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文 ・ た け う ち す み と
絵・うえもと いさむ
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「おきなさい、おきなさい。春ですよ。 J
やさしい声が聞こえてきます。
ブナのお母さんがブナの赤ちゃんを
かあお乙しているのです。
その這によばれて、さいしょに目をさましたのは、ブーナンでした
O「うーん、よーいしょ。」
ひ か り す こ おお
ブーナンは、お日さまの光を少しでも多くあびようと、
一生けんめい、せのびをしています。
ひろ ひかり
「そうよ、ブーナン。はつばを広げなさい。お日さまの光は、あなたたちのごはんなの。
いっぱいあびて、早く大きくなりなさい。」
ぉ議さんにはげまされて、ブーナンは、ますますがんばります。
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春 の 森 は 、 と て も に ぎ や か
0冬みんしていたと うぶったちが、おき出してきます。
とう山さいをとりに、ふもとの村人もやってきます。
「お話さん、森がにぎやかで、なんだかうれしいね。 」
「ほんとね。ここには、みんながあつまってくるの。
人もどうぶつも虫も。
コケやきのこやいろんなしょくぶつもよ。 j
「ヘぇ 。どうして ? J
「そのうち、あなたにも分かるわ
わ。 ほら、だれか来たみたいよ 。 」
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ほんとうだ!
おや
豆みんかうさめたばかりのクマの親子が、こっちにやってきます。
「きみは、だれ ? J
ブーナンは、聞きました。
「そうか。ぼくも今年うまれたばっかりなんだ。
おな
同じだね。 J
おな
同い年の二人は、すぐになかよくなりました 。
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夏 。 ブーナンは、ちょっとだけ、せがのびました。
でも、まわりの草や木の方が、
す、っとす、っと早く大きくなります。
お日さまの光が、あびられなくて、
ひかりブーナンは、だんだん元気がなくなってきました。
げん「ブーナン、がんばりなさい。
まわりの草のすき聞か 5 こぼれる お日さまの光をひろうのよ。 j
かあ こえ とお
お母さんのはげます声が、だんだん遠くなります 。
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「おーい、ブーナン!どこだあ?リ
クータンの声です!
クータンが、草をかき分けてやってきました
わ。
「だいじようぶか?今、たすけてやるからなリ
かうだ たか たいあ
クータンは、小さい体で、せの高い草たちに体当たり
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そして、ブーナンに日が当たるようにしてくれました 。
「ありがとう、クータン!ありがとうリ
おも き
ブーナンは、思い切りせのびをしました。
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秋 。 森は赤や舗に道づいて、だれかが会のぐで絵をかいたみたい。
「お母さん、きれいだね 。 でも、何だか、みんないそがしそうだよ
なん。 」
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「そうよ。冬が来る前に、たくさんごはんを 食べておかなければな 5 ないでしょ。
だか 5 、みんな、いそがしいのよ。」
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クータンが、走ってきました!
「だめだよ、だめだよ。
ぼくのともだちを食べないでリ
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クータンは、ズーに体当たり
Oズーは、ぴょこぴょこにげていきました。
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「ありがとう、クータン!ありがとうリ
ブーナンは、あぶないところでたすかりました 。
「でも、クータン、ぼくは、いつつもきみにたすけても 5 ってばっかりだね。
ぼくは、ともだちのきみに何もしてあげ 5 れないんだ。 j
ブーナンは、しょんぼりして言いました 。 すると、クータンは、
「なに言ってるんだい。
どうしてこの森にみんなあつまってくるのか、知 5 ないのかい ? J
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クータンは、お母さんに教えてもらった話を ブーナンに教えてあげました 。
「あと 200 年くらいたって、
ブーナンが、ブーナンのお母さんく 5 い 大きくなったらね、
森のまもりがみつて、
言われるようになるんだって
Oほう、この森の地めんはふか J 3 ¥ かだよね
Oそれは、きみたちがおとしてくれたおちぱが、
つもっているからなんだって。
おちぱが、スポンジのように水を ためてくれるか 5 、
大雨がふっても、土がながれないし、
あちとちにわき水がわいてくるんだよ。 J
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「まだあるよ。
との森では、
空気がひんやりして、
しんこきゅうすると 気もちいい!
それは、きみたちが
お日さまの力をも 5 って、
よごれた空気を
きれいにしてくれてる か 5 なんだって。」
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「まだまだ、あるよ。
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きみたちは、川を通してえいようたっぷりの 水を田んぼやはたけにおくってるんだって。
この前、山さいをとりにきたふもとの 村のおじさんが、そう話してた。
おいしいお米ができるのも、
きみたちのおかげなんだってさ。 j
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ブーナンは、びっくりしましたが、
うれしくなって言いました。
「そうか。じゃあ、ぼく、早く大きくなるよ。
それで、クータンにおんがえしする!
それまで楽しみにまっててよリ
クータンは、にっこりわ 5 いました。
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森に、はつ雪がふりました。
これからさむくてきびしいきせつが、はじまります 。 クータンが、やってきて言いました。
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「これか 5 冬の問、ぼく 5 はおうちか 5 出 5 れないんだ。」
とう あいだ
「そうか、冬みんするんだね。 し l まうくの問、おわかれだね。 」
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「ブーナン、元気でね。 J
「うん、がんばるよ 。クータンも元気でね。
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冬の森は、しんしんと、基がふりつもり、
つめたい風が、びゅーぴゅーと、ふきあれます。
でも、ブーナンは、じっとがまんして、
ふんぱっています。
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ひかり
お日さまの光が、だんだんあたたかくなって、
やっと森に春が来ました。
「ブーナン、よくがんばったわね。
春が来たわよ。」
お母さんの声が、聞こえてきます
かあ。
そこに、ねぼけた顔をして、クータンが、
やってきて言いました 。
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「元気だったかい?冬はつ 5 かっただろう ? J
「へい気さ。
クータンは、まだねむそうだね。」
「うん。でもおなかがすいちゃったな 。 いっぱいごはんを食べるぞ一。 J
「ぼくもお日さまをたくさんあびるぞ一 。 」 冬をこして、
二人は、少したくましくなりました。
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d何回も何回も、こうしていっしょに春をむかえて、
クータンは、おじいちゃんクマに、
ブーナンは、わか木になりました。
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そして、ある春。
クータンは、冬みんしたままおきてきませんでした 。
「お母さん、クータンがおきてこないよ。
どうしたんだろう ? J
かあ き
ブーナンは、なきながらお母さんに聞きました。
「ブーナン、わたしたちは何百年も生きるのよ
なん。
クータンたちは、どんなに長生きしても 20 年くらい。
いつかおわかれしなくちゃいけないの。 」 ブーナンは、なきじゃくりながう言いました 。
「だってぼく、おんがえしするってやくそくしたんだ 。 それなのに、まだ何にもしてないんだ。
なんあんなにたすけてもうったのに 。 」
かあ い
お母さんが、やさしく言いました 。
「じゃあ、クータンにおんがえしできなかった議は、
クータンの子どもや、またその子どもに してあげなさい。
お母さんもそうしてきたのよ。」
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ブーナンは、もうなきませんでした 。
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そして、何十回も何百回も、番をむかえて、
とてもりっぱな木になりました。
みんなが、そのまわりにあつまってきて、こう 言います。
「ブナのじいじ!ブナのじいじ!
ブーナンじいじは、まもりがみリ
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ゆき
ほら。今年も雪がとけはじめると、
ブーナンじいじのあの声が聞とえてきますよ。
「おーい、春だぞ一。
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その量によばれて、またたくさんのブナの赤ちゃんが、
目をさまします。
そして、大きくなっていくよ、
森のなか閏たちといっしょにね。
すと
※金本ですので、フーナンやどうぶったちは、じつぶつとは少しちがいます。
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監修のことば
いえ
も り か わ やすし
森 川 靖
あついから日かげに行とう、さむいから家に入ろう、
みなさんは体をうごかして、かんきょうのへんかに たいおうできますね。
でも、森の木ぎはどうでしょう。うごけませんね。
ぱ ち
うごけないから、一生けんめい、その場で生きる知えを はたらかせているのです。
このようにして考えてみると、わたしたちが、ブナの木、
ブナの森をまもり、そしてそだててあげなければいけない ことが分かりますね。
発行日
2001
年2
月1
日 第1
版2010
年7
月15
日 第7
版文
竹内純子(たけうち・すみこ)東京電力(株)環境部 平成6
年東京電力株式会社入社。平成
1 1
年7
月同社初の人材公募に応募し、東京電力の所有地 である尾瀬の自然保護活動を担当する。平成
21
年10
月より地球温暖化問題の国際交渉業務も担務 しつつ、永年尾瀬保護活動担当として、尾瀬をきっかけとした 環境教育等の活動に継続して取り組んでいる。絵 植本勇(うえもと・いさむ)
1959
年広島県生まれ。1987
年日本大学芸術学部美術 学科卒業。広告制作会社を経てフリーのイラストレーターになる。
主に広告、主信志などのイラストをは
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まひろいタッチで描く。監 修 者 森 川 靖(もりかわ・やすし)早稲田大学人間科学部教授 発 行 者 東 京 電 力 株 式 会 社
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東京都千代田区内幸町1‑1
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電 話03‑6373‑1 1 1 1
(代表)編 集 東 京 電 力 株 式 会 社 環 境 部 印 刷 ・ 製 本 大 日 本 印 刷 株 式 会 社
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