• 検索結果がありません。

2.鉄道駅の昇降装置の設置状況

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "2.鉄道駅の昇降装置の設置状況"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)バリアフリー化された鉄道駅内の昇降装置の設置効果* Effect on establishment of elevators and escalators inside the railroad stations turned to be accessible* 磯部友彦** By Tomohiko 1.研究目的. ISOBE**. 道駅内での昇降装置の設置の方向性を考察する。. 平成 12 年 11 月 15 日に、「高齢者・身体障害者. 2.鉄道駅の昇降装置の設置状況. の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関 する法律(通称:交通バリアフリー法)」が施行さ. 交通バリアフリー法によると、鉄道駅のバリア. れ、同法の施行規則に基づいて、現在、バリアフリ. フリー化の基本方針は、「1日の利用者数が5,000. ー化が進められている。鉄道駅においてもバリアフ. 人以上であること又は相当数の高齢者、身体障害者. リー化が進められている。. 等の利用が見込まれること等」と明記されている。. しかし既存の駅に昇降装置を設置するにあたっ. 国土交通省の平成15年度末の調査では、JR、大手. て新たな問題が生じたり、利用者の意見の取り入れ. 民鉄、営団・公営地下鉄、中小民鉄・路面電車合わ. が不十分なために使い勝手が悪化したりする場合も. せて9,544駅のうち、地上とホームの高低差が5m. あり、利用者に使いやすい整備のあり方を確立する. 以上で、乗降客数が1日5,000人以上の駅は2,169. 必要がある。そこで本研究では、鉄道駅内での昇降. 駅であった。そのうち高低差が5m以上、乗降客数. 装置の設置が完了した愛知県内の4駅を対象として. が1日5,000人以上の駅についてのエレベータの設. 利用者に対するアンケート調査を実施し、利用者の. 置率はおよそ58%、エスカレータの設置率は69%. 観点から見た各昇降装置の評価、現状を把握し、鉄. となっていた。. 駅数 5000. 平成16年3月31日現在 4579. 4000 2682. 3000 1703. 2000 1000. 698. 743. 334 402. 386 449. 580 557 429 506. 171 111 132. 0 JR旅客会社6社 総駅数. 大手民鉄15社. 該当する駅. 図1. EVを設置している駅数. エスカレータ,満足度評価 **正員、工博、中部大学工学部都市建設工学科 愛知県春日井市松本町1200. TEL:0568‑51‑9543. 中小民鉄、路面電車. ESを設置している駅数. 鉄軌道駅のエレベータ・エスカレータ整備状況. *キーワーズ:交通バリアフリー,鉄道駅,エレベータ,. (〒487‑8501. 地下鉄10社局. FAX:0568‑51‑1495). 図1は国土交通省の調査結果1)(平成15年度 末)をグラフにしたものであり、「総駅数」とは各鉄 道会社が運営している駅すべての数を表し、「該当 する駅」とはバリアフリー化の基本方針に該当して いる駅を表す。「ESを設置している駅数」とは「該 当する駅」の中で、エスカレータが設置されている.

(2) 駅数を表し、「EVを設置している駅数」とは「該当. 直接アンケートを配布し後日返信用封筒にて返信し. する駅数」の中で、エレベータが設置されている駅. てもらった。調査日は、平成 16 年 11 月 15 日. 数を表す。これらの数値からも分かるように、バリ. (月)にA駅、11 月 17 日(水)にB駅、11 月 19. アフリー化の基本方針に該当している駅に対して、. 日(金)にC駅、11 月 29 日(月)にD駅でそれぞ. エスカレータは多く設置されているが、エレベータ. れ実施した。いずれも土曜、日曜を除いた平日で実. はそれより低い設置率となっている。しかし、設置. 施した。調査時間は 10 時〜13 時までと 15 時〜18. 率が高いエスカレータも昇方向と降方向の両方が完. 時の 1 日 2 回で行った。対象駅の概要とアンケート. 備されているとは限らない。. 調査票の配布数、回収率を表1に示し、アンケート. また、設置費用の実績調査2)によると、エレベ. 調査の項目と内容を表2に示す。. ータ1基当たりの設置費用は、機器設置のみで平均 37百万円程度、支援物撤去費を含めると平均72百. 4 . 駅 利 用者 に よ る 昇 降 装 置 の 評価. 万円程度になり、エスカレータ1基当たりの場合は それぞれ24百万円程度、57百万円程度であると報. 調査票配付時間帯を昼間時に設定したために、利. 告されている。さらに、駅構造の大幅な改変や追加. 用者属性は各駅とも7割近くが女性であり約5割が. 用地確保等が必要となると、数億円のオーダーの費. 50 歳以上であった。また、移動制約がある人も全. 用がかかり、資金面を考慮するとバリアフリー化を. 体で1割程いた。. 簡単には進められないというのが現状である。. 図2、図3には駅別に見た各昇降装置を設置し た事に対する利用者の満足度評価を示す。図2より. 3.駅利用者に対する昇降装置の利用実態調査 の概要. エレベータの設置に対して全体的に8割近くの人が 満足しているという事がわかった。A駅で若干満足. 愛知県内の4駅を対象として、当該駅の利用者に 対して、アンケート調査を実施した。調査員3名に. A駅. 67. B駅. 70. C駅. 105. D駅. 27. 合計. 269. より改札口前で改札に入っていく人、出てくる人に 表1. 対象駅の概要と調査票配布数・回収率. 駅 バリアフリー 名 化完了時期 A B C D. 1日乗降客数 配布数 回収数. 回収率 (%). H15年度 約6千人 180 67 H 9年度 約5千人 147 70 H12年度 約6千人 266 105 H15年度 約2万6千人 70 29 (1 日乗降客数は平成 12 年〜14 年度の値 文献3)4)5)を参照にした). 表2. アンケート調査での主な項目と内容. 項目. 内容. ①利用者属性. 性別・年齢・移動制約の有無等. ②昇降装置の評価. 「エレベータ」「エスカレー タ」「設置場所」について5段 階評価. ③昇降装置の利用. 利用状況、使わない理由等. について ④昇降装置等に対 する要望. 0%. 37 48 39 41. 20%. 満足. 図2. 40%. 不満. 60%. 80%. 100%. どちらともいえない. 無回答. エレベータの満足度評価. A駅. 76. B駅. 70. C駅. 105. D駅. 27. 合計. 278 0%. 20% 満足. 40% 不満. 60%. 80%. どちらともいえない. 100% 無回答. 自由記述による昇降装置への意 見・要望. 図3. エスカレータの満足度評価.

(3) という回答が少なかったのは、設置場所に問題があ. エレベータの利用頻度では、20 歳以下でエレベー. ると思われる。図3よりエスカレータの設置に対し. タを利用しない傾向が見られる。これは、若い人は. ても、8割近くの人が満足しているという事がわか. 体力的に余裕があるため、移動に時間がかかるエレ. った。B駅で満足という回答が少なかった理由とし. ベータは利用せず、階段またはエスカレータを利用. て、設置状況に問題があると思われる。これらのこ. すると考えられる。また、高齢になるにつれ「利用. とから、昇降装置を設置する場合、設置場所・整備. する」という人の割合が増える。. 状況等を考えて設置する必要があると考えられる。. D駅. C駅. B駅. A駅. 図4は「年齢別のエレベータの利用頻度」で、 ~20歳 21~30歳 31~50歳 51~64歳 65歳~ ~20歳 21~30歳 31~50歳 51~64歳 65歳~ ~20歳 21~30歳 31~50歳 51~64歳 65歳~ ~20歳 21~30歳 31~50歳 51~64歳 65歳~. 7 8 12 25 13 7 12 15 20 14 22 9 15 32 23 2 2 2 10 12 0%. 常に利用する. 20%. 時々利用する. 図4. 40%. 60%. あまり利用しない. 80%. 100%. ほとんど利用しない. 図5は「年齢別のエスカレータの利用頻度」で、 A駅・C駅・D駅の3駅では全ての年齢層でエスカレ ータを「利用する」と答えている。特に若い人に 「利用する」という回答が多い。「ほとんど利用し ない」と答えたのは高齢者層に多い。また、D駅で は「利用しない」という回答が少ない。B駅を見る と全ての年齢層でエスカレータを「利用しない」と いう傾向が見られ、これはエスカレータの設置状況 が原因だと考えられる。しかし、そんな整備状況で も「常に利用する」と回答する人もおり、エスカレ ータが全く必要とされていないという事ではない。 図6は昇方向(改札からホーム方向)エスカレ ータ上での歩行に対する回答者の意識で、若い年齢 層では比較的「速く移動できるので良い」と考える 人が多い。特に 21〜30 歳の方は「やめてほしい」 という回答が2割程度と少なく「速く移動できるの で良い」という回答が7割以上である。これは、歩 いた方が速く移動できるからだと考えられる。しか. 年齢別のエレベータの利用頻度. A駅. し、30 歳以上の方を見ると「やめてほしい」とい ~20歳 21~30歳. 7 8. う回答が5割を超えており、その割合は高齢者にな. 31~50歳 51~64歳. 12 25 13. るにつれて少しずつ高くなっている。これは隣を歩. 7 12. れる。今までは急ぐ人の為に片側を空けることがマ. B駅. 65歳~ ~20歳 21~30歳 31~50歳. 15 19. D駅. C駅. 51~64歳 65歳~. 14. かれることで危険を感じるからではないかと考えら ナーと考えられていたが、今回の調査の結果では、 駅による違いはなく約半数の人がやめてほしいと感. ~20歳 21~30歳. 22 9. 31~50歳 51~64歳. 31. 31~50歳. 65歳~ ~20歳. 24 2. 51~64歳. 21~30歳 31~50歳. 2 2 10. 15. 51~64歳 65歳~. ~20歳 21~30歳. 65歳~ 0%. 0%. 図5. 20% 時々利用する. 40%. 60%. あまり利用しない. 80%. 100%. ほとんど利用しない. 年齢別のエスカレータの利用頻度. 40%. 60%. 80%. 100%. どんな時も危険なのでやめてほしい すいている時はかまわないが、混んでいるときはやめてほしい 速く移動できるので良いと思う なんとも思わない. 12. 常に利用する. 20%. 図6. 昇方向(改札からホーム方向)エスカレータ の歩行について.

(4) じており、特に高齢になるにつれ、この考え方の人. (3)設置の検討. が増えていく傾向が見られた。実際に高齢者・障害. 今回の調査結果より鉄道駅のバリアフリー化に際. 者の方には「エスカレータで歩かれると、後ろから. しては、バリアフリー効果が一番高いエレベータを. 突き飛ばされそうになる」と苦情を出す人も少なく. まず設置すべきである。とくに比較的利用者の少な. ない。長年の慣習を変えることは難しいことかもし. い小規模から中規模の駅であればエレベータのみの. れないが困っている人の為にも、せめて混雑時のエ. 設置でバリアフリー効果は大きく得られると思う。. スカレータ上での歩行はやめるべきであると考える。. さらに、エスカレータを設置する場合は、改札口か らホームへ向かう方向のエスカレータをまず設置し、. 5.結論. 逆方向のエスカレータの設置は、乗降者数と設置空 間の確保状況により判断すべきである。例えば、既. (1)エレベータの評価 エレベータの利用者数は他の昇降施設に比べると. 存の階段部に併設する場合は階段幅に余裕がある場 合にのみ逆方向のエスカレータを設置すべきである。. 大幅に少ないことがわかる。しかし、アンケート調. その場合でもエスカレータの並設により階段幅が減. 査結果からは、設置されたことによる満足度はどの. 少し、それが混雑時における乗降者の滞留を引き起. 駅でも全ての年齢層で非常に高く、また、移動制約. こす可能性があるならば、そのようなエスカレータ. の「ある」と答えた人たちはエレベータの設置に関. の設置は慎重に行うべきである。. して全員が「満足」と答えていることがわかった。 よって、エレベータの利用者そのものは少ないが高. 謝辞:快く調査にご協力いただいた鉄道事業者. 齢者や移動制約のある人など本当にバリアフリー整. 各 社 に お 礼申 し 上 げ ま す 。. 備を必要としている人が多く利用しており、エレベ ータ設置によるバリアフリー効果は非常に高いもの と思われる。. 参考文献 1) 国土交通省:平成15年度末 鉄軌道駅のバリア. (2)エスカレータの評価 エスカレータのバリアフリー効果は設置場所や昇 降方向によって違いがあるが、一般の利用者には段. フリー化施設整備状況、http://www.mlit.go.j p/tetudo/barrier/05̲15station01.html、平成 16年7月30日. 差解消としての効果は高いと思われる。しかし、車. 2)(財)運輸政策研究機構:鉄道整備基礎調査、都. 椅子使用者には利用できないことはないが、駅員を. 鉄道整備基礎調査、バリアフリー関連施設の整. 呼ぶ必要があることなど、利用するには解決すべき. 備効果分析に関する調査報告書、pp.140‑143、. 問題が多々ある。また、視覚障害者にとっては安全. 平成15年3月. 性の配慮から点字ブロックでの誘導がされていない。. 3)国土交通省総合政策局監修:平成14年版都市交. 以上のことから、移動制約のある人にとってはエス. 通年報、(財)運輸政策研究機構、平成15年3月. カレータ設置によるバリアフリー効果はあまり期待. 4)国土交通省総合政策局監修:平成15年版都市交. できないと思われる。 また、エスカレータ上での歩行について駅による 違いはなく約半数の人がやめてほしいと感じており、 せめて混雑時のエスカレータ上での歩行はやめるべ きである。. 通年報、(財)運輸政策研究機構、平成16年3月 5)国土交通省総合政策局監修:平成16年版都市交 通年報、(財)運輸政策研究機構、平成17年3月.

(5)

参照

関連したドキュメント

11 月 11 日(月)午後2時から、京阪枚方市駅周辺でノロウイルス食中毒予防啓発街

しい。 の設置等 41 ・駅近くの便利な場所の市有地を活⽤して、市⺠が交流や活動できる図書 に関する

まちの回遊性の向上と併せて、市駅周辺全体のまちづくりと連携 枚方市駅周辺再整備基本計画と連携して一体的なまちづくりに努め

「居心地の良い場所の在り方・場づくり」を検証する社 会実験を実施。⑴人工芝などの設置、絵本の読み聞かせ

[r]

枚方市駅周辺再整備については、多くの地域資源を生かし、魅力的な中心拠点の実現をめざ

取組内容 主な利用客 PR方法 予約方法 手作り体験教室(そば打ち等)日帰りの県外利用者(愛知県民中心) 道の駅HP,地域コミュニティ誌,ラジオ

1.はじめに 1.はじめに JR 王子駅付近では、高速道路新設に伴う下水道移転工事としてシールド工法によるトンネル施工を行な