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日本の栄養療法の歴史と高齢社会への対応

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Academic year: 2021

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(1). 日本静脈経腸栄養学会雑誌 34(5):316-319:2019. 特集 日本の栄養療法を考える. 日本の栄養療法の歴史と高齢社会への対応 History of Japanese nutrition therapy and response to an aging society. 中村丁次 Teiji Nakamura. 一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会 名誉会員 / 神奈川県立保健福祉大学 Honorary Member of Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition, Kanagawa University of Human Services. 要旨:我が国の栄養療法は、病院給食を起点にて、医療の近代化、疾病構造の変化、さらに臨床栄養学の進歩により形 成されてきた。疾病の予防、治療への有効性を追求した食事療法は、歴史の過程で、栄養が治療効果や quality of life (QOL)、さらに医療費や介護費に影響を与えることを明らかにしたことから、栄養状態の改善も目標にするようになっ た。食事のみならず静脈経腸栄養が発展する中で、栄養療法は包括的概念へと変化した。疾病が複合化する高齢社会では、 栄養療法を実践するマネジメントケアによる総合的栄養管理が必要になった。 索引用語:栄養療法、病院給食、高齢社会. 日本における栄養学と栄養療法の歴史. 順天堂医院の平野千代吉が西洋式の病人食を最初に導入 し、日本人の食事に合うように「食餌療法新書」を刊行した。. 1887年(明治20年) 、日本の医療は従来の中国医学からド. 福沢諭吉は、北里柴三郎を迎え入れて慶応大学病院を創設. イツ医学へと変更され、栄養学はその一環として導入された。. し、1926年(大正15年)食養研究所を開設した。病人に対す. 一方、明治維新直後から米英医学を基本にした医療の導入. る本格的な食事療法の研究が始まったのである。しかし当時、. を考えたグループがすでに存在し、 「横浜学派」 と言われてい. 我が国における栄養の主たる問題は、主食偏重によるたんぱ. た。中心人物は、ローマ字を考案したヘボン博士であり、診療. く質、脂質、ビタミン、ミネラルの不足により種々の栄養欠乏症. 所を開設して医療の近代化を図っていた。弟子には、福沢諭. と関連した疾患が発症していたことである (表1)。栄養学が. 吉、高木兼寛らが存在し、 ドイツの実験医学に対抗して臨床. 導入された当初の課題は、低栄養状態にある日本人全体の. 医学の重要性を主張していた1)。その後に起こるドイツ医学の. 栄養改善であり、特に軍隊においては、 「丈夫な兵士」 を作る. 本流である森鴎外(陸軍) と米英医学を学んだ高木兼寛(海. ことが国家の重要課題であった。我が国の栄養学は、病人の. 軍) との脚気論争も、このことが底流にあったようである。. 食事療法を課題にする臨床栄養よりも、 国民全体の低栄養状. 明治以降、このような医学の近代化に伴い、栄養学を基に. 態を改善する公衆栄養を中心に発展し、臨床栄養を中心とし. した「食事療法」が形成されていった。1888年(明治21年) 、. た欧米諸国とは異質の道を歩んだ。. 表 1 日本人の伝統的食事の問題点. 病院給食と診療報酬. ①主 食偏重により、たんぱく質、脂質、各種のビタミ ン・ミネラルの不足により、種々の栄養欠乏症 (エ ネルギー・タンパク質欠乏症、脚気、夜盲症等)が 発症していた。 ②低 栄養により、乳幼児の死亡率が高く、抵抗力が なかったので結核等の感染症も多かった。 ③エネルギーや各種栄養素の不足で、子供の成長が 悪く、低身長や体力不足に悩んでいた。 ④低 栄養に食塩の過剰摂取が重なり、高血圧、脳卒中、 さらに胃がんで亡くなる人も多く、短命であった。. (316). 日本の栄養療法の歴史と高齢社会への対応. 我が国に食事療法が学問的に体系化されていくのは、第 二次世界大戦後である2)。GHQの指導の下に日本の医療改 革が行われ、その根幹をさす「医療法」が1948年(昭和23年) に制定された。この法律では、当時、患者や家族が病室で自 炊していたのを改めて、病院に給食施設の設置と栄養士の 配置が義務付けられた。1950年(昭和25年) には、 「完全給 食制度」が設定され、一日に2,400kcalの食事が提供されるよ うになった。食糧不足の環境下で患者が補食をせず、病院 食だけで必要な栄養量を確保できるようにした制度である。当 時、患者は布団と調理器具を持って入院し、患者や家族が部.

(2) 屋や廊下で自炊し、料理を家庭から持ち込んでいた。このこと. 特に、世界的に話題になったのが保険制度との関係であ. は、食事の栄養と衛生上の問題を起こすことから、食事全て. る。例えば、我が国の国民皆保険制度における診療報酬は、. を医療の監視下に置く制度に組み換えたのである。. 初診代、検査代、薬代、指導料等のように一つ一つの医療. 戦後の経済発展等で、国民の一般的な食事は改善され、. 行為に公的価格が定められ、加算した額から患者の自己負. 病院食も量から質の改善へと変革され、1958年(昭和33年). 担分を差し引いた額が保険から支払わられていた。 このような. には、 「完全給食制度」は「基準給食制度」へと変更された。. 「出来高払い制」は、医療機関にとってはコストを考えないで. 当時、食事の質的評価に「動たん比」が用いられた。たんぱく. 診療内容が決定でき、高額な医療により病院収入を増加させ. 質の利用効率のいい動物性食品は高価であったために植物. る利点があったが、高齢化社会を迎える先進諸国では、医療. 性食品が頻繁に利用されたからである。. 費の増加が抑制できない問題に直面することになり、国家財. 1961年(昭和36年) には「特別治療食加算」が認められ、. 政にも影響を与えるようになった。現在、我が国では「包括的. 治療食という概念が誕生した。治療食を加算の対象として認. 定額払い制」が行われ、分類された診断群に対して政府があ. めたことは、食事療法が疾病の治療に有効であることを国が. らかじめ平均的な代金を設定し、医療機関は実施した費用に. 認めたことになり、従事する栄養士は医療の専門職として認. は関係なく一定額を受け取る制度となっている。この方法だと. 識されるようになった。1973年(昭和48年) 、 栄養審議会は、 当. 医療側にコスト意識が出て、できる限り経済的な医療を実施. 時一律に定められていた2,400kcalの栄養量を廃止し、患者. するマインドが出てくる。食事療法や適正な栄養管理は、コス. 個々の適正量に近い給与を目的とした内容に変えた。病院に. トパフォーマンスの高い医療だと位置づけられるようになった。. おける一般食給与患者の熱量所要量は、一般人の生活活. 疾病の予防、治療から発展した食事療法は、傷病者の栄養. 動指数に患者の補正係数0.6が考慮されたのである。. 状態を維持、改善すべき臨床栄養管理へと発展し、その方法. このように、病院食に対して、医療の色彩が強くなればなる. として、対象者の栄養アセスメントから始まり、栄養診断、栄養. ほど「治療食は薬と同じ」 という認識が広まっていった。病院. 計画し、 実行、 その変化をモニターして再評価するマネジメント. 栄養士の目標が特別治療食の拡大と点数の増大になり、治. システムが導入されることになったのである。このような状況下. 療食に対しては「良薬口に苦し」 との考えが広まり、臨床的効. で、1998年、日本静脈・経腸栄養研究会を基に日本静脈経腸. 果の議論が中心となっていった。. 栄養学会(Japanese Society for Parenteral and Enteral. ところが、高度経済成長を契機に国民は豊かさを享受する. Nutrition;JSPEN) が発足した。. ようになり、グルメブームが起きて「病院食もおいしくすべき」 と. 2006年(平成18年) 、 「入院時栄養管理実施加算」が新. の大合唱が起こった。1994年(平成6年) 、基準給食制度は、. 設された。2010年(平成22年) には、栄養障害を起こすハイリ. その目的が達成されたと判断されて廃止され、食事料の一部. スク者を対象に、医師、管理栄養士、看護師、薬剤師等の. 定額自己負担を含んだ新たな「入院時食事療養制度」がス. チームから成る 「栄養サポートチーム加算」が認められ、2012. タートした。この制度では、管理栄養士の配置を義務づけると. 年(平成24年) には、全ての入院患者に栄養管理が必要であ. 同時に食事の温度管理と夕食の6時配食を目的とした「特別. ることから 「入院時栄養管理実施加算」が廃止され、その内. 管理加算」 と、食環境を良くする 「食堂加算」、 さらに患者の好. 容がそのまま 「入院基本料」の算定要件として包括化された。. みによりメニューが選択できる 「選択メニュー加算」が新設さ. 21世紀になり、従来、 「病院給食料」 と言う食物についてい. れた。いわば、 病院食は治療としての役割と同時に、 患者サー. た診療報酬は、栄養管理という専門職の技術料として、評価. ビスの一環として運営させるようになったのである。. されるようになった。臨床栄養管理の進展により、病院食は多. 傷病者の栄養障害と臨床栄養管理. が管理栄養士のスキルの向上と病棟配置、 さらに病棟での多. 様性と個別性への対応が益々重要になり、そのカギになるの 職種連携によるチームワークへと進展したのである。. 21世紀を前に食事療法は、大きな課題に直面した。入院 患者の約半数は低栄養状態にあることが明らかになり、入院 性栄養障害(hospital malnutrition) と言われるようになった3)。. 高齢者の食事療法. 対象者が病人であろうとも、管理栄養士により食事が管理され. 高齢社会は、食事療法や栄養療法に再び大きな改題を提. ている病院で栄養障害が出現している事実は、大きな衝撃とし. 起している。人間は、高齢により心身の能力が低下、喪失し、. て受け止められた。原因には、疾病による味覚、消化、吸収、 さ. さらに糖尿病、高血圧症、心臓病、脳卒中、慢性呼吸疾患、. らに代謝の変化に伴うものや不適正な食事や栄養補給等があ. がん、認知症などの慢性疾患を多数抱えるようになり、自立し. り、その対策には総合的対策が必要になった。栄養障害の出. た普通の生活をすることが困難になる。医療費、介護費も増. 現により、薬物の使用量の増加、手術の回復の遅延、在院日数. 大し、高齢社会は未来が描けない暗い時代が到来するリスク. の増大、医療費・介護費の増大が起こることもわかってきた。. もある。2015年(平成27年) 、世界保健機関(World Health. 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.34 No.5 2019 (317).

(3) Organization;WHO) は高齢社会に向けて革新的報告書. で言っている健康とは、従来言ってきた疾病予防を目標とした. 「高齢化と健康に関するワールド・レポート (World Report. 「健康づくり」の健康とは、異なった健康観である。それは、た. on Ageing and Health 2015)」 を発表した4)。この報告書で. とえ病気や障害になったとしても、自立した生活の基に前向き. は、 「高齢者は依存者ではない」「高齢化は医療費の増加を. に生きる元気な高齢者になることを目指すことを 「健康寿命の. もたらすが、予想するほど高くはならない」「高齢者への支出. 延伸」 と言っているのである。熱心にボランティア活動に励む. は負担費用ではなく投資と考える」「高齢者の医療や介護な. 高齢のがん患者や、 手足を失ってもメダルを目指すパラリンピッ. どの費用負担が強調されすぎ、社会貢献が過小に評価され. クの選手達を傷病者だから不健康だとは、 決して言わない。こ. ている」 「コスト削減の努力と同時に高齢者を支える政策に投. のような健康寿命を延伸すべき栄養療法は、どうあるべきか?. 資すべき」等が書かれ、まさに革新的提案であった。. これからの重要な課題になる。. 高齢者は確かに種々の身体能力が喪失や低下し、慢性疾. 2009年、アメリカのウィスコンシン大 学(University of. 患を複数抱えるようになり、死に至るリスクが高くなる。しかし、. Wisconsin-Madison) は、ヒトに最も近いアカゲザルを長年に. このような状況下でも、残されている心身の機能を活用すれ. わたり飼育し、 「エネルギー制限食」の長寿への効果を発表し. ば、自立した日常生活が営まれ、幸福な人生を送ることができ. た5)。腹八分に食べると肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧. る。いわゆる 「健康寿命の延伸」 を掲げているのであるが、 ここ. 等の非感染性慢性疾患(生活習慣病) が予防でき、長寿に結 びついた。ところが、長期間の腹八分食は骨密度の低下 を起こし、骨粗鬆症、骨折の誘因となり、長寿だが要介護 サルの予備軍を作っていたのである (図1)。 健常な高齢者だけではなく、慢性疾患を持つ高齢化に も、新たな問題が起こりつつある。高齢糖尿病患者にサ ルコペニア、認知機能低下、日常生活動作(activities of daily living;ADL)低下、転倒、骨折など老年症候群が 非糖尿患者に比べて起こりやすくなり、高齢糖尿病患者 にフレイルの合併者が多く、合併すると介護度が増すと同 時に死亡率も高くなることが解ってきた (図2)6)。一般に、 ヘモグロビンA1cが8.0%以上になると糖尿病の各種合併 症が起こりやすくなるが、7.0%未満になると骨折、転倒が 多く、フレイルにもなりやすく、各国で高齢糖尿病では、ヘ モグロビンA1cの目標値を一般の糖尿病患者より高めに 設定することが検討されている。 糖尿病におけるエネルギー制限、腎臓病におけるタン パク質制限に見られるように、慢性疾患患者は、食事療. 図 1 長期カロリー制限により骨密度が低下する. UW 研究(Age(Dordor)2012;34:1133-1143). 法により長期に摂取栄養量の制限を行っている。治療目 的でのこのようなエネルギーや栄養素の制限は、新たな 低栄養障害を起こして、高齢者の場合、 フレイルの誘因に なっている。疾病治療と心身の機能性維持の両面を満足 させる食事や栄養の指導・管理を今後、検討していく必 要がある。. 高齢者のフレイルと栄養 「健康寿命の延伸」に必要なことは、疾病の発症予防と 増悪化防止、そして、加齢に伴い重要になるのが介護予 図 2 HbA1c 値とフレイルのハザード比. Adult Changes in Thought study の高齢住民 1,848 名(糖尿病患者 200 名) の 4.8 年の追跡調査。 Friedらのフレイル:体重減少、疲労感、活動性低下、筋力低下、歩行速度低下 *:ハザード比:年齢、認知機能、性、BMI、教育歴、人種、脳卒中、冠動脈疾患、心不全、 COPD、CES-D、健康感を調査 (Zaslavsky O. J Gerontrol A Bio Sci Med Sci 71: 1223-1229, 2016よ り引用改変). (318). 日本の栄養療法の歴史と高齢社会への対応. 防であり、 その中心となるのがフレイル対策である。 フレイル 対策の中心が低栄養予防となる。低栄養とは、 エネルギー や各種の栄養素が心身の必要量を満たしていない状態 を言い、体表的な疾患には、エネルギー・タンパク質欠乏 症、鉄欠乏性貧血、 カルシウム不足による骨粗鬆症等があ.

(4) る。特に高齢者で問題になるのがエネルギーとたん ぱく質の両方が不足する低栄養である。高齢者に. 表 2 フレイルの区分別の自立喪失、要介護、死亡の 7 年間の発生率. 全てのアウトカムにおいてフレイル群は、なし群に比べて有意に高値。自立喪失は 5 倍. なると一般に小食で、 あっさりしたものを好むようにな. フレイル区分. ることから、油脂類、肉類、牛乳・乳製品、卵類の 摂取量が減少する。また、高齢者では、体内でのタ ンパク質の合成能力や回復力が減少していること も原因になっている。エネルギーが不足すると、そ れを補うために体脂肪や筋肉の分解が亢進して体 重と筋肉量の減少が起き、肝臓でのタンパク質の合 成能が低下することが重なり、血中のタンパク質(ア ルブミン) も低下する特徴を持っている。 フレイルとは、日本語では「虚弱」 と訳され、単に 筋肉の量や機能が低下する筋肉フレイルだけでは. 男性 (平均年齢). フレイルなし. プレフレイル. フレイル. (69.5). (71.1). (74.8). 自立喪失. 22.8. 42.9 (1.9). 110.4(4.9). 要介護 (要介護を含む). 10.7. 24.4(2.3). 77.3 (7.2). 要介護 (2 以上). 5.0. 11.1 (2.2). 42.8 (8.6). 29.5. 53.6 (1.8). 124.7 (6.1). 循環器疾患死亡. 2.9. 9.3 (3.2). 38.4(13.3). 女性 (平均年齢). 全死亡. (68.7). (70.9). (75.7). 自立喪失. 13.6. 32.9 (2.4). 90.8 (6.7). 要介護 (要介護を含む). 11.9. 26.7 (2.3). 77.4(6.5). 的フレイル、さらに引きこもりや他人とのコミュニケー. 要介護 (2 以上). 5.9. 8.8 (1.5). 32.0 (5.4). ションが減少する社会的フレイルも含まれる。. 全死亡. 5.3. 20.9 (0.3). 58.1 (11.0). フレイル対策で重要になるのは低栄養であり、何. 循環器疾患死亡. 1.8. 6.2 (3.5). 20.3 (11.3). なく、認知機能の低下やうつなどをもたらす精神. らかの原因で摂食量が減少することが主要因で ある。例えば、味覚や食欲が低下して摂取量が減 少するとエネルギーやたんぱく質摂取量が減少し、低栄養状. には関係は見られなかったが、体重減少群のみに有意にフレ. 態となり筋肉量が減少する。筋肉量の減少は基礎代謝の低. イルの発症が増大していた。. 下が起こり、エネルギー消費量が低下し、さらに食欲が減退し て、食事摂取量が低下する負のスパイラルが起こってくる。さ らに、低栄養になると疲労感の増大や活力の低下、筋力低下 による歩行速度の低下、活動量の低下といった社会的・精神. まとめ 我が国の食事療法は、集団給食の一部として病院に組み. 的なフレイルの低下も加わることになり、介護のリスクは増大す. 込まれ、医学や栄養学の発展、医療制度の改革、さらに患者. る。. からの要望等を経て現在の栄養・食事療法の姿になった。高. 東京都健康長寿医療センターの北村らは、群馬県草津市. 齢社会を迎えて個別化医療が進む中で、新たに個別化栄養. において2002年から2011年の間に高齢者検診を受信した. 管理の取り組みへの必要性が増大しつつある。. 65歳以上の対象者をフレイル区分(n=1,335人) とメタボ区分 (1,450人) に分け、7年間追跡調査した7)。ベースライン時に. 本論文に関する著者の利益相反なし. すでに要介護認定を受けた者は除外した。アウトカムとして自 立喪失、要介護、死亡の発生率を観察している。自立喪失と は、初回の要介護認定(要支援1以上) または認定前死亡で あり、自立喪失発症率とは介護と死亡により自立喪失した者の 割合である。その結果、 フレイルの程度が進んだ群ほど、 アウト カムの発生率はいずれも高値を示し、7年後の自立喪失発症 率は、男性ではフレイルなし群に比し、プレフレイル群で約2倍、 フレイル群で約5倍、女性でもプレフレイル群で約2.5倍、フレイ ル群で約6.5倍を示した (表2)。 一方、 メタボ区分別では、各アウトカム発症率は一定の関連 性が認められなかったが、脳卒中の既往は自立喪失の独立し た危険因子となっていた。このような傾向は、ヨーロッパでも同 様の結果が報告され8)、1970年代から2007年までの北欧男 性を対象とした長期間の観察研究をまとめて、長期間のbody mass index(BMI) の変化とフレイルの発症を4郡に分けて検 討すると、正常域無変化群、一貫した過体重群、体重増加群. 引用文献 1) 新井保男 . 近代西洋医学の事始め . 日本近代医学の黎明 . 中央 公論新社 , 東京 , 2011, p13-56. 2) 鈴木 博 , 中村丁次編著 . 改定臨床栄養学 I. 建帛社 , 東京 , 2012, p13-26. 3) 細谷憲政 . 臨床栄養 , 臨床栄養序論 , 中村丁次編 . チーム医療 に必要な人間栄養学の取り組み . 第一出版 , 東京 , 2012, p2-28. 4) Beard JR, Officer A, Cassels A, et al. “World report on ageing and health. Geneva”. World Health Organization: 2015. 5) Colman RJ, Anderson R M , Johnson SC, et al. Caloric restriction delays disease onset and mortality in rhesus monkeys. Science 325: 201-204, 2009. 6) Zaslavsky O, Walker RL, Crane PK, et al. Glucose levels and risk of frailty. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 71: 1223-1229, 2016. 7) 北村明彦 , 新開省二 , 谷口 優ほか . 高齢期のフレイル , メタボリック シンドロームが要介護認定情報を用いて定義した自立喪失に及ぼ す中長期的影響 : 草津町研究 . 日本公衆誌 64 (10) : 593-606, 2017. 8) Strandberg TE , Stenhom Sari, Strandberg AY, et al. The “obesity paradox,” frailty, disability, and mortality in older men: a prospective, longitudinal cohort study. Am J Epidemiol 178 (9): 1452-1460, 2013.. 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.34 No.5 2019 (319).

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