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鉄道利用客の消費行動を考慮した駅の集客力分析

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(1)

中央大学大学院理工学研究科情報工学専攻 修士論文

鉄道利用客の消費行動を考慮した駅の集客力分析 

Gravity-like Model for Consumers in Public Railway Network

入学年度2004年 学籍番号  04N8100029B

平林  大季 Daiki HIRABAYASHI

指導教員    田口 東 教授

20063

(2)

概要 

 

鉄道利用者を誘致するために,駅を大規模な施設と捉え,駅構内に店舗を構える事業が行 われている.事業を行う前に,効果的な集客をするには,駅がどのような目的で利用され,

どの程度の人に利用されているのかを正確に把握することが重要である.施設の利用者数を 予測するモデルの 1 つにハフモデルがある.ハフモデルは,消費者が目的とする施設までの 移動距離とその施設の規模によって,施設の利用者数を予測できる.しかし,移動距離や施 設規模以外に消費者が考慮するであろう移動の際にかかる料金といった要因が考慮されてい ないという点で,より現実的な施設の利用者数を予測するのは困難である.

  そこで,本研究は,飲食,娯楽,購買を目的とした鉄道利用者を対象に,鉄道利用者が考 慮するであろう移動の際にかかる料金といった移動距離以外の要因を用い,ハフモデルを使 用し,駅集客モデルを提案する.そして,駅の利用者数を駅集客モデルと従来のハフモデル から算出し,比較する.また,駅集客モデルから算出される駅が利用者を引き付ける力を用 いて,駅の集客力の特徴を把握することを目的とする.

  まず,JR 東日本のアンケート調査データから飲食,娯楽,購買を目的とした鉄道利用者の 一連の移動を抽出し,各駅の利用状況の相違や路線の特徴について述べる.

  次に,各駅の利用状況の相違に着目し,乗り換える,通過する,降車して最寄り施設へ行 くという各駅の利用状況を表現する駅利用選択モデルを構築する.まず,鉄道利用者が鉄道 を利用して駅周辺の施設へ向かうという一連の移動を表現するために,出発駅から目的駅ま でのネットワークと,駅から施設までのネットワークを統合した駅−施設ネットワークを構 築する.次に,駅−施設ネットワークを用い,各駅における乗り換える,通過する,降車し て最寄り施設へ行くという3つの選択行動を表現する駅利用選択モデルを,多項Logitモデル を使用し,作成する.

  さらに,駅利用選択モデルから算出した効用値を用いて,実際の鉄道利用者が駅において 料金などの要因を考慮して移動をするという行動を表現するネットワークを提案する.

  最後に,ハフモデルを使用した駅の利用者数を予測する駅集客モデルを提案する.駅集客 モデルは,従来のハフモデルで用いられていた移動距離の代わりに,上記で提案したネット ワークから算出した値を用いる.そして,駅の利用者数を駅集客モデルと従来のハフモデル から算出し,比較する.さらに,駅集客モデルから算出される駅が利用者を引き付ける力を 用いて,駅の集客力の特徴を把握する.

キーワード:駅−施設ネットワーク,多項 Logit モデル,ハフモデル 

(3)

 

目次 

 

1章  序論···1

1.1  研究の背景···1

1.2  研究の目的···1

2章  使用データの概要···3

2.1  研究対象地域について···3

2.2  調査項目の概要···4

2.3  鉄道利用者データの作成···9

    2.3.1  鉄道利用者データの作成···9

    2.3.2  鉄道利用者データの考察···11

2.4  目的による駅と移動経路···13

2.4.1  駅による移動経路···13

    2.4.2  利用路線と目的駅···17

3章  駅−施設ネットワーク···21

3.1  鉄道ネットワークの構築···21

3.2  駅−施設ネットワーク···23

    3.2.1  利用データ···23

    3.2.2  駅−施設ネットワークの構築···24

4章  Logitモデルを用いた鉄道ネットワークの構築···27

4.1  ランダム効用理論···27

4.2  多項Logitモデル···28

4.3  駅利用選択モデルの適用···30

    4.3.1  駅利用選択モデルの構築···30

    4.3.2  パラメータの推定···33

4.4  Logitモデルを用いた鉄道ネットワークの構築···36

5章  駅集客モデルによる駅の集客力分析···40

5.1  ハフモデル···40

5.2  駅集客モデルの適用···41

    5.2.1  駅集客モデルの構築···41

(4)

    5.2.2  パラメータの推定···43

5.3  結果の考察···45

5.4  吸引力からみた駅の集客力···48

6章  結論···52

6.1  まとめ···52

6.2  今後の展望···53

謝辞···54

参考文献···55

  付録 A  飲食,娯楽目的における各モデルの適用結果···57

B  飲食,娯楽目的における吸引力からみた駅の集客力···64

(5)

1

序論

1.1

  研究の背景

  東京都を中心とする地域は大規模な鉄道ネットワークを持ち,鉄道は多くの人に様々な目 的で利用されている.特に新宿駅は,JR線,私鉄および地下鉄の利用者を合わせ1日に約322 万人に利用され,駅の利用者数としては世界 1 位を誇る.さらに多くの鉄道利用者を誘致す るために,駅を大規模な施設と捉え,駅構内に店舗を構える事業が行われている.2005 年秋 にオープンした,株式会社JR東日本ステーションリテイリングによるecute品川やecute大宮 といった施設が代表的な施設である.

このような駅の集客力を利用した事業を行う際,より効果的な集客を見込むためには,事 前に,施設建設予定の駅がどのような目的で利用されているのか,また,駅の利用者数はど の程度なのかを正確に把握することが重要である.施設の利用者数を予測するモデルの 1 つ にハフモデルがある.

ダビッド・L・ハフに考案されたハフモデルは,小売店舗の立地計画について,事前に利 用者数,および売上高の予測を行うことが可能である.ハフモデルは「消費者は身近な店舗 を指向し,施設規模の大きな店舗を指向する」という仮説の基に組み立てられており,扱い の容易さから頻繁に用いられている.ハフモデルを用いた既存の研究として,[14]では,ニュ ータウンにおける商業施設の利用者数を予測している.しかし,移動距離や施設規模以外に 消費者が考慮するであろう移動の際にかかる料金といった要因が考慮されていないという点 で,より現実的な施設の利用者数を予測するのは困難である.

1.2

  研究の目的

本研究は,飲食,娯楽,購買を目的とした鉄道利用者を対象とし,鉄道利用者が考慮する であろう移動の際にかかる料金といった,移動距離以外の要因を用い,ハフモデルを使用し て,駅集客モデルを提案する.駅集客モデルと従来のハフモデルから駅の利用者数を算出し,

比較する.また,駅が利用者を引き付ける力を調べることで,駅の集客力の特徴を把握する ことを目的とする.

(6)

  本論文の構成は以下のようになっている.

  まず,第2章では,本研究で用いるJR東日本のアンケート調査データの概要,および実際 の鉄道利用の状況について述べる.第 3 章では,出発駅から目的駅までのネットワークと,

駅から最寄り施設までのネットワークを統合し,駅−施設ネットワークを構築する.構築し た駅−施設ネットワークを用いて,第 4 章では,各駅の利用状況の相違に着目し,乗り換え る,通過する,降車して最寄り施設へ行くという各駅の利用状況を表現する駅利用選択モデ ルを構築する.さらに,鉄道利用者は,移動時間以外に移動の際にかかる料金といった要因 を考慮した行動を表現するネットワークを,駅利用選択モデルから算出した効用値を用いて 提案する.第 5 章では,第 4 章で提案したネットワークを用いて,ハフモデルを使用した駅 の利用者数を予測する駅集客モデルを提案する.そして,駅集客モデルと従来のハフモデル から駅の利用者数を算出し,比較する.さらに,駅集客モデルから算出される駅が利用者を 引き付ける力を用いて,駅の集客力の特徴を把握する.

(7)

2

使用データの概要

  本章では,本研究で使用するJR東日本のアンケート調査データ(以後,JRデータとする)

の概要,および第4章以降で用いる鉄道利用者データの作成方法を説明する.まず,2.1節で は,本研究の対象地域を示す.2.2節では,JRデータの調査対象者の年齢や職業,外出手段な どデータに記載されている内容を紹介する.2.3節では,JRデータから飲食,娯楽,購買の3 つの目的(これを本研究の対象目的とする)で鉄道を利用した調査対象者を抽出し,鉄道利 用者データを作成する.

2.1

  研究対象地域について

本研究で対象とする地域は,東京70 km圏である.この地域は,JR線や私鉄,地下鉄など からなる鉄道のネットワークを持っており,通勤や買い物,娯楽といった目的の移動手段と して多くの人々に利用されている.今日の鉄道網は,環状に走るJR山手線を境界として,外 側へは放射状に,内側へはくもの巣状に張りめぐらされている.図2.1に首都圏の鉄道網を示 す.図中の緑色で示した線が山手線,赤色で示した点が東京駅,青色で示した点が新宿駅で ある.本研究の対象地域の鉄道網を図2.2 に示す.対象地域の路線は128路線,駅数は 1815 駅で構成されている.

2.1  首都圏の鉄道網 2.2  対象地域の鉄道網

新宿駅 東京駅

山手線

(8)

2.2

  調査項目の概要

本研究ではJR 東日本のアンケート調査データ(以後、JR データとする)を用いる.JRデ ータとは,東京70km圏在住の12歳から69歳までの男女10,013人を対象とした,200275 日(金)から8日(月)までの 4 日間の移動行動と消費行動に関するアンケートデータ である.調査項目は大きく分けて,移動に関する調査項目,鉄道利用に関する調査項目,消 費に関する調査項目,基本属性に関する調査項目に分けられる.それぞれの調査項目の概要 の一部を表2.1に示す.

  調査対象者 ,013人の年齢と性別,職業について,以下に示す.

年齢・性別

  調査対象者の基本属性を図2

あり 比較 20代,30代が全体の約

40%を占めている.

10

.3に示す.対象者は男性5,016人,女性4,997人とほぼ同数で すると,ほぼ等しい.また,男女共に

,男女別の年齢比率を

9.6 10.3 男性

19.5 21.2

21.2 21.0 16.3 18.0 13.2

16.8 18.6 14.3

0% 20% 40% 60% 80% 100%

女性

10代 20代 30代 40代 50代 60代

2.3  調査対象者の性別・年代

調査項目 調査概要

移動に関 的,移動開始時刻,目 通手

段,所要時間,鉄道利用の有無  等

する調査項目 移動目 的地到着時刻,利用した交

鉄道利用に関する調査項目 乗車・降車駅,乗車駅での滞在時間,乗車区間で利用した切 符の種類,乗車していた時間,車内での行動  等

消費に関する調査項目

購入品目,飲食・施設利用の内容,消費金額,入店時刻,店 内滞在時間,同行者数,店舗形態,店舗所在地,店舗の選択 理由  等

基本属性 年齢,性別,居住地,家族構成,世帯収入,職業,定期券保 有の有無  等

2.1 アンケートデータの調査項目

(9)

職業

職業として15個の職種に分けられているが,ここでは職種を以下の5つにまとめる.

・  社会人      :営業・サービス系勤め人,技術系勤め人,事務系勤め人,

製造・労務系勤め人,会社役員,管理職,自営業,自由業

・  学生      :中学生,高校生,短大・大学/専門学校生

・  パート・アルバイト:パート,アルバイト

・  無職・専業主婦    :無職・専業主婦

・  その他の職業      :上記以外の職業

調査対象者の職業の割合を図2.4に示す.社会人と無職・専業主婦が調査対象者の約3分の2 を占めている.

1度でも移動を行った回数 を,1回の移動として集計している.本研究では,対象者の1回の移動を,別の利用者が移動

社会人 無職・専業主婦 学生

パート・アルバイト 12%

無回答 その他の職業

2%

8% パート・アルバイト

その他の

社会人 44%

22%

学生 12%

職業 無回答

無職・専業主婦

2.4  調査対象者の職業の割合

次に、移動に関する調査項目に記載されている11項目の移動目的を,本研究では以下の8 つにまとめる.

・  帰宅:帰宅

・  通勤:通勤

・  通学:通学

・  購買:購買

・  飲食:飲食

・  娯楽:娯楽・観光

・  旅行:旅行

・  その他の目的:通勤以外の業務,行政施設,病院,その他の目的

ここで,JRデータでは,対象期間中にある対象者が目的を持って

(10)

後,鉄道利用とする)と鉄道以外の移動手段(以後,非鉄道利用とする)

ごとに集 た結果,鉄道利用が24,107人,非鉄道利用が56,094人である.鉄道 利用者と 移動目的ごとの人数を表2.2に,鉄道利用と非鉄道利用の移動目的の 比率を図 2.5から鉄道利用の約3分の2は帰宅と通勤目的に利用されているこ とがわか 的による鉄道利用は非鉄道利用に比べて比率が低いことがわかる.

次に,対象目的別に鉄道利用者がどの駅で降車しているかを把握するために,駅ごとにそ の駅を降車駅とした鉄道利用者の利用者数を集計する.目的別に駅ごとの合計利用者数を,

2.3と図 2.6〜図2.8に示す.図中は,高さと色が駅の利用人数を表しており,色は赤いほ ど利用人数が多く,青いほど利用者数が少ないことを示している.図から,利用者数の多い 駅は新宿駅や渋谷駅といった都心部の駅と,横浜駅のような副都心の駅に集中していること がわかる.また,乗り換えができる駅においても利用がみられ,特に,購買目的では町田駅 や吉祥寺駅の利用も多いことがわかる.一方,郊外の駅は移動目的にかかわらず,ほとんど 利用されていないことがわかる.以上から,鉄道利用者は,都心部の駅および乗り換えがで きる駅といった,駅の規模が大きいと思われる駅をよく利用していることがわかる.

    勤務  飲食 娯楽 通学 旅行 無回答 その他の目的  合計

たとみなし,以後,単位を人数として扱う.対象者の移動を上記の移動目的において,鉄 道による移動(以

計する.集計し 非鉄道利用者の 2.5に示す.図 る.また,購買目

2.2  移動目的ごとの人数 []

帰宅  購買

非鉄道利用  18,874   11,222   5,207   3,845 2,555 1,292 267 205   12,627 56,094 鉄道利用  9,616   1,573   5,846   697 1,024 1,425 99 81   3,746 24,107

0% 20% 40% 60% 80% 100%

鉄道利用 非鉄道利用

帰宅 勤務 購買 通学 娯楽 飲食 旅行

その他の目的 無回答

2.5  鉄道利用,非鉄道利用の移動目的の割合

(11)

  新宿  渋谷  池袋  東京 合計  飲食目的  63 40 11 10 607 娯楽目的  56 45 23 13 861 購買目的  173 86 76 19 1368 2.3  各目的の主要駅の降車数と全駅の総利用者数

東京駅 新宿駅 池袋駅

渋谷駅 横浜駅

2.6  鉄道利用者の移動経路(飲食目的)

(12)

2.8  鉄道利用者の移動経路(購買目的)

町田駅

吉祥寺駅

東京駅 新宿駅 池袋駅

渋谷駅 横浜駅

2.7  鉄道利用者の移動経路(娯楽目的)

東京駅 新宿駅 池袋駅

渋谷駅 横浜駅

(13)

2.3

  鉄道利用者データの作成

本節では,JR データから抽出した対象目的における鉄道移動に関するデータを用い,鉄道 利用者の出発駅,目的駅,乗り換え駅を決定し,新たにデータを作成する.

2.3.1  鉄道利用者の出発駅,目的駅,乗り換え駅の決定

  使用データに記載されている乗車駅,降車駅には,乗り換えに使用した駅も含まれている.

そのため,鉄道利用者が 乗車し,乗 ,降車したのかという一連の行動を把握 することが困難である.そこで,本研究では,対象期間中に 1 度でも鉄道を利用したことが ある鉄道利用者に対し,各移動目的における鉄道利用者の出発駅,目的駅,乗り換え駅の決 定をする.ここで,出発駅とは鉄道利用者がある目的で鉄道を利用したときに最初に乗車し た駅を,目的駅とは目的を達成するために最後に降車した駅を,乗り換え駅とは,乗り換え のために利用した駅を示す.

出発駅,目的駅,乗り換え駅を決定する手順を以下に示す.

出発駅

鉄道利用者がある目的を持って移動を行う場合,自宅または勤務先を出発し,最寄り駅を

利用すると考えられる. 寄り駅を移動の起点と

用者の自宅または通勤先の最寄り駅を以下

通勤先の最寄り駅:1度でも通勤目的で鉄道を利用しているならば,通勤目的のために初め り駅とする.

)の駅を出発し,対象目的の移動をする.

複数の移動目的を行い,

対象目的の移動をする.

3. 自宅の駅を出発し,通勤先の駅を経由して対象目的の移動をする.

どの駅で り換え

そこで,本研究では,自宅または勤務先の最 みなし,鉄道移動の出発駅と定義する.各鉄道利

のように決定する.

自宅の最寄り駅  :1度でも帰宅目的で鉄道を利用しているならば,最後に降車した駅を自 宅の最寄り駅とする.

て乗車した駅をその利用者の通勤先の最寄

以後,自宅の最寄り駅を自宅の駅,通勤先の最寄り駅を通勤先の駅とする.ただし,帰宅,

通勤目的の移動がない利用者は,移動目的に関係なく,一番多く乗車駅として利用されてい る駅を出発駅とする.

次に,対象目的の出発駅を自宅の駅または勤務先の駅のどちらにするか決定する.そこで,

移動パターンを以下の4つに分類する.

パターン1. 自宅(または通勤先

パターン2. 自宅(または通勤先)の駅を出発し,帰宅,通勤以外の パターン

パターン4. 自宅の駅を出発し,対象目的の移動を行い,通勤先の駅を経由してさらに対象 目的の移動をする.

(14)

a駅(自宅,通勤先) b

2.9〜図2.12に各パターンの例を示す.図中の四角で囲った駅が各パターンにおける出発 駅となる.パターン1,パターン2の場合,出発駅は自宅(または通勤先)の駅とする.パタ ーン 3 の場合,出発駅は通勤先の駅とする.パターン 4 の場合,自宅の駅を出発した直後の 対象目的の移動に対する出発駅は自宅の駅,通勤先の駅を出発した直後の対象目的の移動に 対する出発駅は通勤先の駅とする.図2.9〜図2.12の場合,四角で囲った駅が各パターンにお ける出発駅となる.ただし,例外として,図2.13のように1度の行動で2つ以上の対象目的 を行う場合,出発駅は全て自宅(または通勤先)の駅とする.図の場合,娯楽,飲食目的共 に四角で囲った駅が出発駅となる.

a駅(自宅)

d b

c(通勤先)

通勤

飲食

購買

2.12 パターン4

a駅(自宅)

c b駅(通勤先)

.11 パターン3

通勤

飲食

2

b

飲食

c

2.13  2つ以上の 目的を 場合の例

a駅(自宅,通勤先)

娯楽

ターン1 2.9

購買

b

その他 飲食

c

a駅(自宅,通勤先) d

2.10 パターン2

対象 行う

(15)

目的駅

目的駅は,利用者が目的を達成するために最後に降車した駅とする.図2.11を例とすると,

飲食目的における目的駅はc なる.

乗り換え駅

乗り換え駅は,鉄道利用者が乗り換えに利用した駅であり,出発駅,目的駅以外の駅が乗 り換え駅にあたる.

使用データを用いて上記の操作をすることで,各目的の移動に対する出発駅,目的駅,乗 り換え駅を決定することが る.こ 用データから出発駅,目的駅,乗り換え駅を決定 したデータを,以後,鉄道利用者データと 鉄道 者データを用いることで,ど のような目的を持って,どのような経路で移動したかを把握することができる.

2.3.2  鉄道利用者データの考察

  作成した鉄道利用者 対象期 における 目的の出発駅から目的駅ま での鉄道利用者の経路を探索し,探索した経路の駅間の利用者数を図2.14〜図2.16に示す.

図中の,高さと色は路線間の利用者数を表しており,色が赤いほど利用者数が多く,青いほ ど利用者数が少ないこと

どの目的においても広範囲で鉄道による移動が行われていることがわかる.路線間の利用 者

駅と

でき の使

する.この 利用

データを用いて, 間中 対象

を示している.

数に着目すると,都心部の路線間の利用者数が多く,特に山手線の北側の利用者数が多い.

また,郊外と都心部を結ぶ路線は利用者数が多く,都心部に近づくにつれて利用者数が増加 している.一方,郊外同士を結ぶ路線は利用者がほとんどみられない.

目的ごとに移動経路の特徴をみていく.飲食目的では,他の目的に比べ郊外を結ぶ路線の 利用者がほとんどみられず,都心と郊外を結ぶ路線と都心部内の路線の利用者が圧倒的に多 い.娯楽目的では,他の目的に比べ,横浜駅に接続する路線の利用が比較的多い.購買目的 は,様々な路線が利用されている.

(16)

新宿駅

東京駅

2.14  鉄道利用者の移動経路(飲食目的)

横浜駅 新宿駅

東京駅

2.15  鉄道利用者の移動経路(娯楽目的)

(17)

2.4

  目的による駅と移動経路

2.4.1  駅による移動経路

  実際に我々がある目的を持って鉄道を利用する場合,鉄道を利用する目的が異なれば目的 とする駅や鉄道の移動経路が異なってくる.鉄道利用者データを用いて,対象目的と目的駅 の関係に着目して分析を行う.

  まず,ある駅を利用する鉄道利用者の移動経路を目的ごとに見る.新宿駅と渋谷駅を対象 とし,利用する鉄道利用者の移動経路を図2.17〜図2.19に示す.全ての対象目的において,

新宿,渋谷駅ともに,乗り換えなしで行ける路線の利用が多く,乗り換え回数が多くなる路 線ほど利用されていないことがわかる.新宿駅は中央線,山手線,京王線,小田原線の利用 が多く,埼玉,横浜方面からの利用が少ないのが特徴として挙げられる.渋谷駅は田園都市 線,東横線,山手線といった路線の利用が多く,埼玉,千葉方面からの利用が少ないのが特 徴として挙げられる.また,目的による相違に着目すると,新宿駅は,娯楽目的は小田原線 の利用が多く,飲食,購買目的は新宿駅周辺から利用されていることがわかる.渋谷駅は,

利用目的によらず田園都市線と東横線の利用が多いことがわかる.

新宿駅

東京駅

横浜駅

2.16  鉄道利用者の移動経路(購買目的)

(18)

( a )  新宿駅を利用する鉄道利用者の移動経路 新宿駅

中央線

京王線

小田原線

山手線

( b )  渋谷駅を利用する鉄道利用者の移動経路

山手線

渋谷駅 東横線

田園都市線

2.17  鉄道利用者の移動経路(飲食目的)

(19)

新宿駅 山手線

中央線

京王線

小田原線

( a )  新宿駅を利用する鉄道利用者の移動経路

( b )  渋谷駅を利用する鉄道利用者の移動経路

渋谷駅 山手線

田園都市線

東横線

2.18  鉄道利用者の移動経路(娯楽目的)

(20)

新宿駅 山手線

中央線

京王線

小田原線

( a )  新宿駅を利用する鉄道利用者の移動経路

山手線

渋谷駅 東横線

田園都市線

( b )  渋谷駅を利用する鉄道利用者の移動経路

2.19  鉄道利用者の移動経路(購買目的)

(21)

2.4.2  利用路線と目的駅

  2.4.1 節から,目的によって利用する路線が異なり,また,各駅には関係が強い路線とそう

でない路線があると考えられる.そこで,ある路線上 道利用者がどの駅で 降車したのかを調べ,駅と路線との関係を分析する.ここで対象とする路線は,特徴のみら れた,新宿駅に接続する中 小田原線,京王線,渋谷駅に接続する東横線,田園都市線,

池袋駅に接続する東上線,池袋線,埼京線の 8 路線とする.購買目的による鉄道利用を路線 ごとに集計した結果を,表 2.4 に示す.また,購買目的での鉄道利用者の鉄道移動状況を図 2.20〜図2.24に示す.

2.4から,路線の は同一路線内での移動が大半を占めていることがわかる.また,終 着駅である池袋,新宿,渋谷駅の利用が多いのも特徴として挙げられる.特に,東上線は終 点である池袋駅の利用が目 ,田園都市線は終着駅である渋谷駅の利用が少なく,

渋谷駅以外の田園都市線の駅や,路線外の駅を利用する傾向が見られる.この違いは,東上 線が池袋駅以外の駅に向かうためには,1度乗り換えを行わなければならないのに対し,田園 都市線は半蔵門線と接続をしているため,電車を下車することなく他の駅に向かうことがで きるためだと考えられる.

このように,駅と路 ることがわかる.特

に路線の終着駅は利用人数が多い.終着駅の利用人数が多いのは,他の駅を利用するには他 の路線に乗り換えるための料金と乗り換えの時間がかかるため,終着駅から他の駅に向かう という行動を抑制する.よって,終着駅の集客力を高めていると考えられる.

新宿駅利用人数 路線内の駅利用人数 路線外の駅利用人数 の駅を出発した鉄

央線,

多く

立つのに対し

線の間には関係が強い路線とそうでない路線があ

中央線 36 50 31

小田原線 17 40 36

京王線 14 13 18

  渋谷駅利用人数 路線内の駅利用人数 路線外の駅利用人数

東横線 15 6 23

田園都市線 5 34 24

  池袋駅利用人数 路線内の駅利用人数 路線外の駅利用人数

東上線 27 20 19

池袋線 11 9 20

埼京線 5 9 9

a) 新宿駅と路線の利用状況 []

b) 渋谷駅と路線の 況 []

c) 池袋駅と路線の利用状況 [] 2.4  各駅と路線の利用状況(購買目的)

利用状

(22)

2.20  中央線利用者の鉄道移動状況(購買目的)

新宿駅

中央線

新宿駅

小田原線

2. 21  小田原線利用者の鉄道移動状況(購買目的)

(23)

新宿駅

京王線

2.22  京王線利用者の鉄道移動状況(購買目的)

2.23  東横線利用者の鉄道移動状況(購買目的)

渋谷駅

東横線

(24)

2.24  田園都市線利用者の鉄道移動状況(購買目的)

渋谷駅

田園都市線

(25)

3

駅−施設ネットワーク

  本章では,第 4 章以降の出発駅から施設間の経路の探索,および所要時間を算出するため に,鉄道での移動を表現するネットワークと,駅から施設への移動を表現するネットワーク を構築し, さらに,一連の移動を表現するために,2つのネットワークを統合したネットワー クを構築する.3.1節では,鉄道利用者の移動を表現するネットワーク(以後,鉄道ネットワ ークとする)を構築する.3.2節では,駅から施設までの移動を表現するネットワークを構築 し,3.1節で構築した鉄道ネットワークと統合することで,鉄道を利用し施設に向かう動きを 表現するネットワーク(以後,駅−施設ネットワーク)を構築する.

3.1

  鉄道ネットワークの構築

  本研究では,鉄道利用者の移動経路を算出するために,路線間の乗り換えや優等列車を考 慮した2次元の鉄道ネットワークを構築する.

ここでは,[7]に基づいて述べる.鉄道ネットワークを構築するためには,駅を表現する点

(以後,駅ノードとする)の座標値が必要となる.そこで,国土地理院が発行している数値 地図2500(空間データ基盤)[5]の数値化された地図データから各駅の座標値を抽出し,それ を各駅ノードの座標値として定義する.また,作成した駅ノード間に鉄道の移動を表現する リンク(以後,鉄道リンクとする)をはることで単一路線のネットワークを構築する.図3.1 に単一路線のみで構成される鉄道ネットワークの例を示す.ここで,鉄道リンクは単に各駅 停車のみのリンクで構成するのではなく,優等列車(特急列車を除く急行,準急など)が存 在する区間では優等列車の移動を表す鉄道リンクをはることで,実際の鉄道を表現する.列 車種別を考慮した単一路線のみで構成されるネットワークの例を,図3.2に示す.図3.2にお いて,赤いリンクが優等列車(快速,急行等)による移動,青いリンクが各駅停車による移 動をそれぞれ表している.

3.1  単一路線の鉄道ネットワーク 図3.2  単一路線の鉄道ネットワーク

(列車種別を考慮したもの)

(26)

3.3  複数路線の鉄道ネットワーク

構築したネットワークは単一路線のネットワークであり,電車から降車して,異なる路線 のホームへ移動するという行動,つまり他路線への乗り換えが考慮されていない.そこで,

3.3 の点線のように駅ノード間に乗り換えリンクをはることで単一路線間の乗り換えを表 現し,上記のネットワークを複数路線の移動を表現するネットワークに拡張する.

上記で構築したネットワークのリンクコストとして,乗り換えリンクコストを考える.ま ず,乗り換えは大きく分けて乗り換えるまでに手間がかかる乗り換えとほとんど手間がかか らない乗り換えの2種類が考えられる.よって,乗り換えを以下の2種類に分類する.

手間がかかる乗り換え    :改札を通過して乗り換えができる異なる鉄道会社間の駅対を

「乗り換え可能駅」と定義し,乗り換え可能駅間の乗り換えを 手間がかかる乗り換えとする.

手間がかからない乗り換え:(原則として同じ鉄道会社内の)改札を通らずに乗り換えがで きる駅対を「同一駅」と定義し,同一駅間の乗り換えを手間が かからない乗り換えとする.

ただし,同一鉄道会社内での乗り換えにおいても,路線間の距離が長く,乗り換えに要する 時間が長い場合,それらの駅対も「乗り換え可能駅」と定義し,手間がかかる乗り換えとし て扱う.

次に,分類した駅間の移動を表す,乗り換えリンクのコストを定義する必要がある.手間 がかからない乗り換えは,移動時間がほとんどかからない(1分未満で移動できる場合が多い)

ため,リンクコストを 0 とする.一方,手間がかかる乗り換えは,異なる鉄道会社間の移動 のため,駅の構造等により乗り換えの手間が大きく変わってくる.そこで,乗り換える駅間 の距離を時間に換算し,リンクコストを与える.

  移動する2点の座標を,それぞれ (x1,y1)(x2 y2) とすると,2点間の移動時間は,

(

x1x2

) (

2 + y1 y2

)

2 55+2 [min] 3.1

(27)

とする.ただし,利用者の歩行速度は分速55 m(時速3.3 km)とする.また,切符を購入す る所要時間などの手間として2分を加算する.

本研究では,上記のネットワークにおいて,鉄道リンクのコストに時刻表データ[16]より抽 出した駅間の所要時間を与える.ただし,同じ駅間で異なる所要時間が与えられている場合,

最短の所要時間を駅間のリンクコストとする.

3.2

  駅−施設ネットワーク

3.2.1  利用データ

  平成8年事業所・企業統計調査を用いて,対象目的に対応する施設の抽出を行う.

平成 8 年事業所・企業統計調査とは,メッシュ単位の統計調査である.データは1 次メッ シュ区画から 4 次メッシュ区画ごとに集計されており,メッシュに含まれる事業所および企 業のデータを集計したデータである.ここで,メッシュの大きさは 4 次メッシュ区画が最も

細かく,0.5 km四方のメッシュである.本研究では,1 km四方のメッシュデータである3

メッシュ区画データ(以後,1 km メッシュデータとする)を用いる.ただし,4次メッシュ 区画データ(以後,0.5 km メッシュデータとする)が存在する地域は,より詳細なデータを 用いるために0.5 kmメッシュデータを用いる.

本研究では,0.5 km四方のメッシュデータである4次メッシュ区画データ(以後,0.5 km メッシュデータとする)を用いる.ただし,4 次メッシュ区画データが存在しない地域は,3 次メッシュ区画データ(以後,1 kmメッシュデータとする)を4分割したものを用いる.

平成8年事業所・企業統計調査には各メッシュに含まれる事業所および企業に対し,154の 業種ごとに以下の内容が記載されている.

・  事業所数

・  従業員数(総従業員数・男性従業員数)

・  経営組織形態別事業所数(国営・民営など)

・  事業所形態別事業所数

・  開設年度別事業所数

・  資本金階級別事業所数

本研究では,駅周辺施設の規模を示す指標として,各業種の従業員数を用いる.ここで,

飲食,購買,娯楽目的での鉄道利用者を本研究の対象とするため,目的ごとに利用施設が異 なってくると考えられる.そこで,各目的に対応すると考えられる施設として表3.1に示した 施設の従業員数を用いる(以後,飲食目的の施設を飲食施設,娯楽目的の施設を娯楽施設,

購買目的の施設を購買施設とする).

(28)

3.1  対象とする施設一覧 飲食施設 飲食店,百貨店

購買施設 百貨店,衣類品店,飲食料品店,書籍,家具・雑貨店,医薬品店

娯楽施設 映画館,劇場,ボウリング場,テニス場,バッティングセンター,遊戯場,

雀荘,パチンコホール,博物館,動物園

3.2.2  駅−施設ネットワークの構築

  本節では,平成 8 年事業所・企業統計調査から抽出した東京,神奈川,埼玉,千葉県のメ ッシュデータを用いて,目的ごとに駅と駅周辺施設を結ぶネットワークを構築し,駅から駅 周辺の施設への移動を表現する.また,構築したネットワークと鉄道ネットワークを統合す ることで,出発駅から鉄道を利用して各目的の目的駅に向かい,さらに目的駅から徒歩で施 設まで移動する一連の移動を表現する.また,施設の規模を見るために目的ごとにメッシュ 内に含まれる総従業員数も抽出する.

  まず,平成8年事業所・企業統計調査から1 kmメッシュデータおよび0.5 kmメッシュデー タに含まれる表3.1に示した施設の従業員数を目的ごとに抽出する.ここで,0.5 kmメッシュ データにメッシュの大きさを合わせるために1 kmメッシュデータを4分割し,0.5 km四方の メッシュにする.このとき,分割したメッシュに与える従業員数は,1 kmメッシュデータに 含まれる従業員数を 4 等分した値とする.次に,メッシュの重心点の座標を算出し,これを メッシュ代表点と呼ぶ.

次に,駅を中心として探索範囲を設け,探索範囲内に含まれるメッシュ代表点を探索し,

その駅の最寄り施設とする.ここで,人が駅から施設に行く場合,分速80 m(時速4.8 km) で10 分間歩いた距離が施設を探索する範囲の上限と仮定し,0.8 kmとする.駅と探索範囲に 含まれる全てのメッシュ代表点の間にリンクをはる(これを施設リンクとする).図 3.4に施 設リンクの構築についての簡易図を示す.ここで,図3.4の赤い点で記したように,メッシュ 代表点が複数の駅の探索範囲に含まれる場合,複数の駅と施設リンクをはる.

:鉄道リンク

:施設リンク

:駅ノード

:メッシュ代表点

:探索範囲 1 km

0.5 km

0.5 km メッシュ

0.8 km 3.4  最寄り施設の探索と施設リンクの作成

(29)

次に,施設リンクのリンクコストを定義する.駅から各施設までの距離は異なるので,施 設までの距離を時間に換算し,施設リンクのリンクコストとして与える.座標値( , )の 駅 と座標値( , )のメッシュ代表点 の2点間の移動時間は,

xn yn n

nj

x ynj nj

(

xn xn

) (

2 yn yn

)

2 80

j

j + [min] ( 3.2 )

とする.

  上記の操作から構築した各目的の駅と施設間のネットワークと,3.1節で構築した鉄道ネッ トワークを統合する.これを駅−施設ネットワークとする.目的ごとに構築した駅−施設ネ ットワークを図 3.5〜図 3.7に,リンク数およびノード数を表3.2に示す.リンクの色は駅か ら施設までの所要時間を表しており,色が赤いほど所要時間が長く,青いほど所要時間が短 いことを示す.

3.2  駅−施設ネットワークの規模 ノード数 リンク数

飲食施設 5,695 9,710

娯楽施設 2,343 4,858

購買施設 5,927 10,015

新宿駅

東京駅

3.5  駅−施設ネットワーク(飲食施設)

(30)

3.6  駅−施設ネットワーク(娯楽施設)

3.7  駅−施設ネットワーク(購買施設)

(31)

4

Logit モデルを用いた

鉄道ネットワークの構築

  本章では,多項Logitモデルを用いて,駅における選択行動を表現するモデルを構築し,構 築したモデルより算出される効用値を用いた鉄道ネットワークを提案する. 4.1節および4.2 節では,本モデルで用いる理論について述べる.4.3節では,多項Logitモデルを用いて,駅 における選択行動を表現するモデルを構築する.4.4 節では,4.3 節で構築したモデルより算 出した効用値を用いた鉄道ネットワークを提案する.

4.1

  ランダム効用理論

  本節は[9]に基づいて述べる.

  交通行動は,個人がある目的を達成するために,交通手段や交通経路について最善の選択 を行った結果と考えられる.すなわち,個人nが選択可能な選択肢を とし,その中に含ま れている選択肢

Jn

jを選択することによって得られる効用を とすると,個人 が の中から 選択肢 を選ぶ条件は,

Ujn n Jn

i

jn,

in U

U > i j, jJn である.

  ランダム効用理論では,この効用 が確率的に変動すると考える.交通行動の分析におい ては,次の4つの理由でこの仮説が非確率的な仮定よりも妥当であると考えられている.

Uin

1. 個人の行動は必ずしも合理的選択行動に厳密に従うとは限らない.正しい情報が 与えられたとしても,それに対する知覚がそれぞれの行動時点で同じではないか もしれない.また,気分転換などの目的で別の行動ルールをとることも考えられ る.

2. 個人にとって利用可能な選択肢の範囲やその特性などの情報を完全に把握する ことは困難であり,多くの個人にとってはそれらの情報は不完全な形でしか得ら れない.

3. 交通行動を予測するのにあたり,効用に関する選択肢のもつ特性や個人の社会経

(32)

済属性,その他様々な要因の中には測定が困難なものや,複雑すぎて関数の中に 取り入れにくいものも多く存在する.

4. 使用するデータには測定誤差や範囲誤差などがある.

  ランダム効用理論では, を確率変数とし,これを確率的に変動しない確定項V と変動す る確率項

Uin

ε の和として次のように表現する.

in in

in V

U = +ε

このとき,個人nが利用可能な選択肢集合Jnの中から選択肢 を選ぶ確率i Pn( )i は,個人 が選 択肢iを選択したときに得られる効用 が,選択肢

n Uin jを選択したときに得られるであろう効用 より大きくなる確率として,

Ujn

( )

[

in jn n

]

n i U U i j j J

P =Prob > ; , (4.1)

と表すことができる.

  ここで,確定項と確率項の性質をみておく.まず,効用の測定のスケールが移動して定数 項V0が追加されても選択確率は変化しない.すなわち,

( )

[ ]

[

in in jn jn n

]

n jn

jn in in n

J j j i V

V V

V

J j j i U

U i

P

+ +

>

+ +

=

+

>

+

=

,

; Prob

,

; Prob

0

0 ε ε

ε ε

である.また,測定のスケールをα(>0)倍しても選択確率に影響しない.すなわち,

( )

[ ]

[

in in jn jn n

]

n jn

jn in in n

J j j i V

V

J j j i V

V i

P

+

>

+

=

+

>

+

=

,

; Prob

,

; Prob

αε α

αε α

ε ε

である.

4.2 

多項

Logit

モデル

  ガンベル分布は,次式のような分布関数で表される.

( )ε =eeω(εη) ,ω >0 F

ガンベル分布は次のような性質を持つ.

ε が パ ラ メー タ( )η,ω の ガ ンベ ル 分 布 の確 率 変 数 の場 合 ,αε+V も パ ラ メ ー タ

+

α

αη V,ω のガンベル分布となる.

ε1,ε2がそれぞれパラメータ(η1,ω) (, η2,ω)をもつ独立のガンベル分布に従うとき,

は次のようなロジスティック分布となる.

2

1 ε

ε ε =

( )

( )

= + ωη η ε ε

2

1 1

1 e F

(33)

③(ε1,ε2,L,εJ)がそれぞれパラメータ(η1,ω) (, η2,ω),L,(ηJ,ω)をもつ 個の独立のガン ベル分布に従うとき,

J

(ε ,ε , ,εJ)

max 1 2 L もパラメータ ⎟⎟

⎜⎜

=

ω ω

ωη , 1ln

1 J

j

e j のガンベル分布 となる.

(4.1)において,確率項εjn(j=1,2,L,Jn)が独立で同一なガンベル分布に従う場合,このガ ンベル分布のパラメータ( )η,ω を( )0,1 と仮定すると,ガンベル分布が持つ性質①より,

jn jn

jn V

U = +ε はパラメータ

( )

Vjn,1 のガンベル分布となる.さらに選択肢1を選ぶ確率は次のよ うになる.

( )

[ ]

[ ]

( )

[

jn jn

]

J n j

n

n jn

jn n n

n jn

n n

V V

J j

V V

J j

U U P

n

ε ε

ε ε

+

+

=

= +

>

+

=

=

>

=

=2,3, , 1

1 1 1

1

max Prob

, , 3 , 2 , Prob

, , 3 , 2 , Prob

1

L

L L

ここでUn

(

jn jn

)

J

n j V

U

n

ε +

= =

, , 2

maxL

と定義すると,性質③より は のガンベル分布となる.

Un ⎟⎟

⎜⎜

=

1 , ln

2

n jn

J

j

eV

  さらに, ∑ とおくと, は性質①よりパラメータ

=

= + = Jn jn

j V n

n

n V e

U

2

ε ln εn ( )0,1 のガンベル分布

となる.したがって,

( )

[ ]

( ) ( )

[

0

]

Prob Prob 1

1 1 1 1

+

+

=

+

>

+

=

n n n n

n n n n n

V V

V V

P

ε ε

ε ε

となる.ここで,2つの独立したガンベル分布の確率変数差がロジスティック分布となるとい う性質②を用いると,

( ) ( )

=

+

= +

=

= +

= +

=

n jn n

Jn j

Vjn n

n

n n

n

n n

J

j V V

V e V

V V

V V

n V

e e e

e e

e e

e e

P

1 ln

1

1 2 1

1 1

1 1

1 1

となる.上式を一般化すると

( ) ∑

=

n jn in

J j

V V

n e

i e

P4.2

図 2.8  鉄道利用者の移動経路(購買目的) 町田駅 吉祥寺駅 東京駅新宿駅池袋駅渋谷駅横浜駅図2.7  鉄道利用者の移動経路(娯楽目的)東京駅新宿駅池袋駅渋谷駅横浜駅
図 2.20   中央線利用者の鉄道移動状況(購買目的)新宿駅中央線 新宿駅 小田原線 図 2. 21   小田原線利 用 者の鉄道移動状況( 購 買目的)
図 2.24   田園都市線利用者の鉄道移動状況(購買目的)
図 3.3   複数路線の鉄道ネットワーク 構築したネットワークは単一路線のネットワークであり,電車から降車して,異なる路線 のホームへ移動するという行動,つまり他路線への乗り換えが考慮されていない.そこで, 図 3.3 の点線のように駅ノード間に乗り換えリンクをはることで単一路線間の乗り換えを表 現し,上記のネットワークを複数路線の移動を表現するネットワークに拡張する. 上記で構築したネットワークのリンクコストとして,乗り換えリンクコストを考える.ま ず,乗り換えは大きく分けて乗り換えるまでに手間がかかる
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