博 士 ( 工 学 ) 横 田 弘
学 位 論 文 題 名
電子線励起用Y2Si05 およびGd2Si05 螢光体に関する研究 学位論文内容の要旨
地上デジタル放送、お よぴBSデジタル放送開始に伴 いディスプレイの大画面化 ・高精細化が求 められている。そこで、 半世紀以上にわたって開発・ 改良が行われてきたプラウン管テレピ(CRT) に替 わり 、プ ラ ズマ ディ スプ レイ(PDP)、および 液晶テレビ(LCD)をどの薄型 ディスプレイが近 年急速に普及している。 さらに、次世代薄型ディスプレイのーっとして、フイールドエミッション ディ スプ レイ(FED)が 期 待さ れて いる 。FEDは 、CRTと 同様 に電子線を励起源 とするディスプレ イで あり 、デバイス 構築時にCRTでの蓄積技術を 応用することが可能である。 しかし螢光体を低 電圧 ・高 電流密度電 子線で励起する必要があり、 高電圧・低電流密度電子線 励起のCRTで使用さ れるZnS系螢光体をそのま ま用いることができず、新 たな螢光体が求められている。本論文では、
Y2Si05さ らに はGd2Si05が高 電流 密度 電子 線 励起 に適 したFED用螢 光体 で ある こと を明らかに した。
第 一章 では、まず ディスプレイの中でFEDの重 要性を明らかにするとともに 、高電流密度電子 線励 起の 必要性を示 した。FED用螢光体には、高 電流密度電子線照射に対し、 @十分を発光強度 を示すこと、◎高い青色 発光純度を有すること、◎連続駆動時の発光強度低下が小さく高耐性であ るこ とが 要求される 。そこで本研究では、投写型 ディスプレイ(PTV)用螢光体 に使用されている Y2Si05、 およ びy線シ ン チレ ータ に使 用さ れ てい るGd2Si05に 着目 する こ とと した 。Y2Si05お よびGd2Si05を電子線励起 螢光体とする際の問題点を 明確化し、上記のO〜◎を満 たすための(1) 粉体合成プロセスの開発 、(2)結晶構造と関連付けた 青色発光の高純度化、および(3)連続駆動時 の高耐性化について調べ ることを、本研究の目的とし た。
第 二章 では 、2流体 ノ ズル 式噴 霧熱 分解 法 を用 いてTbド ープY2Si05(YSO:Tb)を合成し、粒度 分布 制御 による発光 強度の向上を試みた。FEDで は、螢光体を積層膜状に成形 して発光層(螢光 膜)として使用する。そ の際に緻密を螢光膜作製が発光強度向上に必要であり、シャープを粒度分 布を有するミクロンサイ ズの螢光体が要求される。噴 霧熱分解温度、および2流体ノズルに導入す る空 気流 量を 制 御す るこ とに より 、粒度分布の シャープをミクロンサイズのYSO:Tbを合成でき た。また、粒度分布制御 によって螢光膜の充填密度が改善し、高電流密度電子線励起時の発光強度 が向上することを示した 。
第 三章 では 、2流体 ノ ズル 式噴 霧熱 分解 法 を用 いて 合成 したCeドープY2Si05(YSO:Ce)、およ びGd2Si05(GSO:Ce)の結 晶構 造と 発光 ス ベク トル の関 係を 解 明し た。YSOおよ びGSOい ずれ で も、 配位 数の異をる 二種類の希土類サイトが存在 する。YSOでは二種類の異を るサイトが最近接 であ るの に対 し 、GSOで は同 ー種 類の サイ ト が互 いに 最近 接である。Ceドー プ量が増すにっれ YSO:Ceの 発光 ピ ーク は長 波長 シフ ト し、 プロ ード を スベ クト ルに 変化 し た。GSO:Ceでは発光 ピークおよびスベクトル 形状はほとんど変化しをいことが分かった。最近接サイト間のエネルギー
‑ 27→
移動が発光特性に影響すると 考えられ、同一種類のサイ トが最近接であるGSO:Ceの方が、高い青 色発光の純度を示すことが明 らかにをった。
第 四章 では、GSO:Ce合成時に共存するGd9.33(Si04)602アパタイト不純 物相による、電子線連 続照射時の発光強度変化に及 ばす影響を調べた。高電流密度電子線を用いて発光強度変化を調べる と、合成時に原料組成を制御 してアパタイト相分率を減らすと、発光強度低下を抑制できることが 分かった。また電子線照射に よる脱ガス成分を分析し、螢光体上で有機成分が熱分解して析出する 炭素が、発光強度低下の原因 であることを明らかにした。これにより発光効率の低いアパタイト不 純物相を減らすと、発光強度 が低下し難くなることを示 した。
第 五章 では、本 研究の総括を示した。2流体 ノズル式噴霧熱分解法を用 いたYSO:Tb螢光体の粒 度分布制御によって螢光膜の 充填密度が改善し、高電流 密度電子線照射時の発光強度が向上する こと を示 した 。ま た 、本 方法 を用 いて 、YSO:Ceお よびGSO:Ceも同 様に 合成 可 能で あることを 示し た。YSO:CeとGSO:Ceの結 晶構 造と 発 光ス ベク トル の 関係 を検 討し 、青 色 発光 純度の高い GSO:Ceが ディ スプ レ イ用 途に 好適 であること を示した。さらに、GSO:Ceに共存するアパタイト 相を除くことによって、高電 流密度電子線励起した時に発光強度が低下することを抑制できること を明らかにした。
以 上か ら、 粒度 の 揃っ た単 ー相 に近 いGSO:Ceが 、高 電 流密度電子線励 起用FED螢光体として 好適であることを明らかにし た。
‑ 28―
学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査 教 授 吉 川 信 一 副 査 教 授 高 橋 順 一 副査 客員准教授武田隆史
学 位 論 文 題 名
電 子 線 励 起 用 Y2Si05 お よ び Gd2Si05 螢 光 体 に 関 す る 研 究
次 世代 薄型ディスプレイのーっ として、フイールドエミッ ションディスプレイ(FED)が 期待さ れている。そこで用いら れる蛍光体は、低電圧・高電流密度電子線で励起する必要があり、新たを 螢光体が求められている 。
本 論文 では 、 投写 型デ ィス プ レイ(PTV)用 螢光 体に 使用 さ れて いるY2Si05お よびy線 シンチ レー タに 使用されているGd2Si05に着目し、これらを電子線励 起螢光体とする際の問題点 を明確 化し、高性能化すること を研究目的とした。
ま ず、2流 体ノ ズル 式 噴霧 熱分 解法 を用 い てTb3+ド ープY2Si05(YSO:Tb)を合成し、粒 度分布 制御による発光強度の向 上を試みた。FEDでは、螢光 体を積層膜状に成形して発光層(螢光膜)と して使用する。その際に 緻密を螢光膜作製が発光強度向上に必要であり、シヤープを粒度分布を有 するミクロンサイズの螢 光体が要求される。噴霧熱 分解温度、および2流体ノズルに導入する空気 流量 を制 御す る こと によ り、 粒 度分布のシャープをミクロン サイズのYSO:Tbを合成でき た。ま た、粒度分布制御によっ て螢光膜の充填密度が改善し、高電流密度電子線励起時の発光強度が向上 することを示した。
次 に 、2流 体 ノ ズル 式噴 霧熱 分解 法 を用 いて 合成 したCe3+ド ープY2Si05(YSO:Ce)、お よび Gd2Si05(GSO:Ce)の 結 晶 構 造 と 発 光 ス ベ ク ト ル の 関 係 を 解 明 し た 。YSOお よびGSOいず れで も、 配位 数の異をる二種類の希土 類サイトが存在する。YSOで は二種類の異誼るサイトが 最近接 であ るの に対し、GSOでは同一種 類のサイトが互いに最近接で ある。Ce3+ドープ量が増す にっれ YSO:Ceの 発光 ピ ーク は長 波長 シ フト し、 ブロ ード を スペ クト ルに 変化 し た。GSO:Ceで は発光 ピークおよびスベクトル 形状はほとんど変化しをいことが分かった。最近接サイト間のエネルギー 移動が発光特性に影響す ると考えられ、同一種類の サイトが最近接であるGSO:Ceの方が、高い青 色発光の純度を示すこと が明らかにをった。
さらに、GSO:Ce合成時 に共存するGd9.33 (Si04)602ア′ヾタイト不純物相による、電子線連続照 射時の発光強度変化に及 ばす影響を調べた。高電流密度電子線を用いて発光強度変化を調べると、
合成時に原料組成を制御 してアパタイト相分率を減 らすと、発光強度低下を抑制できることが分 かった。また電子線照射 による脱ガス成分を分析し、螢光体上で有機成分が熱分解して析出する炭 素が、発光強度低下の原 因であることを明らかにした。これにより発光効率の低いアパタイト不純 物相を減らすと、発光強 度が低下し難くをることを 示した。
これを要するに、著者 は電子線励起用螢光体とし てGd2Si05:Ceが好適であるとの新知見を得た ものであり、無機系光材 料の開発において結晶化学 的を観点から貢献するところ大をるものがあ る。 よっ て著 者 は、 北海 道大 学 博士 (工 学) の学 位 を授 与さ れる 資格 が ある ものと認 める。
― 29−
移動が発光特性に 影響すると考えられ、同一種 類のサイトが最近接であるGSO:Ceの方が、高い青 色発光の純度を示 すことが明らかにをった。
第四章では、GSO:Ce合成時に共存するGdg.33 (Si04)602アパタイト不純 物相による、電子線連 続照射時の発光強 度変化に及ばす影響を調べた。高電流密度電子線を用いて発光強度変化を調べる と、合成時に原料 組成を制御してアパタイト相分率を減らすと、発光強度低下を抑制できることが 分かった。また電 子線照射による脱ガス成分を分析し、螢光体上で有機成分が熱分解して析出する 炭素が、発光強度 低下の原因であることを明らかにした。これにより発光効率の低いアパタイト不 純物相を減らすと 、発光強度が低下し難くをる ことを示した。
第 五 章では、本研 究の総括を示した。2流体ノ ズル式噴霧熱分解法を用いたYSO:Tb螢光体の粒 度分布制御によっ て螢光膜の充填密度が改善し 、高電流密度電子線照射時 の発光強度が向上する こと を 示し た。 また 、本 方 法を 用い て、YSO:Ceおよ びGSO:Ceも 同様 に合 成可 能で あることを 示し た 。YSO:CeとGSO:Ceの 結晶 構造 と発 光 スベ クト ルの 関係 を 検討 し、 青色 発光 純度の高い GSO:Ceがデ ィス プレ イ用 途 に好 適であることを 示した。さらに、GSO:Ceに共 存するアパタイト 相を除くことによ って、高電流密度電子線励起した時に発光強度が低下することを抑制できること を明らかにした。
以 上 から 、粒 度の 揃っ た 単ー 相に 近いGSO:Ceが、 高電 流密度電子線励起 用FED螢光体として 好適であることを 明らかにした。
− 28−
学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査 教 授 吉 川 信 一 副 査 教 授 高 橋 順 一 副査 客員准教授武田隆史
学 位 論 文 題 名
電 子 線 励 起 用 Y2Si05 お よ び Gd2Si05 螢 光 体 に 関 す る 研 究
次 世代薄型ディ スプレイのーっとして、フイ ールドエミッションディス プレイ(FED)が期待さ れ ている。そこで用いられる螢 光体は、低電圧・高電流密度電子線で励起する必要があり、新たを 螢 光体が求められている。
本 論文 では 、投 写型 デ ィス プレ イ(PTV)用螢 光体 に 使用 され てい るY2Si05お よびy線シンチ レ ー タに使用され ているGd2Si05に着目し、こ れらを電子線励起螢光体とす る際の問題点を明確 化 し、高性能化することを研究 目的とした。
ま ず、2流 体ノ ズル 式噴 霧熱 分 解法 を用 いてTb3+ド ープY2Si05(YSO:Tb)を合成し、粒度分布 制 御による発光強度の向上を試 みた。FEDでは、螢光体を積層膜状に成形して発光層(螢光膜)と し て使用する。その際に緻密を 螢光膜作製が発光強度向上に必要であり、シャープな粒度分布を有 す るミクロンサイズの螢光体が 要求される。噴霧熱分解温度、および2流体ノズルに導入する空気 流 量 を制 御す るこ とに よ り、 粒度分布のシャ ープをミクロンサイズのYSO:Tbを合成できた。ま た 、粒度分布制御によって螢光 膜の充填密度が改善し、高電流密度電子線励起時の発光強度が向上 す ることを示した。
次 に 、2流 体ノ ズ ル式 噴霧 熱分 解 法を 用い て合 成し たCe3+ドー プY2Si05(YSO:Ce)、 およ び Gd2Si05(GSO:Ce)の 結 晶 構 造 と 発 光 ス ベ ク ト ル の 関 係 を 解 明 し た。YSOおよ びGSOい ずれ で も 、 配位数の異を る二種類の希土類サイトが存 在する。YSOでは二種類の異 をるサイトが最近接 で あ るのに対し、GSOでは同一種類のサイトが 互いに最近接である。Ce3+ド ープ量が増すにつれ YSO:Ceの 発光 ピー クは 長 波長 シフ トし 、 ブロ ード なス ペク ト ルに 変化 した 。GSO:Ceでは発光 ピ ークおよびスベクトル形状は ほとんど変化しをいことが分かった。最近接サイト間のエネルギー 移 動が発光特性に影響すると考 えられ、同一種類のサイト が最近接であるGSO:Ceの方が、高い青 色 発光の純度を示すことが明ら かにをった。
さらに、GSO:Ce合成時に共存 するGd9.33(Si04)602ア′くタイト不純物相による、電子線連続照 射 時の発光強度変化に及ばす影 響を調べた。高電流密度電子線を用いて発光強度変化を調べると、
合 成時に原料組成を制御してア パタイト相分率を減らすと 、発光強度低下を抑制できることが分 か った。また電子線照射による 脱ガス成分を分析し、螢光体上で有機成分が熱分解して析出する炭 素 が、発光強度低下の原因であ ることを明らかにした。これにより発光効率の低いアパタイト不純 物 相を減らすと、発光強度が低 下し難くをることを示した 。
これを要するに、著者は電子 線励起用螢光体としてGd2Si05:Ceが好適であるとの新知見を得た も のであり、無機系光材料の開 発において結晶化学的を観 点から貢献するところ大をるものがあ る 。 よっ て著 者は 、北 海 道大 学博 士( 工 学) の学 位を 授与 さ れる 資格 があ るも のと認める。
― 29一