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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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全文

(1)

博 士 ( 歯 学 )    夕 ン ジ ッ ト ナ サ フ オ ン

学 位 論 文 題 名

Microvasculature of dental pulp inarat molar in an     occlusal hypofunctional condition

     ( 咬合 機 能低 下 状態 に おけ るラット 臼歯歯髄の 微小血管構 造)

学位論文内容の要旨

    

緒言

  

矯正 歯科治 療におい ては、不正咬合を治療することにより咬合に参加していない 歯に 正常な 咬合機能 を付与している。咬合機能が低下している歯と、咬合機能を正 常に 営んで いる歯の 、歯周組織の違いに関する報告はこれまでに多くみられる。し かし 、咬合 機能の低 下と歯髄組織の変化や微小血管構造との関係に関しては未だ不 明な 点が多 い。そこ で本研究の目的は、咬合機能が低下した歯の歯髄における、主 に微小血管構造の変化を明らかにすることとした。

    

材料と方法

1

.実験動物と実験方法

  

生後

7

週 齢の

Wistar

系 雄性ラッ ト36 匹を 用い、上 顎左側第 一、第 二臼歯を 抜去 し た も の を 処 置 群

(24

匹 ) と し、 抜 歯 後1 週 、

1

力 月 、

3

カ 月 お よび

6

カ 月の

4

グ ループに分けた。それぞれのラッ卜は実験的に下顎左側を実験群(低機能歯)とし、

右側 を対照 群(機能 歯)とした。また、両側抜歯を行わなかったラッ卜を無処置群

12

匹 ) と し、 抜 歯 群に 準 じ て

1

週 、

1

カ月 、

3

カ月 お よ び6 カ 月 の

4

グ ル ―プ と した 。また 、これら の実験動 物はI 週間に

1

回体 重を測 定した。 実験終 了後、実験 動物にエーテルを吸入させ、8 %trichloroacetaldehyde monohydrate を腹腔内注射し、

麻酔を施した。固定は、10 %中性緩衝ホルマリン溶液(pH7.4) を用い灌流固定した。

その 後、10 % 中性緩衝 ホルマ リン溶液

(pH7.4

4

°C ) で24 時間 浸漬固定 した後、

10

%EDTA 溶 液

(pH7.4

4

C)

を 用 い て約

5

週 間脱 灰 を行い 、下顎 第ー臼歯 を含む ブロックを切り出し、通法に従いパラフインに包埋した。

2

.観察方法

  

試料 は、下 顎第一臼 歯の近 心根を含 む横断方 向にて厚さ

5pm

の連続切片を作製し た後、ヘマトキシリンエオジン(H .

E

,)染色を施し光学顕微鏡にて観察した。観察 部位 は、下 顎第一臼 歯の近心 の髄角 から根尖 方向に

300pm

の髄角部、根尖から歯冠 方向 に300ym の根尖部 および これらの 中間に位 置する 中間部の

3

部 位とした 。これ らの 部位に おける、 歯髄の面積に対する微小血管腔の占める面積の割合および歯髄 細胞 の核が 占める面 積の割合を比較検討した。同一実験期間における実験群(低機 能歯〕と対照群(機能歯)の比較をpaired‑samples t‑test で行い、群内の各実験期間 の 比 較 に は

Student s independent samples t‑test

を 用 い た 。

    

結果

1

.実験動物の体重

  

処置 群およ び無処置 群ともに実験期間を通じて体重は増加傾向が認められた。同 時 期 の 処 置 群 と 無 処 置 群 と の 間 で は 、 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た 。

2

.歯髄内における血管の占める面積の割合

  

髄角 部では 、歯髄の 面積に対する微小血管腔の占める面積の割合は、対照群(機 能 歯 )に 比 べ 、1 週 間 では 有意差 が認めら れなか ったもの の、1 カ月、

3

カ月 およ び6 カ月に おいて は有意に 少なか った。ま た、中 間部および根尖部においては、両 者と も実験 期間を通 して而群問に有意な差が認められなかった。すべての対照群を

‑ 388 ‑

(2)

比 較 す る と 、 髄 角 部 に お け る 血 管 の 占 め る 面 積 の 割 合 は 、 他 の 対 照 群 に 比 べ6カ 月 に お い て は 有 意 に 高 い 値 を 示 し た 。 し か し な が ら 、 す べ て の 実 験 群 を 比 較 す る と 、 実 験 期 間 に 関 わ ら ず 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 中 間 部 と 根 尖 部 に お い て は 、6 カ 月 で は 他 の 実 験 期 間 と 比 較 し て 低 い 値 を 示 し た 。

  同 実 験 期 間 内 で 対 照 群 と 無 処 置 群 の 比 較 に お い て は 、 部 位 お よ び 実 験 期 間 に 関 わ ら ず 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た 。

3. 歯 髄 内 に お け る 歯 髄 細 胞 の 核 が 占 め る 面 積 の 割 合

  髄 角 部 に お い て 、 歯 髄 の 面 積 に 対 す る 歯 髄 細 胞 の 核 が 占 め る 面 積 の 割 合 は 、 対 照 群 ( 機 能 歯 ) に 比 べ 、1週 間 で は 実 験 群 ( 低 機 能 歯 ) に 有 意 な 差 が 認 め ら れ な か っ た も の の 、1カ 月 、3カ 月 お よ び6カ 月 に お い て は 有 意 に 小 さ か っ た 。 ま た 、 中 間 部 お よ び 根 尖 部 に お い て は 、 両 者 と も 実 験 期 間 を 通 し て 両 群 間 に 有 意 な 差 が 認 め ら れ な か っ た 。 す べ て の 実 験 期 間 内 で 比 較 し た 結 果 、 髄 角 部 に お い て 、 実 験 群 で3カ 月 は1週 間 と 比 較 し て 有 意 に 低 い 値 を 示 し た 。 一 方 、 中 間 部 に お い て は 、 実 験 群 で 3カ 月 、6カ 月 は1カ 月 と 比 較 し て 有 意 に 低 い 値 を 示 し た 。 根 尖 部 に お い て は 、 実 験 群 、 対 照 群 と も に 6カ 月 で は1週 間 と 比 較 し て 有 意 に 低 い 値 を 示 し た 。     考 察

  歯 髄 の 血 管 と 細 胞 の 割 合 に 関 し て の 個 体 差 を な く す た め 、 同 一 の ラ ッ ト の 下 顎 右 側 第 一 臼 歯 を 対 照 群 と し た 。 し か し な が ら 、 抜 歯 側 は 咬 合 機 能 が 低 下 し て い る た め 、 こ の 下 顎 右 側 第 一 臼 歯 は 過 大 な 咬 合 カ を 受 け る 可 能 性 が あ る こ と が 疑 わ れ た 。 そ の た め 、 無 処 置 群 を 使 用 し 下 顎 第 一 臼 歯 が 対 照 群 と し て ふ さ わ し い か ど う か の 確 認 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 無 処 置 群 と 対 照 群 の 間 で 歯 髄 内 に お け る 血 管 の 面 積 の 割 合 に 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た 。

  髄 角 部 分 に お い て 歯 髄 内 に お け る 血 管 の 面 積 の 割 合 は 、 対 照 群 ( 機 能 歯 ) と 比 較 し て 実 験 群 ( 低 機 能 歯 ) で は 低 い 値 を 示 し た 。1週 間 に お い て は 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た が 、1カ 月 、3カ 月 お よ び6カ 月 に お い て は 有 意 な 差 が 認 め ら れ た 。 こ れ ら の 結 果 よ り 咬 合 機 能 低 下 が 長 期 間 継 続 さ れ る と 髄 角 部 の 微 小 血 管 が 減 少 す る こ と が 考 え ら れ る 。 し か し 、 中 間 部 と 根 尖 部 に お い て は 歯 髄 内 に お け る 血 管 の 面 積 の 占 め る 割 合 に お い て 実 験 群 と 対 照 群 の 間 で 有 意 な 差 が 認 め ら れ な か っ た こ と か ら 、 歯 根 の 微 小 血 管 の 占 め る 割 合 は 咬 合 刺 激 の 影 響 を 受 け な い と 考 え ら れ る 。   咬 合 機 能 が 喪 失 し て か ら1カ 月 以 上 経 過 す る と 歯 髄 内 に お け る 歯 髄 細 胞 の 核 が 占 め る 面 積 の 割 合 は 、 減 少 す る 傾 向 に あ っ た 。 こ の 結 果 よ り 、 咬 合 機 能 が 低 下 し た 歯 に お け る 象 牙 質 の 添 加 活 性 と 修 復 能 カ は 正 常 な 咬 合 機 能 を 有 す る 歯 よ り 劣 っ て い る 可 能 性 が あ る 。 歯 髄 内 に お け る 血 管 の 占 め る 面 積 と 歯 髄 細 胞 の 核 の 占 め る 面 積 の 割 合 の 変 化 は 、 実 験 期 間 を 通 じ て 比 較 す る と 類 似 し た 傾 向 に あ っ た 。 す な わ ち 、 髄 角 部 と 歯 根 部 の 変 化 の パ タ ー ン は 異 な っ て い た が 、 髄 角 部 に お い て は 、 血 管 の 面 積 と 歯 髄 細 胞 の 核 の 面 積 の 割 合 は6カ 月 で 増 加 す る 傾 向 に あ っ た 。 一 方 、 歯 根 部 に お い て は 実 験 期 間 が 長 期 に な る に っ れ て 血 管 の 面 積 と 歯 髄 細 胞 の 核 の 面 積 の 割 合 は 減 少 す る 傾 向 に あ っ た 。

  以 上 の 結 果 か ら , 咬 合 機 能 が 低 下 す る こ と に よ り 、 同 じ 歯 の 歯 髄 内 に お い て も 部 位 に よ っ て 微 小 血 管 腔 や 歯 髄 細 胞 の 数 に 生 じ る 変 化 量 は 異 な り 、 特 に 髄 角 部 に お け る 組 織 の 活 性 の 低 下 が 生 じ る と 考 え ら れ る 。 す な わ ち 、 咬 合 機 能 が 低 下 し て い る 歯 と 、 咬 合 機 能 の 正 常 な 歯 に お い て は 、 歯 冠 部 歯 髄 の 組 織 の 性 状 に 差 が あ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

    結 論

  咬 合 機 能 が 低 下 し た 歯 は 、 髄 角 部 に お い て 微 小 血 管 の 減 少 が 生 じ 、 歯 髄 の 組 織 活 性 が 低 下 し て い る 可 能 性 が 認 め ら れ た 。 こ の こ と か ら 、 咬 合 機 能 が 低 下 し た 歯 に 正 常 な 歯 髄 組 織 の 機 能 を 獲 得 さ せ る た め に は 、 矯 正 治 療 を 行 い 咬 合 さ せ る ニ と が 必 要 で あ る と 示 唆 さ れ た 。

389

(3)

学位論文審査の要旨 主査    教授    飯田順一郎 副 査    教 授    土 門 卓 文 副 査    教 授    網 塚 憲 生

学 位 論 文 題 名

II¥/Iicrovasculature of dental pulp inarat molar in an     occlusal hypofunCtionalCOndition

     (咬合機能低下状態におけるラット臼歯歯髄の微小血管構造)

  

審 査は審査 員全員出 席の下で行 った。ま ず申請者 に提出論 文要旨の 説明を求 めると と もに、適 宜提出論 文の内容と 関連分野 に関する 説明を求 め、その 後、口頭 試問の形 式 で内容お よび関連 分野につい て試問し た。まず 申請者か ら以下の 説明がな された。

【 緒 言 】矯 正 歯科治 療におい ては、不 正咬合を 治療する ことにより 咬合に参 加してい な い 歯 に正 常 な咬合 機能を付 与してい る。咬合 機能が低 下している 歯と、咬 合機能を 正 常 に 営ん で いる歯 の、歯周 組織の違 いに関す る報告は これまでに 多くみら れる。し か し な がら 、 咬合機 能の低下 と歯髄組 織の変化 や微小血 管構造との 関係に関 しては未 だ 不 明 な点 が 多い。 そこで今 回、咬合 機能が低 下した歯 の歯髄にお ける、微 小血管構 造 を 含 めた 歯 髄組織 の変化を 明らかに するため 、対合歯 を抜歯した ラット下 顎第一臼 歯 に お いて 、 歯髄の 微小血管 構造にど のような 変化が認 められるか について 検討した の で報告す る。

【 材 料 と 方 法 】 実 験 動 物 とし て 、 生後

7

週 齢 の

Wistar

系 雄性 ラ ット を 用 いた 。 実験 系 と し て 、 上 顎 左 側 第 一 、 第 二 臼 歯 抜 歯 後 、

1

週 、

1

カ 月 、

3

カ 月 お よ び

6

力 月 の

4

グ ル ー プ 各

6

匹 ず つ 計

24

匹 を用 い 、 下顎 左 側を 実 験 群( 低 機能 歯 ) 、右 側 を対 照 群

( 機 能 歯 ) と し た 。 実 験 終 了 後 、 各 ラ ッ ト を 還 流 固 定し た 。そ の 後 、

10

EDTA

溶 液 で 脱 灰し 、 下顎第 一臼歯を 含むブロ ックを切 り出し、 通法に従い パラフイ ンに包埋 し た 。 試料 は 、下 顎 第 一臼 歯 の近 心 根 を含 む 横 断方 向 にて 厚 さ

5 Um

の連 続切片 を作 製 し た 後、

H

E

.染色 を施し光 学顕微鏡 にて観察 した。観 察部位は、 下顎第一 臼歯の 近 心 の 髄 角 か ら

300

m

の 髄 角 部 、 根 尖 か ら

300um

の 根 尖 部 お よ ぴ こ れ ら の 中 間 に 位 置す る 中聞 部 の

3

部 位と し た。 こ れ らの 部位にお ける、歯髄 の面積に 対する微 小 血管腔の 占める面 積の割合 および歯髄 細胞の核が占める面積の割合を比較検討した。

同 一 実 験期 間 にお け る 実験 群 (低 機 能 歯) と 対 照群 ( 機能 歯 ) の比 較 には

paired

390 ‑

(4)

samplest

test

を用いた。

【結果】髄角部において、歯髄の面積に対する微小血管腔の占める面積の割合および 歯髄細胞の核が占める面積の割合は、対照群(機能歯)に比べ、1 週間では有意差が・

認められなかったものの、

1

カ月、3 カ月および

6

カ月においては有意に少なかった。

また、中間部および根尖部においては、両者とも実験期間を通して而群間に有意差が 認められなかった。

【考察】咬合機能が低下することは、同じ歯の歯髄内においても部位によって微小血 管腔、歯髄細胞の数に生じる変化量が異なり、特に髄角部における組織の活性の低下 が生じていたものと考えられる。すなわち、咬合機能が低下している歯と、咬合機能 の 正常な歯に おいては、歯冠部歯髄の組織の性状に差がある可能性が示唆された。

【結論】咬合機能が低下した歯は、髄角部において微小血管の減少が生じ、歯髄の組 織活性が低下している可能性が認められた。このことから、咬合機能が低下した歯に 正常な歯髄組織の機能を獲得させるためには、矯正治療を行い咬合させることが必要 であると示唆された。

以上の論述に引き続き、以下の項目を中心に口頭試問を行った。

1

.固定法等組織切片の作成方法について。

2.

低機能歯の実験モデルについて。

3.

歯 髄 組 織 の 変 化 と 歯 根 膜 の 変 化 の 関 連 性 に つ い て 。

4.

咬合機能の変化により歯冠部歯髄に変化が生じる要因について。

5.

今後の研究の展望について。

  

従来から、咬合機能を営む歯と開咬や叢生などにより咬合していない歯との間にお ける歯周組織の性状の差異に関する研究は多く為されており、咬合していない歯の歯 根膜の幅は狭く微小血管の量も少ないことが明らかにされている。申請者は歯周組織 と同様に、咬合していない歯における歯髄組織の性状も、正常に咬合している歯と異 なるのではないかとの仮説のもとに、微小血管および歯髄細胞の量を計測したところ、

咬合している歯と比較して咬合していない歯では歯冠部の髄角部付近で微小血管の量、

歯髄細胞の量共に少ないことを明らかにした。すなわち、咬合していない歯において は歯冠部歯髄組織の活性が低下しており、う蝕などの外部からの刺激に対する歯髄の 抵抗性も低下している可能性があることを示唆した。この研究成果は、歯は正常に咬 合していることが、その歯自身の歯髄の健康を維持するためにも重要な要因であるこ とを明らかにしたものであり、歯科矯正治療を施術する意義に新たな根拠を与えたも のと高く評価できる。

    

加えて、試問に対する回答は適切なものであり、申請者は本研究に直接関係する 事項のみならず、関連分野における基礎的な広い学識を有していると認められた。ま た、本研究を基にして今後益々発展させて行く可能性があるものと評価された。よっ て審査担当者全員は、申請者は博士(歯学)の学位を授与される資格を有するものと 認めた。

391

参照

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