 に い くつ もの 問題 を引 き起 こ して き た。 こ う した 問 題 に 対 処 す るに は 、 既 存 の法 制 度 や 規 則 ・条例 で は不 十 分 で あ る。 ま た 、 た とえ 法 制 度 を駆 使 して 問題 解 決 を 試 み た と して も、 法 律 で 規制 で き る範 囲 が 不 明瞭 で あ る とい っ た 状 況 が 起 こ
りえ るた め 、十 分 な 問題 解 決 を成 しえ な い とい う事 態 も生 じて い る。
188国 際経営論集No.302005
さ らに、 法 律 を代 表 とす る規 制 の 制 定 に は 、 非 常 に長 い 時 間 を 要 す る場 合 が 多 い。 例 え ば 国 内 にお い て は 国 内世 論 を 考慮 して原 案 を作 成 し、 諸 手 続 き
を通 して 立法 す る とい う方 法 を とらね ばな らな い。 そ こで 、法律 の制 定 とい っ た 法 学 の領 域 か らの ア プ ロー チ だ けで は 不 十 分 で あ る とい え る。
ま た 、CSRは 「経 営 理 念 」 「社 是 」 と い っ た 経 営 哲 学 の 領 域 も包 含 す る 学 問領 域 で あ る。 そ こで 、経 営 哲 学 に も言 及 す る よ うな も の で な くて は な ら な い と筆者 は 考 え る。
さ らに、 先 に述 べ た よ うに 、 現代 は情 報 化 社 会 で あ る。 コ ン ピ ュー タ を代 表 とす る情 報 科 学 分 野 の発 達 は 、 情 報 収 集 、 分 析 ツー ル と して極 め て重 要 な 役 割 を担 う。 今 日で は 情 報 収 集 ・分 析 とい った こ とだ けで は な く、 情 報 提 供 もそ の 役割 とな って い る。 これ らの こ とか ら、 情 報 科 学 分 野 の研 究 も合 わせ て行 わ れ ね ば な らない 。
「ル ー ル 、 思想 、 ツー ル 」 の 有効 活 用 こそ今 後 のCSR経 営 会 計 に必 要 不 欠 な もの で あ る と筆 者 は考 え て お り、3者 の 有 効 活 用 こそ 今 後 の 課 題 で あ る
と筆 者 は考 え る。
今 後 のCSRに 関連 す る研 究 は 、社 会 の複 雑 化 、 大 規 模 化 に伴 っ て 困 難 に な っ て い く こ とが予 想 され るが 、 それ と同時 に人 類 が 、 い わ ゆ る 「持 続 可 能 な発 展 」 を志 向 した 学 際 的 研 究 を発 展 させ て い く こ とが で き る こ とを信 じ、
筆 者 もそ の一 員 とな っ て研 究 を継 続 して い き た い と考 えて い る。
「CSR経 営 会 計 に 関 す る一 考 察 」189