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滑車骨折を伴った小児上腕骨内側上顆骨折の1例

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Academic year: 2021

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-27-日本肘関節学会雑誌27(2)2020

滑車骨折を伴った小児上腕骨内側上顆骨折の

1例

Keywords:Medialhumeralepicondylefracture(上腕骨内側上顆骨折),Trochleafracture(滑車骨折), Children(小児)

Correspondingauthor:YasuyukiTAMAKI,Departmentoforthopaedicsurgery,JapaneseRedCrossSocietyWakayama MedicalCenter,4-20,Komatsubaradoori,Wakayamacity,Wakayama640-8558

【緒言】非常にまれな滑車骨折を伴った小児上腕骨内側上顆骨折の1例を経験したので報告する.

【症例】11歳の女児で,バトントワリング練習中に転倒受傷した.上腕骨内側上顆骨折の Wat

son-JonesType2と診断し手術を行った.術前麻酔下で関節不安定性は高度であり,術中に関節内に転位 した大きな滑車骨折があることが判明した.滑車骨片,内側上顆骨片をそれぞれ整復固定した.術後

経過は良好で,術後6か月で疼痛,関節可動域制限なく,運動に完全復帰した.【考察】本症例は

Watson-JonesType2と診断したが,不安定性高度で滑車骨折を合併していたことから Type3もしくは

4の自然整復例と推測された.高度の不安定性を有する場合は滑車骨折などの関節内骨折の合併を念 頭に置く必要がある.

玉置 康之 田中 康之

日本赤十字社和歌山医療センター

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YasuyukiTamaki YasuyukiTanaka JapaneseRedCrossSocietyWakayamaMedicalCenter

【緒 言】 小児上腕骨内側上顆骨折は比較的よく経験する骨 折のひとつであるが,今回われわれは,非常にまれな 滑車骨折を伴った小児上腕骨内側上顆骨折の1例を経 験したので報告する. 【症 例】 症例は11歳女児で,バトントワリングの練習中に 転倒し左肘関節痛を自覚した.特記すべき既往歴は なかった.左肘関節に変形はなかったが内側を中心 に高度の腫脹を認めた.単純X線(図 1a,b),単純 CT

(図2a,b,c,d)から Watson-Jones分類 type2の上腕骨内 側上顆骨折と診断した.この時点では滑車骨折の診 断は困難であった.受傷後2日目に手術を行った.麻 酔下徒手検査では肘関節軽度屈曲位で外反していく と容易に脱臼するほどの高度の外反不安定性を認め た.手術は内側侵入で行い,転位した内側上顆骨片を 確認した.整復操作を行っている時に,関節内に遊離 した大きな骨軟骨片があることが判明した.遊離骨 軟骨片の形状,関節内の状態などから滑車骨折と診断 した(図3a).滑車骨片を正確に整復し内側の関節外 部分からCワイヤー 2本で固定した(図 3b).次に内 側上顆骨片を整復しtensionbandwiring固定を行った (図4a,b).術後に術前の単純 CTを詳細に再確認した が,滑車骨折部は同定できなかった.診断できない程 度の亀裂が入っていた可能性がある.術後は3週間の ギプス固定の後,関節可動域訓練を開始した.術後4 か月で上腕骨内側上顆の骨端線閉鎖とともに骨癒合 が確認できたので,抜釘を行った.最終観察時の術後 6か月(抜釘後 2か月)では,左肘関節は伸展 0°,屈

曲150°,疼 痛 な く,Mayoelbowperformancescoreは 100点であった.単純 X線(図 5a,b),単純 CT(図6a,b) では整復位は良好で十分な骨癒合が確認できた.

1.初診時単純 X線

(2)

滑車骨折を伴った小児上腕骨内側上顆骨折の1例 -28-a 冠状断 b 矢状断 c 後方からみた 3DCT d 内側からみた 3DCT c,d:上腕骨内側上顆骨折は認めるが,滑車骨折の診断は 困難であった. a 滑車骨折を合併していた b 滑車骨折を Cワイヤーで固定した 図2.初診時単純 CT3. 術中所見4. 術後単純 X線 a 正面 b 側面

(3)

玉 置 康 之 ほか -29-【考 察】 小児上腕骨内側上顆骨折は,比較的よく経験する骨 折のひとつであり肘周辺骨折の12-14%と報告されて いる1,2).一方,小児滑車骨折は,尺骨滑車切痕内で外 力を受けにくいこと,靱帯,筋肉が付着しないことな どから非常にまれであると報告されている3,4,5).滑車 骨折を伴った小児上腕骨内側上顆骨折の報告もまたき わめてまれである.われわれが渉猟し得た範囲では, 本症例を含めて4例の報告がされている6,7,8).年齢は 4-11歳,男性 2例,女性 2例である.いずれも初診時 には上腕骨内側上顆骨折と診断されていたが,滑車骨 折合併の診断はできていなかった.滑車骨折の診断時 期は,受傷後6か月が 1例,術中が 3例であり,初診 時に滑車骨折合併を診断することは非常に困難である と考えられる.本症例では容易に脱臼する程度の高度 の外反不安定性を認めており,受傷時に脱臼していた 可能性がある.上腕骨内側上顆骨折に加え,脱臼時に 肘頭が滑車に衝突することで滑車骨折を合併したと推 察される. 小児上腕骨内側上顆骨折に合併した滑車骨折が診断 困難な原因としては,第1に滑車骨端核の出現時期が 遅いことがあげられる.上腕骨遠位部の骨端核出現年 齢は,外側顆核が1-2歳,内側上顆核が 4-5歳,滑車核10-11歳,外側上顆核が 10-13歳である9).よって滑 車骨端核出現前の年齢では,単純X線,単純 CTで上 腕骨内側上顆骨折と診断しても滑車骨折を合併してい る可能性がある.術前に診断するためにはMRIや関節 造影などを行なう必要があるが,実際には追加検査は できていないことが少なくない.手術中に関節内を観 察することが最も単純で確実な方法であると考えられ る.本症例では健側患側ともに滑車核はすでに出現し ていたので追加検査は行わなかった.術中に容易に脱 臼する程度の高度の不安定性があり整復操作時に滑車 骨折を合併していることが判明した.術中に不安定性 を評価し,高度の不安定性を認めた場合は関節内を観 察することが重要であると考えられた.第2の原因と

してWatson-Jones分類 type2の診断がやや困難である ことがあげられる.type2と思われても,type3や type4

の自然整復例が混在していることが指摘されている10) 本症例は初診時にtype2と診断したが,肘関節軽度屈曲 位で外反すると容易に脱臼するほどの高度の不安定性 を認めたこと,滑車骨折を合併していたことなどから type3もしくは type4であった可能性がある.骨折部の 転位が軽度であるtype2に対しては手術治療と保存治 療の議論がなされているが,安易に保存治療を選択し た場合には滑車骨折を見逃す可能性もある.保存治療 を選択する場合には,不安定性の評価を行うこと,滑 車骨端核出現前の年齢ではMRIや関節造影などを行な うことが必要である.これらの評価が行えない場合に は,積極的に手術治療を選択するべきであると考えら れた. 滑車骨折の手術治療に関しては,本症例のように関 節外部分が残存していればワイヤー固定である程度の 固 定 性 が 得 ら れ る.関 節 外 部 分 が な い 場 合 は,

headlessscrew,骨釘,吸収性ピンなどで対応可能であ

るが,十分な準備ができていない場合は,吸収糸を用 いての固定も考慮される.いずれにしても確実に診断 を行い,解剖学的再建を行うことが必要であると考え られる. 【結 語】 非常にまれな滑車骨折を合併した小児上腕骨内側上 顆骨折の1例を経験した.滑車骨折は初診時の単純 CT で診断することは困難であったが,術中に判明した. 術中に高度の不安定性を認めた場合は,関節内を観察 することが重要である.正確に整復固定を行うことで 良好な成績が得られた. この論文は第32回日本肘関節学会で発表した. 【文 献】

1)BeatyJH,KasserJR:Theelbow.RockwoodandWilkins' fracturesinchildren.7thed.JBLippincott.Philadelphia. 2009;533-93.

2)WilkinsKE:Fracturesanddislocationsoftheelbowregion. FracturesinChildren,RockwoodCAJretaled,2nded. 図5 最終単純 X線

a 正面 b 側面

6 最終単純 CT

(4)

滑車骨折を伴った小児上腕骨内側上顆骨折の1例

-30-Lippincott.Philadelphia.1984;480-95.

3)TomaruM,OsadaD,TamaiK,etal:Isolatedcoronalshear fractureofthenonossifiedhumeraltrochleaina7-year-old patient.JHandSurgAm.2018;43:191.e1-5.

4)YanoK,KaneshiroY,SakanakaH:Isolatedosteochondral fractureofthetrochleainthecoronalplaneinachild beforeossificationofthetrochlea:A casereportand literaturereview.JHandSurgAm.2018;43:190.e1-5. 5)堀内行雄,伊藤恵康,浦部忠久ほか:上腕骨滑車骨折

の治療経験.骨折.1986;8:249-53.

6)CothayDM:Injurytothelowermedialepiphysisofthe humerusbeforedevelopmentoftheossificcentre.Report ofacase.JBoneJointSurgBr.1967;49:766-7.

7)FaheyJJ,O'BrienET:Fracture-separationofthemedial humeralcondyleinachildconfusedwithfractureofthe medialepicondyle.JBoneJointSur gAm.1971;53:1102-4.

8)磯野正晶,三矢聡,藤田護ほか:小児上腕骨内側上顆 骨折に滑車骨折を合併した1例.骨折.2017;39:37-9. 9)伊藤恵康:上腕骨内側上顆骨折.肘関節外科の実際.

南江堂,東京.2011;120-7.

10)SuzukiK:Treatmentofhumeralmedialepicondylar fractures.JJpnElbowSoc.1997;4:109-10.

図 1 .初診時単純 X 線
図 6 最終単純 CT

参照

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