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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 中 井 丈 生      学 位 論 文 題 名

     ●

Mechanical stress up ― regulates RANKL expresslon viaVEGFautocrineinosteoblasticMC3T3 ― E1ce11s

(メカニカルストレスはVEGF autocrne を介し 骨芽細胞 様細胞の RANKL の発現を 増強する)

学位論文内容の要旨

【緒言】

  歯科矯正治療 において歯を移動するため には、矯正カの負荷による骨 のりモデリングが必要であ る。この よ うな骨のりモ デリングにおいて血管新生 と骨吸収は密接な関係にあり 組織学的な研究においても 血管の進 入 と、破骨細胞 の出現が同時期に認められ ることが知られている。さら に破骨細胞は造血幹細胞由 来である ため、血管の 存在は骨のりモデリングに関 して重要な要素と考えられ る。

  血 管 内 皮 細 胞 増 殖 因 子(VEGF)は 脈 管 形 成 お よ び 血 管 新 生 に 関 与 す る ― 群 の 糖 タ ン パ ク 質 で あ る 。 VEGF―Aはその レセプタ―であるVEGFR―1(FIt‑l)およびVEGFR−2(Flk−1)に結合することが報告されている。

血 管内 皮細 胞に 存 在す るVEGFR―2は 血 管新 生に 関与 し、 単 球・ マク ロフ ァ ―ジ に存 在す るVEGFR―1は単 球  ̄マ クロ ファ ー ジの 分化 ・成 熟や 細 胞遊 走を 刺激 する働きをもつ― 方、破骨細胞による骨吸収 において M−CSFと類似 した機能を持ち単球‐マクロ ファージの活性化にも関与することが報告されている。したがって VEGFーAは 血管 新生 と破 骨細 胞 誘導 をと もに 促 進す る因 子で ある た め、 骨芽 細胞から産生されるVEGF‑Aは 骨のりモデリ ングにおいて重要な要素と考えられる。しかし、骨芽細胞にメカニカルストレス(MS)を作用した場 合 、VEGFお よびVEGFRが 骨形 成・骨吸収に どのような影響を与えるかに ついての報告はほとんどな い。そこ で 本 研 究 で は 骨 芽 細 胞 にMSを 与 え た 際 のVEGFお よ びVEGFR発 現 と 骨 形 成 ・骨 吸収 関 連因 子の 発現 に つ いて検討した 。

【材料と方法 】

  マウス骨芽細 胞様細胞株MC3T3―E1細胞を 、I型コラーゲンコ―トしたBio Flexプレ―トに播種し 、Flexer cell tension systemを 用い て30 cycles/分、伸展率10%でMSを6、12、24、48時間作用させた。MSを作用さ せ た 後 、 培 養 上 清 と 細 胞 を回 収しVEGF−A、VEGFR−1、VEGFR―2、M−CSF、RANKL、I型コ ラー ゲン 、 オ ステオプ口テ グリン(OPG)、アルカリ性ホスファターゼ(ALP)およびマトリックスメタプロテナーゼ‑13(MMPー13) の 遺 伝 子 発 現 動 態 をRT―PCR法 に よ り 検 討 し た 。 さ ら に 培 養 上 清 中 のVEGF量 お よ びM―CSF量 をELISA 法 に て 測 定 し た 。 ま たVEGF中 和 抗 体 の 添 加 が 遺 伝子 発現 動態 に どの よう な影 響を 与 える か検 討し た 。

【結果】

・骨芽細胞に 対するMSが遺伝子発現動態に 与える影響

  VEGFR一2mRNA発 現 はMS群 お よ びcontrol群 共 に 認 め ら れ な か っ た 。MS群 はcontrol群 に 対 し6時 間

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か ら48時 間 の す べ て でVEGF一Aお よ びRANKL mRNA発 現 が 上 昇 し 、VEGFR―1お よ びOPG mRNA発 現 は 24時 間 以 降 で 上 昇 し た 。ALP mRNA発 現 は24時 間 以 降 で 減 少 し た 。MMP−13 mRNA発 現 は48時 間 で や や 増加傾向を認めた。M一CSFとI型コラ―ゲンmRNA発現に差 は認められなかった。

・培養上清中のVEGF量およびMーCSF量

MS群 のVEGF量 はcontrol群 に 対 し6時 間 か ら48時 間 ま で の す べ て の 時 間 帯 で 増 加 し た 。MS群 のM―CSF 量はcontrol群に対し12時間 から48時間でやや減少傾向を 認めた。

・VEGF中和抗体添加が骨芽細 胞の遺伝子発現動態に与え る影響

  抗 体 添 加MS群 で は 非 添 加MS群 と 比 較 し てVEGF―A遺 伝 子 発 現 が48時 間 で53%に ま で 抑 制 さ れ 、 VEGFR―1遺伝 子発 現の 増 加はcontrol levelま で完 全 に抑 制さ れた 。 さら にRANKL遺伝 子発 現が48時間 で 56%に まで 抑 制さ れた 。48時 間で 認め られ たMMP−13遺 伝 子発 現の 増加が抑制された。またその 他の遺伝子 発現に抗体添加の影響は認め られなかった。

【考察】

  MSに 応 答 し てVEGF−A遺 伝 子 の 発 現 が 増 加 し 培 養 上 清 中 のVEGF量 が 増 加 す る こ と が 示 され た 。ま た VEGF―Aの 受 容体 であ るVEGFR−1遺伝 子の 発現 も 増強 され たこ とか らVEGF‐・Aはautocrine的 に作用する 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 さ ら にRANKL遺 伝 子 、OPG遺 伝 子 、MMP−13遺 伝 子 はMSに よ り 発 現 が増 強 され 、 ALP遺 伝 子 はMSに よ り 発 現 が 抑 制 さ れ た 。 す な わ ちMSはVEGF‑Aお よ びRANKL発 現 の 増 強 と と も に 破 骨細 胞を 分化 誘導 し、骨吸収を促進する 可能性が示された。さらに 骨形成関連因子を抑制し、骨 吸収をサポ

―トしている可能性も示唆さ れた。

  そ こでMSに 応答 しVEGF―Aがautocrine的に作用しているか否かと 、もしVEGF autocrineが存在 するなら、

そ の 他 の 遺 伝 子 発 現 にVEGF autocrineが 影 響 を 与 え る の か を検 索す るた めVEGF中和 抗体 をMS群 およ び control群 共 に添 加し 、比 較 検討 した 。そ の結 果VEGF一A遺伝 子発 現が53%にま で抑 制 され、VEGFR−1遺伝 子発現の増加はcontrol levelまで完全に抑制されたためVEGF−Aはautocrine的に作 用することが示された。

さ ら にVEGF autocrineはRANKL遺 伝 子 お よ びMMP−13遺 伝 子 発 現 を 修 飾 す る 可 能 性 が 示 さ れ た 。   VEGF―Aは 血 管 内 皮 細 胞 のVEGFR−2と 結合 する こと で血 管 新生 に関 与し 、骨 芽 細胞 のVEGFRー1と結 合 することで骨芽細胞の分化・ 成熟を刺激すると報告されている。また、造血幹細胞由来の単球・マク口ファージ 系 前 駆 細 胞が 破骨 細胞 へ 分化 する 最終 決 定を 行っ てい るの は 骨芽 細胞 が発 現す る 破骨 細胞 分化 誘 導因 子 RANKLで あ る と 報 告 さ れ て い る 。 今 回 はM―CSF遺 伝 子 の 発 現 には 差 がな かっ たも のの 、VEGF―AはVEGF autocrineを 介し たRANKL遺伝 子発 現増 強 と血 管新 生の 促 進と のニ つの点で、骨のりモデリング に重要な役 割 を 果 た す 可 能 性 が 示 さ れ た 。 ― 方 、 中 和 抗 体 に よ っ てVEGF autocrineを 阻 害 し て もVEGF−Aおよ び RANKL遺 伝 子 発 現 がcontrol levelま で抑 制さ れな か った 。骨 芽細 胞 にはMSに 応答 しVEGF−A遺 伝 子発 現 やRANKL遺 伝 子発 現を 増強 す るチ ヤネ ルが 存在 す ると 報告 され てい る 。し たが ってMSに応答し 骨吸収関連 因 子 の 発 現を 修飾 する こ れら のチ ヤネ ル の関 与あ るい はそ れ 以外 の経 路が 存在 す る可 能性 も示 さ れた 。   MMP−13は 骨 基 質 蛋 白 の90%を 占 め るI型コ ラ― ゲン 線維 を 直接 断片 化す る蛋 白 分解 酵素 コラ ゲ ナー ゼ であ る。MMP−13は骨 基質 を 活発 に合 成分 泌している骨芽細胞には 認められず、破骨細胞直下の 骨基質表・

面に 局在 して いる と報告されており、骨 芽細胞が分泌したMMP―13に より断片化されたI型コラ― ゲンが破骨 細胞 由来 のゼ ラチ ナ ーゼMMP―9に より さ らに 分解 され る と考 えら れている。すなわちMSはVEGF autocrine を 介 しRANKL遺伝 子発 現を 増強 す るこ とで 破骨 細胞 を 活性 化す ると 同 時にMMP−13遺伝 子発 現を 増 強す る ことで骨吸収を促進する可能 性が示された。

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【結論】

  骨芽細胞にメカニカルストレスを作用した際VEGFーA/VEGFR−1発現が増強しVEGF−Aがautocrine的に作 用していることが示唆された。メカニカルストレスはVEGF autocrineを介しRANKLやMMP―13発現を増強す ることで、骨吸収を促進する可能性が示された。

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学位論文審査の要旨

     学 位 論 文 題 名      ●

R/Iechanical stress up ― regulates RANKL expression via VEGF autocrine in osteoblastic MC3T3 ― El cells

(メカニカルストレスはVEGF autocrine を介し 骨 芽細胞 様細 胞のRANKL の発現を増強する)

   審査は審査員全員出席の下で行った。まず申請者に提出論文要旨の説明を求めるとと もに、適宜提出論文の内容と関連分野に関する説明を求め、その後、口頭試問の形式で その内容および関連分野について試問した。まず申請者から以下の説明がなされた。

【緒言】骨のりモデリングにおいて血管新生と骨吸収は密接な関係にあることが知ら れ てい る。亠 方、 VEGF‑A は 血管 内皮 細胞のVEGFR‑2 と結合することで血管新生に 関与するとともに、骨芽細胞のVEGFR‑1 と結合することで骨芽細胞の分化・成熟を刺 激することも報告されている。また、VEGF‑A は破骨細胞による骨吸収において M‑CSF と類似した機能を持っことも報告されている。しかし骨芽細胞にメカニカルストレス (MS) を 加えた 場合 、VEGF‑A およ ぴ VEGFR が骨形成・骨吸収にどのような影響を与 えるかについての報告はほとんどない。そこで本研究では骨芽細胞にMS を作用させた 際のVEGF‑A およぴVEGFR 発現と骨形成・骨吸収関連因子の発現について検討した。

【材料と方法】マウス骨芽細胞様細胞株MC3T3‑E1 細胞に対しFlexer cell tension system を用い て MS を作 用さ せた 。刺 激開始6 時間から48 時間後に細胞を回収し、

VEGF‑A 、 VEGFR‑1 、VEGFR‑2 、 M‑CSF 、 RANKI 」 、I 型 コ ラ ー ゲ ン 、 OPG 、 ALP 、 MMP‑13 の 遺 伝 子 発 現動態 をRT 一PCR 法 によ り検 討し、 さら に培 養上 清中 のVEGF 量 韜よ ぴM‑CSF 量 をELISA 法 にて 測定 した 。ま たVEGF 中 和抗 体の 添加が遺伝子発 現動態にどのような影響を与えるのか検討した。

【結果】

・骨芽細胞に対するMS が遺伝子発現動態に与える影響

  MS 群 で は control 群に 対し 6 時間 から 48 時 間の すべ てで VEGF‑A お よび RANKI ・ mRNA 発 現 が 上 昇 し 、 VEGFR‑1 お よ び OPG mRNA 発 現 は 24 時 間 以 降 で 上 昇 し た 。      ―434 一

郎 明

順 邦

田 木

飯 鈴

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

ALP mRNA 発 現 は 24 時 間 以 降 で 減 少 し た 。 MMP‑13 mRNA 発現 は 48 時 間 でや や 増 加 傾 向 を 認 め た 。 M‑CSF と I 型コ ラ ー ゲン mRNA 発 現に 差 は 認め ら れな か っ た。

・培養上清中のVEGF 量およびM‑CSF 量

  MS 群 のVEGF 量 は control 群に 対し6 時 間から 48 時 間までの すべての 時間帯で 増 加 し た。 MS 群 の M‑CSF 量 は control 群 に対し 12 時 間から48 時 間でやや 減少傾向 を 認めた。

・  VEGF 中 和 抗 体 添 加 が 骨 芽 細 胞 の 遺 伝 子 発 現 動 態 に 与 え る 影 響    抗 体 添 加 MS 群で は 非添 加 MS 群 と 比 較し て VEGF‑A 遺 伝 子発 現 カ S48 時 間 で 53%

にまで抑制され、 VEGFR‑1 遺伝子発現の増加はcontrollevel まで完全に抑制された。

さら に RANKI .遺伝 子発現が48 時 間で 56% にま で抑制された。48 時間で認められた MMP‑13 遺伝子発現の増加が抑制された。またその他の遺伝子発現に抗体添加の影響 は認められなかった。

【 考察】 マウス骨芽 細胞様細 胞株 MC3T3‑E1 細胞 は MS に応答 しVEGF‑A が autocrine 的に作用することが明らかとなった。破骨細胞前駆細胞が破骨細胞へ分化する最終決定 を行 っている のは RANKL である と報告さ れており 、 M‑CSF 遺伝子の発現には差がな か っ たも の の、 VEGF‑A は VEGF autocrine を介 し た RANKL 遺伝 子発 現増強と 血管 新生の促進とのニつの点で、骨のりモデリングに重要な役割を果たす可能性が示された。

MMP‑13 は骨基質蛋白の 909'o を占める I 型コラーゲンを直接断片化する酵素であり、

VEGF autocrine を介して骨吸収を促進する可能性が示された。

以 上の 論 述 に引 き 続き 、 以 下の 項 目を 中 心 に口頭試 問を行っ た。

1 .明ら かとなっ た VEGF autocrine をコントロールする機構にっいて 2. 骨代謝 における 血管新生 の役割に っいて

3. M‑CSF と VEGF のそ れぞれが 破骨細胞 分化へ寄 与する程度について 4 .今後 の研究の 展望にっ いて

   これまでに、破骨細胞の出現に VEGF が関与することは知られていたが、本研究で は、骨芽細胞様細胞を用いて矯正カなどの機械的刺激によるVEGF の産生と骨吸収の 機 構に っ いて 検討し た。その 成果、機 械的刺激に よって VEGF の 産生が増 加し、

autocrine 的な機構により骨吸収に関与する物質の遺伝子発現を増加していることを明 らかにした。この成果は歯科医学に留まらず、広く医学の発展に寄与するものであり高 く評価できる。加えて、試問に対する申請者の回答は適切なものであり、本研究に直接 関係する事項のみならず、関連分野における基礎的、臨床的な広い学識を申請者が有し ていること、さらに今後の研究の展望についても評価された。よって審査担当者は、申 請 者 が 博 士 ( 歯 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。

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参照

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