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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 高 野 晶 寛

     学位論文題名

Thalamic asymmetry on interictal SPECT in patients     with frontallobeepilepSy

(前頭葉てんかんにおける非発作時SPECT での視床血流に関する研究)

学位論文内容の要旨

  てん かん の発 作 焦点 を検 索す る上 でPositron emission tomography(PET)やSingle photon emission computed tolnography (SPECT)などの機能検査は比較的侵襲の少ない、臨 床的に有用な検査である。18F―FDGを用いたPETによる非発作時検査では側頭葉てんかん患 者の60−90%において焦点での低糖代謝が報告されている。しかし、18F−FDGを用いたPET 検査での焦点検出カは てんかんにより異なり、側頭葉てんかんに比べ、側頭葉外てんかん は劣っている。SPECT検査ではてんかん焦点は非発作時検査で低血流部位として認められる。

側頭葉てんかんでは側 頭葉での血流低下が認められるとともに、低下側と同側の視床の血 流低下も報告されてい る。SPECT検査でもFDGを用いたPET検査同様、側頭葉外てんかんで の焦点検索は容易でな く、検出カは側頭葉てんかんと比較すると劣っている。また側頭葉 てんかんで報告される ような視床などの焦点外の血流低下に関する検討は側頭葉外てんか んでは十分になされて いない。今回我々は側頭葉外てんかんのうち前頭葉てんかん患者に お け る 視 床 血 流 の 変 化 が て ん か ん 焦 点 検 索 に 有 用 で あ る か を 検 討 し た 。   対象は前頭葉てんか ん患者51名とした。診断は臨床症状および脳波所見に基づきてんか んの専門医によってな された。前頭葉てんかんは前頭葉内にてんかん原性域をもってんか んの総称であるが、我 々はその中で偏側性の運動性発作(四肢の非対称な強直運動や頭部 や眼球の偏位など)を呈し、MRIでの特異所見を認めない患者について今回検討を行うこと と した 。そ のよ うな 患者 は11名( 男性7名、女性4名、16歳〜48歳)であった。SPECT検 査 は非 発作 時にlllMBqの123I̲IMPを静注後20分間、3検出器型SPECT装置(GCAー9300)を 用 い て 施 行 し た 。 画 像 の 再 構 成に はButterworthフイ ルタ ーを 用い たfiltered back projection法を用いた 。前頭葉および視床の血流を検討するため、脳アトラスと個々人の MRI画像を参照し、視床を含む連続する2スライスに前頭葉および視床に半自動的に関心領 域を設定した。各領域で以下のようにpercent asymmetry index (%AI)を算出した。%AI=200 x(R―L)/(R+L)、Rは各関心領域の右側の放射能カウント、Lは各関心領域の左側の放射能 カウントとした。前頭 葉に関しては下部前頭葉、下部前頭側頭葉、上部前頭葉、上部前頭 側 頭葉 の4っに 分 け、 視床 は2スラ イス を合 わ せて1領 域と した。%AIが5%以上のとき を有意な左右差とした。SPECT検査による左右差を臨床症状による焦点側と比較検討した。

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  視床の左 右差は11名中7名に認め られ、 前頭葉の 左右差 は6名 に認めら れた。3名では 視床、前頭葉ともに低下していたが、視床、前頭葉ともに同側の低下は1名のみであった。

前 頭葉の み左右差 を認め た症例は3例で あり、 そのうち2名は臨床症状による焦点側と一 致 してい た。視床 のみ左右差を認めた症例は4例あり、その全例が臨床症状による焦点側 と 一致し ていた。 左右差 自体は視 床で11名 中7名 なのに比 し、前 頭葉領域 では2〜3名と 少 ないが 統計的に 有意な 差はなか った。 また視床では左右差のあった7名のうち6名で臨 床症状による焦点側と一致していた。

  今回の結果は前頭葉てんかんでの発作焦点検索に前頭葉自体に加え視床の血流を検討す る ことの 重要性を 示している。今回の視床血流の検出には再構成後のFWlldが10mm以下の 高 い空間 分解能を 持つ3検出器 型SPECTに拠ると ころが大きいと思われる。これまでにも 非 発作時SPECTにて 同側の視床血流の低下が側頭葉てんかんにおいて報告されており、側 頭葉てんかんにおいて皮質下領域と臨床症状との関係についてこれまでにいくっか報告さ れている。Kotagalらは発作時ジストニアを呈する症例でのジストニアの偏位側による焦点 側検索が可能であると報告し、Newtonらは一側性のジストニアが反対側の基底核の血流上 昇と関係があることを示した。これらの報告は皮質のみならず皮質下の左右差も臨床的有、

用性があることを示している。視床血流の左右差の機序は明らかではないが、視床皮質神 経路のみならず視床自体の機能低下も重要な要因と思われる。視床が一部のてんかんにお いて発作の開始、伝播などに重要な役割を果たしているかもしれないとの報告がある。Mori らはてんかん重積発作により死亡した患者の神経病理学的研究を行い、皮質の傷害は少な く 、視床 は皮質か らの2次的な要因でなく発作自体によって傷害を受けたのではないかと 報告している。またKoらは迷走神経刺激により対側の視床の血流上昇を報告している。側 頭 葉てん かんではSPECT検査を非発作時のみならず、発作時にも施行することにより発作 焦点の検索に役立っている。発作時において側頭葉での血流変化に加え、側頭葉外の領域 で焦点と同側の基底核での血流上昇、反対側の小脳血流上昇が報告されている。このよう な 所見は 側頭葉で の所見 が明らか でない ときにも有用であると考えられている。発作時 SPECTは前頭葉てんかんなどの側頭葉外てんかんでも応用可能であるが、前頭葉てんかんは 側頭葉てんかんに比し、発作時間が短く、発作伝播も早いため、側頭葉てんかんほど発作 時SPECTの 実用性が 高くな く、非発 作時SPECT検査の重要性が相対的に高く、今回の研究 のような前頭葉以外での所見は臨床的な有用性があると考えられる。今回の研究では視床 血流の左右差を検討したがそれのみでは焦点側の同定は可能であるが焦点そのものの同定 ができない欠点がある。しかし焦点側の検索のみでも臨床的な有用性はあると思われる。

ま た前頭 葉てんか ん症例のうちMRI異常所見のない症例のみとし、脳波でなく臨床症状を 焦点同定の基準とし、偏側性のある運動性発作を呈する症例としたために、最終的に対象 と なった 症例数が 少なくなった。これはMRIで異常所見があると視床血流に影響を与える と考えられることや、脳波検査では前頭葉の大きさや形状のために十分に発作焦点を検索 できないことが多いが、臨床症状の偏側性は焦点側を示唆するとの報告があることを考慮 し た た め で あ る が 、 今 後 さ ら な る 大 規 模 の 検 討 が 必 要 で あ る と 思 わ れ る 。   今回の結 果から前 頭葉てんかんにおける非発作時SPECT検査での視床血流の左右差が焦

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点検索 において前頭葉自体の検討に追補的な役割を果たすと考えられる。また、今回の研 究によ り前頭葉てんかんのより詳細な診断に役立ち、さらなる病態解明に寄与し、治療法 の確立 の一助となると期待される。

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学位論文審査の要旨

    学 位 論 文 題 名

Thalamlc asymmetry on interictal SPECT in patients     with frontal lobe epilepsy

( 前 頭 葉 て ん か ん に お け る 非 発 作 時SPECTで の 視 床 血 流 に 関 す る 研 究 )

  本研 究の 目的 は前 頭葉 てん かん 患者 にお ける視 床血流の変化がてんかん焦点 検索に有用であるかを評価することである。

  臨床 症状 およ び脳 波所 見に 基づ きて んか んの専 門医によって前頭葉てんかん と 診断 され た患 者51名の うち 、片 側性 の運 動発作 (四肢の非対称な強直運動や 頭 部 や 眼 球 の 偏 位 な ど ) を 呈 し 、か つMRIで異 常所 見の ない 症例11例 (男性7 名 、 女 性4名 、16歳 〜48歳 ) の み を対 象と して 検討 され た。SPECT検査 は非 発 作 時 にlllMBqの123I̲IMPを 静 注 後20分 間 、3検 出 器 型SPECT装 置(GCAー9300) を 用 い て 施 行 さ れ た 。 画 像 の 再 構 成 に はButterworthフ ィ ル タ ー を 用 いた filtered back projection法 が用 いら れた 。前頭 葉および視床の血流を検討す る た め 、 脳 ア ト ラ ス と 個 々 人 のMRI画 像を 参照 し、 視床 を含 む連 続す る2ス ラ イ スに 前頭 葉お よび 視床 に半 自動 的に 関心 領域を 設定された。各領域で以下の ようにpercent asymmetry index (%AI)を算出した。%AI=20Qx(R―L)/(R十L)、R は 各関 心領 域の 右側 の放射能カウント、Lは各関心領域の左側の放射能カウント と した 。前 頭葉 に関 して は下 部前 頭葉 、下 部前頭 側頭葉、上部前頭葉、上部前 頭 側 頭 葉 の4っ に 分 け 、視 床 は2スラ イス を合わ せて1領 域と した 。%AIが5% 以 上の とき を有 意な 左右差とされた。SPECT検査による左右差を臨床症状による 焦点側と比較検討された。

  視床 の左 右差 は11名中7名に 認め られ 、前 頭葉 の左右差は6名に認められた。

3名で は視 床、 前頭葉 ともに低下していたが、視床、前頭葉ともに同側の低下は 1名の みで あっ た。 前頭 葉の み左 右差 を認 めた症 例は3例 であ り、 その うち2名 は 臨 床症 状に よる焦 点側 と一 致し てい た。 視床 のみ 左右 差を 認め た症 例は4例

男 雄

司 良

和 邦

   

坂 代

山 木

宮 田

小 玉

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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あり、その全例が臨床症状による焦点側と一致していた。左右差自体は視床で 11 名中7 名なのに比し、前頭葉領域では 3 名と少ないが統計的に有意な差はな かった。また視床では左右差のあった7 名のうち6 名で臨床症状による焦点側 とー致していた。今回の結果は前頭葉てんかんでの発作焦点検索に前頭葉自体 に 加 え 視 床 の 血 流 を 検 討 す る こ と の 重 要 性 が 示 唆 さ れ た 。    口頭発表に際し田代教授から脳波所見とSPECT 所見の一致率、視床血流低下 の意味付け、服用薬剤の影響にっいて、玉木教授からFDG ―PET と非発作時SPECT の焦点検出カの違い、視床血流左右差の正常範囲の程度、前頭葉てんかんの発 作時SPECT の有用性について、小山教授から除外されたMRI 異常所見を認めた 症例での視床血流左右差の有無、てんかん症候学と視床所見の関わり、てんか ん外科治療における視床低血流の意義にっいて、宮坂教授からSPECT 空間分解 能、視床の核で分割した関心領域設定の可能性、基底核の血流左右差の有無に ついての質問がなされた。いずれの質問に対しても、申請者は自験例や文献を 引用し、概ね妥当な回答を行なった。

   これまで側頭葉てんかんにおいて視床血流の左右差が焦点検索に有用である ことを報告した研究はあるが、前頭葉てんかんにおいて視床血流の左右差の有 用性についてはじめて明らかにした点で本研究は評価され、学位論文に値する ものと判断した。

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑚や取得

単位なども併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに十分な資格を有する

ものと判定した。

参照

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