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九州大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2022

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

タンポポ属の反曲した総苞は物理的防御 : 実験的証 拠とタンポポ属の進化史

呉, 馥宇

https://doi.org/10.15017/1806849

出版情報:Kyushu University, 2016, 博士(理学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

(2)

(様式6-2)

氏 名 呉 馥宇

論 文 名 Recurved phyllaries of Taraxacum function as a floral defense: experi mental evidence and its implication on the evolutionary history of Tar

axacum(タンポポ属の反曲した総苞は物理的防御: 実験的証拠とタン

ポポ属の進化史)

論文調査委員 主 査 九州大学 教授 矢原 徹一 副 査 九州大学 教授 舘田 英典 副 査 九州大学 准教授 佐竹 暁子

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

タンポポ属を含むキク科植物では、外総苞片がしばしば反曲している。しかし、この形態の適応 的機能は未知であった。本研究は、タンポポ属の反曲した総苞が食害者への防御機能を持つことを 実験的に実証した。

在来種カンサイタンポポは有性生殖をおこなう2倍体であり、自家不和合性のため、送粉昆虫によ る他家受粉によってのみ結実する。外来種セイヨウタンポポと雑種タンポポ(カンサイタンポポと セイヨウタンポポの雑種)は、種子による無性生殖(無融合種子形成)を行う倍数体であり、送粉 昆虫による受粉がなくても結実する。在来種カンサイタンポポは直立した外総苞片を持つが、外来 種セイヨウタンポポと雑種タンポポは反曲した外総苞片を持つ。いずれにおいても、頭花(多数の 小花の集合)は昼間には開くが、夜間には内総苞片が直立して小花を覆い、頭花が閉じる。夜間に は、ヨーロッパ原産の外来種チャコウラナメクジがしばしば頭花柄をのぼって頭花に到達し、小花 を食害する。この材料を用いて、以下の実験を行った。

カンサイタンポポと雑種タンポポ各8個体からなる実験集団に外来種チャコウラナメクジを導入 すると、在来種カンサイタンポポだけが頭花の食害を受けた。両者の頭花柄にチャコウラナメクジ を置くと、在来種カンサイタンポポではチャコウラナメクジ30個体全てが直立した外総苞片の上を 通って頭花に到達し、小花の上部(花弁や花粉が付着しためしべの先端部)を食害した。花弁の消 失は送粉昆虫の誘引に負の影響を与え、花粉が付着しためしべの食害は種子生産に負の影響を与え ると考えられる。一方、雑種タンポポではチャコウラナメクジ30個体中9個体が外総苞片の下で退却 した。外総苞片を乗り越えたナメクジ21個体においても、移動により長い時間を必要とした。外総 苞片を切断すると、すべてのナメクジ個体が外総苞片を乗り越えて花を食害した。この結果から、

反曲した外総苞片はナメクジの食害を防ぐ機能を持つと考えられる。さらに、セイヨウタンポポの 性質を引き継いだ雑種タンポポでは、内総苞片がカンサイタンポポより長く、夜間には花弁を完全 に包みこんでいるために、頭花に到達したチャコウラナメクジは花弁を食害できなかった。一方、

より短い内総苞片を持つカンサイタンポポでは、頭花の先端が完全に閉じないために、頭花に到達 したナメクジは内総苞片の間隙から花弁を食害できた。以上の結果から、雑種タンポポでは反曲し た外総苞片と、夜間に小花を完全に覆うことができる長い内総苞片によって、チャコウラナメクジ による花の食害への防御に成功しているのに対して、在来種カンサイタンポポはチャコウラナメク ジによる花の食害に対する有効な防御機構を持っていないことが示された。

これらの結果は、セイヨウタンポポが原産地ヨーロッパにおいて、チャコウラナメクジの食害圧

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の下で反曲した外総苞片を進化させた可能性を示唆する。この可能性を検証するために、ヨーロッ パから東アジアに広く分布するタンポポ属の572種について外総苞片の形態を調査した。その結果、

東アジア産タンポポ属132種中5種のみが反曲した外総苞片を持つのに対して、ヨーロッパ産タンポ ポ属440種中267種が反曲した外総苞片を持っていた。タンポポ属の系統関係の証拠から、直立した 外総苞片がタンポポ属における祖先的な状態であり、祖先的な種は中央アジアに分布していた。し たがって、直立した外総苞片を持つ種が中央アジアからヨーロッパに分布を広げ、ヨーロッパにお いておそらくナメクジの食害圧の下で反曲した外総苞片が進化し、反曲した外総苞片を持つ種が多 様化したと考えられる。一方、東アジアに広がった系統では、チャコウラナメクジのようなタンポ ポの頭花を頻繁に食害する花食者がいなかったために、直立した外総苞片を持つ種が多様化したと 考えられる。

以上の研究成果は、キク科植物の頭花にしばしば見られる反曲した外総苞片の適応的機能を初め て明らかにしたものであり、植物繁殖生態学において価値ある業績であると認める。

よって、本論文は博士(理学)の学位論文に値するものと認める。

参照

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