愛 知 工 業 大 学 研 究 報 告
第
34
号B
,平成1
1
年 145放電励起
A
r
F
エキシマレーザーのシミュレーションモデル
S
i
m
u
l
a
t
i
む
nModel o
f
a
D
i
s
c
h
a
r
g
e
Pumped
Ar
F
Excimer L
a
s
e
r
古橋秀夫、内田悦行
Hideo FURUHASHI
,
Y
o
s
h
i
y
u
k
i
UCHIDA
Abstract A simulation model of a discharg巴pump巴dArFexcim巴rlaser was dev巴lopedbased on the Boltzmann transport
equation
,
rate equations and the circuit equation. Unifonn plasma was assumed. It is one-dimensional model.Time histories ofth巴laseroutput power,
number densities of species in the plasma,
currents and vo1
t
ages were calculated numerically.百le results were compared with the experimental results by spectroscopic m巴thods.The peak-electron density, discharge voltage,
and particle numb巴rdensities agreed well,
but their t巴mporalbehaviors differed. 1.はじめに エキシマレ}ザーは紫外域で発振する短パルス高出力 レーザである。現在半導体の製造プロセスにおいて中心 的な役割を果たすと共に、加工、分光用光j原として広く 利用され始めている。 しかしながら、現在使われているエキシマレーザーは 未だに効率、寿命等に問題があり、ランニングコストの かかるレーザである。そのため、より高効率、長寿命に することが望まれている。 これまで、エキシマレーザーの研究は、経験に基づい た装置の改良により行われてきた。しかしながらそのよ うな方法での高性能化はもはや限界にあり、励起機構に 基づくより深い研究が必要とされている。 そこで我々はこれまでに、分光学的手法によりエキシ マレーザ内部の各種粒子の密度を測定し、励起機構に関 して検討してきた'.5}。 本研究では、放電励起エキシマレ」ザーの中ではもっ とも短い波長で発振が得られる放電励起ArFエキシマ レーザーのシミュレーションモデルを構築し、実際の レーザー装置での測定結果と比較することにより、本モ デルの有効性について検証したので報告する。 2.放 電 励 起ArFエ キ シ マ レ ー ザ ー 装 置 今回のシミュレーションでは、実験室内で使用してい 愛知工業大学情報通信工学科(豊田市) る放電励起ArFエキシマレーザーをモデル化した。図 l にその装置の励起回路図を、図2に装置の断面図を示す。 この装置は容量移行型のuv
予備電離方式と呼ばれる 励起方法が使用されている。抵抗R,
を通してコンデンサC
,に充電された竜荷は、サイラトロンスイッチが閉じら れることにより、放電管へと流れ込む。放電管内にはコ ンデンサC,があり、微小ギャップ Po-P,を通して電荷が 充電される。この時微小ギャップにおいて生ずるスパー クにより紫外光が発生し、放篭管内のガスが竜離される。 この予備電離によって発生した電荷が種となり、主放軍 が起こる。コンデンサι
を放軍管内に置くことにより、 放軍時の回路インダクタンスを小さくし、高速大電流の 放電を行うことが出来る。 コンデンサC,、C,はドアノブ型コンデンサで、 C,=1.7nF X 40=68.0日F、C2=1.7nFX 24=40.811Fである抵抗 としてはR,
=300Q、R,
=2kQが使われている。放電管はス テンレス製で、 700mrnX 160mm X 80mrn、5800cm)の容 量がある。予備電離は72本のステンレス製ピンによって 行われる。主放電電極はE
剛S
T
形のステンレス電極で、長 さ64cm、幅0.8cm、間隔1.8crnで、ある。レ」ザ一発振させ る際には片方に100%反射ミラーを置き、出力用窓との問 で共振器を構成した。共振器長は70cmである。 3 . ガ ス レ ー ザ ー の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 手 法 放電励起ガスレーザーのシミュレーション方法には、 モンテカルロシミュレーション、ボルツマン方程式によ るシミュレーション、連続の式によるシミュレーション図
1
放電励起A
r
F
エキシマレーザ装置のIJjj)起回路 +H.V PreionIzalion Anodc Main tlischargc 図2
放電liJ}J起A
r
F
エキシマレーザ装置の断面図 等いくつかの方法がある"
.
R
)
。今回作成したシミュレー ションモデルは、ボ、ルツマン方程式を基本とした。その 構成を図3に示す。以下に、各部について述べる。 3.1回路方程式 今、簡単化のために図4のような放電励起ガスレー ザーの励起回路を考える。放電部を可変抵抗Rdとモデjレ 化すると、回路方程式は以下のようになる。d
'
J
,
_
_
,
d
l
1
L~=(R+RJー十一 dt' "' dt C ) ] ( この時、 C、R、Lは定数であるが、放電インピーダンス Rdは時間と共に変化するため、数値解析が必要となる。Rd は以下の式により求めることが出来る。RJ-L-
一 一
些一一一
一
ι
“ 1μ
e
EN,
Aμ
e
N,
A (2) Paはicle刊、、地 numbers"1
Rate eq, 図3 シミュレーションモデルの構成 μは電子の移動度、 dは放電長、 dは放電断面積、N,
は電 子密度である。3
.
2
ボルツマン方程式 エキシマレーザーの放電においては、電子のエネル ギ一分布はマクセル分布より外れることが分かつている 7.RI。従って、定常状態のマクセル方程式を用いてその篭 子エネルギ一分布を求めた。定常状態のマクセル方程式 は、以下のようである。市片岡]+持制
+
2
出
(
U2
Q
2
7
u
)
+
エ
い
u
J
f
(
u
+
u
J
2
j
ら
+
U
j
)
-
U
.
/
{
U
広
島
(
U
)
+
エ
(
u
-
u
J
f
(
u
一的)
Q
j
い
-
U
j
)
-
u
J
(
U
)
♀
エ
j
(
U
)
(3) ここで、uは電子エネルギ一、Eは電界、 Nは全粒子数、e は電荷、 mは電子の質量をあらわす。また、kはポルツマ ン定数、 Tはガス温度である。 Mは、全粒子の平均粒子質量で、混合気体中では以下 のように計算される。 M =ヱ
M"GI1 (4) ここで、M"はn番目の粒子の質量。。はその粒子の全粒 子数に対する割合を示す。 QIはモル平均弾性衝突断面積で、以下の式により計 算される。放電励起
A
r
F
エキシマレーザーのシミュレーションモデル 147 L C VdR
図4 L
C
R
liJb起回路Q
I
ら
)
=
I
,
Q
;
か
)
0
"
(
5
)
ここで、Q
;
か)はエネルギーuを持った電子と粒子nとの 衝突時の全電子衝突断面積である。また、 Q2は逆モj
レ平 均弾性衝突断面積で、以下の式で計算される。 MQ~ い)Gn Q2い
)
=
ヱ
M"
一
(6)Q
J
ら)は電子と粒子jとの非弾性衝突断面積、Q
_
j
(
U
)
は第2
穫非弾性衝突断面積を示す。第2
種非弾性衝突断 面積は以下の式で計算される。ι
ら
)
=
1
1
2
L
Q
j
L
+
U
j
)
(7) 電子エネルギ}分布関数f
はfuEf
か 同=
1
となる ように規格化を行った。 電子エネルギー分布がわかると、各種スウォームパラ メータを求めることができる。電子の移動度μは以下の 式で求まる。 u , d p f F -M 陣、
H u-、
A U、
1 1 1 1 4 ' J ノu
一
a
f i l l-、
t t l J 01
V
I
a
l
ノμ
一
m 〆 ' 1 1 1 1‘ 、
l 一 川=
μ '(
8
)
また、電子速度vは以下の式で表される。ν
=
(
引
(9) 従って、レート定数はめ=め)=(司仰い同
(lO) と計算される。3
.
3
反応レート方程式 放電気体内では、各粒子は他の粒子や電子などと衝突 することによ可その粒子数が時間と共に変化する。その ため、基底状態・励起状態,イオン化状態の各種原子密 度・分子密度や電子密度を求めることが必要である。 各種粒子密度の時間変化は、会生成過程と会消滅過程 の差であらわされる。3
L
=
手
Fjj-手
Dlk ) 唱 ' a l ( ここで、N,
は粒子密度、ろはj粒子からの生成項、 D肢は k粒子への消滅項を示す。 2体衝突による生成 (A+B→C+D)の場合には、 C、 D粒子は生成項 F=kμ
I
B
]
(12) を持つことに成る。ここで kはレート定数、 μ]、[B]は各 粒子密度である。一方、 A、B粒子は消滅項 F =k
[
c
I
D
]
(13) を持つことに成る。3
.
4
フォトンレート方程式 レーザー内では、自然放出及び誘導放出によりフォト ンが生成される。一方、吸収及び出力ミラーからの取り 出しゃサイド光としての損失により減少する。フォトン の増減は、以下の式であらわすことができる。 dN, 凶 cN.r.__ 1.,_,.~7=
プ+ず
IIgNmC7mワ附
-1,
字
削
ル
In(I-L) (14) ここで、λらはレーザー上順位の粒子数、 Kは自然放出項 の内レーザ一発振にかかわるフォトンの割合、τは自然放 出寿命、1,
は共振器長、υ
ま放電長、0'"は誘導放出断面積、 Rは出力ミラーの反射率、N,
は吸収体の密度、σiは吸収体 の吸収i
紙面積、Lはシングルパスあたりの光ロスを示す。4
.
放電励起ArF
エキシマレーザーのシミュレー シ ョ ン 本シミュレーションでは、 Runge-Kutta法を用いて、 回路方程式及びレート方程式を数値的に解いた。時間ス テップは 2X 1O.13s間隔である。ボルツマン方程式は、放 電電圧が5%変化するごとに Runge-Kutta法を用いて計算 された。そのあいだは、電子エネルギー分布等のプラズ マパラメータの変化は無いものとして簡略化した。さら に、レート定数及ぴ放電インピーダンスはボルツマン方 程式が呼び出されるごとに再計算された。た。 C
,
=68.0nF,C,=40.8nFである。また、 R,
、R,
、L,
、L,
、 LJは実際に実験で求めた電流、竜庄波形より推測した。 R,
=0.5Q、R,
=O.OQ、L,
=200nH、L,=1.0nH、LJ=2,OnHであ る。回路方程式は表1のようになる。この連立微分方程 式をP
H
き、放電部にかかる電界強度を以下の式により求 めた。E
=
与=主主
g d d (15) 4.2反応プロセス この研究では放電ガスとしてArlF,lHeの混合ガスが使 われた。この場合、主な放電生成粒子として電子、Arヘ
Ar+、Ar2+、He*、He+、F'、ArFヘ
Fがレーザ一発振に関 係してくる。それらの反応式及びレート定数を表2に示 す。電子一電子衝突の項に付いては、その寄与が少ない ことから7)、計算の高速化を考えて本シミュレーション では除外した。 Ar及 びHeの電子衝突による励起・イオ ン化のレート定数及びF,分子の竜子衝突によるイオン化 のレート定数は、ボルツマン方程式により求めた電子エ LJ 図 5 励起回路の等価回路 表 1 回路方程式 E1ectron Reaction Ar村 → Ar*+巳 Ar+e→Ar++2e Ar*+e→Ar++2e He+c→Hc叫c He+e→He++2巴 He叫c→He++2e F,+e→F'+F F,+e→2F+e F+e→F' Neutral Reaction Ar'+2Ar→Ar,
'
+Ar+e Ar*+F,→ArF*+F Ar'+F'→ArF* Ar:+F-→ArF叫Ar Ar*+Ar*→Ar++Ar+e He叫Ar→Ar片He十G He叫Ar+He→Ar'+2He+e Emission and Quenching ArF叫F,→Ar+3F ArF叫Ar+He→F+2Ar+He ArF叫2He→F+Ar+2He ArF*→Ar+F+hv ArF叫 hv→Ar+F+2hv Absorption F-+ hv→F+e Ar叫 hv→Ar'+e He叫 hv→He'+e Ar,'+hv→Ar++Ar F,+hv→2F dl,
=={ム(R,
+RJ +Rd)+,
L
(RJ +RJ礼+(ムムーL,
R,
)l,
+L,
門+L,
九 dt ムL,
+L,
ら+らム dI,
_
一(L,
R,
-
ι
R,
ーらR,
,
[
)
+ (L,
R,
+ん
RJ+ L,
Rd )1,
+ (L,
-
L,)r~ +ら門 dtム
L,
+L,
ら+LJL,
d~=
_
!
J
_
dt C,
dV,
=
_
[
,
-l,
dt C,
k k kr~'h klh kjfh k a 3,0 X 10・IOcmJ/s 1.0 X 10・I2cmJ/s 2,5 X 10引cm'/s 8.0 X 10'lOcmJ/s 1.0 X 1O"cmJ/s 1.0 X 10-'cmJ/s 1.0x
lO-'cmJ/s 7.5 X 1O-lIcm3/s 2.2 X lO-"cm'/s 1.2 X 10-'cmJ/s 3 X lO-"cm'/s 3 )<10・"cm'/s 4.2ns 2.75 X lO-"cm' 5.5 X lO-"cm' 4.0 X 1O-20cm' 1.14 X 10・1Bcm2 2.73 X lO-,ocm' 1.5 X lO-21cm' (9) (9) (10) (11) (12) (13) (13) (12) (14) (15) (15) (15) (16) (11) (17) (18) (19) (20) (21)1
4
9
ネルギ一分布を元に断面積データより求めた。各断面積 データを図6に示す。 qmは弾性衝突断面積、 q,
はイオン 化断面積、q,
は全衝突断面積、q,
は振動励起断面積、れは 付着断面積、 q"は電子励起断面積を示す。電子励起準位 として、以下の準位を考慮した。 放電励起A
r
F
エキシマレーザーのシミュレーションモデルAr:4S
,
/
z
(
q
"
,
,
)
4
S
3I2(
q
,
"
2) He:2s'}iO(q",
)
2p'庁
(
q
e
'
2
)
2山。(
q
"
,
,
)
2s司
k
"
"
)
3 p '}io (q"
,
)
F2: C'I
:
(
q
,
x
'
)
H'll,
札
x
z
)
a
'
n
,
(
q
"
,
)
5 9 1 7 lw
ボ ぽ { N H匡 υ } E E Z E E 2 υ その他粒子のレート定数については、電子エネルギー 分布に依らないものとして簡略化した。レ}ト定数の データについては文献を参考にした。 初j別電子密度は 5X 10"cm')、初期の F 密度は lX lOlOcm')、予備電離による初期竜子の生成レートを lX 10"sーIcm<iと仮定した。 また、フォトンレート方程式においては、自然放出項 の内レーザ一発振にかかわるフォトンの割合k=1.8X 10 -5、共振器長1,
=70cm、放竜長 lf64cm、出力ミラーの反射 率R=8%、シングルパスあたりの光ロス L=8%とした。 50 10 20 30 40 Elrctron energy [e V] (a) Ar。
10"21 5 . 計 算 結 果 図 7に、各種粒子密度の計算結果を示す。また、図 8 に実験で得られた放電電圧、電子密度、Fイオン密度、 He 励起状態密度の実測値1.6)との比較を示す。時間変化に多 少の違いが見られるが、ピ」ク電圧・密度に付いては良 (b)F2 10-14 防 6 7r
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lo-17 0 】 810-lB 凶 凶3
川9 10 20 30 40 50 Elrctron energy [e V] 10.20 100 シミュレ}ション結果 図7 (c) Hc Ar, F" Hcの断面積デ}タ22-m 図6KOlJo, Toshio Goto, Yoshiyuki Uchida, IEEE Journal of
Quantum Electronics, Vol.34, No.l, pp.40-46(1998). 5) S. Nagai, H. Furuhashi, A. Kono, Y.Uchida and T. Goto,
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1) M. Hiramatsu, H. Furuhashi andT. Goto, J. Appl.Phys.
n u 守 , a u q d A M -J 勺 ' u ' a n u l i l i -+ + + + + + + + E E E E E E E E l l 1 1 1 1 1 1 { 勺 E υ ] h z m E
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問
Timc [n51 IE+II IE+IO 0 150 50 100 Timc[1l51 150 (d)Hc'励起原子密度 シミュレ}ション結果と実測値の比較 実線:シミュレーション結果、白丸‘実n
i
lJi直 図8 (c)Fイオン密度l
i
l
l
:
電励起A
r
F
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