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博士(農学)大宮あけみ

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Academic year: 2021

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(1)

博士(農学)大宮あけみ

    

学 位 論 文 題 名

果 樹 組 織 に お け る オ ー キ シ ン の 作 用 機 構 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の要 旨

  オーキシンは植物ホルモンのーっで、茎の伸長促進、果実の肥大促進`発根,

の促進等、植物の器官や組織によって多種多様ナょ生理作用を及ばしている。ま た、これらの作用は植物の種類や成長段階、あるいは外部環境によっても大き く変化する。農業の現場においてオーキシンは植物成長調節剤として広く利用 されているが、.このようナよオーキシン作用の多様性がオーキシンの利用を難し いものにしており、原因の究明が望まれている。そこで、本論文では、オーキ シンの果樹組織における作用、および作用機構を明らかにし、オーキシン作用 の多様性をもたらす要因を解明することを目的とした。

  まず、果実に対するオ―キシンの作用を明確にするため、果肉ディスクを用 い た組 織 培 養 法 に よ る オ ー キ シン 作 用 の 検 定 法を 確立 し、成 長過 程の モモ

Prunus̲persicaL.)果肉組織に対するオーキシンの作用を解析した。その結 果、細胞分裂期、硬核期、細胞肥大期に採取したモモ果実の果肉ディスクに対 し、オーキシンによる顕著ナよ肥大促進効果が認められた。同時にオーキシンは 軟化やァントシアニンの生成ナょどの果実の成熟に伴う変化も促進した。それぞ れの反応に対するオーキシンの至適濃度は異なっていた。また、反応の大きさ や至適濃度は環境要因(光の有無)や果実の成長段階によって大きく変化する ことが明らかになった。したがって、果肉組織にはオーキシンの情報伝達系が 複数存在し、それぞれが成長段階や外部環境によって制御されている可能性が 示唆された。

    ―226―

(2)

    オーキシンは細胞内の特定の部位に結合し、作用を及ばすと考えられている。

  したがってオーキシンの作用機構を明らかにする上でオーキシンの細胞内局在   性は重要な情報になりうるものと考えられた。そこで、生体内の主要なオーキ   シンであるIAAに対する特異的抗体を作製し、これを用いて免疫電顕法によルモ   モの種々の組織におけるIAAの細胞内局在性を解析した。その結果、葉肉細胞で   は成長に伴いIAAが葉緑体に集積することが明らかにぬった。これは、葉の成長   に伴い細胞のIAA要求量が減少し、過剰にナょったIAAを葉緑体に取り込むものと 考えられる。根では根端の分裂細胞の核小体にIAAの集積が観察された。この現 象は他の分裂細胞や根の伸長部の細胞の核小体には認められず、根端の分裂細 胞 に特 異的で ある と考 えられる。核小体はr RNAの合成の場であることから、

  オー キシン が根 端の 分裂 細胞に 特異 的なrRNAの合成 に関与している可能性 が示唆された。このようなIAAの細胞内局在性の組織特異性や成長に伴う変化が 多様ナょオーキシン作用の1要因になっているものと推察された。しかし、基本 的にはIAAはどの細胞にも存在し、細胞内においては腋胞を除く部位に遍在して おり、血中と標的細胞の作用部位にのみ局在する動物ホルモンとは性質を異に   していた。オーキシン作用の特異性や多様性はオーキシンの局在性の違いだけ でナょく、オーキシンの情報を伝達するオーキシン受容体、あるいは受容体から 生理変化に至るまでの情報伝達系の性質の違いも深く関わっているものと考え られる。

. そこ で、オ ーキ シン の情報伝達系の第1段階である、オーキシン受容体によ るオーキシンの情報の受容機構を明らかにするため、モモ茎頂部および未熟果 の 可溶 性画分 から オー キシン結合タンバク質(AB P)の単離・精製を試みた。

  モモ茎頂部の可溶性画分には、CM−Toyopearlカラムに保持される画分と、素 通 り す る 画 分 に そ れ ぞ れ 性 質 の 異 な る ABP (sABPlsABP2) が 存

(3)

在した。両画分のABPをそれぞれ2、4ーD‑Sepharoseカラムにより精製し、オー キシン との結合の性質を調べた。スカッチャードプロットから推測されたsA BP1お よ びsABP2の 解離 定 数は そ れぞ れ41x10‑ 5M26x10―6Mで、クン パク質Imgあた りの2,4D結合数はそれぞれ42nmolとO.92nmolだった。14C̲

Z、4‐Dのタンパク質に対する結合はオーキシン化合物によって阻害されるが、オ ーキシン活性のない構造類似化合物では阻害されナょかった。また、IAAやNAAは sABPlよ り sABP2に 対 し て 、 よ り 強 い 阻 害 を 示 し た 。 両 タ ン パ ク 質 は 2,4−D‐Sepharoseカラムに保持された後、高濃度の2,4−Dで溶出されることから 2.4−Dとの結合|ま可逆的であると考えられた。これらの結果から、sABPlお よ びsABP2は オ ーキ シ ン受 容 体と し ての 条 件で あ るを 特 異性 、 飽 和性 、 親 和 性 、 可 逆 性 を 満 た し て い る こ と が 示 さ れ た 。 ま た 、sABPlsABP2 は、分子量やオーキシンに対する結合の性質が異なっていることから、それぞ れ異なるオ―キシン作用を媒介しているものと考えられた。このことからオー キシン受容体は細胞内に複数存在し、オーキシンが異なった受容体と結合する ことにより、異なった情報伝達系が活性化され、多様な生理変化を植物体にも たらすものと推察された。

  モモ未熟果の可溶性画分からもABPを部分精製した。24‑D−Sepharoseに保 持 され 、IAAで 溶出 さ れる 画 分にsABPlと同 様 の電 気 泳動的挙動 を示すタン パ ク質 が 存在 し た 。また 、sABP2に相 当するタン パク質は認 められナょ かっ た。

  sABP1は 電気 泳 動 的に単一 ナょパンド にまで精製 し、特異的 抗体を作製 し て器官 特異性およ び細胞内局 在性を調べ た。ウェス タンプロッ トにより、sA BP1は緑化した 茎や葉に特 異的に存在するタン′ヾク質であることが明らかに なった。根や子葉および黄化した茎や葉の粗抽出液中には検出されなかった。

(4)

ま た 、果 実 には 成 長過 程 を通 し て、 茎 や葉 に 比 べわ ず かのsABPlが認めら れ た 。免 疫 電顕 法 およ び 細胞 分 画法 に よりsABP1は細 胞 壁に 局 在するクン パク質であることが示された。特に未熟葉や伸長部の茎の表皮細胞の細胞壁に 局在することからオーキシンによる細胞の肥大促進に関与している可能性が示 唆された。

  以上の結果から、オーキシン作用の多様性の要因として、植物体におけるオ ーキシンの情報伝達系の多様性が重要な役割をはたしているものと考えられる。

すなわち複数のオーキシン受容体が存在し、それぞれが様々な制御を受け、多 様次生理反応を植物体にもたらす、という仮説が成立する。この仮説を証明す るた めには、ま ず、植物体 におけるABPを逐一明 らかにし、 それらクン パク 質のオーキシン受容体としての機能を解明する必要がある。本論文ではこれま でABPに関する 報告のない 果樹組織を 材料とし、可溶性画分に新たナよ2種類 のABPを 見 い だ し た 。 さ ら に、 膜 画分 や 細胞 壁 画分 に 存在 す るABPを検 索 することによって果樹組織に存在するオーキシン受容体の候補が揃うことにナょ る。 これらのABPのオーキ シン受容体 としての機 能や、オー キシン受容 体か ら生理反応にいたる情報伝達機構を解明することができれば、オーキシンの作 用機構の全貌が明らかにナょるものと期待される。

(5)

   学位論文審査の要旨 主査   教授   市原耿民 副査   教授   本問   守 副査   教授   原田   隆

    

学位論文題名

果樹組織におけるオーキシンの作用機構に関する研究

  

本 論 文 は 序 論 、本 論

4

章 で構 成 され 、図

43

、 表

12

、 引用 文献

80

を 含 む 総 頁 数

87

頁 の和 文論 文 であ る。 別 に参 考論 文

8

編 が 添 えられている。

  

オーキシ。ンは植物ホルモンのーっで、茎の伸長促進、果実の肥大 促進、発根の促進など、植物の器官や組織に多様な生理作用を及ば している。現在オーキシンは植物成長調節剤として広く利用されて いるが、その多様性のため、簡便な利用を困難としており、原因の 究明が必要とされている。本研究はオーキシンの果樹組織における 作用および作用機構を明らかにし、その作用の多様性をもたらす要 因の解明を目的としている。研究結果は以下のとおりである。まず、

果実に対するオーキシンの作用を明確にするため、果肉ディスクを

用いた組織培養法による検定法を確立し、成長過程のモモ果実組織

に対するオ―キシン作用を解析した。その結果、細胞分裂期、硬核

期、細胞肥大期に採取したモモ果実の果肉ディスクに対し、オーキ

シンによる顕著な肥大促進効果のあることを明らかにした。また反

応の程度や至適濃度は環境要因や果実の成長段階により大きく変わ

るので果肉組織にはオーキシンの情報伝達系が複数存在し、それら

が成長段階や外部環境によって異なる制御を受けるものと推定した。

(6)

    

オーキシンの作用機構を明らかにする上でオーキシンの細胞内局

  

在性は重要な情報になると考え、生体内の主要なオーキシンである

  IAA

に 対する特異的抗体 を作製し、これを 用いて免疫電顕法によ

  

り種々の組織における

IAA

の細胞内局在性を解析した。その結果、

  

葉肉細 胞では成長に伴い

IAA

が葉緑体に集 積するのが特徴で、葉

  

の 成 長 に 伴 い

IAA

要 求 量 が減 少 し、 過剰 の

IAA

を葉 緑体 に 取り

  

込んでいる可能性を示唆する結果を得ている。根では根端細胞の核

  

小体に

IAA

の集積が観察 された。これらの 現象とオーキシンの作

  

用を直接結び付けることはできないが、組織特異的なオーキシンの

  

細胞内局在性は多様な生理作用発現の要因となることが示唆された。

    

そこで果樹組織におけるオ―キシンの情報伝達機構を明らかにす

  

るためモモ茎頂部および未熟果から可溶性オーキシン結合タンパク

  

質(

ABP

)の単離・精製を試みた。モモ茎頂部の可溶性画分には、

  CM

−Toyopearl カラムに保持される画分と、素通りする画分にそれぞ

  

れ 性 質 の 異 な る

2

種 類 の

ABP

sABPl

  sABP2

) が 存 在

  

するこ とを確かめた。各々 の

ABP

をさらに

2

.4 −D −Sepharose カ

  

ラムにより精製し、オーキシンとの結合の特異性、飽和性、親和性、

  

可逆性を調べた結果、オーキシン受容体としての条件を満たしてい

  

る こ と が 示 さ れ た 。

sABPl

sABP2

は そ れ ぞ れ 分 子 量 や オ

  

―キシンに対する結合の性質が異なっていることから、これらのA

  BP

はそれぞれ異なるオーキシン作用を媒介しているものと考えた。

,即ちオーキシン受容体は細胞内に複数存在し、オーキシンが異なっ

  

た受容体と結合することにより、異なった情報伝達系が活性化され、

  

多様な生理変化を植物体にもたらすものと推察している。モモ未熟

  

果の可溶性画分からも

ABP

を部分精製し、2 ,4 −D −Sepharose に保

  

持 さ れ 、

IAA

で 溶 出 さ れ る 画 分 に

sABPl

と 同 様 の 電 気 泳 動 的

  

挙動を示すタンパク質を確認した。

(7)

  

さら に

sABP1

に っい て電気 泳動的 に単一 なパン ドに まで精 製 し、.特異的抗体を作製して局在性を調べた。その結果細胞分画法お

    

´I

よ び免 疫電顕 法によ り

sABPl

は細胞 壁に局 在する タン パク質 で あることを明らかにした。特に未熟葉や伸長部の茎の表皮細胞の細 胞壁に局在することからオーキシンによる伸長促進に関与している 可能性が示唆された。

  

以上オ―キシンの果樹組織における作用ならびにその受容体につ

いての研究結果は植物ホルモンの情報伝達機構にっいて先端的知見

を加えたものであり、高く評価できる。よって審査員一同は、別に

行った学力認定試験の結果と合わせて、本論文の提出者大宮あけみ

は博士(農学)の学位を受けるのに充分な資格があるものと認定し

た。

参照

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