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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 鬼 丸 力 也      学  1xL 論 文 題 名

Calculation of rotational setup error using the real‑time     tracking radiation therapy (RTRT) system and its    application to the treatment of spinal schwannoma.

(動体追跡照射システムを用いた回転セットアップエラーの測定と      脊 髄 神 経 鞘 腫 に 対 す る 放 射 線 治 療 へ の 応 用 )

学位論文内容の要旨

    「 目 的 」

  聴 神 経 鞘 腫 に 対 す る 定 位 的 放 射 線 治 療 は50Gy/25回 の 線 量 で5年 局 所 制 御 率 が 約90% で あ り 、 副 作 用 もmicrosurgeryよ り も少 なぃ との 報告 が ある 。こ のこ と から 、体 幹部 の脊 髄 神経 鞘腫 に対 して も 有 効 で あ る 可 能 性 が あ る が 、 脊 髄 の 耐 容 線 量 は50Gyと い わ れ、 それ 以上 の線 量 が照 射さ れた 場合 は 重 篤 な 晩 期 反 応 で あ る 脊 髄 症 の 可 能 性 が 高 く な る 。 通 常 の 患 者 セ ッ ト ア ッ ブ 方 法 で は5mm〜lcm程 度 の 誤 差 が あ る と い わ れ て お り 、 こ の た め 、2mm程 度 の 誤 差 が 望 ま し い 脊 髄 神 経 鞘 腫へ の放 射線 治 療 は 行 わ れて こな かっ た 。我 々は 動体 追跡 照 射装 置を 開発 し 、前 立腺 癌の 放射 線 治療 に正 確な セッ ト ア ヅ ブ の た め に 使 用 し た と こ ろ 、 平 行 移 動 の 偏 り を 土2mmま で 減 ら せ た 。 し か し 、 標的 の回 転角 度 を 計 算 す るこ とが でき な いの で、 周辺 組織 で 過剰 照射 が問 題 にな る場 合は 使用 で きな かっ た。 この 欠 点 を 補 う ため 、新 たに 回 転と 平行 移動 の偏 り を計 算で きる ア ルゴ リズ ムを 開発 し 、そ れを 利用 して 脊 髄 に 過 線 量を 照射 せず に 脊髄 神経 鞘腫 を治 療 でき るよ うに な った 。こ の研 究で は 、脊 髄神 経鞘 腫に 対 す る 放 射 線治 療に おい て 従来 どお りと 動体 追 跡照 射装 置に よ るセ ット アッ プの 平 行移 動、 並び に回 転 の セ ッ ト ア ッ ブ ェ ラ ー を 評 価 し た 。 ま た 、5例 の 脊 髄 神 経 鞘 腫 患 者 へ の 初 期 経 験 を 報 告 す る 。

    「対象 と方法」

標的体積の 回転角の計算方法

  新 し い ア ル ゴ リ ズ ム で は、3つ の金 マー カ ーを 透視 装置 で りア ルタ イム に同 定 し、 治療 装置 に固 定 し た 座 標 系 で の 位 置 を 計 算 す る 。 実 際 の マ ー カ ー の 座 標 系Pは 方 向 余 弦 行 列Mと 計 画 時 の マ 一 カ ー の座標系Eを用いて、Z =MYと表される。Mは、Rエ(め、Ry(p)およびRー(めを用いて、M=RエルRy(p) Rzくめ と 表 さ れ る 。 こ の 関 係 に より 、 軸の 周り の回 転角 が 求め られ る。 理論 的 にはZ軸 の周 りにY、Y軸の 周 り に 臥X軸 の 周 り にaの 順 で 回 転 さ せ れ ば 実 際 の 位 置 と 計 画 時 の 位 置 が 合 う こ と に な る 。 脊髄神経鞘 腫に対する治療

  2000年4月 か ら2002年4月 ま で 、5人 の 脊 髄 神 経 鞘 腫 の 患 者 を 治 療 し た 。4人 は50Gy/25回 で 、 1人 は 治 療 期 間 の 短 縮 の た め に35Gy/8回 で 治 療 さ れ た 。 直 径2mmの 金 マ ー カ ー3個 を 、3人 は 経 皮

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的 に、2人 は手 術的に 挿入さ れた。治 療計画用CTは、金 マーカー 近傍はImmスラ イス厚 で、他の 部 位は5mmで 撮 影された 。治療 計画はFOCUS (Computerized Medical SystemLCMSJ,St.Louis, MO)で 立て 、 治 療は り ニ アヅ ク(EXL‑20DP三菱 電 機 株 式会 社 、 東京 ) を 用い 、10MVX線で3‑‑4 門の門数で治療した。計画標的体積は臨床的標的体積に脊髄側で2mm、他の部位には5mmをっけた。

金マー カーの位 置は5人の患 者で合計75回、通常の患者セットアップの後と、動体追跡照射装置で のセッ トアッブ の後に 測定され た。3つのマ ーカーを マーカー1、2、3とし、腫瘍に一番近いマー カーをマーカー1とし、マーカー1を平行移動の補正に使用した。腫瘍や正常組織が十分硬いとぃう 仮定の下で、臨床標的体積の回転を計算し、a、p、Yの値を計算した。回転角の偏りは、5人それそれ の回転の平均値の、さらにその標準偏差として求めた。回転角のばらっきとしてすぺての測定の標準 偏差を求めた。この研究期間中は回転エラーの補正は行わなかった。

    「結果」

  3つのマーカー全てのばらっきは、通常のセットアップの後では、左右方向に3.lmm、頭尾方向に 5.Omm、背腹方向に3.lmmであった。動体追跡照射によるセットアップの後では、左右方向に1.5mm、 頭尾方向に1.7mmヽ.背腹方向に1,8mmであり、いずれの方向でも統計的有意差があった。平行移動 のばらっきは手術的にマーカーを挿入された患者が、経皮的に挿入された患者よりも有意に少なかっ た。

  平行移 動の偏り は通常 のセット アップ の後では 、左右方向に2.lmm、頭尾方向に3.2mm、背腹方 向に2.2mmであっ た。動 体追跡照 射によ るセット アッブの後では、左右方向に0.8mm、頭尾方向に 0.5mm、 背腹方向 にl.lmmであった 。頭尾 方向と背 腹方向で改善傾向にあった。平行移動の偏りは 手 術的 に マ ーカ ー を 挿入 さ れ た患 者 が 、経 皮 的 に挿 入 さ れ た患 者 よりも有 意に少 なかった 。 回転角のばらっきはaが5.9度、pjjs 4.6度、Yが3.1度であった。回転角の偏りはaが711度、Dが6.6 度、Yが3.0度であった。回転角の偏りは手術的にマーカーを挿入された患者が、経皮的に挿入された 患者よりも有意に少なかった。

  中央値12ケ月の経過観察期間で、薬剤投与を必要とする早期放射線反応は見られず、晩期放射線,

反応や腫瘍増大も見られていない。

    「考察」

  回転角を計算するために、3次元空間での回転を行列の積として表現するモデルを使用した。この 方法には、マーカー間の距離が近いと計算誤差が大きくなる、マーカーの移動および軟部組織のひず みに対処できない、などの欠点がある。これらへの対処として、マーカー間の距離にっいては、1.5cm 程度以上とることが勧められる。また、手術的にマーカーを挿入された患者ではマーカーの移動や回 転の偏りが少ないこと、マーカーの移動に対しては手術的挿入が有用であることが示された。軟部組 織 の ひ ず み に 対 し て は 、 今 後 、 標 的体 積 の 捻れ の 研 究 が重 要 と なる で あ ろう と 思 われ る 。   今回の研究では、平行移動の補正後も回転角の偏りは認められることが示された。回転角の偏りは 容易に修正することができなぃので、現時点ではこれに対処するマージンを標的に加える必要がある が、回転行列の計算から求めた角度を逆に補正することで、回転角の偏りを縮小する研究を進めてい る。

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(3)

  また、脊髄神経鞘腫に対する治療としても、懸念されていた脊髄症の発症はなく、有効な治療のー っとなりうると思われる。

    「結論」

  傍脊椎領域の治療での従来のセットアップより動体追跡照射を用いたセットアッブが平行移動の偏 りとばらっきを小さくすることができる。動体追跡照射によるセットアップが脊髄神経鞘腫の精密な 治療に有用である。

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学位論文審査の要旨

Calculation of rotational setup error using the real‑time    tracking radiation therapy (RTRT) system and its    application to the treatment of spinal schwannoma.

(動体追跡照射システムを用いた回転セットアップエラーの測定と      脊 髄 神 経 鞘 腫 に 対 す る 放 射 線 治 療 へ の 応 用 )

  聴 神 経 鞘 腫 に 対 す る 定 位 的 放 射 線 治 療 は50Gy/25回 の 線 量 で5年 局 所 制 御 率 が 約 90% と の 報 告 が あ る 。 この こ と か ら、 脊 髄 神経 鞘 腫 に対 し て も有 効 で ある 可 能 性が あ る が 、 脊 髄 の 耐 容 線 量 は50Gyと い わ れ て お り 、 そ れ 以 上 の 線 量 で は 放 射 線性 脊 髄 症 の 危 険 が あ る 。 通 常 の 患 者 セ ッ ト ア ッ プ 方法 で は5111D1〜1Cm程 度 の誤 差 が あ る と い わ れ て お り 、 こ の た め 、2mm程 度 の 誤 差 が 望 まし い 脊 髄神 経 鞘 腫へ の 放 射線 治 療 は 行 わ れ て こ な か っ た。 我 カ は 動体 追 跡 照射 装 置 を開 発 し 、前 立 腺 癌の 放 射 線 治 療 に 使 用 し た と こ ろ 、 平 行 移 動 の 偏 り を 土2mmま で減 ら せ たが 、 標 的の 回 転 角度 を 計 算 す る こ と が で き な いの で 、 周 辺組 織 で 過剰 照 射 が問 題 に なる 場 合 は使 用 で き な か っ た 。 こ の 欠 点 を 補 うた め 、 新 たに 回 転 と平 行 移 動の 偏 り を計 算 で きる ア ル ゴ リ ズ ム を 開 発 し た 。 本 研 究で は 、 脊 髄神 経 鞘 腫に 対 す る放 射 線 治療 に お いて 従 来 ど お り と 動 体 追 跡 照 射 装 置 によ る セ ッ トア ッ プ の平 行 移 動、 並 ぴ に回 転 の セッ ト ア ッ プ エ ラ ー を 評 価 し た 。 ま た 、 5例 の 脊 髄 神 経 鞘 腫 患 者 で 臨 床 応 用 し た 。   新 し い ア ル ゴ リ ズ ム で は 、3つ の 金 マ ー カ ー を 透 視装 置 で 同定 し 、 治療 装 置 に固 定 し た 座 標 系 で の 位 置 を 計算 す る 。 実際 の マ ーカ ー の 座標 系Z は 方 向 余弦 行 列Mと 計 画時 の マ ーカ ー の 座標 系Zを用 い て 、E =MEと 表される 。Mは 、Rエ(q)、Ry(p) お よ.ぴRエ(Y)を用いて、M=Rエ(Y)Ry(p)Rエ(a)と表され、この関係を用いて回転角が計算 される。

  2000年4月 か ら2002年4月 ま で5人 の 脊 髄 神 経 鞘 腫 の 患 者 を 治 療 し た 。 直 径 2mmの 金 マ ー カ ー3個 を 、3人 は 経 皮 的 に 、2人 は 手 術 的 に 挿 入 さ れ た 。 治 療 計 画 はFOCUS (Computerized Medical SystemLCMSl,St.Louis,MO)で 立 て 、 治 療 は り ニ ア ッ ク (EXL‑20DP, 三 菱 電 機 株 式 会 社 、 東 京 ) を 用 い 、10MVX線 で 治 療 し た 。     ―532―

信 男

喜 和

崎 坂

岩 宮

授 授

教 教

査 査

主 副

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   金マーカーの位置は 5 人の患者で合計75 回、通常の患者セットアップの後と、

動体追跡照射装置でのセットアップの後に測定された。腫瘍に一番近いマーカーを 平行移動の補正に使用した。回転角の偏りは、5 人それぞれの回転の平均値の、さ らにその標準偏差として求めた。回転角のばらっきとしてすべての測定の標準偏差 を 求 め た 。 こ の 研 究 期 間 中 は 回 転 エ ラ ー の 補 正 は 行 わ な か っ た 。   3 つのマーカー全てのばらっきは、通常のセッ卜アップの後では、左右方向に 3.lmm 、頭尾方向に 5.Omm 、背腹方向に 3.lmm であった。動体追跡照射によるセ ットアップの後では、左右方向に1.5mm 、頭尾方向に 1.7mm 、背腹方向に1.8mm であり、いずれの方向でも統計的有意差があった。平行移動のばらっきは手術的に マーカーを挿入された患者が、経皮的に挿入された患者よりも有意に少なかった。

平行移動の偏りは通常のセットアップの後では、左右方向に2.lmm 、頭尾方向に 3.2mm 、背腹方向に2.2mm であった。動体追跡照射によるセットアップの後では、

左右方向に 0.8mm 、頭尾方向に 0.5mm 、背腹方向にl.lmm であった。平行移動の 偏りは手術的にマーカーを挿入された患者が、経皮的に挿入された患者よりも有意 に少なかった。

   回転角のばらっきは a が5.9 度、p が 4.6 度、Y が3 .1 度であった。回転角の偏り はa が7.1 度、D が6.6 度、 y が3.0 度であった。回転角の偏りは手術的にマーカー を挿 入 され た 患者が 、経皮的に 挿入された 患者よりも 有意に少な かった。

   中央値120 月の経過観察期間で、早期放射線反応は見られず、放射線性脊髄症 は見られていない。

   今回使用した方法には、マーカー問の距離が近いと計算誤差が大きくなる、マー カーの移動および軟部組織のひずみに対処できない、などの欠点がある。これらへ の対処として、マーカー間の距離は1.5cm 程度以上とる、手術的にマーカーを挿入 することが勧められる。

   口頭発表に際し、副査の玉木教授から 3 個のマーカーを利用しての位置決め方法 について質問があった。次いで、副査の宮坂教授からマーカーの挿入部位による誤 差や挿入方法について質問があった。最後に、主査の岩崎教授からマーカーの手術 的挿入部位や、マーカー間の距離、脊髄神経鞘腫に対する放射線治療の適応につい て質問がなされた。いずれの質問に対しても、申請者は研究結果に基づぃて、ある いは文献的知識により、おおむね適切な解答を行った。

   この論文は、放射線治療の患者セットアップにおける移動誤差、回転誤差の影響 を明らかにしたものとして意義のあるものと評価され、今後の研究の発展も期待さ れる。

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑚や取得単位 なども併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと判 定した。

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参照

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